沖縄についての「誤解」-沖縄県「地域安全政策課」主任研究員の米国シンクタンク寄稿文について
2012年4月17日
ガバン・マコーマック 乗松聡子
新設された沖縄県地域安全政策課の吉川由紀枝主任研究員による、米国の戦略国際問題研究所(CSIS)への寄稿文(2012年4月5日付)について以下の報道がされている。
県研究員が県経済の基地依存否定(沖縄タイムス)http://www.okinawatimes.co.jp/article/2012-04-11_32333/
県「統合案支持ではない」三連協に説明(沖縄タイムス)
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-189809-storytopic-3.html
原文のリンクはここである。
Misunderstandings on the US Military Bases in Okinawa http://csis.org/files/publication/pac1224A.pdf
報道では嘉手納統合案に焦点が当たっているようだが、この論文には議論すべき重要な論点が他にもある。沖縄や日本の人々の目に触れることは大事であると信じ、以下に翻訳し、我々のコメントを後に記した。この投稿の理由は、この地域安全政策課が目指している、闊達な議論を促すという目的を共有するからである。コメントを歓迎する。
原文のリンクはここである。
Misunderstandings on the US Military Bases in Okinawa http://csis.org/files/publication/pac1224A.pdf
報道では嘉手納統合案に焦点が当たっているようだが、この論文には議論すべき重要な論点が他にもある。沖縄や日本の人々の目に触れることは大事であると信じ、以下に翻訳し、我々のコメントを後に記した。この投稿の理由は、この地域安全政策課が目指している、闊達な議論を促すという目的を共有するからである。コメントを歓迎する。
沖縄米軍基地についての誤解
吉川由紀枝
吉川由紀枝
海兵隊普天間飛行場の移設問題は、日米間の長期間にわたる論争の種となってきた。関係者全員-米国、日本、沖縄-が、普天間は(住宅地に隣接しているため)危険であると合意し、事故リスクの除去と地元における米軍フットプリントの減少(負担軽減)という目的を共有し、日米同盟を強く尊重している中、この状況は特異なものである。二つの中央政府の大変な努力にもかかわらず、この問題はほとんど20年間も解決されない状態が続いている。
我々は、誤解のこじれを解き、意志疎通の不足を解決し、この問題を終わらせる必要がある。この問題については沖縄からの視点がほとんど語られていない。そこで、ここで沖縄についてのよくある誤解3点について述べ、沖縄が本当に何を欲しているのかを述べる。
誤解1「沖縄は基地経済に依存している」
米軍基地は、米軍資材調達、基地労働者の給与、地代(基地関連収入)によって地元経済に貢献している。このことから、基地収入の減少を懸念し、基地はそのままであるべきだという声がある。しかし実際は県GDPにおける基地収入の割合は低く、2006年には5.4%であった。沖縄返還時の1972年には15.6%だったことに比べれば顕著に減少している。
対照的に、1972年時と比べると、沖縄の主要産業、観光産業は2008年には基地収入より多くの収入をもたらした。1972年時に比べたら逆転したのである。1972年の観光収入は9千万ドル、基地収入は3億1670万ドルであった。2008年には観光収入は41億ドル、基地収入は33億ドルであった。したがって、一般的認識に反し、沖縄では他産業の方が経済効果をもたらす能力があり、基地収入より多くの収入をもたらしている産業もある。2010年には基地労働者は9135人だったのにくらべ情報産業では2万212人であった。
誤解2 「沖縄は米軍基地について『サラミ・テクニック』をもちいている」(訳注:サラミを薄く削り取るようなイメージから、少しずつ取り除いて最後には全部取っていくという意味)
普天間が返還されたら、沖縄は次から次へと返還を要求し、最後には全部の返還を求め、妥協を全く認めないだろうと思っている人がいる。この議論は、沖縄本島の南北の経済格差、海兵隊に対する強い感情、沖縄人が基地受け入れについて言っていることを無視している。一点目として、一般的に言うと、本島北部は山がちで、80%の人口が住む南部は平地である。沖縄が特定の土地の返還を要求するのは、その土地の経済的可能性を反映しているのである。
普天間と、2006ロードマップで返還されることになっている4基地(キャンプ桑江、キャンプ瑞慶覧、牧港サービスエリア[キャンプ・キンザー]、那覇港湾施設)は全部本島南部に位置し、沖縄の人々に返還されたら高い経済効果を期待できる場所である。野村総研の推計によると、この5基地が返還されたら経済効果は33倍になり得る。たとえば、普天間(481ヘクタール)が返還されたら、年間の商業活動はドル換算では現在の1億5千800万ドルの基地関連収入から激増して56億5千200万ドルとなる。北谷の美浜とハンビー地域(65.4ヘクタール)が返還された後、商業収入は4000ドルから6億9千580万ドルと大きく増加した。沖縄が海兵隊普天間飛行場、キャンプ・キンザーと他の南部の基地返還を要求する正当な経済的理由があるのは明白である。
