Thursday, March 05, 2026

ペペ・エスコバール 西アジアを揺るがした10時間 Pepe Escobar: Ten hours that shook West Asia

 ペペ・エスコバールが「Strategic Culture」に3月1日に出した記事の日本語版である。彼は比ゆ的な表現が多いのでところどころ【】で訳者解説をつけた。

この戦争は、エスコバールが言うように、1979年のイラン・イスラム革命以来47年間の米国からの敵視と制裁に耐えてきたイランとそれを支えるグローバルサウスと、「エプスタイン・シンジケート」と著者が呼ぶ米イスラエル西側連合の闘いである。西アジアの米国の時代は終わるであろう。イランはこの日のために準備を重ねてきた。地下基地で最新鋭のハイパーソニックミサイルを準備してきた。交渉がまとまりそうなタイミングで攻撃を仕掛けるような野蛮な者たちを相手にしていることもわかっていた。ハメネイ師は自分が殺されることがわかっており、用意を周到にした上で、どこにも逃げず、誇り高い殉教を選んだ。イランの人々はハメネイ師の遺志を受け継ぎ、米イスラエルの帝国主義と闘わんと恐れずに路上に出ている。イランは中国やロシアから最先端のインテリジェンスのバックアップを受けている。ハメネイ師はイランが核兵器を持たせないように導いた立役者だったという。そのハメネイ師を殺した米イスラエルは、この戦争は「核問題」などでは全くないことを自ら証明した。ネタニヤフの長年の夢であるイラン転覆作戦に、トランプとペンタゴンが引きずられた。トランプはネタニヤフからどんな弱みを握られているのであろうか。イスラエルロビーだけでは説明がつかない何かがありそうである。(@PeacePhilosophy 乗松聡子)

こちらはきょうの(北米時間3月4日)ジャッジ・ナポリターノとペペの対談。この記事の内容をもとにしている。

 

以下は、動画の翻訳ではなく、エスコバーの記事の翻訳です。

西アジアを揺るがした10時間

Ten hours that shook West Asia

ペペ・エスコバール

2026年3月1日

私たちは、米国後の西アジア秩序への入り口に、まさに到達しつつあるのかもしれない。

10時間。 イランが次のことを行うのに要した時間である。

  • 湾岸全域において「混沌・略奪・常時攻撃の帝国」を包囲状態に置いた。

  • 米軍の主要軍事基地27か所を執拗に爆撃し、甚大な被害を与えた。

  • 西アジアにおけるすべての米国およびイスラエルの資産と利益が、報復の正当な標的であると決定した。

  • ホルムズ海峡を封鎖した(その後解除されたが、ロシアと中国の船舶にのみ自由通航を認めた)。

次に起こること:もし米軍艦艇が撤退しなければ、撃沈される。

この一連の出来事は、予想どおり「作られつつある欺瞞」として展開した。戦争は西アジアの死のカルトの指導者によって命じられた。大量虐殺的な精神異常者であり、その後「シオンの翼」に逃げ込み、ベルリンへと逃亡した【ネタニヤフのこと】。彼の米国側の相棒、ネオ・カリグラ――誇大妄想のナルシス――は、マール・ア・ラーゴからこの戦争を共同で命じた【トランプのこと】。

彼らの初日の「壮大な成功」は次の通りである。
最高指導者アヤトラ・ハメネイを斬首攻撃で殺害したこと。
そしてイラン南部の小学校で、100人以上(現在も増え続けている)の少女たちを殺害したことである。

予想どおり、これはベイルートでのヒズボラのサイイド・ナスララの暗殺の焼き直しでもあった。【24年9月27日にイスラエルに殺害されたヒズボラ指導者】

オマーンでの間接的な「交渉」の最中、トランプ2.0チームはテヘランに対し、最終的な微調整を必要とする提案を明確にするよう求めていた。

オマーンの外相バドル・ビン・ハマド・アル・ブサイディは、イランが初めて次の点に同意したことを確認した。
核爆弾のための核物質を「決して」蓄積しないこと、
濃縮物質の備蓄をゼロに保つこと、
既存の備蓄を希釈すること、
そしてIAEAによる完全な査察を認めること、である。

会合は土曜日の朝、テヘランで行われ、イラン指導部の最高幹部が集まった。

エプスタイン・シンジケート【米イスラエルを指す】はその会合を爆撃し、最高幹部とともに最高指導者アヤトラ・ハメネイを殺害した。混沌の帝国は交渉などしない。それを武器として利用するだけである。

しかし体制崩壊や政権転覆に直結するような即時の崩壊は起きなかった。攻撃から30分も経たないうちに、テヘランの指導部は驚異的で電撃的、かつ大規模に調整された反撃を開始した。24時間連続発射モードで行われ、これによりエスカレーションの枠組みと、戦場における耐久性の優位が確立された。

例えばイランの戦術は、12日間戦争のときとはすでに大きく異なっている。バーレーンへの第2波攻撃では、米国の防衛システムを完全に混乱させる大規模な弾道ミサイルの集中攻撃の後にのみ、シャヘド136の自爆ドローンを使用した。その結果、高価な迎撃ミサイルが早期に大量消費された。ドローンはその後に到来した。

初日だけで、イランは1,200発以上のミサイルとドローンを発射した。テヘランは数万のミサイルとドローンを備蓄している。米国の迎撃ミサイルは数日で枯渇する見込みだ。THAAD1基のコストは1500万ドルである。この計算は明らかに帝国側に有利ではない。


殉教から復讐へ

イランがドバイの米国資産を攻撃したことは、巧妙な戦略的行動である。これは、隠れ家となっている米軍要員やCIAの秘密拠点を破壊することと結びついている。ドバイのけばけばしい富の象徴――ブルジュ・ハリファ、ブルジュ・アル・アラブ、パーム・ジュメイラ【ドバイの富を象徴する建造物】――はすべて炎上している。

正しく指摘されているように、ドバイの人口の88%は外国人である。ここは世界のマネーロンダリングの首都であるだけでなく、国旗を持つ特別経済区のようなものであり、現在は銀行取り付け騒ぎの危険に直面している。

そもそもUAEは生産資本主義の意味での「生産」をほとんど行っていない。税金ゼロのサービス経済であり、華美な富と安全を中心に成り立っている(その安全も今や失われた)。

ドバイはまた、ネオ・カリグラに対して巨大な影響力を持っている。いわゆる「トランプ・コイン」、個人的投資、「平和評議会」(実際には戦争評議会)への寄付などがある。

航空業はドバイGDPの27%、UAE全体の18%を占める。ドバイ空港が暗闇に沈むことは絶対的な災害である。エミレーツ航空、エティハド航空、カタール航空といった巨大航空会社と巨大空港は、世界輸送ネットワークの重要な拠点である。

ドバイが暗闇に包まれることは、トランプにとって非常に悪いビジネスである。MbZ(ムハンマド・ビン・ザーイド)がすでに停戦を懇願する電話をかけていることは疑いない。さらにテヘランは、シェブロンとエクソンモービルも正当な攻撃対象であると明言した。だからこそネオ・カリグラはすでに初日に停戦を望み、イタリア外交ルートを通じてイランに伝えていたのである。【トランプは攻撃初日にイタリアを通じてイランに停戦を申し出た。】

テルアビブの大量虐殺的異常者が、まだ準備の整っていない無敵艦隊を抱えたネオ・カリグラに戦争を強いたのかどうか、さまざまな憶測が飛び交っている。しかし事実は、ペンタゴンが戦略的主導権を失ったということである。【米国はイスラエルのいいなりに、準備さえできていない戦争を決行した】

脚本はテヘランで書かれている。これは消耗戦となり、テヘランはあらゆる可能なシナリオを事前に検討している。

すべてがどのように進んだかを要約すると次の通りである。
斬首攻撃。
専門家会議が数分で招集。
革命防衛隊は1時間以内に「最大限の武力」で反撃。
死のカルトと石油チワワたち【イスラエルと、湾岸の米国同盟国たち】に攻撃を浴びせた。

後継メカニズム:整備済み。
指揮系統:整備済み。
政権転覆:なし。
帝国の戦略的支配:ゼロ。

殉教から復讐へ。

グローバル・サウス全体がこれを見ている。


完全な戦略的断絶

複数の革命防衛隊筋によれば、アヤトラ・ハメネイは一連の指令を通じて、すべてを極めて詳細に準備していた。

彼は国家安全保障会議書記アリー・ラリジャニや指導部メンバーに対し、イランがエプスタイン・シンジケート【米イスラエル】の軍事力にどのように抵抗するかだけでなく、自身を含む暗殺の試みにどう対処するかも指示していた。

ハメネイは、各軍事指揮と政府役職について、少なくとも四層の後継体制を指名していた。だからこそ斬首攻撃の後でも、すべての重要決定が記録的な速さで行われたのである。

大量虐殺的な米国・イスラエルのコンビは、これから何が起こるか理解していない。彼らはシーア派世界全体を侮辱しただけでなく、数億人のスンニ派ムスリムも敵に回した。

これは完全な戦略的断絶である。ワシントンとテヘランの関係は、もはや引き返せない地点に到達した。

「政権転覆」という幼稚な発想とは逆に、ハメネイ殺害は国内のコンセンサスを強化し、無制限の報復を正当化し、湾岸からレバントに至る多方面の対決【ペルシャ湾地域から東地中海まで、西アジア全体に広がる戦線】を解き放った。

