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Saturday, March 11, 2017

原発事故6年経過にあたって:矢ケ崎克馬 6 Years After Fukushima Nuclear Disaster: Katsuma YAGASAKI

「311」6周年です。琉球大学名誉教授の矢ケ崎克馬氏が、3月11日、那覇市立牧志駅前ほしぞら公民館で行った講演の内容を紹介します。これと同様の内容の記事が、『琉球新報』文化面で、3月9日、10日2回にわたって連載されました。


原発事故6年経過に当たって

矢ケ崎克馬

原発事故以来6年。故郷の復興は被災者にとって切実な願いです。現在「原子力緊急事態宣言」が解かれない(高線量である)まま「復興」「帰還」が進められています。「避難指示解除区域」「居住制限区域」等が次々と解除され、指示区域外避難者(自主避難者)の避難を保証する住宅無償提供がこの3月で打ち切られます。復興のために放射能について語ることを「風評被害」とし、「食べて応援(農水省)」の大合唱が行われています。反面、放射能による健康被害は公的データとしては「一切ない」ことにされています。

この6年間の事故関連の事態の進み方をどのようにとらえるべきでしょうか?

事実を正直に伝え、「一人一人を大切にする」民主主義の政治・行政がどのように展開したでしょうか?


避難者のみなさんへ

避難者の皆さん
お元気ですか?
もうすぐ3.11六周年です。

皆さん、
たくさん苦労されましたね。
良く頑張りましたね。
本当にお疲れ様でした。

女性を中心として「命を守るため」の避難行動が、日本を変える力を育てつつあります。勿論男性も同じです。

政治的系列に従うのではなく、市民本位の新しいタイプの市民運動が生まれました。例えば毎週金曜日行動など、今も継続しています。オールXXというような課題に応じた市民中心の組織も生まれました。政策で一致する野党連合もつい最近35年ぶりに活力を取り戻しました。
自分の意志を自分で決める、新しい日本を導く原動力が働くから貴重です。

スピーディー(注:SPEEDI=緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム)を隠し、安定ヨウ素剤の投与を「パニックを招く」と中止し、「ただちに健康被害は出ません」、「100ミリシーベルト以下は、健康被害はありせん」、「100ベクレル/キログラムは安全です」等々と、避難させまいとする保革勢力の大合唱の中を、皆さんは避難を毅然として決意しました。

命を守るために自らがきっちりと結論を出し、避難に踏み切ったのです。

これはものすごい決断でした。いろいろなしがらみや経済事情や意見の不一致などがありました。

生活基盤を投げ捨てなければならなかった。家族も友達も地域も、絆を断ち切らなければならなかった。

そんな状況で命を守ることをしなければならなかった。それを自らの力でやり切った。その状況の中での決断の勇気に敬意を称します。命を守るための選択を自らの意志として決めたのです。

日本の夜明けを呼び覚ます本当に価値ある決断だったと思います。特に女性にとって周囲を押し切って行動する障壁はとても高かったと思います。女性の社会的地位をジェンダーギャップ指数に見ると、144ヶ国中、日本は111位です。この環境の中で良くやり切ったものです。

残留された方々も耐え難い苦渋をなめられたと思います。国が、「出費のかさむ避難」は許そうとしないで、年間20ミリシーベルトまでの重汚染地域内に留めた人々の内部被曝軽減の措置もしませんでした。

代わりに「安全」大合唱と「科学的に100ミリシーべルト以下は被害が無い」と、ICRP(国際放射線防護委員会)さえ言わない嘘まで大宣伝。「風評被害:放射能を語ること」を社会的に禁止してしまいました。

国が行う「国の都合の良い」支配に従うことは多くの苦痛を生みます。健康被害も生活維持も自己責任とされる中で、避難の願望も「絆」で覆われ、避難した人たちとの軋轢も生まれました。

今「帰還」「復興」の掛け声の中で長期的な被曝がますます気になります。

住民同士の「ぬちどぅ宝」の共通理解を作り出しながら、支え合う生き方ができ、国の棄民策を排除する力を作り上げる課題が残ります。

フクシマは「知られざる核戦争(矢ヶ崎克馬命名。核の被害隠しのために権力が民衆に対して行う戦争のこと:欧州放射線リスク委員会によれば7千万人の犠牲者が隠蔽されている)」の戦争遂行の真っただ中です。政治権力が住民の「大地を守る」「故郷を守る」悲願を利用して、「核の被害隠し」の核戦争を強行しています。棄民そのもの。その様相は「大東亜戦争」遂行の社会再現。「革新」政党と呼ばれている政党すら放射能能公害には目をつむり一言も言及しません。報道陣の統制も徹底されています。「復興」「風評被害」「食べて応援」一辺倒。まさに挙国一致です。昔の「お国の為に命を捧げます」は、今は「復興の為に犠牲はやむを得ない」。人と人が支え合う『絆』は、弱音監視、異端の排除に道を開きます。戦争のできる美しい国、国に従う美しい民を作り出すのが「知られざる核戦争」の目標であり成果なのです。

そんな中で、住民は命を守らなければならないのです。その願いを捨てさせてしまえばまさに「大東亜戦争の再現」です。

美しい故郷。懐かしいふるさと。
帰りたい。でも帰れない。

耐え抜いて、生き抜いて、ちゃんと人権を主張して。
棄民政策を打ち破るしかない。
逞しくいきましょう。


健康被害とそれを認知させまいとする政治

放射能についての基本的視点に絞り6年を振り返りたいと思います。

ーー放射能の影響としての健康被害はなかったのか?(事実確認)
「ただちに健康への影響は出ません」、「100ミリシーベルト以下の健康被害は他の健康被害に隠されてしまい、認められていません」等々の大宣伝がなされました。本当でしょうか?

