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Sunday, March 06, 2011

Yoshida Kensei: Yanbaru Forest for a World Heritage Site 吉田健正「やんばるの森を世界自然遺産に」

Okinawan journalist Yoshida Kensei's essay for Peace Philosophy Centre calls for Yanbaru Forest, Okinawa to be designated as a World Heritage site. US and Japanese governments are planning to build six helipads, reportedly including V-22 Osprey capable pads in the neighbourhood of Takae Village in the northwestern part of the main island of Okinawa, despite local residents' opposition. Yoshida proposes a variety of ways to preserve and utilize Yanbaru Forest for sustainable development, such as a research centre for clean water securement, utilization of herbs, biotechnology, an ecological museum, a rest & relaxation place for the elderly and families, a place for nature study, and forest and marine sports.

Yoshida Kensei, former professor of International Relations at Obirin University, is author of Democracy Betrayed: Okinawa Under U.S. Occupation.



Yanbaru Forest in Northern Okinawa (Photo by Shimoji Yoshio)


 
やんばるの森を世界自然遺産に


吉田健正

米軍がやんばるの森に広がる北部訓練場のおよそ半分を返還する代わりに、残った訓練場内に6つの軍事ヘリパッドを新設する計画が進んでいる。普天間の代替基地として合意されている辺野古の新航空基地にはヘリコプターと飛行機の機能をつなぎあわせた、離着陸時の轟音・突風・墜落で知られる兵士輸送機オスプレイV-22の配備計画が確実視されており、ヘリパッドも嘉手納空軍基地や辺野古基地、沿岸の艦船と直結することが容易に推定できる。

この地域で、米軍は歩兵演習、ヘリコプター演習、耐久訓練、負傷者救出・輸送訓練などを行ってきた。しかし一帯は、軍事基地より、はるかに自然公園に向いている。生物多様性に詳しい桜井国俊元沖縄大学学長の言葉を借りれば、沖縄は「東洋のガラパゴス」と呼ばれるほど、やんばるの森、辺野古・大浦湾の海域、泡瀬干潟を中心に、生物種に富む。やんばるには、沖縄本島中南部の住民に貴重な飲料水を提供するダムも多い。世界自然保護基金ジャパン(WWWジャパン)も、やんばるの森を「地球上でここだけに生息するノグチゲラ,ヤンバルクイナなど,数多くの固有種,固有亜種,絶滅のおそれのある種の重要な生息地」になっているとして、「優先的に保護すべき地球上の重要な自然環境のひとつ」に位置づけ、ヘリパッド建設の中止を求めている。

北部訓練場は、総面積約7,500ヘクタール、沖縄県最大の基地だ。南側には名護市の辺野古岳一帯から辺野古湾にかけてキャンプ・シュワブ、その南には名護市、宜野座村、恩納村、金武町にかけてキャンプ・ハンセンが広がる。上空もほぼ米軍の空域だ。

北部訓練場は、1996年12月の「沖縄に関する特別行動委員会(SACO)」の最終合意意により、半分以上の約3,987ヘクタールの返還が決まった。しかし、それには、次の2つの条件がついていた。

① 訓練場の残余の部分から海への出入を確保するため、……土地(約38ヘクタール)及び水域(約121ヘクタール)を提供する。

② ヘリコプター着陸帯を、返還される区域から北部訓練場の残余の部分に移設する。

北部演習場の約半分を返還する代わりに、ヘリパッド、沿岸へのアクセス・ロード、水域を確保して、辺野古弾薬庫のあるキャンプ・ハンセン、キャンプ・シュワブ、日米間で新たに建設が合意されている辺野古航空隊基地につながる一帯を軍事利用しようという計画である。

病院や消防署、学校などに設置されているⒽ印のついたヘリパッドは救援・救助用着陸帯だが、キャンプ・ハンセンに39か所(金武町調査)、北部演習場に22もあるというヘリパッドは兵員輸送や落下傘降下訓練などのための軍事用である。

新たに、国頭村に4か所、東村高江周辺に2か所、計6つが建設されるというヘリパッドには、主翼の両端につけたエンジン格納円筒とローター(プロペラ)を上に向けて垂直に離陸したあと、それを前に傾けて(ティルト)通常の飛行機のように飛び、再び上に向けて着陸するオスプレイ(V-22)用の着陸ゾーンも計画されているという。離着陸時の騒音や爆風がひどい上、試作機の墜落が相次ぎ、海兵隊員を中心にすでに30数人ものパイロットと乗組員の命を奪った、あの新型戦闘員輸送機である。昨年4月には、米空軍がアフガニスタンで実戦投入したオスプレイが、エンジントラブルが原因と見られる墜落事故で、兵士3人と軍事契約業者1人が死亡、16人が負傷している。ヘリコプターだとエンジントラブルが起きてもプロペラが自動回転するため軟着陸できるが、オスプレイの場合はそのような軟着陸ができないため、両翼のいずれか接地し、あるいは機体が制御不能になって墜落して分解することが多くの墜落事故の原因になっているようだ。兵員以外に、装備品を積むと、重量が増して離着陸に失敗するケースもある。

