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Monday, December 30, 2013

エドワード・スノーデン「声なき人間になるくらいなら国なき人間になる」 Edward Snowden: I Would Rather Be without a State than without a Voice.

Edward Snowden
米国のプログレッシブニュースサイト、『コモン・ドリームズ』12月17日付に掲載された、元CIA職員で米英による世界中での個人情報収集活動を暴露したエドワード・スノーデン氏のブラジル国民に向けた公開書簡が掲載されました。

NSA Surveillance Is about Power, Not "Safety"
An open letter to the people of Brazil
http://www.commondreams.org/view/2013/12/17-1

記事の写真に添えられたキャプションに、エドワード・スノーデンの言葉が紹介されています。「政府がその名において何をやっているのかを大衆は知る必要があります。そうでなければ、『統治される者の同意』など無意味なのです。情報が開示されなければ、統治される者の同意は、同意とはいえません。」 


この手紙の中のスノーデンの名言には力づけられます:


I would rather be without a state than without a voice. 

 「声なき人間になるくらいなら国なき人間になる」=「言論を失うぐらいなら国籍など要らない」。



エドワード・スノーデン「NSA の監視は『安全』ではなく権力のためのものだ 」


ブラジル国民に向けた公開書簡

2013年12月17日

http://www.commondreams.org/view/2013/12/17-1

(翻訳: 酒井泰幸)

以下の書簡は2013年12月17日ブラジルの新聞 A Folhaにポルトガル語で掲載された。原文は[スノーデンの内部告発を初めて報道した]グレン・グリーンウォルドのパートナーであるデイヴィッド・ミランダのフェイスブックにて提供されている。


 6ヶ月前、私はアメリカ 政府の国家安全保障局(NSA)の暗部から歩み出て記者のカメラの前に立ちました。私が世界の人々と共有したのは、ある国々の政府が全世界的な監視システムを構築しつつあるという証拠です。そのシステムは、私たちがどのように生活しているか、私たちが誰と話しているか、私たちが何を言っているかを、秘密裏に追跡します。もし私が目を見開いてカメラの前に立てば、家族や家を失い、私の命にも危険が及ぶかもしれないことは分かっていましたが、私は敢えてそう決心しました。世界の市民には、自分たちが生きているシステムを理解する権利があるのだという信念に、私は突き動かされていました。

 私が最も恐れたのは、私の警告に誰も耳を貸そうとしないことでした。しかし、これが全くの見当違いであったということほど、私にとって喜ばしいことはありませんでした。いくつかの国々での反響は特に私の心に残るものでした。ブラジルは、まさにそのような国々の一つです。

 私はNSAで、犯罪の疑いなどない全ての人々に対する監視が行われているのを目撃し、これが私たちの時代で最悪の人権侵害に発展するであろうという危機感を覚えました。NSAなど諜報機関の言い分では、私たち自身の「安全」のために、(つまりはジルマ[・ルセフ、ブラジル大統領]の「安全」のため、[ブラジル石油公社]ペトロブラスの「安全」のために、)私たちのプライバシーの権利を踏みにじって私たちの生活に侵入したというのです。 彼らはいかなる国の大衆にも、まして自国民にさえも、許可を求めたことはありませんでした。

 今日では、あなたがもしサンパウロで携帯電話を持っていれば、NSAはあなたのいる位置を追跡することができ、実際そうしています。彼らはこのような追跡を世界中の人々に対して毎日50億回も行っています。[ブラジル・サンタカタリーナ州の州都]フロリアノーポリスの人が、どこかのウェブサイトを見たなら、あなたがいつ何をしたかをNSAは記録します。[リオグランデ・ド・スル州の州都]ポルト・アレグレのお母さんが息子に大学の試験が良くできるようにと電話をかけたなら、NSAはその通話記録を5年以上も保存することができます。標的にした人の名声を傷つけることが必要な場合は、誰が男女の関係を持ったとかポルノ写真を見たとかいうことさえも追跡します。

