Wednesday, September 16, 2026

9月8日、ナポリターノ判事はモスクワでセルゲイ・ラブロフ外相にインタビューした【日本語訳】 Judge Napolitano Interviews Minister of Foreign Affairs Sergey Lavrov

このサイトでもよく紹介しているアンドリュー・ナポリターノ判事のYouTubeチャンネルに、ロシアを訪問したばかりのナポリターノ判事がセルゲイ・ラブロフ外相にインタビューした動画が、2本に分けてアップされました。これは、ロシア生まれの米国人政治学者ドミートリ・サイムズ氏が司会・制作にかかわる、ロシア第一チャンネルの番組「ボリシャーヤ・イグラー」(英語名 The Great Game)によるラブロフ外相へのインタビューです。ナポリターノ判事はサイムズ氏とともに聞き手を務めています。インタビューは9月8日にモスクワで行われ、ナポリターノ判事のYouTubeチャンネルには9月13日にアップされました。AI訳に乗松聡子が手を入れました。太字は乗松による強調です。訳中のハイパーリンクも乗松が参考のために付したものです。

西側メディアではほとんど伝えられないロシア側の見解やウクライナ戦争の現状認識、今後の展望が明確に語られています。随所に表れているのは、ロシアへの挑発を続け、和平を阻んでいる英国、フランス、ドイツなどの欧州諸国に対する深い失望です。なかでも、メルツ首相の下で再び軍事大国化しようとし、ナチズムを想起させる方向へ進むドイツに強い懸念を示しています。第二次世界大戦で2700万人もの犠牲を払い、ナチス・ドイツを打倒したロシアにとって、それは当然の懸念ともいえるでしょう。

その一方で、米国が戦争当事国であるという矛盾を抱えながらも、ロシアとの和平を目指すトランプ政権との交渉を、ロシア側がまだ諦めていない様子がうかがえる点も興味深いです。米国独立戦争の時代にまでさかのぼり、ロシアと米国が協力してきた歴史を語るくだりからは、2025年8月のアンカレッジ会談で、妥協してでも米国の提案に合意したロシア側がいかに大きな期待を寄せていたか、そして、その後その期待が裏切られたことへの失望がいかに深かったかも垣間見えます。

ロシアの特別軍事作戦が始まって以来、西側諸国とそのメディアは「ロシア側の言い分を一切聞かない」と決めこみ、西側の一般市民はロシアの情報にアクセスすることさえ非常に難しくなりました。そんな中ロシアは、米国のインフルエンサーや、米国の主要メディアから排除されたジャーナリストたちに対して発信し、少しでも西側にその立場や声が届くような努力もしています。このインタビューはそのような努力の一環と見ていいと思います。私にはとても勉強になる内容でした。

以下、動画二つを埋め込み、日本語訳をパート1,2通して紹介します。@PeacePhilosophy 


ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相へのインタビュー パート1

ドミートリ・サイムズ:

大臣、この度は「ザ・グレート・ゲーム」にご参加いただき、誠にありがとうございます。お時間を割いていただき、感謝申し上げます。ここで、私の同僚であるアンドリュー・ナポリターノ判事をご紹介いたします。彼は著名なアメリカのテレビ司会者であり、「ザ・グレート・ゲーム」にも定期的に出演されています。

セルゲイ・ラブロフ外相:

ご招待いただきありがとうございます。ナポリターノ判事、そして皆様とご一緒できて大変光栄です。ありがとうございました。

アンドリュー・ナポリターノ判事:

大臣、どうもありがとうございます。本日、このレセプション会場にお招きいただき、大変光栄に存じます。また、お話する機会をいただき、感謝申し上げます。先日、トランプ大統領の特使を務めるウィトコフ氏とクシュナー氏がモスクワを訪問し、ハイレベル協議を行いました。この重要な外交訪問において、両氏はロシア大統領と公式会談を行い、二国間の主要な問題について協議しました。この訪問の結果について、何かご意見はございますか?

セルゲイ・ラブロフ外相:

これらの交渉の始まりのかなり大きな部分がテレビで放送されました。大統領の言葉、ウィトコフ氏とクシュナー氏の返答。その後、この会話に参加した大統領補佐官のユーリー・ウシャコフ氏が詳細なコメントを提供しました。そして、我々の外交の伝統では、国民と共有することを決定した内容に限定しています。私は、彼らがモスクワに何を持ち込み、ウィトコフ氏とクシュナー氏がキエフに何を持ち帰ったのかについて、今まさに憶測を始めている人たちのようになりたくありません。ヴェルホヴナ・ラーダ(ウクライナ議会)のある女性議員は、彼らが持ち込んだものはウクライナがすでに拒否したものよりもはるかに悪いとすでに述べており、憶測が飛び交っています。

ですから、アメリカ側も今後の外交的措置については何も述べていません。しかし、フランス側はエリゼ宮殿(フランス政府)から、我々がそこにいたことをすでに表明しています。アメリカ側は、国家院(ロシアの下院)選挙後には、米国も参加する直接交渉が必ず再開されると述べています。私はこの件すべてをエリゼ宮殿の良心に委ねます。特に、エリゼ宮殿は電話やその他の会話の内容に関して、必ずしも倫理的とは言えない行動で何度も悪名高いからです。

しかし、議論された内容の本質は、そしてこれはトランプ大統領がホワイトハウスに戻ってすぐにウクライナ問題に関して示した立場にかかっていると断言できます。具体的には、まず第一に、ウクライナを北大西洋条約機構に引き込もうとすることなど忘れるべきだと述べました。プーチン大統領がこの問題はとっくに解決済みであり、かき立てる必要はないと明言しました。そして、米国の立場の第二の要素は、(ロシアが優勢である)戦場の現実を認識することです。さらに、これは領土の問題ではないことを強調しておきたいと思います。

ロシアはすでに領土を奪取しているから今の時点で停戦すべきと言う人がいますが、これは領土の問題ではないのです。現実について語る時、私たちは2014年2月のクーデター直後に「非人間」「怪物」「テロリスト」と呼ばれた人々(ドンバスのロシア系の人々のこと)について話しているのです。彼らは違法なクーデターの結果を拒否したため、国際人道法で断固として禁じられている軍隊、戦闘機、砲兵部隊使用の標的となり、人間として扱われませんでした。

そして、間もなく大統領に選出されたポロシェンコ氏は2014年に「我々の子供たち、真のウクライナ人の子供たちは清潔な学校や幼稚園に通うが、ドンバスに住む人々の子供たちは地下室で腐るだろう」と述べました。ヨーロッパ人は、領土をナチスに引き渡すためだけに1991年の国境を復活させようと呼びかけながら、どうやってこれらの(ドンバスのロシア系の)人々を政権の支配下に戻そうとしているのでしょうか?それとも、これらの人々が、自分たちの自由、文化、そしてロシア世界への帰属意識を守ろうとすることについて罰したいのでしょうか?

私はこの件について繰り返し述べてきましたが、トランプ大統領とそのチームが認識し、今後も認識し続けるであろう戦場の現実は、アラスカ(2025年8月15日アラスカ会談時)でも同様であったと申し上げたいと思います。これらの戦地の現実は、クリミア、ドネツク人民共和国、ルハンスク人民共和国、そしてもちろんザポリージャ州とヘルソン州で行われた住民投票で表明された人々の意見と結びついています。そして、アメリカ側が我々とのあらゆる接触、特にプーチン大統領との接触において、これらの現実を前提としているという事実は、当然ながら我々から肯定的な反応を引き出し、彼らとの対話を継続する意欲を生み出します。彼らはこれらの基本的な事柄を認識し、それらに関して協力しようとしており、私はこれが支持に値すると信じています。

アンドリュー・ナポリターノ判事:

あなたは今アラスカの会合について言及しました。多くの観察者は、ロシア当局者がアメリカと確固たる合意に達したと本気で考えていたと強く信じています。しかし、思いがけず、最終的には全くそうではなかったことが判明しました。そして、トランプ大統領が(イランとの)覚書に署名したにもかかわらず、わずか数時間後にそれを破ったことは周知の事実です。これは非常に重大な一連の出来事です。では、なぜロシアは米国を信頼しているのでしょうか?

セルゲイ・ラブロフ外相:

しかし、ここで明確にして誤解をなくしたいのです。私たちはこの状況について繰り返しコメントしてきました。アラスカについては私たちの提案ではありませんでした。これはウィトコフ氏がアンカレッジの数日前に持ち込んだ提案で、プーチン大統領はすでにこの状況についてコメントしています。要するに、彼の評価によれば、そこには複雑な側面があり、モスクワでこの提案が提示されたときには(プーチン大統領は)同意しなかったということです。しかし、アラスカに到着したとき、彼は「考えてみた。どんな合意にも何らかの妥協の要素が含まれていると私は信じている。私はこれを受け入れる責任を負い、私の国民は理解してくれるだろう」と言いました。

これは米国からの提案で、変更されていませんでした。もちろん、詳細はない提案でしたが、解決の原則はそこに示されていました。プーチン大統領はこれらの原則を一切変更せずに受け入れました。ですから、マルコ・ルビオ国務長官が6月のどこかで、「米国はウクライナを明確に支持しているため仲介者にはなれない」と言ったとき、私は少し驚きました。ところで、その後どうなったかというと、プーチン大統領とトランプ大統領がアンカレッジで行った記者会見について、記憶を呼び覚ますために詳しく読んでおくと、「素晴らしい成果」という言葉がそこで使われました。「理解」や「合意」といった言葉も使われました。トランプ大統領は、アンカレッジでの成果を「素晴らしい大きな前進」と表現しました。さらに、解決すべき問題はほぼ一つしか残っていないとも述べました。

つまり、我々は大きな突破口を開いたのです。これはほぼ原文通りです。今は全部は思い出せませんが。そしてもちろん、ヨーロッパの米国同盟国は恐怖に震えました。ご記憶の通り、彼らはワシントンに駆けつけ、アメリカ政権の指導部と交渉を始め、それから数ヶ月が経ちました。 6月にエヴィアンで開催されたG7サミットで、マクロン氏は誇らしげにこう述べた。「我々はアンカレッジを葬り去った。アメリカは今や我々と共にある。トランプも今や我々と共にある。我々は再び皆ロシアに反対している。」状況はこうだった。アンカレッジからエヴィアンでのG7サミット、そしてアンカラでのNATOサミットまでの間に何が起こったのか?我々は皆、報道機関が報じ、政治家が発表した出来事を追ってきた。しかし、ヨーロッパが、プーチン大統領に何の変更もなく受け入れられた提案を維持するのを阻止するという主要な任務を隠さなかったという事実は明らかだ。これはまさにヨーロッパが望んでいたことであることは明白だ。

ドミートリ・サイムズ:

このプロセスに関わっているアメリカの交渉担当者たちを詳しく見てみると、彼らはこの状況において真に効果的な和平仲介者であろうと真剣に願う、非常に真剣で献身的な人々の集まりであるように思えます。プーチン大統領自身もこのことについて語っています。私はジャレッド・クシュナー氏を少し知っています。彼とは非常に密接なかかわりをしたことがあります。特別検察官のミュラー氏は、かつてクシュナー氏と私それぞれに、私たちの関係や、ロシアの干渉が私たちを通じてどのように行われたとされるかについて尋問しました。私たちの証言は完全に一致しました。この経験から、クシュナー氏は道徳的に信頼できる人物だと確信していました。しかし、彼らをまともな人物だと考えているからこそ、彼らがアメリカ合衆国を代表していることを認識すべきだと私は思います。マルコ・ルビオ氏が述べたように、アメリカ合衆国はウクライナを支援しており、非常に積極的に支援しています。仲介者としてのアメリカ合衆国の役割と、ウクライナの支援者としてのアメリカ合衆国の役割は、どのように両立できるのでしょうか。

セルゲイ・ラブロフ外相:

まず、私はすでにトランプ政権に、西側諸国の中でも決定的な違いがあることを指摘しました。それは、現実を認識していること、そしてロシア連邦の正当な安全保障上の利益の観点から現実を認識していることです。彼らはウクライナのNATO加入など取引の一部とさえ考えていないことを念頭に置いています。また、何世紀にもわたってウクライナのこの地に住み、状況の力によってこの土地とともにウクライナ・ソビエト社会主義共和国の一部となった人々の望みの観点から現実を認識していることも認識しています。

そして、この認識は非常に価値があります。今話している人々が明白なことを受け入れているのであれば、明白なことを受け入れたくない他の西側諸国がどうなっているかは明らかです。私はドナルド・トランプ大統領の一期目のときにジャレッド・クシュナーと少し知り合いました。米国大統領がホワイトハウスで私を迎えてくれたとき、私たちは少し言葉を交わしました。彼はとても感じが良く、信頼できる人物という印象を受けました。私はトランプ大統領の2期目にスティーブ・ウィトコフ氏と話をしたことがあります。彼もまた、明らかに成果を上げたいと考えています。

同時に、イラン、パレスチナ、そして中東情勢全般において、それぞれ異なる分野で交渉にあたるウィトコフ氏とジャレッド・クシュナー氏が、ロシアとアメリカの関係全体を統括しているわけではないことは明らかです。そして、あなたが正しく指摘されたように、国務省は、大統領から受けた指示をロシア外務省が実行しているのと同様に、交渉プロセスからある程度距離を置いています。しかし、交渉に直接参加しているのは、我々の理解では、この2人の交渉担当者が政権内で占めている地位や立場を反映している人々です。

