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対談の動画(ISF独立言論フォーラムのYouTubeチャネルより)
【対談】
乗松聡子(ピース・フィロソフィー・センター代表)×
木村朗(ISF独立言論フォーラム編集長)
日本も「情報戦」の戦場だ
米国イスラエル「イラン攻撃」の真実とフェイク
2026年2月末、アメリカとイスラエルのイラン首都への空爆を皮切りとした事態は、今に始まったものではない。その起源と真相について、ジャーナリストの乗松聡子氏と、オピニオンサイト「ISF独立言論フォーラム」(https://isfweb.org/)編集長で鹿児島大学名誉教授の木村朗氏が行なった対談をお届けする。動画はISF内で視聴可能で、あわせてご覧いただきたい。(構成・本誌編集部)
イラン戦争の起源
木村 アメリカによるイラン攻撃は、今年の2月28日に突然始まったように見られていますが、なぜ今なのか、どういう狙いがあって始めたのか。まずこの2点について教えてください。
乗松 まず、アメリカ・イスラエルとイランの戦争は、今始まったわけではありません。その狙いについて、ネタニヤフ首相は「40年間やりたかったことが、やっとトランプ大統領のもとで叶った」と言って喜んでいます。トランプが大統領のうちにイランへの攻撃を開始したいという思いがあったのではないかと思います。
その上で、「なぜ今なのか?」を考えると、ネタニヤフは「40年間」と言いましたが、1979年のイラン・イスラム革命よりさらに遡り、1953年8月のイランにおける軍事クーデターにまで遡る必要があるでしょう。米英の言うことを聞かないモサッデク政権に対し、CIA(米中央情報局)が軍部にクーデターを起こさせ、失脚させた。そして親欧米のパフラヴィー2世派のファズロラ・ザヘディ将軍を首相に就けました。パフラヴィー2世下でモナーキー(王政)は強化され、圧政を敷いてイランを親米国家に変えた。これをひっくり返したのが1979年のイラン・イスラム革命でした。
イランはこれで自己決定権を取り戻したものの、アメリカはそれを許さない。それで、翌1980年9月にイラン・イラク戦争が引き起こされたのです。9年間に及ぶこの戦争で、イラクのフセイン大統領は化学兵器を使用し、50万〜60万人ものイランの人々を虐殺しました。当時のフセイン政権に加担したのがアメリカであり、ドイツなどの欧州諸国でした。
木村 イラン・イラク戦争では、ラムズフェルド(後に米国防長官)がイラクに化学兵器を提供したといいます。
乗松 そうです。イランとアメリカの戦いはその頃から続いていて、それでもイランは他国の圧力にめげず、イスラム共和国を保ってきました。イスラエルのネタニヤフ首相にとってはこれが面白くありません。
2007年、ウェズリー・クラークという元米陸軍将校が「デモクラシー・ナウ」のインタビューでこう語っています。2001年の9・11直後、イラクを攻撃するかしないかという時に、ペンタゴン(米国防総省)の高官から彼はメモを渡された。そのメモには「今後5年間のうちに7つの国と戦争を行なう」と書かれていた。イラク・シリア・レバノン・リビア・ソマリア・スーダン・イランです。実際にその後、これらの国で内戦・戦争が勃発しています。
中でも最大の軍事大国がイランです。周辺国の一掃を目論むネタニヤフにとって、イランは最強の敵。そうそう簡単に攻め落とせません。だからトランプがアメリカの大統領である今のタイミングを選んだのではないでしょうか。
ネタニヤフはイランを潰すことで、ユーフラテス川からナイル川までを自国の領土にする「大イスラエル構想」を実現したいのだと思います。
木村 他方、トランプ大統領が最高指導者ハーメネイー師暗殺を狙った、まさにイランの指導者たちが会合を行なう時刻と場所を諜報活動によって確定した時に、イラン攻撃を始めました。
乗松 これは政権転覆のための戦いです。「イランに核兵器を持たせてはいけない」などといった理由は「イラクの大量破壊兵器」の時と同じく西側メディアのでっち上げです。
そもそもハーメネイー師はイラン国内に「核兵器を持つべき」という声が多い中で、反対派のトップであり、2003年にファトア(イスラム法学における法的な勧告・見解)で「イランは核兵器を造らない」と表明しました。彼がいたからこそ核保有は食い止められてきたのであり、全くつじつまが合いません。
木村 アメリカはほかに「イランに弾道ミサイルの開発を許さない」も攻撃理由としました。「イランがテロ国家を支援している」とも言い、「抵抗の枢軸」と呼ばれるハマス・ヒズボラ・フーシ派などへのイランの支援を絶つことも目的と主張しています。
