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Wednesday, July 13, 2011

「見えないものと格闘する ~試行錯誤の除染~」伊藤夏子の福島報告II Fukushima Report by Natsuko Ito II

5月末に福島市を訪ね、保育所の汚染状況や、地元の人たちと行政側との交渉を報告したエッセイ「見えないものが人々を分断している」を投稿してくれた伊藤夏子さんが、福島市に戻り、除染活動に参加しました。


見えないものと格闘する ~試行錯誤の除染~

伊藤夏子

7月2日から一泊二日で福島市を再び訪ねた。2日は、県主導の小学校通学路の除染に参加した。
3日は、5月末に訪問した市内の保育所で除染を行った。

5月31日、放射能の低減を求める父母たちに対し福島県災害対策本部原子力班が示した対策は、校庭の空間線量の「モニタリング」および線量が高い校庭の表土除去だけであった。

しかし、この時の父母の訴えが職員の心に響いたのであろう。県原子力班は6月下旬、通学路を含む学校周辺の除染に着手した。

第一小学校に集合した参加者

7月2日、県庁の真向かいにある市立第一小学校周辺の除染が行われた。

朝9時、学校に集合したのは日本原子力研究開発機構や電気事業連合会などの関係者、地元建設業者、ボランティアの総勢約40名。皆、肌の露出を避け、長靴を履いていた。マスクと手袋(使い捨ての布手袋の上にゴム手袋を装着)は支給された。

手順は次の通りであった。

測定器はガンマ線専用のAloka TCS-172

① 除染前の地上50センチの空間線量を調べるため、乳母車に測定器を乗せて通学路の真ん中を測定する。

② 手持ちの測定器で線量の高そうな場所を測定し、高ければ緑のガムテープで印をつける。

③ 通学路の両脇の落ち葉を集める。草を刈る。苔や雑草はできれば取り除く。これらは全てごみ袋に入れる。

④ 通学路を高圧水で洗浄する。        
                                                     
⑤ 地面が乾いたところで、再び乳母車を押して測定する。


以下、私の感想である。

手順②について。くまなく調べていない為、線量の高い場所が多数残っていると思われる。
表面汚染については、ガンマ線だけでなくベータ線も計測すると高線量の場所がピンポイントで把握できるのだが、測定器はガンマ線専用であった。

落ち葉を集め 草をむしる
手順③について。落ち葉などに付着していた放射性物質は通学路から減ったはずである。集めたものは市の処分場で焼却するという。焼却して問題ないのか職員に尋ねると、ダイオキシンも除去できるバグフィルターが装着され、ダストサンプリングからも放射能は検出されていないので大丈夫との返答だった。本当に大丈夫なのだろうか。
また、線量の高い落ち葉などは集めるとさらに線量が高くなる。除染作業中の被曝も心配である。

手順④について。第一小学校校庭前の歩道は側溝がないため、水で高圧洗浄しても流し込めず、放射性物質を周囲にまき散らすだけである。この点を指摘すると、承知しているがひとまず歩道の真ん中にある放射能を両脇に追いやるとの返答だった。 

炎天下を皆、黙々と作業した。県原子力班の若手職員は熱心であった。何とかしたいと思っていることがヒシヒシ伝わってくる。予算はどこにもないため、住民向けに除染方法をマニュアル化し、県全体に広めたいという。課題は多いが何もしない訳にはいかないという。原子力研究開発機構などの知見も求めており、今回の結果を分析後、次の手を考えるとのことであった。

終了後の測定では、松葉と枯葉を集め、草を刈った地点の歩道が0.92μSv/h (地上50cm)だった。
それ以外の歩道は、ほぼ1.3~1.7μSv/h。当日の除染前のデータは確認できなかった。
1週間前の測定ではどこも2~3μSv/hあったという。詳しい結果は、県のホームページに公表される。

住宅地の小さな保育所 (手前)

7月3日は市内の保育所の除染に参加した。

この保育所は筆者と測定士が5月末に訪問した後、「子どもたちを放射能から守る福島ネットワーク」に細かい測定を依頼し、玄関マットの交換、草むしり、雨どい補修など、身の周りから放射能を減らす対策を行っていた。

建物は木造で園庭も狭いことから、除染の効果がどの程度出るかは不明であった。屋根に積もった放射性物質の影響で、室内は天井に近づくほど線量が高い。しかし、年季の入った屋根瓦は除染の効果が期待できず手を付けなかった。砂場は砂の持っていき場がないため、引き続きブルーシートを被せておくことにした。