(A)小児甲状腺がん
まず、福島県の小児甲状腺がんについて検討します。2017年2月20日に公表された最新の福島県民健康調査報告書によるとがん罹患者は合計184人になりました。

相変わらず「事故との関係は認められていません」という見解が発表されています。事故との関係はないという見解にはいくつかの理由が挙げられています。

①「潜伏期間が短すぎる」
米国立科学アカデミーによれば、小児甲状腺がんの最短潜伏期間は1年とされます。潜伏期間が4年としても半数は4年より短期で確率的に現れるものです。福島県内の小児甲状腺がんの発生は決して短過ぎることはありません。

②「チェルノブイリとフクシマでは被曝線量が違い過ぎる」
日本では放射線医学総合研究所が行った空間線量率測定用の簡易サーベイメータによる、1080 人のデータがもとになっています。この測定方法では科学的に甲状腺被曝線量を測定したとは認められないもので、福島は線量が低いということさえ根拠がありません。ウクライナでは約13 万人の子供が甲状腺の直接測定を受けているのと対照的です。日本では100ミリシーベルト以下は障害が現れないと神話を作り出し、前記のずさんなデータがすべて100ミリシーベルト以下であるのを根拠としています。しかしウクライナの小児甲状腺がんの半数以上(51.3%)が100ミリシーベルト以下であるという事実も、日本の方が被曝線量が低いという根拠を否定しています。

③「スクリーニング効果で普通なら発見されない潜在がん患者を見つけている」
そのように主張した山下俊一氏は自らの調査結果に反する「虚言」を弄しているのです。彼自身の調査によると、チェルノブイリ事故の時に生まれていた小児と、事故後に生まれた小児、それぞれ1万人ほどをスクリーニング調査した結果、甲状腺がんの患者が前者では31人、放射性ヨウ素で被曝していない子供はスクリーニングしても患者はゼロだったことを報告しています(1998年)。この結果は福島のがん患者発見がスクリーニング効果だということを完全に否定しています。

さらに、性差でも事故の影響を裏付けられます。自然発生の甲状腺がんは女性の方が男性より5倍程度多いのに対してチェルノブイリも福島も2倍以下の比率です。性差について私の解析では、放射線起因要素がおよそ4分の3以上の比率であることが結論付けられます。男女比は放射線によるがん発生であることを裏付けています。

また、世界の学会では福島の甲状腺がんが異常多発であることを認めています。

以上、科学的には事故との関わりが十分示されています。誠実な行政であるならば、予防医学的な観点から日本の全小児を対象に検査と治療を国と企業の責任で行うべきです。

(B)厚労省の疾病別死亡統計
全疾病中2010年以前の経年変化を基準として、2011年以降の死亡数が増加している疾病の数はほぼ40%です。特に精神神経科関係ではアルツハイマー、認知症が著しい増加を示しています(図1)。
図1
脳細胞や神経細胞は新陳代謝の無い組織として知られていますが、放射線に当たり電離(組織の切断)を受け、病状が悪化し死にいたったと理解できます。年あたりの増加率は2015年で28%が予想より増加しています。この事実は事故などの多くの社会現象と関連していると見なせます。厚労省人口動態調査の異常減(年十数万人異常減少)も恐ろしい数値です。

(C)病院患者数の異常増加
患者数の異常増加が各種統計で示されます。日本難病情報センターのデータでは2011年以降患者数は加速的に増加しています。また、東京都の病院患者数はそれ以前に比べて2011年は飛躍的に増加しています。2011年以降の手術数の増加も各種統計で確認されます。

(D)健康が維持できる汚染基準
事故前の食材の汚染状況は米、根菜、牛乳、水がいずれも0.012以下、魚類が0.09(ベクレル/キログラム)です(図2)。
図2
今の流制限基準が100で健康が維持できる基準ではありません。この基準で全国的な健康被害が事故後異常に増加したのです。残念ながら、強度な初期土壌汚染の有った地域の陸・水の産物には今なお広範囲に汚染が認められます。
チェルノブイリ事故では6年経過後に各種の健康被害が急増しています。

「ぬちどぅ宝」を貫くには今後もずっと日常の食材選びが不可欠です。


原子力緊急事態宣言

事故直後に原子力緊急事態宣言が発せられています。その実態と背後にある国際「核」ロビー、およびアベノミクスの無謀な核産業存続のための最稼働・原発輸出、東芝核部門の破たん等について論じます。また、原子力緊急事態宣言下の事故処理と、背後にある国際原子力ロビーの功利主義的哲学とアベノミクス核産業維持の無謀さを説きます。

現在日本は「原子力緊急事態宣言」の下にあります。緊急事態宣言の目的は「原子力災害の拡大を防止する」ですが、現実は真反対の施策が強行されました。住民と環境を保護する一切の法律が無視されました。国と原子力産業の都合の良いままに基準を設定した「反人権」の実施体制です。


緊急事態宣言

(A)人格権を無視
法律では公衆の被曝限度は年間1ミリシーベルトです。しかし年間20ミリシーベルトが基準とされました。避難の権利も認めず、「風評被害」、「食べて応援」で全国民強制被曝の体制です。

(B)環境保護
法律では核廃棄物再利用基準は100ベクレル/㎏だったものを、8000ベクレル/㎏とされました。この基準で除染土等を公共事業に回せ、と政府が放射能拡散を強制します。

(C)メルトダウンした炉心処理(原子力災害拡大防止の根幹)
メルトダウンの核燃料封じ込めに対しては全くお手上げです。強烈な放射能が存在するなど初めからわかり切ったことでしたが、「安上がり」な手立てを繰り返し、費用を増大させています。未だに炉心の放射能物質は空中に、水中に、海に、垂れ流されっぱなしで環境を破壊し続けます。石棺という言葉さえ禁止状態です。チェルノブイリでは7か月後に石棺で事故原子炉を封じ込めました。

(D)放射能汚染に対する数値操作
①放射能汚染の公式データであるモニタリングポストの表示値は実際の52%しかありません。②土壌汚染を反映した吸収線量等は人の行動と無関係に「環境量」として示すべき量です。ところが、人が屋内・屋外時間を仮定した「生活依存量」に変えられ、環境汚染値の60%しか計上しない数値処理が徹底しています。上述①、②の操作によりわずか約30%にしかならない値が汚染を示す公式被曝線量とされます。さらに架空の線量である「実効線量」などにより過小評価の数値操作がなされました。
チェルノブイリ周辺国はくまなく初期土壌汚染測定を致しましたが、日本は土壌の初期汚染マップすら作らずに放射能影響を福島だけに限定しました。


国際原子力ロビー 

(A)国際原子力機関(IAEA)
核支配体制維持の国連重要機関IAEAはチェルノブイリ事故の時に、周辺国が行った巨大な財政支出を伴う住民の放射能からの保護(チェルノブイリ法)や、放射能に関する「情報統制」と医師や専門家の「権力的統制」に失敗したことを反省しています(1996年IAEA会議)。避難させるな、報道を統制せよ、健康被害を認めるな、がそれ以後の事故が起きた場合の処理基準とされました。そのためにIAEAは福島に事務所を開設しました。

