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Sunday, September 17, 2023

9月こそ戦争を反省する「非戦月間」に (『マンスリー 北京JAC』277号より)Remembering 9.18 - Japanese Invasion of Manchuria and the 15 Years of Aggressive War

きょうは「9.18事変」、大日本帝国の中国侵略戦争を記憶する日です。

この日にちなみ、『マンスリー 北京JAC』Japan Accountability Caucus for the Beijing Conference 第277号(2023年9月1日発行)に掲載してもらった小論をここに紹介します。


9月こそ戦争を反省する「非戦月間」に


乗松聡子

 9月だ。日本では、1945年8月6日の広島、8月9日の長崎の原爆投下日につづき、昭和天皇ヒロヒトがラジオで降伏を告げた8月15日を中心に展開される年中行事のような「8月ジャーナリズム」が終わり、戦争のことなどまた誰も考えなくなってしまう時期だ。実はこの構造こそが日本の歴史認識の歪みを象徴している。

 「広島・長崎」の日に被爆者に思いを馳せ、核兵器を許さない意志を新たにするということは重要であるが、これらは両方日本国内で起こった戦争被害である。米国の原爆投下責任を問う声はほとんどない。8月15日は、戦争責任者ヒロヒトがあたかも被害者であるかのごとく、放送を聴きながら市民がひれ伏し泣くシーンがTVで流される。このように、8月の日本は、責任の所在は曖昧なまま、日本の中だけで自己還流する戦争記憶の場となっている。

 いわずもがな、中国を侵略し、その後米英など先発帝国主義国を相手にアジア太平洋全域に戦争を拡大して2千万人以上といわれる命を奪った責任は大元帥ヒロヒトの大日本帝国にある。私は、日本人として責任ある戦争記憶とは、この9月にこそあると思っている。1945年9月2日、戦艦ミズーリ艦上で日本の天皇と政府の代理として重光葵外相が、日本軍大本営代表として梅津美治郎参謀総長が降伏文書に署名した。連合国側は米国のマッカーサー元帥をはじめ、中華民国、英国、ソ連、オーストラリア、カナダ、フランス、オランダ、ニュージランド代表が署名した。

 米国相手だけに負けたと思っており、中国に負けたとは思っていない現代の日本人の目を覚ますためにも、この日の帝国日本の惨めな降参ぶりこそ毎年見るべき場面であろう。翌日の9月3日、中国では「抗日戦争勝利記念日」として記念する。ロシアもこの日を「軍国主義日本への勝利と第二次大戦終結の日」として祝う。そして9月にはなによりもこの戦争の発端となった日本の1931年満州侵攻の日、「9.18」という重要な節目がある。この日を記憶している日本人はどれぐらいいるのか。この9月は、日本の植民地主義を象徴するジェノサイドであった関東大震災後朝鮮人・中国人大虐殺の100周年でもある。

 自国中心の歪んだ歴史認識を持っているからこそ、軍産複合体の利益を代表する政府とメディアによるプロパガンダ作戦に流される。日本が侵略しこそすれ、侵略されたこともない中国を悪魔視し、恐れ、米国の言いなりに軍事予算増強や軍備拡大に同調し、基地押し付けによる沖縄差別を強化する。日本人の植民地主義は、それを克服しないことにはなくならない。日本がアジアの一員として責任ある国になるためには、日本人が大日本帝国の歴史を「やられた側」の目で学び直すことが求められている。8月15日のヒロヒトの降伏放送の日に頭を垂れて終わりではなく、9月全体を「もう二度と植民地支配も侵略戦争もしません」と誓う、非戦月間にしたらどうだろうか。

(以上)

戦艦ミズーリ上での降伏式。杖をついて歩く重光葵外相。
US National Archives チャンネルより


Thursday, August 24, 2023

9月30日沖縄でのシンポジウム「朝鮮戦争から考える沖縄と東アジアの平和」~停戦協定を平和協定へ~ Okinawa and the Korean Peninsula: Bringing Peace to Northeast Asia (Symposium in Okinawa, Sep 30 2023)

シンポジウムのお知らせです。

 近時、⽇本政府によって「朝鮮半島有事」や「台湾有事」が喧伝され、これを⼝実に⽇本の軍事化が進んでいます。特に沖縄では、「北のミサイル発射に対処する」との名⽬で、⼗分な議論の無いままPAC3配備が配備されるなど、「北の脅威」や「中国の脅威」が煽られることにより、なし崩し的に⽶軍及び⾃衛隊の増強、⽇⽶軍事同盟の強化が進められています。このような動きは、沖縄の負担増加につながると同時に、朝鮮学校への⾼校授業料や幼児教育の無償化除外や、ヘイトスピーチをはじめとした、在⽇朝鮮⼈への差別と憎悪を煽ることにもつながっています。
 しかし、そもそもなぜ朝鮮半島では、このような緊張が続いているのでしょうか。1950年から1953年まで、朝鮮半島で⾏われた戦争(朝鮮戦争)は未だ終結しておらず、「停戦」となったまま今⽇に⾄っています。⽇本の侵略と植⺠地⽀配の結果、朝鮮半島は⺠族が分断され、朝鮮戦争が終結されないまま今⽇に⾄っているという歴史から、改めて現在の「脅威」や「緊張」について考え直す必要はないでしょうか。
 今年は、朝鮮戦争停戦から70年、そして関東⼤震災での朝鮮⼈虐殺から100年という節⽬の年となります。常に戦争と隣り合わせの運命を強いられてきた、沖縄と朝鮮半島について、「朝鮮戦争停戦から70年」という視点から考えるためのシンポジウムを、下記のとおり開催いたします。

詳しくは下⇓のチラシをご覧ください。

申し込みリンクはこちらです⇒






Saturday, August 12, 2023

日中平和友好条約締結45周年にむけて:日本はアジアに戻ろう -歴史と向き合い友好を築く- My speech to commemorate the 45th Anniversary of the Japan-China Peace and Friendship Treaty of 1978

8月10日、衆議院議員第一会館で開催された、日中平和友好条約締結45周年記念大集会で発言させていただいた原稿をここにアップします。(写真は済州島以外は筆者撮影です。)300人定員の会場は一杯になり、呉江浩中国大使、鳩山友紀夫元首相の挨拶をはじめ、元外交官で国際政治評論家の浅井基文氏の基調講演をはじめ多角的な視点からの貴重な発言がありました。映像はIWJがアップしていますのでぜひご覧ください。