二点目として、海兵隊削減は、地元住民の反対感情に大きな変化をもたらす。この反対感情は主に、海兵隊は他軍に比べたら犯罪数や事故数が多いということによる。例を挙げれば、2011年には、海兵隊が犯した、または関与した犯罪や事故は50件に上る。空軍は27件、海軍は7件、陸軍は6件であった。この5基地のうち4基地が海兵隊のものであるということは沖縄に歓迎されるもう一つの要素となるだろう-空軍を含め他軍を受け入れている地域はこの強い感情を共有していない。
三点目として、受け入れ地域が何を言っているのかにもっと目を向ける必要がある―宜野湾市は、沖縄県と同様に常に普天間返還を訴えてきた。嘉手納基地(南部のもう一つの重要基地)については、沖縄県と嘉手納基地を抱える地域は騒音を減らすことを欲している。
誤解3 「沖縄は金が欲しいだけだ」
多くの批判者たちは「沖縄は金が欲しいだけである。それで強気の交渉をしてきている」と言う。実際はそれどころか、沖縄は著しい経済発展をしてきており、東京が沖縄の基地への支持を金で買えるという一般認識は有効性を失ってきている。2010年名護市長選で辺野古案に反対する稲嶺市長が当選したことからも、沖縄を説得するのに金は適切な言語ではないことがわかる。政府が寛大な提供をしてきたにもかかわらず、名護市の一人当たりの所得は1997年以来、沖縄のそれよりも常に低い状態が続いている。
沖縄は日本の他地域との基地負担分担において、尊厳と公平性を求める。他の地域が米軍のフットプリント(駐留)を欲していないからというだけで沖縄が基地負担をすべきだ、という中央政府の説明は沖縄人に受容できるものではない。沖縄の「NO」に、どうして他地域からのそれと同じ重みを与えないのか。日本政府は本土25か所を検討したというが、あらかじめメディアにそれをリークして、各地域に「自分の裏庭に持ってくるな!」という反対感情を強化する時間をゆるし、それらの地域の苦情を受け入れ、そのまま先に進んだ。これでは真剣に検討したとは言えない。
鳩山首相は、日本と東アジアの安全保障のためには沖縄の米軍基地が必要であるという政府の主張に対する沖縄の人々の信頼を壊した。沖縄が抱く疑問への、明解で誠意のある回答を求めている。
どうして沖縄が1945年以来ほとんど変わらず、日本全体の74%の米軍基地を負担しなければいけないのか?一つの島に集中させるのではなく、仕掛け線として、沖縄を含め日本の西海岸沿いの何か所かに米軍基地を分散させる方が、オーストラリア、シンガポール、フィリピンを含む東アジア全般に武力を分散させる最近の米軍の戦略に沿ったものとなる。
沖縄は何を欲しているのか
先述の様に、沖縄にとって普天間と他4基地の返還には強い経済的理由があり、日米両政府がこの方向に動くように最大の尽力をすることを歓迎する。沖縄は、普天間返還と部隊移動の件を切り離すという最近の発表を評価する。しかし実際悪魔は細部に宿るというし、まだ細部が公開されていないので、沖縄は何ごとも声高に言うことは躊躇する。
仲井眞知事は、辺野古案を推進するには名護市長と県知事の両方の合意が必要だと信じる。名護市民は辺野古案に反対する市長を選び、知事は、少なくとも任期終了の2014年末までは、知事が立場を変えることのできるような政治的状況になる希望はほとんどないので、知事は日米に案を修正するように要請している。
辺野古案にもっと許容的な政治的状況をつくりだす可能性のある次の名護市長選まで待ったらいいという見方があるかもしれないが、市長選は2014年までないし、沖縄の人々はそこまで待てない。さらに、知事選が同じ年に予定されており、知事と名護市長が辺野古案を支持できるような政治的状況になっているかどうかはわからない。
大ざっぱに言って、沖縄の人々の中で基地に賛成の人(そのうち多くは防衛省からの請負事業から利益を得る人たち)は少数派であり、基地全ての返還を要求する反基地の人たちも少数派である。大多数は物言わぬ多数派であり、その人たちは穏健派で、アメリカ文化と(基地の)経済効果への憧れ(特に過去のそれら)と、米軍兵、特に海兵隊による犯罪と、騒音を含む基地がもたらす不都合に対する怒りと悲しみという感情を併せ持っている。鳩山首相のフリップ・フロップ(ころころ変わること)が、この物言わぬ多数派の人たちを遠ざけてしまったので、この人たちが辺野古案に支持を表明するのには時間がかかると見られる。(訳者注:4月12日の時点でプリントアウトした記事には、「大ざっぱにいって、沖縄では基地賛成は20%、反基地は20%、残りの60%は物言わぬ多数派」と、具体的な数字がついていたが、4月15日の時点でこの部分は削除されている。)
沖縄の人々にとっては、沖縄の政治的状況に従いながら、なるべく早くに米軍基地の具体的な削減をすることが一番の優先順位を持つ。沖縄の人々は、ジム・ウェブ上院議員、ジョージ・ワシントン大学のマイク・モチヅキ氏、ブルッキングズ研究所のマイケル・オハンロン氏などが提唱する代替案を知的に探究することを評価する。
次のような案はさらなる検討に値する。
