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Thursday, April 28, 2011

「福島の子どもたちを守らねばならない」:ティルマン・ラフ 共同通信英文記事和訳 Tilman Ruff: Children of Fukushima Need Our Protection (with Japanese translation)

日本国外の専門家からも、「子どもに年間20ミリシーベルト」問題に異論が出ています。共同通信の英語版(4月26日)に、核兵器廃絶運動で活動を続けてきたオーストラリアの医師、ティルマン・ラフ氏の論説が掲載されました。これの日本語記事が日本のメディアに出てきているかどうかは未確認ですが、田中泉さんの翻訳協力を得て、ここに紹介します。(記事内リンクはブログ運営者がつけています。)

この問題についての過去の投稿も併せてご覧ください。

「子どもに対して年間20ミリシーベルト」撤回を求める緊急署名(締め切り4月30日)

福島の学童の被ばく限度について(意見交換)


福島の子どもたちを守らねばならない

ティルマン・ラフ

メルボルン 4/26 共同  

今週初め、私は文部科学省が福島の子どもの電離放射線の許容線量を引き上げたと知り、私は大変な不安に襲われた。

かれらが定めた毎時3.8マイクロシーベルトという値は、一年分にして33ミリシーベルト(mSv)以上に相当する。それが幼稚園児、保育園児、小学生、中学生に対し適用されるのである。このことについて正確に考えてみたい。(訳注参照)

放射線が健康にもたらす危険は線量に比例する、というのが一般的な科学的見地である-線量が高ければ高いほどリスクは大きく、リスクが発生しないレベルなど存在しない。

すべての放射線被曝はできるかぎり低く抑えられるべきであり、一般人については自然放射線と医療措置によるものを含めても年間1mSvを超過すべきではない、と国際放射線防護委員会(ICRP)は勧告している。また原子力産業で働く労働者については5年間の平均線量として年間最大20mSvまでとし、かつ年間50mSvを超える年があってはならない、と。

すでに国際基準より高かった日本の労働者の最大許容線量100mSvは、福島の大事故を受けて250mSvまで引き上げられた。

米国国立科学アカデミーBEIR VII報告書によれば、1mSvの放射線(被曝)は固形癌(白血病以外の癌)については約1万人に1人、白血病では約10万人に1人、癌による死亡では17500人に1人のリスク上昇をもたらすものとみられる。

だがもっとも見落としてならない点は、全ての人間が同じレベルのリスクに晒されるわけではないということだ。放射線による癌のリスクは幼児(一歳未満)の場合、成人の3-4倍になる。また、女の幼児は男の幼児に比べ、2倍感受性が強い。

女性全体の放射線被曝による癌のリスクは、男性に比べ4割高い。また放射線に対して誰よりも敏感なのは、母親の子宮にいる胎児である。

母親がX線検査を受けると胎児は10~20mSvの線量を被曝する。これにより15歳までの子どものあいだの癌の発症率が四割上昇していることが、この分野では先駆的な「オックスフォード小児癌サーベイ」の調査で判明した。

ドイツで最近行われた全国の小児癌登録データ25年分の研究では、通常運転時であっても、原発はそこから5キロ圏内に暮らす5歳以下の子どもの白血病のリスクを2倍以上上昇させていることが明らかになった。

50km以上離れた場所でも、リスク上昇がみられた。これは予想をはるかに上回っており、子宮の中ないし外にいる子どもが放射線に対して特にぜい弱であることを強く示している。

よくある外的な放射線計測器で測られる被曝だけでなく、粒子を呼吸によって肺に吸い込んだり、汚染された食物や水を通して取り込んだりすることで、福島の子どもたちは内部被曝をすることになる。人々の体内には食物連鎖を通して多量の放射性物質が濃縮されるのだ。

一人の親、そして医師として言う。福島の子どもたちがそのように有害なレベルの放射線被曝をすることを許容することは、我々の子どもたちや未来の世代にたいする保護・管理責任の許されざる放棄である。

(ティルマン・ラフ 核兵器廃絶国際キャンペーン代表 オーストラリア・メルボルン大学ノッサル国際医療研究所準教授)

