Wednesday, August 05, 2026

玉城愛:運動と性暴力の問題 「wamだより」vol.63 から転載 TAMAKi Ai: Sexual Violence and Social Movements - Reposted from WAM Newsletter, Vol. 63

「wamだより」の表紙の一部

戦時性暴力、とりわけ日本軍性奴隷に焦点をあてた記憶と活動の拠点として2005年6月に東京・新宿区にオープンした、アクティブ・ミュージアム「女たちと戦争の平和資料館」(wam)の会報「wamだより」vol.63 (2026年7月)より許可を得て転載します。(写真は転載していません。)

このサイトでは、社会運動の中の性暴力を多く取り上げてきました。「平和」「人権」の名の下に行われる活動の中で性暴力、セクシュアルハラスメント、性差別がいまだに横行しています。声を上げようとすると、運動のために我慢しろとか、右派を利するだけだとか、黙らせ圧力が強まります。残念なことにそのような黙らせ圧力の中には差別を内面化した女性によるものも少なくありません。そういった中、声を上げ続けてきた女性たちの一人、玉城愛さんによる本質に迫る文を、ここに転載したいと思います。

「辺野古沖転覆事故」で亡くなった金井創氏も、生前性暴力を行っていたとの被害者による告発が、琉球新報で取り上げられました。私はこの件について、被害者から直接話を聞いた友人から数年前に話を聞いていました。何かしたほうがいいのではないかと思いながらも、自分は行動しませんでした。そのことによって自分も「黙らせ圧力」に加担していました。自分が今できることといえば、この件について運動側からも出ている二次加害的な発言に対して批判し、抗議し、被害者の立場に立った発信をしていくことではないかと思っています。

本文より抜粋します。


家父長的な社会 において、性暴力は相手を支配するための手段であり武器 として使われてきた。その暴力性は、「非暴力」や「反戦」の 思想からどれだけかけ離れたものでしょうか。

 

玉城さんは、40年前以上も前に沖縄の女性たちが運動内の性差別に声を上げてきたことに触れながら、「記録」に希望を見出しています。

文末に、いままでこのサイトで扱った関連記事のリストを載せています。私も、「記録」の試みの一端を担うことができればと思っています。


運動と性暴力の問題


玉城愛(沖縄女性社会運動史研究)


「運動」が見えなくしているもの 

 先月 6 月 17 日付の『琉球新報』で、金井創氏(故人)が過 去に性暴力の問題を起こしていたことが報道されました。 社会運動の中にいる男性たちの性差別問題や性暴力の問題 をよく見聞きしていたので、「またか」と思いました。

 「正義」の名の下に振り上げられる拳は国家権力に向け られるものであると同時に、家庭や運動内部で、時には地域で女性に振りかざされることもありました。まるで「日 米安全保障に反対することは男性のロマンであり、必ずしも女性の人権に結びつくものではない」と言われているような気持ちです。その状態は、米軍専用施設や新基地建設 に反対する運動が一部の男性の「生きがい」と化し、自分の名声をあげるための活動にすぎないということです。 

 軍事主義や家父長制は歴史や文化、芸術の破壊、女性や こどもの人権を奪ってしまう。軍事を用いた「安全保障」が 人間の生命や耕してきた土地を破壊する。家父長的な社会 において、性暴力は相手を支配するための手段であり武器 として使われてきた。その暴力性は、「非暴力」や「反戦」の 思想からどれだけかけ離れたものでしょうか。仮に「人権は 大事」だと加害を加えた側が思っていたにせよ、性暴力の 加害を与えた後も堂々と運動の場に居座る男性自身の人権 感覚と、それを許容してしまう「運動」そのものが孕んでい る問題を問い直し、公の問題にしていかなければなりせん。 

 軍事化された米兵の身体と、家父長制のなかで男性性を内面化してきた日本人男性及び沖縄男性の身体。自らの特 権意識と男性性をそぎ落とさなければ根本的な差別の問題 は変えられません。なぜなら無意識のうちにも、誰かを圧 倒させてしまう暴力へと深く結びついているからです。 

声を上げ続けてきた沖縄女性たち 

 運動の内部に潜む差別や暴力の問題は、最近から始まっ たものではありません。1980 年に沖縄で結成された「80 年 沖縄女の会」は、家庭や学校、職場、地域、組合運動など、あらゆる場所に性 差別が存在していると指摘したグルー プです。特に、労働組合の青年部にいる男性たちへの批判は今日の問題に繋がっ ています。反米軍基地を掲げて、売買春の問題がなくならないのは米軍基地があ るからだと叫び訴えた組合青年部の男性らが、デモが終わった後その足で風俗街へ向かう実態を明らかにしま した。

 また、高里鈴代さんがある 集会で男性に言われた「基地 問題を女性問題に矮小化するな」といった発言もそうです。 沖縄で暮らす女性たちにとっ て軍事主義を纏った安全保障の問題は女性やこどもの人権問題そのものです。 

 筆者自身も、運動の中でハラスメントを受けたことがあ ります。当時市議をしていた 30 代男性に「AV 女優に似ている」と言われ、「カンパするから僕と連絡をとりあってほ しい」という東京在住 50 代半ばの男性も出現しました。「妻 と激しいセックスをした」話をしてきた大阪在住の 70 代男 性もいました。運動の場にはクソ野郎ばかりしかいないの だろうかと頭を抱えそうになります。 

記録がもたらす希望 

 運動が目的以外のところでつまずいてしまう時、わたし は「80 年沖縄女の会」の活動に支えられました。40 年以上 も前に、運動の内部における性差別の問題に声をあげてい た女性たちが存在していて、しかもその女性たちの史資料 が残されていることに希望を感じました。

  わたしは沖縄の政治史において住民たちによる運動が重 要な役割を果たしてきたと認識しています。運動によって 人々は暮らしと土地を守り、自由を主張することはわたし たちの権利です。戦後の貧しい生活を生き延び、1975 年 の国際女性年やそのあとに続く国連女性の十年をきっかけ に、性別役割分業や性差別に反対してきた女性たちが積み 上げてきた結果です。記録されたあしあと、まだ記録され ていない女性たちの歴史には、十分な価値があります。 

 最近、沖縄で生まれ育ったこどもたちにどんな風景や思想を残したいか考えるようになりました。温かいご飯を食 べて、安心して眠る場所があること。信 頼できる大人や友人にであうこと。小さな希望を積み重ねて、ゆっくり大人にな っていくこと。耕した豊かな土地が侵略 されて破壊されてしまうような世界では なく、新緑が芽吹いて花が咲き、実がな るような優しい場所を、自分の身の回り から築いていきたいと思います。

(転載以上)

wamについてはこちらをご覧ください


関連記事・リンク(当サイト以外も含む)

【独自】辺野古沖転覆の死亡船長が過去に性暴力 被害女性が証言 「運動離れて」求めに応じず 沖縄

「社会運動の中の性暴力 被害者を孤立させるな」! 『琉球新報』10月3日掲載 

性的被害、社会運動でも…寝室侵入された女性「ほとんどが泣き寝入り」(琉球新報21年9月28日)

沖縄の運動で起きたセクシュアル・ハラスメントの報道(「広河隆一氏とデイズジャパン経営陣の人権侵害を忘れない会」ブログより)

那覇市長選 「オール沖縄」予定候補がセクハラ認める

広河隆一氏の性暴力 女性差別抜け落ちた「人権」

『週刊金曜日』4月15日号特集「広河隆一氏による性暴力・パワハラと『DAYS JAPAN』最終号を考える」

「偉人」の性加害に長崎人権平和資料館はどう向き合ったか:「週刊金曜日」24年11月22日号から転載 

「女性を踏み台にするデモはいらない」 社会運動内部での性暴力に抗議相次ぐ

すべての馬鹿げた革命に抗して



Friday, July 31, 2026

ウクライナ戦争も、イラン戦争も、「米国とシオニズム勢力による"ユーラシア枢軸"への戦争」、そして最終標的は中国:ペペ・エスコバル

イラン情勢が激しく動いています。残念ながらメインストリームメディアの報道を読んでいても本当に何が起こっているかはあまりわかりません。パキスタンやイランの当事者に直接のパイプを持っているジャーナリスト、ペペ・エスコバルと元CIAアナリストのラリー・ジョンソンの情報は非常に貴重です。7月29日の、ナポリターノ判事の番組でのペペの発言をAI訳しました。米国イスラエルが仕掛けたイラン戦争の手綱は完全にイランが握っており、トランプが、面子をつぶさずに収束できるかどうか、藁をもすがるように毎日、パキスタンのムニール元帥に電話しているということです。中間選挙が迫っているというだけではなく金融各社の分析によると戦略石油備蓄が8月中旬までしかもたない、これがトランプにとってのタイムリミットだという指摘もあります。いまやトランプは多極化勢力を「ユーラシア枢軸」という言葉を使って敵視しているという指摘も重要です。ロシア、中国、イランです。ウクライナ戦争とイラン戦争の関連を証明するかのごとくゼレンスキーはカスピ海でイラン船を攻撃しました。米国を筆頭とする西側連合の、多極化勢力に対する世界規模の戦争はすでに始まっているのです。このビッグピクチャーを把握するために、10年以上も、「机上アナリスト」とは違いユーラシア諸国に足を運んで取材してきたペペ・エスコバルの発信から目を離せません。

以下、AI翻訳に手を入れたものです。翻訳は一部冗長なところは省略しています。アップ後修正する可能性があります。@PeacePhilosophy 

    

ナポリターノ判事: トランプ大統領の威嚇や強硬な発言は、イラン指導部にどのような影響を与えているのでしょうか。

ペペ・エスコバル: ゼロどころかマイナスです。彼らはまったく意に介していません。しかし、外交のための小さな可能性でも残されている限り、その可能性を閉ざすことはしていません。そして、そのことが今週月曜日にラワルピンディで起きた出来事につながります。ラワルピンディはイスラマバードの姉妹都市で、パキスタン陸軍総司令部が置かれている場所です。さて、今週月曜日にラワルピンディを訪れたのは誰だったと思いますか。米国の代表団です。彼らは一つの提案を持ってきました。米国から直接持ち込まれた提案です。しかし、私たちの情報源であるパキスタン側の仲介者によれば、その提案はJ・D・ヴァンス副大統領のオフィスから出たものだということでした。

ナポリターノ判事: つまり、それはクシュナーやウィットコフではなかった。

ペペ・エスコバル: ええ、違います。違います。違います。代表団のメンバーが誰だったのかについては明らかにされませんでした。ラリーと私に対して「おそらくJ・D・ヴァンス副大統領のオフィスから出た提案だ」と確認してくれた情報源は一人だけです。しかし、彼らが持ってきた提案は非常に率直なものでした。「われわれはMOUに戻る用意があるかもしれない。ただし、米国側の条件でだ」というものです。パキスタン側は月曜日にその提案を聞き、直ちにイラン側へ伝えました。イラン側はそれを見て、「これは冗談なのか」と言いました。

なぜなら、それはイランが最初から言い続けてきたことと正反対だったからです。まず、すべての戦争を終わらせることについて協議する。次にホルムズ海峡について協議する。その後、凍結されたわれわれの資金を返還し始め、制裁を緩和する。そして最後に核問題について協議する。それがイランの立場です。ところが米国は、その順番を百八十度ひっくり返そうとしている。最初から核問題を議題にしようとしているのです。

ですからイラン側は当然、「今週はそれには応じない。われわれはいつでもMOUに戻る用意はある。なぜなら、MOUを離れたことは一度もないからだ。MOUを壊したのは米国だ。MOUを壊したのは米国大統領だ。われわれは戻る。しかし戻るのは、これまで協議してきた内容と、双方がMOUの14項目を履行するという約束に戻るということだ」と答えました。現在の状況はまさにそこです。私たちは再び膠着状態に陥っています。そしてもちろん、仲介役であるパキスタンは、いつものようにその板挟みになっています。

ナポリターノ判事: 私たち共通の友人であり同僚でもあるジョン・ミアシャイマー教授は、「イランは、凍結されている資産がすべて解除され、その資金がイランの銀行口座に戻るまでは、米国とは話し合うべきではない」と言っています。イランは、まず米国にそのような誠意ある行動を取らせ、それから初めて交渉に応じるべきだ、と。そうでなければ、トランプ大統領に約束を守らせることはできません。

ペペ・エスコバル: そのとおりです。まず第一に、ジョンは正しい。そしてイランもそのように考えています。しかし、それでもイランは、たとえばホルムズ海峡をめぐる技術的な問題について話し合いを始めることは検討しています。ちなみに現在、この問題は主としてオマーンが扱っています。イランとオマーンは、ホルムズ海峡について考えられるさまざまな仕組みをめぐり、技術的な協議を続けています。ですから、米国がその協議に加わる可能性もあります。しかし、そのためにはまず、米国が自らの約束に目を向け始めなければなりません。