我々は、誤解のこじれを解き、意志疎通の不足を解決し、この問題を終わらせる必要がある。この問題については沖縄からの視点がほとんど語られていない。そこで、ここで沖縄についてのよくある誤解3点について述べ、沖縄が本当に何を欲しているのかを述べる。
誤解1「沖縄は基地経済に依存している」
米軍基地は、米軍資材調達、基地労働者の給与、地代(基地関連収入)によって地元経済に貢献している。このことから、基地収入の減少を懸念し、基地はそのままであるべきだという声がある。しかし実際は県GDPにおける基地収入の割合は低く、2006年には5.4%であった。沖縄返還時の1972年には15.6%だったことに比べれば顕著に減少している。
対照的に、1972年時と比べると、沖縄の主要産業、観光産業は2008年には基地収入より多くの収入をもたらした。1972年時に比べたら逆転したのである。1972年の観光収入は9千万ドル、基地収入は3億1670万ドルであった。2008年には観光収入は41億ドル、基地収入は33億ドルであった。したがって、一般的認識に反し、沖縄では他産業の方が経済効果をもたらす能力があり、基地収入より多くの収入をもたらしている産業もある。2010年には基地労働者は9135人だったのにくらべ情報産業では2万212人であった。
誤解2 「沖縄は米軍基地について『サラミ・テクニック』をもちいている」(訳注:サラミを薄く削り取るようなイメージから、少しずつ取り除いて最後には全部取っていくという意味)
普天間が返還されたら、沖縄は次から次へと返還を要求し、最後には全部の返還を求め、妥協を全く認めないだろうと思っている人がいる。この議論は、沖縄本島の南北の経済格差、海兵隊に対する強い感情、沖縄人が基地受け入れについて言っていることを無視している。一点目として、一般的に言うと、本島北部は山がちで、80%の人口が住む南部は平地である。沖縄が特定の土地の返還を要求するのは、その土地の経済的可能性を反映しているのである。
普天間と、2006ロードマップで返還されることになっている4基地(キャンプ桑江、キャンプ瑞慶覧、牧港サービスエリア[キャンプ・キンザー]、那覇港湾施設)は全部本島南部に位置し、沖縄の人々に返還されたら高い経済効果を期待できる場所である。野村総研の推計によると、この5基地が返還されたら経済効果は33倍になり得る。たとえば、普天間(481ヘクタール)が返還されたら、年間の商業活動はドル換算では現在の1億5千800万ドルの基地関連収入から激増して56億5千200万ドルとなる。北谷の美浜とハンビー地域(65.4ヘクタール)が返還された後、商業収入は4000ドルから6億9千580万ドルと大きく増加した。沖縄が海兵隊普天間飛行場、キャンプ・キンザーと他の南部の基地返還を要求する正当な経済的理由があるのは明白である。
二点目として、海兵隊削減は、地元住民の反対感情に大きな変化をもたらす。この反対感情は主に、海兵隊は他軍に比べたら犯罪数や事故数が多いということによる。例を挙げれば、2011年には、海兵隊が犯した、または関与した犯罪や事故は50件に上る。空軍は27件、海軍は7件、陸軍は6件であった。この5基地のうち4基地が海兵隊のものであるということは沖縄に歓迎されるもう一つの要素となるだろう-空軍を含め他軍を受け入れている地域はこの強い感情を共有していない。
三点目として、受け入れ地域が何を言っているのかにもっと目を向ける必要がある―宜野湾市は、沖縄県と同様に常に普天間返還を訴えてきた。嘉手納基地(南部のもう一つの重要基地)については、沖縄県と嘉手納基地を抱える地域は騒音を減らすことを欲している。
誤解3 「沖縄は金が欲しいだけだ」
多くの批判者たちは「沖縄は金が欲しいだけである。それで強気の交渉をしてきている」と言う。実際はそれどころか、沖縄は著しい経済発展をしてきており、東京が沖縄の基地への支持を金で買えるという一般認識は有効性を失ってきている。2010年名護市長選で辺野古案に反対する稲嶺市長が当選したことからも、沖縄を説得するのに金は適切な言語ではないことがわかる。政府が寛大な提供をしてきたにもかかわらず、名護市の一人当たりの所得は1997年以来、沖縄のそれよりも常に低い状態が続いている。
沖縄は日本の他地域との基地負担分担において、尊厳と公平性を求める。他の地域が米軍のフットプリント(駐留)を欲していないからというだけで沖縄が基地負担をすべきだ、という中央政府の説明は沖縄人に受容できるものではない。沖縄の「NO」に、どうして他地域からのそれと同じ重みを与えないのか。日本政府は本土25か所を検討したというが、あらかじめメディアにそれをリークして、各地域に「自分の裏庭に持ってくるな!」という反対感情を強化する時間をゆるし、それらの地域の苦情を受け入れ、そのまま先に進んだ。これでは真剣に検討したとは言えない。
鳩山首相は、日本と東アジアの安全保障のためには沖縄の米軍基地が必要であるという政府の主張に対する沖縄の人々の信頼を壊した。沖縄が抱く疑問への、明解で誠意のある回答を求めている。
どうして沖縄が1945年以来ほとんど変わらず、日本全体の74%の米軍基地を負担しなければいけないのか?一つの島に集中させるのではなく、仕掛け線として、沖縄を含め日本の西海岸沿いの何か所かに米軍基地を分散させる方が、オーストラリア、シンガポール、フィリピンを含む東アジア全般に武力を分散させる最近の米軍の戦略に沿ったものとなる。