イランの当面の戦術は明確である。イスラエルの防空を飽和させ、迎撃ミサイル危機を引き起こすことだ。そうなればイスラエルの将軍たちは停戦を懇願するだろう。イランは同時にイスラエルのインフラと経済を破壊し続け、数日以内に体制を崩壊させる可能性もある。

ロシアと中国はその間、影で動き、イランの防衛ネットワークを維持するだろう。

西アジアの石油とガスが数日でも止まれば、世界経済は大きな衝撃を受ける。イランはすべてのシナリオを想定しており、圧力を自由にかけたり緩めたりできる。

グローバル・サウスは、47年間の制裁の中で帝国の巨像と戦いながら、イランの指導部がどのように連帯と明確な目的を示しているかを学ぶことになる。この抵抗そのものが、すでに奇跡と言える。

そして今、西アジアから米軍の軍事的存在が終焉に向かう道が開かれるかもしれない。それはソレイマニ、ナスララ、そしてハメネイに至る殉教者の系譜が思い描いてきたものである。

我々は、米国後の西アジア秩序への入口に到達しているのかもしれない。そのとき、その恐ろしい死のカルトは、哀れな不寛容の神とともに戦略的泥沼に沈み、抑止力を失い、偏執に取りつかれ、複数の非対称的圧力と戦うことになるだろう。

(翻訳以上)

元記事はここです

Wednesday, March 04, 2026

「アヤトラは国民的人気があった」テヘランからのモハンマド・マランディ教授のレポート。*SPECIAL* - Prof. Mohammad Marandi : Latest Developments LIVE From Tehran

(日本時間3月5日未明にアップされた、ジャッジ・ナポリターノによる、テヘラン大学のムハンマド・マランディ教授インタビュー動画)

米イスラエルのイラン侵略戦争について西側のメディアはおおむね侵略側についている。

テヘラン大学のマランディ教授の生の声を聞いてほしい。

米イスラエルはガザやウェストバンクでやっていることを同様に残酷なジェノサイド的殺戮を展開している。初日に女子学校爆撃で160人以上を殺した(最新レポートでは175人という数字もある)。テヘランでも学校襲撃をやったようだ。病院も襲撃され保育器に入った赤ちゃんがライフラインを断たれて死んだようだ。イスラエルはいまレバノンも攻撃して民間人を殺している。

なぜイランがやられるか?イランは迫害されてきたパレスチナを支援してきた。イスラエルはパレスチナに味方する大国を許せない。

マランディ教授は命を狙われている。教授がインタビューを受けたスタジオも直後に攻撃されている。このインタビューも途中ネットが不調で中断したが、インタビュアーのナポリターノ判事も視聴者も、最悪の事態を予想してしまった。幸いマランディ教授は戻ってきた。

殺されたアヤトラ・ハメネイ師についての話も西側メディアが言っていることと全く違うので聞いてほしい。人民に寄り添い、逃げも隠れもしない人だったという。国民に愛されている指導者だったという。

そろそろ報道消費者は、西側メディアが言っているからこそ嘘だろう、というマインドを持つ必要がある。日本メディアは国際報道については右から左まで西側メディアのオウム返しだ。朝日も毎日も読売も産経もみな同じだ。同じだからおかしい、というマインドも持つ必要がある。

以下、翻訳。AI訳に手を入れました。


Andrew Napolitano:
皆さんこんにちは。Judging Freedom の Andrew Napolitano です。今日は2026年3月4日、水曜日です。
私の親しい友人であり同僚でもある Mohammad Marandi 教授が、イランのテヘランから参加してくれています。
Marandi 教授、どんな状況であっても、あなたと話せるのはいつも嬉しいことです。ご家族ともども、いかがお過ごしですか。

Mohammad Marandi:
私は元気ですし、家族も無事です。ただ、ここ数日はテヘランの人々にとって非常に厳しい日々でした。今日もいくつかの地域で非常に激しい爆撃がありました。しかし、私たちは大丈夫です。


Napolitano:
アメリカとイスラエルは何を狙って爆撃しているのでしょうか。
アメリカでは、160人の少女が死亡した学校、警察署、病院が爆撃されたという報道が届いています。
言い換えると、非戦闘員や軍事目標ではない施設への配慮はあるのでしょうか。それとも無差別に爆撃しているのでしょうか。

Marandi:
多くの場合、無差別に爆撃しています。
実際、いわゆる「ダブルタップ攻撃」が何度も行われています。フェルドウシー広場で、私の知人がそれを目撃しました。建物を攻撃して倒壊させ、その後、救助に来た人々や救急隊員を狙って同じ場所を再び攻撃するのです。

Drop Site News の記者も、ある広場を訪れた際に同じような証言を聞いたと言っていました。テヘランのさまざまな地区、また他の都市でも同様の攻撃が報告されています。

病院も爆撃されています。私立病院、公立病院、そして警察署も攻撃されています。


Napolitano:
しかしテヘランでは、ニューヨークと同じように警察署は普通の建物と一体化していますよね。

Marandi:
その通りです。だから警察署を攻撃すると、周囲の住宅も巻き込まれます。

私はイランの国営ラジオ・テレビに行きました。普段はほとんど出演しないのですが、戦時なので依頼を受けて行きました。数年前に使ったスタジオに行くと、前夜の爆撃で大きく破壊されていました。
別の場所に移動してインタビューを行ったのですが、私がその施設を出て1時間後、イラン国営放送の複合施設も爆撃されました。

西側の主流メディアは、イランのジャーナリストや病院、あるいは少女たちのことなど気にもかけていません。しかしテヘランでの爆撃は非常に無差別です。


Napolitano:
アメリカとイスラエルが「斬首作戦」と呼ぶアヤトラの殺害についてですが、彼らはそれによって政府に対する蜂起が起きると期待していたようです。
しかし結果は、彼らの意図とは逆になっているのでしょうか。

Marandi:
アヤトラは常にイラン国民の間で人気のある人物でした。
西側のプロパガンダは、イランの体制が国民に支持されていないかのように描いていますが、実際には違います。西側がイランを攻撃するたびにその試みが失敗すること自体が、体制の正当性を示しています。

彼が殉教して以来、全国各地で人々が街に出ています。

ここで付け加えておきますが、彼は自宅や執務室を離れることを拒みました。
彼はこう言ったのです。

多くのイラン人には行く場所がない。
だから私も動かない、と。

つまり、情報の失敗で居場所が突き止められたわけではありません。
彼は自宅におり、そのすぐ隣の執務室にいました。

テヘランや他の場所の普通の人々は、第二の住まいなど持っていません。
だから私は動かない、と彼は自らの意思で決めたのです。

Napolitano:

それとは対照的なのが、イスラエルのネタニヤフ首相です。
彼はベルリンへ逃れ、アヤトラが殺害されたことを知ったとき、国際テレビで笑いながら冗談を言っていました。

つまり――
彼らは正気なのでしょうか。
自分たちの言葉や行動、振る舞いがどんな影響を及ぼすか、本当に理解していないのでしょうか。

Marandi:

彼らは邪悪です。完全に邪悪です。

人々と一緒に座っていて、女性や子どもたちといるときに、近くで爆弾が爆発する。
子どもたちが泣き、女性たちが泣く。

これは――
もちろん彼らがガザで二年以上にわたってやってきたことですし、
今まさにレバノンでもやっていることです。

彼らにとって、虐殺や殺害は誇るべきことなのです。

アメリカの戦争長官は、虐殺や殺害について誇らしげに語っています。

しかし事実として、アヤトラの殉教以来、人々は全国各地で街に出ています。
テヘランのさまざまな地区で、毎晩人々が集まっています。

それぞれの集まりは、数万人、あるいは数十万人規模です。

私はその映像のいくつかを投稿しました。

人々は集まり、爆撃を受けてもその場を動きません。
爆撃されながらも、イスラエル政権やトランプに反対するスローガンを叫び、
アヤトラを追悼し、軍を支持しています。

映像を見ると、地対空防衛システムが作動している中でも、
男女がその場を動こうとしないのです。

本当に驚くべき光景です。


Napolitano:

もう一つ驚くべきことは、アメリカとイスラエルが
イランの精神、
イランの文化、
そしてイランというものすべてに対する人々の献身を、まったく理解していないことです。

Muhammad、聞こえますか?