追記:この発表をもとに中国のメディアが記事にしてくれました。

終戦から78年 「日本は加害の歴史を伝えよ」とジャーナリスト・乗松聡子さん(8月15日)

日本は「漠然とした平和教育」よりも加害の歴史を伝えよ~ジャーナリスト・乗松聡子さんに聞く(8月18日)

中国語版 乘松聪子:日本不应忘记“战争加害者”历史

香港フェニックスTV


日本はアジアに戻ろう -歴史と向き合い友好を築く-


乗松聡子

今日はお招きいただきありがとうございます。日中平和友好条約45周年おめでとうございます。私は日本出身ですが、カナダに30年ほど、人生の半分ぐらいを暮らしてきた乗松聡子と申します。きょうは、日本とアジア隣国との関係について、外から見て養ってきた視点や経験を、みなさんと分かち合いたいと思います。

私は日頃日本人の話し方を聞いていて、日本人は自分たちをアジア人と思っていないのではないかと思うことがあります。たとえば日本で「アジアン料理」と言うと、タイとかインドネシアなどのアジア他国のいわゆる「エスニック料理」を指すようですが、日本食だってアジアのエスニック料理の一つですよね。あと旅行会社のPRで「アジアに行こう!」というコピーを見るときもありますが、「え、日本ってアジアじゃないの?」って思ってしまいます。東京にいる人が「日本に行こう」と言っているようなものです。

このような現象から、なにか日本はいまだに福沢諭吉の脱亜入欧思想や、大東亜共栄圏思想を引きずっているのではないか、自分たちはアジアに位置しながら他国とは一線を画し、ときには優越感さえ感じているのではないかと思うことがあります。

自分たちをアジア諸国の中で格上の存在として見る思想が、中国をはじめアジア太平洋全体での日本軍の残虐行為や、日本人による他のアジア人への差別感情の温床となりました。亡くなった評論家の加藤周一さんは言っていました。「南京大虐殺は現代人と関係がないといえない。現代の日本社会に、南京大虐殺を生み出した一因である差別感情がまだ残ってはいないか、二度と起こさないためにそれを調べることが若い世代の責任であり、だから歴史を学ばなければいけないのだ」と。

しかし残念ながら日本の教育制度では、日本における原爆や空襲の被害を取り上げて「戦争はいけない」「平和を祈る」といった漠然とした「平和教育」が中心です。大日本帝国が行ってきた他国への侵略や植民地支配の事実やそれを支えてきた民衆の差別心を克服するような教育は皆無に近いと思います。

私は高2と高3をカナダの学校で学びましたが、そこで目を開くことができたと思っています。そこは国際学校で、70か国からきた200人の学生たちと寮生活をしながら学ぶ学校でしたが、自分が日本の学校で聞いたことなかった歴史をアジアの同胞から聞いたのです。たとえばシンガポールの友人からは日本占領時の華人虐殺について、日本軍が赤ん坊を銃剣で串刺しにしたとか、インドネシアの友人からはいまだに現地の人から「ロームシャ」という言葉で記憶されている、強制動員の歴史について聞きました。

この頃から今にいたるまで、中国や韓国やさまざまなアジア同胞と付き合うようになり、自分は日本人というより以上にアジア人というアイデンティティを持つようになりました。だからこそ日本人がその歴史認識においてもアイデンティティにおいてもアジアと乖離していることについての問題意識が深まり、日本は「アジアに戻るべきだ」と思うようになりました。これがきょうの発言のテーマです。

そのためには加藤周一さんが言ったように大日本帝国がアジア太平洋全般に甚大な加害を行った歴史を勉強し、現在の平和構築に生かすことは必須です。日中共同世論調査などを見ても、中国の人たちにとっての日本との関係の課題は、圧倒的に「歴史認識問題」です。日本の学校教育やメディアは、政治の右傾化に伴い年々酷くなるばかりとの印象ですが、それでも、市民が草の根でできる真の平和教育はあると思います。私はこの20年ほど「平和のための博物館」運動に関わってきています。日本では、学校では教えない日本の加害の歴史を伝える資料館や記念碑が各地にあることに希望を見出しています。

中帰連平和記念館

そのうちの一つが「中帰連平和記念館」です。日本敗戦にあたり、ソ連軍は約60万人の日本軍捕虜をシベリアに抑留しましたが、1950年に、969名が戦犯として中国に引き渡され、撫順戦犯管理所に収監されました。新生・中華人民共和国の寛大な政策により、戦犯たちはちゃんとした食事を与えられ、学習や文化活動などを許されました。それで「鬼から人間へ」戻り、自分たちの罪を認めるようになったのです。軍事法廷では結果的に一人の死刑や無期懲役もなく、禁固8-20年の有罪判決を受けた45人も、シベリアの5年と管理所の6年が刑期に含められ、全員が1964年までに帰国を許されました。被害国が加害国の戦犯を敢えて赦した「撫順の奇蹟」と言われる歴史です。

帰国した元戦犯たちは「中国帰還者連絡会」を立ち上げ、自分たちの戦争犯罪や加害の事実を日本で伝えていく活動を行いました。当事者の高齢化にしたがい、より若い世代が「撫順の奇蹟を受け継ぐ会」として引き継ぎ、そして2006年11月に「NPO中帰連平和記念館」が川越市に創設され、今も日本の中国侵略戦争の歴史を伝え続けています。

中帰連記念館は、世界の平和博物館を横につなぐ、「平和のための博物館国際ネットワーク」の団体会員でもあり、3年に一回の国際大会がこの4日後にスウェーデン・ウプサラで開催されますがそこでも英語でこの資料館の歴史と意義を発表します。

もうひとつの平和資料館を紹介します。長崎の「岡まさはる記念長崎平和資料館」は長崎の朝鮮人や中国人の強制連行の被害者を記憶し、同時に、日本軍「慰安婦」、731部隊、南京大虐殺など、「史実にもとづいて日本の加害責任を訴えようと市民の手で設立された」(資料館パンフレット)平和資料館です。2013年米国の映画監督オリバー・ストーンさんをここにお連れしましたが監督はこの資料館を大変重要視し「このような資料館が東京にもあるべき」としきりに言っていました。

