『週刊金曜日』7月8日号に掲載された、クリス・バズビー博士インタビュー記事「米国まで広がったプルトニウム」を紹介します。『金曜日』編集部の成澤宗男さんと、当ブログ管理人の乗松聡子が共同で行い、まとめたインタビューです。この記事の英語版「フクシマはチェルノブイリよりも深刻だ-地球汚染について」は『アジア太平洋ジャーナル・ジャパンフォーカス』 The Asia-Pacific Journal: Japan Focus に発表されました。(7月20日追記。ゼット・ネット Z-net にも転載されました。)(7月24日追記。この英語記事の導入文の、Michiko さんによる和訳を下方に追加掲載します。また、クリス・バズビーさんのこの記事でのガン予測のもとになっている3月30日の論文の全和訳をこの投稿で発表しています。)
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以下、『アジア太平洋ジャーナル:ジャパンフォーカス』に掲載されたこのインタビューの導入文の和訳を掲載します。(翻訳: Michiko)
はじめに
化学物理学者のクリス・バズビー氏は、日本政府が福島第一原発事故被害者の放射線許容量を決める際に使ったICRP(国際放射線防護委員会)の放射線リスクモデルを批判する科学者たちの最先頭に立つ。欧州放射線リスク委員会(ECRR) 科学事務局長であるバズビー氏によれば、ICRPモデルの問題点は次のことにある。ICRPモデルはあらゆる被曝の仕方を同じように、あたかも外部被曝であるかのように扱う。そうして求めた被曝線量に、広島・長崎の原爆生存者が受けた急性の大量外部被曝量を基にして決めたリスク因子を掛け合わせる。このように、ICRPモデルは、体内に入ったある種の放射性核種が、細胞内の決定的な標的(critical targets)、特に細胞のDNAに非常に高い放射線量を浴びせる可能性が幾通りもあるということを考慮に入れていない。その可能性のひとつが、 「鼻や口から体内に入ったホット・パーティクル」によるもので、「それは非常に微小な粒子で、細胞組織の中に入りこんでその細胞に多量の放射線を浴びせることもありうる。」 その結果、内部被曝は、ICRPモデルによる推定より千倍近く危険である可能性がある。内部被曝も勘案するECRRモデルを使ったバズビー氏の試算によると、福岡第一の100キロメートル圏内に住む330万人が一年間留まると仮定して、50年以内に約20万の超過ガンが発生するだろう。そして、そのうちの半数は10年以内に発症するだろう。さらに、バズビー氏の試算では、100キロから200キロ圏内に住む790万人のうち、50年以内に22万以上の超過ガンが発生し、そのうち半数がこれも10年以内にガンと診断されるだろうとしている。これに比べ、ICRPモデルでは、100キロメートル圏内では2,838(人)のがん(患者)が増えると推定する。「結果としての実際のガン患者数が、二つのリスクモデルのどちらが正しいかのひとつのテストになる」と、バズビー氏は主張し、チェルノブイリについての多くの研究がICRPモデルの予測よりずっと多いがん発症数を示していると指摘する。
さらに、チェルノブイリ事故の影響は半径200キロ圏にとどまらない。日本では、福島第一の近くで「微量のプルトニウム」が検出されたという報告がある。これは驚くにあたらない。なぜなら、3.11の地震と津波の後、米国環境庁が、ハワイ、グアム、アラスカ、そして西海岸で尋常でない量のプルトニウムとウラニウムを検出したからだ。CTBTO(包括的核実験禁止条約機関)によると、福島事故の2週間以内に放射性物質が北半球全体に拡散され、4月半ばまでには南半球にまで達した。日本のメディアがこの問題について沈黙を守るなか、『週間金曜日』は地球規模の放射線汚染についてクリス・バズビー氏にインタビューを行った。以下は、そのインタビューの英語のテキスト全文である。同時に、日本語版が『週間金曜日』(7月8日号)に掲載された。
乗松聡子
英語原文は:
"Fukushima is Worse Than Chenobyl - on Global Contamination" Interview by Norimatsu Satoko and Narusawa Muneo
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