(通信が途切れる)


Napolitano:

どうやら通信が途切れてしまったようです。

ここまで私たちが話してきたことをまとめると、
イラン国民は政府を支持し、文化を支持し、社会を支持するという強い決意を持っているということです。

しかしイスラエルとアメリカは、
爆撃によってイラン国民の意思が弱まり、
イラン人が政府を倒すようになると考えています。

この考え方は、
イラン人の間ではほとんど完全に拒否されているようです。

ムハンマド・マランディMuhammad Marandi 教授をご存じない方のために説明すると、

彼はアメリカのバージニア州リッチモンドで生まれました。
私と同じくアメリカ人です。

その後イギリスで教育を受け、
現在はテヘラン大学の文学教授です。

彼とは共通の知人を通じて親しくなりました。
私たちは実際に会ったこともありますし、
もちろんこうして公開の場でもインタビューをしています。

どうやらまだ応答がありません。
アメリカやイスラエルの攻撃によるものではないことを祈りますが、
いったんインタビューを終えることになるかもしれません。

……あ、戻りました。

Muhammad、戻りましたね。


Marandi:

申し訳ありません、ジャッジ。
今はこういう状況ですから。


Napolitano:

ああ、もちろん理解しています。

正直なところ、私は怖くなりましたし、
視聴者の皆さんもそうだったと思います。

アメリカやイスラエルの攻撃ではなく、
単なるインターネットの問題だったようで安心しました。

私たちは先ほど、
アメリカとイスラエルがイラン文化や、
イラン国民が政府を支持している現実を理解していないという話をしていました。

トランプ大統領が(イラン人に対し)

「家にいろ。私が出て来いと言うまで待て。そして出てきたら政府を倒せ」
などと言うのは、非常に無知な発言だと思います。

むしろ彼らの目的にとっては、
利益より害の方が大きいのではないでしょうか。

Muhammad、聞こえますか?


Marandi:

はい。


Napolitano:

アメリカとイスラエルが
イラン人の決意を理解していないことについて、
あなたの考えを聞かせてください。


Marandi:

ジャッジ、イランは数千年の歴史を持つ文明です。
ご存じのとおりです。

そしてイランの宗教思想、特にシーア派イスラムは、
正義の感覚、
抑圧された人々を支援するという考え、
抑圧者に立ち向かうという精神に強く影響されています。

預言者の孫フサインがカルバラで殉教した出来事は、
イラン文化や社会の中で非常に大きな意味を持っています。

それを理解するには、
実際にイランを訪れるか、
あるいはそれについて学ぶ必要があります。

イランがパレスチナをこれほど強く支持する理由も、
この「被抑圧者を支援する」という考え方にあります。

イラン人はパレスチナ人を
抑圧された人々だと考えているのです。

同じことはキューバやベネズエラにも当てはまります。

宗教が何であれ、
共産主義国家であろうとなかろうと関係ありません。

イランがアメリカやイスラエルの攻撃に対して
強い抵抗を示すのも、
この世界観と深く結びついています。

つまりそれは
文明の問題でもあり、
宗教思想の問題でもあり、
抑圧者に立ち向かい抑圧された人々を支援するという思想なのです。

アヤトラ・ハメネイについてもう一つ付け加えたいのは、彼は非常に質素な生活を送っていた人物だったということです。

彼の子どもたちも全員、とても質素な生活を送っています。

彼が亡くなった今だから言えますが、
私は彼を知っていました。

特別に親しかったわけではありませんが、
何度も会ったことがありますし、
彼の家族の何人かとはかなり頻繁に会っていました。

そして、彼の家族の誰一人として商売をやってません。

彼がビジネスに反対していたというわけではありませんが、
彼は自分の直系の家族の誰にも商売に関わることを許しませんでした。

家族全体が完全に清廉であるようにするためです。

彼は革命以前、志願兵でした。

彼は何度も投獄され、拷問も受けました。

戦争(イラン―イラク戦争)が始まったとき、
彼には軍事経験はありませんでしたが、
前線へ行き、戦いました。

戦争の終わり頃、
彼が大統領だったとき、
アメリカはサダムの側で戦争に介入しました。

アメリカはイランの旅客機を撃墜し、
イラン海軍の施設や艦船への攻撃を開始しました。

そのころ前線の状況は非常に不安定でした。

それでも彼は大統領として前線へ行きました。

私自身、そこで彼を見ました。

彼は非常に重要な標的になり得る人物だったので、
非常に危険でした。

しかし彼は兵士たちの士気を高めるため、
前線から前線へと回っていました。

彼は死を恐れるような人物ではありませんでした。

そして宗教指導者として、
彼はイランのキリスト教徒の殉教者たちにも敬意を示していました。

私はその記録を多く投稿していますが、
彼はクリスマスになると、
イランのキリスト教徒の殉教者の家族を訪ねていました。

アルメニア系キリスト教徒の場合は1月ですが、
その他のキリスト教徒の場合は12月25日です。
アメリカと同じです。

彼は多くの殉教者の家族を訪問していました。

アメリカではイランについての物語は完全に作り上げられたものです。

この国は47年間、悪魔化され続けてきました。

その理由は、
イランがイスラエル政権に反対していること、
そして独立国家であろうとしていることです。

しかし、もしイスラエルが存在しなかったなら、
私は断言しますが、
今日イランとアメリカは大使館を持ち、
普通に貿易やビジネスをしていたでしょう。

敵意と憎悪を強く求めているのは、
イスラエル政権なのです。



Napolitano:

後継のアヤトラはすでに選ばれたのでしょうか。


Marandi:

まだ何も発表されていません。

現在は憲法に従って、三人の体制が国を運営しています。

大統領、司法府の長、そして護憲評議会の代表です。

そして、専門家会議(Assembly of Experts)という選挙で選ばれた機関が新しい指導者を選出すると、その三人の体制は退きます。

まだ発表されていないのは、現在が戦時だからです。

アメリカやイスラエルが専門家会議のメンバーを標的にする可能性があるため、会議は秘密裏に行われています。

そのため多少の遅れが出ていますが、
近いうちに新しい指導者が発表されると思います。


Napolitano:

イランの防空能力や、ミサイルを攻撃に使う意図について、あなたはどのように理解していますか。


Marandi:

イランの防空システムは機能しています。

ドローンに関しては前回よりかなり改善されています。

また、イランの情報機関も、モサドや CIA と協力している組織から国を守るという点で、はるかに成功しています。

12日戦争のときのような破壊工作は今回は起きていません。

ですからドローン防衛はかなりうまくいっています。

ただし、これほど強力な軍事力を相手にしている以上、防空システムが私たちの望むほど完全に機能することは難しいでしょう。

しかしイランのミサイルやドローンは地下基地にあります。

アメリカやイスラエルはそれらを破壊することができません。

しかも多くの基地はまだ使われていません。

まだ閉鎖されたままで、将来の日や週に備えています。

現在発射されている基地の多くはすでに知られている基地ですが、
大半の基地はまだ知られていません。

アメリカとイスラエルが都市を爆撃し、民間インフラを破壊している理由の一つは、
地下のミサイル基地やドローン基地を破壊できないことへの苛立ちだと思います。

イランはミサイルやドローンを発射しています。

そして現在では、より少ない数のミサイルやドローンで攻撃できるようになっています。

なぜなら、占領下のパレスチナやペルシャ湾地域の防空システムが崩れ始めているからです。

迎撃ミサイルが不足しているのです。

現在使われているドローンやミサイルのほとんどは古いものです。

中には20年前のものもあります。

それを発射すると、いくつかは迎撃されますが、
非常に高価な迎撃ミサイルが消費されます。

こうして徐々にそれらは枯渇していきます。

その結果、今ではより少ない数のミサイルを発射しても、
ほとんどが目標に到達するようになっています。

ドローンも同じです。


Napolitano:

この戦争の結果について、一般の人々はどのように感じているのでしょうか。


Marandi:

人々は敵を打ち負かす決意をしています。

アメリカ、そしてトランプは今では敵と見なされています。

人々が殺されているからです。

家族が殺されています。

アパートの建物が破壊されています。

人々は家から30メートルも吹き飛ばされています。

子ども、男性、女性、
路上に横たわり、死んでいく人々。

瓦礫の下で助けを求める子どもたち。

最初の日に学校が爆撃され、165人の少女が殺されたとき、
西側メディアではほとんど報じられませんでした。

西側にはペルシャ語メディアの巨大なネットワークがありますが、
それもイランに敵対的です。

彼らは子どもたちのことなど気にしていませんでした。

それはアメリカ政府やシオニスト政権だけの問題ではありません。

リベラルでも保守でも、メディア全体が同じです。

彼らは都市を爆撃し、人々を殺すことに無関心です。

そして重要なことが起きています。

これは逸話的な例ですが、
私自身の経験があります。

以前の暴動に参加していた学生が三人います。

武器を持っていたわけではありませんが、
そうした人たちと一緒に街に出ていた学生たちです。

おそらく公共物を壊したこともあるでしょう。
私は詳しく聞きませんでしたが。


Napolitano:

今年1月の暴動のことですね。


Marandi:

その通りです。

その三人の学生が、この数日で私に連絡してきました。

「国を守るために何ができるか」
「イランの防衛のために何ができるか」

と尋ねてきたのです。

そのうち何人かは涙を流していました。

アメリカとイスラエルがやったことは、
若い世代に彼らの本質を見せてしまったのです。

この若い世代は、(イランーイラク)戦争も見ていませんでした。

私が生き延びた化学兵器攻撃も経験していません。

ドイツがサダム・フセインに与えた化学兵器、
アメリカがサダムとともに行った犯罪も見ていません。

制裁が何を意味するのかも理解していませんでした。

外国から押し付けられた制裁が
私たちをどのように締め付けてきたかを感じていなかったのです。

しかし今、彼らはそれを目の当たりにしています。

帝国がどれほど残酷に
男性、女性、子どもを殺すのかを。

そして CNN、Fox News、Guardian、Breitbart を見ると、
彼らはほとんど同じだと感じます。

英語が堪能な学生たちは、
それらを邪悪なものだと感じています。

彼らの世界観は変わりつつあります。

トランプがやったことは、

イランの指導者や知識人が100年かかってもできなかったことを、
一瞬でやってしまったのです。

若い世代の意識を変えてしまったのです。


Napolitano:

それは非常に重要な指摘です。

そしてまた、
西側がイランの精神を理解していないことを示しています。

Muhammad、ありがとうございました。

あなたとご家族に神の加護がありますように。

この困難な状況の中で、
時間を取って私たちと話してくれたことに感謝します。

また近いうちに話せることを願っています。


Marandi:

ありがとうございます。
大変光栄です。


Saturday, February 28, 2026

中国と断絶したまま孤立する日本でいいのか Can Japan Afford to Remain Isolated from China? 