しかし、同時に、ロシアとアメリカの関係に関するあらゆる問題やその他の事柄を決定する人々は、交渉の成功に関心があるかどうかに関わらず、当然ながら自分たちの判断で行動します。しかし、例えば、議会と政権、アメリカ財務省、その他の関係機関は、バイデン氏、あるいはバイデン政権時代の議会が導入したすべての制裁を無条件で延長し続けています。トランプ大統領は、これはバイデン氏の戦争だ、私が大統領に選ばれていたらこんなことは起こらなかっただろう、と言います。しかし、ここで実際に何が起こっているのかを少し考慮する必要があります。

ジョー・バイデン氏によって、あるいはジョー・バイデン政権下で導入された制裁の延長に加えて、現政権はルクオイル(ロシアの民間石油会社)とロスネフチ(ロシアの国営石油会社)に対して新たな制裁をすでに課しています。そして、アメリカ財務長官のベッセント氏は、制裁強化の必要性についてかなり率直に語っています。一般的に、世界のエネルギー市場はアメリカの管理下に置かれる必要があると思っているようです。これらすべては、交渉中に伝えられている感情とはほとんど一致しません。しかし、それが現実なのでしょう。

そしていつものように、現実は一面的なものではありません。多面的なものです。 MAGA(Make America Great Again、アメリカを再び偉大に、アメリカ第一、アメリカの国益第一)というスローガンが今もなお存在し、ロシアとの関係にも表れているという事実。これは紛れもない事実です。アメリカ人は経済的利益を得ようとしています。確かに、経済的利益を得るためには、他の国々に対して行っているようなやり方でロシアを扱うことはできないと彼らは認識しています。そして、このことが最終的にどうなるかは、私にはまだ分かりません。

ドミートリ・サイムズ:

ヨーロッパ諸国について話すとき、モスクワでの交渉で得られた好調な勢いを彼らがどう活用するのかという疑問が生じます。ご存知のとおり、クシュナー氏とウィトコフ氏はキエフに到着するとすぐにゼレンスキー大統領と会談し、その後、イギリス、フランス、ドイツからのヨーロッパ代表が参加する会合が開かれました。

セルゲイ・ラブロフ外相:

私たちはそれを「茂みの中のピアノ」(偶然そこにあったように見せかけて、実はあらかじめ周到に準備されていたもの」という言い回し)と呼んでいます。

ドミートリ・サイムズ:

まさにその通りです。そして、彼らはきっとこのピアノを茂みから引きずり出して、ますます積極的かつ敵対的な役割を担わせようとしているのでしょう。ヨーロッパの立場をどう見ていますか?そして、アンカレッジの後と同じように、彼らが我々の努力をすべて台無しにしてしまうのではないかと恐れていませんか?

セルゲイ・ラブロフ外相:

アンカレッジは最初の事例ではありませんでした。ウクライナ情勢におけるヨーロッパの役割は、別途研究する価値があります。実際、過去500年間の地球の発展におけるヨーロッパの役割も同様です。この500年もの間、ヨーロッパ人は他者を犠牲にして生きてきました。これには奴隷制、植民地主義、搾取などが含まれます。しかし、2つの世界大戦がヨーロッパで、そしてヨーロッパ諸国の政策に関連して始まったことを忘れてはなりません。ナポレオン戦争も思い出すことができます。好戦的な国家の指導者が、ヒトラーと同じように、ヨーロッパ全体を自らの旗の下に集めてロシアを攻撃しました。そのため、ヨーロッパは世界史において地獄の産物と見なされることが多いのです。

ところで、ヨーロッパからの入植者がアメリカ大陸に航海したとき、私たちはこのことを人々に思い出させることはめったにありませんが、忘れてはなりません。エカチェリーナ2世がイギリスの植民地支配者に対する北米の入植者の支援において決定的な役割を果たした(米国独立戦争において英国への協力を拒んだ)という事実、そして私たちの関係のこうしたルーツを見れば、それを忘れてはならないことがわかるでしょう。

もちろん、冷戦の時期もありました。これらの関係は、大祖国戦争、第二次世界大戦の時期を含め、さまざまな形で発展しました。同盟については、最近のスピーチで繰り返し話していますが、最終的には非常に大きな役割を果たしました。多くの研究者が、(米国などによる)レンドリース援助と北極海輸送船団が、ソ連が戦争の最初の1年間を耐え抜く能力に非常に大きな貢献をしたと指摘しています。その後、一時停止、待機期間がありました。現在、一部の歴史家は、この待機期間を、同盟国であるイギリスとアメリカが、どちらが有利になるか、どちらが傾くかを理解しようとした試みだと解釈しています。

しかし、それでも、第二戦線の開設は、おそらく決定的な役割を果たさなかったかもしれませんが、それは戦友の絆でした。エルベ川での会合(第二次世界大戦末期の1945年4月25日、ドイツ東部を進撃していたソ連軍と米軍がエルベ川沿岸で合流した)の様子を実際のニュース映像で見るだけで、武器を手にナチ​​ズムと戦った人々のレベルでは、それが非常に誠実なものであったことが理解できる。そして、この精神、いわばエルベの精神は、アンカレッジの精神を不朽のものとするつもりはないが、アンカレッジではそれは精神ではなく、理解であった。

しかし、ヨーロッパに戻ると、ヨーロッパ人は建設的な役割を果たす機会が非常に多かった。彼らは今、「我々抜きでは交渉はしない」「我々は交渉のテーブルに着かなければならない」などと言っている。彼らは2013年12月、マイダンが沸騰し始めたときから交渉のテーブルに着いていた。ちなみに、ワシントンにいる一部のヨーロッパ人も、ビクトリア・ヌーランドが自ら過激派の訓練を監督し、彼らにクッキーかパイを配っていた。どちらだったかさえ覚えていない。

そして、フランス、ドイツ、ポーランドに代表されるヨーロッパ諸国が、ヤヌコビッチ大統領と権力掌握に必死な野党との間で交渉を開始しました。ご存知の通り、2014年2月21日、ヤヌコビッチ大統領と野党の間で合意が締結されました。この合意は実質的に欧州連合によって保証されており、早期選挙の実施に関するものでした。これはヤヌコビッチ大統領の譲歩でした。早期選挙までの期間、彼は行政権限のほとんどを放棄し、国は国民統一政府、つまり暫定的な国民統一政府によって統治されることになっていました。

翌朝、クーデターが発生しました。過激派は、ドイツ、フランス、ポーランド、そしてその他出席していた国々の署名をすべて無視し、行政庁舎を占拠し、西側諸国はそれをすべて受け入れました。そしてプーチン大統領が最近このことをよく思い出し、合意が署名の準備が整った時、オバマ大統領が彼に電話をかけ、「ウラジーミル、彼らは合意に達した。君がそこにあるものすべてを気に入っているわけではないことは理解している。ヤヌコビッチに署名を思いとどまらせないでくれ」と言った。するとプーチンは、「彼は独立した、普遍的に認められた国家元首だ。彼がその立場で署名するなら、私がこの件で彼を妨げる権利などあるだろうか?」と答えた。

しかし、この署名は2014年2月21日に行われた。そして2月22日にはクーデターがあった。そしてフランス、ドイツ、イギリスの代表は、もちろん2月22日の午後に政治家の声明を読んだ。ヤヌコビッチは逃亡したが、ハリコフに行った。彼はキエフにはいない。彼はハリコフで自分の党の大会に出席していた。人々はついに正しい選択をした、とフランス、ドイツ、イギリスは述べた。欧州諸国が保証した文書のインクが乾く前に、彼らには確かに2度目のチャンスが訪れた。1年後の2015年2月、ミンスクでのマラソン交渉の後、対応する合意が調整されたのだ。当時、メルケルとオランドの署名も、プーチンとポロシェンコの署名とともにそこにあった。

しかし数年前、メルケルは引退後、同じく引退したオランドとポロシェンコの3人は、告白した、いや、告白したというより、誇らしげに宣言した。「我々は何も履行するつもりはなかった。ウクライナに武器を大量に送り込むために、必死に時間を稼ぐ必要があったのだ」。これは欧州諸国にとってまた別のチャンスだ。3度目のチャンス、他にもエピソードはあったが、これらが最も印象的だった。

3度目のヨーロッパのチャンスは2022年4月で、イスタンブールのロシア交渉団は、プーチン大統領がアンカレッジで昨年提案したのと同様に、ウクライナ側の提案を受け入れ、本格的な和平条約を締結する準備が整った原則を受け入れた。これらすべてに仮署名がなされた。大統領は、この話題について対話相手と話し合う際にカメラの前でさえ、これを何度も証明してきた。しかしボリス・ジョンソンは最近(この合意を妨害したことを否定し)、「私は誰にも何も禁じていない。ただ、戦いたいならもちろん我々は君たちと共にいると言っただけだ。」と言った。それは嘘だ。我々は彼が何を言ったか知っている。そして今もヴェルホヴナ・ラダ(ウクライナ議会)の人民奉仕派を率いるダヴィド・アラハミアは、そうではないと認めた。

ボリス・ジョンソンは彼らに「何も署名するな」と言った。まあ、ヨーロッパにはおそらくトランプ政権と同じように賢明で責任ある立場を取る機会がその後もあっただろう。彼らが言うところの、この土地に住む人々やその人々の意見を含めた、現場の現状の真実を見るべきだ。いや、彼らはロシアが戦略的敗北を喫しなければならないと宣言するたびに、降りるのが非常に困難なフェンスを登り続けている。つい先日、カヤ・カラスか、あるいは欧州連合の他のコメンテーターが、我々は再び続ける必要があると述べた。もう少し付け加える必要がある。ウクライナは今や全員を打ち負かし、我々はウクライナの領土保全を侵害するものを決して認めない。この人たちにとってはそうだ。

そして、なぜこんなことになるのか?彼らが主張するように、ウクライナは「ヨーロッパの価値観を守っている」からだ。しかし、これは告白であり、自己暴露だ。もしそうなら、そして彼らはこれを1年以上も言い続けているのだが、彼らにとっての「ヨーロッパの価値観」とは、真のナチズム、人種差別、国籍に基づく差別、宗教に基づく差別の露骨な表れを意味するのだ。

国連憲章は、性別、人種、言語、宗教に関係なく、すべての人が人権を尊重する義務があると定めているが、(ウクライナで)ロシア語が禁止されている。イスラエルではロシア語は禁止されていない。アラビア語もペルシア語も禁止されていない。イランではヘブライ語は禁止されていない。イランではシナゴーグは機能しており、ユダヤ人コミュニティも存在する。しかし、ウクライナは、ただの言語ではなく、国連の公用語のひとつ(ロシア語)を禁止している唯一の国である。

そのため、ウクライナの商店ではロシア語を話す客へのサービスを拒否している。学校では、こうした言語の使用をすべて禁止している。ロシア語の授業はすべて禁止され、ウクライナ人が所有するものも含め、ロシア語のメディアもすべて禁止された。そして、正統派ウクライナ正教会も法的に禁止された。そして、これらは「ヨーロッパの価値観」らしい。

また、どうやら「ヨーロッパの価値観」には、テレビやソーシャルメディアで毎日大量に目にする映像も含まれているようです。それは、地域徴兵センター(TCC)が市民を家畜のように路上で捕まえ、10人の屈強な男たちが若い男を掴んで押し込み、引きずり出して軍服を着せ、機関銃を与え、最前線に放り出す様子です。つまり、これが「ヨーロッパの価値観」なのです。

ですから、ヨーロッパが「われわれも交渉に加わらなければならない」と言っても、こちらとしては、「あなた方にはこれまで何度も建設的な役割を果たす機会があったのに、そのすべてを台無しにしてきた」と言わざるを得ません。今後、ヨーロッパが再び何らかの役割を任され、信頼を取り戻したいのであれば、今度は何をしようとしているのかを、まず十分に説明しなければなりません。しかし、それは容易ではないでしょう。

(つづく)

ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相インタビュー パート2

アンドリュー・ナポリターノ判事:

外相、今日の西側に住む非常に多くの人々にとってさえ、そして真に中立的な観察者にとってはなおさら、ロシアが特別軍事作戦の過程でこの紛争に軍事的に勝利することは、完全に、そしてまったく明白になっています。そして率直に言って、それはかなり早いうちに起こることが明らかです。この現実を踏まえて、お尋ねします。今後の実際の計画はどのようなものでしょうか。この問題に対処するため、実際にはどのような戦略が立てられているのでしょうか。ロシアが軍事的勝利を収めた後、ウクライナはどうなるのでしょうか。

セルゲイ・ラブロフ外相:

これは先ほどの質問に対する私の回答の続きです。何世紀にもわたってこれらの土地で暮らしてきたロシア文化圏の人々を再び文字どおりの強制収容所に引き渡すため、1991年の国境への復帰を要求している、理性を失っているとしか言いようのない人々がいます。そうした少数の人々とは別に、時折、現実主義の兆候が見られる別の集団もあります。現在では、フィンランド大統領やイタリア首相を含む一部の人々が、緊急に停戦する必要があると語り始めていますが、この背後にも時間を稼ぎたいという願望があります。誰もがそのことを完全に理解していますし、ゼレンスキーもそれを隠そうともせず、「パトリオット・システム用のミサイルと、さらに多くの防空装備が緊急に必要だ。われわれの国家を救わなければならない」などと言っています。