乗松 西側が「テロ国家」と呼ぶ国は、パレスチナを支援する国とイコールです。イエメンのフーシ派もレバノンのヒズボラも、パレスチナを支援し連帯しているから西側に狙われるのです。
国連やIAEAをなぜ盲信するのか
木村 「核開発」については、昨年6月にもイスラエルがイランを攻撃し、その後アメリカが核施設を攻撃して、完全に破壊したと言っていました。それから半年後に、「イランが核開発を再開しており危険だ」という口実で、再び今回の攻撃を始めました。
乗松 米国家情報長官のトゥルシー・ギャバードが、昨年3月の上院公聴会でインテリジェンス・コミュニティの結論として「イランは核兵器を製造していない」と証言しています。ところがトランプはその分析は誤りだと、自国の情報機関の評価を否定しました。
木村 弾道ミサイルについても「アメリカに届くような長距離ミサイルを開発しない」とイランは言っており、仮に開発しても完成に十年かかるという専門家の指摘もあります。
乗松 NPT(核兵器不拡散条約)の枠組みで考えても、イスラエルが核兵器を持っていることが、なによりおかしなことです。対してイランはNPTに従い、平和的な核開発しかしないとしてIAEA(国際原子力機関)の査察も受け入れました。
2015年にイランと米英仏独中露が合意したJCPOA(包括的共同作業計画)でも、核濃縮の濃度を制限すると約束しています。それをトランプは勝手に覆した。なぜか? 合意すればイランを攻撃する理由がなくなるからです。
木村 IAEAは昨年6月も、イランが核開発をしているかの報告を公開しました。IAEAがイラン攻撃にOKを出す役割を果たしています。
乗松 IAEAに査察させることによって、インテリジェンスを西側に漏らしているという疑惑もあります。木村 IAEAや国連など国際機関の見解を、政府もメディアも鵜呑みにする側面があり、日本は特にその傾向が強いですね。
乗松 イランは精一杯、IAEAの意向に合わせ協力してきました。今回攻撃を受けたのもアメリカとの協議の最中で、ディールは妥結寸前といわれていました。外交協議をしている間は、相手側がどこで誰と会っているなどといった情報も取りやすいのです。
ただし、CIAが重要情報を入手したからハーメネイー師を空爆できたというのは違います。そもそもハーメネイー師は「自分は逃げも隠れもしない」と言っていて、空爆時も地下ではなく地上の執務室で側近らと会議をしていました。家族を逃がすこともしていません。一般市民に逃げ場がないのに、自分だけ特別扱いはできない、市民とともにあるという姿勢を貫きました。しかもあの時はラマダン期間で、彼は食事をせずに執務室にいたのです。
木村 空爆では彼の娘や孫をはじめ、軍部を中心とする40人以上の指導者も一挙に殺されたといわれます。これでアメリカはイランの体制転換ができると考えたでしょうが、今の状況はアメリカの思った通りにはいっていない。出口戦略なしに始めた戦争だという批判も政権内部から出ています。
乗松 逆にイランは昔から、イスラエルやアメリカに攻撃されることを想定していました。あらかじめハーメネイー師の後継者も決めていたから体制はそのまま続いているし、国民の多くも支持しています。ハーメネイー師を偲び、アメリカ帝国主義に絶対やられない意志を示すデモが、今にもイラン全土で起きているのです。
米国NEDの暗躍
木村 西側メディアはハーメネイー師の死を悼む人々の運動はほとんど報じずに、反体制派の集会やコメントばかりを流していますね。
乗松 ディアスポラ(海外在住の国民)を利用するのはCIAの常套手段です。香港であれば海外在住の香港系市民、イランであれば海外在住イラン人です。彼らを利用した工作に巨額の資金を投じ、人権団体やメディアすらつくります。香港がそうであったように、イランでも若者たちが、かなりそちら側に持っていかれます。
木村 乗松さんはウクライナ問題を題材に「『ファクトチェック』というフェイク」という記事を『歴史地理教育』2023年7月号(歴史教育者協議会)に寄稿されています。
乗松 いわゆる左派リベラルの人が「ファクトチェック」という時、「右派やトランプがフェイクニュースを流すからファクトチェックすべき」といった対立構造の中で語っています。しかし、実際の戦争においては、ファクトチェック自体がファクト(事実)を歪める道具になっています。