そして、そのことはMOUの14項目にはっきり書かれています。まず制裁緩和を始めること。そして少なくとも、カタールの銀行にある60億ドルを返還し始めることです。カタール側は以前、その作業を進めていました。しかし結局、米国側は「いや、それはやめろ」と言ったのです。

ナポリターノ判事: トランプ大統領の威嚇や強硬な発言に対して、パキスタンはどのように受け止めているのでしょうか。

ペペ・エスコバル: 判事、これは実に興味深い話です。私たちが連絡を取り合っている情報源や仲介者は、ラリーにも私にもこう言いました。「トランプは何日もの間、毎日のようにムニールに電話をかけていたのです。」

ナポリターノ判事: ムニールとは誰ですか。首相ですか。

ペペ・エスコバル: アシム・ムニール元帥です。パキスタン陸軍トップです。

ナポリターノ判事: 陸軍トップですね。パキスタンでは、その地位は首相以上の権力を持っていると言われています。

ペペ・エスコバル: そのとおりです、判事。パキスタンで最も権力を持っている人物です。疑いようがありません。シャバース・シャリフ首相より、はるかに強い権限を持っています。

ナポリターノ判事: 陸軍トップに毎日電話をかけて、何と言っていたのですか。

ペペ・エスコバル: 要するに、こう言っていたのです。「イランとの交渉に私を戻してほしい。ただし、私が屈辱を受けるような形では困る。」これは私たちの情報源の一人が使った表現です。「私は屈辱を味わいたくない。」彼にとって「屈辱」とは、実際には外交を行うことなのです。

というのも、彼が署名したMOUは、トランプ大統領が署名した文書だからです。つまり、イランのペゼシュキアン大統領と米国大統領の双方が約束した文書なのです。ところが米国は、そのMOUに書かれた14項目の約束を一つとして履行しませんでした。そこに問題があります。そして今、彼は時間との勝負を強いられています。しかも、誰もが知っているように、その「時計」を握っているのはテヘランです。

MOUとは、ここ数週間、いや数か月にわたりイランが主張してきた内容に沿って手続きを定めた文書にすぎません。もちろん米国側はそれを読み、修正を加え、さらに修正を重ね、最終的には署名しました。つまり理論上は、その文書に同意したということです。しかし実際には、その内容を一つも履行しませんでした。

ですから、イランが言っていること、そして月曜日にパキスタン側へ伝えたことは非常に明快です。「米国の提案は見た。しかし、われわれの提案はその正反対だ。それでも、この扉は開けておく。」アラグチ外相は公の場に出るたび、いつも同じことを言っています。「われわれは外交に反対しているのではない。しかし、その前提には相互の尊重がなければならない。」そして、約束は双方のものです。双務的なものです。

一方だけが約束を破ることはできません。あなた方が約束を破るなら、われわれも約束を破ります。一方的なやり方の時代は終わったのです。しかし、米国はいまだにそれを理解していません。あるいは理解できないのです。これは私たちの友人アリステア・クルックが繰り返し言っていることでもあります。たとえトランプ自身が同意したとしても、実際には実行できない。あまりにも大きな圧力を受けているからです。そのとおりです。そして彼はMOUの内容さえ理解していません。14項目を本当に読んだことがあるのかどうかさえ、疑わしいくらいです。

ナポリターノ判事: 交渉の議題は、パキスタンが決めるのですか、それとも米国ですか、あるいはイランですか。

ペペ・エスコバル: いいえ。議題はMOUに書かれている内容によって決まります。そのMOUは当事者である両国が交渉し、もちろんパキスタン、オマーン、カタールが仲介役として意見を出してまとめ上げた文書です。しかし、その文書は今も存在しています。中国側もこの点を繰り返し強調しています。先週、キルギスで開かれたSCO首脳会議で、王毅外相は基本的にこう述べました。「交渉の場に戻り、MOUで約束したことを履行しなさい。再交渉はありません。」誰もが分かっていることです。再交渉するものなど何もありません。最初の交渉でさえ、まだ具体的な成果も実務的な成果も何一つ生み出していないのですから。

ナポリターノ判事: なるほど。しかし、なぜイランは、信用できない相手とそもそも交渉などするのでしょうか。

ペペ・エスコバル: そのとおりです。トランプのように信用できない相手と、なぜ交渉するのか――これが9,000万人のイラン国民が口にしていることです。殺害された最高指導者ハメネイ師の葬儀には4,000万人が街頭に出ました。その人々の間には、「米国と交渉しようとすること自体がばかげている」という国民的な共通認識があります。米国はまたしても、いかなる合意も守らなかった。だから交渉しても無意味であり、この戦争は戦場で勝ち取るしかない――これがイランの国民的コンセンサスです。

これは最高安全保障会議やマジュリス(国会)、IRGC(イスラム革命防衛隊)の将軍たちだけの考えではありません。シーラーズでも、マシュハドでも、ゴムでも、街の人々がそう言っているのです。

そして、イランのメディアもまさにそのことを伝えています。イランのメディアは非常に活発で創造的です。決して一枚岩ではありません。さまざまな意見があり、政治討論も非常に充実しています。テレビでも、ソーシャルメディアでも同じです。ですから、「交渉はまったく無意味だ」という国民的な一致がある一方で、それでも外交の扉だけは開いておくべきだという考えも共有されています。それがイラン外交の一部だからです。

アラブ世界、より広いイスラム共同体(ウンマ)、そしてグローバルサウス全体で、人々は「イランは決して外交を放棄しない」という姿勢を高く評価しています。イランはMOUも含め、考え得るあらゆる外交的解決策を試しました。しかし何一つ実を結ばなかった。それは、米国が約束を破り続けたからです。しかし、それでも終わりではありません。今週もそうですが、このわずかな外交の可能性が残っている限り、その扉は閉ざさないのです。

しかし、トランプは、数時間前にもまたイランを爆撃すると脅していましたよね。

ナポリターノ判事: イランは核兵器を持っているのでしょうか。

ペペ・エスコバル: (笑)それをどう答えればいいのでしょう。6000億ドル級の質問と言うべきでしょうか。おそらく誰にも分かりません。確かなことを知っている者はいないからです。もちろん、いくつかの仮説があります。「核兵器の完成まであと2、3週間だ」という説もあれば、「すでに保有している」という説もありますし、「第三国から入手した」という説もあります。あらゆる可能性があり得ます。というのも、この情報を確実に知っている人間は誰もいないからです。知っているとすれば、最高指導者モジタバ・ハメネイ師と、13人で構成される最高安全保障会議のごく限られたメンバーだけでしょう。しかも13人全員ではありません。

ナポリターノ判事: マクレガー大佐は、ロシアも中国も、イランが倒されることを決して許さないだろうと言っていました。そして、トランプもネタニヤフも、そのことを理解していないとも言っていました。

ペペ・エスコバル: そのとおりです。まったくそのとおりです、判事。実は、このことこそ、ここ10年ほど私が取り組んできた仕事の中心でした。ユーラシア統合、BRICS、SCO(上海協力機構)、そしてロシア、中国、イランの戦略的パートナーシップを研究してきました。この三か国こそ、私が10年以上にわたって、ほぼ毎日のように注目してきた国々です。実際に現地へ足を運び続けてきました。米国の机上の分析家たちは、そんなことは決してしません。ですから、ここが核心なのです。

ペペ・エスコバル: 多極化へと続く、この長く曲がりくねった道を築いている三つの文明国家――それがロシア、中国、そしてイランです。しかも、この三か国はいずれも長い歴史を持つ文明国家であり、豊かな外交経験と地政学的経験を積み重ねてきました。そして三か国の戦略的パートナーシップは、互いに密接に結び付いています。ここから、数日前に起きた非常に興味深い出来事につながります。

ペペ・エスコバル: ドナルド・トランプ大統領は、それまで「ユーラシア」という言葉を一度も口にしたことがありませんでした。ところが、数日前、初めて「われわれはユーラシア枢軸を警戒しなければならない」と発言したのです。彼は何を意味していたのでしょうか。要するに、誰かが彼の頭の中に、「新たな『悪の枢軸』が存在する」という考えを植え付けたのです。そして、その新たな「悪の枢軸」とは、米国の国家安全保障ドクトリンによれば、米国にとって戦略的かつ存立に関わる脅威とされる三か国、すなわちロシア、中国、イランのことです。

 しかし、判事がおっしゃったように、ワシントンの政策コミュニティ全体を見渡しても、その言葉が本当に意味するところを理解している人は、おそらく1%にも満たないでしょう。

ナポリターノ判事: なるほど。ところで、常軌を逸したゼレンスキーは、ウクライナでの戦争とイランとの戦争を、何か奇妙な形で一つに結び付けようとしているのでしょうか。そうなれば、米国は単なる資金提供国ではなく、交戦当事国になってしまいますが。

ペペ・エスコバル: 判事、それは奇妙な話ではありません。極めて計算された行動です。私たちは皆、この二つは別々の戦域、別々の戦場で行われているものの、本質的には同じ戦争であることを知っています。つまり、米国とシオニズム勢力によるユーラシア枢軸への戦争なのです。ロシアに対する戦争は現在も続いています。イランに対する戦争も現在進行中です。そして、その次に控えている最大の戦争が中国との戦争です。誰もがそのことを知っています。つまり、これらの戦争は最初から相互に結び付いていたのです。ですから、米国の評論家たちが「戦争同士がつながっている」と今さら発見したかのように語るたびに、私は苦笑してしまいます。違います。最初から同じ戦争なのです。そしてゼレンスキーが今回やったことは、もちろん命令に従ってですが、カスピ海でイランの船を攻撃することによって、その二つの戦争を実際に一つへ結び付けようとしたのです。

これは極めて危険です。狙いは、イランをウクライナとの戦争に引き込み、さらにウクライナを支援しているヨーロッパ諸国とも対立させることです。そうなれば、ヨーロッパを対イラン戦争へ引きずり込むことになります。つまり、ミリ単位で計算された作戦なのです。

しかし、イランはこの罠には乗りません。第一に、なぜイランがウクライナを攻撃しなければならないのでしょうか。ロシアはすでにウクライナに壊滅的な打撃を与え続けています。それとは別の問題です。

ただし、カスピ海こそがこの問題全体の鍵です。カスピ海は基本的に、ロシア、イラン、カザフスタンを中心とする内海です。もちろんアゼルバイジャンもありますが、ロシア、イラン、カザフスタンほど重要ではありません。

ロシアとイランの間でやり取りされる兵器や情報は、カスピ海を経由しています。ロシア側ではカスピ海北部の港アストラハンを出発し、カスピ海を通ってテヘランまで運ばれるのです。もちろん、ペンタゴンはそのことを知っています。だからこそ、何らかの形でカスピ海に干渉する必要があるのです。

さらに複雑なのは、地政学的な側面です。失礼、地政学的な側面ですが、ロシア・イラン・インド国際南北輸送回廊(INSTC)もカスピ海を通っています。ロシア側の重要港はアストラハンです。イラン側の重要港は、イランのカスピ海沿岸にあるバンダル・エ・アンザリーです。ちなみに、この港はすでに米国による爆撃を受けています。私は昨年、この輸送回廊についてのドキュメンタリーを撮影するため現地を訪れ、バンダル・エ・アンザリーまで行きました。そして、実際にカスピ海も航行しました。

 ですから、カスピ海はロシアとイランの双方にとって不可欠なのです。そこでウクライナは、「ここで少しかき回してやろう」と考えたのでしょう。しかし非常に興味深いことに、昨日から今日にかけて、ウクライナ側はイランに対し、事実上「これは間違いだった」と謝罪しました。なぜなら、自分たちの行動がもたらす結果を理解したからです。

イランには、その気になればウクライナに甚大な損害を与えるだけの能力があります。しかし、その必要はありません。ロシアがすでにそれをやっているからです。

ですから、判事、地政学的に見れば、このチェス盤は途方もなく複雑で、その複雑さは日ごとに増しています。

ナポリターノ判事: ヴァンス副大統領側の交渉担当者たちは、ホワイトハウス側の交渉担当者たちと対立しているのでしょうか。

ペペ・エスコバル: 私たちにも分かりません。パキスタン側も分かっていません。ただ、彼らが私たちに話したのは、「この提案は、おそらく90%、いや100%近い確率でJ.D.ヴァンス副大統領のオフィスから出てきたものだ」ということです。つまり、この提案は、理論上はホワイトハウスから直接出されたものではない、ということになります。

 そして、この仲介団は常に米国側と連絡を取り続けています。アシム・ムニール元帥とそのチームは、必要であればいつでもドナルド・トランプに直接連絡を取れる立場にあります。ですから、彼らの見方にも十分な根拠があるのです。

