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Thursday, March 31, 2022

ダイアナ・ジョンストン:ワシントンにとって、戦争は決して終わらない。DIANA JOHNSTONE: For Washington, War Never Ends (Japanese translation)

米国出身、パリに住むジャーナリストのダイアナ・ジョンストン氏の2月23日の記事に続き、3月16日の記事からも学び、考えさせられることが大変多かったので翻訳を載せます。(翻訳はアップ後修正することがあります)。この戦争と、暴力の、一刻も早い終結を願って。

Diana Johnstone: For Washington, War Never Ends

https://consortiumnews.com/2022/03/16/diana-johnstone-for-washington-war-never-ends/

DIANA JOHNSTONE: ワシントンにとって、戦争は決して終わらない。

2022年3月16日

北大西洋条約機構(NATO)の結成とドイツの再軍備は、米国にとってヨーロッパでの戦争が完全に終わったわけではないことを確認させた。今もそうだ。

ダイアナ・ジョンストン著

パリにて

コンソーシアム・ニュース特別寄稿


延々と続く。1914年から1918年の「戦争を終わらせるための戦争」は、第二次世界大戦として知られる1939年から1945年の戦争につながった。そして、この戦争も終わることがない。主にワシントンにとって、この戦争は「良い戦争」であり、「アメリカの世紀」を作った戦争であったからだ。

ウクライナの紛争は、私たちがすでに第三次世界大戦と呼んでいるものを引き起こす火種になるかもしれない。

しかし、これは新しい戦争ではない。第二次世界大戦と呼ばれる戦争の延長線上にある古い戦争であり、参加したすべての人々にとって同じ戦争ではなかった。

ロシアの戦争とアメリカの戦争は、まったく、まったく違うものだった。


ロシアの第二次世界大戦

ロシア人にとって、戦争は大きな苦しみと悲しみと破壊の体験だった。ナチスのソ連侵攻は、スラブ人蔑視と「ユダヤ人ボリシェヴィキ」に対する憎悪という人種差別思想によって推進され、まったく無慈悲なものであった。推定2700万人が死亡し、その約3分の2が民間人であった。圧倒的な損失と苦しみにもかかわらず、赤軍はヨーロッパの大部分を征服していたナチスの流れを変えることに成功した。

このドイツの侵略者を国土から追い出す巨大な戦いは、ロシア人にとって「大祖国戦争」と呼ばれ、民族の誇りを育み、自分たちが経験したことを慰めるのに役立った。しかし、勝利の誇りはともかく、戦争の悲惨さは平和を希求する真の心を呼び覚ました。


アメリカの第二次世界大戦

アメリカの第二次世界大戦は、(第一次世界大戦と同じように)どこか別の場所で起こった。これは非常に大きな違いである。この戦争によって、アメリカは地球上で最も豊かで強力な国家として台頭することができた。アメリカ人は、戦争を防ぐため(「ミュンヘン」)にも、戦争を終わらせるため(「無条件降伏」がアメリカ流)にも、決して妥協してはならないと教えられた。正義の強硬さは、悪との戦いにおける善の態度としてふさわしいものであった。

戦争経済によって、アメリカは不況から脱却した。軍事ケインズ主義が繁栄への鍵として浮上した。軍産複合体が誕生した。ペンタゴンの契約をすべての議会選挙区に提供し、ウォール街の投資家に利益を保証し続けるために、新たな敵が必要となった。共産主義の恐怖、それはまさにファシズムを生み出したのと同じ恐怖であったが、それが功を奏した。


冷戦:第二次世界大戦の続き

つまり、1945年以降、ロシアにとって第二次世界大戦は終わったのである。アメリカにとっては、そうではなかった。冷戦と呼ばれるものは、ワシントンの指導者たちによって自発的に継続されたものである。冷戦は、ロシアの防衛的な「鉄のカーテン」が、ヨーロッパの他の地域にとって軍事的な脅威となるという理論によって継続された。

終戦後、スターリンの安全保障上の最大の関心事は、このような侵略が再び起こらないようにすることだった。西側の解釈とは異なり、モスクワがベルリンでの勝利のために占領した東欧諸国を現在も支配しているのは、共産主義のイデオロギーというより、西側からの再侵略の障害となる緩衝地帯を作ろうという決意からであった。

スターリンは、東西のヤルタ協定を尊重し、ギリシャの共産主義者の生死をかけた闘いを支援することはなかった。モスクワは、西ヨーロッパにおける規模の大きい共産主義政党の指導者たちに、革命を避け、ブルジョア民主主義のルールに従って行動するよう注意を促した。ソ連の占領は、残忍であることもあったが、断固として防衛的であった。ソ連の平和運動への支援は、完全に本物であった。

北大西洋条約機構(NATO)の設立とドイツの再軍備は、アメリカにとってヨーロッパでの戦争が完全に終わったわけではないことを確認させた。占領下のドイツにおける米国の「脱ナチス化」は、米国の再軍備やスパイ活動に役立つドイツ人(ウェルナー・フォン・ブラウンからラインハルト・ゲーレンまで)の組織的な頭脳流出を伴うものであった。


アメリカのイデオロギー的勝利

冷戦の間、アメリカは科学と産業を駆使して巨大な兵器庫を建設し、朝鮮半島やベトナムに勝利をもたらすことなく、壊滅的な打撃を与えた。しかし、軍事的な敗北は、アメリカのイデオロギー的な勝利を打ち消すことはなかった。

アメリカ帝国主義の最大の勝利は、自己正当化するイメージとイデオロギーを、主にヨーロッパに広めたことである。アメリカのエンターテインメント産業の支配は、快楽主義と道徳的二元論という特殊な融合を世界中に、特に若者の間に広めた。ハリウッドは、第二次世界大戦はノルマンディー上陸作戦で米軍とその同盟国によって本質的に勝利したと西洋に信じ込ませた。

アメリカは、善のための最終的な力であると同時に、生きていて楽しい唯一の場所であることを売りにした。ロシア人は無骨で不吉な存在だった。

ソ連でも、多くの人がアメリカの自己美化の魅力に免疫がなかった。冷戦はすべて大きな誤解であり、我々が親切にすれば、西側諸国も親切にしてくれるだろうと考える人もいたようだ。ゴルバチョフもこの楽観主義に染まっていた。

元駐モスクワ米国大使のジャック・マトロックは、1980年代のロシアのエリート層には、ソ連という重荷からロシアを解放したいという思いが蔓延していたと回想している。ソ連の自壊を成し遂げたのは大衆ではなく指導者であり、ロシアは後継国家として、アルコール漬けのエリツィン大統領の下でソ連の核兵器と国連の拒否権を持ち、1990年代には米国の圧倒的な影響力を持つに至ったのである。


新生NATO

過去3世紀にわたるロシアの近代化は、ロシアの進歩を先進国である西欧の模倣に求める「西欧主義者」と、ロシアの物質的後進性を、おそらく伝統的村落の単純な民主主義に基づくある種の精神的優位性によって補うと考える「スラブ愛好者」の間で論争を巻き起こしている。

ロシアでは、マルクス主義は西洋化する概念であった。しかし、公式のマルクス主義は、「資本主義」西側、特にアメリカに対する賞賛を消し去ることはできなかった。ゴルバチョフは、ある種の社会民主主義を生きる「ヨーロッパ共通の家」を夢想していた。1990年代、ロシアは西側の一部であることだけを求めた。

次に起こったことは、冷戦を正当化する「共産主義の恐怖」全体が誤りであったことを証明するものであった。口実に過ぎなかったのである。軍事的ケインズ主義や、経済的・思想的覇権を維持するためのアメリカの特別な戦争を永続させるために作られた偽りであった。

ソ連はもう存在しない。ソ連の共産主義はもうないのだ。ソ連圏もワルシャワ条約も存在しない。NATOにはもう存在意義がなかった。

しかし、1999年、NATOは50周年を祝うかのようにユーゴスラビアを空爆し、防衛的な軍事同盟から攻撃的な軍事同盟へと変貌を遂げた。ユーゴスラビアは、NATOにもワルシャワ条約にも属さない非同盟国であった。NATOにもワルシャワ条約にも属さず、他国を脅かすこともない。安保理の承認も自衛の正当化もないNATOの侵略は、国際法に違反していた。

同じ頃、NATOはロシアの指導者たちとの不文律ながら熱心な外交的約束を破り、ポーランド、ハンガリー、チェコ共和国を新加盟国として迎え入れた。5年後の2004年、NATOはルーマニア、ブルガリア、スロバキア、スロベニア、バルト三国を加盟させた。一方、NATO加盟国はアフガニスタンでの戦争に引きずり込まれ、最初で唯一の「NATO加盟国の防衛」、すなわち米国を防衛することになったのである。


プーチンを理解すること-あるいはしないこと

(挿入:プーチンの有名な2007年のミュンヘン演説

一方、プーチンは、元KGBで東ドイツに駐在していたこともあり、西側への理解もあり、エリツィンの後継者に選ばれていた。プーチンは、エリツィンがアメリカ仕込みの経済ショック療法を受け入れたことで生じた混乱からロシアを救い出した。

プーチンは、最もひどいぼったくりに歯止めをかけ、没落したオリガルヒの怒りを買った。自分たちの違法行為を使って自分たちが迫害の犠牲者であると西側諸国を説得した(例:馬鹿げたマグニツキー法)。

2007年2月11日、ロシアの西洋かぶれプーチンは、西側の権力の中心であるミュンヘン安全保障会議に行き、西側に理解されるよう求めた。その気になれば、理解するのは簡単だ。プーチンは、米国が押し付けている「一極集中世界」に異議を唱え、"一部の者だけでなく、すべての者の安全と繁栄を確保する公正で民主的な世界秩序の構築において協力できる、責任ある独立したパートナーと交流したい "というロシアの希望を強調したのである。

西側諸国の主要なパートナーの反応は、憤慨と拒絶であり、15年にわたるメディアキャンペーンでプーチンをある種の悪魔のような存在として描いてきた。

実際、この演説以来、欧米メディアのプーチンとロシアに対する侮辱はとどまるところを知らない。そして、この侮蔑的な扱いの中に、第二次世界大戦の2つのバージョンを見ることができる。2014年、米英軍によるDデイ上陸作戦から70周年を記念して、世界の首脳がノルマンディーに集結した。

実は、その1944年ノルマンディー侵攻時、ドイツ軍が主に東部戦線に集中し、赤軍に敗北していたにもかかわらず、侵攻は困難に陥ったのである。モスクワは、ドイツ軍をノルマンディー戦線から引き離すために、まさに特別作戦を開始したのである。それにもかかわらず、連合軍の進撃は、ベルリンへの道のりで赤軍に追いつくことはできなかった。

しかし、ハリウッドのおかげで、西側ではD-Dayを第二次世界大戦の決定的な作戦と考える人が多い。この出来事を称えるために、ウラジーミル・プーチンはそこにいたし、ドイツのアンゲラ・メルケル首相もいた。

そして翌年、モスクワで行われた第二次世界大戦終結70周年を祝う豪華な戦勝パレードに、世界の指導者が招待された。しかし、米英独の首脳は不参加を表明した。

これは、ロシアと、ロシアによるナチス・ドイツの敗北への決定的な貢献(国防軍の80%を破壊した)を軽蔑する西側諸国の果てしない一連のジェスチャーと一貫性があった。 2019年9月19日、欧州議会は「ヨーロッパの未来にとってヨーロッパの追憶の重要性」に関する決議を採択し、ソ連とナチス・ドイツが第二次世界大戦を招いたと、共同で非難した。

ウラジーミル・プーチンは、終戦75周年を記念して『The National Interest』に掲載された「第二次世界大戦の教訓」という長文の英文記事で、この無礼な侮辱に反論している。プーチンは、戦争の原因と、ナチスによる872日間のレニングラード(現サンクトペテルブルク)包囲という殺人的な状況に陥った人々の生活への深い影響について慎重に分析し、回答している。その中にはプーチンの両親も含まれており、両親の2歳の息子は、80万人の犠牲者のうちの一人だったのだ。

ロシアにおける第二次世界大戦の意味を西側諸国が理解しようとしないことについて、プーチンが深く憤慨しているのは明らかだ。「記憶を冒涜し、侮辱することは卑しいことだ」とプーチンは書いている。「第二次世界大戦の終結75周年を記念する宣言が、ソ連を除く反ヒトラー連合に参加したすべての国々に言及する場合のように、意地悪は意図的、偽善的、かなり意図的なものになり得るのだ」。

そしてこの間、NATOは東方への拡張を続け、陸と海の境界線での大規模な戦争演習で、ますます公然とロシアを標的にするようになったのである。


米国のウクライナ掌握作戦

ロシア包囲網は、2014年の米国によるウクライナ掌握で質的な飛躍を遂げた。西側メディアはこの複雑な出来事を民衆の蜂起と言い換えたが、民衆の蜂起は独自の目的を持った勢力に乗っ取られることがあり、この事件もそうであった。選挙で選ばれた大統領ヴィクトール・ヤヌコヴィッチは、欧州の指導者たちとの合意で早期選挙に合意した翌日、暴力によって倒されたのである

数十億ドルの資金と極右過激派による銃撃殺人事件によって、ビクトリア・ヌーランド米国務次官補(「EUなんてくそくらえ」)が公然と指示した政権交代が行われ、キエフの指導者は主にワシントンにより、NATOへの加盟を熱望するような者が選ばれたのだ。

年末までに、「民主的なウクライナ」の政府は、大部分が米国が承認した外国人の手中にあった。新財務大臣はウクライナ系のアメリカ人、ナタリア・ジャレスコで、国務省に勤めた後、民間企業に転身した背景を持つ者であった。経済相はリトアニア人のアイヴァラス・アルボマヴィチュスで、バスケットボールの元チャンピオンである。保健相には、グルジアの元保健・労働大臣、サンドロ・クヴィタチヴィリが就任した。

その後、失脚した元グルジア大統領ミヘイル・サアカシビリが、問題のオデッサ港の責任者として召集された。そして、ジョー・バイデン副大統領は、息子のハンター・バイデンがウクライナのガス会社ブリスマで利益を生む地位を得たため、キエフ内閣の改造に直接関与することになったのである。

このような反ロシア的な政権交代は、ロシア系住民の多い南東部では抵抗運動を呼び起こした。オデッサで40人以上の抵抗者たちが焼き殺された8日後、ルガンスク州とドネツク州がクーデターに抵抗し、分離独立に動いた。

