3月21日、山口・湯田温泉の「中原中也記念館」を訪れたとき、中村稔氏による、原発事故をテーマにした未発表詩「駅前広場・未来風景」に出会い、心を揺さぶられました。中村氏に掲載許可をお願いしたところ、文芸誌に発表する6月以降に可能という嬉しいお返事をいただきました。それだけでなく、それまでの間、東日本大震災をテーマにしたもう一つの詩「三陸海岸風景」(『ユリイカ』一月号掲載)を提供いただき、掲載許可をいただきましたので、ここに紹介します。@PeacePhilosophy
三陸海岸風景
中村稔
潮でずぶ濡れになった男たち、女たちが
一人、また一人、重たげに足をひきずり、
海から陸へ上ってくる。家並が消え、瓦礫がうずたかく
廃墟となった故郷の跡地に彼らは立ち竦む。
やがて彼らは大地を叩いて慟哭する。
いったい私たちの死は何を意味したか?
私たちを攫った津波は天災だったのか?
原子炉のメルトダウンに誰も責任を負わないのは何故か?
彼らが大地を叩いて慟哭する声は
野を越え、山を越え、都会の雑踏にまぎれ、
切れぎれに絶えず私たちに問いかけている、
彼らの死は決して過去の暗黒に沈み去るわけではない。
彼らの死の意味を私たちは問い続けなければいけない。
私たちが彼らの死に負うべき責任を考え続けなければいけない。
私たちは忘れやすい。忘れやすいからこそ
私たちは彼らの慟哭する声に耳を傾けなければいけない。
潮でずぶ濡れになった男たち、女たちが
一人、また一人、重たげにに足を引きずり、
海から陸へ上ってくる。昨日も、今日も、明日も、
そして彼らは大地を叩いて慟哭し、慟哭してやまない。
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