長崎の平和公園内にある「中国人原爆犠牲者追悼碑」はこう言います。「戦時中日本は約4万人の中国人を強制連行し、炭鉱や鉱山、港湾、土木工事などで過酷な労働を強いてわずか1年余りの間に6,830名もの死亡者を出しました。」長崎では三菱鉱業の高島炭鉱、いわゆる「軍艦島」と言われる端島炭鉱、崎戸炭鉱、日鉄鉱業の鹿町炭鉱に1042名が強制連行され、115名が死亡しました。このうち32名が長崎の浦上刑務所に勾留されて原爆の犠牲になりました。昨日の8月9日は長崎原爆の78周年でした。強制連行された上に原爆で殺された朝鮮や中国の人たちの無念に思いをはせなければいけない日です。

長崎の中国人強制連行被害者と三菱マテリアルの「和解」
で建立された「日中友好平和不戦の碑」

三菱の強制連行の被害者や遺族10人は2003年、国と長崎県、三菱マテリアルと三菱重工業を相手どって謝罪と賠償を求めて提訴し、結果的に敗訴をしたものの、三菱マテリアルとは2016年北京で、歴史的な和解にいたりました。被害者には謝罪の証として和解金10万人民元を支払い、記念碑の建立と「慰霊追悼事業」などの事業をおこなうことが約束されました。「日中友好平和不戦の碑」は長崎市蚊焼町の、高島を望む丘の「平和庭園」に建てられています。

長崎は、その大村飛行場が中国への渡洋爆撃の起点になった「加害」の場所でもあります。笠原十九司さんの本「南京事件」(岩波書店)にはこうあります。「南京を爆撃したのは、海軍木更津航空隊の新鋭機=96式陸上攻撃機20機だった。この日午前9時10分、長崎の大村基地を発進した爆撃機隊は、東支那海を横断し、台風による悪天候をおして南京まで、洋上600キロをふくむ960キロを4時間で飛翔、『南京渡洋爆撃』を敢行したのである。」この渡洋爆撃が始まったのが1937年8月15日だったのです。このちょうど8年後、大日本帝国は敗戦・崩壊しました。

済州島アルドゥル飛行場格納庫跡での
南京大虐殺追悼集会(2019)

長崎がこのように加害の地であったことをどれだけの人が意識しているでしょうか。同様に日本軍の渡洋爆撃の基地とされた韓国・済州島のアルドゥル飛行場では毎年南京大虐殺の追悼式が行われています。当時日本が植民地支配していた済州島の人たちには責任がないにもかかわらず、です。

広島も同様です。広島は日清戦争では大本営が置かれ天皇が直接指揮を取った軍都でした。G7が今年開催された宇品港は、日清戦争以来日本の侵略戦争の出撃起点、輸送拠点でしたし、朝鮮人と中国人を強制労働させていました。

G7とは、西側諸国が中国、ロシア、朝鮮民主主義人民共和国敵視で一致する事実上の「戦争会議」でした。そのような問題意識で、私は仲間たちと広島でG7批判展示を行いました。これもひとつの臨時の「平和のための博物館」であったと認識しており、国際会議でも発表の予定です。

広島では昨年強制連行の歴史を学ぶフィールドワークに参加しました。太田川水系では日本の軍国化が進むにつれてダム建設が次々と行われ、多数の朝鮮人が動員されました。戦争終盤には安野発電所建設のために当時の西松組(今は西松建設)が360人の中国人を強制連行し奴隷労働に就かせました。帰国までの約1年間に、112人が負傷、269人が病気になり、29人が死亡(うち5名は原爆死)しました。西松建設の被害者と遺族は法廷での闘いの末2009年に西松建設と和解にいたりました。安野発電所横にある、和解事業の一環として建てられた「安野中国人受難之碑」にはこうあります。「・・・太田川上流に位置し、土居から香草・津浪・坪野に至る長い導水トンネルをもつ安野発電所は、今も静かに電気を送りつづけている。」そう、広島の人々は今も強制連行で作られた発電所から電気を享受しているのです。

中国電力安野発電所(右側が「安野中国人受難之碑」

以上、8月6日と9日、「原爆」で日本の被害ばかりに注目がいく時期だからこそ、長崎と広島の加害性について強調しました。米国の原爆投下は許されませんが、日本人の被害ばかりを語るだけでは「日本を戦争の被害者として演出することだ」と隣国から言われるのも当然でしょう。原爆の被害を語るときも、被害者の約一割をしめる朝鮮人や、すでにお話した中国人の被害者を忘れてはいけないと思います。今年は1923年の関東大震災後大虐殺の100周年という大きな節目でもあります。6000人以上の朝鮮人、また、800人に及ぶといわれる中国人が惨殺されました。これは人類史上でも最大規模といえる日本人によるヘイトクライムであり、日本政府は責任を取る必要があります。

最後に:高校時代の留学から、カナダに移民して以来、中国や中華系の友人たちとの交流の中で感じたことは、中国の人たちは欧米列強や日本に侵略された「屈辱の100年」を決して忘れないということです。それは当然のこと。日本は、日清戦争時の旅順大虐殺、平頂山大虐殺、南京大虐殺、戦時性暴力、細菌戦、毒ガスをはじめ、何百年謝っても許されない犯罪を中国の人たちに対して犯しました。それでも、中国の人たちは日本人も日本文化も日本旅行も好きで、友好的な人たちが多いです。それなのに日本は、中国に侵略されたこともないのに中国に対して敵対的・差別的な人が多い。それは最初に触れたような明治以降の日本人の差別意識に加え、米国が主導する西側軍事同盟の中国敵視キャンペーンを日本メディアがそのまま垂れ流し続けるからだと思います。

中国の友人が私に話してくれたことがあります。日本と中国の間には2000年の歴史がある。近現代における日本の侵略戦争はこの長い歴史の中では僅かな期間であり、乗り越えることができると。有難い言葉だと思いました。しかしその友好も、日本人が過去の加害の事実を学び、それを記憶し継承し、「二度としない」という決意を更新し続けてこそのことです。

今年は、1953年の朝鮮戦争停戦協定の70周年の節目でもあります。この戦争は、日本から解放されたはずの朝鮮が分断され内戦状態となり、最後は米中戦争の様相も呈し、日本も加担しました。この戦争でさえまだ終結できていないのに今また、米国と日本を含む同盟国は、新たな戦争を中国にしかけようとしています。市民にできることは、政治参加することはもちろん、目の前に溢れる嫌中情報に踊らされず、批判的な目を養い、人と人との交流を大事にすることが、平和を促進し戦争を防ぐことであると信じています。

ご清聴をありがとうございました。



Wednesday, July 26, 2023

日中平和友好条約締結45年記念大集会のお知らせ China-Japan Peace and Friendship Treaty 45th Anniversary Symposium