沖縄は何を欲しているのか
先述の様に、沖縄にとって普天間と他4基地の返還には強い経済的理由があり、日米両政府がこの方向に動くように最大の尽力をすることを歓迎する。沖縄は、普天間返還と部隊移動の件を切り離すという最近の発表を評価する。しかし実際悪魔は細部に宿るというし、まだ細部が公開されていないので、沖縄は何ごとも声高に言うことは躊躇する。
仲井眞知事は、辺野古案を推進するには名護市長と県知事の両方の合意が必要だと信じる。名護市民は辺野古案に反対する市長を選び、知事は、少なくとも任期終了の2014年末までは、知事が立場を変えることのできるような政治的状況になる希望はほとんどないので、知事は日米に案を修正するように要請している。
辺野古案にもっと許容的な政治的状況をつくりだす可能性のある次の名護市長選まで待ったらいいという見方があるかもしれないが、市長選は2014年までないし、沖縄の人々はそこまで待てない。さらに、知事選が同じ年に予定されており、知事と名護市長が辺野古案を支持できるような政治的状況になっているかどうかはわからない。
大ざっぱに言って、沖縄の人々の中で基地に賛成の人(そのうち多くは防衛省からの請負事業から利益を得る人たち)は少数派であり、基地全ての返還を要求する反基地の人たちも少数派である。大多数は物言わぬ多数派であり、その人たちは穏健派で、アメリカ文化と(基地の)経済効果への憧れ(特に過去のそれら)と、米軍兵、特に海兵隊による犯罪と、騒音を含む基地がもたらす不都合に対する怒りと悲しみという感情を併せ持っている。鳩山首相のフリップ・フロップ(ころころ変わること)が、この物言わぬ多数派の人たちを遠ざけてしまったので、この人たちが辺野古案に支持を表明するのには時間がかかると見られる。(訳者注:4月12日の時点でプリントアウトした記事には、「大ざっぱにいって、沖縄では基地賛成は20%、反基地は20%、残りの60%は物言わぬ多数派」と、具体的な数字がついていたが、4月15日の時点でこの部分は削除されている。)
沖縄の人々にとっては、沖縄の政治的状況に従いながら、なるべく早くに米軍基地の具体的な削減をすることが一番の優先順位を持つ。沖縄の人々は、ジム・ウェブ上院議員、ジョージ・ワシントン大学のマイク・モチヅキ氏、ブルッキングズ研究所のマイケル・オハンロン氏などが提唱する代替案を知的に探究することを評価する。
次のような案はさらなる検討に値する。
-嘉手納基地のフットプリント(基地影響)を現在より減らしながら普天間の嘉手納基地統合をすること。私は、嘉手納のフットプリントを今のレベルより大きくする案はいかなるものでも地元に受け入れられないことをここで強調する。
-米国の海兵隊削減の線に沿った沖縄海兵隊の相当数の削減
-二段階の方法:まず暫定的に海兵隊を岩国、嘉手納、プラス/あるいは自衛隊基地に移動することで普天間を空にし、日本政府が普天間代替施設として適切な場所を探す時間をかせぎ、そしてその場所に普天間基地を移設する。
2012年4月、沖縄県庁は、地域安全政策課という、沖縄なりの代替案を作成し、それらについて外部の専門家や日米両政府と協議するための新しい部署を創設した。日本の一自治体としては踏み込んだ動きといえる。沖縄県庁は固定観念にとらわれない考え方をし、在日米軍の責任ある受け入れ地域として、地域安全保障に誠実な貢献をする者として、そして長年十分苦しんできて、今も苦しみ続けている沖縄の人々の誇り高き代表者として、この部署を設立した。
2012年4月、沖縄県庁は、地域安全政策課という、沖縄なりの代替案を作成し、それらについて外部の専門家や日米両政府と協議するための新しい部署を創設した。日本の一自治体としては踏み込んだ動きといえる。沖縄県庁は固定観念にとらわれない考え方をし、在日米軍の責任ある受け入れ地域として、地域安全保障に誠実な貢献をする者として、そして長年十分苦しんできて、今も苦しみ続けている沖縄の人々の誇り高き代表者として、この部署を設立した。
(翻訳 以上)
これに対し、我々は以下のような論点を提起したいと思う。
この論文は、「沖縄が基地経済に依存している」とか、メア差別発言に象徴されるように「沖縄が金目当てである」といった理解が間違っているという、重要な指摘を海外に対して発信している。基地負担や普天間移設候補地選びにおける本土の沖縄に対する差別を糾弾し、公平さと尊厳を求めていることも正当な議論といえる。
しかし、この論文は沖縄を在日米軍の「責任ある基地受け入れ地域」と呼び、現状の日米同盟と安保条約の無批判の受容を大前提としているように見える。まずはこの大前提に疑問を投げかけたい。この論文を読んだ沖縄の作家、浦島悦子氏はこう言う(著者へのメールにて)。
そもそも沖縄の米軍基地は、沖縄が責任をもって受け入れたものではなく、日米両政府によって押しつけられたものであり、それが今まで続いていることが極めて不当かつ異常であることが問題の本質です。「物言わぬ多数派」がそのことに気づき、考え、物を言うようになったからこそ、状況が変わり、知事も姿勢を変えざるを得なくなったのであり、彼らはもはや「物言わぬ多数派」ではなく「物言う多数派」となっています。
