Pages

Tuesday, July 19, 2011

田中利幸のティルマン・ラフ批判-ウラン採掘問題について

このサイトにも度々論文を寄稿している、広島市立大学平和研究所教授の田中利幸さんがメールで共有してくれた意見を掲載します。ここで田中氏が批判しているティルマン・ラフ氏は核兵器廃絶国際キャンペーン代表、オーストラリア・メルボルン大学ノッサル国際医療研究所準教授。「子ども20ミリシーベルト」問題では積極的に発言しており、このサイトでも共同新聞寄稿論説の和訳「福島の子どもたちを守らねばならない」を紹介しており、IPPNW(核戦争防止国際医師会議)からの高木文相への手紙(5月5日「福島の子どもたちの被曝許容量は有害であり、保護義務を放棄している」)にも共同署名している、国際的に知られた反核医師です。ウランは、三大産出国のカナダ、カザフスタン、オーストラリアがそれぞれ約20%、つまり三か国で全世界の60%を産出しています。ウラン採掘問題についてのラフ氏の態度の矛盾を指摘する田中氏の主張からは、ラフ氏だけではなく、人間の安全よりも自国の産業の利益を優先する政治家や有識者全体に対する監視の目を持たなければいけないというメッセージを受け取ります。

★★★

田中利幸です。

朝日新聞社が主催する国際シンポ「核兵器廃絶への道」(7月31日、於広島。下記参照)に、オーストラリアの ICAN代表、ティルマン・ラフがパネリストとして参加します。

ティルマンは数年前までは、はっきりと「ウラン採掘反対」を表明していました。しかし、労働党政権になってから、彼の公の場でのウラン問題に関する意見表明は変化しました。今年5月に彼が共同通信に送った福島原発事故による放射能問題に関する短いコメントの中でも、ウラン採掘については "to be very tightly restricted, and extraction of plutonium from spent nuclear fuel to cease" (厳しく制限すべきで、使用済み核燃料からのプルトニウム抽出は停止すべきである)と書いています。「厳しく制限すべき」で、「即時停止すべき」とは言っていません。

ウラン採掘をいったいどうやって「厳しく制限」できるというのでしょうか?これは言葉の遊びにしか私には思えません。「制限」したところで、輸出されたウランの使い方に、オーストラリアやカナダなどの輸出国は、なんらの制限力も持っていません。こんなことはティルマン自身にもはっきり分かっているはずです。それを敢えて言う彼の真意はどこにあるのでしょうか。目的を達するためには政治的妥協が必要だと、おそらく彼は答えるでしょう。しかし、この種の政治的妥協で利益を得るのは権力をもっている政治家と企業であり、妥協したほうは、政治的に利用されるだけです。この類いの失敗をした人間は世界中でわんさといます!

また、今月初めに、元豪州首相、マルカム・フレイザーが出した声明も、基本的に同じラインに沿って書かれています。それも全く不思議ではありません。なぜなら、これもオーストラリアでは周知のことですが、フレイザーの覆面ライターはティルマンだからです。
http://www.icanw.org/node/5698

確かに、元自由党の党首であり、現役時代には米国べったりの政策をとっていた人物がここまで思想変化し、ティルマンをアドバイザーとして使うこと自体はすばらしい変化だと思います。しかし、福島原発事故の直後にメルボルンで私がフレイザー氏とある晩餐会で顔を会わせたときも、彼は、「日本の原子力技術は世界最高レベルで、事故が起きたのは大地震と大ツナミという予期しない天災のために引き起こされた不幸なできごとだ」と繰り返し述べていました。私は「天災ではなく、人災である」と一度だけ反論しておきましたが、あとは議論してもムダだと思い、それ以上は何も言いませんでした。本当は、「あなたが首相時代に推進した日本へのウラン輸出のせいで、今の福島原発問題もあるのですよ」と言いたかったのですが.......。

ティルマンが代表を務める ICAN のウエッブサイトは数年前までは、ウラン採掘反対をはっきりと全面に出していました。しかし、今は、これもありません。http://www.icanw.org/

ひじょうに残念なことです。

みなさんシンポを聴講されるようでしたら、ウラン問題について彼が何を言うのか、あるいは言わないのか、どうか、よく注意して聴いて下さい。そして、間違っていることには、はっきりと「間違っている」と声を上げましょう。

★★★

以下朝日新聞サイトより、シンポジウムの案内。
http://www.asahi.com/shimbun/sympo/release/110702.html 

朝日新聞シンポジウム核兵器廃絶への道、31日広島でシンポ ~いま、何を問いかけるか

 東日本大震災に伴う原発事故で、核エネルギーのあり方が国際的に問われています。そのなかで、核兵器の廃絶に向けた道筋をどのように模索するべきなのでしょうか。朝日新聞社は国際平和シンポジウム「核兵器廃絶への道~いま、市民社会から何を問いかけるか」を広島市、広島平和文化センターと主催します。後援は長崎市、長崎平和推進協会、広島ホームテレビ、長崎文化放送です。

 ◇7月31日(日)午後1~5時、広島国際会議場(広島市中区中島町の平和記念公園内)

 ◇ギタリスト・BunKenさん/「イマジン」など演奏▽特別スピーチ/オノ・ヨーコさん▽被爆者証言/「ひろしま音読の会」による朗読▽パネル討論=ジョージ・パーコビッチ、ティルマン・ラフ、水本和実、目加田説子の各氏

 ◇450人、無料。はがきかFAX、メールに郵便番号、住所、氏名、年齢、電話番号を書き、〒530・8211(住所不要)朝日新聞関西スクエア・平和シンポ係(FAX06・6443・4431、メールsq-sybox@asahi.com)。7月19日(火)必着。聴講券を送ります(応募多数の場合抽選)。

    *

 ◆オノ・ヨーコ
 前衛美術家。1960年代後半から、故ジョン・レノン氏とともに平和運動を展開。今年度ヒロシマ賞受賞。78歳。

 ◆ジョージ・パーコビッチ(米国)
 カーネギー国際平和財団副理事長。オバマ政権の核政策に詳しい。外交問題タスクフォース委員。52歳。

 ◆ティルマン・ラフ(豪州)
 核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)代表。医師の立場から核戦争防止の国際運動に尽力。56歳。

 ◆水本和実(みずもと・かずみ)
 広島市立大学広島平和研究所副所長(教授)。元朝日新聞記者。98年同研究所に。核軍縮専攻。54歳。

 ◆目加田説子(めかた・もとこ)
 中央大学総合政策学部教授。97年から地雷廃絶日本キャンペーン(JCBL)理事。NPOを研究。

1 comment:

  1. 個人的な昔の体験ですが・・・何らかの組織の一員として活動しようとすると、その組織の事情や論理に引きずられことがよくあります。ラフさんも引きずられているのかもしれませんね。

    「原子力村」などは典型的ですが、企業は勿論、政党や党派でも聞く話です。組織の中で自分の意志を維持することは簡単でないと思います。

    そうした意味で、現在、日本で広がっている反原発の動きは期待できると感じています。組織の影が薄いからです。自立した個人と個人が連携することで世の中を変えられる、そう思っています。

    ReplyDelete