8月10日(木)午後2時から 日中平和友好条約締結45周年記念大集会。衆院第一議員会館にて。事前申し込み必要。登壇者は浅井基文、鳩山友紀夫、呉江浩各氏ら。ブログ運営人も発言します。案内文は下方をどうぞ。



8月11日追記。定員300名の会場は一杯になり活発な議論が交わされました。IWJによる録画です。

Saturday, July 08, 2023

横浜での 「戦争の加害パネル展」8月26日ー9月3日開催(2023年)Japanese War Atrocities Panel Exhibit in Yokohama: August 26 to September 3, 2023

第8回 「戦争の加害パネル展」が今年も横浜「かながわ県民センター」で開催されます。主催は「記憶の継承を進める神奈川の会」今年は関東大震災後朝鮮人・中国人らの大虐殺という、日本人による史上最大規模のヘイトクライムの100周年であり、この展示会でも特集展や講演会があります。昨年私は訪問して大変感銘を受けました。万人坑(中国人強制労働)、毒ガス兵器、南京大虐殺、マレー侵略時の大虐殺、朝鮮人・中国人強制動員、日本軍「慰安婦」、満州への朝鮮人強制移住、731部隊、重慶無差別爆撃、沖縄戦と沖縄差別、ドイツと日本の戦後処理など、今年も大変豊富な内容のようです。大日本帝国の侵略戦争の本質を捉え、知らなかった歴史の事実を学ぶためにも今年もぜひ足を運びたいと思います。詳しくは下のポスターをご覧ください。

The 8th "Panel Exhibition on the War Atrocities" will be held again this year at the Kanagawa Prefectural Citizens' Center in Yokohama. This year is the 100th anniversary of the massacre of Koreans and Chinese after the Great Kanto Earthquake, one of the worst hate crimes of human history  committed by Japanese. This year's exhibition covers a wide range of topics such as the forced labor and abuse, murder of Chinese people during the Japanese invasion of China, poison gas weapons, the Nanjing Massacre, the massacre during the Malay invasion, forced mobilization of Koreans and Chinese, Japanese military "comfort women," forced migration of Koreans to Manchuria, Unit 731, indiscriminate bombing of Chongqing, the Battle of Okinawa and discrimination against Okinawa, German and Japanese handling of war responsibilities, and more.  For more information, please see the poster.




「ファクトチェック」というフェイク:『歴史地理教育』より転載 Fake in the Name of "Fact Check" -- from July 2023 Edition of History and Geography Education Journal

『歴史地理教育』7月号「FACT CHECK」特集に寄稿した記事を許可を得て転載します。「ファクトチェック」の名の下に体制側がファクトをフェイク扱いし闇に葬り去ろうとしている西側諸国に広がっている現象を扱いました。参考資料から、ネット上で見られるものはリンクで示しています。

「ファクトチェック」というフェイク

乗松聡子

 

 一九六〇年代から数々の戦争を取材してきたジャーナリスト、ジョン・ピルジャー氏は二二年七月、「サウスチャイナ・モーニングポスト」の取材に応え、ウクライナ戦争について「私は人生で今回ほど、西側メディアが情報を操作し好戦的になるのを見たことがない」と語った。ロシアの侵攻は支持しないが、西側報道には歴史的視点が全く欠落していると指摘した。

 戦争への反省に基づく日本国憲法は、「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうに」と謳う。市民が「政府の行為」を唯一知りうる媒体である報道機関が、大本営発表をそのまま報じ、「戦争の惨禍」に加担したことへの反省があった。しかし今回の戦争について日本メディアは、西側メディアの Unprovoked(いわれのない) という枕詞に倣い、「独裁者プーチンが突然侵略した」という言説をそのまま流している。それでは日本の戦前に逆戻りだ。

 

1 同調せず事実を伝える者たち 

 それでも英語の言論界には、主要メディアが報道しない事実や異なる視点を発信する数々の学者やジャーナリストがいる。その一人であるシカゴ大学のジョン・ミアシャイマー教授は、ウクライナ紛争は「西側の責任」であると言い切る。「米国と欧州同盟国の狙いは、ウクライナをロシア影響圏から剥ぎ取り西側に編入すること」にあった。西側軍事同盟NATO(北大西洋条約機構)は、米国の「東方拡大せず」との約束を破りロシアの目前まで拡大した。〇八年のNATOブカレストサミットでは「ジョージアとウクライナの加入を歓迎する」とし、ロシアが容認できないといくら表明しても米国は一顧だにせず、核兵器とミサイル防衛基地配備で威嚇を続けた。米国は、ニ◯一四年二月にはネオナチ勢力を使って政権転覆を行った。これに危機感を抱いたクリミアとセバストポリ市は住民投票を行い、双方八〇%以上の投票率で九五%以上の圧倒的多数でロシア再編入の道を選んだ。

コロンビア大学のジェフリー・サックス教授も、この戦争は「ニ〇二二年二月ではなく一四年二月に始まった」と強調している。ロシア系住民が多い東部ドンバスの市民は一四年クーデター以降、NATO諸国から支援を受けた自国政府による圧政と武力攻撃に晒された。ウクライナ政府勢力とドンバスの武装集団との八年の内戦では一万四千人が亡くなっている(国連報告)。サックス教授は、米国ネオコン(新保守主義)が起こした戦争について「米英のメディアは完全に一方的な報道しかせず、プロパガンダを先導した」と批判した。「ミンスク合意」という和平合意があったが、今やメルケル前ドイツ首相やオランド前フランス大統領が認めているように、ウクライナ再軍備のための時間稼ぎに過ぎなかった。一九年に就任したゼレンスキー大統領も遵守する気は毛頭なかった。サックス教授はこの合意が西側の「フェイク」であったと言った。

 

2 責任ある言論を「フェイク」と呼ぶフェイク 

「フェイク」とは「嘘」「偽物」「本物ではない」という意味だが、事実の伝達を妨害する言説全てが「フェイク」と言えよう。一九八〇年代「イラン・コントラ」事件報道などで知られたジャーナリスト、ロバート・パリー氏(二〇一八年死去)が、自らが設立した調査報道サイト「コンソーシアムニュース」でメッセージを遺している。氏が若い頃は取材において常に「別の意見」を報じることが期待されていたが、次第に「公式見解への疑問を封じることがジャーナリストの奇妙な義務になった」という。この傾向は二一世紀に悪化し、「欧米の主要な報道機関は、でっち上げの『フェイクニュース』や根拠のない『陰謀論』と、公式見解に異を唱える責任ある分析を混同するようになった。どちらも同じ釜に入れられ、軽蔑と嘲笑の対象になっている」と。ウクライナ戦争においてはまさしく、どれだけ客観的な調査や言論も西側のナラティブに沿わないものは「ロシアのプロパガンダ」と一蹴される現象が起こっている。これも一つのフェイクの手法だ。

