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Wednesday, July 29, 2020

福山市が市民に提供する無料風疹抗体検査を受けた福山市民のYさんが担当医師から受けた差別

追記。8月25日の投稿で最新報告をしています。
追記。8月6日の投稿でその後の経過報告をしています。

広島県福山市に住むYさんが、医療機関で差別を受けた。福山市は、妊婦が風疹に罹り、胎児が先天性風しん症候群になることを防ぐために、市民に、無料で、妊婦や妊娠を希望する女性やその家族に、風疹抗体検査を行っている。 http://www.city.fukuyama.hiroshima.jp/soshiki/hokenyobo/135719.html 

福山市HP



Yさんと夫は、7月25日、それぞれが同一の住所が記載された保険証(Yさんは社会保険、夫は国民健康保険)を持って、指定医療機関の一つで検査に臨んだ。以下がYさんから提供された経緯である。

先に夫が診察室に呼ばれ、私は後から呼ばれて入り、椅子に座る。 
医師:「あなた税金は払っているの」 
私:質問に驚き、言葉に詰まる 
医師:「税金は払っているの」 
私:「はい」
医師:「住民票はあるの」
私:「はい」
医師:「あなた、対象かどうか確認した?」私が答える前に、医師:「籍に入っているの」。「3年前に婚姻手続を行った」と答えるも、医師は夫に向き直り、同じ質問をする。 
夫:「はい」
医師:「もう国籍は変えたの?」
私:「いいえ。変えていません」
医師:「韓国籍?朝鮮籍?」
私:「韓国籍ではありません。朝鮮籍です。日本の制度上、婚姻したからといって国籍が変わるわけではありません」
医師、これには答えず、夫に対し、「あなたは日本国籍?」
夫:「はい」
医師:「じゃあ、日本人だけど外国人と結婚しているということね。あなた(夫)は福山市の検査の対象だけど、あなた(私)はわからないから、今日は自費で出してもらって後で対象とわかったら返すということでいい?」
夫:「はい」

結局、自己負担はなかったということだ。

私はこれを読んで、悪質な在日朝鮮人差別であると思った。

1) 診察室に入っていきなり「税金を払っているの」。「税金を払っている」ことが公共サービスを受ける条件であるかの如くだ。検査に来る全員にいきなりこのような質問をしているとは思えない。これはYさんの名前が、いわゆる日本的な名前ではなく、朝鮮半島にゆかりのある人ではないかと思ったからこのような検査にも資格にも関係ない質問をしたのである。これは明白な差別だ。

2) 「住民票はあるの」という質問だが、保険証を見れば住民かどうかはわかるはずだ。これも、検査に来る人全員に聞いているはずはない。相手の名前を見て、在日朝鮮人のようだから、検査資格はないとでも言いたいのか、立て続けにこのような失礼な質問をする。全体を見て言葉のトーンも上から目線で、相手に対する敬意を欠くものだ。女性蔑視も入っているのではないかと感ずる。

3) 「あなた、対象かどうか確認した」か、と聞いた直後に「籍に入っているの」と聞いたことから、相手を検査の「対象」ではないという疑いの目で見ていることがわかる。「籍に入っているの」という質問は全く的外れである。そもそもこれは日本の人の多くが勘違いしているが法的に「籍に入る」という手続きはない。日本の法律では、結婚したら新たな戸籍ができるのであって、どちらかがどちらかの籍に「入る」のではない。いずれにせよそれは検査とは関係ない個人情報を要求するプライバシー侵害である。Yさんが一緒に来たパートナーと結婚していようとしていまいとこの検査を受ける資格はある(一人で来たって当然ある)。

4) 「もう国籍は変えたの」。これも検査とは全く関係のない質問である。私はカナダに25年間住んでいるが、妊娠・出産したときを含め、医療機関で国籍を問われたことなど一度もない。Yさんと同様に、自分の住む地域の公的健康保険に入っていれば十分であり、在留資格が何か、国籍があるかないかは関係ないし、そういうことを聞くこと自体が人権侵害なのである。

5) Yさんは答える必要もなかったが、「3年前に婚姻手続を行った」と答えた。この医師はその直後に夫のほうに同じ質問をするとは、Yさんの答えを信用していないからである。Yさんを嘘つきと言っているかの如く、Yさんの答えを無視して夫に同じ質問をするというのはこれも女性蔑視の入った人種差別、民族差別、「日本人」ではないように思われる人を差別する姿勢である。

6) 「もう国籍を変えたのか」。この医師の差別度は深まる一方のようだ。繰り返すが、この検査を行うのは福山市民であれば資格があるのであり、国籍は関係ない。ましてや、Yさんが結婚するにあたり国籍をどうするかといった個人的選択について詮索する権利はゼロ、ゼロ以下である。そもそも結婚によって国籍を変える必要などない。この医師の無知が露呈している場面でもある。

