「月刊イオ」3月号の、「いまを視る」という時事問題を扱うコーナーに記事を載せていただきました。許可を得てここに転載します。大変読み応えのある「月刊イオ」の購読はこちらまで!
吹き荒れる米国の横暴と、抗う多極化勢力
2025年。自分は戦争をしない「平和の大統領だ」と言って二期目に就任したトランプ大統領は、この年だけで、イラン、イラク、ナイジェリア、ソマリア、シリア、イエメン、ベネズエラの7か国で600回以上も爆撃を行いました(「武力紛争位置・事象データ」による)。
そして2026年。ガザのジェノサイドが続いています。これも米国の支援がなければできない戦争です。ガザ政府メディア局によると、イスラエルは、昨年10月10日の「停戦合意」以降今年の1月上旬までに1200回近く停戦合意違反を行い、約500人のパレスチナ人を殺しました。冬のガザで、21人の赤ちゃんが凍死しました。西側メディアはもう報道さえしません。
23年10月7日のハマス蜂起の際にイスラエル人が約1200人殺され240人が捕虜となったことを理由に西側世界はジェノサイドを支持してきました。後に明らかになったのは、死者の相当数が、イスラエル軍によって殺されていたという衝撃の事実でした。イスラエルのメディア「ハーレツ」も報じています。当初西側メディアに氾濫した、ハマスが女性をレイプしたとか、赤ちゃんの首を切り落としたといった情報はすべてフェイクだったこともわかっています。
フェイクは政権転覆の手段
西側の政府やメディアは、戦争や政権転覆を正当化するために平気で嘘をつきます。言うことを聞かない国の指導者を「独裁者」として宣伝し、排除を正当化します。年始に米国が拉致したベネズエラのマドゥロ大統領夫妻も、石油の国有化という資源主権を掲げたウゴ・チャベス前大統領の政策を引き継ぐが故に、敵視されてきました。
新年から注目されているイランも同様です。1953年、モサデグ首相が「石油はイラン人のために使う」と外国資本に利益を独占されていた石油産業を国有化しようとしたところ、CIAが主導したクーデターで政権転覆され、パフラヴィ―2世による専制政治下、親米化が進みました。今回米欧やそのメディアはこの歴史を語らず、1979年のイランイスラム革命による政権を否定し、再び政権転覆を画策しているのです。
イランでは、通貨の暴落がきっかけで、最初は商店主などが中心の平和的なデモだったのが、数日後にはイスラエルの諜報機関モサドが、武装した暴徒を大量に注入しました。かれらは、モスクに火を放ち、警察官を生きたまま焼き殺しました。病院にも放火し看護師が死にました。テヘランだけでも治安部隊を100人以上、残忍な方法で殺しました。3才の女の子を含む一般市民も殺しました。
西側メディアでは、イラン当局が何千、何万の市民を殺したと連日報じましたが、米国や欧州にある「人権団体」と称する反イラン団体が恣意的に出す数字を横流ししているだけです。これらの団体には、米国の政権転覆機関NEDが出資しています。モサドの関与はSNSでモサド自身が公表していますし、元CIA長官も言っています。
これはバイデン政権時代から周到に計画されました。イーロン・マスク氏の衛星インターネットサービス「スターリンク」をイラン中に張り巡らし、暴動の指示に使ったのです。結局イラン当局が「スターリンク」による接続を妨害したことで、暴動が収まったのです。当局がインターネットを切断したのも外部勢力からイランを守るためでした。テヘラン大学のセイエド・モハマッド・マランディ教授が現地から証言しています。イラン人はこのような外国勢力の介入に怒り、全国で政府を支持する大規模デモが起こっていると。ベネズエラでも大統領夫妻奪還を訴える大規模デモが連日起こりましたが、西側メディアは無視し、政権転覆に都合のいい「反対派」の主張ばかり報道しました。
戦争と同じだけ殺す 西側の制裁
政権転覆に至るまで、その国を弱体化させるために行うのが制裁です。米国および西側諸国は、一方的な経済制裁を、約40か国、地球上の人口の3分の1をしめる地域に対して行っています。イランとベネズエラも、過酷な制裁を受けてきました。制裁の対象は主に、欧米に搾取されてきたアフリカ、中南米、ユーラシアなどのグローバルサウス諸国です。支配を許さず自己決定権を行使する国に、懲罰として制裁するのです。日本も米国に同調して制裁を行う側にいます。
制裁は、輸出入の制限や金融取引の遮断を通じて通貨の下落やインフレを招き、その結果、食料や医療機器、医薬品やエネルギー、水の不足という深刻な人道危機を招きます。昨年出た、医学誌「ランセット」の報告では、1971年から2021年の50年間の間、米国やEU諸国による制裁で、年間約56万4千人が制裁のために命を落としており、それは戦争による死者数と同等に価すると結論しています。それも、死者の半数は5歳以下の子どもです。
多極化の中、米国追従を保つ日本
世界ではいま、中国、ロシア、インドなどの新興勢力がBRICS経済圏を構築し、米国が支配するドル経済から脱却しようとしています。西側帝国主義の戦争や制裁から自国を守り、お互い助け合い繁栄していくという、世界的な脱植民地の動きでもあります。朝鮮戦争以来、最も長期間にわたって、米国と西側による敵視と制裁措置に耐えてきた朝鮮民主主義人民共和国も、今やロシアや中国との協力関係を築き、多極化勢力の一端を担っています。
残念ながら、日本は米国追随を重視するあまり、この流れから取り残されています。同じ西側の国である韓国やカナダの首脳も、今年になって中国を訪問し、協力関係を築いています。それに比べ日本の高市首相はどうでしょう。昨年11月7日の国会答弁で、「台湾有事」の際、自衛隊を派遣する可能性を語り、中国から激しい反発を受け、国内でも批判が上がったのに開き直って撤回もしていません。
朝鮮に対しても日本は敵視政策を続けています。2002年の「平壌宣言」に謳われた、植民地支配の歴史清算に着手もしていません。朝鮮学校に対し、教育無償化や支援金の対象から除外するという、独自制裁ともいえる人権侵害を行っています。朝鮮といえば「拉致問題」ばかりを言い、2国間に横たわるさまざまな課題への取り組みをブロックしています。「非核化」についても日本は朝鮮の非核化だけを語り、韓国や日本における米国の核の脅威を取り除くという、双方向の非核化について語ろうとしません。
2026年、平和のためには、情報操作に惑わされず、戦争・制裁・政権転覆で覇権を維持しようとする西側帝国の本質を見極めることが大事です。そして日本は、この帝国の従順な一部のままでいいのか、という根本の問いをそろそろ真剣に問い始めるときではないでしょうか。
(ジャーナリスト、カナダ在住)


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