2月25日の、「安倍元首相の国葬を許さない会」主催で古賀茂明さんの講演会がありました。最後に私が「中国と断絶したまま孤立する日本でいいのか」というテーマで20分発言させていただきましたのでその発言内容をここにアップします。2月28日、米国・イスラエルがとうとうイランに戦争を仕掛けました。この戦争は「核問題」などと何の関係もない政権転覆のための侵略戦争です。大量破壊兵器の嘘を使って正当化したイラク戦争と同じことをまたやっている。米イスラエルはパレスチナ人に対するのと同様、イラン人を人間とも思わぬかのように学校を爆撃、子どもたちを殺しました。この日の発言でも訴えましたが、このようなテロ国家米国と「同盟国」でいいのかという問いを強調したいと思います。



中国と断絶したまま孤立する日本でいいのか

 

乗松聡子

 

憲法9条は謝罪

 こんにちは、乗松聡子です。安倍元首相の国葬を許さない会からのお招きを感謝しております。私は留学をきっかけに通算30年カナダに住んでいます。

 2000年代初頭、しばらく離れていた日本で、憲法を改変して戦争ができる国になろうという動きが加速していることを知り、2005年、バンクーバー9条の会の創立に加わりました。設立記念講演として、地元のブリティッシュコロンビア大学で教えていたこともある加藤周一さんに話していただきました。加藤さんは、「(太平洋に面している)バンクーバーは西洋と東洋が出会う場所」なので平和のための活動にふさわしい場所だと言っていたことが印象に残っています。

9条の会の活動として、ジャン・ユンカーマン監督の「映画 日本国憲法」をカナダ各地で上映しました。映画に登場した人のうち、チャルマーズ・ジョンソン氏は元CIAの保守派でしたが、当時の大田昌秀知事の招きで沖縄に行き、米軍基地の被害を目の当たりにして以来、一貫した帝国批判を行った人でした。

ジョンソン氏は映画の中で、憲法9条そのものが、日本が侵略したアジア諸国に対する「謝罪」という意味を持つと言っていました。 同時に、「9条の放棄はこの謝罪の放棄を意味する」とも言っていました。

 立命館大学の君島東彦教授も、「6面体としての9条」という理論において、9条2項は、第二次世界大戦における枢軸国でアジア太平洋全域を侵略・支配した日本に対する「懲罰的意味」が含まれていると論じています。

 2月8日の選挙の直後、高市首相が自衛隊を明記する憲法改正に意欲を示したとの報道に対し中国国防部の蔣斌(しょう・ひん)報道官が「日本は軍国主義という誤った道を再び歩もうとしている」と批判したというニュースをみました。

 私は、いかに正論とはいえ他国の憲法に立ち入るのはどうかという印象も持ったのですが、この、謝罪として、懲罰としての9条の意味を思いだし、あらためて、侵略戦争の反省の上に持つことになった憲法9条は日本だけのものではなく、中国などの被害国もステークホルダーなのだと認識しました。

 

高市首相は「台湾発言」を撤回せず開き直る

 もちろんこのような懸念は、高市首相が昨年11月7日、いわゆる「台湾有事」が、安保法制における集団自衛権の行使を可能とする「存立危機事態」になり得るという国会答弁を行って以来撤回もしていないという状況だからこそ発信されたものでしょう。

高市首相は中国の激しい反発と批判、渡航自粛や日本海産物の輸入停止、軍民両用品の輸出規制強化などを受けても断固撤回を拒み、今に至ります。

それどころか1月23日の衆議院解散後、選挙公示の前日である26日に各党党首と出演したテレビ番組で、「台湾有事」の際日米両国が現地に滞在する日本人や米国人の救出作戦を行うと指摘し、「(日本と)共同で行動をとっている米軍が攻撃を受けたとき、日本が何にもせずに逃げ帰ると日米同盟は潰れる」とまで語りました。選挙前の大事な時期にこのような開き直りまでやってのけたのです。

 おそらく、高市首相はこれが選挙にプラスになりこそはすれマイナスにはならないとわかっていたのでしょう。2010年ごろ、当時のオバマ政権が「アジアに基軸を転換する」として、経済力と軍事力を強める中国に照準を当て、米国の属国である日本は棚上げしていた尖閣諸島問題を顕在化させ、いわゆる自衛隊の「南西シフト」、つまり鹿児島から沖縄、台湾に至るまでの列島の軍事要塞化の加速がはじまりました。これと同時に、日本政府やメディアは中国に対するネガティブキャンペーンを大々的に展開してきました。

世論調査によると、日本人の中国に対する意識は2000年代半ばぐらいまでは比較的良好だったのに、2010年代になってからは8割台から9割台が良くない印象を持っているという「好意の欠如の高止まり状態」が続いています。日本人の8割から9割は中国人の知り合いもいないという調査もあることから、日本人の大半は交流したこともない相手の国を嫌っているということになります。メディアの影響でしょう。

「戦争は人の心の中で生まれる」とユネスコ憲章は言っていますが、いま、日本の大衆の心の中では中国に対する戦争の準備がかなり出来上がってしまっているような気がします。高市首相は対中国強硬姿勢を取ることによって自分の人気が落ちるどころかかえって上がることがわかっていたのでしょう。2月8日の選挙の結果がそれを如実に物語りました。

私は高市氏の「台湾発言」以来、中国各地の友人や北米の中国出身の友人たちと会話を重ねてきました。中には中国政府に批判的な友人もいますが、その人でさえ、こと高市首相が台湾への介入を示唆したことについては、「14億の中国人は決して許さない」というのは誇張ではないと言っていました。

 

高市首相の「台湾発言」にお墨付きを与えてしまった選挙

実際のところ、対中強硬姿勢は高市首相が始めたことではないですし、日本が主導権を取ってきたとも言えません。「27年までに台湾有事が起こる」といった言説を広めてきたのも、21年のデービッドソン・インド太平洋司令官をはじめとする米軍、米政府や情報機関の高官たちです。日本は米国の中国敵視政策の中に組み込まれているのです。それは同じく地域の米国の属国である韓国、フィリピン、オーストラリアなども同様です。

米国政府が昨年11月末に発表した国家安全保障戦略、それに沿って国防省が1月に発表した国家防衛戦略においても米国は「集団的防衛の負担の共有」による「中国の抑止」を求めており、高市氏の強硬姿勢もトランプ政権の戦略に沿った行動と言えます。中国にそれが見えていないはずはありません。

ここからは私の見解ですが、中国は、意図的にこれが高市首相個人の問題である、つまり、高市首相さえ「台湾」発言を撤回するか、あるいは退陣することによって区切りをつけようとしているように見えます。その目的は日本の背後にいる米国とは全面的な対立を避けたい、また、日中関係に打開策をオファーするため、という目的があるような気がします。

私は、日本の有権者としては、いわゆる戦略的投票ということはしたことがなかったですが、今回ばかりは、日中関係のために高市政権を倒す可能性のある野党第一党に投票しようと思い、鼻をつまんで中道に投票しました。高市を退陣させるか、それが無理でも議席数を失わせることで責任を取らざるを得ない状況に持ち込む淡い期待がありました。

結果は惨敗でした。日本政治の右傾化が言われて久しいですが、左派の政党が選挙のたびに弱体化しており、今回の選挙でもう風前の灯になったような政党もあります。私は自分の戦略的投票によって、加速する左派政党の衰退の一端を担ってしまいました。

高市自民党の大勝によって、日本市民は高市氏の「台湾」発言に事実上のお墨付きを与えてしまいました。選挙期間中、日中関係を軽視していたように見えたメディアの責任も大きいと思いますが、先述したような日本に定着してしまっているかに見える嫌中感情も大きく貢献したと思います。中国の友人たちは、非常戒厳令を発した尹錫悦大統領を罷免に追い込んだ韓国市民のように、善良な日本市民も高市首相を退陣させるに違いないと、期待していました。いまその友人たちに顔向けもできません。

 