==共同

訳注:国は、一般人の年間被曝は1ミリシーベルト(1000マイクロシーベルト)としてきたが、今回の事故が起こり、大人どころか子どもの年間被ばく量の許容範囲を20倍の20ミリシーベルトに引き上げた。文科省は校庭活動などの屋外活動を一日8時間、残りの16時間は屋内で過ごすと想定し、毎日8時間3.8マイクロシーベルト、16時間1.52マイクロシーベルト浴びたとして、年間20ミリシーベルト(20,000マイクロシーベルト)になるという計算の上で校庭活動等の限度を毎時3.8マイクロシーベルトと定めている。この計算過程は報道ではっきり示されなかったこともあり、ティルマン・ラフ氏はそのまま毎時3.8を24と365でかけて、年間33ミリシーベルトと算出しているようだ。これは誤りではあるが、年間20ミリシーベルトだろうが33ミリシーベルトだろうがこの記事におけるラフ氏の論点や結論には影響を及ぼさない。(参考:『福島県内の学校等の校舎・校庭等の利用判断における暫定的考え方について』文科省ホームページhttp://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/23/04/1305174.htm )

原文:http://english.kyodonews.jp/news/2011/04/87835.html 

翻訳:田中泉 訳注:乗松聡子

Kyodo, April 26

OPINION: Children of Fukushima need our protection

By Tilman Ruff

MELBOURNE, April 26, Kyodo
I was dismayed to learn that the Ministry of Education, Culture, Sports, Science and Technology earlier this week increased the allowable dose of ionizing radiation for children in Fukushima Prefecture.

The dose they set, 3.8 microsieverts per hour, equates to more than 33 millisieverts (mSv) over a year. This is to apply to children in kindergartens, nursery, primary and junior high schools. Let me try to put this in perspective.

Widely accepted science tells us that the health risk from radiation is proportional to the dose -- the bigger the dose the greater the risk, and there is no level without risk.

The International Commission on Radiological Protection recommends that all radiation exposure be kept as low as achievable, and for the public, on top of background radiation and any medical procedures, should not exceed 1 mSv per year.

For nuclear industry workers, they recommend a maximum permissible annual dose of 20 mSv averaged over five years, with no more than 50 mSv in any one year.

In Japan the maximum allowed annual dose for workers, 100 mSv, was already higher than international standards. This has been increased in response to the Fukushima disaster to 250 mSv.

The U.S. National Academy of Sciences BEIR VII report estimates that each 1 mSv of radiation is associated with an increased risk of solid cancer (cancers other than leukemia) of about 1 in 10,000; an increased risk of leukemia of about 1 in 100,000; and a 1 in 17,500 increased risk of dying from cancer.
But a critical factor is that not everyone faces the same level of risk. For infants (under 1 year of age) the radiation-related cancer risk is 3 to 4 times higher than for adults; and female infants are twice as susceptible as male infants.

Females' overall risk of cancer related to radiation exposure is 40 percent greater than for males. Fetuses in the womb are the most radiation-sensitive of all.

The pioneering Oxford Survey of Childhood Cancer found that X-rays of mothers, involving doses to the fetus of 10-20 mSv, resulted in a 40 percent increase in the cancer rate among children up to age 15.
In Germany, a recent study of 25 years of the national childhood cancer register showed that even the normal operation of nuclear power plants is associated with a more than doubling of the risk of leukemia for children under 5 years old living within 5 kilometers of a nuclear plant.

Increased risk was seen to more than 50 km away. This was much higher than expected, and highlights the particular vulnerability to radiation of children in and outside the womb.

In addition to exposure measured by typical external radiation counters, the children of Fukushima will also receive internal radiation from particles inhaled and lodged in their lungs, and taken in through contaminated food and water.

A number of radioactive substances are concentrated up the food chain and in people. As a parent, as a physician, the decision to allow the children of Fukushima to be exposed to such injurious levels of radiation is an unacceptable abrogation of the responsibility of care and custodianship for our children and future generations.

(Tilman Ruff is chair of the International Campaign to Abolish Nuclear Weapons and associate professor at the Nossal Institute for Global Health at the University of Melbourne, Australia.)