しかし、彼らは皆、停止を呼びかけているものの、大多数は「いったん止めよう。しかし、我々はロシアの現在の支配地域について何も承認しない」と言っています。また一部は、「状況を直ちに凍結し、ウクライナの残存部分にワシントン条約(NATO条約のこと)第5条に相当する保証を与え、キエフの支配下に残る領域に国際安定化部隊を配備する必要がある」と言っています。われわれはすでにこれに回答しています。軍服を着た者や軍事施設はすべて、われわれにとって正当な攻撃目標となること、また、法的には加盟させないまま、実質的にNATO加盟を再現するようないかなる選択肢もあり得ないことを述べました。

しかし、最も重要なことは、1991年の国境しか認めず、今すぐ敵対行為を終わらせることを主張する人々も、キエフ政権を使ってわれわれに対して仕掛けられた戦争への対応として、われわれが特別軍事作戦を開始した後、ウクライナ南東部で実際に起きたことを承認する含みを持たせながら敵対行為の終結を主張する人々も、双方とも、現在キエフを支配している政権を存続させることを論じている点です。それは、私がすでに挙げたこの政権特有の性格、すなわちナチズムの台頭、攻撃的なロシア嫌悪、基本的人権の組織的な侵害が継続することを意味します。

具体的には、自らの言語を使う権利と、宗教を自由に選択するという基本的権利の侵害について述べています。軍事段階が何らかの形で終結した後も、こうした「欧州の価値観」がすべて固定化されることになります。彼らは選挙について話していました。すでに選挙実施を示唆していましたが、今では誰もが「いや、それは行うべきではない」と言っています。ちなみに、米国人から選挙への反対意見を聞くとすれば、そもそも奇妙なことです。米国では必ず2年ごとに選挙を行います。米国人もここでは現実主義を示していますが、欧州は、自分たちから見ても公然とロシア嫌いで、攻撃的かつ率直に言ってネオナチ的な政権を維持する決意であるように見えます。それが欧州の計画です。ロシア国民がそのような結果を受け入れる方法を見いだせるとは、私には到底思えません。

アンドリュー・ナポリターノ判事:

では、25年後に同じようなことが再び起こらないと、ロシア人が確信できるようにするにはどうすればよいのでしょうか。西ウクライナの領域に住む人々がNATOを招き入れることなく、NATOを退けられるようにするには、どうすればよいのでしょう。

セルゲイ・ラブロフ外相:

ロシアには緩衝地帯が必要だということも、多くの人が論じています。我々はウクライナそのものが緩衝地帯なのだと言っているんです。現代のウクライナがどのように形成されたのかについては、大統領も私も繰り返し述べてきました。ソ連指導部の意思によって西部地域がソ連に編入されましたが、そこには何世紀にもわたり、非常に強い民族主義思想を持つさまざまな欧州の民族の人々も暮らしていました。そこで、その急進主義を何とか弱めるため、いわばその急進主義を薄めようとして、ロシアの土地、具体的にはロシア古来の領土を、これらの新しい西部の土地に付け加えることにしたのです。それは、これらの地域を統合することによって当時直面していた政治的緊張を効果的に中和できるのではないかと考え、均衡を変化させるために意図的かつ計算の上で行われた試みでした。そして、この全体がウクライナ・ソビエト社会主義共和国と呼ばれました。

確かに、このウクライナ・ソビエト社会主義共和国はもはや現代世界には存在しませんが、それが常にかなり人工的な構築物であり、主権国家として存在したのは、最終的に地図から消えるまでのわずか数十年間にすぎなかったことを忘れてはなりません。それは一つの国家の枠内に存在し、その国家は、ソ連に暮らすすべての民族の権利を保障し、もちろん自国の安全も保障していました。

ハリネズミと震える雌ジカを組み合わせたような、この奇妙で不自然な結合体が最終的に(ウクライナとして)独立すると、根深い根本的な矛盾、具体的には西側志向の住民とウクライナ南東部に暮らすロシア語話者共同体との間の顕著な文明的分断が、ソ連崩壊の直後から驚くべき速さで表面化し、噴き出し始めました。それは、ほとんど必然的に、関係するすべての人々にとって現実の、そして持続的な悩みの種となる不安定な状況でした。

そして、これらの矛盾は、当初から欧州によって大きく増幅されました。私は2004年のマイダン(オレンジ革命)をよく覚えています。それは試みではなく、実際に起きたことです。米国人と欧州人は大統領選挙の第2回投票の結果(ヴィクトル・ヤヌコビッチが勝利)を承認せず、ウクライナ憲法裁判所に、憲法に規定されていないにもかかわらず第3回投票を実施せよとの判断を出させました。彼らは第3回投票を実施し、自分たちが必要とする人物(ヴィクトル・ユシチェンコのこと)を当選させました。その当時、投票前から欧州連合より公然と、「ウクライナ人はロシアと西側のどちらにつくのか決断する義務がある」との要求が出始めていました。ロシアとの関係を完全に断ち切ろうとしないすべての人々を欧州の価値観と対立させる、この硬直した二者択一の考え方は、残念ながら、非常に長い間、彼らの政治言説に深く根を下ろしてきました。

われわれはすでに、ここで多くのことを論じました。しかし、われわれがかつて世界政治における正当な存在として承認したウクライナは、今日では、もはや同じ資格を備えた形では存在していないという否定できない事実が残ります。それはわれわれが直視しなければならない、厳然たる客観的事実です。状況の現実は完全に変わりました。

ウクライナ・ソビエト社会主義共和国は存在しません。われわれが現在のウクライナの独立を承認したのは、1990年に採択された独立宣言に基づいています。それはウクライナ議会であるヴェルホヴナ・ラーダによって正式に採択されました。その歴史的宣言では、ウクライナ国家が非核、中立、そして厳格な非同盟国家であり、将来にわたってそうあり続けることが厳粛に宣言されました。現在、この三つの重大な誓約は、関係当事者によってことごとく無視されています。

ゼレンスキーは2022年初頭の時点で、「振り返れば、核兵器をすべて放棄したことは、われわれにとって重大で高くつく過ちだった」と公言しました。多くの政治家が、「厳密に言えばソ連時代に発展した知識と技術の両方が利用できるのだから、それを使ってこの地位に戻ってはどうか」と本気でほのめかし始めました。NATOについては、もはや話す気にさえなりません。彼らは皆、NATOと欧州連合への加盟が自分たちの安全を保障すると宣言しています。欧州連合は今や、NATOとまったく同様の軍事ブロックです。ここでは、われわれがウクライナを国際関係の独立した主体として承認することを可能にした、ウクライナ国家の宣言された基盤を示すすべての特徴が失われています。

ドミートリ・サイムズ:

欧州の言動を見ると、奇妙な印象を受けます。一方では、ロシアはあえてエスカレートしない、核兵器を使用しない、自分たちの領域への報復攻撃を恐れるだろうと言っています。他方では、ロシアが攻撃するかもしれない、おそらく攻撃するだろうと彼らが言う2029年から2030年に向けて、準備しており、欧州では非常に急速な軍事化が進んでいます。

起きているのは、数十億、数兆ドル規模の軍備計画への資金投入だけではありません。彼らは、ウクライナでいかなる和平合意が成立しようとも、それとはまったく無関係にこの軍事化を続けるという印象を与えています。この状況を見て、あなたに質問があります。彼らは本当にそれほどわれわれを恐れているのでしょうか。それとも、ロシアの脅威を口実にして軍産複合体を強化し、ロシアに対する大規模攻撃を準備しているのでしょうか。

セルゲイ・ラブロフ外相:

私は率直に言って、これらの軍国主義勢力は単に自分たちの狭い利益のために動いているのだと思います。考えてみてください。問題が蓄積し、先鋭化し、深刻化しているにもかかわらず、軍事上の必要へ向けて大規模な資金の再配分が行われています。これには、NATO諸国全体でGDPの5%に到達するという確約や、ウクライナに直ちにさらに900億ドルを提供し、その翌年にもさらに900億ドルを拠出すると約束しなければならないと、さまざまな政党が議会に執拗に要求していることが含まれます。権力者たちが定めている長期的な優先順位について、まったく疑問を抱かずにはいられません。軍産複合体は大喜びです。莫大な利益を上げています。

さらに、メルツ自身が公にこう述べています。「そうだ、国民の状況が著しく悪化していることは理解している。しかし、ウクライナのため、この欧州の価値観のために、われわれはそうする義務がある」。そして、ザクセン・アンハルト州で「ドイツのための選択肢」が圧勝した選挙結果に彼らが現在どのように反応しているのか、また、この政党がナチズムを復活させていると、どのように非難しようとしているのかを見てください。この政党が民族主義的であることには、もちろん疑いはありません。しかし、この政党は単に、すべての国との正常な対話を支持しています。

もちろん懸念されるのは北極圏の軍事化に向かう路線です。最近、米国、ノルウェー、他の誰かさん(英国と思われる)が、ロシア連邦との戦争を公然と想定したシナリオで北極圏において演習を行いました。その背後には何があるのでしょうか。彼らがロシアを攻撃しようとしているとは思いません。また、われわれが欧州への侵略を準備しているという話は、まったく馬鹿げています。一方では「ロシアは負けている。だから、あらゆる方法でウクライナを支援しなければならない。支援を増やせばウクライナは勝つ」と言います。他方では、彼らの目には負けているはずのこのロシアが、欧州への攻撃を準備していると言うのです。政治家の観点から見ても、このような妄想的なことを口にするのは、まったく真面目な態度ではありません。

しかし大統領は何度も繰り返しました。われわれは誰を攻撃することも計画していません。それは愚かで、馬鹿げています。国家レベルの思考が完全に欠如しています。しかし、このような話が、あなた方が攻撃を準備していることを意味するのであれば、断言しますが、その戦争はまったく異なるものとなり、非常に短期間で終わるでしょう。

しかし、別の可能性もあります。第一次世界大戦の引き金となった出来事、すなわちサラエボでのフランツ・フェルディナント大公暗殺を繰り返すことです。理論的には、彼らは確かに同様のことを仕組むことができます。欧州人は複雑な陰謀と大胆な冒険を好み、また彼らには狡猾さが備わっていることを考えれば、その可能性を排除することはできません。あるいは、1933年のドイツの国会議事堂放火事件のようなことです。

彼らが今度はライプツィヒでのドローン事件(2026年8月、ドイツ東部のライプツィヒ/ハレ空港で、爆発物を搭載したドローンが発見された事件)を(ロシアのせいと)でっち上げ、何一つ証拠を示すことなく世界的なヒステリーを引き起こしたように、同様のことが起こる可能性を私は排除しません。同じように、2022年4月、ブチャで突然、どこからともなく現れたかのように、道路沿いに整然と並べられた数十体の遺体が示された状況について、われわれが繰り返し提起してきた非常に具体的な質問に対して、いまだに明確で満足できる回答は得られていません。その地で実際に何が起きたのか、多くの疑問が未解決のまま残されています。

今日に至るまで、国連事務総長からも、人権高等弁務官からも、ちなみに米国人を含む西側の対話相手からも、次の質問への回答を得られません。「皆さんの能力を使って、偶然にも非常に都合よくその場所に居合わせたBBCの撮影班が映した遺体が、誰のものだったのか、その人々の名簿を入手できないのですか」。誰もわれわれに何の回答も示しません。また、われわれが聞かされているところでは、親族もあまりそれを望んでおらず、親族については何も聞こえてきません。数十人が大量に殺害されたとすれば、それは戦争犯罪です。その場合、親族による何らかの団体が名乗り出ないということはあり得ません。しかし、ここでは、言われているように完全な沈黙があります。したがって、私は挑発行為が行われた可能性を排除しません。

ドミートリ・サイムズ:

欧州諸国の政府を見ると、世論調査の結果とは大きく異なっているという印象を受けます。欧州の世論は、欧州のエリート、グローバリストのエリートよりも、はるかに平和志向です。そこで私には、そもそもこのようなグローバリストのエリートと合意に達することが可能なのか、という疑問が生じます。

あなたは最近、この紛争では、少なくとも現段階では、決定的な役割を果たすのは外交ではなく、われわれによる武力の行使、やむを得ない武力の行使であると述べました。ウクライナ側が、西側から供与されたか、西側の支援によって製造され、西側によって誘導されるミサイルやドローンでわれわれの領域を攻撃している一方、われわれはウクライナ領内だけを攻撃しているという状況を、今後どのように続けられるとお考えですか。この状況はいつまで続けられるのでしょうか。欧州を攻撃せずに済ませることはできるのでしょうか。

セルゲイ・ラブロフ外相:

あなたの番組に出演する人々も、戦闘行動と外交というこの問題について論評しています。両者を並行して同時に進められない理由はないと思います。結局のところ、歴史上、そのような事例は存在しました。

われわれは2022年4月にウクライナ側の提案を受け入れる用意を整え、その文書にイニシャル署名し、本格的な条約の作成が始まるのを待っていました。その後、われわれは欺かれました。(プーチン)大統領は、それ以降についてこう述べました。「マクロンがウラジーミルに電話をかけ、調印に向けた雰囲気を改善する善意の意思表示を何らかの形で行うため、軍を撤退させ、一定の休止期間を設けるよう求めた。」そして、この欺瞞が現実になった後(欧州から合意を妨害された後)、プーチン大統領はこう述べました。「われわれは今後も常に交渉に開かれている。しかし交渉期間中も、軍事的手段による課題の解決を停止しない」。この方針は現在も維持されています。