ここで改めて強調しておきたいのですが、ラリーと私は、いつも「これは一人の情報源から得た話です」と明言しています。しかし、その情報源は極めて重要な人物です。実際に交渉の席にいて、米国側からのメッセージを自分の目で読み、さらに米国側の担当者とも直接話をした人物だからです。

ナポリターノ判事: あなた方は、そのパキスタンの仲介者とどの程度近い関係にあるのですか。「一体これはどういう方向へ向かっているのか」と率直に尋ねられるほど近い関係なのでしょうか。

ペペ・エスコバル: はい、そのくらい近い関係です。ラリーと私は、週に3~4回は直接質問を送っています。しかも、同じことを何度も確認します。というのも、状況が非常に曖昧なことが多いからです。ラリーは情報分析の専門家ですし、私はパキスタンで長く仕事をしてきました。パキスタンという国は非常に複雑で、物事を読み解くのが容易ではありません。ですから、同じ質問を3回、4回と繰り返して確認する必要があるのです。

もちろん、パキスタン国内には、政府内部も含めてさまざまな利害や思惑がぶつかり合っています。ですから、私たちは確信が持てるまで慎重に確認します。仲介者やパキスタン情報機関から得た情報を公に語るときには、「これで間違いない」と100%確信できる状態でなければなりません。

また、可能であれば、私はテヘラン側から別の解釈も得ようと努めます。答えてくれることもありますし、「これは国家安全保障に関わるので話せない」と言われることもあります。しかし、その場合でも「それは間違っている」と否定されることはありません。

実際、この数日間の動きを見れば分かりますが、双方の代表団は絶えず行き来しています。パキスタンのハイレベル代表団がテヘランへ向かい、イラン側もパキスタンへ向かう。その往復が休みなく続いています。パキスタンは主要な仲介国ですから、そこには相当程度の信頼関係が存在しているのです。

例えば私たちは、「お前たちはパキスタン情報機関の手先だ」といった批判を、あちこちから受けます。しかし、そんなことはありません。私たちは情報を受け取り、その情報に筋が通っているかどうか、自分たちで分析しているだけです。

これまでのところ、受け取った情報の約90%は非常に正確でした。そして私たちは、常にイラン側の情報源にも照らし合わせて検証する機会を持っています。もちろん、戦時下では巨大な「戦争の霧」の中にあるわけですから、すべてが明瞭というわけではありません。

ナポリターノ判事: つまり、イランがホルムズ海峡を支配していること、原油価格が上昇していること、そして世界経済、とりわけ米国経済が景気後退に近づいていること、さらに中間選挙まで4か月を切っていることを考えると、ドナルド・トランプに残された時間は少なくなっているのでしょうか。

ペペ・エスコバル: そのとおりです。間違いありません。そして、本人もそれを分かっています。実際、彼に残された時間は8月中旬までです。現在出ている最も信頼できる分析報告書も、すべてその点を強調しています。

ナポリターノ判事: 8月中旬ですか。あと2週間半ほどですね。なぜそう言えるのですか。

ペペ・エスコバル: それが、米国の戦略石油備蓄(Strategic Petroleum Reserve)が限界に達するレッドラインだからです。8月中旬。それが決定的な節目です。ゴールドマン・サックスの報告書をはじめ、あらゆる主要レポートがそう分析しています。

私も、ワシントン政界に古くからいる情報源の一人からレポートを受け取りました。その人は、私の記事を読んで「一番重要な点を書き忘れている」と指摘してきたのです。そして、膨大な数字が並んだ報告書を送ってくれました。私はそれを見て、「なるほど、レッドラインは8月中旬なのだ。それ以降ではない」と理解しました。そして、トランプもその数字を見せられているので、それを知っています。

これが第一の理由です。第二は、ペルシャ湾岸一帯、GCC諸国、それにヨルダンを含めて配置されている約20か所の米軍基地の戦力が消耗していることです。ちなみに、ヨルダンにある基地の一つは、昨日もIRGC(イスラム革命防衛隊)の攻撃を受けました。イラクのアルビルも同様です。

 約20か所ある基地のうち、およそ80%が機能を失っています。現在でもある程度運用可能なのは、せいぜい4基地ほどです。残りは事実上、壊滅状態にあります。

ペペ・エスコバル: そして、判事、これは非常に重要な点ですが、私たちの知る限り、こうした状況は先週金曜日(7月24日)の会議で議論されました。その席では、J.D.ヴァンス副大統領とキーン将軍が、トランプに対して実際の状況を説明しようとしていたのです。

ちなみに、トランプが爆撃を停止したのは、その会議があったからです。

ナポリターノ判事: イランと核兵器の問題に戻りたいと思います。ラリー(ジョンソン)は、イランは自国の領土内で核爆発を行う可能性があるかもしれないと言っていました。何かを攻撃するためではなく、米国とイスラエルに対して「われわれには能力がある」というメッセージを送るためです。そのようなことは可能なのでしょうか。

ペペ・エスコバル: 実は、この情報はラリーと私が受け取ったものです。その根拠となったのは、イランのペゼシュキアン大統領とパキスタンのシャバーズ・シャリフ首相との間で交わされた、極めて重要な電話会談でした。ペゼシュキアン大統領はその電話で、こう述べたのです。「もし米国がわれわれの民間インフラを攻撃し続けるなら、われわれは自国の領土内で核装置を爆発させる可能性がある」と。

その趣旨は「抑止力として、自国の領土内で核装置を爆発させる」というものでした。攻撃のためではなく、イランには抑止能力があることを示すためです。そして、その内容をシャリフ首相は自らのチームに指示し、米国側へ伝えさせました。「電話ではこのような話があった」と。つまり、米国側もこの情報を受け取っているのです。

ナポリターノ判事: そのような行動がもたらす影響や、それに対して米国やイスラエルがどう反応するかを考えなければなりませんね。

ペペ・エスコバル: もちろんです。まさにそのとおりです。ですから、ペゼシュキアン大統領が、それほど機微に触れる内容をパキスタンのシャバーズ・シャリフ首相との電話で実際に伝えたのだとすれば……。 その件については、ちょっとした情報戦が展開されています。「あの電話はオープン回線だったのではないか」「つまり、誰かに聞かせることを前提に話していたのではないか」という見方です。

ナポリターノ判事: なるほど。では、なぜ今すぐ爆発させて戦争を終わらせないのでしょうか。彼らは何を待っているのですか。

ペペ・エスコバル: それはファトワー(宗教令)があるからです、判事。ハメネイ師によるファトワー、そして言うならば「ファトワー2.0」とでも呼ぶべきもの――それが現在も有効なのです。

まず第一に、イランの政治体制――宗教的民主制と呼んでもよいでしょうが、本質的にはそういう体制です――の立場からすると、最高指導者は父のファトワーを撤回し、「われわれは今、新しい時代に入る」と宣言しなければなりません。もちろん、その可能性自体は検討の対象にはなっています。私たちが知る限り、この問題についてモジタバ師が相談する相手は、せいぜい二、三人でしょう。それほど機密性の高い問題です。

さらに、シーア派イスラムの立場から見ても、これは極めて重大な決断になります。というのも、第一に、ファトワーを撤回する責任を負うことになるからです。第二に、そもそもそのファトワーは、シーア派イスラムの教義では、核兵器は無差別に民間人を殺傷するため許されない、という考え方に基づいているのです。

ナポリターノ判事: しかし、そのファトワーは、核兵器の使用だけでなく保有そのものも禁じているのですよね。

ペペ・エスコバル: はい、そのとおりです。極めて包括的なファトワーです。核兵器に関わるあらゆる枠組みそのものが禁じられています。ですから、それを覆すことは、途方もなく大きな決断になります。もちろん、その理由を地政学的な観点だけでなく、宗教的な観点、さらにシーア派神学の観点からも説明しなければなりません。そうなると、問題は非常に複雑になります。

(翻訳、以上)


Tuesday, July 21, 2026

神奈川新聞 「日本人は歴史を知る必要ある」 乗松聡子 Kanagawa Shimbun's Interview with Satoko Oka Norimatsu: Japanese People Need to Learn History

神奈川新聞のサイト

神奈川新聞から取材を受け、7月17日に掲載してもらいました。


時代の正体 高市政権考

嫌中感情「日本人は歴史を知る必要ある」 平和教育団体・乗松聡子代表

https://www.kanaloco.jp/member/node/1289703

 高市早苗首相の「台湾有事」発言を契機に悪化した日中関係に改善の兆しが見られず、日本で嫌中感情が広がっている。沖縄や東アジアの平和を巡る問題に詳しい平和教育団体「ピース・フィロソフィー・センター」代表の乗松聡子さんは、日本の中国に対する感情的な反応を懸念し、「日本人は歴史を知る必要がある」と訴える。話を聞いた。(構成・柏尾 安希子)


 日本では、高市首相の「台湾有事」発言後、中国を嫌う空気が強まっている。背景には、長年の中国敵視報道がある。政府とメディアの責任が大きいだろう。

 始まりは米国のオバマ大統領の時代、2011年ごろだ。米国の軍事、外交の中心を中国を含むアジア太平洋に移す戦略「アジア・ピボット」が打ち出され、以来、日本が自分の頭で考えて嫌うというより、米国の言いなりのように敵視をエスカレートさせてきた。

 今回、高市首相は政策を大きく転換したわけではない。それ以前から敵視は着々と進んでいた。だが、「有事」の際に台湾に自衛隊を派遣する可能性を明言したことで、高市首相は一線を越えてしまった。

 歴史を知らなければ、この重大さは分からないだろう。日本人の歴史認識は、あまりにも偏り、欠如している。

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 6月に、「満州事変」といわれる日本の満州侵攻(1931年)が始まった瀋陽と、関東軍防疫給水部(731部隊)の所在地だったハルビンを訪問した。歴史を学ぶ目的で、ハルビンでは731部隊について展示する「侵華日軍第七三一部隊罪証陳列館」に、瀋陽では、日本が南満州鉄道の線路を爆破した「柳条湖事件」の現場近くに立つ「九・一八歴史博物館」などに行った。

 旅を通して、日本は国土の3倍ほどある「満州」を植民地支配したのだと実感した。中国で「偽満州国」と呼ばれる日本の傀儡(かいらい)国を植民地だったと言う人は、日本ではあまりいない。

 だが、例えば朝鮮の独立運動は朝鮮内で弾圧され、満州にもその拠点が広がった。ハルビンの警察署跡の記念館では、拷問の器具や、拷問で殺害された人について展示され、抗日運動をしていた人たちが731部隊の人体実験の犠牲者「マルタ」にされたと知った。植民地支配をしていたから、こうした抗日運動の弾圧も行われたのだ。

 訪れた博物館では、日本で言う「満蒙(まんもう)開拓」を「移民侵略」、同化教育は「奴隷化教育」と表現していた。実態を見れば、まさにその通りだ。

 ■

 中国は、アヘン戦争(1840~42年)や、日清戦争(94~95年)以来、欧米列強や日本に虫食いのように領土と主権を切り崩されていった。

 私の祖父は日清戦争後の96年に中国に渡り、漢口の日本租界で新聞社を経営していた。中国語の新聞も発行して親日的な世論づくりを目指したほか、諜報(ちょうほう)活動も行ったようだ。だが抗日運動が盛り上がり、1927年に帰国した。そのように、満州事変前から中国への侵略は始まっていた。

 そして台湾は、日本による侵略の足がかりとされていた。1874年、明治政府は71年に起きた宮古島島民遭難事件を口実に台湾へ出兵し、清との冊封関係を維持していた琉球を日本に組み込む糸口とした。また、日清戦争では、台湾が日本に奪われた。

 そうした歴史があり、中国は「また日本が攻めてくる」「やはり台湾か」となる。中国の人々にとって、台湾に日本の軍が来るということは、歴史的トラウマがよみがえる出来事なのだ。

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 1945年に日本が第2次世界大戦に敗れた後、72年の日中共同声明で、中国は日本に対する戦争賠償を求めなかった。日本側は、過去に日本が戦争を通じて中国国民に重大な損害を与えたことについての責任を痛感し、深く反省すると表明した。中国側は、「日本の軍国主義が侵略戦争を引き起こしたのであり、日本人民もまた軍国主義の犠牲者であった」という立場を示した。

 そして当時の田中角栄首相らは、自民党内の親台的なタカ派が抵抗する中、「台湾は中華人民共和国の不可分の領土」であることを「理解し尊重する」と約束し、国交を正常化した。

 72年の日中共同声明と78年の日中平和友好条約、98年の日中共同宣言、2008年の「戦略的互恵関係」の包括的推進に関する日中共同声明という「日中基本4文書」を通して、日本の台湾に対する立場は一貫している。

