(4月13日追記)
小出さんがいろいろなメディアに出て話している内容やリンクをまとめるブログを見つけました。大変役に立ちます→小出裕章(京大助教)非公式まとめ http://hiroakikoide.wordpress.com/
(4月10日追記)
岩上さんによる小出さんの最新インタビューを追加します。(ジャーナリスト岩上安身さんは、東奔西走し、福島原発問題で主要メディアには出てこない貴重な報道をしてきています。企業利益にしばられる政治な大手メディアに比べ、代替メディアこそが市民の声を代弁し民主主義を実現します。代替メディアは市民が経済的に支えなければ成り立ちません。岩上さんのような優秀な独立ジャーナリストを支持したいです。カンパはこちら。)
京都大学原子炉実験所 小出裕章氏に聞く
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京大原子炉実験所 小出裕章氏インタビューの録画(3/31) (ジャーナリスト岩上安身氏によるもの。)
anatakara.com さんが要点を聞き起こしてくれました。ビデオリンクの下をご覧ください。大事と思うところを太字にしてあります。そこだけ抜粋すると、
「何より大切なことは電源復旧。ところが水没しているポンプが動かない。それを動かそうとした作業員が現場に行けない程の膨大な放射能。それを外に出さなければポンプも動かせない。もう、どんなことをしてもだめ。なぜかといえば、実は原子炉圧力容器自体が破損している。(根拠は)今ポンプ車を使って水を大量に入れているのに、水位がまったく増えない。1,2,3号機とも燃料棒が常に露出しているというデータがある。それは圧力容器に穴があるから。それを東電は「圧力容器の下部に穴があいたイメージだ」という。いずれにしても、圧力容器に穴があいている。いくらポンプが動いても漏れるだけで水をいれても正常な水位にならない。今は動いていないが、今後たとえポンプをいくら動かしてもだめ。冷却のシステムは使えない。一次系も(原子炉に水を入れる冷却システム)もだめ、二次系(ポンプ)でも、水位はあがらないということ。冷却ができない、ということに気がついたのは、昨日か一昨日。電源がきても正常な冷却はできない。どうしてもだめ。ほかに解釈のしようがない。だから外部から海水でも何でも送って冷やすしかない。外部から水を送れば、格納容器の破損箇所から放射能まじりの水が放出されていく。それがトレンチなどに溜まる。しかし今後もそれをやり続けるしかない。」
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’68年に東北大学工学部原子科工学科に入学。原子力発電をどうしてもやりたいと思ってその学科を選んだ。宮城県仙台市。当時女川町に原発建設の動き。原発はすばらしいと思っていたので、宮城で一番電気を使う仙台市に建てればいいと思っていたら、東北電力は70km離れた女川に。それに疑問を持ち、その答えを探し求めた。そして原発は都会にはつくれない危険なもの、だから過疎地から送電線を引くのだということが分かった。それは自分の生き方には相容れないもの。それで180℃、態度を変えたのが1970年の秋。その頃敦賀、美浜ができた。
76年から京大で、原子力というのはどのような危険を内包しているのかを明らかにする仕事をしてきた。原子炉実験所は原発推進とはまったく違う。中性子利用を考えるための道具としての原子炉を作った。原子炉そのものは目的ではなくて、道具で、それを使って自分たちが実験をする。この実験所にいる200名のうち80名が教員、それも物理学、化学、生物学、医学などで、原子力を知らない人が多い。自分は原子力を廃止したいと思って研究している。
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原子力発電はウランを燃やす、すると必ず核分裂生成物(放射性物質=死の灰)ができる。原発をやれば、沢山の放射性核種、膨大な放射能を生み出す。広島のときはウランの重量は800g。原発では中規模の100万Kwのもので1日3kgのウランを燃やす。一日で広島の3倍~4倍。1年稼働させれば広島原爆の1000発分を、原子炉内にため込む。それが毎日でも環境にでれば大変だと、(関係者は)みんな知っていたので、だからこそ都会には建てない。日本にある54基は、大小があるが、基本的に大体100万Kw。この全国の原発の合計が生むのは、毎年毎年、広島に落ちた原発のほぼ5万発(正確には4800発)分。1966年に東海が稼働し始めて45年。その45年間に生んだ核分裂生成物は広島原発の120万発分。
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原子炉はウランを核分裂させてエネルギーをとりだす。100万Kwの原発とは、電気になる分だけ。炉心の中には300Kwの熱があり、その3分の1が電気になるだけで、残りは海に捨てるしかない、つまり海を暖めるだけの、実に非効率な装置。200年前にG.ワットが蒸気機関を発明した当時のまま、今でもそれを使っていて、熱効率は3分の1。66%は捨てるしかない。1秒間に70トンの海水を引き込んでその海水を暖めて海に戻す。海水の温度を7℃上げる。荒川や多摩川は1秒間に30~40トン。関西一の淀川は1秒間に150トンの流量。1秒間に70トンを超える大河は日本全国で30くらい。いつも入る風呂の温度を7℃上げた場合を考えてみればわかるが、そのような風呂には決して入れない。海の生き物は普通には生きられない。暖かいのが好きな生き物が新たに来るかもしれないが、少なくとも生態系は破壊される。世界平均の海水温度の上昇度にくらべると日本近海は何倍も温度があがっている。厳密な立証はない。今日の原発が一年間に出す温排水は.....(...テープが途中で切れる)
