Tuesday, May 05, 2026

『紙の爆弾』5月号より転載 【対談】乗松聡子X木村朗 米国イスラエル「イラン攻撃」の真実とフェイク Reprinted from the May Issue of *Kami no Bakudan* [Dialogue] Satoko Norimatsu & Akira Kimura: The Truth and Falsehoods Behind the U.S.-Israel “Attack on Iran”

米イスラエルによるイラン侵略戦争について、『紙の爆弾』が私のソーシャルメディアでの発信に注目してくれ、ISF『独立言論フォーラム』の編集長である木村朗さんとの対談を提案し、3月8日にズーム対談をしました。それを文字起こし・編集した記事が4月7日発売の『紙の爆弾』5月号に載りました。転載許可を得てここに転載します。2月28日の「イラン攻撃」が始まった直後の対談であり、その後事態は進展していますが、この戦争の背景と本質を理解するにあたって基本的なことを話したつもりです。このネット転載版には適宜、情報ソースのリンクも入れました。ぜひお読みください。

紙の爆弾」は公式サイトや書店などで好評発売中です。 

対談の動画(ISF独立言論フォーラムのYouTubeチャネルより)

【対談】

乗松聡子(ピース・フィロソフィー・センター代表)×

木村朗(ISF独立言論フォーラム編集長)

日本も「情報戦」の戦場だ

米国イスラエル「イラン攻撃」の真実とフェイク

 2026年2月末、アメリカとイスラエルのイラン首都への空爆を皮切りとした事態は、今に始まったものではない。その起源と真相について、ジャーナリストの乗松聡子氏と、オピニオンサイト「ISF独立言論フォーラム」(https://isfweb.org/)編集長で鹿児島大学名誉教授の木村朗氏が行なった対談をお届けする。動画はISF内で視聴可能で、あわせてご覧いただきたい。(構成・本誌編集部)

イラン戦争の起源

木村 アメリカによるイラン攻撃は、今年の2月28日に突然始まったように見られていますが、なぜ今なのか、どういう狙いがあって始めたのか。まずこの2点について教えてください。

乗松 まず、アメリカ・イスラエルとイランの戦争は、今始まったわけではありません。その狙いについて、ネタニヤフ首相は「40年間やりたかったことが、やっとトランプ大統領のもとで叶った」と言って喜んでいます。トランプが大統領のうちにイランへの攻撃を開始したいという思いがあったのではないかと思います。

 その上で、「なぜ今なのか?」を考えると、ネタニヤフは「40年間」と言いましたが、1979年のイラン・イスラム革命よりさらに遡り、1953年8月のイランにおける軍事クーデターにまで遡る必要があるでしょう。米英の言うことを聞かないモサッデク政権に対し、CIA(米中央情報局)が軍部にクーデターを起こさせ、失脚させた。そして親欧米のパフラヴィー2世派のファズロラ・ザヘディ将軍を首相に就けました。パフラヴィー2世下でモナーキー(王政)は強化され、圧政を敷いてイランを親米国家に変えた。これをひっくり返したのが1979年のイラン・イスラム革命でした。

 イランはこれで自己決定権を取り戻したものの、アメリカはそれを許さない。それで、翌1980年9月にイラン・イラク戦争が引き起こされたのです。9年間に及ぶこの戦争で、イラクのフセイン大統領は化学兵器を使用し、50万〜60万人ものイランの人々を虐殺しました。当時のフセイン政権に加担したのがアメリカであり、ドイツなどの欧州諸国でした。

木村 イラン・イラク戦争では、ラムズフェルド(後に米国防長官)がイラクに化学兵器を提供したといいます。

乗松 そうです。イランとアメリカの戦いはその頃から続いていて、それでもイランは他国の圧力にめげず、イスラム共和国を保ってきました。イスラエルのネタニヤフ首相にとってはこれが面白くありません。

 2007年、ウェズリー・クラークという元米陸軍将校が「デモクラシー・ナウ」のインタビューでこう語っています。2001年の9・11直後、イラクを攻撃するかしないかという時に、ペンタゴン(米国防総省)の高官から彼はメモを渡された。そのメモには「今後5年間のうちに7つの国と戦争を行なう」と書かれていた。イラク・シリア・レバノン・リビア・ソマリア・スーダン・イランです。実際にその後、これらの国で内戦・戦争が勃発しています。

 中でも最大の軍事大国がイランです。周辺国の一掃を目論むネタニヤフにとって、イランは最強の敵。そうそう簡単に攻め落とせません。だからトランプがアメリカの大統領である今のタイミングを選んだのではないでしょうか。

 ネタニヤフはイランを潰すことで、ユーフラテス川からナイル川までを自国の領土にする「大イスラエル構想」を実現したいのだと思います。

木村 他方、トランプ大統領が最高指導者ハーメネイー師暗殺を狙った、まさにイランの指導者たちが会合を行なう時刻と場所を諜報活動によって確定した時に、イラン攻撃を始めました。

乗松 これは政権転覆のための戦いです。「イランに核兵器を持たせてはいけない」などといった理由は「イラクの大量破壊兵器」の時と同じく西側メディアのでっち上げです。

 そもそもハーメネイー師はイラン国内に「核兵器を持つべき」という声が多い中で、反対派のトップであり、2003年にファトア(イスラム法学における法的な勧告・見解)で「イランは核兵器を造らない」と表明しました。彼がいたからこそ核保有は食い止められてきたのであり、全くつじつまが合いません。

木村 アメリカはほかに「イランに弾道ミサイルの開発を許さない」も攻撃理由としました。「イランがテロ国家を支援している」とも言い、「抵抗の枢軸」と呼ばれるハマス・ヒズボラ・フーシ派などへのイランの支援を絶つことも目的と主張しています。

乗松 西側が「テロ国家」と呼ぶ国は、パレスチナを支援する国とイコールです。イエメンのフーシ派もレバノンのヒズボラも、パレスチナを支援し連帯しているから西側に狙われるのです。


国連やIAEAをなぜ盲信するのか


木村 「核開発」については、昨年6月にもイスラエルがイランを攻撃し、その後アメリカが核施設を攻撃して、完全に破壊したと言っていました。それから半年後に、「イランが核開発を再開しており危険だ」という口実で、再び今回の攻撃を始めました。

乗松 米国家情報長官のトゥルシー・ギャバードが、昨年3月の上院公聴会でインテリジェンス・コミュニティの結論として「イランは核兵器を製造していない」と証言しています。ところがトランプはその分析は誤りだと、自国の情報機関の評価を否定しました。

木村 弾道ミサイルについても「アメリカに届くような長距離ミサイルを開発しない」とイランは言っており、仮に開発しても完成に十年かかるという専門家の指摘もあります。

乗松 NPT(核兵器不拡散条約)の枠組みで考えても、イスラエルが核兵器を持っていることが、なによりおかしなことです。対してイランはNPTに従い、平和的な核開発しかしないとしてIAEA(国際原子力機関)の査察も受け入れました。

 2015年にイランと米英仏独中露が合意したJCPOA(包括的共同作業計画)でも、核濃縮の濃度を制限すると約束しています。それをトランプは勝手に覆した。なぜか? 合意すればイランを攻撃する理由がなくなるからです。

木村 IAEAは昨年6月も、イランが核開発をしているかの報告を公開しました。IAEAがイラン攻撃にOKを出す役割を果たしています。

乗松 IAEAに査察させることによって、インテリジェンスを西側に漏らしているという疑惑もあります。木村 IAEAや国連など国際機関の見解を、政府もメディアも鵜呑みにする側面があり、日本は特にその傾向が強いですね。

乗松 イランは精一杯、IAEAの意向に合わせ協力してきました。今回攻撃を受けたのもアメリカとの協議の最中で、ディールは妥結寸前といわれていました。外交協議をしている間は、相手側がどこで誰と会っているなどといった情報も取りやすいのです。

 ただし、CIAが重要情報を入手したからハーメネイー師を空爆できたというのは違います。そもそもハーメネイー師は「自分は逃げも隠れもしない」と言っていて、空爆時も地下ではなく地上の執務室で側近らと会議をしていました。家族を逃がすこともしていません。一般市民に逃げ場がないのに、自分だけ特別扱いはできない、市民とともにあるという姿勢を貫きました。しかもあの時はラマダン期間で、彼は食事をせずに執務室にいたのです。

木村 空爆では彼の娘や孫をはじめ、軍部を中心とする40人以上の指導者も一挙に殺されたといわれます。これでアメリカはイランの体制転換ができると考えたでしょうが、今の状況はアメリカの思った通りにはいっていない。出口戦略なしに始めた戦争だという批判も政権内部から出ています。

乗松 逆にイランは昔から、イスラエルやアメリカに攻撃されることを想定していました。あらかじめハーメネイー師の後継者も決めていたから体制はそのまま続いているし、国民の多くも支持しています。ハーメネイー師を偲び、アメリカ帝国主義に絶対やられない意志を示すデモが、今にもイラン全土で起きているのです。


米国NEDの暗躍


木村 西側メディアはハーメネイー師の死を悼む人々の運動はほとんど報じずに、反体制派の集会やコメントばかりを流していますね。

乗松 ディアスポラ(海外在住の国民)を利用するのはCIAの常套手段です。香港であれば海外在住の香港系市民、イランであれば海外在住イラン人です。彼らを利用した工作に巨額の資金を投じ、人権団体やメディアすらつくります。香港がそうであったように、イランでも若者たちが、かなりそちら側に持っていかれます。

