(Photo from Rykyu Shimpo)
日本語訳、琉球新報による報道、そして『ダイアモンド オンライン』誌による同氏のインタビュー記事は下方をご覧ください。 Japanese readers - see the Japanese translation of this LA Times article, Ryukyu Shimpo's report of the article, and an interview article of Johnson by "Diamond Online."
Another Battle of Okinawa 新たなる沖縄戦 (LA Times Op-ed, May 6)
Despite protests, the U.S. insists on going ahead with plans for a new military base on the island
Chalmers Johnson
The United States is on the verge of permanently damaging its alliance with Japan in a dispute over a military base in Okinawa. This island prefecture hosts three-quarters of all U.S. military facilities in Japan. Washington wants to build one more base there, in an ecologically sensitive area. The Okinawans vehemently oppose it, and tens of thousands gathered last month to protest the base. Tokyo is caught in the middle, and it looks as if Japan's prime minister has just caved in to the U.S. demands.
In the globe-girdling array of overseas military bases that the United States has acquired since World War II — more than 700 in 130 countries — few have a sadder history than those we planted in Okinawa.
In 1945, Japan was of course a defeated enemy and therefore given no say in where and how these bases would be distributed. On the main islands of Japan, we simply took over their military bases. But Okinawa was an independent kingdom until Japan annexed it in 1879, and the Japanese continue to regard it somewhat as the U.S. does Puerto Rico. The island was devastated in the last major battle in the Pacific, and the U.S. simply bulldozed the land it wanted, expropriated villagers or forcibly relocated them to Bolivia.
From 1950 to 1953, the American bases in Okinawa were used to fight the Korean War, and from the 1960s until 1973, they were used during the Vietnam War. Not only did they serve as supply depots and airfields, but the bases were where soldiers went for rest and recreation, creating a subculture of bars, prostitutes and racism. Around several bases fights between black and white American soldiers were so frequent and deadly that separate areas were developed to cater to the two groups.
The U.S. occupation of Japan ended with the peace treaty of 1952, but Okinawa remained a U.S. military colony until 1972. For 20 years, Okinawans were essentially stateless people, not entitled to either Japanese or U.S. passports or civil rights. Even after Japan regained sovereignty over Okinawa, the American military retained control over what occurs on its numerous bases and over Okinawan airspace.
Since 1972, the Japanese government and the American military have colluded in denying Okinawans much say over their future, but this has been slowly changing. In 1995, for example, there were huge demonstrations against the bases after two Marines and a sailor were charged with abducting and raping a 12-year-old girl. In 1996, the U.S. agreed that it would be willing to give back Futenma, which is entirely surrounded by the town of Ginowan, but only if the Japanese would build another base to replace it elsewhere on the island.
So was born the Nago option in 1996 (not formalized until 2006, in a U.S.-Japan agreement). Nago is a small fishing village in the northeastern part of Okinawa's main island and the site of a coral reef that is home to the dugong, an endangered marine mammal similar to Florida's manatee. In order to build a large U.S. Marine base there, a runway would have to be constructed on either pilings or landfill, killing the coral reef. Environmentalists have been protesting ever since, and in early 2010, Nago elected a mayor who ran on a platform of resisting any American base in his town.
Yukio Hatoyama, the Japanese prime minister who came to power in 2009, won partly on a platform that he would ask the United States to relinquish the Futenma Marine Corps Air Station and move its Marines entirely off the island. But on Tuesday, he visited Okinawa, bowed deeply and essentially asked its residents to suck it up.
I find Hatoyama's behavior craven and despicable, but I deplore even more the U.S. government's arrogance in forcing the Japanese to this deeply humiliating impasse. The U.S. has become obsessed with maintaining our empire of military bases, which we cannot afford and which an increasing number of so-called host countries no longer want. I would strongly suggest that the United States climb off its high horse, move the Futenma Marines back to a base in the United States (such as Camp Pendleton, near where I live) and thank the Okinawans for their 65 years of forbearance.
Chalmers Johnson is the author of several books, including "Blowback" and the forthcoming "Dismantling the Empire: America's Last, Best Hope."