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54基の日本の原発が1年間でどれくらい温排水をだすことか。放射性物質はあらゆる意味で人体に危険。環境や人体に影響がないというのは一切誤り。ただし、先日検出されたプルトニウムは大変少ない。今現在あまりにも膨大な量の放射性物質がでているので、プルトニウムが出たとしても、比較の問題としては大変な量ではない。ただ、プルトニウムが出たというのは、原子炉のウラン(燃料ペレット)の成分が溶けた、と言う証拠。その意味では大変なこと。心配しているのは、原子炉(炉心)が溶け落ちること。今溶けているのはごく一部。大量に溶けると固まりになってメルトダウンという状況になり、最悪の場合で水蒸気爆発をする。そうすると圧力容器が破壊され、比較的ぺらぺらな格納容器も壊れる。そうすると放射能を閉じ込めるすべての防壁がこわれ、今の放出にくらべて桁違いの放出となり破局的事態となる。そこには何としても行かしたくない。
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東電などの関係者は理解している。「溶けている」と認めているが、それが大変とは彼らは言わない。彼らは「損傷」というが、それは「溶けている」のとは違う。今はウランの燃料ペレットが溶けている。(ペレットが損傷しているのとは違う)。本当は「炉心が溶けている」。
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地震と津波によりすべての電源が断たれた。東電は電源車を何十台も持ってきたが、発電所内の系統への接続箇所が水没していたため、次ぎに消防のポンプ車を連れてきて、そこから原子炉に水を送ろうとして、海水を入れた。何より大切なことは電源復旧。ところが水没しているポンプが動かない。それを動かそうとした作業員が現場に行けない程の膨大な放射能。それを外に出さなければポンプも動かせない。もう、どんなことをしてもだめ。なぜかといえば、実は原子炉圧力容器自体が破損している。(根拠は)今ポンプ車を使って水を大量に入れているのに、水位がまったく増えない。1,2,3号機とも燃料棒が常に露出しているというデータがある。それは圧力容器に穴があるから。それを東電は「圧力容器の下部に穴があいたイメージだ」という。いずれにしても、圧力容器に穴があいている。いくらポンプが動いても漏れるだけで水をいれても正常な水位にならない。今は動いていないが、今後たとえポンプをいくら動かしてもだめ。冷却のシステムは使えない。一次系も(原子炉に水を入れる冷却システム)もだめ、二次系(ポンプ)でも、水位はあがらないということ。冷却ができない、ということに気がついたのは、昨日か一昨日。電源がきても正常な冷却はできない。どうしてもだめ。ほかに解釈のしようがない。だから外部から海水でも何でも送って冷やすしかない。外部から水を送れば、格納容器の破損箇所から放射能まじりの水が放出されていく。
それがトレンチなどに溜まる。しかし今後もそれをやり続けるしかない。
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環境に出るがままになる。言葉を失う。今の状態が続くのであれば、これから何ヶ月もこのまま続く。
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揮発性のヨウ素やセシウムは、原子炉の全体のうちで、まだ今までで数%しかでていない。水蒸気爆発とかが起こると一気に数十パーセントが放出される。
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これまでは数パーセント流れ出た。期間が長くなれば数十~100パーセントに近づいていく。揮発性でないプルトニウムなどは、今のところ燃料ペレットの中にあるので。水を入れ続ければ冷やすことができ、そういう重い放射性核種の大量放出は避けられる。
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ペレットが溶けたのは確かだが、どの号機から出たのかわからない。突き止めることもできない。もっと溶けると水蒸気爆発を伴う破局になるので、それは何とかしても避けねばならない。仮に水蒸気爆発が起こらなくても、長期にわたり冷却しつづけなければならない。正常な冷却回路は復帰できない。水を入れて冷やし続け、入れた分は捨てねばならない。それがもし可能ならば、プルトニウムを含めた、揮発性でないものを何とか閉じ込めることができるかもしれない。月とか年の単位の作業。
崩壊熱とはそこに存在する放射性物質そのものがだすもの。何百種類もあり寿命に長短がある。原子炉を止めても7%の放出はとめられないが、それでも止めたその時に短いものは極端に減っていく。ある程度減ると減らなくなるが、また1年経つと減り始める。だからある程度経てば燃料ペレットが溶けなくなるかも知れない、それは形状による。いつまで冷やせばいい、とかは言えない。外界に水が流れ出るのを防ぐ手立てはない。