木村 乗松さんはウクライナ問題を題材に「『ファクトチェック』というフェイク」という記事を『歴史地理教育』2023年7月号(歴史教育者協議会)に寄稿されています。

乗松 いわゆる左派リベラルの人が「ファクトチェック」という時、「右派やトランプがフェイクニュースを流すからファクトチェックすべき」といった対立構造の中で語っています。しかし、実際の戦争においては、ファクトチェック自体がファクト(事実)を歪める道具になっています。

 たとえば、ウクライナ戦争は2022年に始まったわけではありません。NATO(北大西洋条約機構)の拡大や、2014年のマイダン・クーデターがありました。それを指摘すると「それはロシアのプロパガンダ」「嘘だ」とレッテルを貼られ、ファクトチェックの対象にされるのです。

木村 「ファクトチェック」を最初に始めたのは、トランプが「フェイク・メディア」と呼んだニューヨークタイムズやCNNでした。日本では朝日新聞やNHKが先駆けです。主流メディアは自分たちがファクトチェックする主体だと考えています。同時に権力・政府・国家がSNS規制を強めて情報の真偽を決め、国民の表現を抑制する動きも出てきています。

乗松 何が本当かを自分たちが決めるというのは、自分たちに都合のいい「真実」の押し付けです。スイスの元諜報員ジャック・ボー氏はウクライナ戦争について西側の情報を精査し、これはNATOの東方拡張が主な原因であると客観的に結論付けました。すると彼の銀行口座やクレジットカードがEUによって凍結された。西側権力は自国の市民をも制裁するわけです。元国際連合大量破壊兵器廃棄特別委員会(UNSCOM)主任査察官のスコット・リッター氏もアメリカの外交政策を批判して、FBIに家宅捜索されました。

 アメリカ人映像作家のゴンザーロ・リラ氏はウクライナ内部から発信を続けていましたが同国保安庁により何度も逮捕、2024年1月、とうとう殺されました。彼の死を西側メディアは全く取り上げず、米国は自国民である彼を保護しようとしませんでした。パレスチナに連帯する発信を続けるシリア系英国人ジャーナリストのリチャード・メドハースト氏も2024年8月、自国イギリスで逮捕されました。

 特に今年に入りイランで起きた市民デモの報じ方は酷かった。簡単に説明すると、まずイランで通貨が暴落しました。それに対し、市民が平和的なデモを始めました。ベッセント米財務長官はダボス会議で「イランの通貨危機は自分たちがやった。銃弾を一発も使わずに」などと自慢気に話しています。

 通貨が暴落すれば、イランの人たちは政治に不満を持つ。そうして起きたデモにCIAとイスラエルのモサドが武装暴徒を注入したのは、マイダン・クーデターと同じ手口です。武装暴徒は火炎放射器やモロトフカクテル(火炎瓶)などを使ってイランの警察部隊を殺し始め、警察側も強硬な手段に出ざるをえません。その最中に、送り込まれた暴徒が治安部隊や市民を殺めていきました。

 ところが西側メディアは政府の治安部隊が市民500人を殺したと報じ、その犠牲者の数をどんどん増やしていき、カナダのカーニー首相などは「死者は1万5千人」などと話していました。報道される死者の数がメディアによって全然違うし、どんどん増えていくのです。

 そうした中でもアメリカのミントプレス・ニュースというオルタナティブメディアの主宰者アラン・マクロード氏が、死者数報道の嘘を暴きました。イランのヒューマンライト・アクティビスト・ニュース・エージェンシー(HRANA)などの人権団体と称する団体が、何の検証もせずに死者数を膨れ上がらせたというわけです。

木村 こうした人権団体・市民団体がアメリカなどから資金を受けてプロパガンダを行なっていると指摘されます。

乗松 CIAの派生機関であるNED(全米民主主義基金)からの資金供与です。レーガン政権の時代につくられた機関で、他国の政権転覆をあからさまに画策すれば世論の支持が得られない。そこで「民主主義」「人権」の衣を着せて他国の政権転覆を誘導すると、関係者が実際に公言しています。

木村 情報が心理戦争、認知戦争の武器となって錯綜する中で、トランプも「イランの民衆よ立ち上がれ」などと言っていました。しかし、実際にいま追い込まれているのはアメリカやイスラエルの側ではないでしょうか。

乗松 元CIAのラリー・ジョンソン氏によれば、ドイツの米軍病院の気配がおかしいそうです。ドイツの米陸軍病院は、中東の戦争での怪我人が搬送される場所です。米軍の準機関紙「星条旗新聞」で、ドイツの米軍基地が献血を募っていると報じられています。

 つまり、米軍側も相当の死者と負傷者が出ている可能性があるわけです。

木村 実際の戦闘についても、イラン側は考え抜いた戦略の上で、最初は性能の劣るミサイルやドローンで米側に高価な迎撃ミサイルを使わせ、その後に超音速ミサイルを打ち込んで、大きな被害を与えているように見えます。

乗松 イランはアメリカやイスラエルがタッチできない地下にミサイル製造工場を持っていて、奥の手をまだ出していないといいます。

木村 イラン側はそう言っていますね。破壊されたのは地上のダミー兵器ばかりだとも伝えられています。

乗松 ガザのジェノサイドの構図とすごく似ています。ガザではハマスが2023年10月に蜂起し、イスラエルは即座に殲滅するとして、数週間で戦争は終わると言っていました。しかし、今もなお戦争は終わっていません。

 今回のイランもそうです。トランプは数日か数週間で終わらせると言いましたが、イランの地下軍事施設にタッチできないから民間爆撃を繰り返しています。

 また、空爆初日にアメリカが175人もの女子学生を殺害したのを、日本のメディアは「空爆された学校はもともと軍事施設で、アメリカ・イスラエル側は標的を間違えたのかもしれない」などと報じました。そんなわけがありません。

木村 一時はイラン側の誤射との情報も出されていました。しかも小学校への攻撃は、第一次攻撃で生徒を助けるために人々が集まっていたところに第二次攻撃したという情報もあります。

乗松 「ダブルタッピングアタック」という残酷な攻撃手法です。最初の空爆で負傷した人たちの救援部隊が到着すると再度、空爆を行なう。イスラエルがガザで同じことをしていました。その根底には白人至上主義から来る植民地主義とレイシズムがあります。


アメリカとイスラエルの本当の関係とは


木村 アメリカは今、「イスラエル・ファースト」で動いているのではないかという疑念を私は持っています。日本がアメリカの植民地だとすれば、アメリカはイスラエルの植民地ではないか。

乗松 国際政治・軍事評論家のブライアン・ベルレティック氏は、それには否定的で、アメリカは最初から世界覇権を目指しており、ロシアに対してはEU、中東ではイスラエル、アジアでは日本・韓国・フィリピン・オーストラリアというプロキシ(代理国)を使っていると分析しています。

 ただし、木村さんの見方もわかります。トランプは最初からミサイルが枯渇するのも、自国の兵士が犠牲になるのもわかっていたはずで、今のタイミングで戦争したくなかった可能性が確かにあります。昨年末にネタニヤフがトランプの別荘地マール・ア・ラーゴを訪れ、そこでイラン攻撃計画が決まったともいわれます。

木村 ネタニヤフは今年2月初めにも訪米していました。

乗松 それでも、やらざるを得なくなったとすれば、背後にエプスタイン問題があると私は思っています。この問題ではトランプを含め西側の多くの有力者たちが秘密を握られ〝人質〞にとられていたのですから。

 とはいえ、エプスタイン問題も道具にすぎず、イスラエルはこの問題がなくても、ほかの方法で戦争を始めていたでしょう。トランプが仕方なくイスラエルの言う通りにしているとの見方に一理あっても、それだけではないと思います。

木村 もともとアメリカは冷戦後の1992年に策定した世界覇権の指針「ウォルフォウィッツ・ドクトリン」に沿って動いてきたといわれます。ただし、第一次トランプ政権では多少そこから外れ、トランプ大統領は任期中に大きな戦争をしなかった。

 しかし、第二次政権の今回、イランとの戦いが泥沼化して地上軍派遣ともなれば、多くの若い米兵が亡くなることになる。アメリカのさらなる凋落も招き、それはトランプが必ずしも望むものではないでしょう。この違いとは?

