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Saturday, June 16, 2018

『月刊イオ』寄稿 「”蚊帳の外”・日本はどうする」 What should Japan do in the peace process of Korean Peninsula?

月刊イオ』7月号に掲載された記事を許可を得て転載します。これは、5月末に書いた記事です。あれから米朝首脳会談が6月12日にシンガポールで開催され、トランプ大統領は記者会見で在韓米軍の撤退や米韓軍事演習の中止に言及しました。この記事で提案した2.(米韓日の軍事的脅威の削減)については米国側からぐっと前進したのではないかと思います。いっぽう日本は相変わらず、政府もメディアも「拉致問題」の連呼を続け、軍事演習についても、小野寺防衛相は「その重要性に変わりはない」といった発言で、和平を妨害するような行動が目立ちます。

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http://peacephilosophy.blogspot.com/2018/06/what-should-japan-do-in-peace-process.html
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★この記事の最後に触れている、朝鮮学校差別に反対するカナダ市民の声明はここにあります。

画面をクリックすれば拡大できます。

仲宗根勇「12・26とは何か 〜翁長知事が招いた辺野古裁判敗訴の分水嶺〜」

元裁判官の仲宗根勇氏は辺野古の現場での闘いの最前線に身を置きながら基地阻止のための建設的問題提起を続けている。氏が6月15日に自らのフェースブックに綴った文は仲井眞前知事の埋め立て承認時から現在までの経緯を振り返る貴重な記録であると同時に、翁長知事の「撤回」が待たれる中、辺野古側の護岸工事がもうすぐ終了し、土砂の投入を待たずとも、囲まれた海の生物多様性が重大な危機にさらされるという状況下、疑問を持つ県民も多い中で見切り発車した「県民投票」に揺れる運動現場からの声である。

K4護岸 ②工区側 あと100メートルほどでつながってしまう
(6月13日 乗松聡子撮影)


本文より:
知事就任から3年余を経過した現在においてなお、撤回原因を法的に検討すると主張して、翁長知事が承認撤回を逡巡する真の理由は何なのか。県民の間で大きな疑問が持たれている。安倍政権下の三権分立に幻想を抱き、裁判における「民意」の効力を法的根拠なく安易に過大評価する県民投票実施論は、辺野古新基地建設阻止を目的とするものとは思えず、翁長県政継続に何らかの「既得権益」をもつ特定の党派・団体・個人が、撤回を逡巡して窮地に立っている翁長知事の再選戦略をカムフラージュする政治的主張に他ならないと考える。


12・26とは何か  
〜翁長知事が招いた辺野古裁判敗訴の分水嶺〜

法的・政治的思想なき県民投票の流れを撃つ

仲宗根勇(元裁判官・うるま市「島ぐるみ会議」共同代表)

仲井真弘多前知事は、怪しげな面会謝絶の東京都内病院入院後、再選時の普天間基地県内移設反対の公約を破り、2013年の御用納めの前日12月27日にあたふたと辺野古埋め立てを承認した。2014年11月16日の県知事選挙では、県内移設容認に転じて三選を目指した仲井真知事に約10万票の大差をつけて辺野古新基地反対を掲げた「オール沖縄」の翁長雄志氏が当選した。その後の辺野古埋め立て工事は、2度(2015年8月10日からの1か月間、和解が成立した2016年3月4日から承認取り消しを取り消した2016年12月26日までの間)の工事中止を挟み、着々と進められた。完成近いK4護岸とすでに完成したN5護岸・N3護岸に囲われる水域に8月17日にも土砂が投入される事態にまで立ち至っている。

引き返し不可能な時点が近づくこうした現在の緊迫した状況下で、昨年から各所の論争で現れては消えていた、辺野古新基地建設の是非を問う県民投票実施論が県民投票に消極的な「オール沖縄」から脱退した「かねひで」、「かりゆし」など経済人らの主導で息を吹き返した。それまでは、「オール沖縄」はじめ県内世論の主流は県民投票に否定的であった。しかるに、あろうことか社民党県連が口火を切り社大党そして共産党までも流れに乗って、県政全与党が県民投票推進に全面協力する県民投票推進陣営に鞍替えした。6月15日には自治労県本部まで県民投票に協力する決定をした。