日米と沖縄が「日米同盟を強く尊重している」、とも述べているが、沖縄についてはどうだろうか。2009年の県民世論調査では、米軍の日本駐留を含む日米安保条約について「維持すべきだ」と答えたのは16.7%に過ぎず、10.6%が「破棄すべきだ」、42%が「平和友好条約に改めるべきだ」、と答えている。安保条約と米軍駐留自体にまったく疑問も呈さない姿勢で「沖縄の欲すること」を代弁できていると言い切れるだろうか。この論文は、被支配や戦争被害の「歴史」を乗り越え「現在」に生きることを訴え、日米軍事同盟の容認を前提にした「基地沖縄」の存在意義を強調し、厳しい批判の対象となった2000年の「沖縄イニシアチブ」の新バージョンように見える。4月2日『琉球新報』には、「沖縄イニシアチブ」で中心的役割を果たした高良倉吉氏(琉大教授)を地域安全政策課のアドバイザーに迎えるとあることからも、そう思えて仕方がないのである。
また、この論文には、南北の経済格差を指摘しながら、80%の人口を擁する平地の南部のために、「山がち」で人口も少ない北部が犠牲になってもいいような論調がある。これでは、日本における沖縄構造差別がある一方、「経済的ポテンシャル」の大きい南部を北部より優先させるという形で沖縄県内の構造差別を強化してしまうのではないか。基地返還の理由を経済的理由に絞り込み、辺野古案の懸念である、ジュゴンを含む大浦湾の生態系への影響や、人口の少ない地域の基地被害、とりわけオスプレイ配備により予想される被害の増大を考慮していないのではないか。この論文は、北部訓練場におけるヘリパッド移設やオスプレイ配備がもたらす地元住民への危険性増大や、やんばるの森の自然環境への影響にも全く触れておらず、北部切り捨て策であると思われるのではないか。
また、一番の問題は海兵隊であり、空軍等他軍の基地受け入れ地域の人々は米軍の犯罪や事故に対する「強い感情」を共有していないという見方も議論の必要があるのではないだろうか。嘉手納のフットプリントを増やさないといいつつも、受け入れ地域が欲しているのは騒音減少であり、海兵隊に対するものほどの強い反対感情はないので、普天間基地の統合をしやすいと論じているようにも読める。
さらにこの論文は、2010年知事選でも結果的に辺野古案を支持した候補に投票した人は2%程度だったこと、また数々の選挙、自治体決議、県民大会、世論調査、辺野古や高江で長期間続く市民による反対運動、不正アセスに対する県を挙げた怒りなどに見られるように、辺野古移設案には県民大多数の反対があるということを、民意の表れというより「政治的状況が許さない」という視点でとらえ、沖縄県知事は「政治的状況」さえ許せばいつでも辺野古案支持に戻りたいという姿勢を表明しているように見える。
仲井眞知事は、前知事選の直前に、従来の県内移設容認を翻して県外移設に立場を変えた。それは、県内の大多数が辺野古移設に反対しているという「政治的状況」があったからであった。この論文はそれを否定的にとらえ、その責任は、鳩山首相が沖縄の人々の米軍沖縄駐留への「信頼」を壊し、「物言わぬ多数派」を翻弄したせいとする。辺野古案反対が高まったことを否定的にとらえ、しかも全て鳩山氏の資質-「フリップフロップ」(ころころ変わること)のせいにしているように見える。沖縄のジャーナリスト吉田健正氏は、この論文の沖縄世論についての理解をこう見る(著者へのメールにて)。
吉川氏の「基地全ての返還を要求する反基地の人たちも少数派である。大多数は物言わぬ多数派」というのは、一昨年の県民大会や県議会決議で表明された全県的な基地反対、沖縄県民の戦争体験や占領下の戦後の人権や強制的土地接収の問題などに関する多くの人々の記憶、40年前の「本土復帰」で変わらなかった米軍基地の実態(現在も続く米軍優先の安保、沖国大への墜落ヘリ墜落や少女暴行事件や飲酒運転などの米軍関連の事故・事件、汚染問題)への悔しさを無視しています。世論調査の結果も無視しています。
鳩山氏の「最低でも県外」の公約は、沖縄の多くの人々の、諦めていた本来の希望を呼び起こしたのではないのか。鳩山氏が辺野古案に最終的に回帰して沖縄の多数の人々を失望させたのは確かだが、それは日本の官僚機構や米国が彼の言うことを聞くのを拒んだからではないか。鳩山氏自身にも責任はあるだろうが、彼のように虐待や威嚇にさらされた首相はいなかった。鳩山氏が潜在的な民意の目覚めのきっかけを作ったこと自体を非難し、その民意自体をまた鎮静することによって辺野古案を受け入れる「政治的状況」が生まれることを願う論調は、「沖縄の欲すること」を代弁しようとしているこの論文の目的自体に背くことなのではないか。沖縄の多数派が「辺野古案に支持を表明するのには時間がかかると見られる」ということは、鳩山氏のような「ころころ変わる」人間さえいなくなれば沖縄も名護市も辺野古案で説得し切れるだろうと言っているように聞こえる。「ころころ変わる」と言えば、仲井眞知事が同じくらい、いやそれ以上の「ころころ変わり」人間なのではないか。辺野古移設容認だったのが、2010年の知事選前に立場を変えた。しかし今も県内移設に明確に反対せず、また立場を変える余地を残しているようだ。「県外移設の方が早く解決できる」と言っていることから、辺野古案自体に根本的な問題はないと思っているようだ。