われわれは復活祭と戦勝記念日に、2日間または3日間の停戦を提案しました。米国側の要請により、今回(ウィットコフとクシュナーがキエフを訪問したとき)は3日間の停戦が発表されました。米国の交渉担当者がキエフに移動できるよう、われわれは武力行使を控えました。

しかし、ロシア領内奥深くの平和的な民間施設に対するこれらのテロ行為へのわれわれの反撃も、すでにかなり長い間続いていることを強調しなければなりません。そして率直に言えば、ウクライナ側にとって、それに耐えることははるかに、あえて言えば著しく苦痛なものとなっています。われわれは、こうした行動を報復なしに終わらせないと決意しており、われわれの反撃がもたらす結果は、ウクライナ側にもますます明らかになっています。彼らもそのことを話しています。

ちなみに、このことは、西側がこの紛争のまさに現段階で停戦を呼びかけるようになった際の、突然で明白な切迫感も説明しています。しかし、交渉を提案する人々が、われわれに空疎な最後通牒を突きつけようとしているのではなく、実際に根本的な問題に取り組むという誠実な意図を持っていると十分に確信できるのであれば、われわれは有意義な交渉への参加を決して拒否しません。米国の交渉担当者であるウィトコフとクシュナーは、第一に不公平で、第二に実行不可能な要求を突きつけるのではなく、問題そのものに取り組んでいます。欧州が行っているのは、まさにその反対です。

アンドリュー・ナポリターノ判事:

あなたは最近、警告を発しました。ドイツ当局が最近、新たな戦争の可能性について語り始めたと述べました。これは非常に憂慮すべき動きです。なぜそのように述べたのですか。

セルゲイ・ラブロフ外相:

何よりもまず、ドイツのフリードリヒ・メルツ首相が、演説のたびに、「ロシアは欧州にとって最大の脅威であり、われわれはこの脅威との戦争に備えなければならない」という確信を持っており、その確信は日ごとに強まっていると言う機会を、決して逃さないからです。そして、これは私が何度引用しても飽きることがありませんが、彼の考えでは、「ドイツは、再び欧州大陸最大の軍事大国にならなければならない」と言っています。それは、われわれの地域の将来に不可欠なものとして慎重に検討しなければならない変化です。

それはまさに、第一次世界大戦前夜、そして第二次世界大戦前夜に、ドイツが自国を最大の軍事大国と考えていたのと同じです。これはフロイド的な失言ではありません。彼らは本当にそう信じているのです。彼らはナチズムに忠実に仕え、戦争犯罪に加わった自分たちの祖先を称賛しています。今も彼らを称賛し、彼らが正しいことをしていたと信じています。

彼らがゼレンスキーをあれほど支援しているのも、理由のないことではありません。ゼレンスキーは今、オーストリア、ルーマニア、その他の欧州の墓から、ニュルンベルク裁判によって永久に絶対的な違法行為と認定された行為を理由に有罪とされたウクライナ人のナチ犯罪者の遺骨を掘り出し、ウクライナに再埋葬しています。キエフで最も神聖な場所であるキエフ・ペチェールシク大修道院に、彼は「英雄の城塞」を創設すると宣言しました。

バンデラをはじめ、自らを永遠に汚し、ウクライナ国民の一員であること自体まで深く汚したさまざまな犯罪者が、今では英雄として称賛されています。暗い遺産を残したそのような人物が今日称賛されているのは、実に憂慮すべき現実です。ゼレンスキーは、欧州から運ばれてくる遺骨を納めた棺の前にひざまずいています。欧州は喜んでそのような霊廟づくりを支援しています。この人物が何を行っているのか、それが欧州の価値観とどのような関係にあるのかを、彼に説明しようとしないからです。

したがって、私はその可能性を排除しません。メルツのような人物が、実際に祖先の「偉業」をもう一度繰り返そうとする可能性を、私は決して排除しません。これは真剣に考える必要のあることです。

アンドリュー・ナポリターノ判事:

ノルウェーに拿捕されたロシア船についてお尋ねします。私の理解では、その船が何らかの非難されるべき活動に関与していたという申立ては一切なく、ノルウェーの裁判所が、特定の船舶に対してではなくロシア全体に対するウクライナ企業ナフトガスの請求を認めることにしたというだけであり、国際法の重大な違反でした。ロシア外務省のマリア・ザハロワ報道官は、これを海賊行為と呼びました。これはまったく正確な表現だと思います。

われわれはこれにどう対処するのでしょうか。外相、もちろん船のことは残念ですし、乗組員のことはさらに心配です。しかし、私が懸念しているのは、西側による侵略、欧州によるロシアへの侵略が、ますます拡大していることです。そして、われわれが厳しく対応しないたびに、彼らの処罰されないという感覚が強まります。大統領は、必要であれば、われわれには彼らを倒す用意があると言いました。その用意はありますか。あるとすれば、どのように対応するのでしょうか。

セルゲイ・ラブロフ外相:

大統領がそう述べたことは間違いありません。これは単なる比喩表現ではなく、明確な立場です。

問題の船舶は、1920年のスヴァールバル条約を完全に順守してスヴァールバルで行われていた科学活動と観光活動以外のいかなるものとも、まったく関係がありません。この一件は、もちろん、第一にノルウェーの法の女神テミス、すなわち司法にとっての恥であり、同時にノルウェー国家にとっての恥でもあります。

ナフトガスが、まずウクライナの司法機関で、そして確かその他の機関でも、クリミアの住民投票の結果を誰も承認すべきではない、クリミアはウクライナ領であり、したがってロシアが行ったことはすべて違法であると主張したからです。「われわれはこれこれの額の資産、設備、資金、投資を失った。したがって、尊敬する国際社会の皆さん、どこであれ、どのような方法であれ、そこにあるものを何でも略奪し、クーデターへの反応として、またクリミア住民をテロリストと決めつけて武装勢力が差し向けられたことへの反応として、クリミアの人々が意思を表明した結果起きたことへの補償として、われわれに引き渡してほしい」というわけです。

これはノルウェーにとっての恥です。私はすでにそう述べましたし、ここであまり具体的な詳細に立ち入ることは本当に望みません。しかし、ノルウェー当局者と現在のノルウェーの政治家は、この状況全体が完全な恥であることを十分に理解しています。彼らはわれわれと頻繁に連絡を取っていますが、率直に言って、自分たちがどうすればよいのか分かっていません。

しかし、いわゆる「影の船団」の船舶を拿捕しようとする攻撃的な試みに始まるこの傾向は、非常に危険なものになっています。これは関係するすべての人々にとって非常に憂慮すべき動きです。彼らはそこで、どのように行動するのでしょうか。例えば、あるアフリカの国の国旗を掲げ、ロシアの利益のために石油を輸送しているタンカーを拿捕します。特定の国を名指しするのはやめておきましょう。それから彼らは、「この国旗は偽物だ」と言います。

そして、そのタンカーを拿捕するとすぐに、タンカーが掲げている国旗の国に駐在する彼らの大使が、その国の外務省または大統領府に行って、こう言うのです。「いいですか、われわれはあなた方への援助計画を持っている。今日、今すぐにこの船への旗国承認を取り消し、その国旗は偽物だと言わなければ、援助を打ち切る」。これが、西側がここで用いている手法のすべてです。しかし、私は詳細に立ち入ることができませんし、そうする権利もありません。

しかし、大統領は「それまでだ」と述べました。英国の挑発行為についてはどうなのか、という質問に答えた際にも、大統領は「それは軍事機密だ」と答えました。

アンドリュー・ナポリターノ判事:

11月に中国で3人の大統領による会談が実現する現実的な可能性があるという、ワシントンでの発言についてお尋ねします。もちろん、ロシア大統領、米国大統領、そして習近平氏のことです。これは米国の願望なのでしょうか。それとも、それが実現する現実的な可能性があるのでしょうか。

セルゲイ・ラブロフ外相:

これは米国の願望でも、中国の願望でも、ロシアの願望でもありません。言ってみれば、単なる政治的経験則です。世界の三大国の指導者、すなわち中国について言えば何よりも経済大国、ロシアと米国について言えば軍事大国の指導者が、同じ時に同じ場所に集まるのです。「AとBを結びつけて考える」ことのできない政治分析者には、何の価値もないでしょう。私には、それだけのことだと思われます。

そして、そのような機会が提供された場合、プーチン大統領が断らないことに、私は何の疑いも持っていません。これは深圳で行われます。中国側の主催者が日程を編成します。日程が許し、そのような申し出がなされるなら、その可能性を私は排除しません。大統領がそのような機会を断らないことは、ほぼ確実だとさえ思っています。

アンドリュー・ナポリターノ判事:

特別軍事作戦は、あとどれくらい続くと思いますか。

セルゲイ・ラブロフ外相:

大統領はつい最近、この質問に答えました。戦争は予測を立てるのにあまり適した事柄ではない、と述べました。しかし、われわれが前進しており、日々進撃していることは事実です。そして、多くのことは、ウクライナ・レジームのマスターたちがどれほど理性的な助言をするかによります。

これまでのところ、理性的な助言はまったく聞こえてきません。聞こえてくるのは、民間人を路上で強制的に捕らえ、待機している車に押し込み、前線へ、死地へと直接送り、さらに多くのウクライナ人をこの燃え盛る炉に投げ込めという、容赦のない要求、絶え間ない呼びかけ、執拗な要求だけです。

そして、ウクライナはほかにも非常に多くの破壊的行為を強いられています。かつて国民経済と呼ばれていたものが今や悲惨な、まさに壊滅的な状態に陥り、日々積み重なる終わりのない、悲劇的で深刻な圧力の重みで崩壊しつつある状況に耐えることまで強いられています。

ドミートリ・サイムズ:

外相、この対談に応じていただき、どうもありがとうございました。私たちにとって、これはいつも非常に興味深く、有益です。そしてもちろん、あなたは現在、「統一ロシア」の政党名簿の筆頭に立っています。選挙での幸運をお祈りします。もちろん、選挙に参加するすべての政党には、それぞれの幸運を得る権利があります。しかし、「統一ロシア」にとって、この過程におけるあなたの役割は特に有益なものになると思います。ありがとうございました。

セルゲイ・ラブロフ外相:

温かいお言葉をありがとうございます。

(翻訳以上)


Thursday, September 03, 2026

香港の「民主活動家」黄之鋒(ジョシュア・ウォン)が香港高等法院で「共謀」を認めた:ジャーナリストたちの投稿 Hong Kong “Pro-Democracy Activist” Joshua Wong Admits to Conspiracy in the High Court: Posts by Journalists

 香港の「民主活動家」黄之鋒(ジョシュア・ウォン)が香港高等法院で「共謀」を認めたことを受けて、フォローしているジャーナリストたちのよくまとまっている投稿を翻訳して紹介する。

ジェームズ・ウッド: 中国在住の英国系オーストラリア人 🇨🇳|地政学アナリスト|著述家|中国を中心に発信。https://x.com/commiepommie/status/2095064558138425709



黄之鋒(ジョシュア・ウォン)は今日、香港高等法院に出廷し、自らの言葉で共謀を認めた


黄之鋒は、2020年7月1日から11月23日までの間、羅冠聡(ネイサン・ロー)らと共謀し、外国政府、組織、個人に対して、香港および中国のその他の地域への制裁、封鎖、その他の敵対的行動を求めたとして、罪を認めた。これが訴因であり、彼自身が認めた内容である。 彼はすでに、2020年の非公式予備選をめぐって、禁錮4年8カ月の刑に服している。この2件目の訴因は、彼が赤柱監獄に収監されていた2025年6月に提起された。彼は2020年11月以来、2,100日以上にわたって拘束されている。裁判所がこの事件を重大なものとして扱えば、終身刑となる可能性がある。 『サウスチャイナ・モーニング・ポスト』は、黄之鋒が北京政府と香港政府への制裁を扇動したことを認めたと、明確に報じた。 経緯は複雑ではない。羅冠聡との連携は2016年頃に始まり、その目的が隠されたことは一度もなかった。誰かが香港に制裁を科すまで、外国からの圧力を強めるというものだった。香港衆志(デモシスト)がその手段であり、黄之鋒を事務局長、羅冠聡を主席とする国際的な対外活動の前線だった。主な働きかけの相手はワシントンにいた。 黄之鋒と羅冠聡は2019年9月、米議会の委員会で証言した。その2カ月後、トランプは、まさに彼らが成立を求めて働きかけていた制裁の枠組みである「香港人権・民主主義法」に署名した。ペロシは連邦議会議事堂で黄之鋒と面会した。ルビオは上院でこの動きを推進した。2人はまた、香港警察に群衆制御用装備を販売しないよう外国政府に求めた。国家安全維持法の施行後には、黄之鋒が請願運動を推進し、その結果、少なくとも1社のデジタル・フォレンジック企業が香港市場から撤退した。 日付もまた、無視できないほど正確に符合している。国家安全維持法は2020年6月30日に施行され、香港衆志は同日、解散した。訴因の対象期間はその翌日から始まっている。その期間に入って2週間後の7月14日、トランプは「香港自治法」に署名し、中国および香港の当局者に制裁を科すとともに、彼らと取引する外国銀行にも制裁を科す可能性を示した。 10月までに、ワシントンは同法に基づく最初の制裁対象者を指名していた。羅冠聡はロンドンから運動を展開し、黄之鋒は香港からその活動を継続した。彼らが米国に香港への制裁を求める一方で、米国は香港に制裁を科していたのである。 西側メディアは、彼をロビー活動を理由に弾圧された民主活動家の象徴と呼ぶだろう。複数の西側諸国の在外公館関係者が傍聴席に座っていた。すでに従来どおりの論調による論評が始まっている。しかし、彼らが大きく報じようとしないのは、黄之鋒が何を認めたのかという点だ。彼は外部勢力に、自らの都市を罰するよう求めたのである。彼を迎え入れ、証言を聞き、彼が求めた制裁法に署名した同じワシントンが、今日の有罪答弁を政治的なものだと呼ぶことになる。 拡散されている画像は、言葉よりも強い印象を与える。特徴的な茶色の制服を着た成人男性が、金網の向こうで、かつて自ら近づいたカメラに向けて振る舞っている。返信欄ではすでに、その制服を「グッチの衣装」と呼ぶ声が上がっている。あの制服こそが、公聴会や証言、時期を選んだワシントン訪問によって彼が手に入れたものだ。 2月には、外国勢力との共謀を理由に黎智英(ジミー・ライ)に禁錮20年が言い渡された。黄之鋒の弁護人は、今回の事件はそれほど重大なものではないと主張し、4年6カ月程度の量刑を求めた。裁判官は審理を延期した。 香港国家安全維持法が問題にするのは、行為者が外国人か現地の人間かではない。問題にするのは、誰かが外部勢力を招き入れ、香港に損害を与えようとしたかどうかである。黄之鋒は今日、法廷に立ち、それをしたのは自分だと認めた。 退廷する際、彼は傍聴席に「バイバイ」と言った。 いつもの人々から抗議の声が上がるだろう。それはいつものことである。より問うべきなのは、なぜその多くが、彼自身がそれを認めたという一文を飛ばして語るのか、ということだ。