(B)国際放射線防護委員会(ICRP)
原子力緊急事態宣言の内容に国際的「認可」を与え、全面的棄民の指令を出すのはICRPです。

ICRPは防護3原則の第1原則に「正当化」をうたいます。「活動が、害よりも大きな便益をもたらす」時にその活動が正当化される、という内容です。「原子力発電は、人を殺しても良い」と正面切って開き直っているのです。原子力産業は倫理的にも民主主義否定を公認させているまさに「特殊産業」です。

ICRPはチェルノブイリの反省の上に〝次に原発事故が起きたらこうしなければならない〟という功利主義に基づく事故管理指針を完成させました(2007年勧告)。

2007年以前の被曝状況は「線量拘束値」(被曝限度値)は年間1ミリシーベルトの「計画被ばく状況」だけでした。

これを2007年勧告で、「緊急被曝状況」(事故などが生じた際の被曝状況)と「現存被曝状況」(事故後の被曝状況)を追加し、「参考レベル」(被曝限度線量)として年間20ミリシーベルトから100ミリシーベルトの被曝線量を勧告しました。事故に際しては大量被ばくを住民に押し付ける「国際基準」を立案したものです。これが原子力緊急事態宣言の基本指針となりました。


核産業の崩壊過程

原発事故の影響と根強い反原発運動の全世界的な発展によって核産業の未来が閉ざされてきています。各国の原発依存も減少の一路をたどっています。

米国では1979年のスリーマイル島事故以降、約30年間、新設がありませんでした。世界のプラントメーカーは半減しています。最近ウラン濃縮工場も倒産しました。

東芝は福島第一原発事故の責任主体(2号機、3号機政策)です。事故原因の解明すら途上である状態で、原発推進を止めず無謀な核固執政策で破たんしています。政府は原発メーカー救済のための危険な原発再稼働と原発輸出は止めるべきです


今必要な対策

1. 原子力緊急事態宣言を解除し、法律どおりの健康と環境保護を実施させる。移住の権利を認め生活の場を自主的に選ぶ経済的保障を行う。
汚染地住民保護の保養、非汚染食料の給与等を政府の責任で行う。
正確な情報を誠実に住民に伝える。

2. 住民本位の予防医学的立場で健康診断と適切な治療を保証する。

3. ICRPなどの棄民を原理とする体系から離脱し、放射線被曝の誠実な科学と最新のデータに基づき、放射線防護対策を根本から見直す。
食料汚染基準を事故前の汚染状態:0.1ベクレル/㎏以下を基準視点として設定する。

4. これ以上の被曝を避ける。市民は毎日の食材による内部被曝を防ぐ努力をする。

5. 一人一人の人格権を保証する誠実な判断から核兵器と原発は廃止する。原発産業救済のための無謀な原発再稼働と原発輸出を止めさせる。


*沖縄に於ける避難者の援助
私どもは「つなごう命の会:原発事故避難者に公的支援を求める会」で避難者支援を「原発事故被災者に人権の光を」をスローガンに掲げ、沖縄県支援団体等に訴えてまいりました。沖縄県は避難者受け入れ先としては日本で初めて、指定区域外避難者の沖縄継続避難者全員に対して、家賃補助の予算を次年度予算案に計上いたしました。沖縄県の英断に感謝いたします。また沖縄東日本大震災支援協力会は、沖縄独自の支援「ニライカナイカード」は終止いたしますがその代わりに全世帯に商品券をサービスいたします。民医連、医療生協は沖縄協同病院で「医療費の窓口支払いゼロ」と「避難者健診」を行ってくださっていましたが、来年度も継続してくださること決定してくれました。
皆様のご支援と諸組織のご支援に感謝いたします。

やがさき・かつま
1943年生まれ。長野県出身。琉球大学名誉教授。専門は物性物理学。「つなごう命の会・原発事故避難者に公的視点を求める会」代表。著書「隠された被曝」など。

関連投稿
矢ケ崎克馬「隠される内部被曝―福島原発事故の実相」(2016年6月9日)

Asia-Pacific Journal: Japan Focus
Yagasaki Katsuma: Internal Exposure Concealed: The True State of the Fukushima Nuclear Power Plant Accident

Thursday, June 09, 2016

【転載】矢ケ崎克馬「隠される内部被曝―福島原発事故の実相」Yagasaki Katsuma: Internal Exposure Concealed - The True State of the Fukushima Nuclear Power Plant Accident

3月16-18日『琉球新報』に掲載された、琉球大学名誉教授矢ケ崎克馬氏の3回シリーズ記事「隠される内部被曝―福島原発事故の実相」(上中下)を許可を得て転載する。この記事は参考資料を示すために文末注をつけた英語版が The Asia-Pacific Journal: Japan Focus に掲載されている。







Friday, March 11, 2016

311の五周年、福島県が新聞に出した全面広告を見て―「誇張された福島」は「そこにはありません」なのか!!!On the 5th anniversary of the onset of Fukushima nuclear crisis

今日(3月12日)東京新聞に福島県によるこのような全面広告が出ていた。

これは一言でいえば「福島を原発事故の場所というイメージだけで見ないでください」という広告なのだと思う。

原発の被害を隠したい人たちがよく使う言葉を借りれば、「福島県への風評被害をやめてください」というメッセージにも取れる。

しかしこの広告を見て思う。

311の5周年という大事な節目に、福島県が県民の税金を使って発するメッセージが、これなのかと。

あまりにも情けないのではないかと。

未曾有の原発事故が起こった場所として人類の歴史に長く刻まれざるを得なくなった福島に、いろいろな人間の姿があるのはそうだと思う。汚染のひどいところも軽いところもある。

しかし311の記念日だからこそ、動かしがたい厳しい現実から目をそらすのではなく、直視するメッセージであるべきなのではないか。

原発事故のため捜索活動もできず、沿岸部で放射性物質にまみれたままの幾多の死者たちがこの広告を見たらどう思うだろうか。

甲状腺がんをはじめとするさまざまな健康障害に苦しむ人たちがこの広告を見たらどう思うだろうか。

もちろん私にその人たちの代弁をする資格はない。

「いろいろな声によって誇張された福島はそこにはありません。」

これが一番言いたかったことなのだろう。

原発事故でばら撒かれ、いまも川、海、土壌、空気にある放射性物質のことをいうことを「誇張」と言っているのだろうか。

日本の首相は「誇張」どころか、「アンダーコントロール」と嘘をついてオリンピックまで招致した。東京を含む関東全域にも深刻な汚染地域はあるのに。

放射性物質のことを言うのが、制御とは程遠い原子炉のことを言うのが「誇張」だとしたら、

そんな「福島」は

「そこにはありません」なのか。

ないのか。

ないのか!!!!