 

3 真相究明を妨害するフェイク 

重要な例を紹介する。二〇二二年九月二六日の「ノルドストリーム・パイプライン爆破」は衝撃的なテロ事件であった。ドイツにロシアの安価な天然ガスを提供するパイプラインは、欧州経済に欠かせない存在であり、米国は目の敵にしていた。バイデン大統領はロシア侵攻前に「パイプラインに終止符を打つ」と公言していた。爆破後にブリンケン国務長官は、ロシアの替わりに米国がガスを提供する「素晴らしい機会だ」と繰り返した。ロシアのパイプラインなのにロシアのせいにする声さえあった。

そんな中、二〇二三年二月八日に、正確な調査報道で定評のあるシーモア・ハーシュ氏が「米国はいかにしてノルドストリーム・パイプラインを破壊したのか」という記事を出した。記事は、バイデン政権が舵を取り、海軍のダイバーが二二年六月NATOの演習を隠れ蓑にして爆発物を仕掛け、三ヶ月後、ノルウェー海軍機がソナーブイで爆破させたと報じた。これが本当なら、米国は同盟国の基幹インフラを攻撃したということになる。それなのにドイツをはじめ欧州全体で怒りが噴出することもなかった。EU議会の左派議員クレア・デイリー氏は「誰がやったのかを調べる関心が全くないことに呆れる!」(二〇二三年二月一五日)と怒りを露にした

調べるどころか、同年三月七日には米独が共同で火消しを図るかの如く同時に記事が出た。「ニューヨーク・タイムズ」は、「最新のインテリジェンスを検証した米国高官」の話として、民間の親ウクライナグループがやったという記事を出した。「ツァイト・オンライン」は、ポーランドの会社からレンタルしたヨットで「船長、潜水士二名、潜水助手二名、女医一名」のグループが「爆薬を事件現場に運び、仕掛けた」と報じた。このようなグループがどうやって水深八〇メートルにあるコンクリートに覆われたパイプラインを特定し、爆破できるのか。にわかには信じられない物語だ。

三月二七日、国連の安全保障委員会で、独立した国際的な調査委員会を設立するロシアの提案は否決された。これだけの重大事件の調査を米国は強硬に反対している。それはすでに答えを知っているからか、答えを出してほしくないか、あるいはその両方かしかないであろう。真相究明への妨害というフェイクである。

 

4 利益相反の「ファクトチェック」

このような動きにはSNSも加担している。二〇二三年四月一九日、フェイスブックがハーシュ記事を検閲していることが発覚した。記事をシェアしようとすると、「嘘のニュースを繰り返しシェアするページには制限がかかります」という脅しのような文句が出る。何よりも、現時点では最も論理的で詳細にわたるハーシュ氏の報道が「嘘」と決めつけられている。

フェイスブックが「ファクトチェック」として誘導するノルウェー語の「ファクティスク」というサイトには、事件へのノルウェーの関与を否定する記事が出てくる。しかしこのページには、国営メディアNRKが関与していた。ハーシュ記事で事件への関与を指摘されたノルウェー政府の息がかかったサイトには明らかに利益相反がある。客観的な「ファクトチェック」などできるはずがない。これは「ファクトチェック」という名のフェイクだ。昨年4月に米国政府が、ジョージ・オーウェルの「真実省」さながらの「偽情報統制委員会」を作ったことは記憶に新しい。これには批判が殺到して結局廃止された

フェイスブックは他にも、ネオナチのアゾフ運動を、そのヘイトクライムや暴力性により禁止処置にしていたのに、ロシア侵攻後解禁するなど、西側の戦争に協力している。米国政府は現代人の情報収集には欠かせないグーグル検索やユーチューブ等IT大手を使い、政府を批判するジャーナリストや、ロシアやイランなど、米国が敵視している国々のメディアを次々と検閲してきた。これらの会社は米国政府から巨額の事業を請け負っており、癒着関係にある。

 

5 独裁化しているのは西側「民主主義」国家

ラテンアメリカを拠点に活動するジャーナリスト、ベン・ノートン氏は、これらの動きに触れ、「米国は、自由や民主主義を標榜し、中国やロシアの国内での検閲を批判しておきながら自分たちは世界中で検閲を行い『情報戦争』を展開している」と言う。いまや表現や報道の自由の制限が加速しているのは西側なのだ。

フランスの人類学者エマニュエル・トッド氏は、近著『第三次世界大戦はもう始まっている』(文藝春秋、二〇二二年)で、金権政治と格差が加速する西側はもはや自由民主主義とは言えず、逆に専制国家と言われている中国やロシアでは、大衆の意見を反映する民主主義が存在すると指摘している。今の世界の対立関係は、西側が言うような「民主主義陣営VS専制主義陣営」ではなく、「リベラル寡頭制陣営VS権威的民主主義陣営」であるとの見方だ。

米国を中心とする西側諸国が「ルールに基づく国際秩序」というときの「ルール」とは、米国ルールのことである。西側諸国が「国際社会」というとき、自分たちのことだけを指している。世界でロシアを制裁しているのは主にこの西側連合の国々であり、人口にしたら世界の十五%程度だ。他の圧倒的多数派は歴史的に西側諸国から搾取され続けてきた「グローバルサウス」の国々であり、西側に必ずしも同調していない。日本の報道にも顕著な、西側の基準が正しい国際基準であるかの如くの言説自体にバイアスがあることを知る必要がある。世界の現実を反映していないという意味からも、一種のフェイクなのである。

 

6 マッカーシズム再来 

ノルドストリーム破壊事件について、バイデン政権が行ったという疑惑を追及していたのは米国メディアでは「フォックス・ニュース」のタッカー・カールソン氏であった。彼は右派であるが、米国のウクライナ戦争へ責任を問い、バイデン大統領の息子の汚職疑惑も追及し、巨大製薬会社がTVニュースを支配していると指摘した。事実を追求するという共通点で左派のゲストを招くことも多かった。二〇二三年四月二〇日には、民主党から大統領選出馬を表明したロバート・F・ケネディJr氏をゲストに呼び、大企業による政府の支配への痛烈な批判に耳を傾けた。そのカールソン氏が、四月二四日に突然解雇された。日本の安倍政権下で政府に批判的だったニュースキャスターが立て続けに降板させられたことを彷彿とさせる出来事だった。