アンジェロ・ジュリアーノ:1995年から香港在住。地政学、金融アナリスト。https://x.com/angeloinchina/status/2095427525098820055

香港――西側メディアが聞きたがらなかったこと
黄之鋒(ジョシュア・ウォン)が、反逆および外国勢力との結託により終身刑を言い渡される可能性に直面している今、私はこれを書いている。 西側はすでに、彼を聖人に祭り上げる準備を始めている。いい加減にしてもらいたい。 2019年、私は香港の添馬公園に立ち、カメラが聞きたがらなかったことを語った。これは「民主化運動」などではなかった。米国によるカラー革命の試みだった。全米民主主義基金(NED)、米国国際開発庁(USAID)、ソロスのネットワーク、西側の政治家、そして一握りの現地の手先が、実在した逃亡犯条例改正案をめぐる対立を混乱へと変えようとしたのだ――街を破壊し、「一国二制度」を崩壊させ、香港を中国に突きつける短剣として利用しようとした。 私はそれを現地で体験した。私はそれに反対する声を上げた。私たちは、街を火の海にしようとした、資金援助を受けた暴徒たちと闘った。その後、私は殺害予告を受けた。構わない。私は西側の編集者たちを喜ばせるために、そこにいたのではない。 黄之鋒は、学生の英雄だったことなど一度もない。彼は「国際戦線」にとって都合のよい顔だった。ペロシやルビオらに働きかけ、制裁を懇願し、自らの街に外国からの圧力を招き入れた。それは異議申し立てではない。帝国を自分の家に招き入れ、それを自由と呼ぶ行為である。 結託という行為には、れっきとした名前がある。そして今、それは法廷で裁かれている。 カラー革命は自由ではない。それは政権転覆のためのソフトウェアである。手口は毎回同じだ。 実際に存在する不満を乗っ取る 資金、訓練、スローガン、カメラを大量に投入する 抗議活動を暴力へと激化させる ワシントンとNGO組織網の意向に従う政府を樹立する 主権を奪い、それを「価値観」と呼ぶ ウクライナは、その典型例である。マイダンは、欧州と尊厳を求める運動として売り込まれた。しかし、それがもたらしたのは、支配された国家、宗教のごとく崇められるNATO、そして代理勢力と化した国だった。その道は戦争へと直結した。断層線上で起こされるカラー革命は、人々を「解放」するものではない。戦場を準備するものだ。 昨年、同じ茶番がネパールを襲った。汚職に対する若者の怒りは本物だった。だがその後、Discordを通じた動員が行われ、省庁が焼かれ、政府は数日で倒された。そして、お決まりの道化たち――自称「中国専門家」たち――は、まるで祭りでも始まったかのように喝采した。 なぜか。 彼らは、人々がすでに聞きたがっていた物語を語ったからだ。調査などしない。この種の作戦がどのような結末を迎えるかについての歴史的知識もない。彼らは格好よく見られたかった。真実を犠牲にして再生回数を稼ぎたかったのだ。 それは分析ではない。コンテンツにすぎない。 影響力には責任が伴う。彼らは前者を手にし、後者を投げ捨てた。 日本を見よ。フィリピンを見よ。作戦が成功したときに出来上がる完成品がこれだ。必ずしも街頭に戦車が並ぶわけではない。基地、条約、メディア、そして米国の優先事項を避けられない運命として扱う政治階級――帝国の道具である。 この点は、いくら強調してもしすぎることはない。こうした革命が邪悪なのは、国民が決して外部に委ねてはならないもの、すなわち自分たちの問題を自分たちで解決する権利を奪うからだ。 主権は、真の民主主義の土台である。主権がなければ、残るのは国旗と議会、そして外国人の操り手だけだ。 2019年の香港は警告だった。 ウクライナは、その代償だった。 ネパールは、評論家たちが今なお喝采する再演だった。 黄之鋒の裁判は、自国に対して外国の力を招き入れることは活動家としての行為ではないと、改めて思い起こさせるものだ。それは裏切りである。 この干渉の時代が終わることを願う。 民族自決。平和。相互繁栄。そして何よりも主権を。


日本战败81周年 일본 패전 81주년 日本敗戦81周年 81st anniversary of Japan's defeat

值此中国人民抗日战争暨世界反法西斯战争胜利81周年之际,我们缅怀日本侵略战争的受害者,并重申日本宪法第九条所确立的和平承诺:日本永不再发动战争。

중국 인민 항일 전쟁 승리 81주년과 세계 반파시스트 전쟁 승리 81주년을 맞아, 우리는 일본의 침략 전쟁 희생자들을 추모하고 일본 헌법 제9조에 명시된 평화 약속, 즉 일본은 다시는 전쟁을 일으키지 않겠다는 약속을 재확인합니다.

中国人民抗日戦争および世界反ファシズム戦争の勝利81周年にあたり、我々は日本の侵略戦争の被害者を追悼し、日本国憲法第9条に定められた平和の約束、すなわち「日本は二度と戦争を起こさない」という約束を改めて確認する。

On the occasion of the 81st anniversary of the victory of the Chinese People's War of Resistance Against Japanese Aggression and the World Anti-Fascist War, we remember the victims of Japan's war of aggression and reaffirm the peace commitment established in Article 9 of the Japanese Constitution: Japan will never wage war again.


26年6月3日、瀋陽の9.18歴史博物館にて


ISF公開シンポジウム「イラン・ウクライナ危機と変容する世界秩序~日本はいかに対応すべきか」ISF Public Symposium: “The Crises in Iran and Ukraine and the Changing World Order: How Should Japan Respond?”

 10月9日(金)、ISF独立言論フォーラム主催・村山談話を継承し発展させる会協賛で、公開シンポジウム「イラン・ウクライナ危機と変容する世界秩序~日本はいかに対応すべきか」が開催されます。鳩山友紀夫元総理、ニコライ・スタニスラヴォヴィチ・ノズドリェフ駐日ロシア大使、ペイマン・セアダット駐日イラン大使の講演会に、孫崎享さんとともにコメンテーターとして参加させていただきます。

申し込みフォームはこちらをクリックしてください。

メールでの申込は、公開シンポ、お名前を記載の上、info@isfweb.orgまでメールしてください。



Wednesday, September 02, 2026

ICC赤根所長応援は日本人ナショナリズム発揚の場となっていないか―ICCの政治的、歴史的文脈を提供するベン・ノートン記事を紹介 Has Support for ICC President Akane Become a Vehicle for Promoting Japanese Nationalism? Introducing an Article by Ben Norton That Provides Political and Historical Context

国際刑事裁判所(ICC)が日本のメディアで大きな話題になっているが、ジャーナリスト、ベン・ノートン氏の2023年3月29日の記事「米国はかつて国際刑事裁判所への軍事侵攻をちらつかせた。今やプーチンを標的にするICCを歓迎」の翻訳を紹介したい。当時も訳したい!と思いながら流れてしまった記事だった。ICCも公平とは言えないこと、米国がICCの構成員を制裁するのは初めてではないこと、ICCの管轄権行使に長年反対し、ICC関係者への制裁まで行ってきた米国がプーチン大統領への逮捕状を歓迎した二重基準など、昨今のニュースに歴史的、政治的文脈を提供できる貴重な記事と思う。

8月18日、「トランプ政権がICC(国際刑事裁判所)の赤根智子所長らに制裁を科す」というニュースが、日本で大きく報じられた。もちろん「法の支配」を標ぼうする国際組織に対し一国の政権が恣意的な制裁を加えるのは間違っている。ただ、私が違和感を感じるのは、どうして日本のメディアが、にわかにこの件について大騒ぎしているかということである。答えは明らかだ。現在の所長がたまたま日本人だからである。メディアで多用されている赤根智子所長「ら」という表現に象徴されている。ICCは8月19日に声明を出し、「国際刑事裁判所(ICC)は、米国政府が、同裁判所の所長である赤根智子判事(日本)および検察局の上級法廷弁護士アブドゥライ・セイ氏(セネガル)を新たな制裁対象に指定すると発表したことに、強い遺憾の意を表する」と言っている。アブドゥライ・セイ氏というちゃんと名前のある弁護士も今回制裁対象になった。制裁されているもう一人の人を「ら」で済ませることができてしまうところに、日本人のナショナリズムが見え隠れする。

この記事でも指摘されているようにICCはアフリカ諸国など主に非白人国あるいは非西側国の人間ばかりに逮捕状を出してきた経緯があり、「インターナショナル・コロニアル・コート」(国際植民地主義裁判所)とか「インターナショナル・コケージアン・コート」(国際白人裁判所)といった批判を受けてきた。セネガル人の弁護士の存在を無視するのは日本のメディアや世論にも日本人偏重だけでなく西側偏重、白人偏重の傾向があるのではないかと思ってしまう。これが、ワールドカップで日本が勝ったとか、そもそもナショナリズムが前提のプラットフォームでの話だったら敢えて言うこともないが、ICCのような国際組織の構成員に起こったことをその国籍によって扱いを変えるというのは理にかなったこととは言えない。

高市首相がこの件について「残念」「深刻」だという表明にとどまっていることで「弱腰だ」といった批判があるようだ。私は高市首相を支持していないが、ここで日本政府が、日本国籍者だからといってICCの特定の構成員の制裁について米国政府と直談判することを求めるのは、ある意味で、自国の都合でICC構成員に制裁する米国と同じ土俵に立った考え方である。日本政府がICC締約国として、アフガニスタンでの米軍・CIA要員らの戦争犯罪容疑の捜査や、ガザをめぐるネタニヤフ首相らへの逮捕状に関与したことなどを理由に制裁されている、現在13人のすべてのICC関連被制裁対象者について米国に抗議するというのなら筋が通っていると言えようが、日本のメディアや世論はもっぱら「赤根所長」コールばかりである。この記事にもあるように、締約国ではない米国がICC構成員に制裁を課すのは初めてのことではないが、過去のケースについて日本メディアや世論は今回のように盛り上がらなかった。

残念なのは、赤根氏自身がこの日本の自国中心的な赤根氏応援に乗っかっているように見えることだ。8月26日の「報道ステーション」で大越キャスターが赤根氏にインタビューしていたが、赤根氏は、日本のNGOが始めた赤根氏制裁の撤回を求める署名を毎日見ていると言い、「これこそ日本人だな、とつくづく思う」と言っていた。赤根氏もこの件を日本人賛美につなげている。このような文脈で「日本人」という概念が使われるとき、日本のいわゆる「日本人」ではない市民たちがどのような疎外感を味わうかなど思いも至らないのであろう。ちなみに9月3日の時点で14万筆近く集まっているこの署名は「赤根所長」のみを対象とし、他に制裁されているICCの関係者は含まれていない。赤根氏はこういうときこそ「日本人だからではなく、ICCの締約国としてすべての制裁対象者を応援してほしい」と伝えることができたのではないか。

また、赤根氏は、ロシアのウクライナ侵攻を受けて「目が覚めた」と言っており、「第二次大戦後、ヨーロッパではこういうこと(戦争は)起きないという考えがあった」と言っていたことにも驚いた。

「私はウクライナ侵攻の時に目が覚めたんですね。第2次世界大戦以降、そうしたことはヨーロッパで起きないと。国連もできたしという考えが広くあったと思います。他の地域はともかくとしてですね。そうした大きな戦争がヨーロッパでは起きないと。それが私としては打ち砕かれた感じがして」