(挿入:2014年5月2日のオデッサ労働組合会館における出来事の映像

その後、米国が設置したキエフ政権はこれらの地域に対する戦争を開始し、8年間続き、何千人もの市民が犠牲になった。

そして、住民投票によってクリミアはロシアに返還された。クリミアの平和的返還は、ロシアの主要な海軍基地であるセバストポリをNATOの脅威から守るために不可欠であったことは明らかである。1954年にフルシチョフがウクライナに移管した際、クリミアの住民はその移管を認めていなかったから、この返還は無血で、民主的な投票によって達成された。これは、1999年にNATOが空爆によってセルビアからコソボを切り離したのとは対照的である。

しかし、米国と西側諸国の多くにとっては、コソボで起きたことは人道的な行為と映り、クリミアで起こったことは許しがたい侵略行為であったのである。


大統領府が用意したNATOへの裏口

ロシアは、NATOの拡大がウクライナを包含してはならないと警告し続けた。欧米の指導者たちは、ウクライナがどのような同盟を選んでも加盟する「権利」を主張する一方で、すぐには実現しないとも言い、揺れ動いていた。フランスやドイツなどのNATO加盟国が拒否権を発動する可能性は常にあった。

しかし、その一方で、2021年9月1日、ウクライナはホワイトハウスによってワシントンの特別な地政学的ペットとして採用された。NATO加盟は、遅ればせながら形式的なものになった。ホワイトハウスが発表した「米・ウクライナ戦略的パートナーシップに関する共同声明」は、「ウクライナの成功は、民主主義と独裁主義の間の世界的な闘争の中心である」- つまり、自由世界対共産主義に代わる、ワシントンの現在の自己正当化イデオロギー二元論である-と発表している。

さらに、ロシアに対する恒久的な詭弁を披瀝した。

「21世紀には、国家が力によって国境を画定することは許されない。ロシアはウクライナでこの基本原則を破った。主権国家は、自ら決断し、自ら同盟を選択する権利を有する。米国はウクライナに寄り添い、ロシアの侵略の責任を追及する努力を続けていく。ウクライナの主権と領土の一体性に対するアメリカの支持は揺るぎない。」

声明はまた、キエフのドンバスに対する戦争を 「ロシアの侵略 」であると明確に述べている。そして、このように妥協のない主張をしている。「米国は、ロシアによるクリミア併合と称するものを認めず、今後も認めない...」。(太字は筆者)。この後、ウクライナの軍事力強化への約束が続く。ドンバスやクリミアを取り戻すことを視野に入れたものであることは明らかだ。

2014年以降、米英は密かにウクライナをNATOの補助機関として、心理的・軍事的にロシアに敵対するように変貌させた。私たちにはどのように見えたとしても、ロシアの指導者たちには、これはますますロシアへの全面的な軍事攻撃、バルバロッサ作戦の再来に向けた準備にしか見えなくなっていた。「プーチンを理解」しようとした私たちの多くが、ロシアの侵攻を予見できなかったのは、それがロシアの利益になるとは思えなかったからだ。私たちは今でもそう思っている。しかし、彼らは紛争を避けられないと見て、その瞬間を選んだのだ。


曖昧な呼応

プーチンは、2022年2月のロシアのウクライナでの「作戦」を、ルガンスクとドネツクでのジェノサイドを止めるために必要であると正当化したのである。これは、米国が推進するR2P、保護責任論、とりわけコソボでの「ジェノサイド」を防ぐためとされる米国とNATOによるユーゴスラビアへの空爆と呼応するものだった。現実には、法的にも、特に人的にも、ドンバスの状況は当時のコソボのそれよりもはるかに悲惨な状況にある。しかし、欧米ではドンバスとコソボを比較しようとすると、「誤った同等性」あるいは「what-about-ism」として糾弾される。

しかし、コソボ戦争は、ロシアのドンバス侵攻とのアナロジーを大きく超えたものだった-大義なのである。

何よりも、コソボ戦争は、NATOがもはや防衛的な同盟ではないことを明らかにした。むしろNATOは、米国の指揮下で、自ら選んだ国を爆撃し、侵略し、破壊することを承認できる攻撃的な軍隊になっていたのである。大量虐殺の危険性、人権侵害、「自国民を殺す」と脅す指導者など、口実はいつでも作ることができた。どんな大げさな嘘でもいいのだ。NATOがその触手を伸ばしている以上、誰も安全ではない。リビアは2番目の例となった。

プーチンが発表した「非ナチ化」という目標も、西側諸国ではピンと来るかもしれない。しかし、どちらかといえば、「ナチス」が東西で全く同じ意味を持つわけではないことを物語っている。西側諸国、ドイツやアメリカでは、「ナチ」は主に反ユダヤ主義を意味するようになった。ナチスの人種差別は、ユダヤ人、ロマ人、そしておそらく同性愛者にも適用される。

しかし、ウクライナのナチスにとって、人種差別はロシア人に適用される。ウクライナの治安部隊に組み込まれ、アメリカ人とイギリス人によって武装・訓練されたアゾフ大隊の人種差別は、ナチスのそれと同じだ。ロシア人は混血で、中世のモンゴルの征服によって部分的に「アジア人」であり、一方ウクライナ人は純白のヨーロッパ人であるというのだ。

これらの狂信者の中には、自分たちの使命はロシアを破壊することだと公言している者もいる。アフガニスタンなどでは、アメリカはイスラムの狂信者を支援し、コソボでは暴力団を支援した。彼らが自分たちの味方としてスラブ人と戦うのなら、彼らがどういう考えの持ち主かなどはどうでもいいことなのである。

(ジャーナリスト Dan Cohen 氏の3月15日ツイッターより:ウクライナ24TV局で、ナチスを賛美しロシア人を殺すと公言しているクリップ


相反する戦争の目的

ロシアの指導者にとって、彼らの軍事「作戦」は、彼らが恐れる西側諸国の侵略を阻止するためのものである。彼らはまだウクライナの中立を交渉したいのだ。戦略家ズビグニュー・ブレジンスキーが、ロシアをアフガニスタンの罠に誘い込んだ(彼らに「彼らのベトナム」を与えた)と自慢していたアメリカにとって、これは彼らの終わりなき戦争における心理的勝利である。西側諸国はかつてないほど団結してプーチンを憎んでいる。プロパガンダと検閲は、世界大戦のレベルをも凌駕している。ロシアはこの「作戦」を早く終わらせたいに違いない。様々な意味で彼らにとってコストがかかるからだ。アメリカはこの戦争を防ぐすべての試みを拒絶し、戦争を誘発するためにあらゆることを行い、その継続からできる限りの利益を引き出すだろう。

今日、ヴォロディミル・ゼレンスキーは、米国議会に、ウクライナにもっと軍事援助を与えるよう懇願した。その援助は戦争を継続させるだろう。アンソニー・ブリンケン氏がNPRに語ったところによると、米国は「ロシアが国を近代化するために、また、主要産業である防衛や航空宇宙、ハイテク部門、エネルギー探査を近代化するために必要な技術を持たせない」ことで対応しているそうだ。

アメリカの戦争の目的は、ウクライナを救うことではなく、ロシアを破滅させることである。それには時間がかかる。

危険なのは、ロシアがこの戦争を終わらせることができず、アメリカが戦争を継続させるためにあらゆる手段を講じることだ。


Diana Johnstone ダイアナ・ジョンストンは、1989年から1996年まで欧州議会の緑の党の報道官を務めた。最新作『Circle in the Darkness: Memoirs of a World Watcher[闇の中の円環:一人の国際情勢評論家による回顧録]』 (Clarity Press, 2020)では、ドイツの緑の党が平和政党から戦争政党に変貌するにあたっての数々の重要なエピソードが語られている。その他の著書には『Fools’ Crusade: Yugoslavia, NATO and Western Delusions [愚か者の十字軍 ユーゴスラビア、NATO、西側諸国の妄想]』(Pluto/Monthly Review) がある。また、父親であるポール・H・ジョンストンとの共著で、『From MAD to Madness: Inside Pentagon Nuclear War Planning [MADから狂気へ ペンタゴンの核戦争計画の内幕]』 (Clarity Press)がある。連絡先: diana.johnstone@wanadoo.fr


Wednesday, March 30, 2022

この戦争の本質を捉えるために:元豪陸軍将校のキャメロン・レッキー氏「西側諸国の方向転換が必要」 Former Australian Army Officer Cameron Leckie: "A Major Change in Direction is Required in the West."

オーストラリアで定評のあるネットメディア Pearls and Irritations (元駐日オーストラリア大使でビジネスマン、評論家でもあるジョン・メナデュー氏が2013年に創立)に3月30日に掲載されたキャメロン・レッキー氏(元オーストラリア陸軍将校、いまは博士課程在籍)の評論「ウクライナ-西から東への決定的なパワーバランスの移行」の日本語版を掲載します。西側(米国)中心主義の報道ばかりに囲まれているとなかなか見えてこないかもしれない、この戦争について冷静で俯瞰的な見方をしている記事かと思いました。

「真実は戦争の最初の犠牲者であると言われて久しい。今回の紛争が例外であると考えるのは賢明ではないだろう。したがって、この戦争に関するメディアの報道と分析には、あらゆる側面から健全な懐疑の目を向けなければならない。」

は私も3月17日の琉球新報の記事で強調したことです。だんだん西側からもこのような発言をする人が増えてきていると感じています。(乗松聡子)

The Ukraine – a decisive transfer of the balance of power from west to east

Mar 30, 2022

https://johnmenadue.com/cameron-leckie-a-decisive-transfer-of-the-balance-power-from-west-to-east/?fbclid=IwAR2-zlLeYAvufP0p8UscsLEFl20RsvI0fRuh5CgnpWiz7WMZFhNFeJ9LnmY

ウクライナ-西から東への決定的なパワーバランスの移行

キャメロン・レッキー著

2022年3月30日

2022年の露・ウクライナは、ロシアと欧米諸国との代理戦争でもある。パワーバランスが西側から東側に決定的に移行することを覚悟しなければならない。戦闘の大部分は、西側ジャーナリストがほとんどいないドンバスで起きている。

オーストラリアや西欧諸国では、現在進行中のロシア・ウクライナ戦争に関する議論や報道のほとんどが、明らかに陳腐なものである。極めて複雑な状況を単純化して、プーチンとロシアは悪で、ウクライナは善であると要約できるような物語を作り出すことが特徴である。

このような極端な単純化は、戦争の原因、戦争の性質、その広い意味合い、そして何よりも、どうすれば最小限の死傷者数とウクライナのインフラへの被害で戦争を終結させることができるかを理解する上でも役立たない。

戦争そのものを報道する代わりに、紛争に関する人間味のある報道が圧倒的に多いのは、そのためである。ウクライナ兵の勇敢な活躍やロシアによる戦争犯罪の疑惑とともに、家族がバラバラになったという悲痛な例は、重要ではあるが、事件の経過を正確に描くというよりは、感情的な反応を引き起こす傾向がある。

その理由のひとつは、戦闘の大部分を占めるドンバスやマリウポリ周辺に、欧米の主流記者がほとんどいないことにある。その結果、ウクライナ側からの主張(多くは未検証で検証不能)、前述の人情話、あるいは主要都市とその周辺でのミサイル攻撃の影響によって空白が埋められることになる。真実は戦争の最初の犠牲者であると言われて久しい。今回の紛争が例外であると考えるのは賢明ではないだろう。したがって、この戦争に関するメディアの報道と分析には、あらゆる側面から健全な懐疑の目を向けなければならない。

ロシア軍が終結し、ウクライナが実際に勝利しているのではないかという説が有力になっているようだ。このシナリオは、ロシアに負けてほしいという願望や、報道・分析の圧倒的な親ウクライナ偏重、ロシアの目的と戦略に対する誤解に影響された希望的観測である可能性が高い。

ロシア軍は「労力の節約」作戦を展開している。ウクライナの主要都市を守る守備隊を事実上固定し、ドンバスの軍隊を支援できないようにしているのだ。一方、ロシアはウクライナの軍事インフラ(補給、整備、指揮統制施設、防空、大砲、装甲車などの兵器システム)を、空爆、巡航ミサイル、ロケット弾、従来の大砲を組み合わせて、ウクライナ全土で徐々に破壊しつつある。ドンバスには、ウクライナで最も優れた訓練を受け、装備された約6万人の部隊が駐留している。弾薬、燃料、配給品の供給が減り続けていること、空と地上での戦闘力におけるロシアの優位性、これまでの戦闘の影響などが重なり、この部隊が現時点で局所的な戦術レベルの作戦以外に何かできる可能性は低いように思われる。

戦争の初期段階における処理の無能さが指摘されているが、ペンタゴンは、ロシア軍は侵攻に割り当てられた初期の戦闘力の90%近くをまだ保持していると評価している。ロシア軍はマリウポルの占領を完了しようとしており、ドンバスのウクライナ軍が完全に包囲され、その後、破壊されるか降伏を強いられるのは時間の問題であろう。今後、数週間、数ヶ月の戦闘が続くかもしれないが、外部からの介入(直接の軍事介入を繰り返し否定してきたNATOなど)がない限り、ロシアがその軍事目的を達成するであろう兆候がある。

しかし、ロシアとウクライナの直接的な対立は、この対立の一つのレベルに過ぎない。ウクライナは、実はもっと大きな紛争における不幸な駒なのだ。長年ロシアを分析してきたギルバート・ドクトロウが指摘するように、これは「米国とロシア連邦の本格的な代理戦争であり、米国の世界覇権を終わらせるか永続させるかに関わるもの」なのである。ウクライナでの戦争は遅かれ早かれ終わるだろうが、この代理戦争の世界規模での意味は、より大きな期間、より大きな影響を及ぼすことになる。

ロシアの侵攻に対する西側の対応は、ウクライナへの軍事援助を大幅に増やし(これは戦争の結果を変えそうにない)、ロシアに対して前例のない規模と性質の経済(および文化)制裁を実施することであった。

このアプローチは複数の理由からうまくいきそうにない。その第一の理由は、前回の記事で述べたように、「アメリカやヨーロッパが実施できる制裁で、ロシアよりもそれらの国々に大きな影響を与えず、西側諸国の間にさらなる分裂をもたらさないものは存在しない」ということである。

今回の制裁はロシア経済に破壊的でマイナスの影響を与えるだろうが、ロシアが世界経済にとってあまりにも重要であるという単純な事実から、壊滅的な打撃を与えることはないだろう。制裁の最初のショックは、ロシアの金融システムの崩壊を引き起こすことはなかったし、銀行の経営破綻を引き起こすこともなかった。ルーブルはすでに対米ドルでいくらか値を戻し、ロシアは(今のところ)国債の返済を済ませている。