乗松 アメリカは戦後、朝鮮戦争・ベトナム戦争・イラク戦争と、次々と戦争を起こしてきましたが、それらの当時と今の世界の情勢は違います。なによりグローバル・マジョリティであるグローバルサウスが大変な力をつけました。怖いのは、イランが強いからこそ、核保有国であるイスラエルが逆切れして核兵器を使う可能性があることです。

木村 トランプのアメリカにそれを止めることができるのでしょうか? 私はできないと思います。

乗松 私もできないと思います。イスラエルが単独で決める可能性はあるでしょう。


米軍は同盟国を守らない


木村 次に、西側諸国の情勢です。スペインのサンチェス首相とイタリアのメローニ首相が明確にアメリカとイスラエルを批判し、スウェーデンやトルコも米軍に基地を使用させないと、アメリカと距離をとり始めています。

乗松 しかし、それでイスラエルを制裁しようとはならないわけです。彼らは非西側諸国であるロシア・中国・ベネズエラという国に対しては即座に制裁を行ないます。

 だけど、アメリカ・イスラエルに対してはできない。カナダのカーニー首相も今回の攻撃初日、「アメリカ・イスラエルを支持する」と言った後に変節して「国際法に一致していない」と言いだした。その一方で「カナダ軍の派兵の可能性は除外しない」とも言い、矛盾しています。国際法は守りたいが、アメリカやイスラエルに逆らいたくないのです。

木村 民衆レベルでは西側諸国の中でも米・イスラエルに反対するデモや集会が活発になっているようです。

乗松 市民についていえば、イランの攻撃を受けたバーレーンにもイラン支持の市民がいるのは、結局イランの攻撃対象が国内の米軍基地だからです。

木村 アメリカの中東における米軍基地が破壊されている。つまり、アメリカは自国の基地も守れなかった。米軍基地を置く国の安全も米軍は守れないことが明確になったともいえます。

乗松 これは日本にとっても、米軍が守ってくれるなどというのは嘘だという証明になります。

木村 米海軍のフリゲート艦が横須賀基地から出航し、イランへの最初の攻撃に加わったという情報を「しんぶん赤旗」が報じました。つまり、日本は米軍への「基地の自由使用」で間接的に最初からイラン攻撃に参加していたわけです。そして、米軍基地を置く国は真っ先に敵国から攻撃されることが明らかになりました。

乗松 その通りです。ただし、アメリカの戦争で日本の基地が使われたことは今回が初めてでもなく、珍しいことでもありません。横須賀や佐世保などは、米海軍の補給修繕のために欠かせない基地で、これらがあるからアメリカは中東の戦争で、わざわざ自国から兵器を運ばなくてもよいわけです。

木村 日本政府は、イランの報復攻撃に対して直ちにイランを批判しました。しかし、アメリカに対しても、イスラエルに対しても、「国際法違反かどうかの法的評価は今の段階ではできない」と高市早苗首相が発言した一方で、小泉進次郎防衛大臣は、アメリカとイスラエルを全般的に支持するのが日本政府の立場だと本音を口にしました。

乗松 現実は小泉氏の言う通りです。


自衛隊が参戦する日


木村 ただ、日本とイランはこれまで友好的な二国関係を保ってきました。

乗松 イランはこちらが申し訳ないと思うぐらい親日国です。彼らは日本がアメリカの同盟国だとわかっているけれども、日本はアメリカに人質をとられたかわいそうな国で、日本人は悪くない。憲法9条も持っている。そういう感覚なのでしょう。だから、自衛隊が攻撃に加われば、もう駄目です。

木村 しかし、その可能性が出てきています。日本国憲法が改定されていない今の段階で、集団的自衛権を行使する最初の事例に、イラン戦争がなるかもしれないという危惧を、私は抱いています。

乗松 いかに違憲・違法の安保法制とはいえ、この状況にどう適用するのでしょうか?

台湾問題では「存立危機事態」などと無理やりこじつけていますが、イランの戦争が日本の存立危機事態になり得るのか。自衛隊参戦の正当化は無理だと思いますよ。

木村 しかし、日本政府は以前からホルムズ海峡が封鎖された時には存立危機事態になりうると言ってきました。今後、実際に機雷を撒くようなことがあれば、自衛隊が攻撃に参加する可能性が高まる心配はあります。

乗松 それは、ありえません。イランが始めた戦争ではありません。イランはアメリカに攻撃されたから自衛権を行使して反撃しています。

 もう一つ重要なのは、先のベルレティック氏が指摘するように、アメリカの最終目標は中国です。ベネズエラもキューバもイランも、中国に石油を提供するなど繋がりが強い国です。中国の友好国で、叩きやすい国から叩くという流れにあると思います。

木村 最後に一言、日本人へのメッセージをお願いします。

乗松 私たちはいま、情報戦のただ中にいます。中国・ロシア・イラン・朝鮮など、アメリカが敵国とする国々の指導者を、デマも用いて悪魔化する。その国の人を被害者に位置づけるため、左派ほど弱い。人権や民主主義がない国の政権を転覆するのは仕方ないことだという気持ちにさせられている。この情報戦に、日本のメディアは右から左まで飲み込まれている。そのことを知ってほしいと思います。

 前述したファクトチェックというフェイクを含め、西側のデマを暴き事実を見る人が、日本語言論者にもっと必要です。

木村 外交でいえば、本来ならば日本は中立の立場で停戦や和平に向けて仲介する役割を果たすべきです。

乗松 今の状態が続くと、日本がイランから敵視される日も遠くないでしょう。ロシアもかつては日本に友好的でしたが、ウクライナ問題で西側のロシア敵視に賛同しすぎるために、敵対国のように見られるようになりました。高市政権のままでは、イランもそうなるのではと危惧します。

木村 自衛隊が海外に出て戦死者が出る悪夢を実現させてはなりません。


乗松 聡子(のりまつさとこ)

ピース・フィロソフィー・センター代表、バンクーバー9条の会共同代表。木村氏との共著『広島・長崎への原爆投下再考』(法律文化社)など著書多数。


Sunday, May 03, 2026

100団体が賛同した声明:特定の価値観を押し付け多様な見解を排除する「昭和100年」政府式典の実施と「国旗損壊罪」制定をしないでください One Hundred Peace Organizations in Japan Oppose the Government-Sponsored Commemoration of "Showa 100th Anniversary" and Criminalization of Damage to the National Flag

4月29日、「昭和100年記念式典」反対行動より。

事後になりましたが、ピース・フィロソフィー・センターも呼びかけ団体の一つとなった行動を報告します。

4月29日に日本武道館で行われた政府主催の「昭和100年記念式典」の中止と、今国会中に提出・成立が目論まれている「国旗損壊罪」に反対する緊急声明を発しました。

【呼びかけ団体】アジア女性資料センター、沖縄・安保・天皇制を問う4.28-29連続行動実行委員会、日本キリスト教協議会(NCC)靖国神社問題委員会、ピース・フィロソフィー・センター。

【賛同団体】(98団体)

7.4金子文子没100年 追悼の集い/主催者、ActNow!!Kagawa、ATTAC Japan(首都圏)、「G7広島サミットを問う市民のつどい」実行委員会、JCA-NET、Nikkei Vancouver for Justice (日系バンクーバー正義の会) 、she-sow(シーソー)、SOSHIREN女(わたし)のからだから、Stop! 辺野古埋め立てキャンペーン、アクティブ・ミュージアム「女たちの戦争と平和資料館」(wam)、アジア連帯講座、アジェンダ・プロジェクト、あつまれ辺野古@関東、アナキズム図書室、NPO法人猪飼野セッパラム文庫、茨城不安定労働組合、岩手からアジアを考える会、認定NPO法人ウィメンズアクションネットワーク、海を囲む平和友好会、沖縄・一坪反戦地主会関東ブロック、沖縄・靖国合祀取消シタイ、沖縄を考える会・山形、学校事務職員労働組合神奈川、学校と地域をむすぶ板橋の会、カナダ9条の会、関西共同行動、関西単一労働組合、喫茶・オリーブガーデン・、君が代強制反対キリスト者のつどい大阪、救援連絡センター、教育と個人情報保護を考える会、教科書問題を考える市民ネットワース・ひろしま、軍拡NO!女たちの会・北海道、芸術を鑑賞する会@国分寺、研究所テオリア、国際人権活動日本委員会、「国旗等損壊罪」反対連絡会、在日朝鮮人作家を読む会、参戦と天皇制に反対する連続行動、市民の意見30の会・東京、市民のひろば・憲法の会、出版労働者連帯会議、女性と天皇制研究会、人権平和・浜松、信仰とセクシュアリティを考えるキリスト者の会(ECQA)、スペース21、設置理念に則ったピースおおさかを取り戻す会、全関東単一労働組合、全国学校事務労働組合連絡会議、戦時下の現在を考える講座、戦争・治安・改憲NO! 総行動実行委員会+α、戦争に協力しない!させない!練馬アクション、第九条の会ヒロシマ、大軍拡と基地強化にNO!アクション2025、千葉学校労働者合同組合、朝鮮女性と連帯する日本婦人連絡会、天皇制に問題あり!福岡連絡会、天皇制問題情報交換会、天皇制を考えるあいちネットワーク、都教委等を訴える会、都教委包囲・首都圏ネット、とめよう戦争 東部連絡会、日韓民衆連帯全国ネットワーク、日本キリスト教会 横浜桐畑教会 靖国神社問題委員、日本基督教団西中国教区靖国天皇制問題特別委員会、日本軍「慰安婦」問題解決ひろしまネットワーク、日本バプテスト連盟靖国神社問題特別委員会、日本福音ルーテル教会社会委員会、バスストップから基地ストップの会、破防法・組対法に反対する共同行動、反安保実行委員会、反戦・反差別 アジアの人々と共に行動する連絡会(NWAA)、反戦反天皇制労働者ネットワーク、『反天ジャーナル』編集委員会、ピープルズ・プラン研究所、「日の丸・君が代」ILO/ユネスコ勧告実施市民会議、「日の丸・君が代」強制反対意思表示の会、日の丸・君が代の法制化と強制に反対する神奈川の会、「日の丸・君が代」不当処分撤回を求める被処分者の会、一般財団法人 広島YWCA、ふぇみん婦人民主クラブ、フォーラム労働・社会政策・ジェンダー、フフフBOOKS、フリーターユニオン福岡、平和を考え行動する会、ベルリン•女の会、まんなかタイムス、メディアネット・ちきゅう座、靖国国営化反対福音主義キリスト者のつどい、靖国・天皇制問題情報センター、「山谷」制作上映委員会、ユニオン東京合同、許すな!『日の丸・君が代』強制、止めよう!改憲・教育破壊 全国ネットワーク、予防訴訟をひきつぐ会、琉球弧の軍事化に抗する市民の会・みやぎ、連帯社、労働運動活動者評議会、労働者共闘