7) 「韓国籍?朝鮮籍?」この質問で、この医師の本性が現れたように思う。やはりこの医師は、Yさんが朝鮮半島にゆかりのある人の名前のように見えたから差別を始めたのではないか。在日朝鮮人を意図的にターゲットにした差別のように見える。「韓国籍?朝鮮籍?」という質問で何を知ろうとしたのかはわからないが、日本では「朝鮮籍=朝鮮民主主義人民共和国の国籍」と勘違いしている人が多いので、きっとこの医師もその部類で、「南なのか、北なのか」尋問するようなうつもりで問いただそうとしたのではないか(いずれにせよ検査とは全く関係のない差別、プライバシー侵害である)。

8) 当然ながら、夫に対し「日本国籍?」と聞くことも検査に何も関係がないしこの医師の職権で聞ける質問ではない。

9) このような差別発言を繰り返し挙句の果てにこの医師は、Yさんが検査の対象になるかわからないから実費で払ってもらって、対象とわかったらあとで返すとまで言っている。しかしこの日は結局請求されなかったということは、この会話と、請求の間の時点で「対象である」ということがわかったということなのだろうか。それともこの医師は、差別をしたいから差別を行っただけなのだろうか。「日本人」ではないものは一切の公共サービスを受ける資格がないとでも言うのだろうか。

Yさんは、7月29日、福山市の市民相談課にこの件を報告している。そのメールでYさんはこう書いた。

私が外国的な名前であったことから、このような対応をしたのだと思います。
この検査は市民ならば無料で受けられるものなので、所得税免除の場合の割引があるものではなく、医師の質問の流れから「外国人は税金を払っていないかもしれないから無料受診の対象ではないかもしれない」と考えたのではないかと推測します。また、「日本人と結婚しているから日本人に準じて対象になるかもしれない」と考えたのかもしれません。
納税、国籍、婚姻の有無など、本来受診資格の有無と無関係な質問の連続で不躾な対応であると感じましたし、私も日本で生まれ育った福山市民に違いはないのに大変な疎外感を感じました。
私は納税を怠っていませんが、民主主義社会では税金は公共サービスの原資であって条件ではないにも拘らず、税金を払っていないから公共サービスを受ける資格がないのではという発想自体、優生思想にも通じる危険なものと思いました。
受診した医院は実施機関として福山市で案内されているところなので、他の外国人市民が同じような思いをしないよう、お伝えしておこうと思いました。

Yさんのように、自分の生まれ育った国で、自分に市民としての資格がないかのように扱われるのはどれだけ悔しいことかと思う。この医師と、医療機関と、福山市はこれを差別行為と認め、Yさんに対して誠実な謝罪をするべきである。そして、Yさんや、すべての市民が今後このような屈辱的な差別を受けることがないような対策を具体的に講じるべきである。

このブログでは引き続きこの件の経緯を追っていく。

乗松聡子 @PeacePhilosophy 

Sunday, July 26, 2020

沖縄戦の記憶-アジア太平洋戦争の戦犯を美化する「黎明の塔」を放置してはいけない(琉球新報コラム転載)A Ryukyu Shimpo Column on the Battle of Okinawa Memory

『琉球新報』7月8日「乗松聡子の眼 35回」「沖縄戦の記憶 皇軍の加害性を明確に」を琉球新報社の許可を得て転載します。Here is Satoko Oka Norimatsu's article in July 8, 2020 edition of Okinawan newspaper Ryukyu Shimpo. Re-posted with Ryukyu Shimpo's permission. 

Related article in English: 
From Nanjing to Okinawa – Two Massacres, Two Commanders (Asia-Pacific Journal: Japan Focus(「南京から沖縄へ 二つの虐殺、二人の司令官」)


琉球新報社提供

Thursday, July 23, 2020

Attention! A Public Webinar on July 25 (Sat) 1 PM EST (New York time) on the U.S. Decision to Drop the Atomic Bombs on Japan. Gar Alperovitz, Marty Sherwin, Kai Bird, and Peter Kuznick. 米国による日本への原爆投下決定についての4人の専門家による公開ウェビナー: ガー・アルペロビッツ、マーティ・シャーウィン、カイ・バード、ピーター・カズニック

Posted on July 29: according to the organizers, the webinar was a success, attended by more than 300 people! Here is the recording of it.
追記。ウェビナーは300人以上の参加を得て成功裏に終わりました。録画リンクはここです。