Copyright © 2010, The Los Angeles Times
新たなる沖縄戦 (LAタイムズ 5月6日)
―数々の抗議行動にもかかわらず、米国は沖縄の新基地建設計画の実行を主張―
チャルマーズ・ジョンソン
様々な抗議にも関わらず、米国は沖縄における新基地建設計画を進めることを主張している。米国は沖縄の一つの基地をめぐる論争で、日本との同盟を決定的に損ないかねない瀬戸際にある。島々からなるこの沖縄県は、日本にある米軍施設全体の4分の3を抱えている。米国はその沖縄で、環境保護が必要な地域に新たな基地を建設したがっている。沖縄の人々は猛烈にそれに反対し、その基地計画に抗議するため先月(*4月25日)数万人が集まった。日本政府は板挟みとなっているが、どうやら日本の首相は米国の要求にちょうど屈したように見える。
米国は第二次大戦以来世界130ヶ国に700あまりの基地を作ってきたのだが、沖縄の基地ほど悲しい歴史を持つものはまれであろう。
1945年、日本は敗戦国だったため当然どこにどのように基地が配置されるかについて何の発言権もなかった。本州では我々(米国)は単に日本軍の基地を接収した。しかし沖縄は1879年に日本に併合されるまでは独立王国で、日本は今でも沖縄を、米国がプエルトリコを見るような目で捉えている。 沖縄は太平洋戦争中の大規模な戦闘で荒廃しており、米国はただ欲しいままに土地を整地し、村人達の土地を没収したり、強制的にボリビアへ移住させたりしたのだ。
沖縄の基地は1950年から53年まで朝鮮戦争のために使われ、1960年から73年まではベトナム戦争のために使われた。 沖縄の基地は軍用機の補給所や飛行場としてだけでなく、米軍兵が休養したり余暇を楽しむ場所としても利用され、バー、売春、人種差別などのサブカルチャーを生んでいった。 幾つかの基地周辺地域では黒人と白人の米軍兵同士によるひどい喧嘩が多発し、両グループを別々の地域に住み分けさせるようになった。
米国による日本占領は1952年のサンフランシスコ講和条約によって終わったが、沖縄は1972年まで米国の軍事植民地として残った。20年もの間、沖縄県民は実質上無国籍で,日米両国のパスポートも市民権も持てなかった。日本へ「復帰」した後でさえ、米軍は沖縄にあるおびただしい数の基地や沖縄空域の支配権を保持した。
1972年以来日本政府と米軍は、沖縄県民に自らの将来にかかわる決定権を与えずにきた点で共謀してきたが、この状況が変わりつつある。 例えば1995年に海兵隊員2人と船員1人が12才の女児を誘拐しレイプしたとして起訴されたが、これに対して大規模なデモが行われた。1996年、米国は宜野湾市に完全に囲まれている普天間基地を返還する事に積極的になると同意したが、しかし日本はその代わり沖縄県内に別の基地を建設しなければならないという条件付きであった。
そこで名護市への移設案が持ち上がった(これは2006年まで正式な日米合意とはならなかった)。名護は沖縄本島の北東にある小さな漁村である。サンゴ礁やジュゴンというフロリダのマナティーに似た、絶滅を心配される動物の生息する海がある。 米国海兵隊の基地を建設するということは、滑走路を造るためにマナティーの海が埋め立てられ、サンゴ礁は死滅するということである。 それ以来環境保護活動家が基地建設に反対し、今年初めの名護市長選では同市の米軍基地建設反対を訴えた候補が当選した。
昨年、鳩山由紀夫氏が日本の総理大臣となったが、彼の率いる民主党は普天間の返還と海兵隊員の沖縄からの完全な撤退を米国に求めるという公約によって選挙に勝ったようなものであった。しかし鳩山首相は今月4日、沖縄を訪れ、県民に対し深く頭を下げて米国の要求を呑むように頼んだのだ。
鳩山首相の態度は臆病で卑劣だと思うが、日本をこのような屈辱的な袋小路に追い込んだ米国政府の傲慢さの方が更に遺憾である。米国は軍事基地帝国の維持に取り憑かれているが、我々にはもはやそのような財源もないし、基地の「受け入れ国」の多くがますます反対の声を大きくしてきている。私が強く提案したいことは、米国がその高慢さを改め、普天間の海兵隊を米国本土の基地(私の家の近所にあるキャンプ・ペンドルトンなど)に戻し、沖縄の人々の65年間に及ぶ忍耐に対し礼を言うことである。
チャルマーズ・ジョンソン氏は「ブローバック:アメリカ帝国への報復」などの執筆者で、『Dismantling the Empire: America's Last, Best Hope』の刊行を予定している。
原文はここを参照。
5月9日の琉球新報でこの論説のことが報道された。
「普天間は米本土に」 ジョンソン氏“傲慢”と米紙で論評2010年5月9日