しかし、今や、知事就任以来、かくも長き翁長知事の不可思議な「承認撤回」不在に対し、翁長氏を知事に押し上げ辺野古の反対現場で戦う多数の県民は県政=翁長知事に不信感を隠さず、同時に党利党略で県民投票推進論者に豹変した思想なき「革新」政党、労働団体に対する政治不信が広がっている。日頃のゲート前には姿を見せず、県民多数が集結する大きな集会には顔を出して演説をし、いつの間にさっさと現場から姿を消す議員先生やダラ幹たちに、本当に辺野古新基地を阻止する気があるのか。

この時点での県民投票の持つ諸々のリスク(稚拙な県民投票運動組織・投票率50パーセント以下となった場合の投票の無意味化・投票結果の勝敗リスクの不確実さ=基地建設賛成が多数となった場合の反対運動への壊滅的影響・その責任は誰がとるのか、反あるいは非翁長派首長自治体=「チーム沖縄」の投票実施への非協力・意識的投票棄権運動の恐れや条例制定までの5〜6億円の県予算措置の必要性・権力私物化が強く疑われる森友問題などについて関係者全てを不起訴にした特捜検察も含め、安倍政権下で行政に従属する司法に見られる三権分立崩壊の現実など)を十分に考えての「変身」なのか。

県民投票のデメリットはあまりに多く、県民投票は、政府の思う壺である工事の進行を投票結果が出るまでの5〜6か月以上も進行させる結果を招く。投票結果が「建設反対多数」の民意であっても、それに法的拘束力はなく裁判上の決定的効力はないのに、「裁判所はこれを無視できず」(「辺野古」県民投票の会の広報紙)などというのは、「県民が必ず責任ある1票を投じるはずである」とのたまうさる大学教授に代表される県民投票論者の、法的根拠のない無責任な希望的観測ないしは幻想にしか過ぎない。

投票率が50パーセント以下の極端に低い結果に終った場合や、県民投票推進運動が運動途中で頓挫し、たとえ、県民投票実施まで至らなくても、それまで無駄に空費された時間とエネルギーは辺野古新基地阻止運動のエネルギーを分断・消耗させ、さらなる工事強行の絶好の口実を政府に与え、これまでの数多の選挙で示してきた辺野古新基反対の沖縄の圧倒的民意をも覆滅しかねない危険な愚挙以外のものではない。新基地建設工事が機動隊に守られて粛々と進む辺野古現場の状況を知らず、安倍政権下の三権分立に幻想を抱き、投票結果である「民意」の効力を法的根拠なく裁判において過大に働くと素朴に評価する県民投票実施論者の実体は、辺野古新基地建設阻止を本来の目的とするものとは思えず、翁長県政継続に何らかの「既得権益」をもつ特定の党派・労組・団体・個人が、撤回を逡巡して窮地に追い込まれている翁長氏の今年11月の知事再選戦略をカムフラージュする政治的主張に他ならないと考える。

翁長知事就任から承認撤回を未だにしない現在までの辺野古新基地建設問題をめぐる国と沖縄県との間の法律関係と裁判の経過を時系列で追ってみると、知事が埋め立て承認取消しを取り消した(取消処分の取り消し)2016年12月26日が辺野古裁判の勝敗を分かつ分水嶺となったことが明白となる。取消処分の取り消しにより前知事の埋め立て承認が復活し、翌日12月27日から工事が再開され現在に至っているからである。時系列の大略は、次のとおりである。

