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Saturday, December 15, 2012

米国務省記者会見記録には「中国に『尖閣は日米安保適用』と伝えた」などどこにも書いてない

日本のメディア―NHK共同通信読売産経毎日、等―は、14日に国務省記者会見でベントレル報道官が、「領空侵犯」について米国が中国に懸念を伝え「尖閣諸島が日米安保条約の適用範囲であると直接伝えた」と報道しているが、国務省の14日記者会見記録の該当部分を見るとベントレル報道官は「日米安保条約」などどこにも一言も言っていないことがわかる。

 

「安保適用」と解釈されたのはどうやらこの部分のようだ(ブログ運営者による翻訳つき)。

QUESTION: On the Chinese plane flying over the Senkaku Island airspace, Toria said that she had – she didn’t have anything new to say. And yet to me it seems like quite a bit of escalation, and I think the Japanese Government considered it such as well. Does the State Department really believe that this is nothing new, this air incursion?
質問:尖閣諸島空域に中国の航空機が飛んだことについて、トリア(訳者注:ビクトリア・ヌランド報道官の前日の会見を指す)は今回のことで何も新しいことを言うことはないと言っていました。しかし私にとってはこれは事態のエスカレーションのように見えますし、日本政府もそのように受け取っています。国務省は本当に今回の領空侵犯を何も新しいことではないと考えていますか。

MR. VENTRELL: Well, let me just say that we are concerned by the flight of a Chinese Government airplane near the Senkakus. It’s important to avoid actions that raise tensions and to prevent miscalculations that could undermine peace, security, and economic growth in the region. And so we’ve raised our concerns with the Chinese Government directly and made clear that U.S. policy and commitments regarding the Senkakus Islands are longstanding and have not changed.
ベントレル氏:私がいえることはただ、我々は中国政府の航空機が尖閣諸島の近くを飛んだことに懸念(concerned)を持っているということです。緊張を高めるような行動を避けること、この地域の平和、安全保障、経済的発展を妨げる判断ミス(miscalculation)を伏せぐことが大事です。だから中国政府に対して直接懸念を伝え、米国の尖閣諸島に関する方針(policy)とコミットメント(commitment)は長期にわたるもので(longwithstanding)これまでと変わっていないということを明確にしました。

会見全体を見回しても「安保条約」に触れているところはどこにもなく、報道のされ方からも、どうやらメディアは、この「米国の方針とコミットメントは長期にわたるもので、これまでと変わっていません」の部分を「尖閣諸島が日米安保条約の適用範囲である」と解釈してあたかも国務省がそう言ったかのように報道しているようなのである!!!見回したところ各社、見出しには「米、中国に懸念を伝達」と、事実に沿ったものになっているところが多いが本文ではおしなべて「尖閣安保適用」と言ったかのごとくに書いてある。NHKに至っては記事の見出しまでが「米 中国に尖閣は日米安保適用と伝える」となっている!
 
これを過大解釈、ねつ造の次元にある報道と思うのは私だけだろうか。私は2009年以来、国務省、国防省の会見や米国要人の発言がいかに日本のメディアや官僚や政治家によって歪曲されて報道されてきたかを追ってきている(ここクリック)ので、今回も「米国が中国に尖閣安保適用通達」報道を見て「臭い」と感じてすぐ原文に行ってみたら、やはりそんな言葉はどこにもなかった。会見外でオフレコで言ったとでもいうのかそれならそう書くべきであるが、報道では「会見で」と言っている。ベントレルが本当に会見中にそう言ったのだったら、その発言自体をNHKは放映するのが当然であると思うが、NHKが放映したベントレル発言(リンクはそのうち切れると思うが12月15日時点ではhttp://www3.nhk.or.jp/news/html/20121215/k10014204231000.html)は上の発言のうち、

And so we’ve raised our concerns with the Chinese Government directly and made clear that U.S. policy and commitments regarding the Senkakus Islands are longstanding and have not changed.(だから中国政府に対して直接懸念を伝え、米国の尖閣諸島に関する方針とコミットメントは長期にわたるものでこれまでと変わっていないということを明確にしました。)

の部分だけである。「安保条約のことは言っていません、この発言をそう解釈しました」と認めているようなものである。ベントレル氏によって具体化を避けて示された「方針」と「コミットメント」を「安保条約が尖閣に適用する」と解釈したのだとしたら、それは解釈であると明記すべきである。あえて私が解釈すれば、米国の尖閣諸島についての「方針」は、沖縄返還時、尖閣諸島の施政権は日本に返すが領有権については立場を明らかにしないといっている、その立場のことではないかと思う。米国の「コミットメント」については曖昧であり確信はないが、ベントレルが言っているようにこの地域の平和を保ち経済発展を守るためのコミットメントとも取れるし、実際に安保条約を適用させて尖閣を米国の武力で中国から守る用意があるコミットメントとの解釈もあり得ると思う。実際にクリントンもパネッタも過去に「尖閣に安保適用」と言っているのであるから。

しかしそういう解釈が有り得るということと、ベントレルが言ってもいないことを言ったかの如くに報道していいかということは別問題だ。

言語のギャップを利用することにより、尖閣問題において米国が日本の味方であるかのように演出するための恣意的、作為的な報道をするのは倫理的に大きな問題があるとは言えないか。騙されないようにしっかり監視している人間がいるということを忘れないでほしい。@PeacePhilosophy

 

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