ロシアは孤立しているとは言い難い。国連総会で過半数の国がロシアに反対票を投じたが、それ以上に重要なのは、ロシアに制裁を加えていない国である。欧米諸国以外では、世界第2位と第6位の経済大国である中国とインドを含め、ロシアを制裁している国はほぼ皆無である。

ロシアには、エネルギー、鉱物、農産物の買い手がたくさんいる。ロシアの「非友好国リスト」に載っていない国々は、インドとのルピー・ルーブル原油メカニズムやパキスタンとの天然ガス・穀物取引ですでに証明されているように、輸出のための優遇措置を受けることができる。

欧米企業のロシアからの撤退の影響は、短中期的には混乱をもたらすが、長期的にはロシアの輸入代替政策の拡大や他国からの商品調達によって対処することになるであろう。すでにロシアでは中国製携帯電話の販売が2倍以上に増え、中国の金融会社である銀聯がVISAやマスターカードに取って代わっているとの報告もある。制裁政策の効果は、1億4千万人の市場を中国やインドの企業に永久に譲り渡すことになるのかもしれない。

戦争が始まる前、アメリカやヨーロッパを含む多くの国々は、エネルギーコストの高騰を主因とするインフレの危機に直面していた。その状況は、現在でははるかに悪化している。ヨーロッパはすでにエネルギー不足に陥っている。ロシアのエネルギーを代替する試みは、時間がかかり困難である。セルビア大統領は、このような状況を次のように表現している。

「自滅するわけにはいかない。石油・ガスの領域でロシアに制裁を加えれば、自滅することになる。戦いに突入する前に自分の足を撃ってしまうようなものだ。」

特に欧州に対する制裁政策の正味の効果は、当面、原材料(エネルギー、基礎鉱物、肥料など)の構造的な価格上昇と不安定なサプライチェーンであると思われる。生活水準は低下し、欧州全域で生じている生活コストへの抗議は、大規模な国内政治危機へと発展する可能性が高い。

中央銀行の資産凍結という前例のない制裁措置は、欧米の金融システムに対する信頼も損ねることになる。各国は米ドルと取引するリスクを最小限に抑えようとするため、脱ドル化の流れは今後急速に加速するだろう。

欧米列強の影響力は世界的に低下している。UAEとサウジアラビアの首脳はバイデン大統領からの呼び出しを拒否しているが、これは数年前でも考えられなかったことである。最近、英国のインドへの代表団がキャンセルされ、インドと中国がロシアに対して西側の路線に「従おう」としないことも、重要な指標となっている。

西側諸国は、制裁がロシアに与える影響を過大評価し、その影響を十分に考えず、その結果に対する備えもなく、自分たちの行動を覆す実行可能な手段もないことは明らかであるように思われる。一方、世界の大多数の国は、ロシアとの貿易を継続し、その関係を維持するだろう。それは、そうすることが自国の利益になるという単純な理由からだ。

キショア・マフブバニは、「アジアの21世紀になる」と予言した。2022年2月24日以前は、西から東へのパワーバランスの移行は、10年単位の時間枠で起こる長期的なプロセスとして進行していた。しかし、ロシアのウクライナ侵攻に対する欧米の対応は、このプロセスを急速に加速させている--オウンゴールである。2022年が決定的な転換点となる可能性は十分にある。残念ながら、西側諸国政府とその迎合的なメディアは、自分たちの行動が何を引き起こしたのか、まだピンときていないようだ。賢明な利己主義者は、オーストラリアを含む西側諸国が、悪い状況を最大限の努力で活用するために、大きな方向転換が必要であることを示唆している。

(おわり)


キャメロン・レッキーは24年間、オーストラリア陸軍の将校として勤務していた。農業エンジニアで、現在は博士課程に在籍している。

元記事はここです。

「NATOが問題なのである。NATOを解決策とするのは間違い。」ウクライナをNATOに加入させようとしたカナダの責任(イブ・エングラー記事の日本語訳)Yves Engler: NATO IS A PROBLEM, NOT THE SOLUTION (Japanese Translation)

 PopularResistance.orgに掲載されたカナダの作家・活動家のイブ・エングラー氏による記事を Rachel Clark 氏による翻訳で紹介します。RachelさんのFBよりエングラー氏の紹介を引用します。

Yves Engler
イヴ・エングラーはモントリオールを拠点とする活動家で、最新作『Stand on Guard For Whom?』, A People's History of the Canadian Military(カナダ軍の民衆史)』など12冊の本を出版。イヴの両親はバンクーバーの労働組合活動家であり、国際連帯、フェミニスト、反人種差別、平和などの進歩的運動に参加する左翼的な環境だった。彼はデモ行進のほか、ホッケーの選手としても育った。B.C.ジュニアリーグでプレーする前は、モントリオールのヒューロン・ホケラガで元NHLのスター、マイク・リベイロと幼い頃からチームメイトだった。

NATO IS A PROBLEM, NOT THE SOLUTION

https://popularresistance.org/nato-is-a-problem-not-the-solution/?fbclid=IwAR2zg2RFQzPUY3I5umyoL6aUlkmbSKCYee9VOjXpjnEwwtYjbqtyv4wmnqU

ロシアの犯罪的な侵略を許すわけではないが、NATOの東方拡大がその可能性を高めた。異なる状況下で戦争が起こらなかったかどうかは分からないが、ロシアによるウクライナへの暴力が1ヶ月続いた後、両国の交渉担当者は、平和協定の一環としてNATOへの加盟を拒否することで合意したと報じられている。

ロシアは長い間、NATOの東方拡大、特にウクライナの事実上の同盟への編入に反対してきた。特にウクライナの事実上の同盟加入には長い間異を唱えており、不法な侵略に至るまでの数ヶ月間、NATOが自国の領土を包囲することに繰り返し異を唱えていた。

先週、EUの外交政策の責任者であるジョセップ・ボレルは、NATOをウクライナに拡大しようとする動きが誤りであったことまで認めた。ボレルはフランスのテレビ局TF1に対し、「私たちは多くの間違いを犯し、ロシアが西側と和解する可能性を失ってしまったことを認める用意がある」と述べた。「例えば、ウクライナとグルジアをNATOの一員にするという約束などだ。南アフリカのシリル・ラマフォサ大統領、中国の習近平国家主席、ベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領は、いずれもNATOの好戦性を現在の戦争を引き起こした中心的な要因として挙げている。

カナダの議会やメディアは長年にわたり、ロシアがNATOの拡大に反対していることを指摘してきた。2004年のナショナル・ポスト紙は、北米が資金援助したウクライナのオレンジ革命について、モスクワが同盟への加盟に反対する理由を説明している。「ロシアにとって、ウクライナがNATOに加盟し、黒海の港や北部の空港を西側の軍艦や戦闘機の避難所にするならば、それは心臓に短剣を突き刺すようなものだ」と国際問題記者のマシュー・フィッシャーは書いている。

NATOへの加盟は、ウクライナの軍事政策、さらには外交政策を同盟に従属させることを意味する。他のほとんどのヨーロッパのNATO加盟国と同様に、ウクライナもまた、米国の攻撃的な兵器システムを受け入れる可能性が高い。

それにもかかわらず、カナダはNATOの拡大を強力に推進し、1999年に16カ国だった同盟を現在では30カ国まで拡大させている。ソ連がドイツの再統一を受け入れるなら、NATOは一歩も東へ拡大しないと約束したにもかかわらず、ジャン・クレティアン首相は1993年の就任と同時に新規加盟を推し進めた。1990年代初頭、ウクライナがNATOの「平和のためのパートナーシップ」と「北大西洋協力会議」に加盟すると、カナダは同国を「軍事訓練・協力プログラム(MTCP)」に追加した。「カナダのウクライナへの関与」のページによると、1993年以来、「ウクライナはMTCPの下で訓練と資金提供を受けた最大の国」である。

1996年までにクレティアン首相は、ウクライナのNATO加盟を公然と要求していた。しかし、ウクライナ人とその政治家たちは、この問題に対してやや両義的であった。2004年、カナダと米国は、NATOへの加盟を強く支持する人物を政権に就かせることに成功した。オレンジ革命で大統領になったヴィクトル・ユシチェンコは、その1カ月後、NATO首脳会議の傍らでジョージ・W・ブッシュ大統領に会った。2005年2月の会談で、ブッシュ大統領はウクライナのNATO加盟を支持することを宣言した。カナダのポール・マーティン首相もNATOとの関係深化を支持すると表明した。その後1年間、NATOはウクライナのNATO加盟に向けて歩み始め、ユシチェンコ大統領はNATOへの完全加盟を推し進めることになる。

しかし、ほどなくして、ウクライナの有権者がNATOの拡大主義者に打撃を与えた。2006年の議会選挙でヴィクトル・ヤヌコヴィッチ率いる地域政党が最多得票を獲得し、2008年初頭にはNATOをめぐる論争で議会が6週間にわたって事実上閉鎖された。この時点の世論調査では、ほとんどのウクライナ人がNATOへの加盟を拒否していた。2011年、米国国家安全保障会議の元ソ連専門家F・スティーブン・ララビーは、ウクライナ人の4分の1がかろうじて同盟への加盟を希望していると報告した。ウクライナ人は一般的に、NATOを保護というより脅威とみなしていた。

それでもスティーブン・ハーパー首相は、ジョージ・W・ブッシュと一緒になってこの問題を押し進めることを止めはしなかった。2008年4月のNATO首脳会議に向けて、ハーパー首相はウクライナのNATO加盟に「強い支持」を表明した。「私はNATOのパートナーに、ウクライナを同盟への完全加盟に向けて前進させ続けることに同意するよう呼びかける」とハーパーは宣言した。しかし、ドイツとフランスはウクライナの加盟に強く反対した。彼らはロシアの反応を懸念し、北米が支配する同盟が欧州中心の安全保障構想をさらに弱体化させることを懸念していた。

2010年の大統領選挙でヤヌコビッチ氏が勝利すると、NATOへの加盟は一時停止された。2010年6月、ウクライナ議会はNATO加盟を断念することを決議した。しかし、アメリカとカナダは2014年2月にヤヌコビッチ追放を支援した。ヴィクトリア・ヌーランド米国務次官補とジェフリー・パイアット駐ウクライナ米大使が違憲のクーデター後の政府を率いるために選んだ人物、アルセニー・ヤツェニウクは、ウクライナをNATO加盟への道に導くよう議会に求めると発表した。2014年12月、議会はウクライナの非同盟の地位を放棄し、NATOへの加盟を求めた。

それ以来カナダは、ヤヌコビッチ退陣の余波で大きく崩壊したウクライナ軍をNATOに加盟させるために、多大な資源を投入してきた。元国防相のハルジット・サジャンは、「ウクライナ軍がNATOに加盟できるよう、7年間にわたり200人のカナダ人指導官が”ユニファイアー作戦”を通じて『ウクライナ軍を近代化』することに取り組んできた」と指摘している。2017年の国防常任委員会の報告書「危機と武力紛争におけるカナダのウクライナ支援」は、「ウクライナは...NATO加盟国と完全な軍事相互運用性を達成するつもりだ」とし、カナダが「積極的に支援に従事している」と指摘した。1月30日付のラ・プレス紙は、「カナダの訓練により、ウクライナ軍はNATOとの共同演習を行うことができる 」と報じた。この記事は、リュック・フレデリック・ジルベール中佐の発言を次のように引用した。「我々は、彼らがNATO軍と相互運用できるような状況に持っていくために働いている。ソ連型に基づいた軍隊をNATO型に変えていく、それが我々の目指すところだ。」

ウクライナの同盟加盟の可能性を支援するため、カナダは国防改革に関するNATO・ウクライナ合同作業部会を支援し、カナダは2019年からキエフのNATOコンタクト・ポイント(連絡窓口)大使館の役割を分担している。

2020年6月、NATOはウクライナに「Enhanced Opportunity Partner (機会拡張パートナー)ステータス」を提示した。英国政府の報告書「ウクライナへの軍事支援2014-2021」によると、「このステータスは、相互運用性を高めるために、NATOの演習、訓練、情報および状況認識の交換への優先的なアクセスをウクライナに提供するものである。2020年9月、ウクライナは英国、米国、カナダ軍による”ジョイント・エンデバー”演習を主催し」、それは、「ウクライナの新しい強化された地位の下で行われた最初の演習であった。」とある。

その後も大規模な演習がいくつも組まれ、2022年には数万人規模の部隊が参加する演習も計画されていた。

ウクライナのNATO化の進展に呼応して、モスクワはより好戦的になった。2021年4月には5万人のロシア軍を国境沿いに集結させてウクライナを脅かし、11月末にはロシアは再び数万人の軍隊を隣国近くに駐留させた。モスクワはウクライナをNATOに編入させないという保証を要求したが、これは正式に拒否された。

ウクライナ人をロシアを弱体化させるための大砲の餌と見なし、カナダの外務大臣はそれを強気に出た。1月中旬、メラニー・ジョリー外相は「カナダの立場に変わりはない...我々はウクライナがNATOに加盟できると信じている」と繰り返した。

ロシアの侵攻は国際法違反だが、カナダはウクライナにNATO加盟を求めるべきではなかった。今、オタワは、カナダはウクライナの同盟への加盟に反対し、(オーストリアやフィンランドと同様に)中立を保つことを支持すると明確に表明すべきだ。

平和を願うカナダ人は、カナダをNATOから脱退させるための努力を倍加させるべきだ。たとえ同盟の東方拡大がロシアの犯罪的侵略を促進する上で小さな役割しか果たしていなかったたとしても、過去20年間にリビア、アフガニスタン、ユーゴスラビアを攻撃した同盟に反対するもう一つの理由として追加できるのである。

先週、ボリビアのエボ・モラレス前大統領はこう述べた。「NATOは世界平和と安全保障にとって危険だ。だから我々は、ラテンアメリカだけでなく、すべての大陸の社会運動と合意を結び、NATOを廃絶させなければならない。NATOに対して何もしなければ、人類にとって永遠の脅威となるだろう。」

(以上)




Monday, March 28, 2022

フランス人のアンヌ=ローレ・ボネル監督によるドキュメンタリー映画『ドンバス』(2016)と、「ウクライナ戦争に関するノート」Documentary Film Donbass (2016) by Anne-Laure Bonnel, and her notes on the war in Ukraine