雨樋の先は線量が高かったため
樋を側溝まで延長した




この保育所では3月11日以降、子どもたちを外に出していない。

保育所は経営が厳しくなっていたところに放射能に見舞われ、7月末で閉鎖を決めた。それでも出来ることはしようと除染に踏み切った。除染といっても、線量の高い場所をとにかく水で洗い流すのである。
参加者は園長夫妻と保育士、調理師、筆者の5人。
頭からのつなぎにゴーグル、マスク、長靴、ゴム手袋を着用した。装備は園長先生が自費で用意してくれていた。

つなぎの中は蒸し風呂のようで、東京電力福島第一原発の作業員の苦労を思わずにはいられなかった。


約2時間の作業後、明らかに線量が低下したのは横に渡した雨樋とトタン屋根を洗浄した内側の室内であった。除染前と比べ0.1μSv/h弱、下がった。
(それでも高さ50cmで0.5μSv/h以上あるため、この部屋は使用していない)。
玄関は水で濡らした新聞紙をちぎって撒き、掃き集めた結果、0.15μSv/h程度下がった。 
トタン屋根を洗浄


敷地外の舗装道路の線量が高く、除染前は地上50cmで3.55μSv/h。地表でベータ線も拾うと13.47μSv/hあった。高圧水をあててデッキブラシで擦ったが、アスファルトは場所によって線量にムラがあり、除染の成果を知るのが難しい。乾いた後の測定では地上50cmが2.35μSv/hだった。地表は5~10 μSv/hであった。

アスファルトや山から飛んでくるガンマ線のため、木造家屋の室内の線量を下げるには限界がある。保育士は、2リットルのペットボトルに水を入れて並べ、室内に入るガンマ線を減らしていると話していた。

終了後は全員、晴れ晴れした表情だった。
放射能の存在を知ってしまった以上、腹を据えてこれと向き合うしかないのだと思う。

玄関は濡らした新聞紙で掃除
後日、園長先生から室内の線量がさらに下がったと連絡をもらった。
除染当日は放射性物質が空気中に舞ってしまっていたのだろうか。
できる限り注意したつもりだが、そもそも除染のプロがすべき作業なのである。

福島原発で作られる電気は首都圏に送られていた。福島の人たち、福島の子どもたちが何故放射能を浴びせられ、被曝しながら後始末までしなければならないのか。

宇宙人のような恰好で園長先生たちと除染したこの日ことを
私は決して忘れない。


付記
放射性物質が付着した落ち葉などの焼却処分について県原子力班に再度問い合わせたところ、専門家などからも懸念の声があがっており、現在検討中との返答であった。

「子どもたちを放射能から守る福島ネットワーク」除染班では、正式な処分方法が決まるまで集めた落ち葉や苔などは土に埋め、埋蔵場所に目印をつけておくようアドバイスしている。


伊藤夏子(いとう・なつこ) 埼玉県在住。フリーランスのテレビドキュメンタリー番組リサーチャー。

2 comments:

  1. Anonymous12:25 am

    はじめまして
    保育園の室内で、天上に近づくほど線量が高いのは屋根瓦も関係していると思いますが、屋根裏に放射性物質が有る可能性が高いと思われます。
    下記はhttp://www.facebook.com/topic.php?uid=223981287629109&topic=1269&post=10118#post10118に投稿した内容で関連のある部分です。

    屋根や床下に通気をとっている建物では放射性物質が入る可能があります。少しでも放射性物質を取り除くために掃除が必要と思われます。大変ですが。屋根裏は棟換気と軒先へ通気口が設置される場合が多いです。少し前の建物であれば、小屋裏専用吸気口等があります。軒先や棟換気は知らないと分かりにくいかもしれません。
    その後、空気口を塞ぐか、フィルターを付けるといいと思います。家の耐久性からいえば悪いのですが。

    坂巻

    ReplyDelete
  2. 坂巻様、有難うございます。
    屋根裏にも放射性物質がある可能性が高いとのご指摘、保育所に連絡させていただきます。床下もその他も通気口がいろいろあるのですね。

    屋外の稲わらから高濃度のセシウムが検出されていますが、保育所の屋根瓦にも放射性物質が相当降り積もっていることは確かで、これについては瓦を取り換えるしかない状況です。つるつるした素材だと流れ落ちますが、古い瓦やアスファルトなどは細かな窪みにセシウムの粒が入り込んでしまっています。
    伊藤

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