以下、声明文です。

【緊急共同声明】

特定の価値観を押し付け多様な見解を排除する「昭和100年」政府式典の実施と「国旗損壊罪」制定をしないでください

 2026年4月29日(「昭和の日」)、政府は、日本武道館において、「三権の長」などの列席のもとに、「昭和100年記念式典」を開催しようとしています。

 昨年11月に閣議決定された「昭和100年記念式典」に関する文書では、「昭和元年から起算して満100年を迎えることを記念し、激動と復興の昭和の時代を顧み、将来に思いを致す機会となるよう」、この式典を実施するとしています。

 私たちは、この式典が、昨年来すすめられてきた「昭和100年記念行事」の集大成であり、「昭和」という括りでこの100年を記念する歴史意識を社会的に作り出す国家儀式であることから、これに強く反対し、式典の中止を求めるものです。

 1926年から2026年に至る100年をひとつの時代としてとくに取り上げること自体、裕仁天皇の即位を、重要な歴史の切れ目として特別なものとするものであり、天皇の時間を「国民的」な時間とみなす意識を強めるものでしかありません。

 仮にその100年を語るにしても、それは単に「激動と復興」の時代などと一括できるようなものではないはずです。1945年までは、近代日本の植民地支配・侵略戦争がさらに拡大し、アジア太平洋戦争に至りました。敗戦後は天皇裕仁の戦争責任を問うことなく天皇制を延命させ、冷戦構造の一方に加担しながら、植民地主義・侵略責任への反省・謝罪や、被害当事者への補償などないままに、日米安保体制のもとで「経済成長」を進めてきました。そして天皇メッセージで米軍の占領(軍事基地化)を認めた沖縄・琉球弧などを前線基地として、一層の軍事化・戦争国家化を促進しています。「激動と復興」の内実はそういうことでしょう。反省こそすれ、記念式典を行なう正当性などありません。

 そしてまた、高市政権は、何らの「立法事実」すらないまま、2026年通常国会での「国旗損壊罪(日本国国章損壊罪)」の法案成立を目論んでいます。すでに参政党が同趣旨の刑法改正案を提出していますが、自民党は新法制定に向けたプロジェクトチームの設置を決め、4月中に法案をまとめることにしています。

 これは、モノとしての「国旗」に対する「器物損壊」ではなく、「国旗に対する侮辱」それ自体を処罰対象とするもので、つまりはナショナリズムや国家主義に対する批判の意思表示のための表現行為をも取り締まることを可能とする恐れが強いものであり、明白に違憲(表現の自由、思想の自由)立法です。

 「日の丸」は軍国主義、天皇制のシンボルです。1999年の「国旗国歌法」によって、「日の丸」が「国旗」として明文化されて以降、学校現場などを先頭として、その強制・同調圧力はますます強まってきました。「国旗損壊罪」制定はその集大成とも言うべきものです。

 私たちは、思想信条の自由と信教の自由が損なわれる重大な事態となることを危惧し、このような天皇制と国家主義の強化に反対し、「昭和100年」政府式典と、「国旗損壊罪」制定に反対する共同の意思を、ここに表明します。 

 2026年4月8日


私は都合がつかず行けなかったのですが、4月23日には、官邸前行動と、内閣申し入れ行動を行い、雨の中30人が駆け付けました。報告はこちら。

「昭和100年記念式典」やめろ「国旗損壊罪」反対の官邸前行動報告(2026.4.23)

そして4月29日の当日は、警察、機動隊に取り囲まれ、右翼にまとわりつかれながらも抗議デモを行ったとのことです。

私が「昭和100年」を記念することがなぜいけないかと思っているかは「反天ジャーナル」4月5日号に書きました。

高市政権が大日本帝国回帰をめざす「昭和100年」に反対する

この文の編集版が「人民新聞」5月5日号にも載ります。

日本ではいまだに天皇制タブー視があり、民主主義社会であるのに天皇制を自由に議論ができない空気があることから街頭に出る人たちも勇気が必要とされるようです。本来はそうであってはいけないことです。ピース・フィロソフィー・センターはこの声明の呼びかけ団体とならせていただき大変光栄でした。

当たり前のことを当たり前に訴えることを続けていきたいと思います。

Peace Philosophy Centre 乗松聡子

Saturday, May 02, 2026

沖縄を最前線とする戦争準備に反対する請願 Okinawan Civil Organizations Oppose Plans to Turn Okinawa Into the Front Line of War

 沖縄からのこの請願書を見て、「長射程ミサイルが配備されたことは新聞等ではある程度報道されていますが、請願書に書かれている他の内容のほとんどは報道されていないように見えます。」と、日本人の仲間が言っていました。その通りです。沖縄メディアを日頃追っていない人にとっては初耳ではないかという衝撃の情報がたくさん入っています。それだけ琉球弧における戦争準備は知られていない、知らされていない、だからこそ知り、声を上げる必要があります。きょう5月3日は憲法記念日、各地で平和憲法を守り戦争に反対する集会が開かれていますが、沖縄で進んでいる戦争準備阻止を最重点として声を上げてください!沖縄に基地を押し付けているのは日本なのですから。

沖縄を最前線とする戦争準備に反対する請願                

宛先 

高市早苗首相

小泉進次郎防衛大臣

村井勝沖縄防衛局長

自衛隊西部方面総監 

自衛隊第15旅団長 

航空自衛隊南西航空方面隊司令官 

海上自衛隊沖縄基地隊司令官

トランプ米大統領 

ヘグセス米戦争長官 

米太平洋海兵隊司令官・米海兵隊第3海兵遠征軍司令官    

米第18航空団司令官

在日米軍司令部

玉城デニー沖縄県知事

賛同団体:与那国の明るい未来を願うイソバの会、石垣島の平和と自然を守る市民連絡会、基地いらないチーム石垣、ミサイル基地いらない宮古島住民連絡会、ミサイル配備から命を守るうるま市民の会、 沖縄平和サポート、 沖縄平和市民連絡会、沖縄県平和委員会、ノーモア沖縄戦 命どぅ宝の会、沖縄・韓国民衆連帯、VFP(平和を求める退役軍人の会)琉球・沖縄支部、監視社会ならん!市民ネット沖縄、あつまれ辺野古 、 日中友好協会沖縄県支部、 沖縄・琉球弧の声を届ける会 、 琉球・パレスチナの平和を求める会、沖縄県統一連


 2026年度の防衛省予算(概算)は①南西諸島の軍事強化②長射程ミサイルの大量生産配備③ドローン・無人機の集中配備-を柱とし、高市政権の安保3文書の改悪により沖縄の軍事強化と戦争の危機が一気に高まりかねません。そのさなか沖縄の米軍ホワイトビーチを経由した米軍艦船がイランをトマホーク攻撃し、在沖海兵隊がイランに出撃しました。嘉手納空軍も派遣されました。政府は、在日米軍の出撃について、在日米軍基地からの派遣は「移動」だとして、「安保条約上も問題はない」と強弁しましたが、明らかに日米安保条約6条に違反し、在日米軍基地から戦地への出撃は事前協議の対象です。事前協議はこれまで一度も行われておらず、制度は機能していません。私たちは、米軍の沖縄基地からの自由出撃を断固、拒否します。

 4月1日、共同通信は、中国に届く長射程ミサイルの「敵基地攻撃 運用開始」と全国配信しました。3月28日沖縄タイムスは「与那国に対艦ミサイル、対空弾とセット配備」と報じました。既に宮古、石垣、沖縄島に自衛隊の地対艦・地対空ミサイルが配備され、与那国配備により島々の「ミサイル要塞化」が さらに増強されます 。ミサイル基地が有事に攻撃目標となるのは軍事の常識です。沖縄県民はミサイル基地と同居できません。私たちは島々のミサイル基地の撤去、与那国配備計画の撤回を強く要求します。

 玉城デニー知事、与那国、宮古、石垣、うるま、宜野湾、嘉手納など基地所在27市町村は「長射程ミサイル配備反対」を日米政府に申し入れています。玉城知事は「ミサイル基地は攻撃目標となるリスクが高まる」と政府に伝えています。石垣市議会も3月24日、「長射程ミサイル配備反対」の3度目の意見書を議決しました。「長射程ミサイル配備反対」は県民の総意です。

 高市首相は国会で「台湾有事は日本の存立危機事態」と答弁し、小泉防衛大臣とヘグセス米戦争長官は中国を名指しに「沖縄、南西諸島の日米同盟の抑止力・対処力強化」を確認しました。沖縄を「台湾有事の最前線」とする意図が明らかです。沖縄は「人間の住んでいる島」(阿波根昌鴻)です。沖縄の戦場化、県民の犠牲を当然視する首相、防衛大臣、米長官の発言は絶対に認められません。

 防衛省は2026年度に那覇の「陸自第15旅団を師団に格上げ」し、隊員を大幅増員、戦闘車を配備し、那覇基地に弾薬庫を計画しています。「師団」は「陸自の作戦部隊。独立して一正面の作戦を遂行」と防衛白書に記され、台湾有事に対処する作戦部隊にほかなりません。沖縄市の弾薬庫建設に190億円。米軍嘉手納弾薬庫も共用しミサイル弾薬を貯蔵。宮古島の「電子戦部隊配備」に続き、石垣島にも同部隊を配備、さらに電磁波で対空攻撃する「対空電子戦部隊」を26年度に与那国、27年度に那覇駐屯地にも配備する計画です。一方で自衛隊基地の地下化、那覇基地(那覇空港)では滑走路修復、遺体処理、血液製剤の準備や負傷日米兵員の戦傷医療 救護輸送訓練など継戦能力を維持する戦争準備が行われています。

