岩波ブックレット
原発とヒロシマ
「原子力平和利用」の真相
田中利幸
ピーター・カズニック
(翻訳 松下ノア 乗松聡子)
岩波ブックレットウェブサイトより。
福島原発事故は,いまだ収束の目途も立たず,深刻な状況が続いています.広島,長崎に原爆を投下され,核の惨劇を自ら経験した日本.その日本が,戦後60年以上を経て,再び大規模な核の脅威に襲われているという現実――.このブログにおける田中利幸氏の記事はこちらを、ピーター・カズニック氏の記事はこちらをご覧ください。ブログの運営者はこの著者二人と広島長崎の旅等で一緒に仕事をしており、その縁で、松下ノアさんと共に翻訳をお手伝いすることになりました。このカズニック氏の論考の元の英語版は The Bulletin of Atomic Scientists および The Asia-Pacific Journal: Japan Focus (田中利幸氏の紹介文付き)にあります。日本語版はここです。
被爆国・日本は核の危険性に目をつむり,戦後,原発政策に突き進んでいきました.その背景に,アメリカが打ち出した「原子力平和利用」戦略があったことは,最近になって,よく指摘されています.しかしアメリカが,まさに被爆地である広島を「原子力平和利用」戦略の「宣伝」のターゲットにしたことは,あまり知られていません.被爆地が自ら「平和利用」の意義を主張することが,アメリカの核戦略を正当化することにとって,この上なく有用だったのです.
本ブックレットでは,広島市立大学広島平和研究所教授の田中利幸氏と,アメリカン大学核問題研究所所長のピーター・カズニック氏が,アメリカの「原子力平和利用」戦略がどのような経緯をへて,どのような意図の下に誕生したのか,そして,広島に対してどのような工作を仕掛けたのか,そのことが日本に与えた影響などを検証しています.戦後の日本の原子力政策の,いわば「原点」に迫る内容となっています.
カズニック氏は,1995年,スミソニアン宇宙航空博物館で,原爆投下が広島にもたらした被害と惨状にはまったく触れずにB29爆撃機エノラ・ゲイを展示したことに抗議し,精神医学者ロバート・リフトン氏や歴史家のジョン・ダワ―氏などを招いてアメリカン大学で会議を開催.同年より,アメリカの学生グループのための広島・長崎への研修プログラムを毎年実施するなど,核や広島・長崎の問題に情熱を注いできました.
原発政策のゆくえを考える上でも,ぜひこの機会に,読んでいただきたい一冊です.
(編集部・田中宏幸)
田中利幸(たなか・としゆき)
西オーストラリア大学にて博士号取得.現在,広島市立大学広島平和研究所教授.著書に『知られざる戦争犯罪』(大月書店,1993年),『空の戦争史』(講談社,2008年),Hidden Horrors: Japanese War Crimes in World War II(Westviews, 1996),Comfort Women: Sexual Slavery and Prostitution during World War II and the US Occupation(Routledge, 2001).共編著にBombing Civilians: A Twentieth-Century History(New Press, 2009), Beyond Victor's Justice?: The Tokyo War Crimes Trial Revisited(Brill Academic, 2011)などがある.
ピーター・カズニック(Peter Kuznick)
ラトガーズ大学にて博士号取得.現在,アメリカン大学歴史学部准教授であり同時に同大学核問題研究所・所長.著書にBeyond the Laboratory: Scientists as Political Activists in 1930s America(Chicago Univ. Press, 1987)や共著『広島・長崎への原爆投下再考 日米の視点』(法律文化社,2010年)がある.オリバー・ストーン監督制作の連続テレビ・ドキュメンタリー番組『アメリカ秘史』のスクリプト執筆も担当.
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@PeacePhilosophy
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