To view articles in English only, click HERE. 日本語投稿のみを表示するにはここをクリック。点击此处观看中文稿件한국어 투고 Follow Twitter ツイッターは@PeacePhilosophy and Facebook ★投稿内に断り書きがない限り、当サイトの記事の転載は許可が必要です。このブログの右サイドバーにある Contact Us フォームで連絡ください。Re-posting from this blog requires permission unless otherwise specified. Please use the Contact Us form in the right side-bar to contact us.

Thursday, May 05, 2011

IPPNW 『チェルノブイリ事故の人体への影響』より: 長期にわたる甲状腺障害の拡大 Health Effects of Chernobyl: Thyroid Cancer and Other Thyroid Diseases

福島事故が「レベル7」と判定されて以来、「福島はチェルノブイリと比べることなどできない小規模の事故である」という主張がもう通用しなくなったせいか、今度は比較対象を過小化し、「チェルノブイリは大したことなかった」という論調にすり替えられてきている、ということは何度も述べてきました。このサイトでは、今日本のメディアも政府も必死に隠そうとしているチェルノブイリの人体へのおびただしい影響についての、世界中の研究者による最新の報告を日本語で紹介してきています。

Health Effects of Chernobyl
 『チェルノブイリ事故の人体への影響』
さて、注目を集めたこの投稿

IPPNW「チェルノブイリ健康被害」新報告と、首相官邸資料「チェルノブイリ事故との比較」との驚くべき相違

では、4月に発表されたばかりのチェルノブイリ事故の健康被害の報告書の論文要旨と、IAEAやWHOのデータの問題点を指摘した注記の翻訳を、事故の健康被害を更に過小評価している官邸資料と共に紹介しました。

今回は、このIPPNWの報告本文のうち、「5 甲状腺癌とその他の甲状腺疾病」(45-51ページ)の和訳を紹介します。(翻訳: 久保田香南子 協力: 酒井泰幸 松崎道幸 乗松聡子)

注:脚注は訳しておりませんので原文をご覧ください。

IPPNW レポート 

『チェルノブイリ事故の人体への影響-原子炉の惨事から25年-』より      
    
 -45-
5 甲状腺癌とその他の甲状腺疾病

5−1 チェルノブイリ地域

大惨事後2年目の記念日,ソビエトの保健省長官Tschasowは、ソビエト共産党の中央機関紙プラウダに、“今日チェルノブイリ原子力発電所での事故はその影響を受けた地域の人々の健康に何らの被害も起こしていないと確信する”と伝えた。

L.A. Ilyin 教授らは3年間の沈黙の後、チェルノブイリ後の 汚染形態と健康に及ぼしうる影響についての報告書を、1989年にモスクワで提出した。(注135) Ilyinは汚染のひどかった9地域にある39地区で158,000人の子供(0〜7歳児)のうち90人が30年以内に甲状腺癌を発症するだろうと予見した。

これらの予見を、これから提示する事実に照らしてみれば、いかに現実からかけ離れているかが明らかになる。今日でさえ、 Ilyinは放射線に関する問題をめぐる決定権を持つ国際機関(ICRP, UNSCEAR)で、チェルノブイリの被害について知識ある専門家としてロシアを代表する立場にある。

1990年1月、ミュンヘンの放射線生物学機関の所長A.M. Kellererは,“赤十字への報告書”を提出した。(注136) その中で彼は以下のように書いた。“特筆すべき問題は甲状腺機能の損傷についての恐怖感である。(中略)甲状腺検査がより広範に行われるようになるにつれて、相当な機能障害が発見されてきている。放射性ヨウ素線量が高くても、何らの病理学的変化や機能障害が予測されるわけではないのであるが、これらの(新たに発見されている)機能障害が放射線被曝のためだとされている。しかしこの状況を査定すれば、このような機能障害の増加は次の3点のどれかに起因することがわかる。

1.生活様式と栄養条件の変化と制限
2.深刻な不安感
3.頻繁で徹底した医学検証と汚染地域での疾病に関するより充実した報告”

チェルノブイリの4年後、D. Arndt, (肩書き説明:旧東ドイツの原子力安全と放射線予防事務局、 放射線医学部長・医師長)は,S. Pflugbeil に、次のように書き送った。”チェルノブイリ周辺地域での問題は放射線生物学的なものではなく、生活習慣の変化(ビタミン不足、居住区に閉じこもっている生活)によって心身に現れる現象である。”(注137)
-46-
このような情報不足の専門家の取る立場が、時機を得た効果的な医学的介入を妨げてきた。つまり、チェルノブイリ地域の人々は散歩に出かけなかったり十分な野菜をとらなかったりしたから、結局それは当人達の責任だということのように見られる。

