http://www.nytimes.com/2013/10/30/opinion/international/japans-illiberal-secrecy-law.html?_r=1&
(翻訳は正確を期すために投稿後微修正することがあります。)
社説
Japan's Illiberal Secrecy Law
自由主義とは言えない日本の秘密法案
By THE EDITORIAL BOARD 論説委員会
Published: October 29, 2013
The Japanese government is poised to enact a secrecy law that will undermine the people’s right to know. The law will give all government ministries the right to classify information related to defense, diplomacy, counterintelligence and counterterrorism as a state secret. But there is no guideline as to what constitutes a secret. This lack of definition means the government could well designate any inconvenient information secret.
日本政府は人々の知る権利を弱める秘密法案を成立させようとしている。この法律は、全ての政府の省庁に対し、防衛、外交、スパイ防止、テロ防止に関連する情報を秘密指定する権利を与える。しかし何をもって秘密とするかのガイドラインがない。この定義の不在は、政府が不都合な情報を何でも秘密指定してしまえるという意味を持つ。
日本政府は人々の知る権利を弱める秘密法案を成立させようとしている。この法律は、全ての政府の省庁に対し、防衛、外交、スパイ防止、テロ防止に関連する情報を秘密指定する権利を与える。しかし何をもって秘密とするかのガイドラインがない。この定義の不在は、政府が不都合な情報を何でも秘密指定してしまえるという意味を持つ。
Under the proposed law, government officials found to have revealed secrets could be jailed up to 10 years. Such a provision would give officials even greater incentive to label documents secret rather than risk their release.
法案では、政府関係者が秘密を漏えいしたとみなされた場合に最高10年の懲役となる。このような措置は政府関係者に対し、情報を公開するリスクを取るよりも情報を秘密と分類するさらなる動機を与えることとなる。
法案では、政府関係者が秘密を漏えいしたとみなされた場合に最高10年の懲役となる。このような措置は政府関係者に対し、情報を公開するリスクを取るよりも情報を秘密と分類するさらなる動機を与えることとなる。
Until now, only the Defense Ministry had the authority to classify information as a “defense secret.” Its record is abysmal. Of the 55,000 documents the ministry classified secret between 2006 and 2011, 34,000 were destroyed at the end of a particular secrecy period, depending on the document. And only one was declassified for public release.
これまでは、防衛省のみが情報を「防衛機密」として秘密指定することができた。しかしその実績はひどいものだ。防衛省が2006年と2011年の間に秘密指定した5万5千件の文書のうち、文書によっては秘密指定の期間終了時に破棄され、それが3万4千件に上ったのだ。そのうち公開されたのはたったの1件であった。
これまでは、防衛省のみが情報を「防衛機密」として秘密指定することができた。しかしその実績はひどいものだ。防衛省が2006年と2011年の間に秘密指定した5万5千件の文書のうち、文書によっては秘密指定の期間終了時に破棄され、それが3万4千件に上ったのだ。そのうち公開されたのはたったの1件であった。
The new law would allow the secrecy period to be extended indefinitely. And it further limits government accountability by making no clear provision for sharing secrets with elected representatives in the national Diet.
新法が通れば、秘密指定の期間は無期限に延長できるようになる。そして、国会における、選挙で選ばれた国民の代表者たちと秘密を共有する明確な規定がないことにより政府の説明責任をさらに限定している。
新法が通れば、秘密指定の期間は無期限に延長できるようになる。そして、国会における、選挙で選ばれた国民の代表者たちと秘密を共有する明確な規定がないことにより政府の説明責任をさらに限定している。
The law will make an already opaque government more so by threatening to jail journalists, up to five years, for doing their job in an “invalid” and “wrongful” manner. Japan’s newspapers fear that there will be markedly less communication between journalists and government officials. Opinion polls show that the public is very skeptical of the law and its reach. The government of Prime Minister Shinzo Abe, however, is eager to pass it as soon as possible.
