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Tuesday, December 30, 2014

2014年最後に:書評紹介と、「終戦70周年」への警告

今年最後に、読み応えのある内容で知られるカナダ・バンクーバーの日本語月刊誌『月刊ふれいざー』10月号に載った黄圭(Hwang Kay)さんによる『よし、戦争について話をしよう。戦争の本質について話をしようじゃないか!』(金曜日刊)の書評を紹介します。




この本は2013年夏、映画監督オリバー・ストーン氏が、彼とThe Untold History of the United States (書籍およびドキュメンタリーTVシリーズ:日本語では『もう一つのアメリカ史』という題で出ている)を共著・共作したピーター・カズニック氏(アメリカン大学教授)と当ブログ運営者・乗松聡子の誘いで、カズニック氏と立命館大学の藤岡惇氏が20年にわたり行ってきている広島・長崎への学生の旅に一部参加しながら講演旅行をするという形で来日したときの記録です。私たちは沖縄まで足を延ばし、オリバーは沖縄が米軍基地に占領され「戦争が終わっていない」状態に驚き、その上に辺野古の海を埋め立てて新たな基地を造ることを「恥ずべきことだ」と言いました。今まで出た書評は当ブログ左上にリンクをまとめてあるのでご覧ください。

日本人が広島と長崎の歴史を記憶し教育する姿は素晴らしい。と同時に日本人は戦争中に自国がアジア諸国や連合軍捕虜に対して行った残虐行為の数々をはじめ、自らの歴史に直面すべきである。

2013年8月8日、長崎原爆爆心地
に献花するストーンとカズニック
オリバーが来日中口を酸っぱくして言っていた言葉です。米国を愛しているからこそ米国の他国への残虐行為を米国人に教えようとしてきている映画監督ならではの言葉だと思います。そしてこの言葉ほど明日から「終戦70周年」を迎えようとしている日本人が耳を傾けるべき言葉はないでしょう。

「300万人が犠牲になった」と、日本人の被害にしか目を向けず、内向きで自国中心主義的な戦争記憶を強化させて「平和教育」「記憶の継承」をしているつもりになっていてはいけないと思います。この自国中心主義こそが差別や暴力や戦争の原因になります。二度と戦争を起こさない記憶のし方。それは「日本軍『慰安婦』」をはじめとする加害の歴史に背を向けたり否定したりすることではなく、そういった歴史を直視しながら学びを深め、共有し、アジア隣国をはじめとする諸外国の信頼と友情を回復していくことに他なりません。

最近話題になっているアンジェリーナ・ジョリー監督『アンブロークン Unbroken』は、オリンピックにも出場した陸上選手ルイ・ザンペリーニ氏が空軍の兵士として太平洋戦争を戦い、日本軍の捕虜となり、大森俘虜収容所、新潟の直江津炭鉱などで過酷な労働と虐待を生き延びる物語です。日本語では「反日映画」とか言って騒がれていますが、観てもいないのによくそんなことが言えるものです。私は12月24日バンクバーで封切されたその晩に観に行きましたが、「反日」といったイメージとはかけはなれたものでした。このような映画を「反日」と呼ぶ人は、広島長崎の原爆や空襲を記憶する映画を「反米」映画と呼んだり、ホロコーストを記憶する映画を「反独」と呼んだりして糾弾するのでしょうか。自国中心主義もいい加減にしてほしいものです。

私は、このザンペリーニ氏のサバイバルと和解の物語は日本でこそ広く公開され、記憶されるべきものと確信しました。戦後70年、日本はこのような映画を積極的に上映してこそ歴史への責任、そして二度と戦争を起こさないために、現在と未来への責任を果たすことができるのではないかと思います。

12月30日 バンクーバーにて @PeacePhilosophy こと 乗松聡子

PS 以下『アンブロークン Unbroken 』のトレイラーです。


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