 米軍も石垣島に無人ミサイル発射機、無人防衛システムを展開、与那国にも米軍ハイマース投入を計画し、嘉手納基地に無人機が常駐、F35戦闘機やオスプレイが嘉手納、普天間から島々を飛び交い、全県に拡大展開しています。嘉手納基地の米軍降下訓練も常態化しています。自衛隊・米軍強化とともに沖縄全域で日米実戦訓練が激化し、まさに「戦争前夜」のすさまじさです。

 戦争準備の一方で宮古、石垣、与那国の実現不可能な「全島住民避難」計画が既定方針のように進んでいます。米軍、自衛隊が集中し、軍事専門家が「攻撃リスクが大きい」と指摘する沖縄島は「屋内避難」です。日米は宮古、石垣、与那国を主戦場と想定し、戦闘の邪魔になる住民を全島疎開させる意図ではないか。「攻撃リスクが大きい」沖縄島住民の安全は捨て置き、沖縄全域で戦争態勢を進める考えではないか。

 陸自宮古司令の市民恫喝を防衛大臣が容認し、市民運動の制圧がまかり通る事態は絶対に認められません。地域行事への自衛隊の参加が公然化、戦争に県民、若者を動員する隊員募集の勧誘、宣撫活動を強化する一方で、戦争準備に反対する市民による憲法が保障する言論・表現・結社・集会の自由、請願権の行使を封じることは断じて許されません。

 那覇空港、石垣港、平良港が平時から有事に軍事使用する「特定利用空港・港湾」に指定、那覇空港周辺道路が「特定利用道路」に指定されました。さらに政府は島々の空港、港湾を利用指定する構えです。米軍、自衛隊基地だけでなく空港・港湾・道路が軍事使用されてしまいます。沖縄防衛局長は「勝連分屯地のミサイル発射機は基地を出てミサイルを発射する」と認めました。自衛隊、米軍基地だけでなく沖縄の島々全体が攻撃拠点となり攻撃目標となります。有事で避難に使う空港は、「有事に兵員・物資の輸送に使う。優先すべき対処措置等の内容あらかじめ確定することは困難」と防衛省は石垣市民に回答しました。空港港湾が攻撃目標となり、住民は避難の退路を断たれます。防衛省は沖縄・西日本ネットワークに「存立危機事態のみが認定されている場合に住民避難計画はない」と回答しました。有事下に自衛隊は戦闘に専念し、住民は島に取り残されるのか。日米「離島奪還」作戦の訓練は、住民が取り残された島に米軍、自衛隊が着上陸して武力制圧し、海、空からの火力支援集中砲火も訓練しています。沖縄県民の犠牲を当然視する無謀な戦争計画と訓練に断固として反対します。

 辺野古新基地建設が進む一方、「普天間基地を継続使用」の米公文書が報道されました。宜野湾市の真中にあって「世界一危険」と言われる普天間基地を「台湾有事」には米海兵隊と自衛隊の出撃拠点とすることを意味し、絶対に容認できません。辺野古新基地は完成のめどもなく膨大な国費と土砂を海に投入し、既設部分でオスプレイ使用など台湾有事の前線基地にもなりかねません。辺野古新基地工事の海で平和学習の船が転覆し2人の人命が失われたことに哀悼を表します。しかし反対運動や平和学習への誹謗中傷を受け入れるわけにはいきません。普天間辺野古「移設」反対は沖縄の民意です。普天間基地の即時無条件返還と辺野古新基地建設の即時中止等「建白書実現」を求め続けます。

 私たちは沖縄の島々の戦争準備を絶対に受け入れません。別表のとおり日米政府、米軍・自衛隊に対する要請、与那国・石垣・宮古住民からの要請を一刻も早く解決するよう関係機関に求めます。

 玉城デニー知事には「長射程ミサイルの沖縄配備に反対」、「空港・港湾・道路」の軍事・特定利用指定にも反対する姿勢を堅持するよう求めます。



別表

【日米政府、米軍・自衛隊への要請】

①沖縄の島々への米軍・自衛隊のミサイル配備・弾薬庫建設、嘉手納弾薬庫の自衛隊共用などあらゆる戦争準備の軍事強化を中止すること。

②台湾有事に対処する「日米共同作戦計画」を廃棄し、同計画に基づく日米実戦訓練を中止すること。「日米共同作戦計画」の内容を公表すること。

③陸自那覇の「旅団から師団」格上げを中止し、新たな自衛隊訓練施設の建設を断念すること。

④空港・港湾・道路を軍事使用する「特定利用指定」に反対する。那覇空港、石垣港、平良港の「特定利用指定」を解除すること。

⑤与那国、石垣、宮古の実行不可能な「全島住民避難計画」を中止すること。米軍、自衛隊が集中する沖縄島を「屋内避難」とする理由を説明すること。

⑥県知事、基地所在27市町村の軍転協が反対する「自衛隊長射程ミサイル沖縄配備」を断念すること。米軍ハイマース、無人ミサイル発射機、無人機を撤去すること。

⑦米軍の石垣展開を中止すること。与那国、宮古への米軍展開に反対すること。

⑧民意に反する「辺野古新基地建設」を中止すること。普天間基地は即時撤去し、同基地の継続使用、代替する那覇空港、下地島空港の使用に反対すること。

⑨イラン戦争、台湾有事ほか海外紛争への在沖米軍の出動に反対すること。日本政府は日米の事前協議制に基づき、あらかじめ「在日、在沖米軍の出撃拒否」を米国政府に通告すること。

⑩宮古前陸自隊長の恫喝発言と市民運動制圧に抗議し、厳正な処分を求めること。

【玉城デニー知事、沖縄県への要請】

①玉城デニー知事は「長射程ミサイルの沖縄配備に反対」、会長を務める沖縄県軍用地転用促進協議会も反対を堅持し、「空港・港湾・道路」の特定利用指定に反対するよう要求します。

②知事、沖縄県は在沖米軍の他国における戦争への出撃に反対し、日米の事前協議制に基づき在日、在沖米軍の出撃に反対するよう政府に要求すること。米軍、自衛隊が台湾有事に介入しないよう日米政府に申し入れるよう要求します。


【与那国からの要請】

 暮らし自体がいよいよ立ち行かなくなり、島の存亡がかかっている。百年を超える歴史ある自治を守り、暮らし続けられる島を次世代に引き継ぎたい。そのために、以下を要求します。

①米軍または米軍と共同する自衛隊の島利用は止めていただきたい。

②島の自治や暮らしの土台であるインフラを機能不全にしかねない、自衛隊のさらなる人員増や機能強化は止めていただきたい。

③去る3/2の住民説明会で明らかにされた比川集落の人口に比してあまりに大規模な自衛隊官舎建設計画は、集落の自治を壊しかねません。一旦白紙に戻し、当該の自治公民館や町役場などと協議することを求めます。


【石垣からの要請】

➀石垣島に長射程反撃能力ミサイルを配備しないこと、米軍を常駐させないこと

➁今年度配備予定の電子戦部隊についての住民説明会の開催。

③➁の住民説明会開催をせずに、また住民の理解が得られないまま電子戦部隊用宿舎建設についての土地取得・調査は行わないこと

④石垣港の緊急時以外の米・自衛隊艦船の利用の中止

⑤石垣空港の特定利用空港化中止、緊急時以外の米軍機の使用中止、及び日米共同、自衛隊の訓練に使用しないこと

⑥石垣港・石垣空港を利用するミサイル・弾薬類の搬入における住民への周知と安全の確保。安全の保障のない搬入、搬送は行わないこと

⑦駐屯地内で現在進行中の覆道射場、グランド等の工事の進捗状況や今年度の建設工事の内容を明らかにすること

⑧駐屯地グランドから県道87号に通じるゲートの設置は中止すること

⑨駐屯地内の汚水・排水について宮古駐屯地同様に「蒸発散式」で処理し、駐屯地外への排水は中止すること


【宮古からの要請】

①比嘉前隊長と防衛省に対して「誤った発言の撤回と恫喝行為に対して真摯に謝罪する」ことを求める

②電子戦部隊と車両がすでに配備され、宮古島駐屯地を住民との約束を反古にして拡張し施設建物を建設する予定が明らかになっているが、住民への説明が一切ない不誠実な対応を改め、住民説明会を行うこと

③この5月の陸上総隊演習において、宮古島では日米の共同訓練として「指揮所」訓練が行われると発表されていますが、これはまさに宮古島が戦場と化していることを想定した訓練であり、米軍の宮古島への上陸も、このような戦争実戦訓練も行わないこと。また、自衛隊の基地外での訓練は住民との約束違反であり、行わないこと

④宮古空港、下地島空港の特定利用空港指定に反対すること、平良港の特定利用港湾指定を取り消すこと、空港、港湾とも米軍、自衛隊共に一切の軍事利用を行わないこと、下地島空港について屋良覚書を遵守すること

⑤宮古空港、下地島空港、平良港を利用して火薬・弾薬類の搬入の際は、事前の住民への周知と交通警察などによる安全の確保をすること。安全の保障のない軍事物資の搬出入はおこなわないこと