 アメリカの上院議員たちは、これは「監視」ではなく「データ収集」なのだから、ブラジルの皆さんは心配する必要は無いと言います。皆さんの安全を確保するために行っているのだと言います。しかし彼らは間違っています。法的に正当な活動、つまり、個人を監視の標的にするときは特定の個人に対する筋の通った容疑に基づいてのみ行われるという合法的なスパイ活動は、合法的な法の執行[警察活動]とみなされますが、これとは天と地ほども違っているのが、すべてを見通す監視の下に全人民を置き、情報のコピーを永久に保存するという、この一網打尽の監視活動です。これらの監視活動はテロリズムとはまったく無関係でした。これらは産業スパイや、社会的統制、外交的な情報操作にまつわるものです。これらは権力にまつわるものなのです。

 多くのブラジルの上院議員たちはこれに賛同し、ブラジル市民に対する犯罪容疑の調査のため私に協力を要請しました。私は適切で合法なことなら何でも協力する意思を表明しましたが、不幸なことにアメリカ政府は私の能力を制限するため努力を惜しみませんでした。私がラテンアメリカに行けないようにするためエボ・モラレス[ボリビア大統領]の専用機を離陸阻止さえしました。どこかの国が無期限の政治亡命を受け入れてくれるまで、アメリカ政府は私の発言を妨害し続けるでしょう。

 私は半年前に、NSAは全世界に聞き耳を立てたがっていることを公にしました。現在、全世界は逆にNSAの言うことに聞き耳を立て、抗議の声を上げてもいます。そしてNSAは自分の耳に入ることが気に入らないのです。無差別の全世界的な監視という文化は、全ての大陸で公開討論と徹底した調査にさらされ、崩壊しようとしています。わずか3週間前のことですが、ブラジルは国連人権委員会を主導して、私たちがデジタル・ネットワークに踏み入ってもプライバシーが効力を失うことはなく、潔白な人々を集団監視するのは人権侵害であるということを、歴史上初めて認めさせました。

 いま時代の潮流は反転しました。私たちのプライバシーを犠牲にすることなく治安を享受することができる未来を、私たちはついに見ることができます。私たちの権利は秘密組織によって制限されてはならず、けっしてアメリカの政府高官がブラジル市民の自由を左右すべきではありません。集団監視の擁護者たちは、私たちが手にした監視技術の進歩は民主的な統制を危険なまでに追い越していると言っても信じないかもしれませんが、そんな彼らでさえも、大衆の監視は大衆自身によって議論されなければならない問題だということに、今は同意しています。

 私の良心的行動はこの宣言から始まりました。「私の言うこと全て、私のすること全て、私が話す相手の全て、創造性や愛や友情の表現が全て記録されるような世界に、私は住みたいとは望みません。これは私が支持したいと望むものではありません。これは私が築きたいと望むものではありません。これはその下で私が暮らしたいと望むシステムではありません。」

 その数日後、私に伝えられたのは、米政府が私の国籍を剥奪し、私を刑務所に入れようとしているということでした。私の発言の代償として私はパスポートを失いましたが、私は何度でも発言します。私は、政治的な安楽のために犯罪性を無視するような人間にはなりません。私は声なき人間になるくらいなら国なき人間になります。

 ブラジルの皆さんが私から一つだけメッセージを受け取ってくださるなら、これを覚えておいてください。私たち全員が、不正に反対しプライバシーと基本的人権を擁護するために団結すれば、私たちはどんなに強力なシステムからであろうと身を守ることができるのです。


エドワード・スノーデン


内部告発者のエドワード・ジョセフ・スノーデンは、アメリカ国家安全保障局(NSA)と中央情報局 (CIA)職員の元技術請負人で、最高機密の 米英両政府による大衆監視活動の詳細を報道機関にリークした。


1 comment:

  1.  NSAが権力のために監視しているというは、その通りだと思います。だからこそ、内部告発が続いてきたのではないでしょうか。

     ランパート誌の1972年8月号に掲載された記事でNSAの元分析官が電子情報機関の活動について明らかにしました。通信傍受のターゲットは事実上ソ連だとしていますが、どの国もターゲットになりえるともしてます。

    【“U.S. Electronic Espionage: A Memoir”, Ramparts, August, 1972】

    http://cryptome.org/jya/nsa-elint.htm

     当時は技術的な制約からターゲットを絞ったのであって、「友好国」はターゲットにしないというわけではなく、それだけの余裕がなかっただけです。現在の電子技術は飛躍的に進歩、ターゲットを選別する必要はなくなり、「友好国」も監視されるようになりました。エドワード・スノーデンの内部告発で各国政府が驚くというのは奇妙な話だと私は思います。(多分、驚いていないでしょう。)