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タービン建屋でも大変な放射線量だから、格納容器に近づくことは何ヶ月という単位でできない。ロボットというのは決まった仕事をやるものだから、今回のような想定外の事故による進行状況では多分何の役にも立たないだろう。
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1986年のチェルノブイリのときには原子炉が爆発。プルトニウムを含めた.揮発性でない放射性核種も多く出たが重いものは遠くまでは飛ばず、揮発性のものが世界を汚染した(地球被ばく)。政府は周辺30kmの住民を避難させたが、その後数ヶ月たって200km、300kmの地域で濃密な汚染がわかり、20数万人を避難。それは放射能が風に乗ってながれ、その地域で雨が降ったための汚染。合計で40万人が避難したが、そのうちにソ連が崩壊。汚染はその地帯にとどまらず米国にも日本にも届いた。チェルノブイリの発電所から700km先まで、あるレベル以上の汚染。その「あるレベル」とは、日本の法律に照らすと「放射線の管理区域」(専門家がどうしても仕事上入らないときにだけ入る区域で、そこに入ると、飲食はだめ、タバコを吸えない、そこで寝ることはできない、子供は連れ込めない、妊娠可能性のある女性は医者と相談が必要)に指定される区域。ソ連が崩壊しているため、避難させる国力がなく、いまだにその地域の人たちはそこで生活しているだけ。
その区域の面積は、日本の法律上の管理区域となるような危険地域だけで145,000平方Km、本州の6割。放射状ではないが、危険地域だけでその範囲。同心円ではなく、風向きで決まる。
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日本ではダメージは吸収しきれず、国家体制が破綻する。何十、何百兆円払ってもあがなえきれない。この状態が続けば、揮発性のものがだらだら出続ける(チェルノブイリのときは30%)。そうれば、チェルノブイリと同じだけ出てしまうだろう、そうするとチェルノブイリと同じくらいの汚染区域となるだろう。
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日本はスピーディ(SPEEDI)をもっていて事故発生時から観測しているが、それを公表しなかった、パニックを煽るだけと。本当は時々刻々そうしなければならないのに。日本原子力研究機構が出していない。いま情報をださなくて何なのだろう。
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日本の政府が恐れているのは、住民被ばくではなく、パニック。私はパニックをおさえるには唯一の方策として情報を公開すべし、というもの。日本の政府はよらしむべし、知らしむべからずという、従来のやり方が今もある。
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(Q: 放射能の危険性について書いたアエラが謝罪させられた。この状況をどう思いますか?)
大変危険な状況と思います。「原子力」と「核」は違うものと人々は思い込まされているが、本当は同じもの。日本の国が原子力を推進してきた、その根本に核開発、核兵器所有の希望があったことはNHKの番組でもあった(「核を追い求めた日本」)。 原子力では事故が起こるが、その恐怖を超えて、さらに政治的に社会的に、そういう問題が根底にあり、今後、自民と民主の大連立になったときに、ますます強化の方向に向かうと思われるし、危険な時代に滑り落ちていくことになるのだろうと思われる。
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(Q:我々はどれくらい避難すればよいのですか?)
日本という国から見ると、海に囲まれ偏西風があるため、大抵の核種は太平洋に流れる。トレンチというものは、放出する構造であるから、膨大なものがトレンチから海に流れる。日本人は海は広いから薄まると考えるが、薄まるということは汚染を広げることで、原子力から何の恩恵もなかった国にまで、世界に汚染を広げること。程度がどれくらいかというのは、今は予測不可能。(終)
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小出さんの言っていることは本当だろうと思います。私自身
ReplyDeleteは、最初のころから、水を入れても水位が上がらないというのは、
炉が損傷して水がもれているものと思っていたし、あんなにジャー
ジャー水をかければ、水に放射性物質がまぎれこんで、環境に拡散
するだろうなどは、予想されることでした。残念ながら、作業員の
必死の作業で、なるべく大事にならないように祈るのみです。そし
て、なるようにしかならないだろうと、思っていて、そちらに力を
入れるのではなく、今後どうするかに焦点を当てています。
あなたが現状と行く末を非常に熱心にfollowしてくれてい
るのを、非常に貴重なことだと思っています。私は、あなたのやっ
ていることで、現状にアップデイトでいられるのを感謝していま
す。このあいだ見たChernobylのその後の様子、あれに近いこ
とが残念ながら日本でも起るのだと思います。なんでこんなに弱い
立場の人間が、病気や寿命の短縮といった大変な被害、農家は作物
が売れなくて苦労したり、などなどと様々な被害を受けなければな
らないのだー腹がたちます。私は、そうした問題の大元がどこにあ
るのかを、いつも考えてしまうのです。それは、やはり、現在の文
明・経済、政治などのあり方に行き着く。