この論文の趣旨は、沖縄県民を代表して、よくある誤解を正し、「沖縄の欲するもの」を伝えることのようだが、県庁の新部署・地域安全政策課の主任研究員として、著者の吉川氏は県庁や知事の見解を読者に提示するものなのか、この課の研究の成果の一環として発表しているのかが不明であり、その辺を明らかにする必要があると思う。特に、県政府やその首長の方向性と、沖縄の市民社会とその自律性の間に横たわるギャップがあるとしたらそれをどうすり合わせていくのか。「沖縄の欲するもの」といった表現をするときの「沖縄の人々」とは誰のことを指しているのか。先に触れた琉球新報の記事や、沖縄タイムスの報道(リンク)によれば、地域安全政策課には、吉川氏の論文でも触れられているマイク・モチヅキ、マイケル・オハンロン両氏に加え、「米外交問題評議会(CFR)のシーラ・スミス上級研究員やライシャワー東アジア研究所のケント・カルダー所長」といった米国のアドバイザーがいるようだが、もっと重要なことは沖縄の市民社会とどのように関わっていくかということなのではないか。沖縄の人々で構成されるアドバイザーのグループというものを設置する予定はあるか。また、この地域安全政策課にどれだけ批判的能力を発揮する自由が与えられているのか。要するに、必要とあらば県庁や県知事を批判的に見ることができるのか。
繰り返すが、この論文が、沖縄経済の基地依存度に関する間違った認識を指摘し、本土が過重な基地負担を沖縄に押し付けている不平等性や差別を是正する重要性について述べていることは評価し、日本本土や米国に対して、何度言っても言い過ぎということはないと思う。県庁の中にできたシンクタンクとも言える地域安全政策課の研究成果が県内外、海外に広く知られ、沖縄の人々の声が政策決定に影響を及ぼしていくことに貢献してほしい。
以上
ガバン・マコーマック(オーストラリア国立大学名誉教授)と乗松聡子(在カナダ/ピース・フィロソフィー・センター http://peacephilosophy.com代表)は英文誌『アジア太平洋ジャーナル:ジャパンフォーカス』http://www.japanfocus.org (2002年設立、2008年琉球新報池宮城秀意記念賞受賞)のコーディネーターである。2012年7月、共著で Rowman & Littlefield 社から Resistant Islands: Okinawa Confronts Japan and the United States 刊行予定。
PDF版はここにあります。
https://docs.google.com/open?id=0B6kP2w038jEAVFBwSzRLUng0YVU
リンク歓迎、転載は自由ですが、全文と本記事のURL http://peacephilosophy.blogspot.ca/2012/04/blog-post_18.html を明記してください。その上で転載先のURLとともにご報告ください。この投稿についてのコメントや問い合わせ、転載の報告は、info@peacephilosophy.com にお願いします。コメントをいただく場合、公開していいかどうか付記してください。
追記:この投稿についてコメントしているサイトを紹介します。
Project Disagree 合意してないプロジェクト「主体的な安全保障?のつづき」
http://www.projectdisagree.org/2012/04/blog-post_18.html
PDF版はここにあります。
https://docs.google.com/open?id=0B6kP2w038jEAVFBwSzRLUng0YVU
リンク歓迎、転載は自由ですが、全文と本記事のURL http://peacephilosophy.blogspot.ca/2012/04/blog-post_18.html を明記してください。その上で転載先のURLとともにご報告ください。この投稿についてのコメントや問い合わせ、転載の報告は、info@peacephilosophy.com にお願いします。コメントをいただく場合、公開していいかどうか付記してください。
追記:この投稿についてコメントしているサイトを紹介します。
Project Disagree 合意してないプロジェクト「主体的な安全保障?のつづき」
http://www.projectdisagree.org/2012/04/blog-post_18.html
新聞で少し報道されてはいましたが、全文を読ませていただき、ご指摘の通り、多くの県民が読むべきであると感じました。
ReplyDelete評価すべき点は評価しつつ、しかし、現在の仲井真県政のスタンス(日米安保と沖縄での基地受け入れを無条件の前提とし、そして状況を見ながら「君子豹変」していく知事自身のあり方)を正当化するものでしかないことを知る必要があると思います。
そもそも沖縄の米軍基地は、沖縄が責任をもって受け入れたものではなく、日米両政府によって押しつけられたものであり、それが今まで続いていることが極めて不当かつ異常であることが問題の本質です。「物言わぬ多数派」がそのことに気づき、考え、物を言うようになったからこそ、状況が変わり、知事も姿勢を変えざるを得なくなったのであり、彼らはもはや「物言わぬ多数派」ではなく「物言う多数派」となっています。