米国憲法修正第一条」は表現、報道、集会、信教の自由を保障する憲法条項である。今、修正第一条をかなぐり捨てたような言論と事実の弾圧は止めを知らない。同年四月一八日、「アフリカ人民社会主義党」の指導者ら四人の米国人はその政府批判活動に対し、「ロシアのプロパガンダを広め、米国の選挙に干渉した」として米国司法省により起訴された。米国では黒人の政治活動家が体制の標的にされてきた歴史がある。体制に反対する声をすぐ敵国のスパイであると嫌疑をかける「マッカーシズム」再来を懸念する声も上がっている

中国敵視が強まっているカナダでも、中国政府が中華系カナダ人の政治家を利用して選挙に影響を与えているという報道が連日大きく扱われている。これもカナダの諜報機関筋の情報ということで、証拠も不十分なまま印象だけが肥大している。

 

7 戦争の最初の犠牲者は真実 

二〇二三年四月初頭、英米のメディアが、ウクライナ戦争の現状に関する国防総省の極秘文書を、マサチューセッツ州空軍に属するジャック・テシェイラ氏が漏洩したと報じ、FBIが逮捕した。これらの文書は、ウクライナ軍の窮状、米国の直接参戦、米国によるロシアと同盟国に対する広範なスパイ活動等を明らかにしている。

今回の出来事で大きな意味を持つのはメディアの変貌だ。かつては、ベトナム戦争の機密文書をリークさせたダニエル・エルズバーグ氏に協力し、「ニューヨーク・タイムズ」や「ワシントン・ポスト」がスクープ記事を出した。イラク戦争における米軍の戦争犯罪等を暴いた「ウィキリークス」のジュリアン・アサンジ氏や、米国家安全保障局(NSA)による大量監視行為を内部告発したエドワード・スノーデン氏を、勇敢な発信者として位置づけるメディアも多かった。そのような西側の大手媒体がいまや率先して告発者を悪人として叩き、当局に引き渡すような行為をしている

「戦争の最初の犠牲者は真実である」という言葉がある。主要報道機関にジャーナリズムが存在しなくなっている今、市民が体制側のフェイクを見極める力を養い、抵抗していく必要がある。戦争を止めるために。

(のりまつ さとこ・ジャーナリスト)

Friday, July 07, 2023

必読!国連安全保障理事会でマックス・ブルメンタール氏が発言:私的利益をむさぼる少数の者たちが米国を支配し代理戦争を強行している。(全文日本語訳) Max Blumenthal addresses UN Security Council: Japanese Translation

米国の調査報道メディア『グレイ・ゾーン』のマックス・ブルメンタール氏が国連安全保障理事会で発言し、ウクライナ戦争の本質を完膚なきまでに言語化しました。ブルメンタール氏の許可を得てここに全訳を掲載します。翻訳は Deepl の力を借りました。(アップ後に翻訳は微修正する可能性があります)

原文中にはソースを示すハイパーリンクがたくさん張られていますがこの翻訳文には反映させていませんので原文を参照してください。

ツイッターで日本語字幕版の動画を拡散しているアカウントもありました。

‘Why are we tempting nuclear annihilation?’ Watch Max Blumenthal address UN Security Council

なぜ米国は核による全滅を誘導しようとするのか?マックス・ブルメンタールの国連安全保障理事会での演説を見る

 https://thegrayzone.com/2023/06/29/nuclear-annihilation-max-blumenthal-security-council/

The Grayzone『ザ・グレイゾーン』のマックス・ブルメンタールは、国連安全保障理事会で、ロシアとの紛争をエスカレートさせたウクライナへの米国の軍事援助の役割と、キエフの代理戦争に対するワシントンの支援の背後にある本当の動機について演説した。

このプレゼンテーションの準備を手伝ってくれたワイアット・リード、アレックス・ルービンシュタイン、アーニャ・パランピルに感謝する。ワイアットは、2022年10月にドネツクで彼が泊まっていたホテルがウクライナ軍の米国製榴弾砲の標的になったジャーナリストとして、このテーマについて直接体験している。彼は100メートル離れたところで攻撃を受け、瀕死の重傷を負った。

私の友人である公民権活動家のランディ・クレディコも今日、私とここにいる。彼は最近ドネツクに滞在し、ウクライナ軍による民間人を標的とした定期的なハイマース(訳者注:米国製の高機動ロケット砲システム)攻撃を目撃することができた。

私は、20年以上にわたって複数の大陸で政治と紛争を取材してきたジャーナリストとしてだけでなく、自国政府に引きずられ、同胞の福祉を犠牲にして地域と国際の安定を脅かす代理戦争に資金を提供することになったアメリカの一市民としてここにいる。

6月28日、アメリカでまたしても、今回はモンタナ川で発生した有毒な列車脱線事故(それはこの国の慢性的なインフラの資金不足とそれが我々の健康にもたらす脅威をさらに明らかにした)に緊急作業員たちが処理にあたっている間に、国防総省は、ウクライナに5億ドル相当の軍事援助を追加する計画を発表した。

これはウクライナ軍が自慢の反攻作戦を開始してから3週間目に入ったところで出てきた動きだ。この反抗作戦については、CNNは「期待に応えられていない」とし、ヴォロディミル・ゼレンスキーでさえ 「思ったよりも進行が遅い」と述べている。

ウクライナ軍がロシアの主要防衛線を突破できなかったため、CNNは6月12日までに、キエフに送られた米国製の装甲車16台を「失った」と報じた。

それで国防総省は何をしたのか?ウクライナの浪費された軍備を交換するために、私のような平均的な米国の納税者にさらに3億2500万ドルを請求してきたのだ。この件に関してアメリカ国民の意見を聞く試みはまったくなく、大多数のアメリカ人はこのやり取りが行われたことすら知らなかっただろう。

今述べたアメリカの政策とは、自国の国内インフラが目の前で崩壊する一方で、政府が外国の核保有国との代理戦争に無制限の資金提供を優先させるというもので、ウクライナ紛争の核心にある不穏な動きを露呈している。つまり、欧米のエリートが、一般市民が苦労して稼いだ富を奪い取り、西側が支援する団体「トランスペアレンシー・インターナショナル」でさえ「ヨーロッパで最も腐敗している」と評価する外国政府(訳者注:ウクライナのこと)の財源に注ぎ込むことを可能にする、国際的なねずみ講的詐欺である。