やられた国の立場に立って考える

私はこのような発言で、中国寄りだとか、日本人じゃないとか、言われるときがありますが、戦争を止めるには、戦争を防ぐには、相手の立場を理解することは最低限求められることです。ましてや、日本が侵略戦争や植民地支配で痛めつけ、まだその傷跡が残っている国々と接するときには、特に意識して、やられた側の立場に立つことが大事と思います。

昨年「戦後80年」と言われた節目に、どれだけの日本人が、大日本帝国から侵略された国や人々の立場に立って戦争を振り返ったでしょうか。大日本帝国の対中国侵略戦争は、1874年の台湾侵攻までさかのぼる必要があります。これは明治政府が琉球王国を清国との繋がりを断たせ、強制併合していく中で起きたことでした。1894―5年の日清戦争で、日本は台湾を中国から奪いました。中国の人々にとって「台湾」は日本の侵略戦争、軍国主義の象徴なのです。

中国侵略戦争が、日本人がいういわゆる「15年戦争」よりずっと前に始まっていたことは私は自分の家族の系譜からもわかっています。私の祖父は、1896年に中国にわたり、1927年日本に戻るまでの30年間、漢口の日本人入植地に住み、新聞というメディアを使って中国の世論を操作するプロパガンダ作戦に参加していました。日本のスパイだったのです。

わたしは過去2年間に5回中国に行きました。上海、南京、新疆ウイグル自治区の各地、香港、瀋陽、撫順、北票、阜新成都、重慶、常徳、廠窖(しょうこう)、長沙、武漢などです。各地で経済やインフラの目覚ましい発展、そして多文化共生社会に圧倒された旅でしたが、同時に、日本の侵略戦争の爪痕を目の当たりにしました。南京大虐殺はよく知られていますが、旅をすると、地名さえ知らなかった多くの場所で強制連行があり、南京大虐殺と同様の虐殺、性暴力、略奪行為を行っていたことがわかります。行けば行くほど、自分の知っていたことは氷山の一角だったということに気づかされ恥ずかしくなります。

みなさんは、自分の母が、娘が、強姦された上で残忍な方法で殺されたら、許すのに何年かかるでしょうか。私だったら、永久に許すことはできません。許されるはずもない罪を数限りなく犯した日本を、中国は、敢えて日本の軍国主義と人民を分けて考え、賠償を求めることもなく許したのです。しかしそれは、二度と台湾に介入しないという約束をすることによってこそ可能になったのです。

だからこそ日本の政治家が台湾への介入を語るということは即、日本の軍国主義と侵略戦争の再来ということになるのです。それも現役の首相が国会の場で行った。この重大さを日本人はわからず、日本のメディアもこれを軽視して、中国以外と付き合えばいいんだ、みたいな論調ばかりです。それで高市自民党の選挙による大勝ちを招きました。

あらためて、日本は、1972年の日中共同声明の「台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部である」という中国の立場を理解し尊重するという約束と、その後、1978年の日中友好平和条約、1998年の日中共同宣言、2008年の日中共同声明という日中関係4文書で繰り返し約束した「一つの中国」の尊重を、中国に再確認すべきです。高市氏がこれを行う可能性はいまや大変薄いですが、誰かがやらないと日本は中国の信頼を永遠に失います。高市氏は、「対話の扉は開かれている」などと聞こえのいいことを言って、中国側が対話を拒んでいるかのような演出をしていますが、相手の足を踏みつけながらその足をどかさずに「対話しよう」などという言葉を誰が信じられるでしょうか。

 

戦争と制裁で帝国を維持する米国に隷属したままでいいのか

高市首相が1月26日、「台湾で米軍が攻撃されて日本が何もしなければ日米同盟がつぶれる」と言ったのは語るに落ちるというか、本音が出たのだと思います。高市氏にとっては市民の命よりも、また、日中関係よりも、日米軍事同盟とそれで潤う軍需産業が大事なのです。

西側諸国の中国脅威視も日本と大差ありませんが、それでも世界最大級の経済大国と関係を遮断してその国のためになるはずはありません。昨年末から今年にかけて、フランス、英国、ドイツ、カナダ、韓国、など西側諸国の首脳も北京を訪問しています。米国さえいてくれればいいと思っている高市首相だけが完全に中国と遮断しているのです。

いま一度言いたいです。日本は米国に隷属したままでいいのかと。米国が敵視する中国、ロシア、朝鮮など隣国を右へ倣え、で敵視して、孤立したままでいいのかと。トランプのベネズエラ、イラン、キューバなどに対する内政干渉と威嚇を見て、米国の帝国主義が復活したなどという人もいますが、米国は建国以来「帝国」でなかったことなどありません。米国議会調査局によると米国は建国後、約500回にわたり他国への武力介入をしており、そのうちの半数はなんと冷戦終了後にやっています。

第二次大戦後、米国は37の国々で2千万人を殺したというレポートもあります。ガザと西岸地区のパレスチナ人殺戮も続いています。いわずもがな、海外に800とも1000ともいう軍事基地を展開しています。こんな国はどこにもありません。きょう(2月25日)ここに来る間、トランプ大統領の一般教書演説を聞きました。イランに核兵器を持たせないために戦争をやろうとしています。イランは核兵器を持つ計画はありません。これは「大量破壊兵器」の嘘でイラクを侵略したイラク戦争と同じです。20年以上たってまた同じことをやっている。議会もそれを止めようとしません。

日本は、1945年の敗戦後、事実上の植民地である沖縄を米国に差し出し、アジア最大の米軍ホスト国となりました。横須賀や佐世保、岩国の海軍施設、横田飛行場、嘉手納飛行場などは、旧日本軍の基地が米軍に受け継がれた基地です。日本は、敗戦後「平和」どころか、米帝国の一部となって、度重なる侵略戦争に加担してきました。もはや「戦後」という言葉などなんの意味もないかのようにも思えてきます。

そしてもう一つの、見えにくい戦争があります。制裁です。米国と西側諸国は40か国、世界の3分の1の人口に対し経済制裁を行っています。医学誌「ランセット」の2025年の報告書では、1971年から2021年までの50年間米国やEU諸国による制裁で年間約56万人が死んでおり、それは戦争による死者数と同等であるという報告が出ました。そのうち半数は子どもです。制裁は、脆弱な人口ー女性、子ども、高齢者、障がい者、病人を直撃します。日本も米国に同調して制裁を行う側にあります。私たちはいまこうやって話している間にも世界中で人殺しをしているのです。

 

日本よ アジアに戻ろう

昨年6月、トランプ関税で世界が動揺していたときに上海にいました。上海の研究者の友人は私にこう言いました。「これで日本もアジアに戻ってくるのではないか」と。いわゆる同盟国にさえ容赦ない関税を加えてカナダの併合まで言い出すトランプ政権を見限って、明治以来「脱亜入欧」状態だった日本がアジアに戻り、「アジアのことはアジアで決める」、自己決定権を取り戻すのではないかという意味でした。しかし日本は直近の選挙結果からも、米国一辺倒の道を選び続けているように見えます。

私の住むカナダはいま米国と距離を置き貿易相手国を多様化する方向性で進んでいます。カナダ人も8割かそれ以上が米国との関係に懸念を抱いているという数字も出ています。カーニー首相は先のダボス会議で西側諸国が標ぼうしてきた「ルールにもとづく国際秩序」がもう機能しなくなったと発言し世界中の注目を浴びました。米国はいまキューバに石油供給を遮断して人道危機が起こっていますが、カナダが支援を名乗り出ています。カナダのこのような傾向はトランプ政権が終わったらまた変わるのではないかとも予想しますが、注視すべき動きです。

米国ときたら旧態依然としたままです。先のミュンヘン安全保障会議で、米国のマルコ・ルビオ国務長官は西側帝国主義の維持を訴えました。5世紀の間、西側諸国は拡張を続け、巨大な帝国を築き上げたが、「神なき共産革命」と「反植民地的蜂起行動」によって今はコロンブス時代以来初めて縮小していると。だからこそ米国と欧州諸国は手を取り合って、この高貴な文明を継承していこうと言っていたのです。耳をうたがいました。

世界ではBRICS諸国に代表されるグローバルサウス、いまやグローバルマジョリティである勢力が、自分たちを5世紀にわたり苦しめてきた西側帝国主義をもう許さないと結束しています。これは虐げられてきた国々が主権と自己決定権を求める当然の脱植民地の動きです。この時代において、ルビオはよくここまで言えたものだと思いました。それも会場でスタンディングオベーションを受けました。米国と欧州の、一握りの白人金持ち国による世界支配への執着は並々ならぬものです。

1924年、孫文が神戸で行った「大アジア主義演説」を思い起こします。孫文は、「日本はすでに西洋の物質文明の力を得たが同時に東洋固有の道徳文明も持っている。今後、日本は西洋の覇道の「鷹犬(手先)」となるのか、それとも東洋王道の「干城(守り手)」となるのか。それは日本国民が慎重に考えるべき問題である」と言いました。

この後、大日本帝国は独自の「覇道」を加速させ、アジア太平洋全域を侵略、支配した末1945年に崩壊しました。その後まさしく西洋の覇道の手先となって今にいたります。このままでいいのでしょうか。いいわけはありません。日本は日本が本来存在するアジアに戻るべきです。そのためには米国の傀儡政権を倒さないといけません。現在のところ希望は薄いですが、中国をはじめ、非西側世界、グローバルマジョリティの世界と市民レベルで繋がっていくことは一つの希望への道ではないかと思っています。

 (以上)


Friday, February 13, 2026

日本東方出版社刊『私の戦後責任 花岡「和解」を問い直す』刊行記念トークイベント  3月15日(日)15時~ 那覇で開催!