この論文は、その「物言う多数派」に批判的に読み、考えてもらうことが必要であり、翻訳と的確な問題点の指摘に厚くお礼を申し上げます。
乗松さんとガバンさんのコメントを支持します。
ReplyDelete論文はまた、辺野古移設については移設を支持したあげく、自らの信念ではなく名護の市長選挙の結果だからという妙な理由で反対に転じ、今度の「北朝鮮騒動」では、自衛隊やミサイルの沖縄配備などを支持した安保支持派の仲井真知事に歩調を併せたとも読めます。
吉川氏の「基地全ての返還を要求する反基地の人たちも少数派である。大多数は物言わぬ多数派」というのは、昨年の県民大会や県議会決議で表明された全県的な基地反対、沖縄j県民の戦争体験や占領下の戦後の人権や強制的土地接収の問題などに関する多くの人々の記憶、40年前の「本土復帰」で変わらなかった米軍基地の実態(現在も続く米軍優先の安保、沖国大への墜落ヘリ墜落や少女暴行事件や飲酒運転などの米軍関連の事故・事件、汚染問題)への悔しさ無視しています。世論調査の結果も無視しています。
仲井間知事が新設した「地域安全政策課」。この「地域」というのは、沖縄や日本内部の地域のことではなく、アジア(太平洋)「地域」のことなんでしょうね。(普通、県の「地域課」といえばその県内の地域のことを担当するように思いますが。) 沖縄独自の視点で安全保障問題を考えるという趣旨なようですから。例えば、『琉球新報』のこの記事。
ReplyDelete「日米に専門家網構築 県新設課、独自視点で安保研究」
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-186884-storytopic-1.html
県庁内に4月に新設される安全保障に関する研究や情報収集を行う課の骨格が30日、分かった。県が米国と日本国内の専門家に委嘱し、安全保障などに関する テーマごとに随時意見や情報提供をしてもらう態勢を構築する。寄せられた意見などを基に沖縄県の視点で研究を深める。国が専管事項と主張する安全保障分野の研究を目的に、地方自治体が国内外の専門家とネットワークを構築するのは異例。同課に、担当の研究員として県外から1人採用し、県庁職員5人程度を配属する。
県が意見提出や情報提供を委嘱する専門家は米国と日本国内の5、6人程度。米国の専門家について、基地問題や日米の安全保障政策について議論してきた有識者でつくる「沖縄クエスチョン日米行動委員会」のメンバーらが中心となる。
(記事の引用はここまで。)
ブログでも指摘されているように、ここには「沖縄イニシアチブ」のにおいがプンプンします。。。
しかも、アドバイザーはみな米国のJapan handlersで主任研究員も元Johns Hopkins研究員。。。 http://www.jsoftpower.org/index.php/collaborators/yoshikawa.html
(アジア太平洋)「地域」と言うなら、なぜ米国以外のアドバイザーも求めないのでしょう?
去年日経新聞が米国のジャパン・ハンドラーズの巣窟・国際戦略問題研究所と一緒に始めた「バーチャル・シンクタンク」でも、この手の若手プロ米国イデオローグを育てようという意図があるのでしょうね。そして、政府や自治体に入り込んで、「飼い主」に都合のいい政策・世論づくりをどんどんさせようというのでしょう。
日経・CSISバーチャル・シンクタンク
http://www.csis-nikkei.com/
フェロー
http://www.csis-nikkei.com/fellow.html
「日本の西海岸沿いの何カ所かに分散させたほうがアメリカの戦略に沿っている」の根拠が不明。論調が安保駐留を肯定し、あくまで県外移設による公平負担をもとめるものであり、日本国内の米軍プレゼンス規模を維持したいという思惑が透けて見える。
ReplyDeleteまた、沖縄戦を体験した沖縄人の「平和を願う心」の視点が完全に欠落している。沖縄を出撃拠点に使用され、結果ベトナムでイラクでアフガンなどで市民を殺す「共犯者」となっていることに、沖縄人は心を痛めるのである。出撃していく米兵がこの島で殺人マシーンにされ、殺し合いをしに行くことに心を痛めるのである。
沖縄は全ての基地返還は求めていない、とするのは曲解である。本心では全ての軍隊駐留に反対なのだが、世界の政治情勢を判断して必要悪としての日米安保の存在を認め、かつ特に北部の過疎地域では、実現性の少ない返還を主張するよりも確実に収入が得られる実利をとろうとし、政治的脚光を浴びたり分断工作が行われる事よりコミュニティーや人間関係が壊れることを避けるような、自制的な妥協と諦めの深層心理があるのである。
Good job! Ms Norimatsu! The comments from you and your friends fit best for the fundamental desire (Okinawa without foreign army and bases) of the people of Okinawa.
