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Saturday, January 11, 2020

第二次大戦終結後75年の始まりに:加害の歴史の否定は許されません History denial is unacceptable: at the start of the 75th year of the end of WWII and Japan's defeat in the Asia-Pacific War

年末年始のご挨拶もせずにもう1月も中旬となってしまいました。今年もよろしくお願いします。今年は、アジア太平洋戦争日本敗戦、第二次世界大戦終結75周年という重要な節目であります。日本人としてどう大日本帝国の戦争と植民地支配の歴史に向き合っていくかの姿勢が、より問われる一年になっていくと思います。今年の第一弾は、一年以上前の記事なのですが、2018年11月1日地元の日本語紙「バンクーバー新報」に掲載してもらった記事が、ウェブ版に出ましたので、それをこのサイトにも転載します。2015年から2018年にかけて、カナダでは、日本軍「慰安婦」の歴史を記憶する「平和の少女像」や、州レベル、連邦レベルでの「南京大虐殺を記憶する日」が提唱され、それが日本政府および日本の右派、歴史修正主義者、またそれらに影響を受けた地元の人々によって激しい妨害を受けました。「カナダには広島の被爆者を象徴する像もある、広島長崎を記憶する行事は全国でやっている。ホロコーストを教える資料館もたくさんある。それらにはアメリカ系やドイツ系の人たちは反対しないし、反対したら恥ずかしいと思うのだが、旧日本軍の歴史を記憶しようとする行為には日本政府と日本人、日系人がこぞって反対するのはおかしいのではないか」と、当然の声を上げたまでに過ぎませんが、歴史否定を是とする安倍政権に引きずられた人たちがこぞってそのような声に対し圧力をかけバッシングを行うという事態が続きました。その、日本軍「慰安婦」や南京大虐殺を否定したい右派の言うところの「歴史戦」が北米など日本国外でどのように展開されてきているかを専門的に研究しているモンタナ大学准教授の山口智美さんをお迎えし、昨年11月21日、ブリティッシュコロンビア大学(UBC)のコリア研究所、日本研究所共催で講演を行いました。私もそこでカナダの例説明という位置づけで、2015-18年、カナダで吹き荒れた「歴史戦」についても総括しました。30人ぐらいの参加者を見込んでいましたが、平日の夜だったにもかかわらず70名の参加者が来て教室は溢れんばかりの盛況でした。この講演の記録は、まもなく、英語オンラインジャーナル「The Asia-Pacific Journal: Japan Focus」に発表します。

今回紹介する記事は、2018年秋の時点で、一度、日本語でしっかり地元の日本語使用者にしっかりとメッセージを送ろうと思って書いたものです。掲載してくれたバンクーバー新報には、いろいろな方面からの重圧があっても、公正なメディアであろうとする姿勢を示してくれたことに感謝したいと思います。

最後にこの場を借りて、昨年7月末に亡くなられた、ゴードン・カドタ氏に追悼の意を表したいと思います。カドタ氏は、「少女像」や「南京記念日」に反対するグループを率いておりましたが、意見の相違はあっても私とはお互いをリスペクトし交流する関係でした。昨年6月15日に私の自宅で行ったブックトークも来てくれて、お元気そうな様子だったので亡くなったと聞いたときは大変ショックでした。心より、お悔みを申し上げます。

(転載ここから)