⑥基地は攻撃の対象であり、抑止とならない。住民が島から出される原因となる基地は撤去せよ

(以上)

Wednesday, April 01, 2026

『朝鮮新報』より転載:東京大空襲からイラン爆撃へ、戦争犯罪の連関/乗松聡子 From the Tokyo Firebombing to the Bombing of Iran: The Lineage of War Crimes

  『朝鮮新報』連載「私のノート 太平洋から東海へ」8回目(26年3月26日)の乗松聡子の記事を転載します。(ハイパーリンクは自分でつけたもので、朝鮮新報版にはありません。)

〈私のノート 太平洋から東海へ 8〉東京大空襲からイラン爆撃へ、戦争犯罪の連関/乗松聡子

2026年03月26日

228日、墨田区の横網町公園内の東京都慰霊堂で開催された、「東京大空襲81年第20回朝鮮人犠牲者追悼会」に出席しました。194539日の深夜から10日未明にかけて、300機にもおよぶ米軍のB29が苛烈な焼夷弾爆撃を行い、約10万人が殺され、そのうちおよそ1万人が朝鮮人であったといわれています。

「日帝の植民地統治のもと、見知らぬ遠い異国の地へ連れ去られ、人間としての基本的な尊厳と権利さえ奪われたまま、奴隷労働を強いられていた罪なき朝鮮の人々が、米軍の大空襲によって無念の死を遂げなければなりませんでした。」朝鮮大学校の学生が代読した「朝鮮人強制連行被害者・遺族協会」のメッセージにあった言葉です。日本人は、二重、三重の被害を受けた朝鮮人被害についてこそ学び記憶すべきと思いました。

会場の横には、判明している187人の被害者の名前が一人一人筆で書かれ、展示されていました。「判明」とは言っても、創氏改名後とうかがわれる名前が多くありました。年齢が書き添えられており、10代、20代が目立ちます。朝大の民族管弦学部の学生がタンソで「アリラン」を演奏しました。繊細な音色が底冷えのする会場に響きわたりました。名前も奪われたまま、この地で焼かれた人々の悔しさと悲しさが伝わってくるようでした。

朝大生による「アリラン」の演奏は、犠牲者の悲しみを奏でるようだった(2月28日)

東京大空襲をはじめとする日本の都市空襲を指揮したのは、カーティス・ルメイ将軍でした。ルメイは、朝鮮戦争で平壌など朝鮮の主要都市を焼きつくした空爆にも関与しました。戦後、「もし我々が戦争に負けていたら、戦争犯罪人として裁かれていたであろう」と言ったといいます。当時ルメイの部下であったロバート・マクナマラ元国防長官が証言していま。このマクナマラこそ、何百万のベトナム人、ラオス人、カンボジア人を殺したベトナム戦争を指揮した人間でした。

自らの手が大量のアジア人の血にまみれていたことを知っていた米帝は、反省するどころか、今、イスラエルとともにイスラム教徒を大量虐殺しています。東京大空襲朝鮮人犠牲者の追悼式のその日、対イラン攻撃を、それも人道にもとる戦争犯罪でもって開始しました。イラン南部の女子小学校にミサイルを二度撃ち込み175人もの、おもに7歳から12歳の女の子たちを惨殺しました。

31日、ネタニヤフ首相は声明で「40年やりたかったイラン殲滅がやっとできる」と、喜びを隠しもしませんでした。これは長期にわたる計画だったのです。むろんイスラエルは西アジアにおける米帝のプロキシー(代理人)です。米国の支持があるからやれるのです。2001年の「911事件」直後、ウェズリー・クラーク元米国陸軍大将はペンタゴンの将官から国防長官室の機密メモを見せられました。そこには、「むこう5年で7つの戦争を行う」とありました。イラク、シリア、レバノン、リビア、ソマリア、スーダン、イランの7か国です。

その後実際にこれらの国々では米欧による軍事介入、政権転覆、内戦関与が起こりました。最後に残されたのが大国イランだったのです。いま戦火の中、イラン現地から日々レポートしているテヘラン大学のサイード・モハンマド・マランディ教授は、イランが攻撃される大きな理由として「パレスチナに連帯しているから」と強調します。米イはパレスチナを支持する勢力を一掃したいのです。

イランは、米国政権が言うような「差し迫る脅威」ではありませんでした。イランがIAEAの査察を受け入れ、濃縮に制限を設けると合意した「イラン核合意(JCPOA)」を破棄したのは第一次トランプ政権です。昨年3月にはガバード情報長官が、米国の情報機関の結論として、「イランは核兵器を作ろうとしていない」と証言しましたが、トランプ大統領は一蹴しました。政権に入る前はあれだけ対イラン戦争に反対していたガバードは今、悪魔に魂を売ったかのように支持に回りました

昨年6月米イがイランを攻撃した「12日戦争」のときも、今回も、「交渉」が進行中の攻撃開始でした。そもそも何の悪いこともしていないイランがどうして「交渉」しなければ存在を許されないのでしょうか。米国の「交渉」とは「言うことを聞かなければ破壊するぞ」という脅迫に過ぎません。イランに核兵器を持つことを禁止したアヤトラ・アリ・ハメネイ師を開戦日に殺害したことからも、目的が政権転覆であることは明らかです。

それなのに日本を含む西側メディアは、ハメネイ師殺害を喜ぶかのごとくの報道を展開しました。ハメネイ師はイランの政治的最高指導者であり、シーア派の宗教的指導者でした。元CIAの分析家ジョン・キリアク氏は、ハメネイ師を殺すことは「ローマ教皇を殺すことに匹敵する」と言っています。その通りかもしれませんが、そのような喩えを使わないと西側にはハメネイ師殺害の重大さがわからないのでしょうか。小学校爆撃も、「もし米国の学校がやられたら」と置き換えてみないとその犯罪の残忍さがわからないのでしょうか。

相手を劣等な民族や劣等な宗教と見なし、殺してもいいと言わんばかりの、帝国主義的レイシズムが根底にあると思います。だから爆撃で大量虐殺しても良心も痛まないのです。現在、米イは、ガザでやってきたのと同様に、イランで学校、病院といった民間施設を容赦なく破壊し民間人を殺しています。レバノンでもやっています。ラマダンの最後の金曜日に行われる、パレスチナに連帯する「クッズの日」デモに対しても攻撃し市民を殺しました。やられればやられるほどイラン民衆の結束は増し、米イ侵略に抵抗するために街頭を埋め尽くしています。

このような実態を日本を含む西側のメディアは報道せず、逆に、「イランが独裁国家で政権転覆に値する」という言説ばかり流してきました。これは、朝鮮、ロシア、中国など、米帝の言いなりにならず主権を守ろうとする国々に使う常套手段です。嘘を流して侵略戦争を正当化するのです。米国高官さえも認めています。318日に、ジョー・ケント国家テロ対策センター長はイラン戦争に抗議して辞任しました。辞任表明において「イスラエルの高官や米国の主要メディアが、イランとの戦争を促すために好戦的な感情を煽る誤情報キャンペーンを展開した」と告発しています。

かつて大日本帝国も、「大本営発表」で嘘をばらまきながら1945814日まで戦争を引き伸ばしました。81年前の出来事と、現在は確実に繋がっているのです。


プロフィール

ジャーナリスト。東京・武蔵野市出身。高2,高3をカナダ・ビクトリア市の国際学校で学び、日本の侵略戦争の歴史を初めて知る。97年カナダに移住、05年「バンクーバー9条の会」の創立に加わり、06年「ピース・フィロソフィー・センター(peacephilosophy.com)」設立。英語誌「アジア太平洋ジャーナル」エディター。2人の子と、3匹の猫の母。著書に『沖縄は孤立していない』(金曜日、18年)など。19年朝鮮民主主義人民共和国を初訪問。世界の脱植民地化の動きと共にありたいと思っている。

(本連載は、反帝国主義、脱植民地主義の視座から日本や朝鮮半島をめぐる諸問題や国際情勢に切り込むエッセーです)

★★★

ウェブ版では https://chosonsinbo.com/jp/2026/03/26sk-30/

米イスラエルによるイラン侵略戦争についいては補完的な内容を書いた、こちらの記事と併せてお読みください。

「月刊イオ」3月号から転載:吹き荒れる米国の横暴と、抗う多極化勢力 

「月刊イオ」3月号から転載:吹き荒れる米国の横暴と、抗う多極化勢力 From Monthly 이어: Escalating U.S. Aggression and the Rise of Multipolar Resistance

 「月刊イオ」3月号の、「いまを視る」という時事問題を扱うコーナーに記事を載せていただきました。許可を得てここに転載します。大変読み応えのある「月刊イオ」の購読はこちらまで!