ないのか!!!!!!!


★☆★


鎌仲ひとみ監督の新作『小さき声のカノンー選択する人々』を強く勧めます。

上映スケジュールなど情報はここ。 http://kamanaka.com/canon/ 

原発関連の数々の訴訟を手がける河合弘之弁護士が監督した映画『日本と原発 4年後』も強く推薦します。http://www.nihontogenpatsu.com/



放射性物質による被曝に焦点を当てた前者と、原発の政治的経済的技術的不合理を表現しきった後者は、お互い補完し合う秀作であると思います。

カナダ西海岸で、311の日が終わる前に。

@PeacePhilosophy 乗松聡子

Tuesday, November 04, 2014

村上春樹、毎日新聞によるインタビューで日本の「自己責任の回避」傾向へ苦言(海外メディアが注目!)Author Murakami Haruki Criticizes Japanese for Evading Responsibility for WWII and Fukushima

11月3日毎日新聞に掲載された作家・村上春樹氏の単独インタビューのことをAFP通信の英語記事(11月4日)で知り、日本人の戦争や福島の核事故についての「責任回避」について強調しているので注目した。AFP記事のタイトルは、
Murakami Haruki

Author Murakami chides Japan over WWII, Fukushima responsibility
作家のムラカミ、第二次大戦とフクシマへの責任について日本を注意

日本の英字新聞、The Japan Times にも AFP-JIJI 配信ということで

Murakami chides Japan for ignoring role in WWII, Fukushima disaster
ムラカミ、第二次大戦と福島の惨事における役割を無視していると日本に注意

と同様の見出しをつけている。

AFP記事は、
Japanese writer Haruki Murakami has chided his country for shirking responsibility for its World War II aggression and the Fukushima nuclear disaster in an interview published Monday.日本の作家、村上春樹は月曜に発表されたインタビューで、第二次世界大戦における侵略と福島の核惨事について責任回避している、と自国に対する注文をつけた。
で始まり、日本人が自分たちを戦争の『被害者』だと思っていること、それでは中国や韓国が日本の戦時侵略行為に対して恨みを持つのも当然である、日本人は自分たちが加害者でもあったことを忘れがちである、フクシマについても全員が地震と津波の被害者だということになって誰も責任を取っていないといった発言をしていたと知り、これこそ今日本人が耳を傾けるべきメッセージではないかと思い毎日新聞のウェブサイトで探したら、簡単な紹介が出ていた。

村上春樹さん:インタビュー 楽観を目指す姿勢「若者に伝えたい」
http://mainichi.jp/shimen/news/20141103ddm001040190000c.html

この紹介では最後に、「来年で70年となる『戦後』に関連し、慎重な表現ながらも、戦争と原発事故に共通する日本の問題として『自己責任の回避』を指摘した」とあるが、タイトルからして随分異なるイメージだなと思った。原文は紙面でしか見られないというので原文を取り寄せた。毎日新聞11月3日朝刊の8面に特集記事が出ており、本人の文学者としてのヒストリーや海外での評価などについて「『孤絶』超え 理想主義へ」という見出しがついており、ページの左側に別枠で「日本の問題は責任回避」というセクションが設けられていた。インタビュアーの「来年は戦後70年。作中で日本の戦争を描くこともあった作家は何を思うか」という問いに対し、
・・・僕は日本の抱える問題に、共通して「自己責任の回避」があると感じます。45年の終戦に関しても2011年の福島第1原発事故に関しても、誰も本当に責任を取っていない。そういう気がするんです。例えば、終戦後は結局、誰も悪くないということになってしまった。悪かったのは軍閥で、天皇もいいように利用され、国民もみんなだまされて、ひどい目に遭ったと。犠牲者に、被害者になってしまっています。それでは中国の人も、韓国・朝鮮の人も怒りますよね。日本人には自分たちが加害者でもあったという発想が基本的に希薄だし、その傾向はますます強くなっているように思います。原発の問題にしても、誰が加害者であるかということが真剣は追及されていない。もちろん加害者と被害者が入り乱れているということはあるんだけど、このままでいけば「地震と津波が最大の加害者で、あとはみんな被害者だった」みたいなことで収まってしまいかねない。戦争の時と同じように。それが一番心配なことです。
と答えている。毎日新聞は「慎重な表現」としているが私には「慎重」どころか非常に直截的な批判に聞こえる。特に、日本が戦争における加害者であったという発想が希薄であるという傾向が「ますます強くなっている」という部分に注目したい。昨今、朝日新聞の誤報訂正に便乗して日本軍「慰安婦」(性奴隷制度)の歴史自体を塗り替えてしまおうという動きが安倍首相をはじめとする政府、マスコミや一般社会に広範に見られるが、村上氏はこのような動きを念頭に置いてこの発言をしたのではないかと思う。

冒頭のAFP報道はシンガポールを代表する新聞 Strait Times など世界中に発信されており、世界中のメディアから村上氏の「日本の戦争責任回避」発言が注目されている。韓国の中央日報「村上春樹『日本、戦争を起こして責任回避』」の報道はヤフーニュースにも紹介されている。東亜日報は論説文「村上春樹と塩野七生」において、村上春樹の発言を評価し、同じくノーベル賞作家で、日本の加害責任を重視し安倍氏を「憲法への畏れを持たない珍しい人間」と非難した大江健三郎などともに、「過去へ回帰しないよう内部でバランスを取る良心の声がさらに大きくなることを希望する」と論じた。

インタビュー記事全体を見ても、世界的な作家の村上氏が今の日本に対し苦言を呈したという意味ではやはりこの発言の重要度は突出している。「慎重」になっているのは村上氏ではなくこのインタビューの要の部分を日本国内で抑えめに報じている毎日新聞そのものではないかと思う。@PeacePhilosophy





Tuesday, April 22, 2014

What Happened to Japan's Plan for "Zero Nuclear Power by Year 2030"? - A column by SAITO Minako 斎藤美奈子コラム(東京新聞)英訳

Here is an English translation of Satito Minako's column that appeared in Tokyo Shimbun on April 16. 4月16日『東京新聞』の斎藤美奈子氏による「本音のコラム」の英訳です。

The Focus of Our Attention

By SAITO Minako, 
Translation by Yayoi KOIZUMI

Tokyo Shinbun, April 16, 2014,

From Column of Hon’ne (true inner feelings)

“Nuclear energy is an important base-load power source”; “We will continue to restart the nuclear power plants that meet regulation standards.” The basic energy plan, approved by the government in a cabinet meeting on April 11th, made a malevolent return  to the state of energy plan to the level similar to what it was prior to 3.11.  The content of the new plan makes you stop and say, “are you serious?” 