赤根氏の発言からは、1990年代に旧ユーゴスラビアのクロアチア、ボスニア、コソボなどで起き、ボスニアとコソボにはNATOも介入した血みどろの紛争が、すっかり抜け落ちている。また「他の地域はともかくとして」という言い方はどうなのだろうか。「ともかく」と言われた地域の人たちが聞いたらどう思うかと思いが至らないか。国連設立以降、欧州以外で起き、米国など西側諸国が遂行または介入した朝鮮戦争、ベトナム戦争、イラク・アフガン戦争、パレスチナ戦争などでは赤根氏の目は覚めなかったということだ。

赤根氏の西側バイアス、欧州の旧社会主義国やグローバルサウスの国々への軽視を感じざるを得ない。ノートン氏がここで指摘するICC自体の西側バイアスにも通じるように見える。逆に、西側が30年の挑発と威嚇を繰り返した上で起きたのに西側ではロシアが一方的な「悪」とされている戦争によってのみ「目が覚めた」のか。ロシアのプーチン大統領とマリア・リボア=ベロワ大統領全権代表(子どもの権利担当)の、ウクライナの子どもの「占領地域からの違法な追放・移送」容疑についても、ロシア側の、戦闘地域で危険に晒されていた子どもたちを安全な場所に避難させ保護した人道的措置であり、可能な場合には親や保護者の同意を得ていたという主張に対しどこまでの検討を加えたのか、十分な証拠はあったのかなど疑問が残る。

ベン・ノートン氏は、2025年3月にフィリピンのドゥテルテ前大統領が、麻薬対策における自国民殺害の容疑でフィリピン当局に逮捕されICCに引き渡されたことを受けて、「ICCは西側帝国が標的とした者しか逮捕しない」と断言している。ドゥテルテ氏が米国の言いなりにはならず、中国と良好な関係を築いていて敵視されていたとノートン氏は解説する。2025年にネタニヤフ首相に逮捕状を出したのは西側偏重のICCが名誉挽回するチャンスだったが逮捕には至っておらずネタニヤフ政権下でイスラエル軍はパレスチナやレバノンでの市民虐殺をやりたい放題続けている。米国のバックアップがあってのことだ。

日本の人は日本人バンザイ的な赤根氏応援ではなく、あらためて西側帝国主義に対して無力であるどころか助長しているようなICCの限界と矛盾を冷静に認知し、高市首相の「弱腰」だけでなく、米国に追随し事実上米帝国の一部となっていることを問題視するべきではないか。ナショナリズムを発揮するのなら、日本人スゴイではなく、戦争犯罪を繰り返す帝国に加担することを辞め、日本の独立と主権を取り戻し、アジアの平和的一員となることを目指すのはどうか。

★★★

長い前文になりました。以下、ベン・ノートン氏記事の翻訳です。AI訳に私が手を加えました。 乗松聡子 @PeacePhilosophy 

米国はかつて国際刑事裁判所への軍事侵攻をちらつかせた。今やプーチンを標的にするICCを歓迎


ベン・ノートン 

2023年3月29日

 

グローバル・サウスの多くの国々は、国際刑事裁判所(ICC)を西側に有利な偏向をもつ新植民地主義的機関だとして非難してきた。その指導部は欧州出身者によって占められており、2016年の時点では、同裁判所で裁判にかけられたのはアフリカ人だけだった

めずらしく意見が一致する点として、米国もまた、国際刑事裁判所(ICC)の設立当初からこれに反対してきた。米国はICCの加盟国ではなく、ワシントンは同裁判所の最高幹部に制裁を科し、裁判官や検察官を逮捕すると脅したことさえある。

実際、同裁判所が2002年にオランダで発足した際、米国は「ハーグ侵攻法」として知られる法律を成立させた。この法律によりワシントンは、ICCで裁判にかけられている者が米国市民であるか、米国の「国家安全保障」上の利益にとって重要だと判断された場合、その者を解放するために米軍を派遣すると威嚇している。

ところが、21年にわたるICCの歴史を通じて同裁判所を容赦なく攻撃してきたワシントンは、突如として180度転換し、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領を逮捕しようとするICCを公然と支持するようになった。

3月17日、ICC所長でポーランド出身のピョートル・ホフマンスキは、NATOとロシアの間のウクライナでの代理戦争で行われたとされる残虐行為をめぐり、プーチンに対する逮捕状を発付した。

ICCの逮捕状が発付されたのは、100万人以上の死者をもたらし、国連のコフィ・アナン事務総長でさえ違法であり国連憲章に違反していると述べた米国のイラク侵攻開始から、ほぼちょうど20年後のことだった。

イラクで犯された戦争犯罪について責任を問われた米国当局者は一人もいない。しかし今、ICCはロシアに狙いを定めている。

ロシアはICCの締約国ではない。ウクライナも正式な加盟国ではない。

モスクワは、この「刑事訴追は明らかに違法」であり、西側諸国に支配された同裁判所のロシアに対する「明白な敵意」の表れだと述べた。

米国はICCの加盟国ではないにもかかわらず、ジョー・バイデン大統領は同裁判所の逮捕状を強く支持した

米国のアントニー・ブリンケン国務長官は、欧州連合と連携し、ICC加盟国に逮捕状を履行してプーチンを逮捕するよう圧力をかけている。

これはブリンケンにとってかなりの方針転換である。2021年3月、イスラエルがパレスチナ被占領地で犯した戦争犯罪について同裁判所が捜査していた際、米国外交の最高責任者であるブリンケンはICCを激しく非難する声明を発表したからである。

ブリンケンは声を荒らげた。

ICCにはこの問題について管轄権がない。イスラエルはICCの締約国ではなく、同裁判所の管轄権に同意してもいない。ICCがイスラエル人に対して管轄権を行使しようとしていることに、われわれは重大な懸念を抱いている。パレスチナ人は主権国家としての要件を満たしておらず、したがって、国家としてICCの加盟資格を得ることも、国家として参加することも、ICCに管轄権を委ねることもできない。

イスラエルや米国と同様、ロシアもICC加盟国ではない。ところが、加盟国ではないイスラエルの戦争犯罪を同裁判所が捜査することはできないと主張してからわずか2年後、ブリンケンは突如として、ICCは加盟国ではないウクライナのために、加盟国ではないロシアに対して措置を講じなければならないと強く主張している。

米国、ICCに制裁を科し、当局者の家族を脅す

ブリンケンの前任者は、ICCの最高幹部に制裁を科すところまで踏み込んだ。

ドナルド・トランプ大統領の在任中だった2020年、ICCは、米国、NATO、およびその同盟者であるアフガニスタン政府がアフガニスタンで犯した戦争犯罪について捜査を開始した。

これに対し、元CIA長官から国務長官に転じたマイク・ポンペオは、同裁判所を非難する怒りに満ちた演説を行った。

「われわれは、ICCが米国人に対して管轄権を行使しようとするいかなる試みにも反対する。米国人を捜査または訴追しようとする、同裁判所の不適切かつ不当な試みを容認しない」と、同年3月に宣言した。

ポンペオはICCを「恥さらし」であり、「自らが露骨に政治的な機関であることをさらけ出している、“いわゆる”裁判所」だと激しく非難した。そして、「われわれはその権限濫用を暴き、これに立ち向かっている」と主張した。

米国外交の最高責任者はICC最高幹部の家族まで脅し、「われわれは、この党派的な捜査の責任者とその家族を特定したい」と言い放った。

その後、同年9月、米国務省は同裁判所のファトゥ・ベンスーダ主任検察官と同僚らに制裁を科した。

(法律家でアクティビストのセイラ・リア・ウィットソン氏の投稿の翻訳:「衝撃的な国際刑事裁判所(ICC)への攻撃だ。ポンペオ米国務長官は、米国の関与が疑われるアフガニスタンでの犯罪についてICCが進めている捜査をめぐり、名指しした裁判所職員とその家族に対する集団的制裁を課すと脅している」)

2021年初頭にバイデン政権が発足すると、米国によるこれらのICC制裁は解除された。しかしワシントンは、その後も同裁判所への攻撃と妨害を続けた。

米国の国営メディア「ボイス・オブ・アメリカ」はブリンケンの発言を引用し、ワシントンは引き続き「アフガニスタンおよびパレスチナ情勢に関するICCの行動に強く反対」し、米国やイスラエルのような「非締約国の人員に対して管轄権を行使しようとする」ICCの試みに異議を唱えると強調した。

つまりバイデン政権は、米国とNATOがアフガニスタンで犯した戦争犯罪、およびイスラエルがパレスチナ被占領地で犯した戦争犯罪を捜査しようとするICCの試みに強く反対したのである。

しかし、ICCがプーチンを追及するようになった今、ワシントンの政治階級は歓喜している。

一方、国防総省の軍指導部は、より慎重である。

ICCがプーチンに対する逮捕状を発付するわずか1週間前の3月初旬、『ニューヨーク・タイムズ』は次のように報じた。「国防総省は、ウクライナでのロシアによる残虐行為に関する証拠を米国が国際刑事裁判所と共有するのを阻止している、と当局者らは述べた。軍指導部は、それが米国人の訴追に道を開きかねない先例となることを懸念している」

(ニューヨーク・タイムズの投稿の翻訳:「【速報】米国防総省が、ウクライナでロシアが行った残虐行為に関する証拠を米国が国際刑事裁判所(ICC)と共有することを阻んでいると、当局者らが明らかにした。米軍首脳部は、それによって将来、米国人がICCに訴追される道を開くような前例が作られることを懸念している」)

ICCがグローバル・サウス、特にアフリカに対して偏った姿勢を取ってきたことは、十分な根拠をもって指摘されている

国際刑事裁判所には21年の歴史しかないが、グローバル・サウス、特にアフリカに対する著しい偏向を明確に示してきた。

『ロサンゼルス・タイムズ』は2016年、その一方的な姿勢を明確に示す記事を掲載した。「地球上で最も重大な犯罪を理由に同裁判所で裁かれたのはアフリカ人だけである

同年、カナダの国営メディアCBCは、「国際刑事裁判所、人種差別との非難を受けアフリカ諸国の大量脱退に直面」と報じた。

CBCは、「ICCが現在捜査している10件のうち9件がアフリカに関するもの」であることを認めた。

ブルンジ、ガンビア、南アフリカはICCを人種差別的な機関だと非難し、脱退すると表明した。

ガンビアの情報相は、ICCは「実のところ、有色人種、特にアフリカ人を訴追し、辱めるための国際白人裁判所(International Caucasian Court)である」と述べた。

2016年、ガンビアは実際に同裁判所から脱退した

南アフリカも脱退したが、のちに同国の高等裁判所が脱退を無効にした

2017年、アフリカ連合は加盟国にICCからの脱退を呼びかけた

それ以来、アフリカの知識人はICCを新植民地主義的な機関だとして継続的に非難してきた

(投稿されている記事の題の翻訳:「植民地主義の遺産を今なお引きずる国際刑事裁判所」) 

ガンビア出身のICC検察官ファトゥ・ベンスーダは、米国とNATOがアフガニスタンで犯した戦争犯罪、およびイスラエルがパレスチナ被占領地で犯した戦争犯罪について捜査を開始し、同裁判所の評判を変えようとしたように見えた。

トランプ政権は制裁と脅迫で応酬した。イスラエルの極右首相ベンヤミン・ネタニヤフは、ICCを「反ユダヤ主義」だと根拠なく非難することで応じた。

しかしベンスーダの取り組みは、いかに限定的なものであったにせよ、2021年に彼女の9年間の任期が終了すると頓挫した。

後任には、英国人弁護士で現ICC検察官のカリム・アハマド・カーンが就いた。

カーンは、英国保守党の元国会議員で右派政治家のイムラン・アハマド・カーンの兄である(イムランは小児性犯罪で有罪判決を受けている)。

カリム・カーンはICCを引き継ぐとほぼ直ちに、米国とNATOがアフガニスタンで犯した戦争犯罪、およびイスラエルがパレスチナ被占領地で犯した戦争犯罪についての捜査を打ち切った。

ロイター通信の記事によると、アフガニスタンの人権活動家ホリア・モサディクは、カーンの決定について、「アフガニスタン政府軍、米軍、NATO軍による犯罪の何千人もの被害者に対する侮辱」であると言って批判した。

(ベン・ノートンの投稿の翻訳:「これは大スキャンダルになるべき話だ。国際刑事裁判所(ICC)の新たな主任検察官、カリム・カーン(@KarimKhanQC)は、アフガニスタンで行われた米国の戦争犯罪に対する捜査を、「捜査に充てる人員や資金が不足している」という名目で、ひっそりと打ち切った。米国の戦争犯罪者は、またしても処罰を免れることになった」)

カーンは2021年、ICCは資源不足に苦しんでいるため、代わりに「同裁判所の管轄権に属する犯罪の規模と性質」に重点を置くと主張した。

しかし、正式な加盟国ではないウクライナで行われたとされる残虐行為をめぐり、加盟国ではないロシアの大統領に逮捕状を発付したことは、「同裁判所の管轄権に属する犯罪」に重点を置くというカーンの表明した方針と明らかに矛盾している。

イスラエルのメディアは、ICC加盟国ではないイスラエルが、カーンを主任検察官に選出するよう同裁判所の締約国に圧力をかけるため「舞台裏で懸命に働きかけた」ことを明らかにした。

(イスラエルのジャーナリスト、ノア・ランダウ氏の投稿の翻訳:

「イスラエルの公共放送によると、イスラエルは国際刑事裁判所(ICC)の加盟国に働きかけ、カリム・カーンを主任検察官に選出させた。」

「次から次へと驚くべき話が出てくる。今度は、その報道によると、イスラエルはカリム・カーンを国際刑事裁判所(ICC)の主任検察官に選出させるため、『水面下で懸命に働きかけた』という。」)

2022年、『タイムズ・オブ・イスラエル』はカーンを称賛し、「新たなICC検察官は今日まで、イスラエル・パレスチナに関して公の声明を一度も発表せず、公の行動も一切とっていない」と書いた。

さらに同紙は興奮気味に、「多くのイスラエル当局者は、ベンスーダが9年の任期を超えて在職し続けていたなら、すでに行動を起こし、おそらく逮捕状さえ発付していただろうと考えている」と付け加えた。

ICCは国連機関ではない――ICJは国連機関である

ワシントンの国際刑事裁判所に対する敵対的姿勢は、同裁判所が2002年に正式に発足する以前にまで遡る。

任期満了のわずか3週間前にあたる2000年の最終日、ビル・クリントン米大統領はICCの基礎となるローマ規程に署名した。しかし、後継のジョージ・W・ブッシュ大統領はのちに同条約への署名を撤回した

その後、ブッシュ政権は新設されたICCに対する政治戦争を展開した。

ブッシュ政権の国務省を率いた人物の一人である筋金入りのネオコン、ジョン・ボルトンは、米国のICC離脱を、自身の「公職人生で最も幸福な瞬間」と呼んだ。(ボルトンは、化学兵器禁止機関のホセ・ブスタニ事務局長の家族に対しても、「われわれは、あなたの子どもたちがどこに住んでいるか知っている」と脅迫した。)

親西側的な偏向で悪名高い、億万長者の寡頭富豪から資金提供を受けるロビー団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」でさえ、2002年7月、「普遍的正義の原則は依然としてワシントンによる深刻な脅威にさらされている」と警告した。しかもこれは、米国政府が悪名高い「ハーグ侵攻法」を成立させる前のことだった。

ブッシュに続き、オバマ、トランプ、バイデン各大統領もローマ規程への再署名を拒否してきた。したがって、米国はICCの加盟国ではない。

トランプがボルトンを国家安全保障担当大統領補佐官に任命すると、このネオコン強硬派は2018年、こう明言した。「われわれはICCに一切協力しない。ICCには加盟しない。ICCが自然消滅するに任せる。結局のところ、実質的に、ICCはわれわれにとってすでに死んでいる

ボルトンはICCの裁判官や検察官を逮捕するとさえ脅し、こう宣言した。「われわれはICCの裁判官や検察官の米国入国を禁止し、米国の金融システム内にある彼らの資金に制裁を科し、米国の刑事司法制度で彼らを訴追する。米国人に対するICCの捜査に協力するいかなる企業または国家に対しても、同様の措置をとる」

(フランス24の投稿の翻訳:「 米国、アフガニスタンでの戦争犯罪をめぐり米国人を訴追すればICC判事を逮捕すると脅迫」)

ICC加盟国はわずか123カ国である。(国連は世界に193カ国があると認めているため、ICC締約国は3分の2未満であり、それらの国々の人口を合わせても世界人口の半分に満たない。)

締約国ではない主要国には、米国、イスラエル、ウクライナ、ロシア、中国、インド、パキスタン、インドネシア、エチオピア、キューバ、ベトナム、トルコ、サウジアラビア、カタールがある。

国際刑事裁判所(ICC)を設立したローマ規程の署名国


一般に混同されているが、ICCは国連の機関ではなく、国連の正式な司法機関である国際司法裁判所(ICJ)とは別の独立した裁判所である。

ICCが2002年に設立されたのに対し、ICJは1945年に発足した。両者がともにオランダのハーグに置かれていることが、混同にさらに拍車をかけている。

ICJが国家間の紛争を裁くのに対し、ICCは個人を対象とする。

しかし、国連の構造に根本的な問題があるため、ICJの能力は非常に限定されてきた。安全保障理事会の常任理事国が拒否権を行使し、同裁判所の判決の履行を阻止できるのである。

米国はまさにこれを行い、ICJを事実上無力化してきた。

1984年、ニカラグアは、米国によるコントラ支援をめぐり、米国をハーグの法廷に提訴した。コントラとは、同国の革命的なサンディニスタ政権を暴力によって打倒しようと、民間人に対するテロを組織的に行った極右の暗殺部隊である。

「ニカラグア対アメリカ合衆国」事件で、ICJは、コントラのテロリストを支援し、ニカラグアの港湾に機雷を敷設したことにより、ワシントンが国際法に違反したとの判断を下した。

国際司法裁判所(ICJ)は、米国に対しニカラグアへの賠償金の支払いを命じた。しかし、ワシントンはこれを拒否し、判決が履行されるのを阻止するために国連安全保障理事会で拒否権を行使した。


(ベン・ノートン氏の23年3月9日の記事の翻訳はここまで)

Tuesday, September 01, 2026

オッカ君チャネルより「乗松聡子さんに聞く!!カナダから見た米中日関係/高市政権を周辺国はどう見るか/ウクライナと代理戦争の正体/誹謗中傷動画とサナエトークン」Satoko Oka Norimatsu Appears on Isoko Mochizuki’s YouTube Channel

少し時間が経ちましたが、6月14日に、ジャーナリスト望月衣塑子さんの「オッカ君チャネル」に呼んでいただいたときの映像を紹介します。かなり評判が良かったようで、有難いことです。

乗松聡子さんに聞く!!カナダから見た米中日関係/高市政権を周辺国はどう見るか/ウクライナと代理戦争の正体/誹謗中傷動画とサナエトークン

高井弘之:「中国への戦争態勢」の状況と反戦運動の課題 Hiroyuki Takai: The Current State of War Preparations Against China and the Challenges Facing the Antiwar Movement

Here is the text of Hiroyuki Takai’s speech at the webinar “Re-narrativizing Hiroshima & Nagasaki: Resisting the Remilitarization of Japan,” held on August 11, 2026, and organized by Tricontinental Asia. Click HERE to watch the webinar recording.

8月11日の、トライコンチネンタル・アジア主催のウェビナー「広島・長崎の記憶を語りなおし日本の再軍備化に抵抗する国際会議」で一緒に登壇した高井弘之氏の講演原稿をアップします。イベントの動画はここにあります。

高井さんは、「1840年代から1940年代の100年に及ぶ時期のいずれかに、あるいは継続的に、中国への侵略を行なって来た帝国主義列強と呼ばれた諸国」がまさしく現在中国に牙を向けている国々と指摘します。まさいしく、欧米列強プラス日本。また、日本は加害国だったにもかかわらず、日本国内の歴史記憶が「被害」中心のために、戦争とは「他国が責めてくるもの」と思い込んでいるという指摘はその通りと思いました。言語になっていそうで、なっていない、本質を言語化する高井さんの言論から目が離せません。@PeacePhilosophy


 「中国への戦争態勢」の状況と反戦運動の課題


高井弘之


一 日米による「対中国戦争態勢」の構築―その実態―

 

(1)「臨戦態勢」化する日本

 

沖縄から全国へと拡大する軍事拠点化

 いま日本では、「中国への戦争態勢」が急ピッチで構築されています。それは、沖縄・奄美地方で2010年代の半ばころから始められ、数年前からは九州・西日本・全国へと拡大しています。中国大陸を包囲する形で配備されているミサイル部隊には、今年から、中国大陸まで届く飛距離の長いミサイルが配備され始めました。これら長射程ミサイルは、今後、全国各地に配備されていく予定です。

 

民間空港・港湾・船舶・公道の軍事利用

自衛隊(日本軍)の演習や日米等の共同軍事訓練では、各地の民間空港・港湾のほか、私たちが日常生活で使っている一般道路やさまざまな公共施設も使われ、部隊や軍備の輸送に民間船舶や定期航路も使用されるようになっています。

 

自衛隊司令部の地下化

 また、政府・防衛省は、自衛隊司令部の「地下化」も進めています。それは、23年度に沖縄・九州の基地・駐屯地6か所が予算化されたことから始まり、その対象は、徐々に、全国へと広げられています。

政府は、日本への武力攻撃を抑止するため、つまり、戦争を起こさせないための軍備だなどとして軍拡を進めて来ました。しかし実際は、中国と戦争することを想定し、そのとき、軍の司令部のみを「地下化」によって守る準備を始めているのです。地上にいる住民の命ではなく、地下司令部の生存と戦闘態勢のみを守り維持しようとしているのです。

 

日米NATOによる「対中国軍事包囲網」の構築

 この「中国への戦争態勢―中国に対する軍事包囲網」の構築は、もちろん、日本単独でのものではありません。数年前から、米日の軍隊だけでなく、西欧からイギリス・フランス・ドイツ・オランダなどの軍艦や空母が、中国の近くまではるばるやって来て、その周辺の地域・海域で、しきりに合同軍事演習をやっています。

これらの国々は、1840年代から1940年代の100年に及ぶ時期のいずれかに、あるいは継続的に、中国への侵略を行なって来た帝国主義列強と呼ばれた諸国です。つまり、列強の軍隊が再び中国近海へと戻って来ているのです。

2024年に行なわれた日米共同統合演習「キーン・ソード25」は、日米の軍隊合わせて、総勢45千人の兵士、40隻の軍艦、370機の軍用機に加え、オーストラリア軍、カナダ軍も加わって大規模に展開され、英仏独伊・NATOなどもオブザーバーとして参加しました。演習は、米軍・日本軍(自衛隊)の基地だけでなく、合計30余の民間の空港・港湾も使用されました。

 沖縄・奄美には、日米共同指揮所が作られました。ここで行なわれたのは、まさに、「戦争の指揮」であり、その訓練です。ミサイル部隊が配備されている奄美・沖縄・宮古・石垣の島々では、「本土」の部隊と共に、中国艦船への攻撃を想定しての、対艦ミサイル発射訓練が行なわれました。

 そして、2025年も、今年2026年も、これまでよりもさらに大規模かつ実戦的な合同軍事訓練が展開され続けています。

 

東アジア全域での戦争戦略―「ワンシアター」構想―

20253月、中谷防衛大臣(当時)は、ヘグセス米国防長官に、「ワンシアター構想」を提起しました。構想は、朝鮮半島・東シナ海・南シナ海をワンシアター(一つの軍事作戦が実行される地域―戦域)と捉えて、日米を中心とする関係国が共同で行動しようというものです。

これは、日本から遠く離れている南シナ海(南中国海)までも、自衛隊にとっての「戦域」と捉えていることを示すものであり、まさに、南シナ海を含めた「対中軍事包囲網構築」の提起です。実際に、この海域では、すでに数年前から日米等の合同軍事演習が行なわれています。

 今年、56日には、フィリピンのルソン島北部で、小泉防衛大臣も視察する中、陸上自衛隊の地対艦ミサイル部隊によるミサイル実射訓練も行なわれました。

 

 

(2)大日本帝国の軌道の上に在る「対中国戦争態勢」


近代日本国家は、150年前の東アジアでの台頭期以来、周辺諸国への軍事侵略―占領を次々と展開し、膨大な数の人びとを殺戮―支配し、アジアの大国となっていきました。この長い期間、日本は、アジアの人びと・国ぐにに対する支配・加害者として、独自に、あるいは欧米列強と共に、東アジアを軍事的・経済的に侵略し、戦争を起こし、平和を奪って来ました。欧米と共に、東アジアの国ぐに・人びとに対してそのようにしたのは、東アジアで日本だけです。

いま行なわれている対中戦争態勢の構築は、この大日本帝国が歩んで来た軌道の上にあるものです。

戦後日本国家は、自らの侵略・植民地支配を深く反省することも、その侵略責任・支配責任を果たすこともないまま、いま、新たな戦争体制を構築し始めています。中国への攻撃態勢であるそれは、いまや、臨戦態勢の域にまで達しています。いまの高市政権は、この「大日本帝国の軌道」に、さらに徹底して乗ろうとしているようです。

高市首相は、昨年11月、国会において、中国が台湾統一行動に出た場合の日本の対応に関する発言を行ないました。この「高市発言」とは、中国が台湾の武力統一行動に出た場合、(日本が攻撃されていなくても)軍事力を行使してそれを妨害する――中国に戦争を仕掛けるという意味です。これは、中国にとって、何を意味するでしょうか。

周知のように台湾は、日本が行なった日清戦争(中国侵略戦争・朝鮮植民地化戦争/189495年)後の講和条約によって日本が中国に割譲させ、その後の「台湾征服戦争」によって完全に植民地にしたところです。つまり、日本が中国から奪ったところです。そして、「台湾統一」とは、中国にとって、日本に奪われ、日本の敗戦後も米国の妨害によって分離・分断状態であり続けたその台湾を取り戻す――「回復」する行為です。「高市発言」は、その「回復行為」を、台湾のかつての宗主国・日本は許さない、という意味を持つことになります。

また、これは、日本が中国への侵略を反省し両国の平和友好関係を約束したものとして、この50年余りのあいだ、「一応」機能して来た「日中共同声明・日中平和友好条約」体制を――国連・国際法体制でもあるそれを、公然と破る発言でした。