2013年12月27日・仲井真弘多知事が辺野古埋め立てを承認→2015年7月16日・第三者委員会が承認の法的瑕疵を検証した報告書を翁長雄志知事に手交→2015年8月4日政府が8月10日から1か月間工事を中断し県と集中協議をすると発表(5回にわたる協議は不調)→2015年10月13日・第三者委員会の検証結果に基づき知事が承認を取り消す→2015年10月27日・行政不服審査法に基づき国交相が知事の取消処分の執行を停止→2016年3月4日・代執行訴訟で和解成立・同時に工事中止→2016年3月7日・和解条項に基づき国が知事に対し取消処分の是正を指示→2016年3月23日・県が国地方係争処理委員会(係争委)に是正指示の審査申し立て→2016年6月17日・係争委が是正指示の適法違法の判断を回避し双方に「真摯な協議」を求める決定→係争委の決定に従い、県は、和解条項第5項、第6項に基づく1週間以内(地方自治法上は国の関与があった日から30日以内)の地方自治法所定の是正の指示の取消訴訟を提訴せず→2016年7月22日・国が是正指示の不作為違法確認訴訟を福岡高裁那覇支部に提訴→2016年9月16日・同支部で県敗訴判決→2016年12月20日・最高裁で県の上告棄却判決(=高裁判決の確定)→2016年12月26日・知事が埋め立て承認取消しを取り消す→承認が復活し、翌日12月27日から工事が再開された。

こうして、翁長知事就任後の新基地問題をめぐる県と国との法律関係は、知事の2016年12月26日の承認取消しの取り消しの結果、3年前の2013年12月27日の時点の出発点に戻り、前知事当時の県と国との法律関係に復帰し埋め立て承認が復活した。その結果、翁長知事の承認取り消しに端を発する沖縄県の国との法廷闘争の結果はゼロと化し、知事就任後3年余という歳月だけが無意味に流れた。すなわち、公有水面埋め立て承認手続に関する第三者委員会が前知事の承認処分の法的瑕疵を約半年間もかけて検証し瑕疵の存在を指摘した報告書並びに工事中止に目がくらみ和解条項(特に第9項に潜むワナ)を十分吟味せず「和解に県のデメリットはなく県の勝訴と同然」と和解に秘められた安倍官邸の思惑に深く考慮をめぐらさず、あたふたと成立させた代執行訴訟での和解成立に有頂天になっていた県の訴訟代理人たちの自画自賛もすべて白日夢と化した。

最高裁の判決前から翁長知事は、判決後に承認取消しの取り消しをするという発言を繰り返していた。これを問題視する団体はオール沖縄の中にはなく、唯一、私(たち)の運動体のみが早くから高江の集会現場で訴え、那覇市内で承認取消しの取り消しをするな、との反対ビラを撒き、私(たち)に呼応して2016年12月26日の早朝に県庁ロビーや知事公舎前に集結した100人足らずの仲間たちが、承認取消しの取り消しをする法的理由はないと知事に訴え、同時に適時の承認撤回も要請した。私たちが、12月26日に県知事に提出した要請書の要請理由は、最高裁判決により確定した福岡高裁那覇支部の確認訴訟判決に執行力はないこと、辺野古新基地建設問題をめぐり敗訴した確認訴訟は3月4日に成立した和解とは関係ない訴訟であり、したがって管官房長官がしきりに主張する和解条項第9項の適用の根拠はないこと、その確認訴訟の敗訴判決からは承認取消しを取り消す法的義務は生じないこと、「判決に従う」旨の知事の法廷での陳述は承認取消しの取り消しの理由にはならないこと、承認取消しの取り消しの法的効果は即時に前知事の承認を復活させ工事再開に結びつき工事阻止を最終的に不可能にするほど絶大なものであること、和解条項第9項の義務を指摘していた確認訴訟提訴までの政府の声明や対応を考えると、今後の知事の諸種の権限行使を有名無実化ないし無効にして工事を強行する政府の策動が危惧される、というものであった。
 
承認取消しの取り消しは、前知事の埋め立て承認に法的瑕疵はなく適法であると翁長知事が積極的にその正当性を認めたことを意味する。したがって翁長知事は、辺野古新基地建設阻止のための諸種の知事権限(岩礁破砕許可の更新許可、サンゴ類の特別採捕許可、設計概要の変更の承認など)の行使にあたり、前知事の埋め立て承認の正当性を大前提にしなければならないことになった。その結果が、2017年からの辺野古新基地建設のための本部港(塩川地区)などの港湾の使用許可決定や、2018年2月16日の絶滅危惧種オキナワハマサンゴの特別採捕許可決定である(ただ、防衛局の同採捕許可の期間延長申請は3月1日県の不許可で失効した。また、防衛局の絶滅危惧2類のオキナワハマサンゴ8群体、準絶滅危惧のヒメサンゴ2群体の計10群体についての2018年1月24日と同年3月2日の特別採捕の各許可申請は、3月9日県が不許可としたが、防衛局は、4月5日オキナワハマサンゴ8群体の特別採捕許可の再申請をした。今後の再申請に対する県の対応は不透明である。)