Whatever happened to the policy put together two years ago, by the Noda Yoshihiko administration (of Democratic Party of Japan), touting to “make operation of nuclear power plant to zero within the 2030s”? That particular policy was created legitimately, having gone through proper channels of hearings, public comment period, and use of deliberative poll to gauge public opinions.

Even though it was its own party’s policy which was rejected by the Abe LDP administration’s new plan, the Democratic Party has not guts to fight; the party representative Kaieda Banri failed to express a clear opposition against the plan as he meekly called it to be “impossible to evaluate.”  Worse, on April 4th, in the lower house, the party voted yes to the Nuclear Power Agreement Approval Plan (原子力協定承認案), which will allow Japan to export nuclear energy. This, is the kind of attitude that drives away even more supporters from the party, hmm-hmm.  

About the Fukushima nuclear accident, the new plan says: “we would like to face steadfastly with the heartaches of those who have been affected by the accident.”  Is this an emotional sort of issue for them, one you can conveniently put aside only by acknowledging “the heartaches of the victims”?!

Even worse: on April 11th, to the inquiry by the former Prime Minister Kan Naoto, about the basis for their claim for “the strictest standard in the world” applied for the safety and restart of nuclear power plants, a person in charge from the Energy Ministry responded: “I am unable to answer the question.”

While such issues of grave importance were being discussed in the Diet, our media instead was making a hoopla about Ms. Obokata Haruko’s STAP cell’s  existence. (1)

That’s science, but these nuclear issues are also science. Both are science. Ask yourself: which one should we focus our attention to?
 
SAITO Minako (斎藤美奈子, 1956-) - Saito is an award-winning literary critic, feminist writer, prolific author.  More information about Saito is available on a Japanese-language website managed by her publishing agent and also on Japanese Wikipedia.
Yayoi KOIZUMI is a Ph.D. candidate in the field of East Asian Literature, Religion, and Culture at Cornell University. She is working on a dissertation on the representations of people of African
descent in Japan since the WWII. She can be contacted at yk234 at cornell.edu.
Note
(1) Obokata Haruko, a female scientist, is currently under media fire for the charges of perjury in one of her high-profile work on STAP cell. See: https://en.wikipedia.org/wiki/Haruko_Obokata and https://en.wikipedia.org/wiki/Stimulus-triggered_acquisition_of_pluripotency_cell



 

Wednesday, April 02, 2014

福島の検診で発見された小児甲状腺がんの男女比は、自然発生型よりもチェルノブイリ型・放射線被ばく型に近い:松崎道幸医師

北海道深川市立病院の松崎道幸医師からの投稿です。 以下松崎氏より。
福島甲状腺がんが被ばくと関連するかどうかを、性比(男女比)で分析したファイル を作りました。  
被ばくと関係のない「自然発生」甲状腺乳頭がんは、10代では、男性の5倍以上女性 に発生します。(米国NCIのレポート) ところが、チェルノブイリ型では、2倍程度、医療被ばく型では1倍程度です。 福島の甲状腺がんは1.1~1.6倍ですので、これまでに発見された福島の甲状腺 がん(及び疑い例)は、性比から言うと、自然発生ではなく、チェルノブイリ型、医 療被ばく型に極めて近いのです。 もちろん、いろいろな留保は付けていますが、福島の放射線被ばくとの関係を慎重か つしっかりと監視してゆく必要があると思っています。             
 (強調はブログ運営者による)
 
以下でダウンロードできます。
 
PPT版
http://yahoo.jp/box/gWkAQe
PDF版
http://yahoo.jp/box/8tV1B3

松崎医師は、311直後から、重要な論考や翻訳を当ブログに寄稿しつづけてくれています。過去の関連投稿(14件)はこちらをクリックしてください


















Sunday, March 16, 2014

歴史は復讐する:ノーム・チョムスキーが語る、日本、中国、アメリカと、アジア紛争の脅威

 言語学者ノーム・チョムスキーが3月初めに講演のため来日した。彼は「沖縄の海兵隊基地建設にむけての合意への非難声明」の呼びかけ人の一人でもある。ここに紹介するのは来日に先立って行われたインタビューである。英字紙「ジャパン・タイムズ」に2月22日掲載されたものをインタビュアーのデイヴィッド・マクニール氏が加筆し、前文をつけて「アジア太平洋ジャーナル:ジャパンフォーカス」に3月2日掲載されたものの和訳を紹介する。

The Revenge of History: Chomsky on Japan, China, the United States, and the Threat of Conflict in Asia
http://www.japanfocus.org/events/view/211

(翻訳:酒井泰幸)