吹き荒れる米国の横暴と、抗う多極化勢力

 乗松聡子

 2025年。自分は戦争をしない「平和の大統領だ」と言って二期目に就任したトランプ大統領は、この年だけで、イラン、イラク、ナイジェリア、ソマリア、シリア、イエメン、ベネズエラの7か国で600回以上も爆撃を行いました(「武力紛争位置・事象データによる)

そして2026年。ガザのジェノサイドが続いています。これも米国の支援がなければできない戦争です。ガザ政府メディア局によると、イスラエルは、昨年1010日の「停戦合意」以降今年の1月上旬までに1200近く停戦合意違反を行い、500人のパレスチナ人を殺しました。冬のガザで、21人の赤ちゃんが凍死しました。西側メディアはもう報道さえしません。

23107日のハマス蜂起の際にイスラエル人が約1200人殺され240人が捕虜となったことを理由に西側世界はジェノサイドを支持してきました。後に明らかになったのは、死者の相当数が、イスラエル軍によって殺されていたという衝撃の事実でした。イスラエルのメディア「ハーレツ」も報じています。当初西側メディアに氾濫した、ハマスが女性をレイプしたとか、赤ちゃんの首を切り落としたといった情報はすべてフェイクだったこともわかっています。

 

フェイクは政権転覆の手段

 西側の政府やメディアは、戦争や政権転覆を正当化するために平気で嘘をつきます。言うことを聞かない国の指導者を「独裁者」として宣伝し、排除を正当化します。年始に米国が拉致したベネズエラのマドゥロ大統領夫妻も、石油の国有化という資源主権を掲げたウゴ・チャベス前大統領の政策を引き継ぐが故に、敵視されてきました。

 新年から注目されているイランも同様です。1953年、モサデグ首相が「石油はイラン人のために使う」と外国資本に利益を独占されていた石油産業を国有化しようとしたところ、CIAが主導したクーデターで政権転覆され、パフラヴィ―2世による専制政治下、親米化が進みました。今回米欧やそのメディアはこの歴史を語らず、1979年のイランイスラム革命による政権を否定し、再び政権転覆を画策しているのです。

 イランでは、通貨の暴落がきっかけで、最初は商店主などが中心の平和的なデモだったのが、数日後にはイスラエルの諜報機関モサドが、武装した暴徒を大量に注入しました。かれらは、モスクに火を放ち、警察官を生きたまま焼き殺しました。病院にも放火し看護師が死にました。テヘランだけでも治安部隊を100人以上、残忍な方法で殺しました3才の女の子を含む一般市民も殺しました。

西側メディアでは、イラン当局が何千、何万の市民を殺したと連日報じましたが、米国や欧州にある「人権団体」と称する反イラン団体が恣意的に出す数字を横流ししているだけです。これらの団体には、米国の政権転覆機関NEDが出資しています。モサドの関与はSNSでモサド自身が公表していますし、元CIA長官も言っています。

これはバイデン政権時代から周到に計画されました。イーロン・マスク氏の衛星インターネットサービス「スターリンク」をイラン張り巡らし、暴動の指示に使ったのです。結局イラン当局が「スターリンク」による接続を妨害したことで、暴動が収まったのです。当局がインターネットを切断したのも外部勢力からイランを守るためでした。テヘラン大学のセイエド・モハマッド・マランディ教授が現地から証言しています。イラン人はこのような外国勢力の介入に怒り、全国で政府を支持する大規模デモが起こっていると。ベネズエラでも大統領夫妻奪還を訴える大規模デモが連日起こりましたが、西側メディアは無視し、政権転覆に都合のいい「反対派」の主張ばかり報道しました。

 

戦争と同じだけ殺す 西側の制裁

政権転覆に至るまで、その国を弱体化させるために行うのが制裁です。米国および西側諸国は、一方的な経済制裁を、約40か国、地球上の人口の3分の1をしめる地域に対して行っています。イランとベネズエラも、過酷な制裁を受けてきました。制裁の対象は主に、欧米に搾取されてきたアフリカ、中南米、ユーラシアなどのグローバルサウス諸国です。支配を許さず自己決定権を行使する国に、懲罰として制裁するのです。日本も米国に同調して制裁を行う側にいます。

制裁は、輸出入の制限や金融取引の遮断を通じて通貨の下落やインフレを招き、その結果、食料や医療機器、医薬品やエネルギー、水の不足という深刻な人道危機を招きます。昨年出た、医学誌「ランセット」の報告では、1971年から2021年の50年間の間、米国やEU諸国による制裁で、年間約56万4千人が制裁のために命を落としており、それは戦争による死者数と同等に価すると結論しています。それも、死者の半数5歳以下の子どもです。

 

多極化の中、米国追従を保つ日本

世界ではいま、中国、ロシア、インドなどの新興勢力がBRICS経済圏を構築し、米国が支配するドル経済から脱却しようとしています。西側帝国主義の戦争や制裁から自国を守り、お互い助け合い繁栄していくという、世界的な脱植民地の動きでもあります。朝鮮戦争以来、最も長期間にわたって、米国と西側による敵視と制裁措置に耐えてきた朝鮮民主主義人民共和国も、今やロシアや中国との協力関係を築き、多極化勢力の一端を担っています。

残念ながら、日本は米国追随を重視するあまり、この流れから取り残されています。同じ西側の国である韓国やカナダの首脳も、今年になって中国を訪問し、協力関係を築いています。それに比べ日本の高市首相はどうでしょう。昨年11月7日の国会答弁で、「台湾有事」の際、自衛隊を派遣する可能性を語り、中国から激しい反発を受け、国内でも批判が上がったのに開き直って撤回もしていません。

朝鮮に対しても日本は敵視政策を続けています。2002年の「平壌宣言」に謳われた、植民地支配の歴史清算に着手もしていません。朝鮮学校に対し、教育無償化や支援金の対象から除外するという、独自制裁ともいえる人権侵害を行っています。朝鮮といえば「拉致問題」ばかりを言い、2国間に横たわるさまざまな課題への取り組みをブロックしています。「非核化」についても日本は朝鮮の非核化だけを語り、韓国や日本における米国の核の脅威を取り除くという、双方向の非核化について語ろうとしません。

2026年、平和のためには、情報操作に惑わされず、戦争・制裁・政権転覆で覇権を維持しようとする西側帝国の本質を見極めることが大事です。そして日本は、この帝国の従順な一部のままでいいのか、という根本の問いをそろそろ真剣に問い始めるときではないでしょうか。

 

(ジャーナリスト、カナダ在住)




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Saturday, March 28, 2026

カナダ発ウェビナー「ライブレポート:沖縄の米軍基地」映像公開 WEBINAR: A Live Report on Local Okinawan Resistance to US Military Base Construction

事後報告になりますが、日本時間で3月19日(北米時間で3月18日)、カナダと中国の交流や相互理解を促進するための団体「カナダーチャイナ・フォーカス」主催で、沖縄についてのウェビナーを行いました。ビクトリア大学教授の小笠原みどりさんが司会、人類学者で環境運動家の吉川秀樹さんがトロントからつなぎ辺野古新基地問題を中心としたレクチャー、乗松聡子が、沖縄北部・塩川港の土砂搬出現場から、基地阻止のために長年「牛歩行動」で搬出を遅らせる行動をしてきたみなさんの声を届けるという構成で、英語で行いました。以下、ポスターと、YouTubeです。

On March 19 Japan time (March 18 North American time), we held a webinar on Okinawa organized by Canada-China Focus, a group that promotes exchange and mutual understanding between Canada and China. The webinar was moderated by Professor Midori Ogasawara of the University of Victoria. Anthropologist and environmental activist Hideki Yoshikawa joined from Toronto to give a lecture focusing on the Henoko new base issue. Satoko Oka Norimatsu reported from the soil transport site at Shiokawa Port in northern Okinawa, sharing the voices of people who have long engaged in “slow-walking” actions to delay the transport of materials in an effort to stop the base construction. The webinar was conducted in English. Below are the poster and the YouTube video.

YouTube のリンクはこちら https://www.youtube.com/watch?v=Bj3M6gERBxo&t=5060s


日本語字幕を自動生成で出す方法があります。画面下の「CC」とある字幕表示のボタンを押すと、通常は英語の字幕が出ると思います。次に、その横の歯車みたいな「設定」のボタンを押すと選択肢が出てきて、一番上の「字幕」のところを押すと「自動翻訳」という選択肢が出てくると思います。そこから「日本語」を選ぶと、日本語字幕が出ます。全部正確ではないかもしれませんが、だいたいの内容がわかると思います。




3月16日、辺野古沖において高校生の修学旅行生を乗せた二隻の船が転覆し、二人が亡くなるという、あまりにも痛ましい事故が起きました。亡くなられた方に深い哀悼の意を表するとともに、ご遺族に心よりお悔やみ申し上げます。

Thursday, March 05, 2026

ペペ・エスコバール 西アジアを揺るがした10時間 Pepe Escobar: Ten hours that shook West Asia

 ペペ・エスコバールが「Strategic Culture」に3月1日に出した記事の日本語版である。彼は比ゆ的な表現が多いのでところどころ【】で訳者解説をつけた。

この戦争は、エスコバールが言うように、1979年のイラン・イスラム革命以来47年間の米国からの敵視と制裁に耐えてきたイランとそれを支えるグローバルサウスと、「エプスタイン・シンジケート」と著者が呼ぶ米イスラエル西側連合の闘いである。西アジアの米国の時代は終わるであろう。イランはこの日のために準備を重ねてきた。地下基地で最新鋭のハイパーソニックミサイルを準備してきた。交渉がまとまりそうなタイミングで攻撃を仕掛けるような野蛮な者たちを相手にしていることもわかっていた。ハメネイ師は自分が殺されることがわかっており、用意を周到にした上で、どこにも逃げず、誇り高い殉教を選んだ。イランの人々はハメネイ師の遺志を受け継ぎ、米イスラエルの帝国主義と闘わんと恐れずに路上に出ている。イランは中国やロシアから最先端のインテリジェンスのバックアップを受けている。ハメネイ師はイランが核兵器を持たせないように導いた立役者だったという。そのハメネイ師を殺した米イスラエルは、この戦争は「核問題」などでは全くないことを自ら証明した。ネタニヤフの長年の夢であるイラン転覆作戦に、トランプとペンタゴンが引きずられた。トランプはネタニヤフからどんな弱みを握られているのであろうか。イスラエルロビーだけでは説明がつかない何かがありそうである。(@PeacePhilosophy 乗松聡子)