こうして、あらゆる手段で辺野古新基地を阻止するはずの翁長知事は、知事権限の行使にあたり、2016・12・26の知事自らの承認取消しの取り消しをした行政行為によって自縄自縛状態の窮地に陥ってしまった。承認取消しの取り消しをしていなければ、工事を中止させたままの状態で、県は国が次々繰り出す法的手段に対し有効適切な法的対抗をすべき十分な時間的余裕が持てたはずである。翁長知事の2016年12月26日の承認取消しの取り消しこそが現在に至るまでの辺野古裁判の帰趨を決する分水嶺となっている事実は繰り返し確認されるべきことである。

このことを明確に認識している者は識者の中でも極めて少なく、新聞の署名入りの解説記事でも12月27日の「工事再開は最高裁判決の結果」と堂々と書く記者がいる。承認取消しを取り消した知事書面が沖縄防衛局に送達されて取り消し処分の行政行為の効力が発生した12月27日から工事が再開されついに2017年4月25日、政府は埋め立て工事を開始した。辺野古海上やゲート前で建設反対の意思表示をする県民を海上保安官・機動隊が実力排除する中でK9護岸工事が始まり、反対側のK1護岸〜K2護岸〜K3護岸とN5、N3護岸建設は予定の長さまですでに完成されて 2018年6月初旬現在、全長1029メートル予定のK4護岸の完成まで数百メートルを残すのみとなり、現場の報告では1か月以内に完成するのではないかと推定されている。

安倍内閣は、K4〜N5〜N3の護岸完成で囲まれる海域にこの夏7月から土砂投入を始める方針だと4月8日の「共同通信」が報じている。また、6月7日付読売新聞電子版の紙面トップで、政府が8月中旬にも埋め立て区域への土砂投入に踏み切り、本格的な埋め立て工事に着手する方針を固めたことが報道されたが、6月12日沖縄防衛局は、8月17日から土砂投入をすると、沖縄県赤土等流出防止条例に基づき県に通知した。辺野古新基地問題についてまさに急迫した事態が迫っている。

仲井真弘多前知事の一応有効な埋め立て承認の行政行為について、その成立に瑕疵があることを理由としてその効力をはじめに遡って失わせた翁長知事の承認取消を巡る裁判のプロセスは不作為違法確認訴訟で県敗訴が確定したことにより一応終止符が打たれた。その終止符と法的関係のない12・26の知事の任意の承認取り消しの取り消しにより、有無を言わさぬ国の工事強行に対し県は打つ手を封じられている現在、あらゆる手段での建設阻止を叫ぶ県政を支持してきた新基地反対の県民の間に諦めに近い閉塞感が広がっている。

この窮境を打開する手段は、知事が、これまでの「行政行為の取り消し」とは異なる「行政行為の撤回」を一日も早くする以外に道はない。それはつまり、埋め立て承認という前知事の有効な行政行為について、新たな事情が発生したためにその行政行為の効力を将来に向かって消滅させることであり、県は、その撤回カードをいまだ行使していない。県がいつ撤回という新たな行政行為(撤回行為)に踏み込むのかが、現在の翁長県政の焦眉の問題になっている。前知事の埋め立て承認後に事情の変遷があり、または新たな事由の発生があって承認処分を存続させることがもはや公益に適合しなくなったとしたら、翁長知事が、公益に適合させるため前知事の埋め立て承認の撤回をなし得ることは行政上・行政法の講学上自明のことである。