 さらに恐ろしいのは、高市政権の対中姿勢を支持する国内世論の状況です。当時の各世論調査では、「高市発言」を撤回する必要がないという意見が7割近くに達していました。

 かつて、日本が中国への侵略・支配を拡大していった1937年当時、日本の政府・メディアは、「暴支膺懲」(暴虐な中国を懲らしめる)のスローガンを発し続けました。日本の侵略に対する中国側の当然の抵抗行為を「暴虐・横暴」とし、だから、「膺懲」するのだとして、自らの行為を正当化し、国民の戦意を煽ったのです。

そして、多くの国民が、このスローガンとそれに基づく軍事行動を支持し、侵略への挙国一致体制がつくられていきました。この「日本政府と日本国民」だけの閉じられた空間には、問題の――現実の根本にある自らの侵略行為への視線は、存在していませんでした。

私は、いまの日本の目前の状況を見ながら、このような歴史を思い起こしています。

いま、日本政府・マスメディアには、中国への敵対意識を煽る発言が溢れ、なぜ中国が「高市発言」に強く抗議しているのかを、中国の立場に立って知ろうとする姿勢は、ほぼ、存在していません。問題の発端―起点がこの「発言」にあることさえ忘れられ、いま日本は対中「挙国一致体制」の完成へと走っているように見えます。

世界から閉じられた――自ら閉じた偏狭な「日本空間」に自足し、今日に至る「日本―東アジアの歴史」からも、現在の世界の状況からもかけ離れた、自己中で独りよがりの「自己正当化」の主張だけが声高に発せられているのです。

 しかし、手をこまねいているわけにはいきません。この恐ろしい状況と、そのさらなる進展を、私たちは止めなければなりません。そうしなければ、私たちは再び、中国―アジアの人びとに対する加害者となり、ここ東アジアに住む私たちの暮らしも命も失われてしまいます。

私たちは、近代日本150年の歴史を内省的に総括し、「対中戦争準備」を阻止し、今度こそ、日本を、東アジアの平和を実現する側の国へと変えなければなりません。

それでは、次は、以上のような日本の危険極まりない状況に対する、私たち日本の市民・民衆の活動についてお話ししたいと思います。

 

二 日本における反戦運動の現状と課題

 

(1)「新たな戦争態勢構築」に抗する闘いの登場

 

戦争止めよう! 沖縄・西日本ネットワーク

 2010年代から始められた「新たな戦争態勢―対中戦争態勢」だが、その状況は全国的にはほとんど報道されず、それに対する全国的な闘い―運動もありませんでした。沖縄・奄美地方の軍事拠点化に対する抵抗は、ほぼ、各地での孤立した闘いを強いられる状況でした。やがて、その新たな軍事態勢は九州から西日本へと拡大され始めました。

 孤立した各地の闘いをつなげ、つながり、各地・各人が連帯した共同の闘いを行なうことによって、この新たな軍事態勢を崩し、戦争を止めようという試みの準備を、私たちは、ようやく、2023年の後半ころから少しずつ始めました。2024年に入ってからは、この共同の闘いのためのネットワークを作るために、沖縄・西日本各地での交流・連帯集会を始めました。

それは、4月の愛媛を皮切りに、8月に沖縄、9月に呉(広島県)、11月に大分で行なわれ、20252月に鹿児島で、ネットワーク結成集会を行ない、「戦争止めよう! 沖縄・西日本ネットワーク」を発足させました。そこでの結成宣言の最後で、私たちは、次のように決意しました。 

「知り、つながり、止める。」

平和を創り出すために、本日、私たちは新たな闘いに歩み出します。互いの情報を共有し、知恵を出し合い、つながり、連帯し、市民の共同の力で、「国家による戦争」を止めます。

そして20256月、沖縄・西日本各地から東京へ行き、「対政府交渉」や院内集会、市民連帯集会を行ないました。その後、10月には、大規模なミサイル弾薬庫の建設が始められた京都・祝園で、11月には、一棟目のミサイル弾薬庫完成間近の大分と、全国で最初に長射程ミサイルが配備される熊本で、12月には、巨大な総合軍事拠点の計画が進行中の広島・呉で、20265月には、大軍港であり、トマホークミサイルが配備される予定の福井県敦賀市で、日々活動を続ける現地の人びとと全国から駆け付けた人びととが連帯して大集会を行ないました。そして、今年10月には、三度目の「東京行動」を行ない、対政府交渉や市民連帯集会などを行なう予定です。

 

若い世代の新たな反戦運動始まる

今年2月の衆院選における高市政権の圧勝後、改憲と戦争準備に反対する国会前デモに、20代・30代の若い人たち、特に女性が多く参加するようになりました。選挙後に始められたこの国会前デモは回を重ねるごとに参加者が増え、419日の国会前行動とそれに連帯する全国各地のデモには総計5万人を超える人々が参加しました。

 この新たに登場した若い世代の人たちは、これまで運動を続けていた団体が呼びかけるデモに参加するだけでなく、自分たち自身でもデモや集会を主催し、行なっています。東京で始まったこのような新しい動きは、いま全国各地に広がっています。

2015年に、政府が、これまでの「専守防衛」政策を変更して、集団的自衛権を認める法律を制定しようとした時――つまり、米国が行なう戦争に日本も実戦的に参加できるようにしようとした時にも、大学生を中心とする若い人たちの反対運動が起こりましたが、今回の動きは、その参加人数の多さも、地域的な広がりも、当時の状況をはるかに超えるものと言えます。もちろん、アジアの他の国々に比べれば、その勢いや参加人数はまだまだですが、長い間、若い人たちによる顕著な反政府運動や反戦運動が存在しなかったここ日本においては、画期的な動きであると言えます。

 

(2)反戦運動を高め、深めていくための課題

 

 次に、いまこの日本に構築されている「中国への戦争態勢」を実際に崩し、新たな戦争を止めて行くための課題についてお話ししたいと思います。

 

① 軍事拠点化された地域の闘いと新たな若者の闘いの合流を!

 いま紹介した前者の闘いである、軍事拠点化が進行するそれぞれの地域を拠点にして、それら地域の人たちがつながり合う形でいま展開されている軍事拠点化阻止の闘い。首都圏で、2015年の集団的自衛権を認める安全保障関連法―「戦争法」反対運動以来、国会前を中心に行なわれ続けている反改憲・反戦の運動。そして、同じくいま紹介した後者の闘いである、若い世代の人たちを中心にして新たに展開され始めた反戦・反改憲・反高市政権の運動。

これらの動きが、もっともっと深く広く合流していくこと。そして、新たな戦争態勢を崩し、戦争を阻止する闘いを、日本全国を覆う大きなうねりにまで高めていくこと。先に紹介した、「戦争止めよう! 沖縄・西日本ネットワーク」による今年10月の東京行動も、そのような視座・目的の下で行なわれる予定です。

②「中国の脅威」を理由とする大軍拡―中国脅威論の克服と解体に向けて― 

冒頭で話しました「新たな軍事態勢」の構築について、政府・マスメディアは、「中国への抑止力」強化を目的とするもの、つまり、「中国の日本への攻撃を思い留まらせる」ためのものだとしています。多くの国民もその必要性を感じ、多額の予算を要するこの大軍拡に反対していません。戦争態勢の構築は、まさに、「中国の脅威」を理由・推進力として進められています。そうであるなら、この戦争準備を止めるためには、日本社会に蔓延する「中国脅威論」を克服・解体することが必要であり、必須です。

このような状況の一方、市民・国民の多くは、日々の生活の苦しさが増し、その維持に不安を抱え、社会保障・減税などの「生活の安全保障」を求めている状況があります。

そうであるなら、実は、いま、中国が日本を攻撃する理由もメリットもなく、逆に、日米による中国への攻撃的軍事態勢こそが東アジアでの戦争の危機を高めていることを多くの人に伝えることができれば、軍拡に対する国民の支持は減るはずです。

実際、相手に「脅威」を与える軍事演習は、中国軍が米国の近くで行なっているのではなく、日米NATOが中国のすぐ近くで行なっています。米中対立が言われますが、その軍事対峙線も、太平洋の真ん中ではなく、中国のすぐ近くの「中国の防衛ライン」――第一列島線と呼ばれるラインです。

 

大軍拡より「生活の安全」を――社会保障の充実を!

軍拡は増税や社会保障費の削減とセットで行なわれるものですから、日本の軍事費の増大など必要でなく、増大はむしろ戦争の危機を高めているという認識を広げていくことができれば、軍拡を止めて軍事費を削り、それを社会保障費などに回すことを求める人々が増えていくと思います。

以上のことから、戦争態勢の構築―大軍拡を止めて行くためには、「中国脅威論」を克服・解体する作業が急務だと思います。

 

ちなみに、私が所属している「ノーモア沖縄戦・えひめの会」では、2年余り前に、中国脅威論を克服するためのリーフレット『本当に「中国は攻撃して来る」のだろうか?』を発行し、その普及活動を行なっています。このリーフレットを多くの人に読んでもらうことによって、大軍拡を支持する世論を変えて大軍拡をストップさせ、戦争を止めたいと、行動しています。私たちはこの行動を、【戦争をさせない! 中国への戦争準備をストップ! リーフレット100万部配布プロジェクト】と銘打って行なっています。

このプロジェクトには、全国各地からの呼応があります。私たちの呼びかけに応えてくれた全国各地の人びとが、それぞれの地域の街頭で、あるいは、各戸配布の形で、配布活動を行なってくれています。一人で数千部もの配布活動を行なってくれている人もいます。現在、その数は13万部を超えています。100万部にはまだまだ遠いですが、いまも、呼びかけに応えてくれる新たな人々が登場しています。

 

③ グローバルサウスの人びとの闘いと連帯し得る質を持つ反戦運動へ

 

 最後に、もう一つ大事な課題があります。それは、かつて欧米日・帝国主義列強の侵略・植民地支配を受けたグローバルサウスの人びとと連帯し得る質を持つ反戦運動にしていくという課題です。

 

世界史の大転換期としての現在

 ご存知のように、数百年にわたって世界を支配して来た欧米日諸国は、いま、歴史的な没落過程に入り、帝国主義諸国による世界支配の体制は崩壊し始めています。第二次世界大戦後も世界の政治・経済を支配して来た(「先進国」という名の)西側・帝国主義諸国がその力を失っていく一方、中国・インド・インドネシア・ブラジルなどを中心にグローバルサウスの国ぐにが経済発展を遂げ、政治的・外交的にも国際社会における存在感や発言力を獲得して来ています。つまり、世界はいま、数百年来の歴史的大転換期にあります。

 

平和を求めるグローバルサウスの国ぐに

これらの国ぐには、「平和な国際環境と紛争の平和的解決」を追求することを原則とし、かつ、具体的に、ベトナム・イラク・リビア・パレスチナ等々に対する侵略戦争に反対して来ました。

米国を筆頭とする「西側中心国」の支持・支援のもと、2023年以降新たに進行している、イスラエルによるパレスチナへの攻撃・虐殺を止めるために精力的に動いているのも、中国を含むグローバルサウスの国ぐにです。

帝国主義・植民地主義に反対し、「平等・公正で平和な国際秩序」を求めるこの姿勢は、1955年に開催されたアジア・アフリカ会議における「平和十原則」や、その後の非同盟運動に一貫して存在し続けて来ているものです。

いま行なわれているベネズエラ・キューバ・イランなどに対する米国のなりふり構わぬ行動も、百年近くにわたって世界を支配して来た自国の没落過程に対する「あがき」と言えます。今後、その追い詰められた状況下で、さらに暴力的・軍事的・理不尽に行なわれるであろう米・西側の行動にどうやって歯止めをかけるかが、この大転換期を生きる私たちに課せられた重要な課題であると思います。 

いま東アジアで中国への戦争態勢を構築している国ぐには、まさに米国を中心とする、これら西側・中心国です。そして、これらの「戦争態勢・対中軍事包囲網」は、グローバルサウスの中心である中国の弱体化を図ることによって、自らの没落を防ぐためのものです。

したがって、この日本・西側による「中国への戦争態勢」構築に私たちが抵抗し、それを崩していく闘いは、いま、ベネズエラ・キューバやイランで米国の侵略に対して闘っている人びとと共通する闘いの性格を持つものとも言えます。

 言い換えれば、現代世界の支配構造を踏まえれば、日本における私たちの闘いは、日本国家等・西側帝国主義に反対し抵抗する闘いとして、グローバルサウスの人びとと連帯し得る性格を、客観的に持っているものと言えます。

 日本での反戦運動は、現在、このような認識や視座・姿勢を持つものにはなっていません。しかし私たちは、日本における私たちの闘いをこのような認識―視座をもって捉え返し、私たちの反戦の闘いを、このような視座の射程の下、まさにインターナショナルな闘争として行なっていかなければならないと思います。そしてそれは、人類史におけるこの歴史的大転換期に、ここ東アジアで生きる私たちの歴史的課題でもあります。 

 以上、今日のこの場が、私たちアジアに生きる民衆・ピーピルによる反戦のネットワーク――〈アジア反戦民衆ネットワーク〉の形成の契機にならんことを願いながら、私の発表を終えたいと思います。


高井弘之(たかい・ひろゆき)

「戦争止めよう! 沖縄・ 西日本ネットワーク」共同代表。「四国朝鮮学校の子どもたちの教育 への権利実現・市民基金」事務局スタッフ。

著書に『「中国への戦争態勢」は誰のための何のためのものかー東アジアでの戦争を止めるためにー』 『礼賛される「日本150年」とは、 実は、何か―日本ナショナリズムの解体と新たな列島社会の形成に向け て―』他。

愛媛県今治市在住。