ReplyDelete大西照雄さん(大西さんのブログ 「宝の海」http://teruo024.blog47.fc2.com/)から「世論調査は2010年5月のものを使った方がよかった」と指摘を受け、ここに追加します。この時点では日米安保条約を「平和条約に改正すべき」というのはさらに増え、過半数の55%となっています。「破棄すべき」も14%と増えています。(ちなみに2009年11月の世論調査はここです。http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-152280-storytopic-53.html)
ReplyDelete「辺野古」反対84% 琉球新報・毎日新聞 県民世論調査
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-162838-storytopic-1.html
琉球新報社と毎日新聞社は合同で28~30日、米軍普天間飛行場を名護市辺野古崎地区・隣接水域に移設することで合意した28日の日米共同声明を受け、緊急の県民世論調査を行った。辺野古移設に反対との回答が84%に上り、賛成は6%にとどまった。県内移設反対の根強い県民世論が表れた形で、昨年10月31日~11月1日に行った調査から反対が17ポイント上昇した。反対した人の半数以上が県外や国外への移設を求め、「無条件撤去」の回答も38%に達した。昨年同調査で63%あった内閣支持率は8%と一けた台の低水準に急落し、鳩山由紀夫首相が「最低でも県外」の公約を破棄したことへの強い批判や不信が表れている。
海兵隊の沖縄駐留は「必要」との回答が15%にとどまり、「必要ない」が71・2%。米軍駐留根拠となっている日米安保条約については「維持すべきだ」との回答が7%と昨年調査の半分以下にまで減少した。
一方で日米安保条約を「平和友好条約に改めるべきだ」との回答が55%と過半数を占めた。「破棄すべき」が14%、「米国を含む多国間安保条約に改めるべきだ」も10%あり、沖縄の基地負担に基づく現行の安保体制への不満が強い。
辺野古移設に「反対」と答えた人に理由を尋ねたところ、国外移設が36%に上り「沖縄以外の国内」に移設すべきだとの回答(16%)を大きく上回った。辺野古以外の県内に移設すべきとの意見は4%だった。
在日米軍専用施設の約74%が沖縄に集中する現状については、整理縮小(50%)と撤去(41%)の意見が全体の9割を占めた。
鳩山内閣の不支持率は78%と8割に迫り、昨年調査の16%から様変わりした。仲井真弘多知事の支持率は57%、不支持は29%。
政党支持率は社民党が10・2%で首位となり、昨年調査から倍増。辺野古移設に反対し、閣僚から罷免された福島瑞穂党首への支持などが表れたとみられる。2位は自民で9・8%。民主は8・6%で昨年調査の29%から大きく減らした。
◆「県民の思い」/稲嶺名護市長
【名護】県民世論調査で84%が辺野古移設に反対したことについて、稲嶺進名護市長は「先の県民大会や名護でも緊急集会を行った。県民の思いがストレートに表現されている」と述べた。昨年11月調査より約15%上がったことには「日米合意に対する県民の反対の意見が、反動として強く出たのではないか」との見方を示した。鳩山内閣の支持率が急落し、社民党が支持率を上げたことについては「党として、政治家としてのまっとうな在り方の違いではないか」と指摘した。
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調査の方法=県内の11市と嘉手納町、読谷村、南風原町の計14市町村に住む有権者を対象に5月28~30日、コンピューターで無作為に発生させた番号に電話をかけるRDD(ランダム・デジット・ダイヤリング)法で実施した。実際に電話がかかったのが1588件あり、うち1026人から回答を得た。
★美浜云々:基地民間移譲の利点を指摘したようでいて、基地の危険性をなくしたほか、雇用拡大につながったことなどを具体的に述べていない。
ReplyDelete★「三点目として、受け入れ地域が何を言っているのかにもっと目を向ける必要がある―宜野湾市は、沖縄県と同様に常に普天間返還を訴えてきた。嘉手納基地(南部のもう一つの重要基地)については、沖縄県と嘉手納基地を抱える地域は騒音を減らすことを欲している。」→基地のimpeachment(普天間基地の危険性、嘉手納基地の嘉手納村に占める面積や同村の迷惑および発展阻害)に言及せず
★日本全体の74%の米軍基地を負担しなければいけないのか?→日本全土に占める沖縄の面積や沖縄戦に言及せず
★嘉手納基地のフットプリント(基地影響)→同基地の規模、軍事活動、危険性や騒音の問題には触れず
★沖縄県庁は固定観念にとらわれない考え方をし、在日米軍の責任ある受け入れ地域として、地域安全保障に誠実な貢献をする者として、そして長年十分苦しんできて、今も苦しみ続けている沖縄の人々の誇り高き代表者として、この部署を設立した。→批判記事が指摘しているように、この部分こそ大問題です。嘉手納以南の基地を返すなら、米軍はどこでも基地としてお使い下さい、という県庁・仲井真知事の考え方のように受け取れます。もっと批判を強めてよいと思います。
誤解2は論者の誤解というより明確な意図に基づく沖縄の主張の矮小化だろう。1996年に策定された沖縄県の『基地返還アクションプログラム』は、沖縄県内のすべての米軍基地を計画的段階的に返還させるプログラムであった。当時の大田革新県政から稲嶺ー仲井真保守県政に変遷した中で、「国際都市形成構想」も「基地返還アクションプログラム」も店晒し立ち消えになったが、誤解2はそれを過去のこととして払拭しその上に基地所在自治体の基地被害への対症療法的な抗議/要求を置いてみせる…そうすることで、「基地返還アクションプログラム」はもとより1972年の施政権返還時に「基地無き島」を希求した沖縄県民の存在をも捨象する。
ReplyDelete仲井真県政が目指す方向性の危険性が如実にこの論文に現れている。それは沖縄の過去や経験、未来への希望やビジョンを、なし崩しでねじ伏せ日米安保体制の現在に組み込んでいく。