 靖国神社参拝などで中国との関係を悪化させた安倍晋三元首相も、18年に訪中し、4文書を再確認した。だが高市首相は、そういうことさえ、全くやる気がない。

 今年2月の衆院選では、「台湾有事」発言をした高市首相の自民党が圧勝した。中国は、「日本の軍国主義が悪く市民は悪くない」と言ったように、日本の有権者に期待していたと思うが、衆院選の結果を受けて「新軍国主義」という言葉を強調し始めた。

 小泉進次郎防衛相は、「新軍国主義」は「事実ではない」と発言した。だが、改憲や、安保3文書改定、敵基地攻撃能力保有、長射程ミサイル配備、非核三原則の見直し検討、殺傷能力のある武器輸出解禁、防衛費増額―。あまりにも分かりやすい軍国主義化ではないか。

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 3月に自衛官が中国大使館に侵入した。日本側は、自衛官が「大使に日本への強硬発言を控えてほしいと伝えたかった。受け入れられなければ自決しようと思った」と話しているとし、中国側と言い分が違う。

 だが本人が何を言っていようが、どうでもいい。ファクトとして刃物を持って侵入したのであれば、それだけで重大だ。しかしこの件について、日本はまだ謝罪せず、高市首相は何も発言していない。

 今後、日中関係はどうしたらいいか。高市政権下では関係の改善は無理ではないか。日中関係は、ますます悪くなっている。

 ただ、中国による対日措置は段階的に進められているように見える。渡航自粛や水産品輸入の再停止に加え、軍民両用品の輸出規制も徐々に強化している。現時点では、全面的な経済制裁には踏み込まず、日本の出方を待っているようだ。

 やはり、リセットが必要だ。中国にとっては、日本の軍国主義の台頭だけは許せないという意識が大きいだろうが、高市首相さえ台湾発言を是正すれば、発言があった昨年11月7日以前の日中関係にリセットする意向があるのではないだろうか。

 安倍元首相のように、日中基本4文書を再確認することが必要だ。中国にとって大事なのは勝つことではなく安定だ。やはり、戦争は避けたいだろう。

 6月に辞任した米国のトゥルシー・ギャバード前国家情報長官は、3月18日に「年次脅威評価」を発表し、「中国指導部が現時点で2027年に台湾侵攻を実行する計画を立てているわけではなく、また統一達成のための固定されたタイムラインも持っていない」と評価した。

 それまでCIA長官や米軍関係者は27年までの「台湾有事」を予想し、日本のメディアも散々あおっていた。それを翻した形だが、日本のメディアはあまり報道しなかった。

 だから、「台湾有事」に対する恐怖だけが今も残り、既成事実化している。この状況では、結局日本だけが暴走したことになってしまうだろう。

(以上)



Sunday, July 19, 2026

ペペ・エスコバール:事態はテヘランのペースで進んでいる Pepe Escobar: How Tehran is running the clock (Japanese Translation)

 ペペ・エスコバール氏の7月17日の記事を紹介します。翻訳はアップ後修正する可能性があります。

How Tehran is running the clock

https://telegra.ph/How-Tehran-is-running-the-clock-07-16 

事態はテヘランのペースで進んでいる

ペペ・エスコバール 2026年7月17日

まず、このますます危険さを増している岐路において作用している四つの重要な要素から始めよう。

Pepe Escobar

第一。 イラン議会(マジュリス)は火曜日の夜、前最高指導者アヤトラ・ハメネイ師がマシュハドで埋葬された先週金曜日に始まった「新たなモジタバ時代」の幕開けとともに開会した。290人の議員は全会一致で二つの決議を採択した。

第一の決議は、ペゼシュキアン大統領率いる政府に対し、「核能力の加速」を求めるものである。これはウラン濃縮の加速とも解釈できるし、さらに画期的な何かを意味する可能性もある。

第二の決議は、これまで合意されていた条件に基づく米国とのいかなる(強調は原文)妥協も拒否するものである。つまり、たとえ新たな了解覚書(MoU)が再び締結されるとしても、アンカラでのNATO首脳会議の直後に米国大統領によって事実上破棄された前回とは異なり、その条件は米国にとってはるかに厳しいものとなるだろう。

第二。 イラン・パキスタン・カタールのルートである。

今週初め、パキスタンとカタールは集中的な協議を再開した。いや、「必死」と表現してもよいほどであり、今度の日曜日にもテヘランとの直接対話を再開しようとしている。

しかし、それはいくら頑張っても無駄になる仕事である。なぜなら、それは米国によるイラン標的への大規模爆撃――民間インフラを含む――と、先週イラン各地で数百万人が叫んだ「復讐」というスローガンと真っ向から対立する形で行われなければならないからだ。

それでも外交努力は現実に存在する。ただし、その目的は仲介者たちによって「和解への道」から「大惨事の防止」へと格下げされてしまった。

第三。 トランプ=ムニール秘密ルート。

交渉の場の哀れな残骸に関わる仲介者たちは、トランプが今なおパキスタンのアシム・ムニール元帥に直接電話をかけ、自らが面目を失わずに済む「出口」を見つけるよう迫っていることを確認している。

これは、ニュースを支配する大統領(POTUS)特有の大げさな発言――「イランは取引を懇願している」――を完全に無効にする。現実はまったく逆だ。ちなみに、トランプにとってムニールは、この危機から抜け出すための最後の望みである。

第四。 米国の爆撃に対するイラン軍の対応である。

その中でも特に重要なのは、精密クラスター弾によってクウェート、バーレーン、ヨルダンにある米軍基地が壊滅的打撃を受けたことである。

実際の被害の圧倒的大部分は公表されていない。カタールのアル・ウデイド空軍基地からヨルダンの指揮統制センター、クウェートで破壊されたパトリオット・ミサイル・システム、UAEのアル・ダフラ空軍基地に至るまで。MQ-9無人機の格納庫、HIMARS発射機、弾薬庫、さらにはオマーン・ドゥクム港の給油施設まで破壊された。

とりわけ注目すべきはドゥクム港である。ここはアラビア海沿岸、ホルムズ海峡の外側に位置する。米艦船はペルシャ湾に入ることなくここに寄港し、給油や修理、補給を受ける。北インド洋に展開する米艦隊の後方支援拠点として極めて重要な場所である。

モジタバ・ハメネイの立場は

繰り返すが、たとえ「MoU2.0」への道が開かれたとしても、最初の会談でテヘランは極めて明確にこう伝えるだろう。ワシントンはMoU第1条(すべての戦争の終結)を履行しなければならない。それがなければ交渉はない。

その間、トランプによる「封鎖2.0」があろうとなかろうと、テヘランはホルムズ海峡を引き続き厳しく制限する。通航はララク島沖の革命防衛隊(IRGC)海軍の航路を通る場合に限られる。

さて、モジタバは何を考えているのか。

西アジアの安全保障構造は単に変化しただけではない。それは崩壊し、新たに再構築された。そして、その再構築の条件を決めているのはテヘランであり、しかもペルシャ湾全域においてエスカレーションの主導権を握っている。

14項目から成るMoUは、イランが条件を決めることを明記しており、仲介者も交渉担当者もそれを理解している。彼らは、どれほど脆弱であっても間接対話のルートを維持しようと必死になっている。

新指導者モジタバ・ハメネイは圧倒的な国民的支持を得ている。先週金曜日以来、新時代の指導者として、彼は事実上、文書による指示で統治している。

マジュリスの有力議員マフムード・ナバヴィアンは、すでにモジタバの内部文書の一部を国営テレビで読み上げている。その中で彼は、核問題でいかなる譲歩にも反対し、米国に賠償を求め、ホルムズ海峡をイランだけが管理することを主張している。

仲介者や外部の評論家がどのような議論を持ち出そうとも、イランが交渉の場へ無理やり引き戻されることはない。

テヘランからコム、マシュハドに至るまで、6日間昼夜を問わず続いた弔問者たちの大合唱は「復讐」を求めていた。そしてモジタバも書面声明でその点を改めて強調した。

イラン・イスラム共和国の新時代を形づくる宗教的・戦略的な物語は、ハメネイ師の死をシーア派政治的アイデンティティの根本的物語の中に深く組み込み、外国勢力による暗殺を神聖な犠牲へと昇華させている。

そして、ここでの「復讐」は超越的な意味を帯びる。モジタバは「復讐」を政治的選択や国家政策として描いてはいない。それを国民の意思であり、何より時を超えた神聖な使命と定義している。

したがって、「復讐」がいつ成就したと見なされるかは歴史が決める。モジタバは、それは自分個人や国家機関によるものではなく、「世界中の自由な人々」がそれぞれこの神聖な使命の一部を担うことによって実現すると位置づけている。

ポストモダン時代における政治神学の声明として見れば、これは他に類を見ないものである。

自らの宣伝に溺れるナルキッソス

一方で、ガリバフ議長とアラグチ外相による交渉路線と、ヴァヒディ率いる革命防衛隊の軍事指揮統制路線は、ペゼシュキアン大統領の政府内で今後も並存する。

実際には、この二つは同じ過程の二つのベクトルである。イラン内部に「亀裂」があるというあらゆる宣伝は、言うまでもなく、米国側の宣伝にすぎない。

さて、その宣伝工作について話そう。

シオニスト勢力から成るワシントン・ニューヨーク・テルアビブ軸が、米国を「総力戦(Totaler Krieg)」体制に縛り付け続けようと全力を尽くしていることは公然の事実である。

だからこそ、テヘランのあらゆる行動――常に防御的なものであるにもかかわらず――は開戦理由(casus belli)として描かれる。そしてMoUのような出口は「宥和」として貶められる。

この総力戦の思考は、終わりなきエスカレーションを保証する。そしてそれは、ホルムズ海峡封鎖であれ、NPT脱退の可能性であれ、イランのいかなる対応にも正当性を与える。

さらに、それはシオニスト強硬派に「さらなる戦争」を要求する口実を与える。

この地獄の機械、この自己拘束的な循環は、最終的にはイランに利益をもたらす。なぜならイランに必要なのは、この循環が続くことだけだからである。

その一つ一つの展開が、米国の帝国的破壊手法を、イラン国内だけでなくグローバルサウスの大部分におけるイランの正統性の拡大へと変えていく。

トランプはいま、自らの虚像に溺れるナルキッソスの状態にある。ホルムズ海峡の封鎖、戦略石油備蓄(SPR)が危険水域に達する中で避けられない原油価格の急騰、そしてイランのNPT脱退の可能性という、耐え難い現実に直面している。

忘れてはならないのは、60日間のMoU期限は8月中旬に切れるということだ。つまりあと1か月しかない。それまでに最終合意が成立しなければ、この枠組み全体が失効する。

改めて記録のために言えば、テヘランにとって元の14項目MoUだけが唯一の枠組みである。再交渉はない(強調は原文)。あるのは、その履行手順を実施することだけだ。

テヘランはこの点を常に明確にしておかなければならない。なぜなら米国はいまだに理解していないからである。

テヘランはすでに、この戦争の中心的な問題――ホルムズ海峡――において勝利している。それは決して核問題だけの話ではなかった。ワシントンはいずれこの現実を認めざるを得なくなる。

しかし、それはほとんど不可能だろう。

今後のシナリオは暗い。

「管理された緊張緩和」は、いまや砂漠の蜃気楼のように見える。

交渉は続くが合意はなく、タンカー事件が散発し、海運量は戦前の3分の1から5分の1にとどまるという「凍結された膠着状態」も同様である。

現時点では、あらゆるベクトルはむしろ垂直的エスカレーションを指している。すなわち、ホルムズ海峡の全面封鎖、米国による大規模攻撃、そしてそれに対するイランのNPT脱退である。

実質的に言えば、トランプはイランと交渉しているのではない。巨大な戦略的敗北を必死に覆そうとしているのである。

「停戦」は最初から、失われた交渉力を回復するための時間稼ぎにすぎなかった。

トランプが望んでいたのは降伏であり、完全屈服であり、体制転換であり、イランを新植民地化することであった。

彼が手にしたのは、自ら署名したにもかかわらず理解していないMoUである。ベルサイユで盛大な演出のもと署名したにもかかわらず、おそらく読んですらいない。

彼は、自分が署名した文書がホルムズ海峡の意思決定権をイランとオマーンで分けているのではなく、イランだけに与えていることすら理解していない。

だからこそ彼は、自分が署名した内容を認めることなく書き換えようとしている。エスカレーションを利用し、外交を装った強硬な威圧を行い、テヘランから交渉上の優位性を奪おうとし、さらには来週にはイラン国内の発電所、橋梁、エネルギー施設すべてを攻撃すると脅迫している。