翁長知事は、就任以来記者会見などで何度も「承認の撤回も視野に入れている」と表明し、毎年の新年の年頭挨拶の中でも新基地建設阻止を県政の柱と宣言し、知事として初めて参加した2017年3月25日の辺野古集会では「力強く撤回を必ずやる」と公言し聴衆の喝采を浴びた。辺野古新基地建設が日ごとに進む一方で、選挙公約でもあり辺野古新基地建設をあらゆる手段で阻止すると表明してきた翁長知事が、多くの県民・市民団体が要請した承認撤回を逡巡するばかりか、建設阻止と矛盾する行動をとり続けていることに対する県民の苛立ちと不信感が2018年2月4日の名護市長選挙での現職敗退の一因となった。

前知事は2014年8月28日に沖縄防衛局の岩礁破砕等の許可申請を9項目の条件を付して許可した。防衛局が2017年3月31日までの許可期限が経過した4月25日に許可なく本体工事着工を強行したので、同年7月24日に県は岩礁破砕の工事差し止めを求める訴訟提訴と工事中止の仮処分申請をした。私は、この訴えは辺野古新基地阻止に有害・無益な訴えであると論じた(2017年8月4日付け琉球新報)。予想したとおり、仮処分申請についての判断は申請後速やかには出されず、本案(岩礁破砕の工事差し止めを求める訴訟)の判決まで先送りされた。本案の審理から判決までの間、工事は止まることなく粛々と進められ、審理期間は予想通り長期に及び提訴から約8か月後の2018年3月13日に本件各訴えはいずれも裁判所法3条1項の「法律上の争訟」に当たらず不適法であるとして却下判決が言い渡された。本訴の審理期間中工事は進み既成工事量が増大したのみでなく、防衛大臣は早速、勝訴判決は工事の後押しになると勝ち誇った。3月23日、県は控訴した。また、2018年2月の名護市長選挙では、政府・自民党と公明党などが支援する新人候補が辺野古新基地の賛否を明らかにしない理由を「県と国の係争中の裁判の結果を注視」するためとされた。訴訟の客体(訴訟物)の内容からして理由にならない逃げ口上にその訴訟提起が利用される羽目となった。県の最後の切り札であり将来起こる撤回裁判を県に有利に展開するためには、工事の差し止め訴訟提訴と工事中止の仮処分の申請及び予備的に提訴した本件確認請求に係る訴えは、結果的に長い審理期間中工事を止め得ず進行させただけの有害にして無益の訴訟でしかなかったことが明らかになった。

「うるま市島ぐるみ会議」は、知事に対し2017年1月13日から12月1日まで4回にわたって埋め立て承認撤回の要請をした。2018年6月9日の総会において、沖縄県知事に対し、5回目の撤回要請をすべきだと決議され、県庁において6月13日知事要請行動を行ったその報告は、翌日私のFBにアップした。)。1月の撤回要請に応対した謝花喜一郎知事公室長(現副知事)は、「要請の思いを強く受け止めている。しっかりと知事に要請内容を伝え、県民の思いに応えたい」と述べた。それ以後の要請における県の担当部局の説明でも、撤回理由について法的検討を続けており、今後の工事の推移も見ながら検討するとのことであった。だが、前知事の「承認書」に付された留保事項に違反し、防衛局に対する翁長知事のたび重なる指示を無視し、和解条項や係争委が求めた協議に国が応じなかったことなど違法な工事を進めている国に対して、埋め立て承認を撤回する正当な撤回原因はすでに多数発生しており、2014年11月16日大差で翁長雄志氏が県知事に当選した時点から「民意」を理由とした撤回原因も生じ、撤回は、知事就任後いつでも可能であった。

しかし、知事就任から3年余を経過した現在においてなお、撤回原因を法的に検討すると主張して、翁長知事が承認撤回を逡巡する真の理由は何なのか。県民の間で大きな疑問が持たれている。安倍政権下の三権分立に幻想を抱き、裁判における「民意」の効力を法的根拠なく安易に過大評価する県民投票実施論は、辺野古新基地建設阻止を目的とするものとは思えず、翁長県政継続に何らかの「既得権益」をもつ特定の党派・団体・個人が、撤回を逡巡して窮地に立っている翁長知事の再選戦略をカムフラージュする政治的主張に他ならないと考える。