アメリカ政府は、ウクライナへの資金提供について公式な監査を行っていない。アメリカ国民は、自分たちの税金がどこに消えたのか知らない。

そこで今週、『グレーゾーン』は、2022年と2023会計年度を通じてウクライナに配分された米国税に関する独立監査を発表した。我々の調査は、元軍事情報将校であり、アフガニスタンとイラクにおける米国の戦争の退役軍人であるヘザー・カイザーが主導した。

その中で我々は、米国社会保障庁からキエフ政府への448万ドルの支払いを発見した。

また、ウクライナの国家債務返済のために、米国国際開発庁から45億ドル相当の支払いがあったことがわかった。その債権の多くは世界的な投資会社「ブラックロック」が所有している。

これだけでも、アメリカ国民の10人に4人が400ドルの緊急医療費を支払う余裕もない時代に、国民全員から30ドルも巻き上げられていることになる。

さらに、トロントのテレビ局、ポーランドの親NATOシンクタンク、そして信じられないかもしれないが、ケニアの地方農家の予算が、ウクライナに充てられた税金で水増しされているのを発見した。

ジョージア共和国の企業を含む非公開企業への数千万ドル、キエフの個人起業家への100万ドルの支払いも見つかった。

我々の監査はまた、国防総省が「アトランティック・ダイビング・サプライ」という会社と450万ドルの契約を結び、ウクライナに不特定の爆発物を提供していたことも明らかにした。この会社は以前、上院軍事委員会のトム・ティリス委員長が 「詐欺の歴史」があるとして非難した、悪名高い腐敗企業である。

しかし、議会はまたしても、このような疑わしい支払いや巨額の武器取引が適切に追跡されていることを確認できていない。

実際、ウクライナに送られた軍事援助や人道援助の多くは消えてしまった。昨年、『CBSニュース』はウクライナの親ゼレンスキー派NPOのディレクターの話を引用し、ウクライナの前線に届いている援助はわずか30%程度だと報告した。

資金や物資の横領は、少なくとも軍用兵器の不正な移転・販売がもたらす潜在的な結果と同じくらい厄介だ。昨年6月、国際刑事警察機構(インターポール)のトップは、ウクライナへの武器の大量移送は、「ヨーロッパとそれ以外の地域への武器の流入が予想される」ことを意味し、「犯罪者たちは今こうしている間にも、これらの武器に注目している」と警告した。

今年5月、ウクライナ政府から支給された装備で身を固めた反クレムリン派のロシア人ネオナチ集団が、アメリカ製のハンヴィー(高機動多目的装輪車)を使ってロシア領内でテロ攻撃を行ったとして、西側の政治家たちから称賛された。いわゆる 「ロシア義勇軍 」と呼ばれるこの集団は、自らを 「ホワイト・キング」と称する男が率いており、アドルフ・ヒトラーを公然と敬愛する者も多数含まれているが、ロシア軍に対するこの民兵集団を西側諸国が武器化していることについて、議会から何の反発も出ていない。

バイデン政権は、送られた兵器についてはしっかり管理していると約束しているが、昨年12月にリークされた国務省の公電は、「ウクライナ軍とロシア軍の間の動きと活発な戦闘は、標準的な検証手段が時には実行不可能か不可能な環境を作り出している」と認めている。

バイデン政権は、ウクライナに輸送している兵器を追跡できないことを知っているだけでなく、世界最大の核保有国に対して代理戦争をエスカレートさせていることも知っているし、ウクライナにそれなりの対応をするようあえてけしかけているのだ。

政権がそういう認識であることは明白だ。2014年、バラク・オバマ大統領がキエフに攻撃用武器を送るという要求を拒否したのは、『ウォール・ストリート・ジャーナル』紙が言うように、「ウクライナを武装させれば、モスクワを刺激してさらにエスカレートし、ワシントンを代理戦争に引きずり込むことになりかねないという長年の懸念」があったからだ。

2017年に大統領に就任したドナルド・トランプは、オバマの政策に一線を画そうとしたが、レイセオンのジャベリン・ミサイルをウクライナ軍に送ることを拒否したことで、ワシントンの記者団や民主党からすぐにロシアの操り人形の烙印を押された。トランプがジャベリンの送付を渋ったことは、弾劾の根拠の一部とされた。驚きではなかったが、トランプは譲歩した。

米国製の攻撃兵器がドンバスの最前線に到達し始めると、西側諸国はミンスク合意を悪用して、ドイツのアンゲラ・メルケル元首相が言ったように、ウクライナに武装する「時間を与える」ことにした。

2022年1月、米国はウクライナへの2億ドルの武器供与を発表した。2月18日までに、欧州安全保障協力機構(OSCE)のオブザーバーは、停戦違反が倍増していることを報告した。OSCEの地図によると、ドネツクとルガンスクの親ロシア分離主義者側が標的となった場所が圧倒的に多い。その5日後、ロシアはウクライナに侵攻した。

それ以来、アメリカとその同盟国は機会あるごとにエスカレーションの階段を駆け上がってきた。

「エスカレートさせる武器だからということで1月に送ることができなかった武器は2月には送ることができるようになった」と、ウクライナ側との会合を終えた国務省職員は言った。「そして2月には送れなかったものが4月にはできてしまう。これがパターン化している。スティンガーをはじめとして、どうしようもない!」と、彼らは肩に装着するミサイルのことを指して言った。

ジョー・バイデン大統領自身、2022年3月にこう語っている。「攻撃的な装備を送り込み、飛行機や戦車を保有するという考えは......ごまかしはきかない。どう呼んだって、それは第三次世界大戦という意味だ」と。

アメリカからハイマースシステムを受け取ってからウクライナ軍が重要インフラを標的にし始めるまで、わずか2カ月しかかからなかった。ドニプロ川に架かるアントノフスキー橋を攻撃するためにハイマースを使用し、その2カ月後には「ロシアの横断を阻止するためにドニエプル川の増水が可能かどうかを確認する」ためにカホフカ・ダムを試験攻撃した、と『ワシントン・ポスト』紙は報じている。

3週間前、カホフカ・ダムが破壊され、大規模な洪水と地元水源の汚染を引き起こし、大きな環境破壊を引き起こした。ウクライナはもちろん、この攻撃をロシアのせいだと非難しているが、何の証拠も示していない。

またこの頃、ウクライナはロシアがザポリツィア原発で挑発行為を計画していると、根拠のない非難をした。これが引き金となり、リンジー・グラハム上院議員とリチャード・ブルメンタール上院議員(私とは無関係)は、このような事件が起きた場合、NATOがウクライナに直接介入し、ロシアを攻撃することを求める決議案を提出した。

ブルメンタールとグラハムによるこの動きは、シリアで設定されたレッドラインと同様、アメリカの軍事行動を開始するための事実上のレッドラインを確立した。元米外交官がジャーナリストのチャールズ・グラスに語ったように、「偽旗への公然の招待状」であった。

ドゥーマ(訳者注:シリアが化学兵器を使ったとされる疑惑で米国がミサイル攻撃を正当化した)の手口が、今度はザポリツィアで見られるのだろうか?