日本の大学で教鞭を取っている友人のDennis Riches さんから一つのドキュメンタリー映画を教えてもらった。フランス人の アンヌ=ローレ・ボネルAnne-Laure Bonnel監督による『Donbass ドンバス』(2016)である。映画へのリンクは複数あるようだが、私は英語字幕がついているこのYouTube 映像を観た。

(3月29日追記:日本語字幕版がここにあります

衝撃であった。2014年ウクライナで、「マイダン革命」といわれる、米国をバックとしたクーデターが起こされ、ヤヌコビッチ大統領は国外脱出を余儀なくされ、新しく大統領になったペトロ・ポロシェンコ大統領の衝撃のスピーチで始まる。
年金生活者と子どもたちに給付金を与えるが、あの者たちには与えない!
我々の子どもたちは学校にも幼稚園にも行くが、あの者たちの子どもは地下室に留める!
あの者たちは何もできないからだ。
そうすることによってこの戦争に勝つのだ。
これは、2014年10月23日、ポロシェンコ大統領がオデッサで行った演説とのことだ。ポロシェンコ大統領が「あの者たち」と指していたのは、ロシア系の人々が多い、ウクライナ東部のドンバスのことである。同年12月にこの発言を知ったボネル監督は、年明け、2015年の1月に市民たちの声を聞くためにドンバスに行った。

あとは、自らの政府によって攻撃され、殺される人々の苦しみと町の惨状をこの映画で観てほしい。

ボネル監督がいまSNSで攻撃を受けているというので驚いた。2016年に発表したこの映画は、いま起こっている戦争のナラティブに影響を与えるために作ったわけでも何でもない。苦しんでいる人たちのいる所に行って、話を聞いて記録するという当然のことをしただけだ。それなのにこの戦争が始まってからこの映画について論争を起こし、ロシアのプロパガンダだ!とか騒ぐのは、日本の歴史修正主義者たちを思い起こさせる。しかし Dennis さんによると、彼女は最近になってフランスのメディアでも注目されておりいろいろインタビューを受けたりしているそうだ。その中には好意的なものもあるが敵対的なものもあるらしい。ひとつの例として日本語訳がついているものがここにある

あまりの圧力と脅しに監督はストレスを受けているようだ。3月22日、ボネル氏は、「ここでは、2014年以降のウクライナ情勢に関する地政学的な洞察を、私の調査や情報源から説明するので、ぜひ読んでみてください。リンクなど。 過去を理解し、現在を啓発する。」(フランス語ツイートの自動翻訳)と言って、フェースブックへのリンクを記してある。そこにある解説文を、Dennis Riches さんが英語に訳してくれた。それの日本語訳をここに紹介する。英語版は Dennis さんのブログにある。(注:翻訳はアップ後修正することがあります)


アンヌ=ローレ・ボネルによるウクライナ戦争に関するノート

2022年2月23日のロシアの攻勢の前に外交的に何が起こったかについて。強調したいのは、これは私が一度も支持したことのない攻撃であり、私は非難しているということ。しかし、事実を理解することは必須である。以下のノートは、私の調査の結果である。これは報道記事ではない。リンク、出典などすべて記載している。これは新しい情報ではない。

文脈設定:2014年以前。丁寧に読むこと。

複雑な状況

ウクライナの状況は、メディアが描いている以上に複雑である。この国は歴史的にも、言語的にも、宗教的にも多種多様である。

この国は、ヨーロッパ志向が強く、ナショナリズムが顕著な西部と、ロシア語を話すロシアびいきの人々が大半を占める東部に、深く分かれている。そこではウクライナのアイデンティティはほとんど感じられない。

例えば2004年の大統領選挙では、親欧米派のヴィクトル・ユシェンコが西部で80%以上の得票を獲得し、対立候補のヴィクトル・ヤヌコヴィッチが東部で80%以上の得票を獲得するなど、選挙のたびにこの二極分化が表れている。

また、もう一つの要素も想起されなければならない。1991年の独立以来、ウクライナは政治的所属に関係なく、国を略奪するエリートたちによって支配されてきた。ヤヌコビッチ大統領がこのダイナミズムの一部であることは遺憾だが、彼だけがそうであるとは言い難い。最も「民主的」と紹介された2004年革命の指導者たちもまた、汚職の機会を徹底的に利用してきた。特に、オレンジ革命の女神であり、ウクライナの「ジャンヌ・ダルク」であるユリア・ティモシェンコは、その好例である。

ガス産業で財を成した実業家(国営炭化水素会社SEUUの社長を務めた)である彼女は、90年代半ばから政治に関与するようになった。エネルギー担当副首相だった2001年1月、SEUU社長だった1996年にロシアのガスを不正に輸入したとして、「密輸と書類の偽造」でクチマ大統領に罷免された。

ティモシェンコは逮捕され、数週間の服役を経験した。そして2009年、彼女はウクライナとロシアの間で結ばれたガス契約に基づく不正蓄財の罪で、7年の禁固刑を言い渡された。ヤヌコビッチ政権下での彼女の抑留は政治的有用性を持っていたが、メディアの純粋なイメージとは正反対のこの女性に対する証拠は圧倒的であり、それは決して恣意的な抑留ではなかった。

このようにエリートの腐敗が蔓延した結果、国は破綻し、その指導者たちは悲惨な財政状況に対処することになったのである。無能で腐敗したヤヌコビッチではあったが、逆説的にもこれが彼の理解であった。2013年11月にヴィルニュスで調印される関税協定で提案された欧州の援助(6億1000万ユーロ)では不十分と考え、ヤヌコビッチは200億ユーロへの増額を要求したが、ブリュッセルはこれを拒否した。また、彼はロシアの申し出に好意的に応じるために一転した。モスクワは、150億ドルの直接支援と天然ガスの超低価格の継続を申し出ていた。ウクライナの貿易の大半はロシアを相手国としたものであり、その戦略部門は、240以上の協定を結んでいるロシア経済と高度に統合されているため、この提案は金銭的魅力に加え、矛盾のないものであった。

この新しい貿易協定の見通しが、西部地域の親西欧・反ロシアの民族主義政党や活動家の反発を招いたのであった。しかし、2013年11月にヤヌコビッチ大統領の打倒を掲げて起こった「民衆」運動は、その大義の正当性の有無にかかわらず、西側諸国が言うところの民主主義のルールをすべて反故にした。この運動は一連の違反行為を行い、政治家やメディアが慎重にそれらを報道しないようにした。

「革命」は、民主的に選ばれた大統領を攻撃した。ヤヌコビッチは、欧州安全保障協力機構(OSCE)によって透明で公正とみなされた選挙プロセスの後、2010年の大統領選挙で勝利した。したがって、たとえ彼が腐敗していたとしても、選挙結果は完全に正当であり、合法的であった。

「革命家」たちは、2015年に大統領選挙が行われる予定だったにもかかわらず運動を開始した。つまり、反対派が自分たちの主張するように民主的な振る舞いをしていたのなら、ヤヌコビッチを排除するのに1年待つのが妥当だったのである。しかし、彼らは選挙の1年前に違法に政権を転覆させることを好んだ。これは反民主的な反応であった。

この「革命」は、西側メディアが伝えているような平和的なパレードのイメージとはかけ離れた、デモ隊の側からの極端な暴力行為をその特徴としていた。デモには迅速に武器が導入され、多くの警官が射殺された。

この「革命」運動の最も活発な要素は、超国家主義の超急進派グループ(プラヴィイ・ゼクトール、UNA-UNSO、スヴォボダ、トリズブ、「ホワイトハンマー」などの民兵たち)だったからである。

彼らは特によく訓練され組織化されていたため、訓練を受けた治安部隊の隊員を捕虜にすることができた。したがって、一部の者たちの暴力が他の者たちの暴力に勝っていたのである。しかし、これらのグループは、ヒューマニズム、民主主義、寛容といったヨーロッパの価値観とは何の共通点もなく、彼らの指導者の中にはキエフの新政府に参加した者たちもいる。しかし、西側諸国は彼らを支援し、今も支援し続けている。

この「革命」は、ウクライナの一部、つまり親欧米派の西半分の利益のみを擁護した。ヤヌコビッチを選んだ人々や、ロシアとの貿易協定に賛成した人々の票をないがしろにしたのだ。さらに悪いことに、東部地域の人々の最も基本的な権利を侵害した。実際、新臨時政府は就任するや否や、人口の30%近くがロシア語を話すウクライナの第二公用語としてロシア語の使用を禁止した(クリミアではロシア語話者は70%にも上る)。これはまさに挑発であり、少数民族尊重の原則を否定するものであった。

この「革命」は、非民主的で、特に暴力的で、過激派が多く含まれ、国内の少数派を代表しているという驚くべき特徴をもっていたのである。これこそ、西側が支持する大義名分の正体だ。マイダン革命」は、官僚と西側メディアが与えた以外の正統性を持たない、路上からの自称政府を誕生させたのである。

現在の危機は、EUが東方への影響力を拡大し、ウクライナに対するロシアの影響力を低下させたいと考えた結果の一部である。EUは、ロシアが提示するような資金援助をキエフに対して提供できなかったが、間接的に炎の原因を作ったのである。

しかも、EUはモスクワに大きな恨みを持つポーランドやバルト諸国の影響を受けて反ロシア的な態度をとってきた。これらの国は、西欧諸国の伝統にも利益にも反する欧州の対ロ姿勢の硬化に大きく寄与している。これらの東欧からの新規参入者は、2003年のイラク侵攻においてアメリカに盲従し、ほとんどの場合、ヨーロッパの軍備よりもアメリカの軍備を購入することを好んだことを、ここで思い出してみよう。彼らの目には、ブリュッセルの支援よりもワシントンの支援の方がより重要なのだ。

この危機に際して、西側諸国の態度は、冷戦時代の遺物である反ソビエト主義の一環として、ロシアに対する非常に強い疑心暗鬼によって特徴づけられていた。

NATOにとっては、2022年3月2日、NATOのアンデルス・ラスムセン事務総長が語ったように、「ロシアがウクライナでやっていることは、国連憲章の原則に反している。これは欧州の平和と安全を脅かすものだ。ロシアは軍事活動と脅迫をやめなければならない。」

西側の態度は、その矛盾の程度が全く見えていないように見える。(1) 「プーチンのクーデター」を非難しておいて、民主的に選ばれた大統領に対するキエフの暴力的な性格を非難しないことがどうしたら可能なのか。(2)国民の一部(西ウクライナ)に「正当な権利」を認め、それ以外の地域には同じ権利を否定することができるのか?

西側は、自分たちに都合の良いときには国際法を尊重し、自分たちの利益に反するときには国際法を逸脱するようで、"善 "と "悪 "の定義を常に変動させることによって自分たちの行為を正当化しようとしていることは明らかである。

ロシアの反応に憤慨している人たちに問うてみたいが、以下のときに同じぐらい激しく抗議したのだろうか。(1) 米国がイラクに不法に侵攻し、いわゆる大量破壊兵器の存在について虚偽の証拠を提出し、国連の反対を無視して同国を破滅的な状態のままにしたとき。(2) フランスを中心とする西側諸国がリビアで国連決議1973の枠を完全に超え、「民間人の保護」をカダフィ打倒のための作戦に転換し、その結果、知られているような嘆かわしい結果を招いたとき。(3) エドワード・スノーデンが米国NSAの国際的なスパイ行為と米国住民の盗聴の範囲を明らかにしたとき。

ウクライナは、2014年4月のジョン・ブレナンCIA長官のウクライナ訪問に示されるように、米国政府の援助の恩恵を受けており、そのことを隠すこともなかったのである。(参照:https://www.huffpost.com/entry/john-brennan-ukraine_n_5147869)

しかし、ウクライナの内政における米国の影響力は、2014年12月2日に米国人のナタリー・ジャレスコがウクライナ財務大臣に任命されたことで、まったく新しい次元に突入したのである。ウクライナはそれにもかかわらず、彼女の就任当日にウクライナ国籍を付与する配慮までした。このシカゴ生まれの米国人官僚の経歴は、ネットで見ることができる。1992年から1995年まで在ウクライナ米国大使館経済部第一部長を務めるなど、国務省でさまざまな役職を歴任している。また、ウクライナ財務省のトップに任命される前は、ウクライナで6億ドル以上の資産を保有する投資ファンド「ホライズン・キャピタル」のCEOを務めていた。

最後に、フランスでジャーナリストのルノー・ジラールが2014年のウクライナ革命を取り上げ、ローラン・ファビウス外相のやり方を嘆いたことを忘れてはならない。「誰も理解していない」とジラールは書いている。「2014年2月21日、ローラン・ファビウス外相が中国に行くためにキエフ(当時、警察と、親ロシア政権に対する親欧州派の抗議者の間の暴動に悩まされていたウクライナの首都)を離れたことはひどい間違いであった。ドイツとポーランドのカウンターパートが交渉し、親ロシアのヴィクトル・ヤヌコヴィッチ大統領と3人の野党指導者の間の歴史的な合意を取り付けようとしていたため、この旅の重要性を誰も理解していなかったのである。ひどい外交的失敗があった。」(https://www.europe1.fr/international/Ukraine-affrontements-meurtriers-a-Kiev-645748)

したがって、ウクライナの危機、そして内戦は、歴史にしばしば見られるように、まったく予測不可能な不幸な出来事の連続の結果なのである。一方、この危機の最初と最中の欧州外交は、あまりうまくいかなかった。この合意をウクライナに提案したとき、EUの主要な政治家が「ロシアが提示したのと同じ条件で提供する」と粛々と演説することが必要だったでしょう。我々はこの問題をブリュッセルのEU本部に任せることを好んだが、それは間違いだった。

失敗した外交使節団について

2014年2月19日(水)、パリでフランソワ・オランド大統領とアンゲラ・メルケル首相の会談が企画された。キエフでは人々が互いに銃を撃ち合い始めていた。流血を止めるために、フランスの大統領とドイツの首相は、それぞれの外交のトップをそこに派遣することにした。翌日、ファビウス外相とシュタインマイヤー外相はワルシャワに立ち寄り、シコルスキ外相を伴ってウクライナへ向かった。その場で、ヤヌコビッチと野党指導者との話し合いが行われていたことは、誰もが知るところである。この事実があれば、殺人は防げたはずだ。これはすでにかなりの成功だった!交渉は一晩中続いた。とても大変な交渉だった。2014年2月21日(金)、欧州トロイカ(訳者注:3人の外相)は見事にウクライナ国内の政治的合意に達した。