ソビエト連邦国外では、1990年の秋にベルリンで、チェルノブイリ後最初の 甲状腺疾患に関する実証情報が提出された。ミンスクの医師、Maria Ankudovich は、“放射線被曝は甲状腺癌をひきおこすだけでなく、甲状腺の腫れ、様々な自己免疫性甲状腺炎や甲状腺機能亢進症を多数引き起こす”と発表した。放射線被曝した甲状腺は、ホルモン分泌に変化を起こすので子供と成長期の青年には機能障害、発達障害の危険性が増す。神経内分泌調節障害のために他の内分泌腺で癌発症の可能性が増す。つまり下垂体癌、副腎皮質癌、膵臓癌、乳癌,卵巣癌などである。 M. Ankudovichの報告書によれば,ベラルーシ南部の子供達の約5%が10 グレイ以上被曝した。統制されなかった地域の子供達の20%は、約1グレイ被曝した。ベラルーシの子供達の間では甲状腺癌の進行が特に顕著である。甲状腺癌は通常年配者によく見られ,子供には非常に稀な疾病である。1986年以前、ベラルーシの子供達に新しく発症した甲状腺癌は1年に0−2件。1989年の新しい発病件数は 7件、1990年の秋までに22件に上った。この時点で多数の発症が進行しつつあるのはあきらかであった。過去の経験に基づいて考察された可能性よりもずっと大きな速い速度の雪崩現象が近づきつつあった。率直に勇気を持ってこの報告をしたこの医師(マリア)は出世昇進できなくなった。

IAEAは1991年春、国際チェルノブイリプロジェクトの結果を発表した。“検査対象となった子供達は一般的に健康であった。… 事故後のデータから、白血病や甲状腺腫瘍などが顕著に増加したとは見られない。” (注139)

ベラルーシの甲状腺癌に関するデータはすべて一ヶ所に集められているので、電話を一本かけるだけで実際の数は把握するには十分であっただろう。

今日わかっていることは:

• チェルノブイリの子供達から収集された組織サンプルは既にこのプロジェクトを統率する科学者(米、F.A. Mettler教授)の机の上に放置されている。彼は事実を知っていながら、報告書ではそれを述べていない。
• ベラルーシ保険省の報告書ではゴメリの重度汚染地区の子供達に甲状腺疾患件数が際立って増加していることが明確に指摘されており、チェルノブイリプロジェクトにたずさわっている科学者はその報告書を所持している。この報告書は無視された。

1995年の11月20日から23日、WHOはスイスのジュネーブでチェルノブイリの惨事とその他の原子炉事故に関する国際会議を開催した。この会議で、特に重度汚染地区に住む子供達の間に甲状腺疾患の急激な増加が見られるという研究結果が発表された。

-47-
WHOの専門家Keith Baverstockの見解によると、原子炉の事故から癌の発症までの時間は“驚くほど短い”。さらに、チェルノブイリの子供達に発症している腫瘍は異常に進行が速く、身体の他の部分に広がっている。

甲状腺癌発症の増加が最も厳しいのはチェルノブイリでも、汚染が最もひどかったゴメリ地区のこどもたちである。ベラルーシの子供達の甲状腺癌の総発症数の50%近くがこの地区に集中している。成人の甲状腺癌でもこの地区の発症数が一番高くなっている。0才から18才までの甲状腺癌の年間発症数は1998年には事故前13年間の58倍となっている。

甲状腺癌が発症した子供達の大部分は事故の時6才以下で,その半数以上が4才以下であった。ベラルーシの、0-14才までの子供達にみられる発症率は1995年に頂点に達する。速い段階で小児性甲状腺癌は進行が速く他の臓器、特に肺への転移も速いことが確認された。ほとんどの症例は甲状腺乳頭癌と診断された。

チェルノブイリでの想像もできない大事故のために、ウクライナでも甲状腺癌発症件数が増加した。チェルノブイリ事故後、110,000人の子供と40,000人の成人の甲状腺内の放射性ヨウ素線量が測定され、癌登録制度が設置された。子供の甲状腺癌では1993年までに418件が登録された。その情報を地域別に分類することで電離放射線との関係が明確になった。

M. Fuzikらは、幅広く、ベラルーシ,ウクライナ、ロシアでの甲状腺癌の調査を行った。この調査はこれら3地域の癌登録者の数値に基づくものである。これら3地域でのデータは原子炉事故のときに幼少であった人々の発症率が最も高くなっていることを示す。チェルノブイリ(1982-1986)以前に生まれた子どもたち、あるいは事故当時生まれたばかり又は1〜3才であった子どもたちの方が、事故後(1987-1991)に生まれた子ども達よりも甲状腺癌を発症する可能性が高いことがわかる。

子どもたちが強く傷害を受けたという事実は乳幼児と年少のこどもたちの甲状腺が電離放射線によりガンを発生しやすいことを示す強固な証拠であると理解される。ベラルーシの子ども達に発生した甲状腺ガンの悪性度が高いことは、初期であっても転移が多いという事実で確認できる。手術で確認されたTMN分類のT1期、つまり、(訳注:左葉と右葉という二つの部分に分かれている甲状腺の)どちらかの葉に直径10ミリメートル以下の腫瘍が一個だけある場合という(訳注:いわゆる初期の状態)であっても、すでに43%の患者ですぐそばのリンパ節に転移が起きている。また、3%の患者では、他の臓器にも転移がみられる。