アメリカはなぜこんなことをするのか?なぜウクライナに高度な兵器を溢れんばかりに送り続け、交渉をことごとく妨害することで、核による全滅を誘導しようとするのか?

私たちは、ディック・ダービン上院議員のような人々から、ウクライナは「文字通り、自由と民主主義そのものを守る戦いの中にある」のだから、バイデン大統領が言ったように、「必要なだけ」武器を供給しなければならないと言われてきた。ウクライナへの軍事援助に反対する者は、この論理によれば、民主主義の防衛に反対しているということになる。

では、ヴォロディミル・ゼレンスキーはどうなのか。野党を禁止し、正当な野党のメディアを違法化し、野党のトップを投獄し、彼の部下たちを一斉検挙し、ロシア正教会を家宅捜索し、聖職者たちを逮捕したといった決定のどこに民主主義があるのか?

ウクライナ政府が、アメリカ市民であるゴンザロ・リラを、戦争に関する公式見解に疑問を呈したとして投獄したことのどこに民主主義があるのか?

戒厳令が発令されたという理由で2024年の選挙を停止するというゼレンスキーの最近の決定のどこに民主主義があるのだろうか?最近はウクライナに民主主義を見つけることは、突然いなくなった軍最高司令官、ヴァレリー・ザルジニーを見つけるよりも難しいようだ。

グラハム上院議員は、ウクライナに何十億ドルもの武器を供給する根拠として、もっと厳しい、そして的を得ている根拠を提示している。最近、キエフでゼレンスキーと面会した際に同議員がこう自慢した。「ロシア人はどんどん死んでいる。我々がこんなに上手に使った金はなかった。」

グラハムは、われわれアメリカは、この戦争を「最後のウクライナ人まで」戦わなければならないとも言っている。公式の死傷者数は厳重に機密扱いにされているが、ウクライナではグラハム議員の残酷な妄想が実現しつつあることを懸念しなければいけない。

今月、ウクライナの兵士が『バイス・ニュース』に訴えた。ゼレンスキーの「計画が何なのかはわからないが、自国民の絶滅のようだ。戦闘可能な労働年齢人口の全滅作戦のような。まさしくそれだ」と。

実際、ウクライナの兵隊墓地は、ロッキード・マーチン、レイセオンなど、第二次世界大戦後2番目に高い軍事費から利益を得ている軍需産業の幹部たちのバージニア州北部の豪邸街やビーチフロントの邸宅群と同じくらい急速に拡大している。

この者たちがウクライナ代理戦争の真の勝者である。平均的なウクライナ人でもアメリカ人でもない。ロシア人でも西ヨーロッパ人でもない。

その勝者とは、オバマ政権とバイデン政権の間に「ウェストエグゼク・アドバイザーズ」というコンサルティング会社を立ち上げ、諜報機関や兵器産業に有利な政府契約を獲得したトニー・ブリンケン国務長官のような人々である。ブリンケンの「ウェストエグゼク・アドバイザーズ」の元パートナーには、国家情報長官アヴリル・ヘインズ、CIA副長官デビッド・コーエン、元ホワイトハウス報道官ジェン・サキ、そしてバイデンの国家安全保障チームの現・元メンバー12人近くが含まれている。

ロイド・オースティン国防長官は、レイセオンの元役員であり、将来もまた役員になる可能性がある。また、ウェストエグゼクと協力関係にあり、ブリンケンが顧問を務める「パインアイランド・キャピタル投資会社」の元パートナーでもある。

一方、現在の米国国連大使であるリンダ・トーマス・グリーンフィールドは、オルブライト・ストーンブリッジ・グループ(自称 "商業外交会社")の上級顧問として名を連ねている。この会社は故マデレーン・オルブライトが設立したもので、彼女はアメリカの制裁体制下で50万人のイラクの子供たちを死なせたことは "それだけの価値がある "と言った悪名高い発言で知られる。

つまり、ウクライナの中年男性たちが憲兵によって路上から拉致され、最前線に送られる一方で、この代理戦争の資金的・政治的につながりのある立役者たちは、バイデン政権での任期が終われば、回転ドアをくぐって想像を絶する利益を得ようと画策しているのだ。

彼らにとって、この領土問題を交渉で解決することは、ウクライナに対する1500億ドル近いアメリカの援助という「金のなる木」の終焉を意味する。

国連安全保障理事会の常任理事国であるアメリカ合衆国が、「必要な限り」代理戦争を続けようとする政府(訳者注:バイデン政権)の支配下に入ったとき、バイデンが言ったように「ルーブルを瓦礫に変える」一方的な強制措置(訳者注:経済制裁のこと)を外交であると取り違えた政府に支配されているとき、その指導者が利益を追求するために交渉を破壊する一方で、自国民が何に対して金を払わされているのかをきちんと知らせようとしないとき、地政学上のライバルを打ち負かすために、仲間であるはずのウクライナ人の息子たちや兄弟たちを殺戮の場に押し出すとき、ゼレンスキーも米国議会の議員も、国連憲章第51条の精神に反するロシアへの先制攻撃を求めているとき、安全保障理事会は憲章を実施するための行動をとらなければならない。

同憲章の第6章第33条から第38条は、安全保障理事会は、特に国際安全保障を脅かすような紛争が発生した場合、その平和的解決を保証するためにその権限を行使しなければならないと明言している。それはロシアとウクライナだけに適用されるべきではない。安全保障理事会には、米国と、NATOという違法な軍事組織を厳しく監視し、牽制する義務がある。

ありがとうございました。

(翻訳以上)