ノーム・チョムスキーと、デイヴィッド・マクニールの息子

歴史は復讐する:ノーム・チョムスキーが語る、日本、中国、アメリカと、アジア紛争の脅威


ノーム・チョムスキー

デイヴィッド・マクニールとの対談

前文(デイヴィッド・マクニール)
 1930年代から40年代にかけて、政治的な立場のまだ定まっていなかった若き日のノーム・チョムスキーが大きく影響を受けたのは、世界恐慌と、世界戦争に向けて容赦なくゆっくりと滑り落ちていくように見える情勢であった。あらゆる側面で、好戦的愛国主義と、人種差別主義、残虐性が、堰を切ったようにあふれ出したことに彼は狼狽したが、住んでいたフィラデルフィアから見るかぎりでは、アメリカは日本人に対する敵意が特別の高みに達するのを差し控えていたように見えた。アメリカ政府が1945年の夏に広島への原爆投下をもって空襲による一般市民の大量殺戮に終止符を打ったとき、16歳だった彼は、彼の周りで繰り広げられる祝賀会に深い疎外感を覚え、その喧噪を離れて近くの森に歩み入り、ひとり喪に服した。「このことは誰にも話せませんでしたし、他の人たちの反応を決して理解することはできませんでした」と彼は語った。「私は完全な孤立を感じました。」 
 その後の20年間で、チョムスキーは輝かしい学問的業績をものにし、常識破りの学説をいくつも発表して言語学の研究を一変させた。ベトナム戦争の間に、彼は不承不承ながら別の顔を持つようになり、アメリカ外交政策の容赦ない批評家として、世界中に知られるようになった。以来、彼が知的生活のほとんどを費やしてきたのは、アメリカの「まやかしの自己像」と彼が呼ぶものや、幾重にも重ねられた自己弁護とプロパガンダを、剥ぎ取っていくことだった。それらは、アメリカが地球上いたる所で行う露骨な権力と利潤の追求に用いているものだと、彼は言う。チョムスキーは多くの主流派コメンテーターとは異なり、ベトナムの泥沼は単なる逸脱ではなく帝国拡大の避けられない結果だと見ていた。 
 連合国が戦後に東京とニュルンベルクで行った戦犯裁判の法律が、もしも公正に適用されたなら、「戦後アメリカの大統領は全員絞首刑だったはずだ」と、チョムスキーは彼の最も有名な宣言の一つで語った。この大統領免責の先例は彼の青年時代に作られた。東京への焼夷弾爆撃と、広島・長崎への原爆投下は戦争犯罪なのだが、それはただ我々の戦争犯罪でなかったというだけなのだと、彼は指摘した。「戦争犯罪とは、こちら側が向こう側に対してはどんな時でも問えるが、向こう側がこちら側に対しては問えない罪のことである。」 
 今年85歳で、今も世界中で演説家として引く手あまたのチョムスキーが、先ごろ来日した。折しも、第二次大戦の歴史の亡霊が再び出現し、危険なまでに不安定になった日中関係を脅かしている。安倍晋三首相は、日本の戦後政治の枠組みの変革を推し進める意図を持っていることを示唆した。平和憲法を再解釈する試みは、日本の戦争犯罪の歴史についてのダブル・スピーク[印象操作のための婉曲語法]の乱発と歩調を合わせたもので、中韓その他のアジア諸国を憤慨させた。東アジアで再び戦争が起きるという、かつては考えられもしなかった可能性が、いま主流の議論の中に入ってきた。その可能性はまだ遠くにあるように見えるが、チョムスキーが東京へ出発する前に行われたこの対談で指摘するように、「歴史が教えているのは、恐ろしい破壊能力を持つ国家の場合は特に、火遊びは賢明な方針ではないということなのだ。」彼は別の道についても思いを巡らせる。衰退しつつあるとはいえ依然として危険なアメリカの軍事力に、べったりと依存することから脱却した、平和で繁栄するアジアの基礎となりうる、躍動する地域経済の発展である。


マクニール 日本とのつながりについて聞かせてください。

チョムスキー 私は1930年代に日本が満州国と中国ではたらいた凶悪な犯罪のことを読み、それ以来日本に興味を持ってきました。1940年代はじめに、10代の若者だった私は、人種差別主義的かつ好戦的愛国主義的な反日プロパガンダのヒステリー[病的興奮]に、すっかり顔色を失いました。ドイツ人は、邪悪だとはいえ、いくらかの敬意をもって扱われていました。彼らは何といっても金髪のアーリア人種で、我々の想像上の自己像と同じでした。日本人は単なる害虫で、蟻のように踏み潰されるべき者たちでした。日本の都市の焼夷弾爆撃についての報道から十分に認識できたことは、多くの意味で原子爆弾よりも悪質な、重大な戦争犯罪が進行中であるということでした。



マクニール 広島への原爆投下とそのアメリカ人の反応にあまりの衝撃を受けたため、その場を離れて独りで喪に服さなければならなかったという話を、私は以前お聞きしましたが…、

チョムスキー そうです。1945年8月6日に、広報スピーカーで広島への原爆投下が発表されたとき、私は子供の夏キャンプにいました。みんなはそれを聞きましたが、その後すぐに野球や水泳などの活動に戻っていきました。一言のコメントも無く。私は、その恐ろしい出来事とそれへの無反応の両方にショックを受け、ほとんど言葉を失いました。それで?ジャップがもっと焼け死んだのさ。アメリカだけが原爆を持っているから、それはいいぞ、僕たちは世界を支配できて、みんなが幸せになるんだ。

 私は強い嫌悪感を持ちつつも戦後処理を見続けていました。私が現在していることを、もちろん当時の私が予見することはできませんでしたが、愛国的なおとぎ話を打ち崩すのに十分な情報は得られました。私が初めて日本に旅したのは50年前のことで、妻子と一緒でした。個人的に「ベ平連」(ベトナムに平和を!市民連合)の人々に会いはしましたが、純粋に言語学のための訪日でした。それ以来何度も日本に来ていますが、いつも言語学の研究が目的でした。世界が燃えさかっているときでさえ、会話やインタビューが言語学の関連分野だけに絞られているというのは、私が訪れた多くの国々の中で日本だけだという事実は、私にとって本当に衝撃的なのです。



マクニール あなたは今回、歴史的転換点となりうる時に来日されます。政府は、日本は国外の脅威に「もっと柔軟に」対応しなければならないと主張して、日本の60年にわたる平和主義的な姿勢に対し重大な挑戦を開始する準備をしています。中韓両国との関係は毒々しいものになり、戦争さえも話題に上るようになりました。私たちは憂慮すべきなのでしょうか?

チョムスキー 断じて憂慮すべきです。平和主義的な姿勢を捨てるのではなく、世界を鼓舞するモデルとして日本はそれを誇りに思うべきですし、率先して「戦争の惨害から将来の世代を救」うという国連の目標を支持するべきです。この地域が直面する困難は本物ですが、必要なのは政治的和解と平和的な関係の確立に向けたステップなのであって、そう遠くない昔に破滅的だと判明したような政策への回帰ではありません。



マクニール でも、具体的にはどのように政治的和解を達成できるのでしょうか?私たちがアジアで直面している状況は、国家主義がぶつかり合い、非民主的国家が台頭し、その軍事支出は不透明で、衰退しつつある大国との関係で今に何か起こるにちがいない。これが意味するものについてはますます恐ろしい。このような状況での歴史的前例は、良いものではありません。

チョムスキー ここに本当に重要な問題があるのですが、この質問は少し違う観点で整理すべきだと思います。中国の軍事支出はアメリカが注意深く監視しています。実際に増大していますが、アメリカの軍事費に比べればほんの僅かですし、アメリカ側には同盟諸国の軍事支出もあります(中国にはありません)。じっさい中国は、太平洋での対中封じ込めラインを突破しようと目論んでいます。それが中国の通商と太平洋への自由な出入りに欠かせない水域への中国の支配を制限しているからです。これが戦闘の火種となりうるのですが、その相手は自国の権益がからむ地域勢力もありますが、主としてアメリカです。もちろんアメリカは、自国に僅かでも匹敵し、さらに世界支配を主張するような国の存在を考慮に入れることは決してありません。