     1976年5月21-27日号のタイム・アウト誌に載った「盗聴者」という記事でUKUSA、つまりアメリカのNSAとイギリスのGCHQの盗聴活動を明らかにしました。この記事を書いたひとり、ダンカン・キャンベルはその後も電子情報機関の活動を調査、1988年には地球規模の通信傍受システムECHELONの存在を明るみに出しました。

    【“The Eavesdroppers”, Time Out, May 21-27 1976】

    http://www.duncancampbell.org/PDF/1976-may-time-out-the-eavesdroppers.pdf

     ECHELONについては1990年代にニュージーランドでニッキー・ハガーが本にまとめたほか、ヨーロッパ議会も報告書を出しています。

     監視システムや暴動鎮圧技術のターゲットは、反体制派、人権活動家、学生運動指導者、少数派、労働運動指導者、あるいは政敵など、要するに権力者にとって邪魔な人や組織になる可能性が高いという問題意識がヨーロッパ議会にはあったようです。ヨーロッパ諸国は米英が行っている情報活動の危険性を認識していたということになります。

     1977年にアンドリュー・ドールトン・リーというアメリカ人がメキシコのソ連大使館前で殺人犯と間違われて逮捕されますが、取り調べの中でアメリカの衛星通信の傍受に関する情報などをソ連に渡していたことが発覚、友人で実際に機密情報を持ち出していたクリストファー・ジョン・ボイスも逮捕されました。

    (Robert Lindsey, "The Falcon & the Snowman," Diane Pub Co, 1979)

     ボイスは軍事衛星を製造していたTRWで働いていたのですが、そこで機密情報に接する部署に配属されます。そこで1973年に実行されたチリの軍事クーデターや1975年にオーストラリアであったゴフ・ホイットラム首相罷免にアメリカ政府が関係している事実を知り、アメリカに失望して情報を流したそうです。

     ただ、メディアには情報を流しませんでした。信用できないということを知っていたのでしょう。ホイットラムの件ではオーストラリアのパイン・ギャップにある通信傍受施設の問題も重要なファクターだったようです。

     21世紀に入るとアメリカ国防総省のDARPA(国防高等研究計画局)は大量の個人情報を収集、分析する目的で、TIAプロジェクトを開始しました。個人の学歴、銀行口座の内容、ATMの利用記録、投薬記録、運転免許証のデータ、航空券の購入記録、住宅ローンの支払い内容、電子メールに関する記録、インターネットでアクセスしたサイトに関する記録、クレジット・カードのデータなどあらゆるデータがターゲットです。これはスノーデンが告発する前から知られていました。

     街中に設置されたCCTVで監視され、GPSつきの携帯電話を持っていれば位置が特定され、電車に乗るときにICカードを使えば追跡され、自動車に乗っても車両認識システム(Nシステム)で追いかけられます。スマートフォンに生体情報を記録すれば、それも盗まれます。

     最近では虫のように小さな飛行機械を使って人びとを監視したり、暗殺したりすることも考えられ、あるいは小さなチップを体に埋め込んで管理に使ったり、頭に埋め込んで指令を送るという研究もされているようです。

     世界的には、1970年代から米英両国を中心とする情報機関(後にイスラエルが加わります)の情報支配活動は問題になっています。日本の法務省も興味を持ったようで、アメリカで開発された情報の収集分析システムを調査、その報告が1979年と80年に『研究部資料』という形で出ています。

     そのときに駐米日本大使館に一等書記官として勤務していたのが原田明夫であり、実際に動いていた人物が敷田稔です。原田は後に「組織的犯罪対策法(盗聴法)」の法制化を進め、検事総長に就任、敷田は名古屋高検検事長になっています。

     しかし、日本のマスコミがこうした問題を取り上げたでしょうか?私は寡聞にして知りません。個人的な話で恐縮ですが、私の情報支配に関する原稿を載せたのは月刊誌の「軍事研究」だけでした。2001年2月号に私が書いた「IT化社会の暗部」が掲載されています。権力が国民を監視している事実を明らかにしたくないと日本の「言論界」は考えているのでしょう。「特定秘密保護法案」の成立を本気で止めようとしていたとも思えません。

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