追記:3月1日の琉球新報に書評が出ました。

<書評>『私の戦後責任 花岡「和解」を問い直す』 タブーに踏み込む誠実さ


12月27日の投稿で紹介した本『私の戦後責任 花岡「和解」を問い直す』(石田隆至・張宏波 編)のブックイベントが沖縄で開催されます!ふるってお越しください。

【イベント情報】日本東方出版社刊『私の戦後責任 花岡「和解」を問い直す』刊行記念トークイベント 日時:3月15日(日)15時~ 場所:ジュンク堂那覇店B1Fイベント会場 出演:石田隆至(上海交通大学副研究員)張宏波(明治学院大学教授)石原昌家(沖縄国際大学名誉教授)乗松聡子(ジャーナリスト)



ジュンク堂那覇支店のX:


Thursday, January 29, 2026

西側連合のイラン攻撃を許すな!通貨暴落も米国が仕掛けたものだと、ベッセント財務長官が認めた(グレン・ディーセン&ジェフリー・サックス)Scott Bessent Admitted that the U.S. Manipulated Iran's Currency (Glenn Diesen & Jeffrey Sachs, January 28 Japanese Translation)

グレン・ディーセンのYouTubeチャネルより

1月28日(木)、差し迫るように思える西側(イスラエル・米・欧州)の対イラン攻撃いついて、グレン・ディーセン教授がジェフリー・サックス教授と対談した。日本語訳をお届けする。この戦争は昨年の「12日戦争」の延長、ひいては、1979イランイスラム革命以来のイスラエルと西側の「悲願」であったイラン政権転覆の試みである。あいかわらず西側は、イランの「独裁」、「腐敗」、「人権侵害」を口実に、政権転覆されても仕方がないといったナラティブを流しイラン破壊を正当化しようといている。スコット・ベッセント財務長官が、ダボス会議にて、イラン「抗議デモ」のきっかけなとなった「通貨暴落」でさえ、米国の仕業だったということを認めている。それを祝うようにせせら笑うベッセント。邪悪な帝国のレイシズムを隠そうともしない。それを西側メディアは報じもせず、イランを倒せと大宣伝している。サックスは、今からでも戦争を止められる、止めるために全力を尽くさないといけないと言っている。

翻訳は冗長な部分は取り除き要点がよくわかるよう整えている。ハイパーリンク、太字は乗松聡子がつけた。文脈がわかるようにトランプやベッセントの発言の内容を挿入した。

グレン・ディーセン:

本日は、トランプが現在イランに対して行っている脅しについて議論するため、ジェフリー・サックス教授をお迎えしています。

いまテヘラン側から見たら、この地域における米国の大規模な軍事力の集積が見えてきます。英国、ドイツ、スペイン、イタリアの輸送機が中東に向かっているようにも見えます。そして意図という点では、攻撃は避けられないように思われます。イスラエルがそれを望み、ワシントンもそれを望んでいる。政権転覆について語っています。そしてソーシャルメディア上で、トランプは次のように書いています。引用します。「巨大な艦隊がイランに向かっている。大きな力と熱意、そして目的意識をもって急速に移動している。」さらに、時間が残されていないとも書いています。


(トランプのSNS投稿の日本語訳:

大規模な艦隊(アルマダ)がイランへ向かっている。非常に速く、強大な力と熱意、そして明確な目的をもって進んでいる。偉大な空母「エイブラハム・リンカーン」を旗艦とするこの艦隊は、ベネズエラに送られたものよりも大規模だ。ベネズエラの場合と同様に、必要とあらば、迅速かつ暴力的にその任務を遂行する用意があり、意思も能力も備えている。
イランが速やかに「交渉の席に着き」、公正で公平な合意――核兵器は一切認めない――すべての当事者にとって良い合意を交渉することを望む。時間は刻一刻と失われており、まさに一刻を争う状況だ。
私は以前にも一度イランにこう告げた――「取引をせよ!」。彼らはそうしなかった。その結果が「ミッドナイト・ハンマー作戦」であり、イランに対する大規模な破壊だった。次の攻撃ははるかに深刻なものになる! 二度とそのような事態を起こさせるな。
この件にご注意いただき、感謝する。

ドナルド・J・トランプ大統領)

これらの脅しをどう見ますか。

ジェフリー・サックス:
明らかだと思います。イスラエルにとって、これは30年にわたるイラン政府転覆の試みです。米国は基本的にイスラエルの言うことを実行します。したがって、イスラエルは絶えず米国をイランとの戦争に引きずり込もうとしてきました。昨年夏にもそれを行いました(注:米国がイランを攻撃した昨年6月のいわゆる「12日戦争」)。目標は政権転覆、つまり打倒でした。しかしそれはうまくいきませんでした。

その後、米国は経済的手段を用いてきました。米国の財務長官スコット・ベッセントが「経済的ステートクラフト」と呼んだものです。

しかし彼は、イラン経済を破壊するために米国が意図的に講じた措置を明確に説明しました。再び、その狙いは政権転覆でした。それもうまくいきませんでした。そこで今、空母打撃群がイラン攻撃に向かっています。つまり、攻撃は差し迫っています。

ここでの目的は、最初から交渉ではありませんでした。交渉の機会があるたびに、イスラエルは「交渉するな」と大騒ぎしてきました。もちろん、10年前にイランと核合意が成立しました。包括的共同作業計画、いわゆるJCPOAです。これは2015年7月20日、国連安全保障理事会決議2231によって実際に承認されました。しかしトランプは第1期政権でこれを破棄しました。

つまり、イスラエルには交渉による解決を望む意思は一切なかったのです。そして米国がイスラエルの指示に従う以上、米国がイランと真剣な交渉を行う用意があったことは一度もありません。トランプはそれを昨年夏にも再び示しました。米国の支援を受けてイスラエルがイランを爆撃したのは、2025年6月12日と13日でしたが、それは米国とイランの交渉が予定されていた2日前でした。

したがって、これはイランの交渉の問題だという考え方は虚偽です。これはハイブリッド戦争によって遂行されている政権転覆作戦です。つまり、サイバー戦を試み、街頭の不安を煽り、経済を圧殺し、爆撃し、暗殺を行う。あらゆる手段を用いて、この政権を転覆させようとしているのです。

そしてトランプはトランプらしく、こうしたことを公然と発信します。「我々の言うことを聞かなければ、これはベネズエラと同じだ」。彼はこう言っています。「この艦隊は、必要であれば迅速かつ暴力をもって任務を遂行する用意があり、能力もある。」これは完全なる恫喝行為です。

人々は理解すべきです。国連憲章の下で――トランプの副首席補佐官はこれを「形式的なもの」と呼びましたが――それは国際法です。ホワイトハウスのギャングにとってではなく、人類のためのものです。憲章第2条第4項はこう定めています。「すべての加盟国は、他国の領土保全または政治的独立に対する武力による威嚇または武力行使、あるいは国連の目的と両立しないいかなる方法による行為も慎まなければならない」と。

これが、今まさに起きている状況です。

グレン、我々はこれをベネズエラで既に経験しました。露骨で、甚だしい脅しがあり、その後に侵攻が行われ、大統領とファーストレディが拉致され、さらに米国がベネズエラを支配していると主張しました。タンカーから石油を奪い、それを米国に送ることまで行い、ドナルド・トランプはその金は自分のものだと宣言しました。

このような厚かましさと無法状態が、今の世界の一部なのです。しかしイランは、世界にとってはるかに危険な事態です。それでも私は、ヨーロッパの国がこれに対して一言でも異を唱えるのを待ち続けています。「それは良くない考えではないか」「戦争をすべきではないのではないか」「国連憲章を守るべきではないか」と。

ヨーロッパへの問いはこうです。米国がヨーロッパを攻撃しそうになった時だけ声を上げるのか(注:トランプの主張するグリーンランド領有に意義をとなえた欧州指導者たちを皮肉っている)。それとも、ヨーロッパには何らかの原則があるのか。数日のうちに、それが明らかになるでしょう。

グレン・ディーセン

最初のイラン攻撃の際、「イスラエルは我々の汚れ仕事をしている」と述べたメルツ首相は、今や「イラン政権の命運は尽きている。数週間かもしれないが、この政権には統治の正統性がまったくない」と発言しています。つまり、ヨーロッパ諸国は完全にこれに乗っかっているのです。

しかしトランプはまた、今こそイランが取引をする時だ、さもなければ強く叩く、とも言いました。彼はどの取引を指しているのでしょうか。核合意のことでしょうか。しかし、これは非常に不誠実に見えます。なぜなら、彼らはすでに目標が政権転覆であることを公然と述べているからです。政権転覆では、統一された反対勢力を作ることなどできません。つまり、我々が目にしているのはイランの破壊です。