 アメリカは「衰退しつつある大国」で、衰退は1940年代後半から続いているのですが、現在も覇権国として並ぶものはありません。アメリカの軍事支出は世界の他国を全部合わせたものに相当しますし、技術も遙かに進んでいます。何百もの軍事基地を世界中に張り巡らせ、世界で最も膨張的なテロ作戦を実行するなど、他の国なら夢見ることさえできないでしょう。オバマの無人機が行う暗殺作戦とはまさにそういうことなのです。そしてもちろんアメリカには、侵略と政権転覆を行ってきた残忍な歴史があります。

 これらが、政治的和解を模索するうえで本質的な条件とすべきものです。具体的には、中国の国益はこの地域の他国と同様に認知されるべきです。しかし覇権国の支配を受け入れることは正当化できません。



マクニール 日本の「平和主義」憲法の問題として認識されるものの一つは、それがあまりにも事実と一致していないということです。日本はアメリカの核の傘のもとで行動し、何十もの米軍基地と何万ものアメリカ兵を国内に擁しています。これは憲法9条の平和主義的な理想を実現したものと言えるでしょうか?

チョムスキー 日本の行動が正当で合憲な理想と矛盾するかぎり、行動を変えるべきです。理想を変えるのではありません。



マクニール 安倍晋三首相が二度目の首相の座へ返り咲いて以来の動きは追っていますか?彼を批判する人々は彼のことを超国家主義者と呼んでいます。支持者たちによれば、教育基本法と、1947年の平和主義憲法、日米安保条約という、アメリカの戦後占領の産物である時代遅れとなった日本の3つの憲章を、彼は時代に合うように更新しようとしているだけだと言うことになります。あなたはどうご覧になりますか?

チョムスキー 日本は、ラテン・アメリカなどの国々に続いてアメリカの支配を払拭し、世界でのより自立した役割を追求するほうが有意義です。しかし、安倍の超国家主義(私はこの言葉が正確だと思うのですが)とは実質的に反対の方法で自立を追求するべきです。特に平和主義憲法は、固守すべき占領の遺産です。



マクニール ナチス・ドイツと中国の台頭を比較して、どう思われますか?日本の国家主義者がこのような比較をするのをたびたび耳にしますが、最近フィリピン大統領ベニグノ・アキノも同様の発言をしました。中国の台頭は、しばしば日本が軍事力の自制を解くための理由として語られます。

チョムスキー 中国は台頭しつつある勢力で、「屈辱の世紀」を打ち捨てて地域・世界情勢に影響力を及ぼそうとしています。いつもながら、このような展開には負の側面や、時には脅威となる側面があるものです。しかしナチス・ドイツにたとえるのは馬鹿げたことです。2013年末に発表された国際世論調査で、どの国が「世界平和にとって最大の脅威であるか」という質問に対し、アメリカは他のどの国よりもずっと上位にランクされ、中国の4倍の得票でした。そのことに注目してはどうですか。この判断には確固たる理由があります。いくつかは先に述べました。それでも、アメリカをナチス・ドイツになぞらえるのは完全に馬鹿げたことでしょうし、なおのこと中国には該当しません。中国は、暴力や政権転覆などの介入に訴えることがずっと少ないのです。

 中国とナチス・ドイツの比較は全くヒステリー[病的興奮]です。アメリカが第二次世界大戦後にイギリスから世界の支配者という役割を引き継いで大幅に拡大して以来このかた、世界中で行ってきていることを、ほんの僅かでも日本の読者は知っているのだろうかと思います。



マクニール 中国・日本・韓国を中心に絡み合いアジア全体へと拡がる貿易の力学に基づいて、アジアの地域主義が出現する可能性を予見する人々もいます。このような取り組みがアメリカの覇権と国家主義の両方に打ち克つことができるとしたら、それはどのような条件の下でということになるでしょうか?

チョムスキー それは単に可能というだけでなく、もう存在しているのです。近年の中国の急成長は周辺の産業先進国からの高度な部品や設計といったハイテク支援に非常に大きく依存しています。そしてアジアの他の地域もまた、このシステムに結び付きつつあります。アメリカはこのシステムの重要な一部分で、西ヨーロッパもそうです。アメリカは、高度な技術を含む生産設備を中国に輸出し、最終製品を輸入します。どちらも膨大な規模です。中国での付加価値はまだ低いですが、それは中国が技術の段階を登るにつれて増加していくでしょう。適切に対処するなら、これらの展開は、深刻な紛争を避けたいのであれば必須となる、全般的な政治的和解に結びつくことでしょう。



マクニール 最近の尖閣諸島を巡る緊張で、中国と日本の間に軍事紛争の脅威が高まりました。論評者の多くは、その結果の膨大さと、2つの経済大国を結びつけている金融・貿易の深い繋がりを考えれば、まだ戦争にはなりそうもないと考えています。あなたはどのようにご覧になりますか?

チョムスキー 現在起こっている対立は極めて危険です。係争中の地域に中国が防空識別圏を宣言したこと、アメリカがこれを即座に侵犯したことも同様です。恐ろしい破壊能力を持つ国家の場合は特に、火遊びは賢明な方針ではないということを、歴史は確かに我々に教えてきました。小さな事件が急速にエスカレートし、経済的な繋がりなど圧倒してしまうかもしれません。



マクニール この全てにおいて、アメリカの役割は何でしょうか?アメリカ政府は中国との紛争に引き込まれたくないことは確かなように見えます。オバマ政権は、安倍の歴史観と、日本の歴史修正主義の要である靖国神社に彼が参拝したことに気を害しているとも聞いています。しかしアメリカを「信頼できる仲介者」と呼ぶことなど到底無理ですね…。

チョムスキー 無理です。アメリカが中国を軍事基地で包囲しているのであって、その逆ではありません。アメリカと中国が互いに相手の姿勢を自らの基本的権益に対する脅威と認識する状態を、アメリカの戦略分析家は、この地域の「古典的な安全保障のジレンマ」と表現しています。問題なのは米国が、自国直近のカリブ海やカリフォルニア沿岸の海域ではなく、遠く離れた中国沿岸海域までをも支配しようとしていることです。アメリカにとっては、世界支配が「核心的権益」なのです。

 鳩山首相がアメリカ政府に背いて沖縄住民の大多数の意思に従ったとき、彼がどうなったかを思い出してみてはどうでしょうか。ニューヨーク・タイムズが報じたように、「鳩山由紀夫首相は日曜日[2010年5月23日]に、憤慨する沖縄住民を前に、主要な選挙公約を果たせなかったことを謝罪して、アメリカと当初合意していたとおり米空軍基地の沖縄本島北部への移設を決定したことを告げた。」彼の「降伏」は(これは適切な表現なのですが)、アメリカからの強い圧力の結果でした。



マクニール 中国はいま、日本や、南シナ海のフィリピン、ベトナムとの領土紛争に巻き込まれ、係争中の国境線上に防空識別圏も設定しています。これら全てのケースで、アメリカは直接間接に関与しています。これらは、中国の拡張主義の事例として理解すべきなのでしょうか?