たとえば、ウクライナ戦争は2022年に始まったわけではありません。NATO(北大西洋条約機構)の拡大や、2014年のマイダン・クーデターがありました。それを指摘すると「それはロシアのプロパガンダ」「嘘だ」とレッテルを貼られ、ファクトチェックの対象にされるのです。
木村 「ファクトチェック」を最初に始めたのは、トランプが「フェイク・メディア」と呼んだニューヨークタイムズやCNNでした。日本では朝日新聞やNHKが先駆けです。主流メディアは自分たちがファクトチェックする主体だと考えています。同時に権力・政府・国家がSNS規制を強めて情報の真偽を決め、国民の表現を抑制する動きも出てきています。
乗松 何が本当かを自分たちが決めるというのは、自分たちに都合のいい「真実」の押し付けです。スイスの元諜報員ジャック・ボー氏はウクライナ戦争について西側の情報を精査し、これはNATOの東方拡張が主な原因であると客観的に結論付けました。すると彼の銀行口座やクレジットカードがEUによって凍結された。西側権力は自国の市民をも制裁するわけです。元国際連合大量破壊兵器廃棄特別委員会(UNSCOM)主任査察官のスコット・リッター氏もアメリカの外交政策を批判して、FBIに家宅捜索されました。
アメリカ人映像作家のゴンザーロ・リラ氏はウクライナ内部から発信を続けていましたが同国保安庁により何度も逮捕、2024年1月、とうとう殺されました。彼の死を西側メディアは全く取り上げず、米国は自国民である彼を保護しようとしませんでした。パレスチナに連帯する発信を続けるシリア系英国人ジャーナリストのリチャード・メドハースト氏も2024年8月、自国イギリスで逮捕されました。
特に今年に入りイランで起きた市民デモの報じ方は酷かった。簡単に説明すると、まずイランで通貨が暴落しました。それに対し、市民が平和的なデモを始めました。ベッセント米財務長官はダボス会議で「イランの通貨危機は自分たちがやった。銃弾を一発も使わずに」などと自慢気に話しています。
通貨が暴落すれば、イランの人たちは政治に不満を持つ。そうして起きたデモにCIAとイスラエルのモサドが武装暴徒を注入したのは、マイダン・クーデターと同じ手口です。武装暴徒は火炎放射器やモロトフカクテル(火炎瓶)などを使ってイランの警察部隊を殺し始め、警察側も強硬な手段に出ざるをえません。その最中に、送り込まれた暴徒が治安部隊や市民を殺めていきました。
ところが西側メディアは政府の治安部隊が市民500人を殺したと報じ、その犠牲者の数をどんどん増やしていき、カナダのカーニー首相などは「死者は1万5千人」などと話していました。報道される死者の数がメディアによって全然違うし、どんどん増えていくのです。
そうした中でもアメリカのミントプレス・ニュースというオルタナティブメディアの主宰者アラン・マクロード氏が、死者数報道の嘘を暴きました。イランのヒューマンライト・アクティビスト・ニュース・エージェンシー(HRANA)などの人権団体と称する団体が、何の検証もせずに死者数を膨れ上がらせたというわけです。
木村 こうした人権団体・市民団体がアメリカなどから資金を受けてプロパガンダを行なっていると指摘されます。
乗松 CIAの派生機関であるNED(全米民主主義基金)からの資金供与です。レーガン政権の時代につくられた機関で、他国の政権転覆をあからさまに画策すれば世論の支持が得られない。そこで「民主主義」「人権」の衣を着せて他国の政権転覆を誘導すると、関係者が実際に公言しています。
木村 情報が心理戦争、認知戦争の武器となって錯綜する中で、トランプも「イランの民衆よ立ち上がれ」などと言っていました。しかし、実際にいま追い込まれているのはアメリカやイスラエルの側ではないでしょうか。
乗松 元CIAのラリー・ジョンソン氏によれば、ドイツの米軍病院の気配がおかしいそうです。ドイツの米陸軍病院は、中東の戦争での怪我人が搬送される場所です。米軍の準機関紙「星条旗新聞」で、ドイツの米軍基地が献血を募っていると報じられています。
つまり、米軍側も相当の死者と負傷者が出ている可能性があるわけです。
木村 実際の戦闘についても、イラン側は考え抜いた戦略の上で、最初は性能の劣るミサイルやドローンで米側に高価な迎撃ミサイルを使わせ、その後に超音速ミサイルを打ち込んで、大きな被害を与えているように見えます。
乗松 イランはアメリカやイスラエルがタッチできない地下にミサイル製造工場を持っていて、奥の手をまだ出していないといいます。
木村 イラン側はそう言っていますね。破壊されたのは地上のダミー兵器ばかりだとも伝えられています。