法案は、「不正」や「不当」な方法で取材をした報道関係者に最高5年の懲役という脅しをかけることによって、すでに不透明な政府を更に不透明なものにしている。日本の新聞社は、報道関係者と政府関係者間のコミュニケーションが著しく減ると心配している。世論調査によると、公衆はこの法案とそれが及ぼす影響に対して大きな懸念を抱いている。それにもかかわらず安倍晋三首相の政府はこの法案を一刻も早く通そうとしている。
法案は、「不正」や「不当」な方法で取材をした報道関係者に最高5年の懲役という脅しをかけることによって、すでに不透明な政府を更に不透明なものにしている。日本の新聞社は、報道関係者と政府関係者間のコミュニケーションが著しく減ると心配している。世論調査によると、公衆はこの法案とそれが及ぼす影響に対して大きな懸念を抱いている。それにもかかわらず安倍晋三首相の政府はこの法案を一刻も早く通そうとしている。
Mr. Abe needs it to establish an American-style national security council. Washington has made clear that more intelligence cannot be shared with Japan until it has tighter information control. Of the six departments in Mr. Abe’s proposed security council, one department places China together with North Korea, while other departments focus on allies and other nations. This move reflects the confrontational stance the Abe government has been taking toward China and another sign of a hawkish foreign policy that may well harm civil liberties and create even more mistrust of the Japanese government in East Asia.
安倍氏がこの法案を必要としているのは米国方式の国家安全保障会議を設立するためである。ワシントンは、日本が情報統制をもっと厳しくするまでは今以上の機密情報を日本と共有することはできないと表明している。安倍氏が提案している国家安全保障会議は、6部門のうちの1つを中国と北朝鮮にあて、他の部門は同盟・友好国やその他の地域としている。この動きは、安倍政権が中国に対して取っているに対立的な姿勢を反映しており、市民の人権を害し、東アジアに今以上の日本政府への不信感を生み出すタカ派的外交政策の兆候であるとも言える。
(翻訳:乗松聡子 @PeacePhilosophy)
このブログの他の参考記事:
日本外国特派員協会:「特定秘密保護法案」は報道の自由及び民主主義の根本を脅かす悪法であり、撤回、または大幅修正を勧告します。
http://peacephilosophy.blogspot.jp/2013/11/foreign-correspondents-club-of-japan.html
『国家安全保障と情報への権利に関する国際原則(ツワネ原則)』の要約
(週間金曜日で最初に取り上げ、朝日新聞、共同通信、東京新聞などで続々紹介、アクセス急増!)
http://peacephilosophy.blogspot.ca/2013/09/global-principles-on-national-security.html
安倍氏がこの法案を必要としているのは米国方式の国家安全保障会議を設立するためである。ワシントンは、日本が情報統制をもっと厳しくするまでは今以上の機密情報を日本と共有することはできないと表明している。安倍氏が提案している国家安全保障会議は、6部門のうちの1つを中国と北朝鮮にあて、他の部門は同盟・友好国やその他の地域としている。この動きは、安倍政権が中国に対して取っているに対立的な姿勢を反映しており、市民の人権を害し、東アジアに今以上の日本政府への不信感を生み出すタカ派的外交政策の兆候であるとも言える。
(翻訳:乗松聡子 @PeacePhilosophy)
このブログの他の参考記事:
日本外国特派員協会:「特定秘密保護法案」は報道の自由及び民主主義の根本を脅かす悪法であり、撤回、または大幅修正を勧告します。
http://peacephilosophy.blogspot.jp/2013/11/foreign-correspondents-club-of-japan.html
『国家安全保障と情報への権利に関する国際原則(ツワネ原則)』の要約
(週間金曜日で最初に取り上げ、朝日新聞、共同通信、東京新聞などで続々紹介、アクセス急増!)
http://peacephilosophy.blogspot.ca/2013/09/global-principles-on-national-security.html
タイトルについて
ReplyDeleteはじめまして。
先日まで、ネット上で和訳を探していましたが、見つかりませんでした。仕方なく私訳に取り組んでいたところ、こちらの名訳に辿り着くことができました。
いわゆる「翻訳調」に陥らず、法案の具体的内容とわが国の世情を踏まえた、非常に読みやすい文章だと感じ入りました。
ただ、タイトルの
"Illiberal Secrecy"
は、この場合、
「自由主義に反する」
または
「自由主義に背く」
とした方が、全体の論調に見合うと思うのですが、いかがでしょうか。
浅学菲才を顧みずコメントさせていただきます。
また、全文未訳出の「ツワネ原則」の件、心から応援申し上げます。
Shirou Haiki 様
ReplyDeleteコメントを深く感謝します。
私がこの illiberal secrecy law を敢えて「自由主義とは言えない秘密法」と訳したのは、日本は米国のように一応自由主義国家ということになっているが実際は違うじゃないかという意味をこのタイトルの中に見出したからです。「自由主義に反する」と言ってしまうと、「そもそも自由主義に沿った秘密法案なんてあるのか」という問題が出てきて、「秘密法案が自由主義に反する」なんて当たり前じゃないかといいうようなタイトルになってきます。そういうこともあり、私はこの illiberal には「おおよそ自由主義国家とはもう標榜できなくなるようなひどい内容だぞ」という意味が込められていると読みました。タイトルをつけた人にそんな意図があったかどうかはわかりません。しかしもしそういう意図がなかったとしたらパンチのきかないつまらないタイトルになってしまうと思うのです。新聞のタイトルは大体どこか「ひねり」があることが多いです。そのひねりを表現すべくこのような訳にしました。
ご回答ありがとうございました。
ReplyDeleteご説明いただき、 illiberal secrecy law を敢えて「自由主義とは言えない秘密法」と訳された意図が理解できました。
新聞のタイトルの「ひねり」を苦労して表現されようとしていたわけですね。
少し気になったので後学のためにilliberalについて調べてみました。
(1)英和辞典
1)新英和中辞典(エキサイト辞書)
1 a 狭量な,偏狭な.