2018年11月1日 第44号
 私はカナダに高校時代も含め通算23年住むジャーナリストです。「日系人が南京大虐殺記念日に反対するのは、例えばドイツ系がホロコースト記念日に反対するのと同じであり、おかしいのではないか」という問題意識でケベック州からBC州までの日系人が集まり、「Japanese Canadians Supporting Nanjing Massacre Commemorative Day南京大虐殺記念日を支持する日系カナダ人の会」を作りました(https://nanjingmemory2018.wordpress.com英語対応)。
 大学教授や医師、教師、学生や社会活動家など、カナダでいろいろな背景を持つ人たちが加入しています。名前を公表しているのは作家のジョイ・コガワ氏と私などですが、私に対しては、最近、インターネットや、日本語紙などで、批判が強まっているようです。9月19日には東京で「南京大虐殺はなかった」というテーマの集会が開かれました。現役の国会議員数人が登壇し、政府や保守系政治家たちが、カナダの記念日設定を阻止しようとしている様子がよくわかる集会だったようですが、そこでも私や私の仲間を名指しで批判する議員がいました。
 南京大虐殺記念日の是非についてはさまざまな意見があっていいと思います。これに反対する期成同盟のリーダーの方も、7月11日に日系ヘリテージセンターで開催された集会で、「日系人がみな反対しているわけではない」と述べています。ただ、私が一番気になるのは、この記念日に反対する人の中に、「南京大虐殺はなかった」という歴史修正主義者の言説に沿って、歴史自体を否定している人が少なからずいることです。歴史の否定だけは許されません。
 南京大虐殺は動かせない史実です。日本政府も、「日本政府としては、日本軍の南京入城(1937年)後、非戦闘員の殺害や略奪行為等があったことは否定できないと考えています。」と外務省のHPに記しています。これは、捕虜の大量処刑や、蔓延した性暴力のことに触れていない不十分な記述とはいえますが、政府も認めているのです。2006年9月に第一次安倍政権が発足してすぐ、首相は中国に赴き胡錦涛主席と会談、その年の末には「日中歴史共同研究」を発足させました。2010年に発表された日本側の専門家による報告書には、「日本軍による捕虜、敗残兵、便衣兵、及び一部の市民に対して集団的、個別的な虐殺事件が発生し、強姦、略奪や放火も頻発した。日本軍による虐殺行為の犠牲者数は、極東国際軍事裁判における判決では20万人以上(松井司令官に対する判決文では10万人以上)、1947年の南京戦犯裁判軍事法廷では30万人以上とされ、中国の見解は後者の判決に依拠している。一方、日本側の研究 では20万人を上限として、4万人、2万人など様々な推計がなされている。このように犠牲者数に諸説がある背景には、『虐殺』(不法殺害)の定義、対象とする地域・期間、埋葬記録、人口統計など資料に対する検証の相違が存在している。」とあります。
 日系人はカナダ総人口の約1%、その中で日本語を使う人はさらに少数派です。この記念日制定は私たちカナディアン全体の問題ですので、人口の1%にも満たない人々にしか届かない言語だけで議論するのではなく、カナダの公用語を使って、開かれた議論をしませんか。特に日本語紙やインターネットで、自分は匿名を保ちながら私を名指しし、強圧的な言葉を使って批判するようなやり方は、受け取る方には脅迫と取れます。このようなことが続く場合、しかるべき公共の人権侵害窓口に相談しようと思います。相手へのリスペクトを保ちながら議論をしましょう。
 7月にウィニペグのカナダ人権博物館を訪れました。ここの「沈黙を破る」セクションでは、連邦議会がこれまで承認した、カナダ国外で起きた5つの大量虐殺事件―アルメニア人大虐殺(1915年)、ホロドモール(1932―33)、ホロコースト(1933―45)、ルワンダ大虐殺(1994)、スレブレニツァの虐殺(1995)―について学ぶことができます。説明版では、「カナダでは、人々は人権侵害についてオープンに話す自由がある。カナダ人は、この自由を使い、世界中で行われてきた極端な暴力行為や非人道的行為について注目してきた。関心を持つカナダ人たちが連邦議会を動かし、5つの大量虐殺事件を『ジェノサイド』と承認するに至った。(中略)このような正式な承認によって、カナダは一つの国として声を上げている。隠蔽され、過小評価され、否定されてきた恐ろしい犯罪を白日の下にさらし、非難するのだ。」と明示しています。この博物館ではもちろん、先住民や日系カナダ人など、カナダ国内の人権侵害を重点展示しています。内外の人権侵害を広く知らしめ、歴史から学び、現在の人権侵害をなくすために、訪れる人を教育する優れた博物館です。
 「西側」に視点が行きがちなカナダの歴史記憶が、アジア移民の増加もあり、次第に東アジアにも目を向けて行くのは自然の成り行きでしょう。
 きたる12月11日の夜、ダウンタウンで、南京大虐殺追悼集会を開きます(詳細は後日)。ぜひお越しください。

のりまつ・さとこ
オンライン英字ジャーナル Asia-Pacific Journal: Japan Focusエディター。近著に、編著『沖縄は孤立していない 世界から沖縄への声、声、声』(金曜日)など。2006年以来、8月には日米の学生の広島・長崎の旅に講師・通訳として同行する。

(転載ここまで)

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「南京大虐殺記念日を支持する日系カナダ人の会」ウェブサイト
(2018年11月、同時にもう一つの日本語誌「ふれいざー」に掲載した記事を転載してあります)