その日、午後5時頃、アルセニー・ヤツェニュク、オレハ・タイフニボク、ヴィタリ・クリチコの3人が親ロシア派のヤヌコヴィッチ大統領と握手している姿が目撃された。残念ながら、理解しがたいことに、ヨーロッパの閣僚たちは、この生まれたばかりの奇跡の子(訳者注:見守らないとすぐ違反されかねない繊細な合意という意味)を守ることができなかった。彼らはその場を立ち去ったのだ。

2月21日の合意は驚異的な成功だっただけに、「子守が必要な子ども」であることは分かっていたはずである。この合意は、特に憲法改正、早期選挙、国民統合政府を定めたものだった。

その夜、欧州の閣僚が帰国すると、マイダンの群衆からブーイングを受けた3人の野党指導者は、署名を放棄した。ヤヌコビッチ大統領は怖気づき、キエフを離れ、ハリコフに向かった。

ヤヌコビッチが逃げたというが、この言葉は侮蔑的である。ウクライナの憲法は、大統領が行きたいところへ旅行することを禁じてはいなかった。バリ島で1ヶ月の休暇を過ごすことだってできたはずだ。国外に出ることは違憲ではない。キエフを発った翌日、彼は退陣し、ロシア人たちはクーデターだと言ったが、ヤヌコビッチの出国を禁止するものは何もないので、彼らがそう言う理由はまだあった。翌日曜日、ラーダ(ウクライナ議会)は、ウクライナ東部地域の第二公用語としてロシア語を認めることを放棄する、嘆かわしい採決を進めた。フィガロのルノー・ジラール記者によれば、これは外交上の大失敗であり、世界中のアカデミーで教えられることになるだろうという。

ジャック・シラク政権下の元外相ユベール・ヴェドリーヌは、現在の外交状況において、欧米とロシアの間で「過ちは共有されている」と考えている。「私たちは、一連の嘆かわしい歩みによって、現在の状況にたどり着いたのです」と元大臣は説明する。「私が『過ちは共有される』と言ったのは、西側諸国のロシアに対する態度のことで、あたかも我々がまだソ連を相手にしているかのような態度である。アメリカ側は、一種の侮蔑を示すような行為を繰り返している。欧州連合側には、ウクライナをロシアから切り離そうという意志があり、また、ロシア側を非難すべきこともたくさんあった。」

そして今、2022年を迎える。

情報源と参考文献(フランス語)

Editorial by Éric Denécé, “Ukraine: the world is upside down!” CF2R, no. 33, March 2014, https://cf2r.org/editorial/ukraine-le-monde-a-lenvers/

Thomas Guénolé and Katerina Ryzhakova-Proshin, “Ukraine: stop Manichaeism!”, Slate.fr, December 24, 2013.  www.slate.fr/tribune/81479/ukraine-halte-manicheisme

Eric Denécé, “Intervention en Syrie : la recherche d’un prétexte à tout prix,” CF2R, Editorial no. 32, September 2013, https://cf2r.org/editorial/intervention-en-syrie-la-recherche-dun-pretexte-a-tout-prix/

“Eric Denécé, “The dangerous drift of American ‘democracy,’” CF2R Editorial no. 31, August 2013, https://cf2r.org/editorial/la-dangereuse-derive-de-la-democratie-americaine-2/

On February 8, 1976, a referendum was held in Mayotte for the island’s annexation to France. The UN considers this referendum of 1976 as null and void, and condemns the violation of the territorial integrity of the Comoros and asks France to leave Mayotte.  http://www.comores-actualites.com/actualites-comores/la-crimee-est-russe-et-mayotte-est-francaise-ou-est-le-probleme/?

Hubert Védrine, “Five proposals to get out of the Ukrainian crisis,” Rue 89, March 8, 2014.  http://rue89.nouvelobs.com/2014/03/08/hubert-vedrine-cinq-propositions-sortir-crise-ukrainienne-250511

(注:ボネル氏の文章に紹介された参考資料を Dennis Riches 氏が整理した)

以上


参考:

オリバー・ストーン『Ukraine On Fireウクライナ・オン・ファイア』(日本語字幕つき)

オリバー・ストーン『Revealing Ukraine』(字幕オンで観てください)

(これらの映像は各所で削除されているのでリンク切れの場合はキーワード検索で新たに探してください)


Wednesday, March 16, 2022

国際民主法律家協会の声明 Statements by IADL (International Association of Democratic Lawyers)

3月17日、『琉球新報』に「乗松聡子の眼 47回 ロシア『悪魔視』に疑問 戦争の教訓を生かせ」を載せてもらいました。その記事に引用した、国際民主法律家協会(IADL、(1946年創立、50ヶ国以上の構成員が参加)の3月8日声明の英語版はIADLのHPにあり、その日本語訳は日本国際法律家協会(JALISA)のHPにありますが、ここにも両ヶ国語版を転載します。(この声明は、2月26日に出た簡潔な声明の続編。)

3月8日声明の要求項目はこれらです。

  • 軍事活動の停止につながる即時停戦
  • 西側による挑発の停止
  • 世界的な平和交渉では、紛争の根本原因に対処し、中央ヨーロッパに平和地帯を作る必要がある
  • 一方的な強制措置(制裁)を課すことは、外交ではない

2つの声明において、IADLは、「軍事行動の即時停止」と「国際法および国連憲章に則った紛争終結のための即時交渉」を要求しました。「国連憲章第51条の下でロシアがウクライナに対して行った軍事行動を法的に正当化することはできない」と、ロシア軍の行動は「違法な侵略である」と非難した上で、NATOについては「国連憲章に違反する違法な組織」と糾弾しています。とくに「カナダとメキシコがロシア連邦と同盟を結び、米国国境に大規模な軍事力を備え始めたら、米国は自国の安全保障が脅かされると考えるに違いない」との視点の転換は、説得力を持つと思います。ロシアの侵攻を非難し停戦を求めると同時に、「西側の挑発」という「根本原因」と、経済制裁は「外交ではない」(制裁は、准戦争行為です)との明確なスタンスを打ち出したIADLに敬意を表します。

IADLのメンバーである笹本潤弁護士はこう語っていました。「IADLにはウクライナの法律家協会も加盟しており、マイダン革命以来のウクライナ政府による共産党への弾圧・解党に抗議し、裁判傍聴などの支援活動を行ってきた。NATOは国連憲章に違反していると一貫して主張し、NATOの東方拡大や米国による内政干渉もロシア侵攻を招いた大きな要因であると考えるメンバーが、マジョリティを占める」と。

この戦争の終結のためにも、多方面から情報を取り入れ、歴史と文脈を考慮した発信をしていきたいと思います。

以下、IADL2022年3月8日声明日本語版と英語版です。



国際民主法律家協会(IADL)は、ウクライナで進行中の戦争の激化に関する声明を発表した。 国際社会に対し、平和への道を見出すことを要求する

国際民主法律家協会(IADL)は、ウクライナで進行中の戦争の激化に関する声明を発表した。 国際社会に対し、平和への道を見出すことを要求する

2022年3月8日

ロシアのウクライナ侵攻が始まった当初、IADLは声明を発表し、西側からロシアに対して多くの挑発行為があったことを認めたが、そうした挑発行為にもかかわらず、国連憲章第51条の下でロシアがウクライナに対して行った軍事行動を法的に正当化することはできない、と述べた。IADLは、自衛を主張する根拠がない以上、ロシア軍による行動はウクライナの領土保全に対する違法な侵略であると述べた。

IADLは、軍事行動の即時停止を要求した。IADLは、国際法および国連憲章に則った紛争終結のための即時交渉を要求した。そうしなければ、大量の人命の損失と国の破壊、そして国連憲章が防ぐために書かれたより広範な戦争が起こる危険がある。

IADLは、国連安全保障理事会が軍事行動の停止を命じる決議案を通過させることができなかったことに注目している。安保理が平和のための統一決議(GA決議377A(V))に基づいて総会に送った決議は、主にロシアの侵略を非難することを目的とし、ロシアが行動を停止し、軍隊を撤退することを要求している。

IADLは、核施設への攻撃を含む戦争が引き続く激化していることに鑑み、また、すべての当事者が軍事行動を停止し、国際法および国連憲章に沿った交渉に入るという我々の要求をフォローアップするために、この後続声明を発表するものである。

IADLは、軍事行動の継続的なエスカレーション、特に国際人道法の下で要求される軍民の区別の原則を遵守しないミサイル攻撃や爆撃を非難し、ロシア連邦の指導者を戦争犯罪の訴追の対象にさらすものである。

IADLは、前の声明に引き続き、以下を要求する。

軍事活動の停止につながる即時停戦

現在の状況は極めて危険である。このまま戦況がエスカレートすれば、全NATO諸国との広範な戦争や、全人類の破滅につながるロシアとNATOによる地球規模の熱核戦争が引き起こされる可能性がある。ウクライナから逃れた150万人の避難民の間では、すでに人道的危機が引き起こされている。

ロシアは、即時かつ永続的な停戦に同意し、ウクライナからの軍の撤退を開始し、その間に逃亡者のための人道的回廊を作り、人道支援を提供すべきである。  IADLは、ウクライナから逃れてきたアフリカや南アジア出身の人たちに対する人種差別に反対する。

しかし同時に、NATOは、NATOの直接介入につながりかねない行動を含め、その挑発を直ちに中止しなければならない。ロシアとの国境にあるNATO諸国でのさらなる軍事力増強は挑発的である。この増強には、ポーランドに建設中の新しい米軍基地が含まれ、ロシア国境からわずか100マイルのところに米国の核武装ミサイルを配備する可能性がある。 この基地は開設されるべきではない。

安全保障理事会は、停戦を求める決議を採択すべきである。そして、全会一致が達成できない場合は、「平和のための結集」の下に、再度緊急総会を招集すべきである。その上で、ロシアの国連憲章違反を認め、段階的な停戦、激化の停止、軍隊の撤収、紛争終結のための交渉の実施を求める新たな総会決議を採択すべきである。

「平和のための結集」は、平和の破壊や侵略行為があった場合に、総会が集団的措置の勧告を行うことを可能にする。これらの措置には、「国際的な平和と安全を維持または回復するために」必要な場合の武力行使が含まれ、これは国連平和維持軍により実施される可能性がある。

総会はまた、即時停戦、ウクライナからのロシア軍の撤退、および、国連憲章と国際法に基づき、欧州における安定的で法的拘束力のある集団安全保障の仕組みにつながる1つまたは複数の条約の制定に向けた交渉の即時開始を勧告することも可能である。できれば、この手続きは欧州の非同盟国または中立国によって開始されるべきものである。

西側による挑発の停止

米国とNATOは、10年以上にわたってロシア連邦に対して極めて挑発的な振る舞いを行ってきた。 2014年、米国政府は、著しい超国家主義者やネオナチ勢力を含むマイダン運動を支援し、ウクライナの内政に大きく関与した。

ソ連と東欧の社会主義諸国が崩壊したとき、米国とNATOは、旧ソ連とワルシャワ条約機構諸国をNATOに統合せず、非同盟・中立の地位に置くことを明確に約束した。 その公約の拘束力を否定しようとする無責任な声がある。しかし、国際法、特に国連憲章は、当時約束されたことを正確に要求しているのである。

NATOは、国連憲章に違反する違法な組織である。国連憲章は、紛争の平和的解決において国連を支援することができる地域連合を認めているにすぎない。NATOはそのような組織ではない。 NATOは軍事同盟であり、その軍隊はセルビア、イラク、アフガニスタン、リビア、シリアなど多くの事例で攻撃的な目的のために使用されてきた。他国に対する武力行使は、武力攻撃に対する自衛の場合、または安全保障理事会の承認がある場合を除き、禁止されている。

NATOとNATO加盟国、特に米国は、同盟が単なる防衛的なものではないことを、攻撃的な軍事作戦の実施によって証明してきた。もしNATOが本当にワルシャワ条約から西ヨーロッパを守るためだけに設立された防衛同盟であれば、ソ連が崩壊しワルシャワ条約が解体されるのと同時に解体されるはずであった。

NATOを東に拡大しないという約束から10年も経たない1999年には、ハンガリー、ポーランド、チェコ共和国がNATOに加盟していた。2004年にはルーマニア、ブルガリア、スロバキアが加盟し、さらにエストニア、ラトビア、リトアニアも加盟した。2008年には、ウクライナとグルジアも加盟することが約束された。ロシア包囲網が完成するのである。

カナダとメキシコがロシア連邦と同盟を結び、米国国境に大規模な軍事力を備え始めたら、米国は自国の安全保障が脅かされると考えるに違いない。実際、1962年にロシアがキューバに核ミサイルを備えた軍事基地を置いたとき、米国の対応は世界を戦争の瀬戸際に追いやった。 しかし、ロシア国境から100マイルのところにある核基地は、挑発行為とはみなされないのだろうか。 ロシアの国境からそのような兵器を撤去するようにというロシアの要求は、ロシアが停戦案で要求したように、不合理なことではない。

IADLがNATO軍事同盟を国連憲章の下で違法な編成と見なしているように、IADLは、米国やその他の外国の軍事基地が世界中に拡大することを、憲章の国際紛争における武力行使や武力行使の脅威の禁止に違反する挑発的脅威として一貫して反対してきた。 さらに2014年、米国はウクライナの内政に深く関与し、著しい超国家主義者やネオナチ勢力を含むマイダン運動を支援した。

世界的な平和交渉では、紛争の根本原因に対処し、中央ヨーロッパに平和地帯を作る必要がある

この紛争の根本原因に対処し、NATOによるすべての挑発的な行動を阻止するだけでなく、逆転させない限り、中欧に永続的な平和はありえない。国連憲章の文言と精神は、ソ連とヨーロッパの旧社会主義諸国が崩壊した後、この地域全体を非同盟・中立・非武装の平和地帯にすることを求めている。

そのための交渉は、1972年にリチャード・ニクソンとレオニード・ブレジネフがヘルシンキで合意した欧州安全保障協力機構(OSCE)への支援、あるいはその枠組みの中で行われることになった。

OSCEはミンスク協定の仲介を行い、完全には履行されなかったが、敵対関係を終わらせるための枠組みを提供した。

一方的な強制措置(制裁)を課すことは、外交ではない

国連憲章は、加盟国が憲章を遵守し、攻撃的な行動をやめるよう圧力をかける方法として、安全保障理事会に加盟国に対する経済的強制措置を課す権限を与えている。 これらの措置は、安全保障理事会だけが合法的に課すことができる。憲章は、加盟国がこのような強制的な措置を一方的に課すことを認めていない。

IADLは、多くの政府指導者が、このような制裁措置の発動は直接的な軍事行動ではないため、外交と同義であると考えていることに懸念を抱いている。 しかし、外交は紛争を平和的に解決することを当事者に求めるものである。 憲章第33条は、国際平和と安全の維持を危うくするおそれのある紛争の当事者は、まず第一に、交渉、審査、調停、仲裁、司法解決、地域機関や取り決めへの依存、その他自ら選択する平和的手段によって解決を図らなければならないと定めている。交渉は試みられたものの、33条の紛争解決手段は十分に活用されていない。

したがって、このような一方的な強制措置は違法であるだけでなく、状況を悪化させ、最も重要なことは、最終的には現場の民間人の生活と福祉に影響を与えることになると、私たちは主張する。#          (訳:笹本 潤)

IADL statement on the escalating war in Ukraine: Finding the road to peace

8 March 2022

INTERNATIONAL ASSOCIATION OF DEMOCRATIC LAWYERS (IADL) STATEMENT REGARDING THE ONGOING ESCALATION OF THE WAR IN UKRAINE.  IADL DEMANDS THE INTERNATIONAL COMMUNITY FIND THE ROAD TO PEACE

At the outset of the Russian invasion of Ukraine, IADL issued a statement which recognized that there have been many provocations of Russia from the West, but despite such provocations there was no legal justification under Article 51 of the UN Charter for the military actions Russia has taken against Ukraine. IADL stated that since there is no basis to claim self-defense, the actions by the Russian military represent an illegal aggression against the territorial integrity of Ukraine.

