前回に続き、アンドリュー・ナポリターノ判事の、Judging Freedom にようこそ。2025年4月8日火曜日(米国時間)、コロンビア大学のジェフリー・サックス教授を迎えた対談の訳を紹介します(一部省略、簡素化しています)。今回は米国がイスラエルのために行おうとしている対イラン戦争についての歴史的観点も含めたコメントをしています。トランプ関税については4月9日の「(中国以外)90日間停止」のニュースが入る前のコメントと承知ください。
ナポリターノ:
アメリカがイエメンのような無力な国を爆撃することに、軍事的・政治的・地政学的な利益があるのか、お尋ねしたいと思います。
そして今朝、アメリカ合衆国大統領自身が投稿した動画を目にしました。30人から40人ほどの男性たちが輪、あるいは楕円形の列を作り、ラマダンの断食明けの行事を始めようとしている場面です。何が起きたかは、検閲の都合でお見せできませんが、その瞬間、ピート・ヘグセスによる爆撃が彼ら全員を粉砕しました。この「投稿」「自慢」「殺戮」に、いったい何の意味があるのでしょうか?
サックス:
明らかに、そこに得られるものは何もありません。あるのは、アメリカが中東で繰り広げている高額で、残酷で違法な、そして永続的な戦争を、イスラエルのために延命させることだけです。
この戦争は、北アフリカ(リビア)、東アフリカ(スーダン、ソマリア)から、東地中海(ガザ、西岸地区、レバノン、シリア、イエメン)へと広がっており、今週ワシントンを訪問したネタニヤフの意図としては、さらにイランへと拡大しようとしています。
これは20年以上にわたって続く地域戦争です。そしてそれは、イスラエルがパレスチナ人に対して支配の政策をとっており、平和が存在しないために続いているのです。その結果、パレスチナ人への支持が地域全体に広まり、軍事的支援も含まれるようになっています。
ネタニヤフの方針は、これまでにも話してきましたが、交渉もしない、妥協もしない。ただ「粉砕する」のみです。標的となるのは、パレスチナ人だけではありません。リビア人、ソマリア人、スーダン人、レバノン人、イラク人、シリア人、そしてイエメン人――パレスチナの大義を支持する可能性のあるすべての人々です。
彼らにテロリストのレッテルを貼るのは簡単です。何と呼ぼうと自由ですが、実際にテロを行っているのはイスラエルであり、今まさにガザやパレスチナで行われているのは「ジェノサイド(大量虐殺)」です。これは、妥協しない反対勢力があるから起きているのではなく、イスラエルが「大イスラエル」の支配を絶対的に求めているからなのです。
これは、宗教的な欲望と世俗的な野望が入り混じったもので、ネタニヤフが率いる過激で極端な政権の思想であり、彼はこのビジョンを30年前から持ち続けてきました。
そして、我々アメリカはその共犯者です。トランプ大統領は、ネタニヤフ訪問の際に再びゴーサインを出しました。そのネタニヤフは、国際刑事裁判所(ICC)によって戦争犯罪および人道に対する罪で逮捕状が出されている人物です。
ここ数日でも、援助職員たちがイスラエルによって故意に殺害されるという残虐な事件が起きています。誰もそれを止められません。
ですから、「何の利益があるのか?」と問われれば、こう言うかもしれません――「フーシ派が我々を攻撃しているではないか」と。しかし彼らは、パレスチナの大義を守るために戦っているのです。ハマスもそうです。彼らが攻撃しているのは、同じくパレスチナの大義を守るためです。
問題の核心はここにあります。イスラエルは、「パレスチナの大義など存在しない」と言っているのです。「我々はあの者らを粉砕する。殺す。破壊する。民族浄化を行う。何十万人もの入植者を送り込み、ヨルダン川西岸を植民地化する。」と。
もちろん、そんなやり方で平和が訪れるはずがありません。でも、それが本当にアメリカの国益なのでしょうか?