乗松 ガザのジェノサイドの構図とすごく似ています。ガザではハマスが2023年10月に蜂起し、イスラエルは即座に殲滅するとして、数週間で戦争は終わると言っていました。しかし、今もなお戦争は終わっていません。
今回のイランもそうです。トランプは数日か数週間で終わらせると言いましたが、イランの地下軍事施設にタッチできないから民間爆撃を繰り返しています。
また、空爆初日にアメリカが175人もの女子学生を殺害したのを、日本のメディアは「空爆された学校はもともと軍事施設で、アメリカ・イスラエル側は標的を間違えたのかもしれない」などと報じました。そんなわけがありません。
木村 一時はイラン側の誤射との情報も出されていました。しかも小学校への攻撃は、第一次攻撃で生徒を助けるために人々が集まっていたところに第二次攻撃したという情報もあります。
乗松 「ダブルタッピングアタック」という残酷な攻撃手法です。最初の空爆で負傷した人たちの救援部隊が到着すると再度、空爆を行なう。イスラエルがガザで同じことをしていました。その根底には白人至上主義から来る植民地主義とレイシズムがあります。
アメリカとイスラエルの本当の関係とは
木村 アメリカは今、「イスラエル・ファースト」で動いているのではないかという疑念を私は持っています。日本がアメリカの植民地だとすれば、アメリカはイスラエルの植民地ではないか。
乗松 国際政治・軍事評論家のブライアン・ベルレティック氏は、それには否定的で、アメリカは最初から世界覇権を目指しており、ロシアに対してはEU、中東ではイスラエル、アジアでは日本・韓国・フィリピン・オーストラリアというプロキシ(代理国)を使っていると分析しています。
ただし、木村さんの見方もわかります。トランプは最初からミサイルが枯渇するのも、自国の兵士が犠牲になるのもわかっていたはずで、今のタイミングで戦争したくなかった可能性が確かにあります。昨年末にネタニヤフがトランプの別荘地マール・ア・ラーゴを訪れ、そこでイラン攻撃計画が決まったともいわれます。
木村 ネタニヤフは今年2月初めにも訪米していました。
乗松 それでも、やらざるを得なくなったとすれば、背後にエプスタイン問題があると私は思っています。この問題ではトランプを含め西側の多くの有力者たちが秘密を握られ〝人質〞にとられていたのですから。
とはいえ、エプスタイン問題も道具にすぎず、イスラエルはこの問題がなくても、ほかの方法で戦争を始めていたでしょう。トランプが仕方なくイスラエルの言う通りにしているとの見方に一理あっても、それだけではないと思います。
木村 もともとアメリカは冷戦後の1992年に策定した世界覇権の指針「ウォルフォウィッツ・ドクトリン」に沿って動いてきたといわれます。ただし、第一次トランプ政権では多少そこから外れ、トランプ大統領は任期中に大きな戦争をしなかった。
しかし、第二次政権の今回、イランとの戦いが泥沼化して地上軍派遣ともなれば、多くの若い米兵が亡くなることになる。アメリカのさらなる凋落も招き、それはトランプが必ずしも望むものではないでしょう。この違いとは?
乗松 アメリカは戦後、朝鮮戦争・ベトナム戦争・イラク戦争と、次々と戦争を起こしてきましたが、それらの当時と今の世界の情勢は違います。なによりグローバル・マジョリティであるグローバルサウスが大変な力をつけました。怖いのは、イランが強いからこそ、核保有国であるイスラエルが逆切れして核兵器を使う可能性があることです。
木村 トランプのアメリカにそれを止めることができるのでしょうか? 私はできないと思います。
乗松 私もできないと思います。イスラエルが単独で決める可能性はあるでしょう。
米軍は同盟国を守らない
木村 次に、西側諸国の情勢です。スペインのサンチェス首相とイタリアのメローニ首相が明確にアメリカとイスラエルを批判し、スウェーデンやトルコも米軍に基地を使用させないと、アメリカと距離をとり始めています。
乗松 しかし、それでイスラエルを制裁しようとはならないわけです。彼らは非西側諸国であるロシア・中国・ベネズエラという国に対しては即座に制裁を行ないます。
だけど、アメリカ・イスラエルに対してはできない。カナダのカーニー首相も今回の攻撃初日、「アメリカ・イスラエルを支持する」と言った後に変節して「国際法に一致していない」と言いだした。その一方で「カナダ軍の派兵の可能性は除外しない」とも言い、矛盾しています。国際法は守りたいが、アメリカやイスラエルに逆らいたくないのです。
木村 民衆レベルでは西側諸国の中でも米・イスラエルに反対するデモや集会が活発になっているようです。