IADL demanded an immediate cessation of military actions. IADL demanded immediate negotiations to end the conflict consistent with international law and the UN Charter. Failure to do so risks massive loss of life and destruction of the country, as well a wider war which the UN Charter was written to prevent.

IADL notes that the UN Security Council failed to pass a resolution which ordered the cessation of military actions. The resolution that the Security Council sent to the General Assembly under the Uniting for Peace resolution [GA resolution 377A(V)] was aimed primarily at condemning Russia for its aggression and demanded Russia end its actions and withdraw its troops.

IADL issues this subsequent statement in light of the continued escalations of the war including the attack on a nuclear facility and to follow up on our demands that all parties cease military actions and enter into negotiations consistent with international law and the UN Charter.

IADL condemns the continued escalation in military actions, especially missile strikes and bombings which fail to adhere to the principle of distinction between military and civilian objects as required under International Humanitarian Law, exposing leaders of the Russian Federation to prosecution for war crimes.

In furtherance of IADL’s prior statement, IADL demands:

AN IMMEDIATE CEASE FIRE LEADING TO A CESSATION OF MILITARY ACTIVITIES

The current situation is extremely dangerous. The continued escalations could trigger a broader war with all NATO countries and/or a global thermonuclear war between Russia and NATO leading to the destruction of all humanity. It has already triggered a humanitarian crisis among the 1.5 million displaced persons who have fled Ukraine.

Russia should agree to an immediate and durable cease fire and begin to withdraw its troops from Ukraine, and in the interim create humanitarian corridors for those fleeing to leave, and provide humanitarian aid.   IADL opposes the racial discrimination against those fleeing Ukraine who are from Africa or South Asia.

But at the same time, NATO must immediately cease its provocations, including any action that might lead to direct NATO intervention. Further military build-up in NATO states at the Russian border is provocative. This build-up includes the new U.S. military base under construction in Poland that could deploy US nuclear armed missiles only 100 miles from the Russian border.  This base should not be opened.

The Security Council should take up a resolution which calls for a cease fire, and if unanimity cannot be achieved, another emergency session of the General Assembly should be convened under Uniting for Peace. Accordingly, a new General Assembly resolution should be passed which recognizes Russia’s violation of the Charter and calls for a durable step-by-step cease fire, de-escalation, removal of troops, and negotiations to end the conflict.

Uniting for Peace allows the General Assembly to make recommendations for collective measures in the case of a breach of the peace or act of aggression. Those measures could include the use of armed force when necessary “to maintain or restore international peace and security, which could be undertaken by a UN peacekeeping force.

The General Assembly can also recommend an immediate ceasefire, a withdrawal of Russian troops from Ukraine, and the immediate opening of negotiations on the establishment of one or more treaties that can lead to a stable, legally binding mechanism of collective security in Europe, based on the UN Charter and international law. Preferably, this procedure should be initiated by non-aligned or neutral states of Europe.

AN END TO PROVOCATIONS BY THE WEST

The United States and NATO have behaved in extremely provocative ways towards the Russian Federation for more than a decade.  In 2014, the US government was very involved in the internal affairs of Ukraine by supporting the Maidan movement which included significant ultra nationalist and neo-Nazi forces.

When the Soviet Union and the socialist countries in Eastern Europe collapsed, the US and NATO made a clear commitment that the former Soviet and Warsaw Pact countries would not be integrated into NATO and would have a non-aligned and neutral status.  Irresponsible voices try to deny the binding nature of that commitment. But international law and especially the UN Charter required precisely what was promised at that time.

NATO is an illegal organisation that violates the UN Charter. The Charter only recognizes regional associations that may assist the UN in peaceful resolutions of disputes. NATO is not such an organization.  NATO is a military alliance, whose troops have been used offensively in many instances, including Serbia, Iraq, Afghanistan, Libya and Syria. The use of force against another state is prohibited except in situations of self defence against an armed attack or with the approval of the Security Council.

NATO and NATO members, in particular the United States, have proven by conducting aggressive military operations that the alliance is not merely a defensive one. If NATO were indeed a defensive alliance, founded only to protect Western Europe against the Warsaw Pact, it should have been dismantled at the same time that the Soviet Union collapsed and the Warsaw Pact was dismantled.

By 1999, less than a decade after the promises not to expand NATO eastwards, Hungary, Poland and the Czech Republic had all joined NATO. Romania, Bulgaria and Slovakia joined in 2004, followed by Estonia, Latvia and Lithuania. By 2008, NATO pledged to offer membership to Ukraine and Georgia. The encirclement of Russia would be complete.

The United States would certainly consider its security threatened if Canada and Mexico joined an alliance with the Russian Federation and started to build up massive military capacity at the US borders. Indeed, when Russia placed a military base with nuclear missiles in Cuba in 1962, the US response led the world to the brink of war.  Yet a nuclear base 100 miles from the Russian border is not considered a provocation?  Russian requests to remove such weapons from Russia’s borders are not unreasonable as Russia requested in its proposed treaties.

Just as IADL views the NATO military alliance as an illegal formation under the UN Charter, IADL has consistently opposed the expansion of US and other foreign military bases around the world as provocative threats to use force, in violation of the Charter’s prohibition on the use of force or threats to use force in its international disputes.  Further, in 2014 the US was very involved in the internal affairs of Ukraine supporting the Maidan movement which included significant ultra nationalist and neo-Nazi forces.

GLOBAL PEACE NEGOTIATIONS MUST ADDRESS THE ROOT CAUSES OF THE CONFLICT AND CREATE A ZONE OF PEACE IN CENTRAL EUROPE

There cannot be lasting peace in Central Europe unless the root causes of this conflict are addressed and all provocative steps taken by NATO are not only stopped but also reversed. The letter and the spirit of the UN Charter required that after the collapse of the Soviet Union and the former socialist countries in Europe, the entire area be transformed into a non-aligned, neutral and largely demilitarised zone of peace.

Negotiations toward this end could accordingly be conducted under the auspices of or in the framework of the Organization for Security and Cooperation in Europe (OSCE), which grew out of the agreements between Richard Nixon and Leonid Brezhnev in 1972 in Helsinki.

The OSCE helped broker the Minsk Agreements, which although not fully implemented, provided a framework for ending hostilities.

IMPOSING UNILATERAL COERCIVE MEASURES (SANCTIONS) IS NOT DIPLOMACY

The UN Charter empowers the Security Council to impose economic coercive measures against a Member State as a way to pressure a Member State to comply with the Charter and end offensive actions.  These measures can only legally be imposed by the Security Council. The Charter does not allow Member States to unilaterally impose such coercive measures.

IADL is concerned that many government leaders consider the imposition of such sanctions to be synonymous with diplomacy as they are not direct military actions.  But diplomacy requires parties to seek peaceful settlements of disputes.  Article 33 of the Charter provides that parties to any dispute which is likely to endanger the maintenance of international peace and security shall, first of all, seek a solution by negotiation, enquiry, mediation, conciliation, arbitration, judicial settlement, resort to regional agencies or arrangements, or other peaceful means of their own choice. Despite attempted negotiations, Article 33 dispute resolution measures have not been fully used.

We thus maintain that such unilateral coercive measures are not only illegal but exacerbate the situation and, most importantly, will impact on the lives and welfare of civilians on the ground in the end. #

Sunday, March 06, 2022

オリバー・ストーン&ピーター・カズニック:ロシアから見たウクライナ問題(2014年6月)Oliver Stone and Peter Kuznick: The Ukraine issue, from the Russian perspective (June 2014)

 オリバー・ストーン監督と、ピーター・カズニック教授と、2013年に広島・長崎・東京・沖縄をまわりそのときの講演録と同行記、交流した人たちのコラムなどをまじえて2014年8月に出版したのが『オリバー・ストーンが語る日米史の真実 よし、戦争について話をしよう。戦争の本質について話をしようじゃないか!』(金曜日)であった。この本の巻末に収録した二人の記事「ロシアから見たウクライナ問題」が、いまウクライナで起きていることを理解するのに役立つと思うのでここに紹介する。この記事の内容が全く古くなっていないことが問題の根深さと困難さを象徴している。これを読むだけでも、日本を含む西側諸国での報道やナラティブがいかに American exceptionalism アメリカ例外主義に偏ったものかがわかるだろう。ストーン&カズニックの二人は、その大作 The Untold History of the United States (2012) 「語られないアメリカ史」に大幅に加筆して 2019 年に updated version を出した。近日中にその本からもより新しい関連内容を紹介したいと思う。

以下、『オリバー・ストーンが語る日米史の真実 よし、戦争について話をしよう。戦争の本質について話をしようじゃないか!』(オリバー・ストーン、ピーター・カズニック、乗松聡子共著、2014年 金曜日刊 184-9頁)より

ロシアから見たウクライナ問題(2014年6月)

米国とロシア両国の指導者が生きている世界は、平行線のように互いに交わることがない。彼らは現実を異なったように見ているが、それは歴史の認識が根本的に異なっていることに根ざしている。

ドイツのアンゲラ・メルケル首相は、ロシアのウラジミール・プーチン大統領を妄想癖の人物だと思っている。そのプーチン大統領は、ジョン・ケリー米国務長官を同じように妄想癖だと見なしているに違いない。ケリー長官が「民主主義者」と思う人々を、プーチン大統領は「ファシスト」だと考える。ケリー長官がむき出しの侵略行為だと思っても、プーチン大統領は死活的な安全保障上の防衛と見なす。

現在もたらされている危機は、ウクライナの将来だけに留まるものではない。米国の好戦的指導者らによる「オバマ大統領はプーチン大統領に立ち向かうべきだ」という要求や、共和党の「オバマ大統領がシリアあるいはイランを爆撃するのに失敗したために現在の事態がもたらされている」といった愚かしい主張が、冷戦によって人類の生存に最終的な幕を下ろすような瀬戸際作戦に米国を押しやっている。そして米ロ両国は、数千発もの核弾頭が搭載された数百発のミサイルを即応警戒態勢で相手国に向けており、核戦争の脅威は現実味を帯びている。

私たちが現在必要としているのは、新冷戦だとか「ミュンヘンの宥和」(注1)、ロシアの新帝国主義などといった語をやたらと口にしないような政治家である。そして極右ネオコンの指導者ロバート・ケイガンの妻で、欧州・ユーラシア担当国務次官補でもあるビクトリア・ヌーランドのように、電話で「EUなどくたばれ!」(注2)と叫び、自制心のなさを見せつけながら欧州の人々に応対することはない外交官である。

私たちが必要としているのは、フランクリン・ルーズベルトの副大統領だったヘンリー・ウォーレスのような人物であり、彼は米国の敵側からは世界がどのように見えるかを理解していた。ウォーレスは冷戦と核軍拡競争を防ごうと試みたことから、オバマを再び対決路線に向かわせようとしている現在のネオコンのタカ派や冷戦も厭わないリベラル派と同じような連中から、何十年も憎悪された。

米国では、かつてイラクへの侵略を一団となって喝采した大手メディアが、今度はウクライナに関する政府の作り話を吹聴し、現在のウクライナの状況を理解する上で必要な歴史的背景については、何も触れようとしない。

フルシチョフの勇気

米国だけが唯一例外的に何をやっても許されると思っている連中にとっての歴史は、ロシアのナショナリストたちにとってのそれとは全く異なっている。彼らは知っている。米国とその同盟国がロシア革命を覆そうと数万人の部隊を送り込み、ヒトラーと対決する集団的な自衛権措置を求めたソビエトの呼びかけを拒み、敵ファシストと戦うスペインの共和国防衛に向けたソビエトの努力にも加わろうとしなかったことを。さらには1942年には第二戦線を形成する約束を破り、米英が対峙したドイツ師団は10に留まったのに、ソビエトは引き続きドイツ200個師団と立ち向かわなければならなくなったことを。ソ連の第二次大戦死者数は2700万人であった。米国は40万強である。

米国とソビエトはどちらが冷戦を開始したかでも意見は全く分かれている。ソビエトは直近25年の間に二度侵攻を受けた忌み嫌うべきドイツと自国の間に緩衝地帯を置くことが正当な安全保障的利益をもたらすと見ていた。ソビエトは、すでに負けが明らかだった日本よりも自分たちが米国の原爆の本当の標的とされていたことを意識していた。日本は必死で終戦を模索しており、原爆よりも自分たちの参戦が日本の降伏に、より大きい役割を果たしたことを知っていたからである。

日本への原爆投下は、ソビエトの指導者たちに、もし戦後のヘゲモニー確立に向けた米国の計画に干渉したら、どんな目に遭わされるかを警告するという意図が込められていた。その後もソビエトの指導者たちは、米国が巨大な核兵器の兵器庫を構築し、他国を核兵器で抹殺してやると繰り返し脅す光景を目撃した。1946年に米国は、核弾頭の生産を禁止し、核兵器の競争を阻止しようという国連の有益な努力をさえぎった。キューバ危機の際は、核戦争の脅しに訴えることなく、身を引いたのはフルシチョフであった。彼はそうした決定を下したために結局権力の座から追われたが、人類を滅亡の危機から救ったのだった。