永遠に続く戦争?国家を破綻させ、国際的に孤立させ、世界中との関係を絶ち、人々にこの状況が何であるかを見抜かせる――すなわち、現在進行中の抑圧と戦争犯罪への共犯であるという現実を。
これは非常に悲しいことです。なぜなら、戦争は政治的な問題を解決することはできません。ただ多くの人々を殺すだけで、根本的な政治的課題は解決できないのです。
ナポリターノ:
ダグラス・マクレガー大佐は、指摘しています。トランプ大統領がイランに突きつけた要求は以下の通りです。
A. 核施設の解体――これは、彼自身のCIAやDIA、他の諜報機関によって「存在しない」と報告されているものです。
B. 弾道ミサイルやその他の攻撃的兵器の解体。
こうした要求は、イランを主権国家ではない、ある種シリアのような状態にまで追い込むもので、「交渉の余地がない要求(non-starters)」です。
ですから私は思うのです。これらの要求は本当に目的なのか? それとも、ネタニヤフが熱望している戦争を始めるための単なる口実なのか?
サックス:
理解しておくべきなのは、この30年間のアメリカ外交政策の傲慢さです。相手と交渉などしない――爆撃し、脅し、アメリカの覇権が常に勝つと信じ込む。
イランの場合には、核計画を終結させ、その見返りに制裁を解除するという合意がありました。それが、2016年にアメリカを含む複数の国々によって締結された「包括的共同行動計画(JCPOA)」です。
ところが、ドナルド・トランプが2017年に大統領に就任すると、彼はこのJCPOAを即座に破棄しました――ちなみにそれはイスラエルの強い要請によるものでした。イスラエルはJCPOAによる非核化に関心があったわけではなく、イランを「7番目の戦争相手」にすることに関心があったのです。これは、我々が何度も議論してきたリストに載っていた国の一つです。イスラエルは、アメリカがイランを爆撃し、名目上は破壊することを望んでいます。
これは、朝鮮民主主義共和国(朝鮮)と起きたことともよく似ています。1990年代後半、クリントン大統領は朝鮮との間で非核化のための合意を交わしました。しかしアメリカは自らの義務を果たさず、朝鮮も合意の条項に違反しました。そうした状況で本来取るべき対応は、合意に立ち返り、それを再確認し、強化することです。
ところが、次に政権を取ったジョージ・W・ブッシュ大統領は、現代アメリカ史において最も破壊的な外交官の一人、ジョン・ボルトンを任命しました。ボルトンはこう言ったのです。「強硬路線をとれ。朝鮮を脅し、言うことを聞かせろ。」
さて、結局我々は何を得たのでしょうか?核を保有する朝鮮です。核兵器の備蓄と運搬能力は増え続けています――それは、我々が交渉による道を拒んだからです。
そして今、同じことが再び起ころうとしています。トランプはこう言うかもしれません――「そうだ、交渉しよう。ただし、我々の条件を受け入れなければ破壊する」と。そんなセリフは何度も聞いてきました。これがアメリカ式のやり方であり、何度も何度も失敗してきた方法です。
なぜかアメリカの指導者たちは、「相手を徹底的に軽蔑し、侮辱することが成果を生む」と信じているようです。しかし、これはまったくの逆です。私たちが日常生活で他者と良好な関係を築こうとする際にとるべき態度とは正反対です。隣人が気難しい人であったとしても、そんなふるまいは逆効果です。真の合意に達するには真逆のアプローチが必要なのです。
何が起きるかは誰にも分かりませんが、非常に高い確率で交渉は不信感の中で崩壊するでしょう。そしてその先に何が起こるかは、もはや神のみぞ知る状況です。戦争か? 核武装したイランか? それすら分かりません。
しかし合意に達するためには、両者の間に「信頼を築く」ことが不可欠です。核開発計画を終了させる、あるいはすでにほぼ終結している場合にはそれを最終的に完了させることが、双方にとって利益であると確認できること。そして見返りとして、脅迫・制裁・軍事攻撃のリスクを終わらせること――特に、アメリカに戦争を強く要求し続ける、おぞましいイスラエル・ロビーの影響下では、そうした努力が必要です。