K1護岸〜K2護岸〜K3護岸〜K4護岸とN5護岸、N3護岸が完成して繋がれて囲まれる埋立て区域に、この夏にも土砂の投下がされる予定と言われてきた。その時点では原状回復は不可能となり、その後に撤回しても、その撤回は事実上法的効果を失い、単なる知事選挙有権者向けの政治的パフォーマンスの意味しかないことになろう。現在、辺野古現場に集まる県民の数は減少傾向にあり、非暴力の県民が沖縄県の所轄の下にある県公安委員会が管理する県警の機動隊に暴力的に排除=ゴボー抜きされ、負傷させられて、多い時で一日300台を超える石材など建設資材満載のダンプトラックは辺野古ゲート前では1台さえも止められず基地内に入って、工事は進められている。

多くの県民、とりわけ辺野古現場で体を張って抵抗している県民の危機意識は強く、翁長県政への不信・怒りの声が地下水脈のように広がっている。高江現場における楽観論(「ヘリパット工事は政府の主張通りには進んでいない、政府が主張する2016年の年内完成は不可能」との主張)が結局、戦いの成果を強調したい者たちの希望的観測に基づく虚構でしかなかったように、移設する海底地盤の脆弱性や活断層の存在の問題等で工事はいずれ頓挫するとする工法・技術論に基づく楽観論は、安倍官邸の無法、悪辣さの前には解決不可能な建設技術はないとの悲観論へ視覚転換すべきものであると思う。新基地建設の現場工事の進行は早く、我々は、ポイント・オブ・ノーリターンの地点に限りなく近づいている危機的現実を率直に認めるべきだと思う。工事の引き返しがまだできるという論者は、辺野古現場に身を置かず、現場を知らず自己欺瞞の阿呆陀羅経を唱えているにすぎない。

結局、辺野古新基地工事が決定的な局面を迎えている現時点以降の県民投票は、「主権者としての働きかけが可能となる」というような呑気な民主主義一般論にすぎず、県民投票にかまけている5〜6か月以上の間に国に膨大な工事をさらに進めさせることを許し、仮に、県民投票の結果、建設反対の民意が明らかになっても、工事の既成事実の累積の一層の増大によってその後の撤回裁判においては、今すぐ民意以外の留保条項違反などの理由で撤回するよりもはるかに敗訴の確率が高くなる。沖縄の「民意」はすでに過去の数多の選挙で明らかになっており、過去の裁判で、安倍政権に忖度し操縦されている裁判所に一顧だにされなかったのに、今度の県民投票の民意だけが「裁判所に重視されるはずだ」とのたまう、「はずだ投票論者」の思考は根拠のない幻想に過ぎない。すでに私自身の論考(月刊誌「琉球」5月号)で明らかにしている多種、多数の撤回原因と「民意」を理由とする撤回原因は裁判上の効力に優劣はない。

翁長知事は、承認撤回を公約にしながら、だらだら撤回を先延ばし、2015年10月13日自らした承認取り消しを2016年12月26日に取り消して前知事の埋め立て承認を復活させ、港湾の使用許可を出し、一度は特別採捕許可をするなど「あらゆる手段で辺野古新基地建設を阻止する」という公言に矛盾する行政行為を重ねてきた。県民投票実施論はこのような翁長知事の公約違反を押し隠し、2014年11月の知事当選後すぐにでも可能だった承認撤回を引き延ばしてきた翁長知事の免責運動でもあると思う。翁長県政各与党が揃って県民投票に協力することを今頃になって明言するに至っているのも、辺野古阻止のためではなく、彼らの議員生命延命の党利党略の選挙運動に利用せんとする政治的策動にすぎないであろう。前知事の承認埋め立て後の全ての選挙、世論調査、意識調査で新基地建設反対が過半数をしめた沖縄の民意に変化はないのに、更に長い時間をかけて民意を問う県民投票論者たちの前提となっていると思われる、翁長県政の検証を抜きにした翁長知事再選戦略は、今年11月の知事選において、現時点では展望できないいかなる想定外の事態を生み出すであろうか。(6月16日記)


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(6月14日 乗松聡子撮影)