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-161805-storytopic-53.html
ジョンソン氏
【米ワシントン6日=与那嶺路代本紙特派員】6日付米ロサンゼルス・タイムズ紙の読者欄に、国際政治学者のチャルマーズ・ジョンソン日本政策研究所長(カリフォルニア在住)の寄稿文が掲載された。同氏は「新たな沖縄での闘い」と題し、米軍普天間飛行場移設問題について「米国は傲慢(ごうまん)ぶりをやめて、普天間を米本土に戻すべきだ」と強く訴えている。
ジョンソン氏は4日に鳩山由紀夫首相が沖縄訪問し、県外移設をあきらめると謝罪したことを紹介。「私は憶病な鳩山由紀夫首相よりも、傲(ごう)慢な米政府を非難する。基地を維持することに取り付かれ、受け入れ国のことを顧みない」と指摘し、「普天間の返還とともに、米国は沖縄の人々に対して65年間もの辛抱に感謝すべきだ」としている。
戦後沖縄が米軍の占領下となり、復帰後も米兵による事件・事故に苦しんでいることを説明。移設先に挙がる名護市辺野古の海にはサンゴ礁が広がり、ジュゴンの生息地となっていることや、1月の名護市長選で移設に反対する市長が誕生したことにも触れている。
普天間基地問題の決着期限が迫るなか、鳩山政権は辺野古沿岸につくる桟橋滑走路と、徳之島の既存の空港を併用する移設案を提案した。しかし、地元や米国側の同意を得られる見通しは立っておらず、日本国内は鳩山政権批判一色に染まっている。しかし批判するだけでは何も変わらない。そもそも同基地の代替施設の不要論は米国内にもある。東アジア研究の大家で、CIAの顧問を務めた経験もあるチャルマーズ・ジョンソン 元カリフォルニア大学政治学教授は、日本国内にはすでに十分すぎる米軍基地があり、日本国民は結束して普天間基地の無条件閉鎖を求めるべきだと提言する。
(聞き手/ジャーナリスト・矢部武)
Diamond Online http://diamond.jp/articles/-/8060 にもチャルマーズ・ジョンソンのインタビューが掲載されている。
チャルマーズ・ジョンソン
Chalmers Johnson
著名な国際政治・東アジア研究者。米国の覇権主義、軍事優先主義を厳しく批判した著書が多く、東アジアにおける米国の帝国主義的政策は必ず報復を受けると分析した”Blowback”(邦題「アメリカ帝国への報復」(2000年、集英社)はベストセラーに。カリフォルニア大学で政治学博士号を取得し、同大学で教授、政治学部長、中国研究センター所長などを歴任。その後、日本および環太平洋地域の国際関係を研究する民間シンクタンク“日本政策研究所”(JPRI)を設立。
撮影:雨宮和子/インフォネット
元CIA顧問の大物政治学者が緊急提言
「米軍に普天間基地の代替施設は必要ない!
日本は結束して無条件の閉鎖を求めよ」
独占インタビュー チャルマーズ・ジョンソン 日本政策研究所(JPRI)所長
―鳩山政権は普天間問題で窮地に立たされているが、これまでの日米両政府の対応をどう見るか。
まったく悲劇的だ。両政府は1995年の米兵少女暴行事件以来ずっと交渉を続けてきたが、いまだに解決していない。実を言えば、米国には普天間飛行場は必要なく、無条件で閉鎖すべきだ。在日米軍はすでに嘉手納、岩国、横須賀など広大な基地を多く持ち、これで十分である。
そもそもこの問題は少女暴行事件の後、日本の橋本首相(当時)がクリントン大統領(当時)に「普天間基地をなんとかしてほしい」ということで始まった。この時、橋本首相は普天間飛行場の移設ではなく、無条件の基地閉鎖を求めるべきだったと思う。
―普天間を閉鎖し、代替施設もつくらないとすれば海兵隊ヘリ部隊の訓練はどうするのか。
それは余った広大な敷地をもつ嘉手納基地でもできるし、あるいは米国内の施設で行うことも可能だ。少なくとも地元住民の強い反対を押し切ってまでして代替施設をつくる必要はない。このような傲慢さが世界で嫌われる原因になっていることを米国は認識すべきである。
沖縄では少女暴行事件の後も米兵による犯罪が繰り返されているが、米国はこの問題に本気で取り組もうとしていない。日本の政府や国民はなぜそれを容認し、米国側に寛大な態度を取り続けているのか理解できない。おそらく日本にとってもそれが最も簡単な方法だと考えているからであろう。
フランスならば
暴動が起きている
―岡田外相は嘉手納統合案を提案したが、米国側は軍事運用上の問題を理由に拒否した。
米軍制服組のトップは当然そう答えるだろう。しかし、普天間基地が長い間存在している最大の理由は米軍の内輪の事情、つまり普天間の海兵隊航空団と嘉手納の空軍航空団の縄張り争いだ。すべては米国の膨大な防衛予算を正当化し、軍需産業に利益をもたらすためなのだ。