そして私が「アメリカ」と言うとき、それはアメリカ市民のことを言っているのではありません。ワシントンにいる傲慢な連中のことです。彼らは「脅しと爆弾こそが唯一の解決策」だと信じており、1990年代初頭以来、30年以上にわたる終わりなき戦争を我々にもたらしました。信じがたいことですが、それが今なお続いているのです。
ナポリターノ:
さて、こちらが昨日の大統領の様子です。ネタニヤフ首相と昼食を共にした直後の発言です。この映像では彼の隣に首相が座っているのですが、画面には映っていません。とはいえ、トランプのイランに関する発言には、ネタニヤフの眉が思わずピクリと動いたであろう一節が含まれています。
記者:
「あなたの指導のもとで、アメリカはイランの核計画を軍事的に破壊し、この脅威を除去する準備ができているのですか?」
トランプ:
「もしイランとの協議がうまくいかなければ、イランは重大な危機に陥ると思います。言いたくないけれど、本当に重大な危機です。なぜなら、イランは核兵器を持ってはならないからです。これは複雑な話じゃありません。イランは核兵器を持ってはならない。それだけの話です。持ってはならない。
現在、核兵器を持つべきでない国が他にもありますが、それについても今後交渉によって解決できると思います。しかし、イランは核兵器を持ってはならない。そして、もし交渉がうまくいった場合、むしろイランにとっては非常に厳しい日になるでしょう。」
トランプはイランについて語っていますが、そのすぐ隣に座っているのは、違法に核兵器を保有している国の指導者です。
サックス:
実はアメリカは1950年代後半、イスラエルが核兵器を保有するのを防ごうとしました。アイゼンハワー大統領、そしてその後のケネディ大統領も反対していました。しかしイスラエルは巧妙に立ち回り、多くの非公式な工作、非難、否定を通じて、その制止をかいくぐったのです(ここでは詳細には触れませんが)。
いずれにせよ、イスラエルは明白に核保有国であり、アメリカの軍隊を自国のために投入することを全くためらいません。そして、これまでも不当な理由でアメリカを戦争に次々と引き込んできました。今また、それをイラン相手にやろうとしているのです。
トランプ大統領の言うとおり、それほど複雑な話ではありません。実際、彼が初めて大統領に就任した2017年1月20日の時点で、すでに合意(JCPOA)は存在していたのです。
もしかすると、彼はそれがオバマ政権下で交渉された合意だったというだけで受け入れられなかったのかもしれません。あるいは、イスラエル・ロビーの影響を受けたのかもしれません。あるいは彼のいつもの強硬姿勢――「相手が合意したなら、その合意は悪いに違いない」という考えに従ったのかもしれません。
「もっと圧力をかけて合意を崩壊させれば、さらに多くの要求を通せる。あるいは少なくとも自分にとってはそう思える」と。
でも合意はすでに存在していたのです。そして彼の言うとおり、合意は可能です。ただし、「イランを破壊するぞ」と脅すことは、その合意に至るための効果的な手段ではありません。しかし、合意は可能です。なぜなら、すでに「実例」が存在していたからです。
ナポリターノ:
では、アメリカの情報機関がイランをイスラエルへの脅威と見なしているかどうか、私たちは知っているでしょうか? イランがイスラエルにとっての脅威というよりも、むしろイスラエルのほうがイランにとっての脅威である――そう考える方が現実的ではないでしょうか?
サックス:
「脅威か否か」という単純な二元論ではありません。我々が他国をどう見なすか、どう接するかの問題なのです。もし我々が他国を爆撃で脅し、合意を破棄し、交渉した協定を自ら無効にしてしまえば——
ここで、ぜひ振り返っていただきたい歴史があります。1953年、アメリカはイランの民主主義を打倒しました。MI6とCIAの共同によるクーデターで、当時のイラン首相モハンマド・モサッデクを排除したのです。
モサッデクは選挙で選ばれた人気のある非常に聡明な首相でした。彼は、「地下にある石油は、イラン国民のものであって、イギリスやアメリカのものではない」と信じていたのです。勇気ある人でした。
その結果、1953年に政権転覆し、警察国家を敷きました。イランの人たちは怒りました。革命が1979年に起き、人質事件が起こり、レーガン大統領の就任と同時に人質が解放されたとき、アメリカは何をしたでしょうか?