-48-
Fusikらの調査によればチェルノブイリ事故で最も被害を受けたこれらのベラルーシ、ロシア、ウクライナ3領域内で調査された12区域のすべてでは、事故後4−5年の潜伏期をもって0-14才の子供に甲状腺癌が著しく増加した。これらの被害地域は、ヴィーンヌィツャ、ジトームィル、チェルカースィ、チェルニーヒウ州、キエフとキエフ市、 ベラルーシのゴメリとマヒリョウ地域、およびロシアのブリャンスク、クルスク、オリョール、トゥーラの各地域である。 発症増加数が最も多かったのはゴメリ、続いて、ブリャンスク、オリョール、キエフとキエフ市、チェルニーヒウ、マヒリョウ、そして ジトームィルと続く。

ミンスク保険省のVassili Kazakovによれば、1992年のベラルーシのこどもの甲状腺癌症例数は世界平均の80倍に増加したという。

Lengfelderらによると、ベラルーシだけで既に、2001年終わりまでにこどもと若い大人の甲状腺癌は1000件を超えた。

2004年の報告書で、Okeanovらはベラルーシのこどもの甲状腺癌発症率は100倍に増加したと述べている。

Okeanovは 甲状腺癌は成人の間でも増加したと指摘した。チェルノブイリ事故以前、ベラルーシの成人の間で甲状腺癌は稀であった。事故後4年経った1990年、甲状腺癌は大きな増加を見せ、世界がこれまでに経験したことのないレベルに達した。1980年に、30才以上の成人の標準化した甲状腺癌発症率は100,000人に1.24であった。この率は、1990年に1.96、そして2000年に5.67に達した。

Pavel Bespalchukは2007年に、ベラルーシだけで事故後12,000人が甲状腺癌を発症したと、累計した。

Lengfelderらは、事故後から時間のたった現在、1986年にヨウ素で被曝した子供達がこれまでにないほどの数、青年期に達し、そして成人になるだろうと指摘している。彼らは癌を発症するリスクを負っている。そして彼らは一生このリスクから免れることができずに、成人そして高齢者のグループへ成長して行く。
-49-
一方、事故当時既に成人だった世代のがん発症率も増加した。事実、50-64才の成人グループの甲状腺癌発症率はチェルノブイリ以後1986-1998の13年間に、事故前の13年間1973-1985と比較して5倍となった。同様の比較で64才以上のグループでさえ、2.6倍となっている。

表:ゴメリ地区(ベラルーシ)地区の甲状腺癌
チェルノブイリ以前13年間と以後13年間の比較

                                                                                     (Increase とあるのは増加倍率)
(注:図をクリックすると拡大できます)

ベラルーシだけでも、2000年までに3,000件を越える甲状腺癌の過剰発症数があった。

ベラルーシの子供、若年層、成人の甲状腺癌の過剰発症数は事故以来10,000を越えた。

1998年に米国マサチューセッツ州ケンブリッジで 放射線と甲状腺に関する国際シンポジウムが 開かれた。これは欧州委員会、米国エネルギー省と米国厚生省の国立癌研究所によって催された。

-50-
1985-2004 ベラルーシ甲状腺癌症例数増加(黒:18歳以下の子ども;斜線:19-45歳までの大人;白:45歳を超える大人)


(注:図をクリックすると拡大できます)
このシンポジウムでそれまでの小児性甲状腺癌の症例の時系列データをもとにしてWHOの代表者達が提示したのは、ゴメリ地区の事故当時0-4歳だったすべての乳幼児の三分の一が生涯のいずれかの時点で甲状腺癌を発症するという予測であった。これは、ベラルーシのゴメリ地域だけで50,000人に相当する。事故当時青少年あるいは成人であった人口を含めて、すべての年齢層で予測を立てれば、100,000人が甲状腺癌を患うことになる。

ゴメリ地区で治療を受けた患者数も、甲状腺癌被害の拡大を示唆する。 Lengfelderらによると、ゴメリの甲状腺センターでは2002年までにすでに70,000人が広範囲な甲状腺治療を受けた。

1 comment:

  1. M. Matsuzaki1:55 am

    大人の甲状腺ガンは、10年生存率100%近いものが多いので、25年間で数千人のこどもが甲状腺がんで死亡したということは、チェルノのこどもたちの甲状腺ガンの悪性度が高いことを示していると思います。
    http://mymed.jp/disease_img.php?path=v7c/File/p3.png

    参考:ガンの病期分類:がんセンター資料】
    http://ganjoho.ncc.go.jp/data/hospital/cancer_registration/odjrh3000000hrgr-
    att/200707_09.pdf#search='病期分類 甲状腺がん 病理'
    (スライド11参照)TMNの前にpが付くと、手術などで病理学的検査を行ったうえで
    の病期分類(pathologicalのp)を指し示したことになります。

    ReplyDelete