技術的には、イランは署名したMoUの義務をすべて履行してきた。

一方、米国は、ほんの数例を挙げるだけでも、イランの凍結資産の解除を拒否し、第9条に直接違反する新たな制裁を課し、第10条に直接違反して石油制裁免除を撤廃し、第1条に直接違反して戦争を再開した。

歴史は最終的に、この事例を「いかに戦争の時間を操るか」のケーススタディとして扱うことになるだろう。

テヘランは意図的にワシントンへの対応を抑制している。なぜなら時間も石油市場もイランの味方だからである。

戦略石油備蓄は1か月足らずで枯渇し、ホルムズ海峡におけるイランの影響力は絶対的である。

あらゆる歴史的変数と向き合ってきた文明国家だけが、粗暴な帝国機構よりもはるかに長い時間軸で勝負し、本質的な戦力を温存しながら、帝国に残された戦略的余力を徐々に消耗させていくことができるのである。

(以上)

参考までに、14項からなる「覚書」の日本語訳をここに置いておく(BBCのサイトにあったものを訳)

第1項 アメリカ合衆国およびイラン・イスラム共和国、ならびに現在の戦争におけるそれぞれの同盟国は、本覚書(MOU)への署名により、レバノンを含むすべての戦線における軍事作戦を即時かつ恒久的に終了することを宣言する。また、今後は互いにいかなる戦争または軍事作戦も開始せず、相互に武力による威嚇または武力の行使を控え、レバノンの領土保全および主権を確保することを約束する。最終合意では、レバノンを含むすべての戦線における戦争の恒久的終結と、本項のその他の規定を確認する。

第2項 アメリカ合衆国およびイラン・イスラム共和国は、互いの主権および領土保全を尊重し、互いの内政に干渉しないことを約束する。

第3項 アメリカ合衆国およびイラン・イスラム共和国は、最終合意に向けた交渉を開始し、最大60日以内に合意に到達することを約束する。この期間は双方の合意により延長することができる。

第4項 本覚書への署名と同時に、アメリカ合衆国はイラン・イスラム共和国に対する海上封鎖およびその他すべての妨害・障害の撤廃を開始し、30日以内に海上封鎖を全面的に終了する。この期間中、船舶の往来は、イラン・イスラム共和国による戦前の航行量の回復に応じた規模で再開されるものとする。さらにアメリカ合衆国は、最終合意成立後30日以内に、自国軍をイラン・イスラム共和国近傍から撤収させることを約束する。

第5項 本覚書への署名後、イラン・イスラム共和国は、ペルシャ湾とオマーン海との間を往来する商船の安全な航行を、60日間無償で確保するため最大限の努力を払う。商船の航行は直ちに再開されるものとし、イラン・イスラム共和国は、戦術上・軍事上の障害物の除去および機雷除去の必要性を踏まえ、30日以内に航行体制を整える。またイラン・イスラム共和国は、ホルムズ海峡の将来の管理および海上サービスについて、オマーン国および他のペルシャ湾沿岸諸国と、適用される国際法およびホルムズ海峡沿岸国の主権的権利に従って協議を行う。

第6項 アメリカ合衆国は、地域のパートナー諸国とともに、イラン・イスラム共和国の復興および経済発展のため、少なくとも3,000億ドル(2,250億ポンド)規模の、双方が合意する包括的な計画を策定することを約束する。この計画の実施メカニズムは、60日以内に締結される最終合意の一部として確定される。関連する金融取引に必要なすべての許可、免除および承認は、アメリカ合衆国が付与する。

第7項 アメリカ合衆国は、イラン・イスラム共和国に対するあらゆる種類の制裁を終了することを約束する。これには、国連安全保障理事会決議、国際原子力機関(IAEA)理事会決議、およびアメリカによる一次・二次を含むすべての一方的制裁が含まれる。その実施は双方が合意する日程に従う。最終合意の一環として、アメリカ合衆国およびイラン・イスラム共和国は、制裁解除が極めて重要な課題であることを確認し、この問題について直ちに交渉を開始し、相互に受け入れ可能な合意を目指す意思を表明する。

第8項 イラン・イスラム共和国は、核兵器を取得または開発しないことを改めて確認する。アメリカ合衆国とイラン・イスラム共和国は、第7項に定める日程に従い、双方が合意する仕組みに基づいて、備蓄された高濃縮物質の処分方法を決定することに合意する。最低限の方法として、IAEAの監督下で現地において希釈(ブレンディング)を行うものとする。両国はまた、イラン・イスラム共和国の核エネルギー需要に関連する濃縮活動およびその他双方が合意する事項についても、最終合意で合意される枠組みに基づき協議することで一致した。最終合意では本項の内容を確認する。アメリカ合衆国およびイラン・イスラム共和国は、これら核問題の重要性を認識し、相互に受け入れ可能な合意に達するため、直ちに交渉を開始する意思を表明する。

第9項 最終合意が成立するまでの間、アメリカ合衆国およびイラン・イスラム共和国は現状を維持することに合意する。イラン・イスラム共和国は現在の核計画の現状を維持し、アメリカ合衆国は新たな制裁を課さず、地域への追加兵力も展開しない。

第10項 アメリカ合衆国は、本覚書への署名直後から制裁解除が完了するまでの間、米財務省を通じて、イラン産原油、石油製品およびその派生製品の輸出、ならびに銀行業務、決済、保険、輸送など関連するすべてのサービスについて、必要な制裁免除を発給することを約束する。

第11項 アメリカ合衆国は、本覚書の実施に伴い、凍結または利用制限されているイラン・イスラム共和国の資金および資産を全面的に利用可能にすることを約束する。アメリカ合衆国およびイラン・イスラム共和国は、交渉期間中にこれら資金の解除手続について相互に合意する。当該資金は、元の口座に留め置かれる場合であれ、他の口座へ移転される場合であれ、イラン中央銀行が指定する最終受益者への支払いに全面的に使用できるものとする。アメリカ合衆国は、そのために必要なすべての許可および認可を発給することを約束する。

第12項 アメリカ合衆国およびイラン・イスラム共和国は、本覚書の履行状況および将来の最終合意の遵守を監視するため、実施監視メカニズムを設置することに合意する。

第13項 本覚書への署名後、第1項、第4項、第5項、第10項および第11項の履行が開始され、かつそれらの措置が継続的に実施されることを条件として、アメリカ合衆国およびイラン・イスラム共和国は、最終合意に向けた交渉を排他的に開始する。

第14項 最終合意は、法的拘束力を有する国連安全保障理事会決議によって承認されるものとする。

Thursday, July 09, 2026

覇権にしがみつく米国、日本の責任 朝鮮戦争停戦73周年によせて The U.S. Obsession with Hegemony and Japan's Role: On the 73rd Anniversary of the Korean War Armistice

2026年7月7日 日本と朝鮮を結ぶ全国ネットワーク・東アジア市民連帯共催「朝鮮戦争73年 戦争終結を求める集会-アメリカの横暴を許すなー」(於連合会館)での講演の記録です。時間制限のため削った箇所もここでは戻してあります。当日使ったパワーポイントから写真や画像を挿入しています。

朝鮮新報の報道:米国の横暴を許すな/東京で朝鮮戦争終結を求める集会

★この投稿を転載・使用したい場合はかならず乗松聡子の許可を取ってください。peacephilosophycentre@gmail.com にメールください。この投稿のURL拡散は歓迎です。 https://peacephilosophy.blogspot.com/2026/07/us-obsession-with-hegemony-and-japans.html


覇権にしがみつく米国、日本の責任


朝鮮戦争停戦73周年によせて


乗松聡子

盧溝橋より

 きょうは7月7日です。日本では「盧溝橋事件」の日として記憶される、日本の中国に対する侵略戦争が本格化した日です。中国では、1931年の満州侵略「9.18事変」と、南京大虐殺を記憶する12月13日、抗日戦争勝利と世界ファシズム勝利を記念する9月3日と並ぶ、抗日戦争を記憶する日です。朝鮮と中国が、日本と米国の帝国主義に対して共に戦ってきた歴史を振り返るという意味で、7月7日に、朝鮮戦争休戦協定の73周年の集会を行うことは意義のあることと思います。

盧溝橋事件 北京 ファシズムの東方主戦場

 私は6月1日から6日、北京、瀋陽、ハルビンに行きました。ハルビンは初めてでした。高校2年のとき、森村誠一の「悪魔の飽食」で731部隊について知ったときの衝撃はいまでも鮮明に覚えています。でもやはり現地に行けばこそわかることがあります。それは現地で使う言葉、現地の目線です。盧溝橋の近くにある中国人民抗日戦争紀念館に行きました。

中国人民抗日戦争紀念館

 現地では、「1937年、日本軍国主義は七七事変を意図的に引き起こし、中国に対する全面戦争を開始した。中国軍民は日本侵略者に対して頑強に抵抗した。中国は全民族的抗戦の段階に入り、同時に世界反ファシズム戦争の東方主戦場を切り開いた。中国共産党は国共合作を基礎とする抗日民族統一戦線の正式な形成を推進した。敵後戦場、つまり共産党系の部隊が占領地域後方で展開した遊撃戦・ゲリラ戦の戦場と、正面戦場、つまり国民党軍が日本軍と正面から戦った戦場、は、協力し合って戦った」という趣旨の記述がありました。 

 この記述ひとつからも学ぶことは多いです。世界反ファシズム戦争の西はナチス、東は大日本帝国の主戦場であったというとらえ方は、戦争というと被害者史観になってしまう日本人が知っておくべき構図と思います。

瀋陽 918記念館 でっちあげた偽満州国 

9.18歴史博物館
瀋陽では、「9.18歴史博物館」に行きました。中国では「9・18事変」、日本では「満州事変」とか「柳条湖事件」とかいわれる、関東軍が行った南満州鉄道の爆破を中国軍のせいであると偽り、東北軍駐屯地の北大営への進攻を開始した、日本の満州本格的侵略、翌年には偽満州国という傀儡国家建設につながった出来事でした。この博物館は「9.18を中華民族の屈辱の日として決して忘れない」という信念で建てられています。 

 こういう記述がありました。「日本が中国東北を占領した後、傀儡政権である偽満州国を樹立するとともに、政治・軍事・経済・文化などにわたる巨大な植民地統治機構を築き上げ、東北人民に対して14年にわたる植民地支配を行った。植民地統治の期間中、日本の侵略者は東北人民を恣意的に虐待・虐殺・奴隷化し、東北の抗日勢力を苛烈に弾圧した。」

拷問器具
 「偽満州国をでっちあげる」と言い切っています。拷問器具も展示されていました。ありとあらゆる方法で抵抗を弾圧したと。ソウルの、西大門刑務所歴史館や、伊藤博文をハルビンで暗殺した安重根が収監されていた旅順日露監獄旧跡博物館を思い出しました。1905年から植民地支配していた朝鮮に加え、日本は現在の日本の3倍以上の面積がある東北地方を植民地支配し、抗う者を監禁、拷問、虐殺していたのです。 

 アヘン栽培、アヘン販売で住民に「毒害」を与えたとありました。日本では「強制同化」とか「同化教育」という言葉が使われますが、中国では「奴隷化教育」と言い切っています。「満蒙開拓」などではなく「移民侵略」「武装移民」と言い切っています。これを見るとまさしく日本は、パレスチナに「侵略移民」していたイスラエルと同じなのだということがわかります。やられた側からの言葉は大事なのです。

ともに日帝と闘った中国人と朝鮮人

 日本の侵略と植民地支配に対し、東北の人々は武装抵抗を行いました。東北各地で結成された抗日遊撃隊は、その後、東北人民革命軍、さらに東北抗日聯軍へと発展していきました。この展示からも、それらの部隊の多くは朝鮮人だったことがわかります。展示には、後に朝鮮民主主義人民共和国の指導者となった金日成、崔庸健、崔賢、金策らの名前も見ることができました。

 このようなジオラマがありました。説明にはこうありました。「『討伐隊』への待ち伏せ攻撃:19333月、梁成龍、金日成の指揮のもと、汪清遊撃隊は小汪清へ進攻してきた『討伐隊』300余名を待ち伏せ攻撃した。二日間にわたる激戦の末、敵20余名を殺傷し、日本軍と偽満州国軍の進攻を撃退した。」 

 露営の様子の等身大のジオラマがありました。東北抗日聯軍がマイナス30-40度にもなる極寒の森林で長期間ゲリラ戦を続けたことを表しています。このような過酷な状況の下、中国人と朝鮮人は共に日帝に抵抗し続けました。現在の朝鮮民主主義人民共和国、中華人民共和国はともに日帝に打ち勝った抵抗者たちが作った国です。朝鮮人や中国人が日本に向きあうとき、かたときもこの植民地支配の屈辱と、勝利・独立までの苦難を忘れることはないでしょう。問題は日本人の大半がこれを全くといっていいほどわかっていないことです。特に一番わかっているべき政治家がわかっていない。