アメリカはイラクを武装させました。サダム・フセイン――あの「親しい友人」であり、のちに我々が打倒した人物――に武器を供給し、イラン人を何十万人と殺させ、民間人に甚大な被害をもたらしました。イラクに武器・装備・資金を与え、イランを壊滅させる手助けをしました。
クーデター、政権転覆、警察国家。すでに何度も繰り返されてきた歴史です。そしてその後になって、「なんて酷い国だ、敵だ、脅威だ」と言うのです。
もし2016年の合意を順守していたならば――もし、イランがバイデン政権下で何度も、ほとんど絶え間なく差し出してきた「平和のシグナル」を真剣に受け止め、応じていたならば(政権はそれらをすべて無視するか、退けましたが)、今のような状況とは違ったはずです。
ワシントンの固定観念に凝り固まった人々の頭では、戦争と脅迫と爆撃と政権転覆以外に平和をもたらす手段があるということが理解できないのです。
ナポリターノ:
あなたは経済的観点から、私は法律および憲法の観点から、厳しく大統領の関税政策を批判しました。その違法かつ憲法違反で、経済的にも誤った関税政策が、今日の地政学にどのような影響を及ぼしているのでしょうか?
サックス:
まず第一に、世界中の人々は、たった3日間で時価総額10兆ドルが吹き飛んだことにまったく呆れています。新たな経済不況への突入や、ここ数十年で最も深刻な経済的な不確実性の高まりにも、誰もが不安を感じています。
中国は「いいえ、トランプ氏。我々はあなたの脅しには屈しません」と言いました。それに対してトランプ大統領は、「では関税率をさらに50%上乗せして、100%を超えさせる」と言い放ちました。
そして、ちょうど私たちがこの会話を始める直前、もし私が見た見出しが正しければ、アメリカ政府は実際にその方向に進もうとしているとのことです。詳細な報道を見ていないので確証はありませんが、たった3日で、世界経済の秩序は大統領令ひとつでひっくり返されました。
その文面はこう始まっています――「アメリカ合衆国大統領としての権限により、私は非常事態を宣言する…」
これは、民主主義国家としてのアメリカのあるべき姿ではありません。これは民主主義の劣化であり、逸脱です。私たちの国がこのようなやり方で運営されていること自体が、恥ずべきことです。そしてその影響は、全世界に及んでいます。
いま世界中の国々が、必死に対応しようとしています。中には「どうすればご満足いただけますか、閣下」と、ひざまずくような姿勢をとる国もあります。ホワイトハウスはそれを喜んでいるに違いありません。
しかし、他の国々はこう考えています。「これはまったく受け入れがたい。一人の人間が独断で、数十年かけて築かれた秩序を破壊するなど許されない」と。
多くの国々が今こう自問しています。「我々の貿易相手国は誰なのか?来週、何が起こるのか?関税が適用されたら、我々はどうすればよいのか?」
私は、非常に多くの国々が急速に「我々はもっと相互に協力しなければならない」という結論に達していると思います。アメリカが、彼らの市民の生活の基盤を破壊しつつあるからです。
欧州委員会のフォン・デア・ライエン委員長と、中国の首相の間で通話が行われ、「これ以上トランプ氏の決定が世界経済に壊滅的な影響を与える前に、今すぐ安定のための交渉しなければならない」と確認されました。
ですから中国とEUは、成熟した対応で、これ以上の悪化を防ごうとしていると私は願っています。
前回申し上げたように、インドと中国は冷静でバランスの取れた関係を維持するための措置を講じています。中国・韓国・日本も同様です。ASEAN――東南アジアの10か国――も、域内統合をより強化するための会合を重ねています。7億人を抱えるこの地域が、中国との統合をさらに深めなければならないという認識を持つようになったのです。
トランプは、議会での審議も、法にもとづく投票もなく、アメリカのビジネス界や世論の支持もなく、たった一人で「大統領令」で世界全体を危機に陥れました。
この危機は、多くの国々を「防衛的連携」へと駆り立てることでしょう。他国にとって、アメリカはもはや重大な経済的脅威となっているのです。
(以上)
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