こちらはきょうの(北米時間3月4日)ジャッジ・ナポリターノとペペの対談。この記事の内容をもとにしている。

 

以下は、動画の翻訳ではなく、エスコバーの記事の翻訳です。

西アジアを揺るがした10時間

Ten hours that shook West Asia

ペペ・エスコバール

2026年3月1日

私たちは、米国後の西アジア秩序への入り口に、まさに到達しつつあるのかもしれない。

10時間。 イランが次のことを行うのに要した時間である。

  • 湾岸全域において「混沌・略奪・常時攻撃の帝国」を包囲状態に置いた。

  • 米軍の主要軍事基地27か所を執拗に爆撃し、甚大な被害を与えた。

  • 西アジアにおけるすべての米国およびイスラエルの資産と利益が、報復の正当な標的であると決定した。

  • ホルムズ海峡を封鎖した(その後解除されたが、ロシアと中国の船舶にのみ自由通航を認めた)。

次に起こること:もし米軍艦艇が撤退しなければ、撃沈される。

この一連の出来事は、予想どおり「作られつつある欺瞞」として展開した。戦争は西アジアの死のカルトの指導者によって命じられた。大量虐殺的な精神異常者であり、その後「シオンの翼」に逃げ込み、ベルリンへと逃亡した【ネタニヤフのこと】。彼の米国側の相棒、ネオ・カリグラ――誇大妄想のナルシス――は、マール・ア・ラーゴからこの戦争を共同で命じた【トランプのこと】。

彼らの初日の「壮大な成功」は次の通りである。
最高指導者アヤトラ・ハメネイを斬首攻撃で殺害したこと。
そしてイラン南部の小学校で、100人以上(現在も増え続けている)の少女たちを殺害したことである。

予想どおり、これはベイルートでのヒズボラのサイイド・ナスララの暗殺の焼き直しでもあった。【24年9月27日にイスラエルに殺害されたヒズボラ指導者】

オマーンでの間接的な「交渉」の最中、トランプ2.0チームはテヘランに対し、最終的な微調整を必要とする提案を明確にするよう求めていた。

オマーンの外相バドル・ビン・ハマド・アル・ブサイディは、イランが初めて次の点に同意したことを確認した。
核爆弾のための核物質を「決して」蓄積しないこと、
濃縮物質の備蓄をゼロに保つこと、
既存の備蓄を希釈すること、
そしてIAEAによる完全な査察を認めること、である。

会合は土曜日の朝、テヘランで行われ、イラン指導部の最高幹部が集まった。

エプスタイン・シンジケート【米イスラエルを指す】はその会合を爆撃し、最高幹部とともに最高指導者アヤトラ・ハメネイを殺害した。混沌の帝国は交渉などしない。それを武器として利用するだけである。

しかし体制崩壊や政権転覆に直結するような即時の崩壊は起きなかった。攻撃から30分も経たないうちに、テヘランの指導部は驚異的で電撃的、かつ大規模に調整された反撃を開始した。24時間連続発射モードで行われ、これによりエスカレーションの枠組みと、戦場における耐久性の優位が確立された。

例えばイランの戦術は、12日間戦争のときとはすでに大きく異なっている。バーレーンへの第2波攻撃では、米国の防衛システムを完全に混乱させる大規模な弾道ミサイルの集中攻撃の後にのみ、シャヘド136の自爆ドローンを使用した。その結果、高価な迎撃ミサイルが早期に大量消費された。ドローンはその後に到来した。

初日だけで、イランは1,200発以上のミサイルとドローンを発射した。テヘランは数万のミサイルとドローンを備蓄している。米国の迎撃ミサイルは数日で枯渇する見込みだ。THAAD1基のコストは1500万ドルである。この計算は明らかに帝国側に有利ではない。


殉教から復讐へ

イランがドバイの米国資産を攻撃したことは、巧妙な戦略的行動である。これは、隠れ家となっている米軍要員やCIAの秘密拠点を破壊することと結びついている。ドバイのけばけばしい富の象徴――ブルジュ・ハリファ、ブルジュ・アル・アラブ、パーム・ジュメイラ【ドバイの富を象徴する建造物】――はすべて炎上している。

正しく指摘されているように、ドバイの人口の88%は外国人である。ここは世界のマネーロンダリングの首都であるだけでなく、国旗を持つ特別経済区のようなものであり、現在は銀行取り付け騒ぎの危険に直面している。

そもそもUAEは生産資本主義の意味での「生産」をほとんど行っていない。税金ゼロのサービス経済であり、華美な富と安全を中心に成り立っている(その安全も今や失われた)。

ドバイはまた、ネオ・カリグラに対して巨大な影響力を持っている。いわゆる「トランプ・コイン」、個人的投資、「平和評議会」(実際には戦争評議会)への寄付などがある。

航空業はドバイGDPの27%、UAE全体の18%を占める。ドバイ空港が暗闇に沈むことは絶対的な災害である。エミレーツ航空、エティハド航空、カタール航空といった巨大航空会社と巨大空港は、世界輸送ネットワークの重要な拠点である。

ドバイが暗闇に包まれることは、トランプにとって非常に悪いビジネスである。MbZ(ムハンマド・ビン・ザーイド)がすでに停戦を懇願する電話をかけていることは疑いない。さらにテヘランは、シェブロンとエクソンモービルも正当な攻撃対象であると明言した。だからこそネオ・カリグラはすでに初日に停戦を望み、イタリア外交ルートを通じてイランに伝えていたのである。【トランプは攻撃初日にイタリアを通じてイランに停戦を申し出た。】

テルアビブの大量虐殺的異常者が、まだ準備の整っていない無敵艦隊を抱えたネオ・カリグラに戦争を強いたのかどうか、さまざまな憶測が飛び交っている。しかし事実は、ペンタゴンが戦略的主導権を失ったということである。【米国はイスラエルのいいなりに、準備さえできていない戦争を決行した】

脚本はテヘランで書かれている。これは消耗戦となり、テヘランはあらゆる可能なシナリオを事前に検討している。

すべてがどのように進んだかを要約すると次の通りである。
斬首攻撃。
専門家会議が数分で招集。
革命防衛隊は1時間以内に「最大限の武力」で反撃。
死のカルトと石油チワワたち【イスラエルと、湾岸の米国同盟国たち】に攻撃を浴びせた。

後継メカニズム:整備済み。
指揮系統:整備済み。
政権転覆:なし。
帝国の戦略的支配:ゼロ。

殉教から復讐へ。

グローバル・サウス全体がこれを見ている。


完全な戦略的断絶

複数の革命防衛隊筋によれば、アヤトラ・ハメネイは一連の指令を通じて、すべてを極めて詳細に準備していた。

彼は国家安全保障会議書記アリー・ラリジャニや指導部メンバーに対し、イランがエプスタイン・シンジケート【米イスラエル】の軍事力にどのように抵抗するかだけでなく、自身を含む暗殺の試みにどう対処するかも指示していた。

ハメネイは、各軍事指揮と政府役職について、少なくとも四層の後継体制を指名していた。だからこそ斬首攻撃の後でも、すべての重要決定が記録的な速さで行われたのである。

大量虐殺的な米国・イスラエルのコンビは、これから何が起こるか理解していない。彼らはシーア派世界全体を侮辱しただけでなく、数億人のスンニ派ムスリムも敵に回した。

これは完全な戦略的断絶である。ワシントンとテヘランの関係は、もはや引き返せない地点に到達した。

「政権転覆」という幼稚な発想とは逆に、ハメネイ殺害は国内のコンセンサスを強化し、無制限の報復を正当化し、湾岸からレバントに至る多方面の対決【ペルシャ湾地域から東地中海まで、西アジア全体に広がる戦線】を解き放った。

イランの当面の戦術は明確である。イスラエルの防空を飽和させ、迎撃ミサイル危機を引き起こすことだ。そうなればイスラエルの将軍たちは停戦を懇願するだろう。イランは同時にイスラエルのインフラと経済を破壊し続け、数日以内に体制を崩壊させる可能性もある。

ロシアと中国はその間、影で動き、イランの防衛ネットワークを維持するだろう。

西アジアの石油とガスが数日でも止まれば、世界経済は大きな衝撃を受ける。イランはすべてのシナリオを想定しており、圧力を自由にかけたり緩めたりできる。

グローバル・サウスは、47年間の制裁の中で帝国の巨像と戦いながら、イランの指導部がどのように連帯と明確な目的を示しているかを学ぶことになる。この抵抗そのものが、すでに奇跡と言える。

そして今、西アジアから米軍の軍事的存在が終焉に向かう道が開かれるかもしれない。それはソレイマニ、ナスララ、そしてハメネイに至る殉教者の系譜が思い描いてきたものである。

我々は、米国後の西アジア秩序への入口に到達しているのかもしれない。そのとき、その恐ろしい死のカルトは、哀れな不寛容の神とともに戦略的泥沼に沈み、抑止力を失い、偏執に取りつかれ、複数の非対称的圧力と戦うことになるだろう。

(翻訳以上)

元記事はここです