東北抗日聯軍の露営のジオラマ

ハルビン 「731部隊」と「安重根」はつながっている

ハルビン駅にある安重根義士記念館
 ハルビンで見学した、「侵華日軍第731部隊罪証陳列館」と「安重根義士記念館」もその抵抗の歴史と直結しています。安重根は、1909年ハルビン駅で伊藤博文を暗殺しましたがまさしくその暗殺の現場、駅舎の中に記念館が組み込まれており、伊藤が立っていた場所と安重根が立っていたスポットに立つこともできます。窓の外にはすぐ電車の行きかう線路が見えます。私と友人はそこで、ちょうど見学しに来ていたハルビン地元の男性と会い、彼は伊藤スポットに立って銃撃を受けている写真を撮ってほしいと、ユーモラスなポーズをしました。

被害者を記憶する
 731部隊陳列館の展示です。いわゆる「マルタ」という実験台にされた中国人、朝鮮人、ロシア人には、抗日闘争に関わっていたことで関東憲兵隊、警察署、保安局、特務機関などに逮捕され、731部隊に送りこまれた人たちがいました。「特移扱(特別移送扱い)」と言われました。その人たちは「逮捕、尋問、拷問、移送、収監、実験、解剖、死体焼却」というあらゆる残虐行為を受けました。多くは「生物実験室、病理解剖室、野外実験場で亡くなり、一部は731部隊の撤退直前に集団虐殺」されたといいます 

 「マルタ」にされた被害者は3千人かそれ以上といわれています。被害者の名前が刻まれた壁があり、そこに花をそえました。名前のない空のスレートも多数ありました。名前がわかっていない人々の存在を思い起こさせるためでしょう。

 安重根は歴史に名を残した独立運動家で専用の記念館が建っていますが、この、731部隊で「マルタ」とされた人たちも安重根と同様に日本の植民地支配に抗い、自由と独立のために戦っていたのです。この人たちの存在こそ記憶しなければいけません。「特別移送」展示コーナーは、このように電光掲示板で、1から3000の数字を繰り返し掲示していました。 

朝鮮戦争 日帝がまいた種

 日帝による朝鮮植民地支配と、中国東北の植民地支配は直結した歴史でした。それは朝鮮戦争につながります。ブルース・カミングス教授は、『朝鮮戦争論』で、「朝鮮戦争のはじまりは、日本軍が中国の東北部を侵略し、満州国という傀儡国家を作り上げた1931-32年であった」と言っています(62頁)。朝鮮人や中国人のゲリラを追跡し、殺害していた朝鮮人協力者の中には、陸軍士官学校出の金錫源など、のちに朝鮮戦争で韓国軍を指揮した人物がいました。

 韓国軍の上層部は多くが日本人のもとで軍務に服した経験がある者たちでした。朝鮮戦争は、日本に抗った者たちと日本に協力した者たちの闘いという側面もあったのです。もちろん、朝鮮戦争の起源については、解放後分断された1945年だった、南北に政府ができた1948年だった、と見方は様々ありますが、私は日本人の責任を問う立場として、日本による朝鮮、そして満州の植民地支配をその歴史的起点としてとらえる視点を重視しています。

平壌にある祖国解放戦争勝利記念館
 2019年、朝鮮民主主義人民共和国を訪ねました。やはり「現地での名前」には学ぶものがありました。朝鮮戦争のことは「祖国解放戦争」といいます。ちなみに韓国では「韓国戦争」といいます。平壌の「祖国解放戦争勝利記念館」に、在日朝鮮人の友人二人と、いまは沖縄県議になっている沖縄の友人と一緒に行きました。このスローガンは「米帝侵略者達を消滅させよ」とあります。

 朝鮮大学校の李柄輝教授は、「歴史の文脈で見れば、朝鮮戦争は米帝国主義時代の終焉の起点であった」と言っています。「冷戦」後、米国は、一強支配を維持しその覇権にしがみつくためにロシア、イラン、中国、朝鮮といった多極化世界に侵略戦争や経済制裁、内政干渉を仕掛けてきました。イランが米帝国の侵略戦争に負けずに主権を保った2026年はこの歴史文脈の中での画期的な出来事です。

朝鮮戦争と細菌戦

 祖国解放戦争勝利記念館に戻ります。館内の展示は撮影できませんでしたが、朝鮮戦争で米国が細菌戦を行ったという展示がありました。敗戦後、石井四郎ら731部隊の研究データが米国側に渡され、その見返りとして731部隊関係者の多くが東京裁判で訴追されなかったことは、現在では広く知られています。その研究成果が朝鮮戦争で生かされ、米国が細菌戦を行ったといわれています。

 朝鮮戦争中に撃墜され捕虜となった米軍爆撃機の搭乗員らは、詳細な証言を残しています。森村誠一『悪魔の飽食 第三部』では、「容器や弾体、信管などは米国で製造して朝鮮に持ち込まれたが、細菌そのものは東京のある工場で製造され、釜山と大邱の細菌兵器庫に運ばれた」といった証言も紹介されています。国際科学委員会による現地調査で細菌戦があったという結論が出ており、物証も提示されていますが、米国政府は一貫して否定しており、学界でも議論の対象になっています。

 当時、米国は日本人や朝鮮人を同等の人間とは思っていませんでした。広島と長崎に米国が落とした原爆の下には、日本人と朝鮮人がいました。植民地支配の故に原爆被害をうけ、その後の治療や救済においても差別された朝鮮人にとっては三重の被害でした。原爆投下も人体実験だったといわれており、それを証拠に、米国は原爆傷害調査委員会(ABCC)、今の放射線影響研究所というのを作り、被爆者やその二世のデータを集めるだけで治療さえしませんでした。

命のダブルスタンダード

「学び舎」の「ともに学ぶ人間の歴史」(2020)より

 朝鮮戦争で米軍は日本に落とした4倍もの爆弾を朝鮮に落とし、もう標的がないと言われるほど朝鮮のあらゆる都市を焼き尽くしました。民族同士が殺し合ったこの戦争で、朝鮮、韓国、合わせて約400万人もが命を奪われたと言われます。米軍を中心とするいわゆる「国連軍」も5万以上、中国人民志願軍も20万かそれ以上戦死したと言われます。朝鮮の分断はそのまま、離散した家族は会えないままです。こんな悲劇があるでしょうか。「忘れられたジェノサイド」と言われます。 

 日本人も米国人も、ここまで残酷な戦争をどうして語らないのでしょうか。広島・長崎の原爆、空襲、シベリア抑留など日本人の苦労、日本人の失われた命はいまだに語り継がれているのに。終わっていないからですか?日本に責任があるからですか?日本の教科書にはいまだに「朝鮮特需」で戦後復興が加速したと書いてあります。植民地支配した上、朝鮮人6人に1人もが亡くなった戦争の上に大儲けした、ここまで恥ずかしいことはないのではないでしょうか。もう「特需」なんて言葉を使うべきではないです。

 この命のダブルスタンダードはいまも同じと思います。今年2月28日、米国とイスラエルがイランに侵略戦争をしかけ、トマホークミサイルを撃ち込まれた学校では160人以上の子どもたちが惨殺されました。そのイランが連帯しているパレスチナ・ガザでは4年にわたり、そして今は南レバノンでも、ジェノサイドがインターネットで白昼堂々中継されています。

 それなのに日本のTVをつけると「我々の石油はどうなるか」しか関心がないのです。朝鮮戦争のときと同じなのです。米国はベトナムでは枯葉剤を使い、大量のベトナム人を殺し、多世代にわたる被害をもたらしました。ベトナム戦争からも日本は金儲けしました。 

 米国は731部隊の系譜をひきついで、国際法に反する非人道的兵器を使い続けています。イラン・イラク戦争では米国はイラクを支援し、イラクは西ドイツなどの技術や設備に支えられ化学兵器をイランで使い、100万に及ぶといわれる人々が影響を受け、いまも何万も後遺症に苦しむ人たちがいます。

米国は非人道兵器を現在に引き継ぐ

 ウクライナ戦争においても、米国はウクライナ中に40か所ものバイオラブ、生物兵器研究施設を張り巡らせ危険な細菌の研究をしていました。生物研究所の存在は、22年2月のロシアの特別軍事作戦開始直後、同年3月8日の米国の上院公聴会で、ビクトリア・ヌーランド国務省政治担当国務次官もしぶしぶと認めていました。3月12日には、ロシアの国連大使が国連安全保障理事会で詳細な報告をしました。

 西側諸国からことごとく偽情報だと言われました。日本ではよく知られる国連事務次長・軍縮担当上級代表の中満泉氏も「国連は把握していない」と言いました。このように国連が西側の味方につくことはよくあることです。西側メディアもフェイクだ、ロシアの誤情報だと一蹴し、ご丁寧に「ファクトチェック」と称する記事まで出していました。 

 6月12日、月末に辞任を控えていたトゥルシ・ギャバード国家情報長官は、米国は30か国120か所の生物研究所に資金を出していると発表しました。長官は「
ギャバード長官の6月12日投稿
これらの米国政府の資金提供を受けた生物研究所の多くでは、現在または過去に、危険で感染力の極めて強い病原体を用いた研究が行われており、その中には危険な機能獲得研究(
Gain-of-Function Research)が含まれる場合もあった。しかし、それらの研究の実態はほとんど明らかにされず、十分な監視や検証も行われていなかった。」と言いました。 

 公開された文書によると、ウクライナには40以上の研究所があり、以下の細菌の研究をしていたところがあったようです。 

炭疽菌(Anthrax 野兎病(Tularemia 結核(Tuberculosis 豚熱(Swine Fever ニューカッスル病(Newcastle Disease 中東呼吸器症候群(MERS 重症急性呼吸器症候群(SARS マールブルグ病(Marburg エボラ出血熱(Ebola ラッサ熱(Lassa ペスト(The Plague リケッチア症(Rickettsia など(etc.                      

 ロシア側は入念に調べて告発しているのに、西側が嘘だ嘘だと叫んでいる構図が朝鮮戦争における細菌戦と同じです。 

 RTは2023年にBiological Warfare Department生物兵器部門 というドキュメンタリーを出しました。内容は深刻です。ロシアの特別軍事作戦開始後、ウクライナが撤退した後の生物研究所を調べたところ、ウクライナ人を実験台にしてウィルスの実験をしていたことを示唆する書類が出てきました。米国人ジャーナリストのジェフリー・シルバーマンが、人々がどんどん謎の死をとげていたジョージア国内の米国の生物研究所について告発したら大変な中傷キャンペーンにさらされ暴力も受け、社会から抹殺されたといいます。2010年代、ウクライナ各地でアフリカ豚熱、コレラ、ボツリヌス症、新型肺炎などの不自然な発生や流行が報告されました。

 ウクライナの生物研究所はペンタゴンの管理下にありました。ギリアド・サイエンシズなど、米国の大きなバイオ医薬品会社やメリーランド州にあるフォート・デトリックという米国陸軍医学研究所も関与しています。このフォート・デトリックこそ、731部隊の石井四郎ら幹部を戦犯訴追しないという引き換えに731の研究データを統合・活用した場所です。ナチスドイツで人体実験にかかわった研究者もここで再活用されています。

 731部隊のマルタとされた人の中にはロシア人がいました。歴史が一周して、いままた、スラブ人が実験台にされているのです。

ウクライナ戦争 ロシアの弱体化のため

 ウクライナ戦争は、22年2月のロシア特別軍事作戦開始から数えたら4年半続いています。2014年のマイダン・クーデターでは市民のデモに米国がネオナチを投入して暴徒化させ、政権転覆させ、以来米国が事実上ウクライナを傀儡国化しました。そこから数えたら12年半です。

 ウクライナの傀儡政府は西側の支援を受け、東部ドンバスのロシア系住民、ロシア語話者、ロシア正教会を弾圧しました。14年と15年の「ミンスク合意」も、ドイツのメルケル元首相やフランスのオランド元大統領など西側の当事者たちが証言したように、これはウクライナが再武装するための時間稼ぎだった、最初から守る気などなかったことがわかっています。

 ソ連崩壊後米国と西側諸国は一貫してロシアを協力相手ではなく、弱体化して解体する対象とみなしてきました。冷戦終結時の約束に反してNATOはロシアの目と鼻の先まで拡大しました。2019年、RAND研究所が発表した「Extending Russia」という報告書にあるように、ロシアに経済的、政治的、軍事的に負担を負わせ、疲弊させるように仕向けているのです。