b 教養のない.
2 けちな.
3 下品な,卑劣な.
2)goo辞書(=weblio)
1 狭量な;偏屈な;反自由主義的 な, リベラルでない.
2 ((古風))教養のない, 学問がな い, 卑しい, 下品な.
3 ((古風))けちな.
(2)英英辞典
1)Longman
1 not supporting people's rights to say or do what they
want
[≠ liberal]:
2 not generous
2)The American Heritage
1.Narrow-minded; bigoted.
2.Archaic Ungenerous, mean, or stingy.
3.Archaic
といったところになるようですね。
こうしてみると、この社説は政治問題を扱っている訳ですから、当然、
①第一義的には、政治的な意味での
→リベラルでない、反自由主義的な
という形容詞としてilliberalを使いながら、
②その裏にある「ひねり」として
→狭量な、偏狭な
というニュアンスを込めている、と解されます。
そうしますと、日本語で「自由主義とは言えない」と書かれたとき、それを読んだ普通の日本人がその辺りの「ひねり」を汲み取れるか、という問題が生じるのではないでしょうか。
「英語ではこういう2つの意味があるんだよ」という注釈を付けた方が読者に分かりやすいと思います。
ご丁寧なご返答とリサーチに恐縮いたします。
ReplyDelete第二義的な「狭量」「けち」的意味が「ひねり」として入っているというのは私は考えていませんでした。その可能性はあると思います。
私が「ひねり」と思っていたのは、先のコメントに書いたように「本来リベラルであるはずの国の法律か」(まあアメリカに言われる筋合いはないのですが)といった意味でした。
さまざまな可能性があるということをこのコメントで展開したのでこれが注釈的役割を果たすでしょう。
感謝を
乗松聡子
【転載許可・リンクのお願い】
ReplyDelete先にilliberalの和訳についてコメントを投稿した者です。
さて、私は先日来、「みんなの国会中継」と題して、秘密保護法の国会中継を見ているネットユーザーの呟きをまとめ、ニュース速報として公開してきました。(9日前にupした記事は閲覧者が18,000を超えました。)
思いの外反響が大きく、また、まとめ記事の本数が、一定に達したので、この度、Nagoya Togetter Journalというサイトを立ち上げました。
今回、このサイトで、「特集・海外からの反応(仮称)」を予定しております。つきましては、このNYT紙の社説を転載させていただきたく、コメントいたしました。
一度サイトの内容をご確認の上、下部の「mail」をクリックし、諾否のご返答をいただければ幸いです。よろしくご検討くださいますようお願いいたします。
URL http://tomota12001.web.fc2.com/
転載条件
1.訳文の全文及び翻訳者氏名ならびに注釈にあたるコメントを掲載する。
2.出典を明記する。
3.リンクを張る。
お願い
1.外に転載条件がございましたら、mailにてご連絡ください。
2.海外の反響について、何か情報をお持ちでしたら、あわせてご紹介いただけると助かります。
以上、勝手なお願いで恐縮ですが、なにとぞご検討ください。
備考)shirou haikiはGoogleでのアカウントです。Twitterでは、@tomota12001としてツイートしています。
私の自主的翻訳の転載は自由です。タイトルを含め、もし一部訳語で独自のものを使われたかったらそれでもいいのではないでしょうか。私の翻訳を土台に一部修正したとか付記していただければ。
ReplyDelete転載許可ありがとうございました。
ReplyDelete後日upさせていただきます。
それから、ご存知かも知れませんが、アメリカ東海岸在住のレア眞海さんから
ワシントン・ポストやニューヨーク・タイムズを中心に、翻訳してくださってる方です。
↓
http://kobajun.chips.jp/?p=15318
との情報が入りました。ご参考まで。