乗松 市民についていえば、イランの攻撃を受けたバーレーンにもイラン支持の市民がいるのは、結局イランの攻撃対象が国内の米軍基地だからです。
木村 アメリカの中東における米軍基地が破壊されている。つまり、アメリカは自国の基地も守れなかった。米軍基地を置く国の安全も米軍は守れないことが明確になったともいえます。
乗松 これは日本にとっても、米軍が守ってくれるなどというのは嘘だという証明になります。
木村 米海軍のフリゲート艦が横須賀基地から出航し、イランへの最初の攻撃に加わったという情報を「しんぶん赤旗」が報じました。つまり、日本は米軍への「基地の自由使用」で間接的に最初からイラン攻撃に参加していたわけです。そして、米軍基地を置く国は真っ先に敵国から攻撃されることが明らかになりました。
乗松 その通りです。ただし、アメリカの戦争で日本の基地が使われたことは今回が初めてでもなく、珍しいことでもありません。横須賀や佐世保などは、米海軍の補給修繕のために欠かせない基地で、これらがあるからアメリカは中東の戦争で、わざわざ自国から兵器を運ばなくてもよいわけです。
木村 日本政府は、イランの報復攻撃に対して直ちにイランを批判しました。しかし、アメリカに対しても、イスラエルに対しても、「国際法違反かどうかの法的評価は今の段階ではできない」と高市早苗首相が発言した一方で、小泉進次郎防衛大臣は、アメリカとイスラエルを全般的に支持するのが日本政府の立場だと本音を口にしました。
乗松 現実は小泉氏の言う通りです。
自衛隊が参戦する日
木村 ただ、日本とイランはこれまで友好的な二国関係を保ってきました。
乗松 イランはこちらが申し訳ないと思うぐらい親日国です。彼らは日本がアメリカの同盟国だとわかっているけれども、日本はアメリカに人質をとられたかわいそうな国で、日本人は悪くない。憲法9条も持っている。そういう感覚なのでしょう。だから、自衛隊が攻撃に加われば、もう駄目です。
木村 しかし、その可能性が出てきています。日本国憲法が改定されていない今の段階で、集団的自衛権を行使する最初の事例に、イラン戦争がなるかもしれないという危惧を、私は抱いています。
乗松 いかに違憲・違法の安保法制とはいえ、この状況にどう適用するのでしょうか?
台湾問題では「存立危機事態」などと無理やりこじつけていますが、イランの戦争が日本の存立危機事態になり得るのか。自衛隊参戦の正当化は無理だと思いますよ。
木村 しかし、日本政府は以前からホルムズ海峡が封鎖された時には存立危機事態になりうると言ってきました。今後、実際に機雷を撒くようなことがあれば、自衛隊が攻撃に参加する可能性が高まる心配はあります。
乗松 それは、ありえません。イランが始めた戦争ではありません。イランはアメリカに攻撃されたから自衛権を行使して反撃しています。
もう一つ重要なのは、先のベルレティック氏が指摘するように、アメリカの最終目標は中国です。ベネズエラもキューバもイランも、中国に石油を提供するなど繋がりが強い国です。中国の友好国で、叩きやすい国から叩くという流れにあると思います。
木村 最後に一言、日本人へのメッセージをお願いします。
乗松 私たちはいま、情報戦のただ中にいます。中国・ロシア・イラン・朝鮮など、アメリカが敵国とする国々の指導者を、デマも用いて悪魔化する。その国の人を被害者に位置づけるため、左派ほど弱い。人権や民主主義がない国の政権を転覆するのは仕方ないことだという気持ちにさせられている。この情報戦に、日本のメディアは右から左まで飲み込まれている。そのことを知ってほしいと思います。
前述したファクトチェックというフェイクを含め、西側のデマを暴き事実を見る人が、日本語言論者にもっと必要です。
木村 外交でいえば、本来ならば日本は中立の立場で停戦や和平に向けて仲介する役割を果たすべきです。
乗松 今の状態が続くと、日本がイランから敵視される日も遠くないでしょう。ロシアもかつては日本に友好的でしたが、ウクライナ問題で西側のロシア敵視に賛同しすぎるために、敵対国のように見られるようになりました。高市政権のままでは、イランもそうなるのではと危惧します。
木村 自衛隊が海外に出て戦死者が出る悪夢を実現させてはなりません。
乗松 聡子(のりまつさとこ)
ピース・フィロソフィー・センター代表、バンクーバー9条の会共同代表。木村氏との共著『広島・長崎への原爆投下再考』(法律文化社)など著書多数。


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