米軍基地は世界中に存在するが、こういう状況を容認しているのは日本だけであろう。もし他国で、たとえばフランスなどで米国が同じことをしたら、暴動が起こるだろう。日本は常に受身的で日米間に波風を立てることを恐れ、基地問題でも積極的に発言しようとしない。民主党政権下で、米国に対して強く言えるようになることを期待する。
―海外の米軍基地は縮小されているのか。
残念ながら、その動きはない。米国は世界800カ所に軍事基地を持つが、こんなに必要ない。世界のパワーバランス(勢力均衡)を維持するためなら、せいぜい35~40の基地で十分だ。米国政府は巨額の財政赤字を抱え、世界中に不必要な軍事基地を維持する余裕はないはずだ。
―日本では中国や北朝鮮の脅威が高まっているが。
日本にはすでに十分すぎる米軍基地があり、他国から攻撃を受ける恐れはない。もし中国が日本を攻撃すれば、それは中国にこれ以上ない悲劇的結果をもたらすだろう。中国に関するあらゆる情報を分析すれば、中国は自ら戦争を起こす意思はないことがわかる。中国の脅威などは存在しない。それは国防総省や軍関係者などが年間1兆ドル以上の安全保障関連予算を正当化するために作り出したプロパガンダである。過去60年間をみても、中国の脅威などは現実に存在しなかった。
北朝鮮は攻撃の意思はあるかもしれないが、それは「自殺行為」になることもわかっていると思うので、懸念の必要はない。確かに北朝鮮の戦闘的で挑発的な行動がよく報道されるが、これはメディアが冷戦時代の古い発想から抜け出せずにうまく利用されている側面もある。
―米軍再編計画では普天間の辺野古移設と海兵隊のグアム移転がセットになっているが、辺野古に移設しない場合、グアム移転はどうなるのか?
米国政府はグアム住民の生活や環境などへの影響を十分に調査せず、海兵隊の移転計画を発表した。そのため、グアムの住民はいま暴動を起こしかねないぐらい怒っている。グアムには8千人の海兵隊とその家族を受け入れる能力はなく、最初から実行可能な計画ではなかったのだ。
―それでは米国政府が「普天間を移設できなければ議会が海兵隊のグアム移転の予算を執行できない」と強く迫っていたのは何だったのか。
自らの目的を遂げるために相手国に強く迫ったり、脅したりするのは米国の常套手段である。
―海兵隊をグアムに移転できない場合、米国政府はどうするか。
おそらく米国内に移転することになろう。それでも海兵隊部隊の運用上、問題はないはずだ。
―日本では普天間問題で日米関係が悪化しているとして鳩山政権の支持率が急降下しているが。
普天間問題で日米関係がぎくしゃくするのはまったく問題ではない。日本政府はどんどん主張して、米国政府をもっと困らせるべきだ。これまで日本は米国に対して何も言わず、従順すぎた。日本政府は米国の軍需産業のためではなく、沖縄の住民を守るために主張すべきなのだ。
日本人が結束して主張すれば
米国政府も飲まざるを得ない
―米軍基地の大半が沖縄に集中している状況をどう見るか。
歴史的に沖縄住民は本土の人々からずっと差別され、今も続いている。それは、米軍基地の負担を沖縄に押しつけて済まそうとする日本の政府や国民の態度と無関係ではないのではないか。同じ日本人である沖縄住民が米軍からひどい扱いを受けているのに他の日本人はなぜ立ち上がろうとしないのか、私には理解できない。もし日本国民が結束して米国側に強く主張すれば、米国政府はそれを飲まざるを得ないだろう。
―今年は日米安保50周年だが。
日本にはすでに世界最大の米海軍基地(横須賀)があり、各地に空軍基地も存在する。これ以上の基地は必要ない。東アジアのどの国も日本を攻撃しようなどとは考えないだろう。日本政府は巨額の「思いやり予算」を負担している。自国の外交・防衛費をすべて負担できない米国のために、日本が同情して払っているのだ。
―普天間問題を解決できなければ両政府がどんなに同盟の深化を強調してもあまり意味がない、との指摘もあるが。
それは米国が軍事力優先の外交を展開しようとしているからである。一般の米国人は日本を守るために米国がどんな軍事力を持つべきかなどほとんど関心がないし、そもそも米国がなぜ日本を守らなければならないのか疑問に思っている。世界で2番目に豊かな国がなぜこれほど米国に頼らなければならないのか理解できない。それは日本人があまりに米国に従順で、イージーゴーイング(困難を避けて安易な方法を取る)だからではないか。
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