ピース・フィロソフィー・センターも後援団体の一つとなっている、原爆投下決定についてのウェビナーです。以下ご覧ください。
Peace Philosophy Centre is one of the sponsoring organizations of an upcoming webinar:
What Every Global Citizen Needs to Know About the Decision to A-Bomb Hiroshima and Nagasaki
Date: July 25, 2020
Time: 1pm EST (New York Time)

Zoom link:
The debate over the atomic bombings -- a controversy that forced the Smithsonian Institution to abandon its Enola Gay exhibit 25 years ago -- continues unabated in America today as we approach the 75th anniversary of the incineration of Hiroshima and Nagasaki. Four historians, Gar Alperovitz, Martin Sherwin, Kai Bird, and Peter Kuznick, each of whom has written extensively on the topic, will discuss the documentary evidence and assess the current state of knowledge about the bombings in a webinar open to people from around the world. Internationally acclaimed poet Carolyn Forche will moderate. The webinar will critically explore in depth the “official” explanation that use of the atomic bombs was the only way to force the fanatically resistant Japanese to surrender without an Allied invasion that would have cost hundreds of thousands of U.S. and British and an even greater number of Japanese lives. Attendance is free and open to the general public. A question and answer period will follow the presentations.
Speakers include:

Gar Alperovitz, formerly a Fellow of Kings College Cambridge, the Institute of Politics at Harvard, and Lionel Bauman Professor of Political Economy at the University of Maryland, is the author of Atomic Diplomacy: Hiroshima and Potsdam and The Decision to Use the Atomic Bomb. He is currently a Principal of The Democracy Collaborative, an independent research institution in Washington, D.C.
Martin Sherwin, University Professor of History, George Mason University, is author of A World Destroyed: Hiroshima and Its Legacies winner of the Society of Historians of American Foreign Relation’s Bernath Book Prize, co-author with Kai Bird of American Prometheus: The Triumph and Tragedy of J. Robert Oppenheimer winner of the 2006 Pulitzer Prize for biography, and Gambling with Armageddon: Nuclear Roulette from Hiroshima to the Cuban Missile Crisis, forthcoming in September 2020.
Kai Bird, Executive Director, CUNY Graduate Center’s Leon Levy Center for Biography, co-author (with Martin Sherwin) Pulitzer Prize-winning American Prometheus: The Triumph and Tragedy of J. Robert Oppenheimer, co-editor (with Lawrence Lifschultz) Hiroshima’s Shadow, and author The Chairman: John J. McCloy and the Making of the American Establishment.
Peter Kuznick, Professor of History, Director, Nuclear Studies Institute, American University, co-author (with Akira Kimura), Rethinking the Atomic Bombings of Hiroshima and Nagasaki: Japanese and American Perspectives, co-author (with Oliver Stone) of the New York Times best-selling The Untold History of the United States (books and documentary film series), and author “The Decision to Risk the Future: Harry Truman, the Atomic Bomb and the Apocalyptic Narrative.”
Carolyn Forche’s first book of poetry, Gathering the Tribes, won the Yale Series of Younger Poets Prize, and was followed by The Country Between Us, The Angel of History, and Blue Hour. In March, 2020, Penguin Press published her fifth collection of poems, In the Lateness of the World. She is also the author of the memoir What You Have Heard Is True (Penguin Press, 2019), a finalist for the National Book Award and winner of the Juan E. Mendez Book Award for Human Rights in Latin America. Her international anthology, Against Forgetting, has been praised by Nelson Mandela as “itself a blow against tyranny, against prejudice, against injustice.” In 1998 in Stockholm, she received the Edita and Ira Morris Hiroshima Foundation for Peace and Culture Award for her human rights advocacy and the preservation of memory and culture. She is one of the first poets to receive the Wyndham Campbell Prize from the Beinecke Rare Book and Manuscript Library at Yale University, and is a University Professor at Georgetown University in Washington, D.C.

Webinar sponsors include:

American Friends Service Committee's Peace & Economic Security Program American University Nuclear Studies Institute Article 9 Canada Campaign for Peace, Disarmament and Common Security Code Pink COVID 19 Global Solidarity Coalition Global Network Against Weapons & Nuclear Power in Space Hiroshima Nagasaki Peace Committee of the Greater DC Area Historians for Peace and Democracy International Peace Research Institute Meiji Gakuin University (PRIME) Lannan Center for Poetics and Social Practice at Georgetown  Los Alamos Study Group Nuclear Age Peace Foundation Peace Action Peace Culture Village  Peace Philosophy Centre (Vancouver, Canada) PEAC Institute  Proposition One Campaign for a Nuclear Free Future United for Peace and Justice Western States Legal Foundation Women’s International League for Peace and Freedom (WILPF) USA World Beyond War Youth Arts New York/Hibakusha Stories