彼はまた、53年に米国と自国の核兵器政策についてブリーフィングを受けた際には、数日間眠ることができなかった。キューバ危機を経て、フルシチョフはすべての軍事同盟解消と、超大国間の新たな紛争を潜在的にもたらしかねない全問題の除去を呼びかけている。そしてすべての核戦争を中止する条約を推進しながら、賢明にも「もし平和が実現できず、核爆弾が投下され始めたら、我々が共産主義者であるとかカトリック信者であるとか、あるいは資本主義肯定派だとか、中国人やロシア人、米国人であるといったことに何の重要性があるのか。誰が何人とか何主義とか見分けるような人間も一人も生き残らないのだ」と問いかけた。

そして86年、アイスランドのレイキャビクで、結果的に破綻したスターウオーズの幻想に頑固にとらわれていた米国のロナルド・レーガン大統領に譲歩に次ぐ譲歩を重ねながら、すべての核兵器除去を納得させる寸前まで持っていったのはソビエトのミハイル・ゴルバチョフ書記長であった。

冷戦の終結については、その開始と同様に論議がある。多くの米国人は、肉体的によろけていた老大統領がその一番の功労者であると信じているが、真摯に歴史を学ぶ者にとってはゴルバチョフ書記長である。レーガン大統領の後継者であるジョージ・ブッシュ大統領は、ゴルバチョフ書記長が、旧ワルシャワ条約機構加盟国がソビエトのブロックから離脱するままにさせた自制心を讃えた。だがその言葉を発した直後に、米国の「安全保障」の利益のためだとパナマやクウェートに侵攻した。コリン・パウエルは、「ソ連がどうしようとも、たとえ東ヨーロッパから撤退したにせよ我々はドアの外に『超大国はここに住む』との看板を掲げなければいけないのだ」と宣言した。

米国の世界支配の欲望

90年2月、ゴルバチョフ書記長は「NATOは親指一本の幅ほども東方へは広げない」という米国と当時の西ドイツの保証を受けて、ドイツ再統一を容認した。だが、ビル・クリントンとジョージ・ブッシュ(息子)はNATOを東方に拡大し、現実にはNATOと米軍の基地で包囲したのだ。冷戦の設計者であったが後に批判に転じたジョージ・ケナンはこれを「戦略における途方もない歴史的失策」と呼んだ。

2009年には、アルバニアとクロアチアがNATOに加盟している。ブッシュ前大統領は、グルジアとウクライナも加盟させるという意図すら公言したが、ロシアの指導者にとっては決して容認できない悪夢のシナリオである。

ボリス・エリツィンは米国の経済学者たちによる「ショック療法」計画を愚かにも遂行し、ソビエト崩壊後のロシア経済をオランダ程度の規模にまで縮小させてしまった。平均寿命は66歳から57歳まで低下した。有名なロシアの小説家アレクサンドル・ソルジェニーツィンは20年に及ぶ亡命生活の末、2000年の状況を指してこう言った。「我々の国家、経済、文化、倫理的生活のすべての部門が破壊され略奪された。我々は文字通り廃墟の中に住んでいるようなものだ・・・偽の改革の数々は・・・人民の過半数を貧困に追いやった」。

プーチン大統領は、米国の宇宙軍事化や東欧におけるミサイル防衛網の構築や核兵器能力の強化、エネルギーが豊富なカスピ海地域への進出、そしてロシア国民の90%が「人道に対する犯罪」と見なしたユーゴスラビアのセルビア人に対する空爆に対し、抗議した。

だが06年にロシアは、新たな衝撃を見舞われた。外交問題評議会が発行する著名な『フォーリン・アフェアーズ』誌でノートルダム大学のケイル・リーパー助教授(当時)とペンシルバニア大学のダリル・ブレス助教授(同)が連名で書いた論文に、米軍がロシアや中国を報復不能にしたままで核の先制第一撃を加える能力を遂に達成したと発表されたのだ。当時『ワシントン・ポスト』紙は、この記事がロシアに対し、スタンリー・キューブリックの映画『博士の異常な愛情』に登場する、核戦争をためらわず遂行させるストレンジラブ博士を想起させて「頭に衝撃をくらわせた」と報じている。元首相代理の経済学者イゴール・ガイダーは、「権威ある米国誌におけるこのような構想の発表は爆弾のような効果をもたらした。通常ならヒステリー的な反応や反米的姿勢を取らないロシアのジャーナリストたちでさえこれを米政権の正式な立場の大枠と見た」と『フィナンシャル・タイムズ』に書いている。

さらにロシアは米国のアフガニスタン、イラク、リビアへの侵攻や、無人機による暗殺作戦、昨年だけで134カ国での特殊部隊配置を目撃した。そしてコソボや南スーダン、エリトリア、東チモールで立証されたように、自分たちの目的にかなうなら主権国家の分割も推し進めるという現実も。

現在焦点となっているウクライナ危機をもたらしたものに、レーガン時代の遺産である全米民主主義基金(NED)(注3)がある。この組織はウクライナで65の「親民主主義」プロジェクトを支援し、親西欧派活動家を計画的に育成している。そうした活動家は、暴力的なネオナチ(その一つであるスポポダは国会で38議席を有している)による抗議活動に動員された。そして一見無害のようなEUのウクライナとの交易も、ウクライナをロシア圏から引き離すための策動の積み重ねなのだ。

『フィナンシャル・タイムズ』紙によると、「ウクライナ新政権にEUの法制度を国内の法体系に組み込むのを求める合意は、多くのEU指導者にとって旧ソビエトブロック内での民主主義的価値のさらなる拡大のための、十数年に及ぶ努力の決定的なステップとして見なされている」とされ、それは「ウクライナを確固として西側につなぎとめる」という目的がある。

ネオナチを支援した欧米

プーチン大統領はウクライナの破綻した財政に対し極度に寛容な対案を提出し、ヤヌコビッチ前大統領の対ロシア経済関係を育成する「三つの委員会」提案を了承した。排他的な取引を要求したのはプーチンではなく西側だ。大多数のウクライナ国民を悲惨な状態に陥らせるある種の緊縮政策を要求したのは、プーチン大統領ではない。西側なのだ。民主的に選出された大統領を解任するには、選挙や憲法に沿った手段が存在するのに、暴力で追放したのはウクライナの親欧米派ではないか。

なぜプーチン大統領が、現在のウクライナを、米国主導のロシア侵略パターンの最新版と見なすかを理解するのは簡単だ。1992年、ネオコンの戦略家であるポール・ウォルフォウィッツは新「国防計画ガイダンス」の作成を手がけた。その文書こそ、米国のヘゲモニーに挑戦を挑むようないかなるライバル国家の出現を阻止するという米国の意図をも鮮明にした、軍事的な侵略計画であった。文書を事前にスクープした『ニューヨーク・タイムズ』紙は、「大言壮語の一極主義だ」と嘆いたものだ。ジョセフ・バイデンは当時上院議員であったが、この「パックス・アメリカーナ」を「米国が世界の警察国家であるという古い概念」と非難した。

このスクープ後、ネオコンたちは後退を強いられた。だが、2001年の「9.11事件」後、米国は実際に世界の警察官になり、あらゆる潜在的にライバルとなりうる国家を打ち負かそうとした。そしてオバマ政権はブッシュ・チェイニー時代の最もひどい戦術のいくつかをやめた一方で、より広範な戦略ビジョンを放棄しなかった。

米国はウクライナをロシアの勢力圏から取り除く努力を是認し、ネオナチ部隊が不気味な役割を果たしているにもかかわらずウクライナ新政権を支援した。自分たちの利害を守るためにロシアを孤立させ、懲罰を加えるために動き、周辺国との一連の軍事・経済分野の合意を通じて中国を封じ込めている。このように米国は、まさにライバル諸国を弱体化させようと努めているのだ。

米国は、ウクライナで危険なゲームに興じている。大多数のウクライナ人は、EUやNATOのどちらにも加盟するのを反対している。96%以上のクリミアの住民もウクライナから離脱してロシアに加わるのを選択したが、大多数のウクライナ人はこうした動きを支持はしていない。ウクライナは、経済的な無能力国であり、政治腐敗が蔓延している。その荒廃した経済と政治問題を解決するためには、ロシアとEU両方の側との友好な関係を必要としている。

状況は依然危機をはらんでいる。最終通告や大げさな言辞、愚かな類推、そして脅しは状況を悪化させるだけだ。ロシアを孤立化させ、懲罰を加え、弱体化させるために西側主導で作られた危機は終わるべきだ。西側は、ロシアの勢力圏からウクライナを引き離すような試みを撤回せねばならない。同時にロシアは、これ以上の軍事行動や併合を自重すべきである。キューバ危機のように、これはゼロサム・ゲームではない。もし緊張が激化すれば、私たちはすべてを失う。ケネディとフルシチョフはそのことを理解し、世界を核戦争の瀬戸際まで追いやった1962年10月の危機後に進路を転換した。一方でオバマもプーチンもそのような英知や政治手腕をまだ発揮していないが、核兵器で徹底的に武装され、うち何千発は即時発射態勢にある現在の世界にあって、それは今こを求められるべきものなのである。

注1:チェコスロバキア・ズデーデン地方のドイツ帰属を求めたのに対し、英仏が1938年9月、ミュンヘンでの協定で「これ以上の領土要求はしない」という約束でヒトラーに前面譲歩。後にこの約束は破られた。

注2:ネオナチを支援・利用してウクライナ前政権の転覆工作を指揮したヌランド次官補が2014年2月、米国の駐ウクライナ大使と会話した記録がインターネット上に流れた。そこで同次官補はウクライナ情勢への対応を巡り、EUを下品な表現でののしっている。

注3:1983年、「民間の非政府活動により、世界中の民主的組織を支援する」という名目で設立。だが資金は政府の全額支出で、米国にとって都合の良い各国の勢力を資金・人材面等で援助する。諜報機関の左派・進歩的政権の転覆工作活動とも一体だ。

(以上)

Friday, March 04, 2022

新著『歴史のなかの朝鮮籍』著者の鄭栄桓さんを迎えて出版記念トーク:3月20日(日)14時から、オンラインイベント

新著『歴史のなかの朝鮮籍』(以文社)著者の鄭栄桓さん(明治学院大学教養教育センター教授)を迎えて出版記念トークを行います。コメンテイターとして、韓国から聖公会大学東アジア研究所副教授の趙慶喜さん、昨年、『朝鮮籍とは何か』の編著者としてオンライントークをしていただいた中央大学准教授の李里花さんをお迎えします。ピース・フィロソフィー・センターは共催団体の一つです。ふるってご参加ください。また、イベント情報拡散にご協力ください。

申し込みリンクはこちらです。


チラシのPDF版はこちらです。


(案内文より)


苛烈な植民地支配からの解放後も、日本に残ることになった在日朝鮮人たち。

差別的な立法や政策、朝鮮戦争による祖国の分断、そして韓国のみとの国交回復といった様々な困難に直面する中で、彼ら彼女らはその時々で何を恐れ、何に怒り、何を求めていたのか。


「朝鮮籍」をめぐる日本と南北朝鮮、そして在日朝鮮人の歴史を紐解く労作、『歴史のなかの朝鮮籍』が以文社より出版されました。


これを記念し、著者の鄭栄桓さんを招いてオンラインイベントを開催することになりました。

本書を読まれた方も、まだの方もぜひご参加ください。


2022年3月20日(日)14:00~16:00
著者トーク:鄭栄桓さん
コメント:趙慶喜さん、李里花さんほか 

 

鄭栄桓(チョン・ヨンファン)さん
明治学院大学教養教育センター教授。専門は朝鮮近現代史・在日朝鮮人史。1980年、千葉県生まれ。著書に『朝鮮独立への隘路 在日朝鮮人の解放五年史』(法政大学出版局、2013年)、『忘却のための「和解」 『帝国の慰安婦』と日本の責任』(世織書房、2016年)など。

趙慶喜(チョ・キョンヒ)さん
聖公会大学東アジア研究所副教授。専門は移動とマイノリティ研究。主な共著に『主権の野蛮:密航・収容所・在日朝鮮人』、『「私」を証明する:東アジアにおける国籍・旅券・登録』、『残余の声を聴く:沖縄・韓国・パレスチナ』、主な論文に「裏切られた多文化主義:韓国における難民嫌悪をめぐる小考」「韓国の女性嫌悪と情動の政治」などがある。

李里花(リ・リカ)さん

中央大学准教授。社会学博士。(専門:歴史社会学、移民研究、環太平洋地域研究)東京都立国際高等学校、中央大学総合政策学部卒業後、一橋大学大学院社会学研究科修士課程・博士課程修了。ハワイ大学コリアン研究センター客員研究員、韓国高麗大学アジア問題研究所コリアンディアスポラセンター客員研究員を歴任。現在日本移民学会理事・事務局長。主な研究に、『〈国がない〉ディアスポラの歴史:戦前のハワイにおけるコリア系移民のナショナリズムとアイデンティティ1903-1945』(かんよう出版、2015 年)等がある。自身は朝鮮籍ではなく、在日コリアンの母とコリアン・アメリカンの父の間で日米を往来しながら育った。



参加費
・トークイベントのみ:500円
・書籍+トークイベント:5,200円(書籍送料込)
書籍『歴史のなかの朝鮮籍』(税込定価5,060円)のお申し込みとトークイベントに参加できるチケットです。書籍はお申し込みから1週間以内に東京から発送する予定です。イベント前に本を入手されたい方は、お早めのお申し込みをお願いします。(3月14日以降に書籍付チケットをお申し込みされた場合、イベントまでに書籍をお届けできない可能性があります。ご了承ください)

注意事項
本イベントはZoomのウェビナー機能を使用したオンラインイベントです。
インターネット環境と、パソコン、タブレット、スマートフォンなどが必要です。
タブレットやiPhoneなどのスマートフォンでご覧になる場合は、事前にZoomアプリのダウンロードをお願いします。
参加者には、当日の午前中までに参加用のリンクをメールでお送りします。
回線などの関係で、音声や映像に不具合が生じる場合がありますのでご了承ください。

共催:在日差別をなくす会、ラジカルバナナ 、Peace Philosophy Centre
後援:以文社


Thursday, March 03, 2022

ダイアナ・ジョンストン:米国の外交政策は残酷な遊びである DIANA JOHNSTONE: US Foreign Policy Is a Cruel Sport (Japanese translation)