 現在、ウクライナによるロシア本土への長距離ドローン攻撃が激化しています。石油精製所、石油備蓄基地、ガス、発電施設などの大規模攻撃に加え、ロシアの民間人に対するテロ攻撃が頻発しています。西側メディアにはほとんど報道されません。毎日のようにウクライナからドローン攻撃があり、6か月の赤ちゃんが殺されたり、ベラルーシから観光で来たスポーツチームのバスに攻撃があり保護者の一人が殺されたりしています。2024年の8月から25年の5月まで行われたクルスクの闘いでは、現地の子どもたちやお年寄りが残虐な方法で殺されたり女性がレイプされたりした戦争犯罪が報告されています。 

 これらも西側のメディアはフェイクと片付けます。米国および西側はウクライナを支配してロシア攻撃のプロキシー(代理人)として使うために、過激なナチス思想を持つ指導者や部隊を支援してきました。このような人間たちがロシア系の民間人に対し拉致、拘束、拷問、虐殺、性暴力をやってきていることは記録されています。 

ウクライナ ナチスの歴史を洗浄

 つい先日、5月25日、ウクライナのゼレンスキー体制は、ルクセンブルクに埋葬されていたアンドリー・メルニクをキエフの国立軍人墓地に「再埋葬」する国家式典を行いました。メルニクは、第二次世界大戦中、ナチス・ドイツと協力関係にありホロコーストに加担したウクライナ民族主義者組織(OUN)のメルニク派(OUN-M)の指導者でした。 

 翌26日、ゼレンスキー氏は、ウクライナ特殊作戦部隊のひとつに、「UPAの英雄たち」という名誉称号を授与しましたUPAはウクライナ民族主義者組織のステパン・バンデラ派(OUN-B)の武装組織、「ウクライナ蜂起軍」で、1943-45年の「ヴォルィーニと東ガリシア大虐殺」で6万から10万に及ぶポーランド人を虐殺したと言われています。一連の出来事はゼレンスキー体制がナチスを肯定する歴史の書き換えを着々と進めている動きです。

 これは別に新しい動きでもありません。私の住むカナダでも23年9月、ゼレンスキー大統領がカナダ下院に招待されたとき、来賓として来ていた、98歳の退役軍人、ヤロスラフ・フンカ氏に下院議員が総立ちでスタンディングオベーションをしました。フンカ氏は、ナチスドイツの武装親衛隊(Waffen SS)第14ガリツィア師団の一員だったのです。これは世界中のメディアに流れカナダは大恥をかきました。しかしこれは私から見たら、ロシアの特別軍事作戦開始後、欧米における、ロシアを敵視するあまりナチスを肯定するような歴史修正の動きが加速している現象の一つに過ぎなかったと思います。 

目を背ける西側 参戦した日本


 ウクライナのロシア民間人の攻撃に、西側は目をつぶっています。5月22日、ルガンスクのスタロビリスクの教員養成学校の学生寮がドローン攻撃を受け、21人が死亡、40人以上が負傷しました。まだ20歳にもならないようなあどけない学生たちです。
この事件はロシア全土に強い怒りを噴出させました。 

 ロシア当局は、外国報道機関の記者による現地報道を可能にするため安全を確保して大型バスを手配しました。BBCとCNNは取材拒否しました。5月27日、ロシアのザハロア外務省報道官は、「日本の記者は全員行かなかった」と強い批判をしました。これが東京からのお達しなのか、忖度なのか知りませんが、全員拒否というのは、組織的としか思えません。日本記者たちはロシア外務省の定例記者会見にさえ来ないようです。報道ビザを出してもらっておいて毎日何をやっているのでしょうか? 

NSATU副司令官のウルフ・ホイスラー少将が、日本人幕僚に対して訓示を行う
 この二日後の29日、小泉防衛大臣は、「NATO対ウクライナ安全保障支援・訓練組織NSATU)」本部への4名の自衛官派遣を公表しました。小泉氏は「ウクライナの「最新の戦い方」などを学び、日本の新しい守り方を構築する上で、4名の自衛官が担う役割は非常に重要です。よろしくお願いします!」と言っています。NSATUは、ドイツにあります。ウクライナへの軍事装備品の提供や修理、同国軍兵士の訓練を調整するために設立された北大西洋条約機構(NATO)の主要な司令部組織です。 

 自衛官派遣は、25日に出国報告があり、29日に発表しています。22日にスタロビリスクの若者21人が惨殺されたことと、現地取材が抑圧されたことはこの、日本のウクライナ戦争への正式の参加ともとれる出来事と無関係ではないと思います。 

 日本のメディアも、このような虐殺事件を受けても、ウクライナのドローン技術が向上しているとか、喜んでいるような報道をしています。人間じゃないと、思います。考えてもみてください。ウクライナはルガンスクのロシア編入を認めていません。ウクライナにとっては、自国の市民を殺したのです。このことを西側メディアは一切言いません。 

 もちろんこれも、2014年からやっていることで何も新しいことではありません。ルガンスクの市民がロシア編入を選ぶのも理解できると思いませんか。7月3日にもザポリージャの市場で買い物をしていた市民に対しての攻撃があり、5人が死亡、18人が負傷しました。4-6月の3か月で422人の市民が、ウクライナのテロ攻撃により死んでいるといいいます。ここも住民投票でロシアが編入した地域ですが、ウクライナにとっては国内です。もちろんウクライナのバックには米英仏独、バルト三国ら西側諸国がいます。これはNATOによるロシア系市民へのテロ攻撃です。 

朝鮮は歴史の正しい側にいる

 ウクライナ戦争は必要もない戦争でした。挑発に挑発を重ねてこの戦争を招いたのは米国であり、英国はじめ欧州諸国はこの戦争を絶対終わらせまいとしています。歴史、言語、文化、宗教的にも近い、兄弟姉妹のような民族で、共存してきたロシアとウクライナが殺し合う結果を招いたのです。朝鮮戦争を思い出します。 

 クルスクの防衛戦に朝鮮は、ロシアとの「包括的戦略パートナーシップ条約」の下で派兵し、何百という戦死者が出たと言われています。この兵士たちの親御さんたちにとってみれば、祖国から6千キロ以上も離れた地で自分の息子は何のために死んだのかという問いの答えを今でも探しているかもしれません。

 しかし少なくとも一つ言えることは、朝鮮兵はこの戦争の正義の側で戦ったということです。進んでNATO側に協力する、恥ずかしい日本とは正反対です。そのような意味で私は朝鮮を誇りに思います。 

ロシア・デイのノズドリェフ大使挨拶
ロシア・デイの大使の言葉

 6月12日は「ロシア・デイ」でした。ソ連の崩壊直前である1990612日に、ロシア最高会議が国家主権宣言を採択したことに由来します。前日の11日にロシア大使館で開催された祝賀行事に招待され参加しました。ここでの、ニコライ・スタニスラヴォヴィチ・ノズドリェフ大使の挨拶は現在の世界の状況を的確にまとめていました(太字は筆者)。

「今日、世界はこの数十年間で最大の構造的変革に直面しています。少数の特定の国家のために機能していた垂直的階層モデルから、より複雑で分散的かつ公平な多極的構造へ移行するプロセスが進行しているのです。こうした変化は、根本的かつ不可逆的なものです。」 

「ロシアは、グローバル・サウスやグローバル・イースト、私たちがグローバル・マジョリティと呼ぶ国々と共に、このプロセスの最前線に立っています。」 

「私たちは共に、新植民地主義や外圧、ダブルスタンダードに反対を唱え、平等、相互尊重、内政不干渉、国際法規範の遵守に基づく新たな国際関係のモデルを推進しています。」 

大使はこう踏み込みました。 

「他の国々を支配することに慣れた『黄金の十億人』は、もはや取り戻すことのできない、失われつつある覇権を、あらゆる手段を尽くして維持しようとしています。」 

「彼らは『ルールに基づく世界秩序』や『自由で開かれた世界秩序』といった建前の下に、自らの世界観を他の国々にも押し付けようとしています。」 

「西側のエリートたちはこうした政策への反発に直面すると、紛争を挑発して、ヨーロッパ、中東、アジア太平洋地域の国々をこうした紛争に次々と新たに引きずり込もうとするのです。」 

もう何も付け加えることはありません。私は大使のようにお上品ではないのですが、ノズドリェフ大使の言葉を一言でまとめると、こういうことです。「いま米国をはじめとする西側帝国は、失いつつある世界覇権にしがみつき、多極化を阻止し、覇権を維持するために世界中で逆ギレ戦争を仕掛けている」。

 今年だけでも対ベネズエラ、キューバ、イランに対する政権転覆の試みや経済封鎖、侵略戦争、そして継続しているガザと南レバノンのジェノサイドは全部、米国の覇権維持のための逆ギレ戦争の流れです。 

情報のダブルスタンダード

ロシアが「何のいわれもなく」(Unprovoked)帝国的野望でウクライナを侵略したという西側の語りに4年間浸されてきた人たちは、ロシア大使の言葉など信じられるかと思う人がいるかもしれません。「プーチンのプロパガンダだ」とか、すぐ言う人たちがいます。私は2022年のロシアの特別軍事作戦開始直後に、「ロシア悪魔視に疑問」という記事を琉球新報に書いて大炎上しました。しかし私の記事を批判した人たちは記事の内容を批判しませんでした。批判は私が「スプートニク」というロシアの媒体を引用したことに集中していました。 

NHKの23年2月20日報道より
 これには理由があるでしょう。私の記事の内容は正しかったからです。内容を批判できないから私のソースを中傷するのです。私が「スプートニク」を引用した部分は、ウクライナからロシアに避難を希望している人が260万人以上いるという情報でした。私は、西側プロパガンダにいつも晒され、西側の言うことは信じるが非西側の言うことは嘘と決めつけるようなマインドセットを「西側脳」と呼んでいます。きっと私の記事を読んだ「西側脳」の人たちは、加害国だと思っているロシアに避難したいというウクライナ人などいるわけはないと思ったのでしょう。 

 しかし23年2月中旬に国連高等難民弁務官がウクライナから近隣諸国への避難民の数のデータを発表し、807万人の避難民のうち一番多いのはロシアに避難した285万人であると報告しました。3人に一人の行先はロシアということになります。それをNHKが特に疑問を持つ風でもなく報道していました。

西側脳には迎合しない

 西側脳の人たちを説得するために西側のソースを主に使って説明するというのは、多くのアナリストたちがやっていることで、私も、ウクライナ戦争について書いた記事では極力、西側の情報を使うことを試みました。しかし私は、今はそれも「迎合」だと思っています。どうして、西側の情報しか信じないと決め込んでいる人たちに妥協する必要があるのでしょうか。

 西側の人たちは、非西側の人たちを説得するために非西側のソースを使って文章を書いたりする必要などないのです。どうして片方だけが迎合を強いられるのでしょうか。この情報のダブルスタンダードに抗う必要があります。もう西側の下駄を無理してはいて歩く必要はないのです。

 中東という言葉がありました。いま、西アジアと呼ぶ人が増えています。中東は、欧州から見た、近東、中東、極東という、帝国主義的な呼び方です。私たち東アジア人はここにいるのに、西側から見て自分たちを極東と言う必要もないのです。自分たちは自分たちの立ち位置で自分たちの声を自分たちの媒体で発するのです。これこそ脱植民地化であり、自己決定権の発動です。

 どうしてグローバルサウス側の声は信じてもらえないのか。真面目に受け止めてもらえないのか。嘘だとか、独裁者のプロパガンダだと決めつけられるのか。でもそれはグローバルサウス側の問題ではなく、西側の問題です。

覚悟と自信

 少なくともロシア・デイの祝賀パーティにいた人たちは違いました。長年日露友好に務めてきた日本人も多く、私が確認できただけでも、中国大使館、朝鮮総連、イラン大使館、ベラルーシ大使館、モンゴル大使館、バングラデッシュ大使館の人たちがいました。逆に、米国、英国、フランス、ドイツ、カナダなどの西側諸国は私が見たかぎりでは不在でした。 

 見回して、ここはロシア大使が言ったように、グローバルサウス、グローバルイースト、言い換えればグローバルマジョリティの祭典なのだということがわかりました。西側諸国の一員である、それも米国の従属国である日本の一角で、グローバルサウスが結集してロシア大使の反帝国主義のメッセージに一同うなずいている。このようなシーンに感動しました。 

ペイマン・セアダット駐日イラン大使と
 なかでも現地でイラン大使に会えて会話ができたのは感動でした。私は伝えました。イランはいま、西側帝国の侵略を受けても国を守り、主権を守っている。それをとても誇りに思うと。私はカナダに拠点のある日本人だが、朝鮮や沖縄、日本の媒体に記事を書いているというと、大使はいつでも取材に来てくださいと言ってくれました。しかし「カナダはダメですよ」と言われました。イランはイスラエルを支持する西側諸国には心底失望しているのでしょう。