==Kyodo

2 comments:

  1. Anonymous6:00 am

    でも、線量で測ることには意味がないという見解もありますよね。 訳者

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  2. 田中利幸7:24 am

    田中利幸です

    子どもに対する年間被曝基準を20ミリシーベルトに強要する日本政府のやり方には今更驚きませんが、もちろん強い批判の声を上げ、撤回させる必要があります。

    この問題に関して豪メルボルン大准教授
    ティルマン・ラフ(熱帯伝染病防止専門医学者で豪IPPNW元会長)が、日本のメディア(共同通信4月26日付)を通して厳しい政府批判をしたことは、いろいろなメール通信で皆さんご承知のことと思います。別段新しいことを言っているわけではありませんが、もちろんこうした海外からの批判も私たちにとってはありがたい援護運動です。


    私はティルマンとは25年以上の付き合いの間柄ですので、公の場であまり批判はしたくないのですが、友人だからこそ敢えて苦言を呈しておきたいと思います。

    その批判とは、数年前に豪州政府が日本政府と 共同で立ち上げたICNNDのための豪州市民代表として彼がアドヴァイザーになった直後から、彼は豪州のウラン採掘・輸出について公の場で批判することを止めてしまったことです(個人的にはウラン採掘・輸出反対だとは言っていますが)。ICNNDの共同議長を務めたエヴァンズも、豪州のウラン問題については一切言及しませんでした。つい先日、豪首相ギラードが東京に来たおりにも、「エネルギー問題で困っている日本にオーストラリアは石炭などの鉱物資源輸出を大いに拡大する」と述べていましたが、ウランについては全く言及しませんでした。日本が輸入するウランの30パーセント以上は、オーストラリアが提供しており、それどころか、NPTに参加していないインドや中国にまでウラン輸出を拡大しようと豪州政府は努力しています。にもかかわらず、豪国内では原発は設置しないというのが豪州政府の政策です。ウラン輸出で利益をあげ、その結果、外国は危険にさらしても、自国さえ安全であればいいという、あまりにも身勝手な政策に憤慨せざるをえません。

    ティルマンがそれほどまでに日本の子供の安全を心配するのなら、なぜこのような自国のウラン政策に関して公の場で黙して語らないのでしょうか。これでは、一方でウランを大量に、核兵器保有国にまでなりふりかまわず輸出しておきながら、他方では核兵器廃絶を唱えるエヴァンズやギラードと同じ欺瞞的な政治屋と違わないことになります。彼が主催するICANは、福島原発事故が起きた直後にメルボルン市内で集会を開きましたが、このときも、東京電力や日本政府の批判はしても、自国政府のウラン政策については全く一言も触れませんでした。

    オーストラリアの環境保護団体、Friends of Earth や Green Peace
    は熱心にウラン採掘・輸出批判のキャンペーンをやっており、福島原発事故が起きてからは、さらに運動を強め、労働党の国会議員や閣僚に政策変更を要求して続けています。ところがICANは、こうした運動には全く関わっていませんし、こうした環境保護団体が開く集会にすらスタッフが顔を出すことはありません。ティルマンと同 じメルボルン 大学医学部の医者の中には、Doctors for Renewable Energy (再生エネルギーのための医者たちの会)に加わり、原子力はもちろん石炭・石油に替わる自然エネルギーで人間の健康を取り戻そうという運動を熱心にやっている医者もいます。http://dea.org.au/
    これにもティルマンやICANは関わっていません。

    ティルマンは、豪州政府が自由党政権のときにはウラン政策を公の場で批判してきました。ところが労働党政権に変わり、自分がICNNDアドヴァイザイアーになってから、突然、ウラン問題については公の場では黙して語らなくなりました。したがって、ウラン問題について知識や関心がないわけではないのです。このような 日和見主義に陥っていることはひじょうに残念です。これでは「核廃絶」などできるはずがありません。

    1950年代の「原子力平和利用」という欺瞞政策に日本の反核運動が洗脳されてしまい、このためにひどく反核運動が弱体化されたことについては、ごく簡単ですが、その歴史的背景を説明した拙論を、アメリカン大学のピーター・カズニックと一緒に、つい先日発表しましたので、ご笑覧いただければ幸いです。(この問題については、近い将来、もっと詳しい論考を書くつもりでいます。)
    http://japanfocus.org/-Yuki-TANAKA/3521

    ティルマンやICANが、この日本のこれまでの反核運動の弱点を参考に、自分たちの運動のあり方を深く再検討することを祈ってやみません。

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