関東大虐殺の追悼式は、東京、埼玉、神奈川、群馬、千葉など各地の虐殺現場で開催されていますが、今年は茅ヶ崎で初めて開催されました。私は呼びかけ人の一人となりビデオメッセージで参加させていただきました。UPLANによる追悼式の動画と、メッセージの本文をここに共有します。
関東大震災朝鮮人虐殺102年茅ヶ崎 追悼と講演の集いへのメッセージ
きょうわたしは、セトラーコロニアル国家であるカナダの一部、バンクーバー市にいます。この地は、先住民族のムスキウム、スコーミッシュ、ツレイワトゥッシュというネイションの、伝統的な土地の上にあります。
この地にはカナダと先住民族の間の正式な取り決めもなく、奪われた土地とも言えます。
震災後、関東全域で流言を流し、軍隊、警察、民衆が、約6700人かそれ以上といわれる朝鮮人を惨殺しました。
800人にも及ぶと言われる中国人、さらに、日本人の社会主義者や、朝鮮人と誤認された人たちなども殺されました。
背景には日本による朝鮮の植民地支配と、3.1独立運動など抵抗運動に対する弾圧がありました。
関東大虐殺は、朝鮮民族の構成員を意図的に敵視し、大量に殺害したことで、まぎれもなくジェノサイドと言えると思います。
ジェノサイドといえば、私の住むカナダも少なくとも二つの意味で当事者です。
ひとつめは、カナダによる、先住民族に対するジェノサイドです。
カナダ政府とキリスト教会は、19世紀半ばから20世紀後半にいたるまで、先住民族の子どもたち約15万人を、全国に140箇所ほどあったインディアン・レジデンシャル・スクールという強制同化施設に送り、そこでは精神的、肉体的、性的虐待が横行しました。
6000人かそれ以上の子どもたちが命を奪われたと言われています。
カナダ政府は今世紀になってからサバイバーへの謝罪と補償を行い、真実と和解委員会を設置しました。
カナダ議会は、22年、インディアン・レジデンシャルスクールを「ジェノサイドであった」と認めています。
また、先住民族の女性が失踪と殺害の被害者になる事件が何千件も起きていて現在も繰り返されています。
これらについても政府が委託した独立調査機関は「ジェノサイド」であったと結論づけており、カナダ政府もそれを受け入れています。
ふたつめは、米国や欧州諸国と同様、カナダは、イスラエルがパレスチナで行っているジェノサイドに加担してきています。
カナダは、イスラエル占領地の治安部隊に協力しています。
カナダ人の若者をイスラエル軍に入隊させています。イスラエルを支援する団体が政府の補助金を受けています。
カナダ政府は、人道危機であるとしながらも、イスラエルの戦争犯罪を糾弾することもなく経済制裁をすることもありません。
イスラエルを批判する運動を「ユダヤ人差別」だとレッテルを貼り、弾圧することも多々あります。
このようにカナダは現在進行形の2つのジェノサイドの当事者であるといえます。
9月1日にはここバンクーバーでも、日系やコリア系などの若者たちが中心となって、関東大虐殺の被害者を記憶するメモリアルが開催されました。
地元の教会の牧師、イム・テビンさんは、おじい様が関東大虐殺のサバイバーであるということを話してくれました。
今回、天野秀明さんに、6月28日の茅ヶ崎虐殺のフィールドワークの動画や資料をいただき、私も、茅ヶ崎の虐殺について学ぶことができました。
茅ヶ崎で殺された朝鮮人の方々は、2023年にカンドクサンさんが発見された資料で、5人の方の殺されたときの状況とお名前がわかり、その前にわかっていた2人と合わせ、現在のところ7人の方が殺されたことが確認できていると聞いています。
調査されている皆さんが言うように、実際はもっと多かったと思います。
9月3日の午前2時頃、茅ヶ崎のじっけんざか十字路で殺された25才のハ・ユハクさん、同日午前10時ごろ、ほんそんの鉄道線路で殺された、キム・ガリャンさん、キム・ポンゲさん、キム・チェヒさん、キム・キーマンさん。
当時日本にいた朝鮮人は若い独身男性が多かったと聞いています。
おそらく、この方たちのご両親は、日本にいる息子さんの帰りを待ちわびていたでしょう。
解放までの22年間、待ちわびていたでしょう。解放後も、ご自分たちが亡くなるまで待ちわびていたでしょう。
祖国から遠く離れた場所で、こんな残酷な殺され方をしたのに、当時警察はろくに捜査もせず、犯人たちがなんの代償も払うこともなくその後ものうのうと生きていたかと想像すると、ご遺族の無念や怒りはいかほどであったろうかと思います。
ご遺族が息子さんの死の状況を知らずにこの世を去られたとしても、その不安や無念や悲しさは想像することもできません。
いまだに事実認定も、調査も、謝罪もしていない日本政府の人間たちは、自分たちの息子が、きょうだいがやられたらという想像さえ働かせることができないのでしょうか。
きょう、心から、被害者の方々とご遺族の方々への追悼の気持ちを伝えたいと思います。
そして、日本政府と日本社会が、この歴史上最悪のヘイトクライムに向き合い、事実を認め、真相究明し、責任を取ることを求めたいと思います。
真相究明に取り組む、神奈川実行委員会、茅ヶ崎の会の方々の、真実と正義のための活動に深く感謝し、連帯したいと思います。 乗松聡子