 ロシア大使やイラン大使の顔にみなぎっていたのは、覚悟と自信でした。会場には連帯感がただよっていました。それは、そこで会ってお話した朝鮮総連の徐忠彦副議長の高揚したお顔からも感じ取れました。副議長は、6月8-9日の、中朝会談では「朝鮮半島、という言葉さえ出てこなかった」と評価していました。私は一瞬その意味がわからなかったのですが、「朝鮮半島」問題というときだいたい核問題を意味するので、それが出てこなかったということは、朝鮮は核兵器を保有する主権国家であるという大前提に基づいて話が進んだという意味だと理解しました。

「非核」の武器化

 しかし中朝会談について日本を含む西側のメディアの関心は「核問題」に集中しました。習近平主席が「非核化」を語らなかったということで日本メディアは非難の合唱でした。日本の主要な新聞の中朝会談についての社説を一通り見ました。 

朝日新聞「中国が当面の米国への対抗や北朝鮮への影響力の確保といった短期的な利害のため、北朝鮮の核開発に目をつぶることは許されない。

東京新聞「核の保有を黙認するな」「中国にも地域の安全保障のために大国の責任を果たすよう求め続ける必要がある。」

産経新聞「非核化置き去り許されぬ」(中国が「覇権主義や軍国主義の復活を企てる策動に反対」と表明した件について)「鏡を見てから物を言ったらどうか。

毎日新聞脅威を高める中国の黙認」「日本は米韓両国と連携し、大国として責任ある行動を取るよう中国に求めていくべきだ。」

読売新聞「北の核開発を不問に付すのか」「米朝の仲介を担う準備があると見せつける狙いもあったようだ。」

日経新聞「中国は北朝鮮に非核化を求め続けよ」「北朝鮮の核保有を放置するかのような姿勢は断じて受け入れられない。

中国新聞「長く北朝鮮の後ろ盾だった中国も核は持たせない基本姿勢だった。それを後退させ、容認もしくは黙認に転換するなど決して許されまい。

 日本のメディアは、日本に原爆を落とした、世界一の核の脅威である米国に一度でもこんな言葉遣いをしたことがあるでしょうか。朝鮮の主権を認めず、「中国の後ろ盾」がなければ存立できないかのような存在と見なし、その中国に、朝鮮の核兵器をなんとかしろと迫る。ここには、日本人が、大日本帝国の時から持っており変わらない、二国への植民地主義がまざまざと現れています。 

 朝鮮や中国のこととなると日本や米国のメディアは右から左まで全部同じです。自分たちの戦争責任や、戦争と同様残酷な制裁の責任、自分たちの核の威嚇を棚に上げて「非核」を迫るのです。本来は平和を目指す概念である「核兵器反対」「唯一の被爆国」といった概念まで武器化し、中国、朝鮮、ロシアに対して振りかざすのです。核のダブルスタンダードです。

 中朝会談についての「アル・ジャジーラ」の6月9日の分析番組では、地政学アナリストのアイナー・タンゲン氏が司会者から「中国は(朝鮮の核を)なんとかできないのか。朝鮮の貿易は8割、9割が中国相手だ。圧力をかけられるのでは」と聞かれたときこう答えました。「あなたの考え方自体が西側の植民地主義的だ。朝鮮は独立した主権国家だ。どうして中国が何とかしなければいけないのか。思いだしてもみなさい。トランプ大統領は金正恩総書記と何度もやり取りして結局失敗した。どうして米国の失敗のしり拭いを中国がしなければいけないのか。」 

 その通りと思いました。中朝はたしかに経済規模に差がありますが、二つの主権国家がリスペクトを持って相互協力関係を進展させたのです。どうして西側諸国はその当たり前の外交が理解できないのでしょう。ロシアと朝鮮のパートナーシップについてもそうです。西側諸国はNATOだのQUADだのAUKUSだの、好戦的な軍事同盟を組んで朝鮮、ロシアや中国を脅しています。どうして自己の生存のために、非西側諸国が同盟を組んではいけないのでしょうか。

帝国のツール:ダブルスタンダード、制裁

 これまで西側での命のダブルスタンダード、情報のダブルスタンダード、核のダブルスタンダードについて述べてきました。ダブルスタンダードとは何でしょうか。帝国主義のツールです。フェアじゃない、平等じゃない、西側諸国と同じことを非西側諸国がやってはいけないのです。

医学誌 Lancet 25年8月
 平和的な発展もしてはいけない。経済大国になってはいけない。独自の通貨を使ってはいけない。どんなに威嚇されても、強い軍隊を持ってはいけない。自国を破壊されないための核も持ってはいけない。同盟国を持ってはいけない。抵抗してもいけない。自国の資源を自分で管理してはいけない。いけない、いけないづくしです。西側帝国の言うことを聞き、自国の主権と資源を差し出す、「奴隷化」を求められるのです。

 中国、ロシア、イランは奴隷化を拒否しました。朝鮮も奴隷化を拒否しています。拒否すると激しい制裁を加えられます。制裁は戦争と同じくらい人を殺すとの調査結果が昨年英国の医学誌から出ました。制裁で毎年50万人以上が死んでいます。人の命の糧を奪うからです。災害にあうとライフラインといいますね。水、食料、電気、ガス、医療。これらを災害でもないのに奪うのが制裁です。当然弱い者、つまり子ども、老人、女性、病人、障がい者から殺されていきます。 

 6月24日、ベネズエラで壊滅的な地震がありました。天災ですが人災でもあります。ベネズエラ系ジャーナリスト、アニャ・パランピル氏が言っていました。人を救うための重機が制裁のせいで、圧倒的に足りないのです。そのためにどれぐらいの救えた命が奪われていったか。米国とその同盟国は40か国、地球の人口の3分の1に違法な一方的な制裁を加えてきました。日本も加担しています。制裁がどんなに非人道的か、西側諸国の人たちは知らんぷりです。死ぬのはグローバルサウスの人々で自分たちではないからいいのでしょうか?

sanctionskill のサイトより。黄色で塗ってある国々が、米国と追随する西側諸国から違法な制裁を課されている国々。

国内制裁?

 沖縄は日本国の中で制裁されてきました。19世紀末、琉球王国が武力で強制併合され、皇民化教育、つまり奴隷化教育が徹底され、アジア太平洋戦争においては皇国を守るために「捨て石」の戦場にされ、12万以上といわれる沖縄人が殺されました。

 その後27年間米軍の軍政下におかれ、日本に戻された後も米軍基地とそれにともなう事件、事故、環境汚染を押し付け、いままた中国と朝鮮の「脅威」の名のもとに島々を自衛隊、つまり日本の軍隊と米国軍の基地および訓練場にしています。これが植民地主義です。

 国内制裁といえば、朝鮮学校の高校無償化、自治体補助金、幼保無償化排除もそうです。どれも、本来は、保護者の経済社会ステータスに依らずに子どもたち教育の機会を平等に提供するための政策であったにもかかわらず、結果として在日朝鮮人が民族教育の機会を制限されています。

7月4日に朝鮮大学校で開催された「朝鮮学校の法的地位をあらためて考える」というシンポジウムで朝鮮大学校の金陽順助教は、「ある集団を、その文化的属性を廃絶することによって破壊することを狙った行為」である「文化的ジェノサイド」であると言っています。実際にジェノサイドが多く起こった植民地支配の時代から、解放後も続いている植民地主義の流れの中で見ると、「ジェノサイド」と言い切っていいと私は思います。

最終目的は中国

 「台湾有事」など嘘です。米国は2021年以来、中国の中央政府が台湾に武力行使をするのではないかという噂を流し続け、「中国脅威論」を修復不可能なまでに定着させました。今年3月になって、「年次脅威評価書」という文書で「中国指導部が現時点で2027年に台湾侵攻を実行する計画を立てているわけではなく、また統一達成のための固定されたタイムラインも持っていない」と評価しました。5年間、自分たちが流した流言飛語のせいでどれだけの軍拡が進んだと思っているのでしょうか。

 私の見方では、これは米国の戦略に沿っています。昨年11月の国家安全保障戦略では、南北アメリカは米国の影響圏として重視する一方、東アジアや欧州では「負担共有(burden sharing)」や「負担移転(burden shifting)」の考え方を打ち出し、同盟国により大きな軍事的役割を担わせようとしています。これはプロキシー(代理勢力)を活用する戦略と映ります。すなわち、対ロシアでは欧州諸国が中心的な役割を担い、西アジアではイランへの対応をイスラエルが担い、対中国では日本、韓国、フィリピン、オーストラリアなどのプロキシー国を前面に立たせるという構図です。高市首相は昨年11月、中国のレッドラインである台湾に自衛隊を派兵する可能性を匂わせ、中国の激しい批判にもかかわらず強硬姿勢を変えていません。これも米国のプロキシーとしての役割を忠実に担っているのです。

ブライアン・バーレティック氏の投稿より

 国際政治軍事アナリストのブライアン・バーレティック氏は、一連の米国の戦争は多極化そのものへの戦争であり、最終目的は中国であると言っています。ジャーナリストのペペ・エスコバール氏は、米国は、BRICSや上海協力機構による「ユーラシア経済統合」を阻もうとしていると、表現しています。イラン戦争はたんなる地域戦争ではなく、これは中国のエネルギー輸入経路を絶つという目的があるとの分析です。

 米国のベネズエラ攻撃ですでにベネズエラから中国への石油の輸出は昨年までに比べ4分の1になっています。OPECによると、イラン戦争で、イランから、またペルシャ湾岸諸国からのエネルギー生産20%ほどダウンしています。これは回復に1年ほどかかると言われています。原油輸入の半分を西アジアに頼っている中国には多大な影響があります。

 もちろん日本もです。日本は原油の輸入先の90-95%を西アジアに頼っていましたが、イラン戦争開始後、戦争で減った分を備蓄と、米国からの輸入を増やすことで補いました。米国から原油を持ってくるのは非常にコストがかかります。これを見て思い出したのが、22年9月にノルドストリームパイプラインが爆破され、ロシアからの安価なガスに頼っていた欧州経済は米国から高いLNGを買わざるを得なくなり経済全体が打撃を受けたことです。

 バーレティック氏は、いま同じことを米国はアジアに対してやろうとしていると言っています。ホルムズ海峡の次は、東アジアにとっての物流・エネルギー供給のチョークポイントであるマラッカ海峡だと。今年2月、米国はインドネシアに包括的な上空通過許可を求めました

インドネシアは、南シナ海をめぐる紛争にインドネシアが巻き込まれる恐れがあることと、中立外交に影響することから慎重な姿勢を見せています。

 外国がその国の領空を無制限に利用させろなどと、米国はここでも主権侵害的な圧力をかけています。インドネシアは25年初頭にBRICSの正式メンバーとなりました。人口が3億に達そうとしている世界最大のイスラム教国がBRICSに入ったことは西側にとっては衝撃だったでしょう。米国がマラッカ海峡への食指を伸ばすためにインドネシアに圧力をかけている可能性はあるのではないかと思います。

日本は、覇権にしがみつく米国にしがみつくのをやめよ

 中国はこのような米国のエネルギー封鎖のリスクを想定し、長年にわたって備えを進めてきました。その代表例が、再生可能エネルギーへの巨額の投資であり、海上輸送への依存を減らすことも意識した一帯一路構想です。習近平主席は、訪中したトランプ大統領に、「トゥキディデスの罠」に陥ってはならないと語りました。しかしきょうここまで述べてきたように、既存の覇権国である米国および西側諸国による新興国・多極化勢力への世界規模の戦争はすでに進行中ではないかと思っています。これが世界の破滅をもたらさないようにしなければいけないのです。帝国をストップしなければいけない。日本は、覇権にしがみつく米国にしがみついたままでいいのでしょうか。脱亜入欧をやめて、名誉白人国家という不名誉な立場を捨てて、アジアに戻りませんか。

 そのためには、きょうこの話の出発点に戻りますが、日本は帝国時代の戦争責任、植民地責任、朝鮮戦争に対する責任、沖縄に対する責任に向き合わないといけません。日米安保条約、地位協定を見直して日米平和条約に書き換えることは可能なのです。朝鮮とはまだ植民地支配の清算さえできていません。ロシアともまだ第二次大戦の平和条約締結さえできていません。これらはすべて米国による支配と分断が背景にある「未解決の問題」です。米国との距離を取り、自主的に隣国と向き合うことによっておのずと解決への道が開けていきます。朝鮮戦争の終結を阻止するのではなく促進する力になれます。そのためには西側脳の脱洗脳が必要です。きょうのような催しや、私の話がその一端を担うことを願っています。(終)


★講演はこの集会の一環でした。沖縄国際大学の前泊博盛さんと一緒でした。

 


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