ジェフリー・サックス:
米国は交渉による取引に関心はまったくありません。なぜなら、交渉による合意は10年以上前から可能だったにもかかわらず、成立するたびに米国がそれを破棄してきたからです。そして、合意破棄を最も強く主張してきたのはイスラエルでした。トランプはイスラエルのために働いている以上、交渉の意図などまったくありません。彼らは政府を転覆させようとしているのです。

メルツは恥を知るべきです。しかし、これもまた典型的です。その発言はこれまで見ていませんでしたが、ヨーロッパのごろつきぶりは驚くことではありません。ただ、いつも失望させられます。原則に立ち返ろうとするのは、ヨーロッパ自身の狭い利害が危機にさらされた時だけのようです。そうなると突然、「米国がグリーンランドを口実にデンマークを攻撃するのはおかしい。それは乱用だ」と言い出す。しかし、イラン政府を転覆させることは問題ない。

いま、ニューヨーク・タイムズやワシントン・ポスト、そしてヨーロッパのメディアで自由に流れているプロパガンダについて、少し時間を割く価値があります。経済崩壊はイラン政権の腐敗と失政の結果であり、統治に適していない、というものです。まさにメルツ首相があなたに読んでくれた発言のとおりです。

人々は、これがゲームの一部であることを理解すべきです。そしてそのゲームは、きわめて下品です。しかし、少し注意を向ければ完全に理解可能なものでもあります。

米国の財務長官スコット・ベッセントは、ダボスでこれを非常に明確に、ほとんど漫画のような形で説明しました

スコット・ベッセント氏のダボス会議での発言。ディーセンとサックスが話題にしているのは冒頭の1分強の部分

グレン、許されるなら、彼の言葉をそのまま読ませてください。過去1年間に何が起きてきたのか、人々に理解してもらうためです。

彼はインタビュアーからこう尋ねられます。「制裁について何か言いたいことはありますか。あなたが取り組んできた別の問題ですが、イランに関して何を計画しており、どのような影響を与えるつもりですか?」

これに対し、ベッセントはこう答えます。

「そうですね、財務省の制裁があります。昨年3月に私がニューヨーク経済クラブで行った演説を見ればわかりますが、そのとき私は、イランの通貨は崩壊寸前だと述べました。もし自分がイラン市民なら、資金を国外に移すだろうと。トランプ大統領は財務省とOFAC部門、すなわち外国資産管理局に対し、イランに最大限の圧力をかけるよう命じました。そしてそれは成功しました。12月には経済が崩壊しました。主要銀行が破綻し、中央銀行は紙幣を刷り始めました。ドル不足が起き、輸入ができなくなりました。これが人々が街頭に出た理由です。これが経済的ステートクラフトです。銃弾を一発も撃たずに、物事は非常に前向きに進んでいます。」

これは驚くべき発言です。あまりに驚くべきなので、ニューヨーク・タイムズは報じる勇気がなかった。ワシントン・ポストも報じる勇気がなかった。なぜなら、ベッセントが説明しているのは、米国が金融手段を用いて政府を倒し、人々を街頭に引き出し、大規模な不安を引き起こしたという事実だからです。そして「物事は非常に前向きに進んでいる」とベッセント氏は言うのです。

その下劣さはあまりにも衝撃的で、主流メディアは触れようともしません。しかし彼らは毎日のように、失政、腐敗、経済崩壊、人々の苦しみについての記事を流します。その苦しみが、米国の財務長官自身が説明した「米国のゲーム」であることには触れません。

私は最近、人々と話しましたが、米国の行動のために石油代金が支払われないのです。支払いは届かず、誰もが制裁と脅威の下にあります。世界中の銀行が取引処理を拒否しています。これが米国によるドルの武器化です。目的は混乱を生み、銀行破綻を起こし、通貨を崩壊させ、人々を街頭に引き出すことです。ベッセントが言うとおり、「これが人々が街頭に出た理由」なのです。彼は因果関係を明示し、それを喜んでいます。「非常に前向きに進んでいる」。

もしこれが、人々が安全だと考える世界の姿なら、残念ながら、それが完全な破滅と惨事への道であることを思い知るでしょう。これはあらゆる原則に反する、純粋なギャング行為です。

なぜメルツが、あるいはヨーロッパがこのギャング行為の一員なのか、私にはまったく理解できません。彼らはJCPOAの交渉当事者でもあり、米国がそれを破壊するのを見ていました。真実を知っているのに、真実を語らないのです。

グレン・ディーセン:
まさに圧倒的なプロパガンダです。あらゆる証拠が目の前にあり、ベッセント自身が「こうしてイランを不安定化させ、経済問題を引き起こし、人々を街頭に追い出した」と語っている。マイク・ポンペオは「暴徒の中にはモサドの工作員がいる」と言っています。イスラエルのニュースを見れば、暴動を煽るために武器を送り込んでいることを説明しています。

私はイランで何が起きているかについて討論に参加しましたが、これが完全に西側の介入なしに起きた純粋に自発的な運動だと言わなかっただけで、「イラン人の苦しみに無関心だ」「政権擁護者だ」と非難されました。つまり、本当にイラン人のことを思うなら、イランを爆撃すべきだという理屈です。これがどれほど倒錯しているか。これはすべての戦争で同じです。シリア人のことを思うならアサドを打倒せよ、ウクライナ人のことを思うなら戦争を永遠に続けよ、というわけです。あまりにも卑劣です。

ジェフリー・サックス:
そのとおりです。しかし興味深いのは、もし本当にイラン人のことを思うなら、ベッセント自身の言葉に耳を傾けるべきだという点です。彼は、イラン人を苦しめることが目的だと言っています。それほどまでに苦しめ、人々を街頭に溢れ出させる。そして暴力が起きると――多くは偽旗で、扇動者やモサドによって煽られたものですが――ベッセントは「非常に前向きに進んでいる」と言うのです。

ちなみに、彼は最後の一文を言い終えたとき、小さくニヤリと笑っていました。その笑みを抑えることができなかったのです。下劣さを一層際立たせる仕草でした。

人々はベッセントが誰なのかを理解すべきです。彼は米国の財務長官です。普通なら、マクロ経済や財政政策、税制に詳しい人物だと思うでしょう。しかし違います。彼はヘッジファンド運営者で、ジョージ・ソロスと共に英国ポンドを破壊したことで名を上げた1992年のことです。通貨を破壊できる、というのが彼の特技なのです。

これほどまでに下劣で露骨であるがゆえに、やはり報道する価値がないとされているのでしょう。

グレン・ディーセン:
財務長官が経済的ヒットマンなら、心配すべきです。とりわけトランプがハンドルを握っている状況では。では、この戦争が拡大する可能性について伺いたいと思います。米国側の狙いも、イラン側の発信も、これは以前の戦争とはまったく異なり、事実上「ゼロか100か」になるという印象を与えています。この戦争は地域内に封じ込められる可能性はどの程度あると思いますか。

なぜなら、イランはすでに「この戦争に参加する者は誰であれ、報復の対象になる」と言っているからです。そして一方で、サウジアラビアは「自国の空域は使用させない」と述べています。つまり、彼らはこの事態を深刻に受け止めている。

ジェフリー・サックス:
私は軍事の専門家ではありませんが、把握している限りで、いくつかのことが分かっています。第一に、イランはイスラエルの防空網を突破できるということです。イランはそれが可能な極超音速ミサイルを持っていることを示しました。最初は極めて重要な標的を狙いませんでした。しかし、生存を賭けた戦争になれば、重要な標的を狙うでしょう。

第二に、(昨年6月の)イラン核施設への攻撃は、戦争を終わらせるどころか、イランの核保有への道(それをイランが望むとすれば)を妨害することすらできなかったということです。現在保有している濃縮ウランを原爆用レベルまで引き上げるのに必要な追加濃縮量は、さほど多くありません。したがって、これが存亡を賭けた闘いになれば、イランは疑いなく核兵器開発に突き進むことができるでしょう。

イランは核兵器を望んでいないと、検証できる形で述べてきました。IAEAの監視を受け入れ、濃縮に厳しい制限を設けると。しかし、それを10年前にトランプが破棄したのです。

状況がイランにとって深刻になれば、他国がイランを支援する可能性があります。イランは大国です。イスラエルは暗殺、モサドによる攻撃、爆撃、斬首攻撃を試みましたが、うまくいきませんでしたし、今後もうまくいくとは思えません。

これは大規模な戦争への前奏曲になりかねません。これは米国の裏庭にあるベネズエラとは違います。世界で最も爆発性の高い地域での戦争となり、周囲には核武装国が存在し、利害関係も重大です。完全に無謀で、世界的破滅を招きかねません。だからこそ、今すぐ阻止されるべきなのです。

そして繰り返しになりますが、この件についてのドイツの見解を聞いて、私はあらためて失望しています。

もしこの世界に、もはや「このような爆発性の高い地域で、国連体制のあらゆる原則に完全に反する戦争を仕掛けてはならない」と言える国が存在しないのであれば、全面的な破局に至る可能性はきわめて高いと言わざるをえません。

国連安全保障理事会は直ちに招集され、継続的に会合を開き、世界で唯一の責任を果たすべきです。すなわち、米国、そして米国大統領に対し、こう明確に言うことです。「このような脅しをしてはならない。ましてや攻撃など許されない」。脅しそのものが、国連憲章に対する重大な違反です。