海軍(海兵隊)を中心に、ベトナム戦争時代の中型戦闘員輸送機CH-46の後続機として1980年代初めから開発に力を入れてきたが、ヘリと比べて価格が5倍も高い上に、戦場で離着陸して飛ぶには危険が多く、「完成品」とは言いがたい。開発計画も、ウソの調査報告や証言(V-22スキャンダル)に毒されてきた。格納庫に隠されたままの欠陥機も多いという。

米海兵隊は、2012年10月にミラマー基地(カリフォルニア州サンディエゴ)の第561中型ティルトローター中隊、13年4月に第562中隊(計24機)を普天間に配備し、普天間飛行場に配備中のヘリ2個中隊を順次ミラマー基地に移すと発表している(「沖縄タイムス」、2010年10月1日)。

日本政府は、「普天間代替航空基地」の建設が合意されている辺野古を含むやんばるの住民にとって騒音迷惑と危険性が高い上に、自然を破壊する恐れがあり、中南部の住民にとって必須の水源地を破壊する可能性が高いオスプレイ配備には、はっきり「ノー」をつきつけるべきである。

仲井真知事は、海兵隊のV-22沖縄配備計画について、「もし本当だとすると反対だ。特にオスプレイは危険な機種というイメージが非常に強い。騒音が低くなるとも思えない」と述べ、「馬鹿げている」と不快感をあらわにした(「沖縄タイムス」)。

米国がv-22の「実験・訓練場」として、米軍基地の災難に苦しめられ続けてきた沖縄に”V-22 disaster”をもたらすのを防ぐためにも、やんばるの森の世界自然遺産の登録は不可欠だ。

那覇防衛施設局の「環境影響評価図書(2006年)」によれば、ヘリパッド建設予定地とその周辺では、「植物で12種、動物で11種の固有種・固有亜種、177種(環境省)~188種(沖縄県)の絶滅のおそれのある種を含む4,000種以上の野生生物」が記録されているという。「これは、世界自然遺産の選定基準のひとつである「世界的な価値の絶滅のおそれのある種を含む生物多様性の保存のための重要な自然の棲み場所がある地域」という項目を十分に満たしている」(世界自然保護基金ジャパン)というから、県と国は、ただちにユネスコに世界自然遺産登録を申請すべきだろう。

日本は、1992年、ナイロビ(ケニア)で採択された国連の「生物の多様性に関する条約(生物多様性条約」に米国を含む他の167国とともにただちに署名した。外務省によれば、「人類は、地球生態系の一員として他の生物と共存しており、また、生物を食糧、医療、科学等に幅広く利用している。近年、野生生物の種の絶滅が過去にない速度で進行し、その原因となっている生物の生息環境の悪化及び生態系の破壊に対する懸念が深刻なものとなってきた」。そこで、「①生物の多様性の保全、②生物多様性の構成要素の持続可能な利用、③遺伝資源の利用から生ずる利益の公正で衡平な配分」を目的とする本条約が締結されたのだという。昨年10月に、第10回締結国会議(COP=コップ10)が名古屋で開催されたことは記憶に新しい。

生物多様性条約の当初締結国で、人類にとっての生態系破壊を懸念する日本は、当然ながら、自然を破壊する米軍基地を維持・増設するのではなく、国をあげてやんばるの森や辺野古・大浦湾海域などの保全に取り組み、国定自然公園→世界自然遺産登録への手続きを開始すべきであろう。

やんばるが世界自然遺産に登録され、そこを浄水確保、薬草活用、バイオテクノロジー研究、生態系博物館、老人や家族向けの憩いの里、自然学習教室、山地スポーツや海洋スポーツなどに活用して循環型の地域振興に役立つようにすれば、軍事基地の島は沖縄の自然、観光、生活だけでなく、人類の平和と未来のためにも大いに貢献するはずだ。

琉球王朝時代の名残をとどめる斎場御嶽から久高島の一帯、戦跡や平和祈念公園、島々の蒼い海と珊瑚礁と白浜も、あわせて国定公園や世界遺産の指定を受け、「やんばる基金」のようなものができれば、基地のない、自然豊かな平和と癒しと観光の県になる。そうした運動が、県内だけでなく、世界のウチナンチュ、日本本土、近隣諸国、自然破壊を懸念する世界の人々の間でも起こることを期待している。

吉田健正
1941年、沖縄県に生まれる。ミズーリ大学と同大学院でジャーナリズムを専攻。沖縄タイムス、AP通信東京支社、ニューズウィーク東京支局、在日カナダ大使館を経て、桜美林大学国際学部教授。2006年に退職後、沖縄に帰郷した。近著は『「戦争依存国家」アメリカと日本』(高文研 2010年)

吉田健正さんのこのサイトでの過去の記事についてはこちらをご覧ください。

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