著者、ダイアナ・ジョンストン氏の許可をもらい、Consortium News から、表題の記事の和訳を掲載します。帝国主義の批判で知られ、このブログにも何度も登場しているジャーナリスト、ジョン・ピルジャー氏はTwitter で「主権国家への侵攻は無法であり、間違っている。同時に、ウクライナへの侵略を誘発した冷笑的な勢力を理解しないことは、被害者を侮辱することになる。これを読んでください。」とこの記事を推薦しています。翻訳ソフトDeepl に力を借りて、乗松聡子が訳しました。米国出身(1934年生)、ミネソタ大学で博士号を修めたダイアナ・ジョンストン氏は、人生の半分以上を欧州で過ごし、AFP通信、 In These Times といった媒体で特派員を務めた経験を持つ、政治オブザーバーおよびジャーナリストです。

いま起こっている戦争を外交の力で止めなければいけないのは当然ですが、米国/NATOが冷戦後ロシアに対して長きにわたり行ってきた軍事的威嚇、敵視、その強大な軍事同盟の東方拡大、2014年米国が仕掛けたウクライナ政権転覆以来、米国をバックとしたネオナチ勢力が行ってきた犯罪行為・虐殺に対して何の声も上げてこなかった人たちが、今回、突如、対ロシア/プーチン大統領に対する一方的な敵視・糾弾だけの「平和」運動を行ったり声明を出すことには、私は決して賛同できません。それは米国NATOという巨悪の存在とその世界覇権のための軍事的侵略行為を許し、推奨することとイコールであるからです。私は、オリバー・ストーン監督とピーター・カズニック教授(アメリカン大学)と仕事をする機会を得てきたことから、日本やカナダを含む「西側」の一方的なロシア敵視について距離を取って学ぶことが可能になりました。まだまだ学びの途中ですが、私ができることは、日本語では情報源が非常に限られている中、海外の注目すべき論評や分析を日本語で届けることではないかと思っています。この記事とともに、オリバー・ストーン監督の2016年ドキュメンタリー映画「ウクライナ・オン・ファイア」を観てください(字幕を作った方に感謝!)。(Peace Philosophy Centre 乗松聡子)


DIANA JOHNSTONE: US Foreign Policy Is a Cruel Sport https://consortiumnews.com/2022/02/23/diana-johnstone-us-foreign-policy-is-a-cruel-sport/


ダイアナ・ジョンストン:米国の外交政策は残酷な遊びである 

パリにて

コンソーシアム・ニュースに特別寄稿

Diana Johnstone
初代エリザベス女王の時代、英国王室の人たちは、獰猛な犬が、捕らえられた熊を苦しめるのを面白がって見物したという。 この熊は誰にも危害を加えていないのだが、犬は捕らえられた熊を挑発し、反撃に出るよう仕向けるのである。 興奮した動物から流れ出る血は、観客を喜ばせた。

このような残酷な行為は、非人道的であるということで禁止されて久しい。

しかし、今日、この熊いじめの一形態ともいえる行為が、それも巨大な国際的規模で、国家全体に対して毎日行われているのである。 それは人呼んで、「アメリカの外交政策」である。NATOと呼ばれる、異常な国際スポーツクラブの常套手段なのである。

米国の指導者たちは、「不可欠な国家」としての傲慢さの中に安住しながら、他国に対しては、自分たちが喜んで苦しめた動物たちに対してエリザベス朝が抱いていたような程度の敬意さえ持っていない。米国の熊いじめの標的国は枚挙にいとまがないが、ロシアは常に嫌がらせを受ける代表的な例として際立っている。 そして、これは偶然ではない。 いじめは意図的に、そして入念に計画されている。

その証拠として、ランド研究所が米陸軍参謀長に提出した2019年の報告書、"Extending Russia "に注目したい。実は、このランドの研究自体は、かなり慎重な提言をしており、多くの背徳的な仕掛けがうまくいかないかもしれないと警告している。 しかし、私はこの報告書の存在そのものが恥ずべきものと思っている。その報告書の内容よりも、国防総省がその一番の知識人たちに金を払って、どうしたら米国の指導者が利用できるようなトラブルに他国を誘い込むことができるかを考えさせているというその事実のことだ。

米国の公式見解は、「ロシアの侵略的な拡張主義が欧州を脅かしている」というものだが、その戦略家たちが内輪で語るときは全く話が異なっている。 彼らの目標は、制裁やプロパガンダなどの手段を用いてロシアを刺激することによって、ロシアによくない手段(「過剰な拡張」)を取らせ、まさしくそこを利用してロシアを追い詰め、米国が得をするように仕向けることである。

ランド研究所は、その目標を次のように説明している。
「ロシアの軍事、経済、国内外での政権の政治的立場に圧力を加え、ロシアの実際の脆弱性と不安を利用することができる非暴力的なさまざまな手段を検討する。私たちが検討する措置は、防衛や抑止をその主要な目的とはしないだろうが、どちらにも貢献する可能性はあるだろう。むしろ、これらの措置は、敵対国(ロシア)のバランスを崩し、米国が優位に立つ領域や地域でロシアが競争するよう導き、ロシアが軍事的・経済的に過剰な拡張をしたり、政権が国内外での威信や影響力を失うよう仕向ける作戦の要素として考えられている。」
明らかに、米国の支配者の世界では、これは「普通の」行動とみなされているのだ。校庭のいじめっ子にとって、からかいは普通の行動であり、腐敗したFBI捜査官にとって、おとり捜査は普通の行動であるように。

ここに描かれていることは、ウクライナにおける米国の作戦に完全に合致する。敵対的な軍事同盟をロシアの玄関口に進めることによって「ロシアの脆弱性と不安を利用する」ことを意図し、一方でロシアの完全に予測できた反応を、不当な侵略と表現しているのである。 外交には相手の立場を理解することが必要である。 しかし、言葉による「熊いじめ」は、相手を理解することを完全に拒否し、相手の言動を常に意図的に誤って解釈することを要する。

本当に極悪非道なのは、ロシアの熊が拡大を目論んでいると絶えず非難しながら、自らの政策全体を、熊を拡大するように仕向けることである。 そうすれば、懲罰的な制裁を行い、国防総省の予算を数段上げ、米国の貴重な欧州の「同盟国」たちにNATOの保護恐喝的な締め付けを強めることができるからだ。

ロシアの指導者たちは、一世代にわたって、EUや、とりわけNATOとして制度化された「西側」と、平和的パートナーシップを築くために並々ならぬ努力を重ねてきた。ロシアの指導者たちは、人為的に作られた冷戦を終結させることによって、ヨーロッパを平和を愛する近隣諸国として生まれ変わらせると本気で信じていた。しかし、傲慢な米国の指導者たちは、自国の最高の専門家たちの反対意見にもかかわらず、ロシアを大国として正当に扱うことを拒否し、サーカスの中でいじめる熊のように扱うことを好んだ。

NATOの拡大は、まさしくこの熊いじめの一形態であり、友人になれたはずの国を敵に変換させる確実な方法であった。米国のビル・クリントン政権およびその後の政権が選んだ道である。 モスクワは、旧ソ連邦の構成国の独立を認めていた。 それなのに、この「熊いじめ」によって、常にロシアが旧ソ連の構成国を取り戻そうとしていると、責め続けたのである。

ロシアの国境地帯

ウクライナとは「国境地帯」を意味する言葉で、本来はロシアと西方のポーランドやリトアニア、ハプスブルク家の領土の一部であった地域との国境地帯を意味する。 ソ連邦の一部であったウクライナは、その両方の領土を含むように拡大された。歴史は両極端の対照的なアイデンティティを作り出し、結果として、 1991年に誕生したばかりのウクライナという独立国家は、当初から分裂が激しかった。 そして当初から、ワシントンの戦略は、米国やカナダにいる反共産主義的な反ロシアの大規模なディアスポラと共謀して、ウクライナの分裂の苦しさを利用して、まずソ連を、次にロシアを弱めようと企んでいたのである。 「民主主義の強化」のためーウクライナの、西側に親和的な西部と、半ロシア(セミ・ロシア)といえる東部を対立させるためにー何十億ドルもの資金が投入された。

2014年、米国が支援したクーデターにより、ウクライナ東部の強固な支持を受けていたヴィクトル・ヤヌコヴィッチ大統領が倒され、ウクライナをNATOに加盟させると決意していた親西側勢力が権力を握ることになり、NATOのロシア敵視はますます露骨になった。その結果、クリミア半島にあるロシアの主要な海軍基地セバストポリをNATOが奪取するのではないかとの見方が出てきた。

クリミアの人たちはウクライナの一部になることを望んだことなどなかったので、住民投票を実施し、圧倒的多数のクリミア人が、1954年、独裁的なフルシチョフ政権によって断絶されていたロシアへの復帰を選ぶことで、危機を回避することができた。 西側のプロパガンダ担当者たちは、この自己決定的行為を、ロシアが西側諸国を軍事的に征服する計画を予見させる「ロシアの侵略」であると執拗に非難した。

そして、自分たちが投票した大統領がクーデターで倒されたことと、自分たちが話す言語であるロシア語を禁止すると脅す民族主義者たちに愕然とした東部のドネツク州とルガンスク州の人々は、独立を宣言したのだ。

ロシアはこの動きを支持せず、そのかわりにミンスク合意を支持した。ミンスク合意は2015年2月に署名され、国連安保理決議で承認された。この合意の骨子は、離脱した共和国を地方自治権と引き換えに返還する連邦化プロセスによって、ウクライナの領土の一体性を維持することでした。

ミンスク合意は、ウクライナ内部の危機を終わらせるためのいくつかのステップを定めたものであった。まず、ウクライナは東部地域に自治を認める法律を直ちに採択することになっていた(2015年3月)。次に、ウクライナ政府は東部地域と、同年にOSCE(欧州安全保障協力機構)の監視下で実施される地方選挙のガイドラインについて交渉する。 そして、東部の権利を保障する憲法改正を実施する。選挙後、ウクライナ政府はドネツクとルガンスクをロシアとの国境も含めて完全に掌握する。 一般的な恩赦は、双方の兵士を対象とする。

しかし、ウクライナ政府は協定に署名したものの、これらの点を何一つ実行せず、東部反政府軍との交渉を拒否してきた。 いわゆるノルマンディー・フォーマットで、フランスとドイツがウクライナ政府に圧力をかけて、この平和的解決を受け入れさせることが期待されたが、何も起こらなかった。それどころか、西側諸国はロシアが合意を履行していないと非難しているが、合意の履行義務はモスクワではなくキエフにある以上、これは意味をなさない。 ウクライナ政府の高官たちは、反政府勢力との交渉を拒否することを繰り返す一方で、自分たちのやり方で問題に対処するために、NATO諸国にますます多くの武器を要求している。

一方、ロシア下院の主要政党や世論は、8年間中央政府からの窮乏と軍事攻撃に苦しんできた東部諸州のロシア語話者への懸念を以前から表明してきた。この懸念は、西側諸国では当然のように、ヒトラーの近隣諸国征服への動きの再来と解釈されている。 しかし、この西側諸国にありがちな、ヒトラーとの比較には根拠がない。ロシアは広すぎて、レーベンスラウム(訳者注:ヒットラーが主張していたような生存圏)を征服するといったニーズはないこと一つ取っても。

そんなに敵が欲しいのか? 今、望みがかなったようだな

ドイツは、西側諸国の対ロシア関係の完璧な方程式を発見した。その方程式はこれだ。あなたは "Putinversteher"、つまり "Putin understander "(プーチン理解者)なのか、そうでないのか?西側のプロパガンダの定番は、ターゲットとなる国をその国の大統領の名前で擬人化することだから、この場合はウラジーミル・プーチンである。プーチンは必然的に独裁的な専制君主とされる。もしあなたがプーチンやロシアを「理解」するならば、あなたは西側に不誠実であるという深い疑いをかけられていることになる。 だから、今、我々はみんな揃って、ロシアを理解しないという姿勢を明確にしようではないか!

ロシアの指導者たちが、巨大な敵対同盟のメンバー国の数々が、自分たちの目の前で定期的に軍事演習を行うことに脅威を感じているとでも言うのか? 近隣のNATO加盟国から自国の領土に向けられる核ミサイルに不安を感じているとでも? それは単なるパラノイアか、ずる賢く攻撃的な意図の表れだろう。理解するべきことなど何もない。

(訳者注:上の2パラグラフは、「西側プロパガンダ」を皮肉を込めて描写しているのです。)

つまり、西側諸国はロシアを熊いじめの熊のように扱ってきたのだ。 その結果西側諸国が得たものは、ワシントンやロンドンなどにいる平凡な政治家よりもはるかに思慮深く知的な人々が率いる、核武装した軍事的に強力な敵国だ。

ジョー・バイデン米国大統領と彼が率いる闇の国家は、ウクライナの平和的解決など決して望んでこなかった。なぜなら、不安定なままのウクライナはロシアと西ヨーロッパ間の永久的な障壁として機能し、西ヨーロッパに対する米国の支配を確実なものにするからだ。 米国は長年にわたりロシア敵視を続けてきた。そしていまロシアは、西側は自分たちを敵としてしか見ないのだという不可避の結論を導いているのである。ロシアの忍耐は限界に達した。そして、これはゲーム・チェンジャーである。

最初の反応:西側は制裁で熊を罰する!ドイツは、天然ガスパイプライン「ノルドストリーム2」の認定を停止している。 このようにドイツは、自分たちが将来必要とするガスをロシアが遮断したりしないために、いま必要とするロシアのガスの購入を拒否している。 これはなんと賢いからくりなんだろう! そして、ガス不足と価格高騰で、ロシアはアジアのどこかにガスを売るのに困ることはないだろう。

「私たちの価値観」(訳者注:西側にとっての価値観)に「理解を拒否すること」が含まれているとしたら、西側が「理解し損なう」ことにも天井がなくなる。

次回に続く。


Diana Johnstone ダイアナ・ジョンストンは、1989年から1996年まで欧州議会の緑の党の報道官を務めた。最新作『Circle in the Darkness: Memoirs of a World Watcher[闇の中の円環:一人の国際情勢評論家による回顧録]』 (Clarity Press, 2020)では、ドイツの緑の党が平和政党から戦争政党に変貌するにあたっての数々の重要なエピソードが語られている。その他の著書には『Fools’ Crusade: Yugoslavia, NATO and Western Delusions [愚か者の十字軍 ユーゴスラビア、NATO、西側諸国の妄想]』(Pluto/Monthly Review) がある。また、父親であるポール・H・ジョンストンとの共著で、『From MAD to Madness: Inside Pentagon Nuclear War Planning [MADから狂気へ ペンタゴンの核戦争計画の内幕]』 (Clarity Press)がある。連絡先: diana.johnstone@wanadoo.fr

(注:翻訳はアップ後修正することがあります)