グレン・ディーセン:
もはや阻止できないのではないかという不安があります。これだけの戦力が集結しており、トランプによれば回避策は「取引」だけですが、それは事実上存在しません。

ジェフリー・サックス:
トランプは、強固な反対の壁に直面すると引き下がることがあります。実際、彼はしばしばそうします。今のところ、その壁に直面していません。しかし、引き金が引かれる瞬間まで、そしてその後であっても、反対の壁を築こうとする努力をやめるべきではありません。

ヨーロッパには、人類に対する最低限の責任感を持つ人物がどこかにいるはずです。世界には、この戦争を望まない国が多くあります。私は、サウジアラビアは戦争を望んでいないと確信しています。カタールも望んでいません。アラブ首長国連邦も、トルコも望んでいません。彼らは、本当にイスラエルが作り出した新たな地域戦争に巻き込まれ、全面的な大惨事へと発展することを望んでいるでしょうか。私はそうは思いません。それを望んでいるのは、イスラエルと、その属国である米国だけです。

(翻訳以上)

こちらとあわせて読んでください。

暴かれる実態:イラン抗議を煽るCIA支援NGOの数々(アラン・マクラウド) 

米国のイラン敵視の歴史:ジェフリー・サックス


Monday, January 26, 2026

『朝鮮新報』より転載:邪悪な帝国、多極化にしかける戦争/乗松聡子 From Chosun Shinbo: The Evil Empire and its War Against Multipolarity

  朝鮮新報』連載「私のノート 太平洋から東海へ」7回目(26年1月23日)の乗松聡子の記事を転載します。(ハイパーリンクは自分でつけたもので、朝鮮新報版にはありません。)


〈私のノート 太平洋から東海へ7〉邪悪な帝国、多極化にしかける戦争/乗松聡子


2026年01月24日 09:30

バンクーバーにおけるベネズエラとキューバへの連帯デモ。100人ほどで米国総領事館前まで行進し、「ベネズエラもキューバも米国のものではない!」「クーデターNO!戦争NO!」と叫んだ(1月17日)

 1月3日、米軍の特殊部隊がカラカスを攻撃し、ベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領と配偶者のシリア・フローレス氏を拉致し、米国に移送しました。米国は昨年後半からカリブ海や東太平洋を航行する船舶を、証拠もなしにベネズエラの麻薬運搬船だとして繰り返し攻撃し、乗組員を100人以上殺害してきた上での行為でした。

 1月5日にニューヨークの連邦地裁に出廷した二人は囚人服を来て、足かせをかけられていたといいます。フローレス氏は拘束時にけがをさせられ、顔が絆創膏だらけでした。フローレス氏はマドゥロ氏の同志でもあります。新自由主義を排し、ベネズエラの資源主権を取り戻したウゴ・チャベス前大統領の政策を引き継ぐベテラン政治家でした。

全世界が見ている前で、国際法を踏みにじり、主権国家の指導者に対しこのような屈辱を加えることを可能にしてしまう米国について、「邪悪な帝国」という言葉以外は見つかりません。それでも言い足りないぐらいです。煮えくり返る思いを抱きました。

米国は約10年間ベネズエラに一方的な制裁を加えてきました。制裁は子どもや女性や老人、病人など弱者の命から奪っていく、国際法に違反する非人道行為です。医療や食料が不足し、制裁で約10万人が死んだという元国連特別報告者の報告もあります。違法な制裁や、カリブ海での殺害を理由に、ベネズエラが逆に、トランプ大統領夫妻を拘束できるでしょうか。あり得ないでしょう。このようなことがまかり通るのは、米国なら許されるという、例外主義によるものです。白人国家が非白人国家に行う限りは可とされてしまう、レイシズムに裏付けされた植民地主義でもあると思います。

マドゥロ氏の起訴理由である麻薬関連疑惑は、言い掛かりに過ぎません。麻薬組織「太陽のカルテル」を率いたとされましたが、米国司法省は今「そのような組織はない」と認めています。イラク戦争のときの「大量破壊兵器」疑惑と同じ、侵略を正当化する嘘です。

マドゥロ氏は、西側から正当性を持たない独裁者として描かれてきました。何百万人もが国外に出たといいますが、これは制裁による経済悪化がもたらしたものであると、米国の経済学者が報告しています。西側はベネズエラの選挙を疑問視しますが、前回の24年の選挙では国際的な選挙監視団参加し、正当な選挙だったと結論づけています。現在首都カラカスでは大統領夫妻奪還を訴えるデモが連日起こっています。

私は、斬首作戦ともいえるこの事件を追いながら、やはり「邪悪な帝国」であったかつての日本による、朝鮮の指導者に対する蛮行を思いだしました。189495年の日清戦争における日本軍の第一撃は、朝鮮の王宮占領でした。日本は自らの朝鮮への支配欲から、清国と冊封関係にあった朝鮮から清国の影響を取り除こうとしましたが、朝鮮は言いなりにはなりませんでした。94723日の早朝、景福宮を襲撃、国王の高宗を支配下に置きました。

 日清戦争の勝利後、勢いづく日帝の侵略に抵抗するためロシアに近づいた明成皇后(閔妃)を日本は危険視しました。95108日、日本公使の指揮の下、軍やゴロツキのような浪士達と景福宮に押し入り、皇后を寝室で虐殺しました。これらの凶行の行きつく先は、歴史が知る通り、日本による朝鮮の強制併合・植民地支配でした。

 このように政権転覆は帝国が繰り返し用いてきた手段です。今回、トランプ大統領によって米国の帝国主義が復活したという言説がありますが、米国は建国以来、帝国でなかったことなどありません。米国議会調査局の報告によると、米国は1798年以来、約500回他国への武力介入を行っています。特に、自分たちの「裏庭」と見なしてきたラテンアメリカで、米国が介入しなかった国はありません。

カナダのネット媒体「グローバル・リサーチ」には、第二次大戦後、米国により37の被害国2千万人が殺されていると推計したレポートもあります。これには朝鮮戦争のおよそ400万人、ベトナム戦争の約780万人(カンボジア、ラオスも合わせた推計)、イラクに対する1991年の戦争と制裁、2003年以降の戦争で数十万から100万規模といわれる死者が含まれます。もはや、「戦後」という言葉に意味はあるのでしょうか。

 日本は、1945年の敗戦後、事実上の植民地である沖縄を米国に差し出し、アジア最大の米軍ホスト国となりました。旧日本軍の基地がそのまま米軍に受け継がれた横須賀や佐世保の海軍施設、横田飛行場、嘉手納飛行場などは、日帝が敗戦後、米帝に組み込まれたことを象徴しています。日本は、敗戦後「平和」どころか、米帝国の一部となって、度重なる侵略戦争に加担してきました。

その日本では昨年117日、高市首相が国会答弁で、「台湾有事」の場合に集団的自衛権を行使する「存立危機事態」が成立し得る、つまり自衛隊が参戦する可能性を示唆しました。批判を受けても撤回を拒み、中国敵視を露わにしています。これは、トランプ大統領が昨年11月末に出した「国家安全保障戦略」で、「敵対勢力を抑止し、第一列島線を防衛する」、つまり対中国を想定して日本に防衛費を増額する「負担分担」を求めた方針と合致しています。

 トランプ大統領のベネズエラ攻撃の主な理由は、ベネズエラの石油資源の支配にありましたが、もう一つの大きな理由は、協力関係が深まっていた中国、ロシア、イラン、キューバなどとの繋がりを断たせることでした。米国は、制裁を加えているグローバルサウスの国同士が助け合うことさえ許さないのです。軍事アナリストのブライアン・バーレティック氏は、米国は自国の覇権維持のため、多極化そのものへの戦争を仕掛けていると言っています。

 ベネズエラと同様、多極化の一端を担い、米国の制裁や威嚇に抵抗してきた朝鮮は、今回のマドゥロ・フローレス拉致事件について、「最も重大な形態の主権侵害」であり、「国際社会が数多く目撃してきた米国のならず者としての野獣的な本性を、今一度はっきり確認させるもう一つの実例である」と糾弾しまし。地球の反対側に位置する国からの連帯の言葉でした。私は、帝国側である日本の一員ではありますが、だからこそ、帝国を批判していく発信を今年も続けていきたいと思っています。


プロフィール

ジャーナリスト。東京・武蔵野市出身。高2,高3をカナダ・ビクトリア市の国際学校で学び、日本の侵略戦争の歴史を初めて知る。97年カナダに移住、05年「バンクーバー9条の会」の創立に加わり、06年「ピース・フィロソフィー・センター(peacephilosophy.com)」設立。英語誌「アジア太平洋ジャーナル」エディター。2人の子と、3匹の猫の母。著書に『沖縄は孤立していない』(金曜日、18年)など。19年朝鮮民主主義人民共和国を初訪問。世界の脱植民地化の動きと共にありたいと思っている。

(本連載は、反帝国主義、脱植民地主義の視座から日本や朝鮮半島をめぐる諸問題や国際情勢に切り込むエッセーです)

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