チョムスキー 中国は地域影響力を拡大しようと目論んでいますが、これは世界の覇権国と認められたい従来からのアメリカの要求と矛盾し、地域勢力の権益とも矛盾します。「中国の拡張主義」という表現は正確ですが、圧倒的なアメリカの世界支配に照らし合わせれば、むしろ誤解を招くものです。

 第二次世界大戦後初期を思い出してみると役に立ちます。アメリカの世界統治計画では、アジアはアメリカの支配下にあるのが当然と見なしていました。中国の独立はこのような意図に対する深刻な打撃でした。これを、アメリカの議論では「中国の喪失」と呼びます。「中国の喪失」は誰の責任かという問題は、マッカーシズムの台頭を始めとする主要な国内問題になりました。この用語自体が隠れた意味を物語っています。私は自分の財布を喪失する(失う)ことはできますが、私があなたの財布を喪失することはできません。アメリカの議論が暗黙の前提にしていたのは、中国は正当なアメリカの所有物だということです。この覇権的概念と醜い歴史に相応の注意を払わずに「拡張主義」という言葉を使うことには用心すべきです。



マクニール 沖縄について、辺野古に新たな米軍基地の建設を進める本土政府と、先月圧倒的多数で基地に反対する市長を再選した沖縄住民との間に、大きな衝突が起きる舞台は整ったように見えます。これがどのように展開するか、何かお考えはありますでしょうか?

チョムスキー 米軍基地の受け入れは沖縄県民が圧倒的多数で反対していますが、これを強制する安倍政権の嘆かわしい努力を拒絶した、名護市民と稲嶺進市長の勇気には、感服するほかありません。そして本土政府が即座に名護の民主的決断を踏みにじったことは、これまでの圧力にも増して、恥ずべきことです。その展開がどうなるか、私には予測することができません。しかしそれは、民主主義の運命と平和の将来に重大な影響を与えるでしょう。



マクニール 安倍政権は、原発を再活性化し停止中の日本の原子炉を再稼働しようとしています。支持者たちは、原子炉を休ませておけばエネルギー・コストと化石燃料使用量の大幅増加という代償を払うことになると言います。反対者たちは危険が大きすぎると主張します…。

チョムスキー 原子力全般の問題は単純ではありません。いまだ終息とは程遠い福島原発事故の後、原子力がどれほど危険かを強調する必要はほとんどありません。化石燃料の使用を続ければ遠くない将来に全地球的な大災害となる恐れがあります。賢明な道は、現在ドイツが行っているように、持続可能なエネルギー源にできるだけ早く移行することです。他の道はどれも想像すらできないほど破滅的です。



マクニール 原子力が地球を過熱から救う唯一の道だと主張するジェームズ・ラブロックやジョージ・モンビオなど熱心な環境保護論者の著作はご存じだと思います。短期的には、そのような分析はある程度当てはまるように見えます。日本の原発災害の直接的影響の一つは、石炭、天然ガス、石油の輸入が大幅に増加したことです。短期間で十分な再生可能エネルギー源を作って気候変動の暴走を食い止めることなど、我々には不可能なのだと彼らは主張します。

チョムスキー 確かに、このような見方にもいくらかの利点はあります。より正確に言えば、核廃棄物処分のような、極度の危険と未解決の問題の数々をともなう原発に、限定的に短期間依存しなければいけないことが、持続可能エネルギーを迅速かつ大規模に開発するきっかけになるのなら、このような考え方にある程度の利点はあるかもしれません。このような持続可能エネルギー開発こそ、最優先にすべきで、非常に急を要します。破局的な環境破壊という重大な脅威は遠い未来のことではないからです。


(この文章は、2014年 2月22日のジャパン・タイムズに掲載された記事を加筆したものである。)


ノーム・チョムスキー教授の講演会は2014年3月5日、6日に上智大学で開催された。
“The Architecture of Language Reconsidered”「言語の構成原理再考」
“Capitalist Democracy and the Prospects for Survival”「資本主義的民主制の下で人類は生き残れるか」
この講演会のビデオは、上智大学Open Course Wareにて公開されている。
http://ocw.cc.sophia.ac.jp/140305linstic

Thursday, March 06, 2014

原子力規制委「帰還に向けた考え方」にある4つの重大な問題点: 反核医師会より抗議声明

昨年11月20日に発表された原子力規制委員会による「帰還に向けた安全・安心対策に関する基本的考え方」に対し、反核医師の会」(1987年設立)が、12月18日に抗議声明を出した。プレス資料をマスコミ各社に送ったようだが一切報道されなかったそうである。以下紹介する。

このブログで先日紹介した、日本科学者会議の汚染水・除染についての深刻な提言も全国メディアにはおしなべて無視されたようだ。科学者団体による提言は、汚染や被爆の度合いを少なく見せ、原発を引き続き推進したい人々にとっての大きな脅威であることがうかがい知れる。科学者会議は環境の被曝、反核医師会は人体の被曝を扱った警告で二者の声明は補完的なものと言えるであろう。

この声明の英語版も2月28日に発表された。リンクはここ。
http://no-nukes.doc-net.or.jp/activity/seimei/140304kisei-i.pdf 

拡散してください。@PeacePhilosophy


原子力規制委員会への抗議声明
「帰還に向けた考え方」にある4つの重大な問題点


20131218
核戦争に反対する医師の会(反核医師の会・英文略称"PANW"
(東京都渋谷区代々木2-5-5 全国保険医団体連合会内
                               
                                
20131120日、原子力規制委員会から、福島第一原発事故による汚染地域への「帰還に向けた安全・安心対策に関する基本的考え方(線量水準に応じた防護措置の具体化のために)」(以下、『考え方』と略)が発表された。
我々「核戦争に反対する医師の会」は、核兵器の廃絶を望み被ばく者を支援してきた医師・医学者の団体として、原発事故後の地域住民の生活や健康維持について、これまでも重大な関心を持ってきた。我々は、今回の『考え方』には放射線防護の点から、また住民主権という人権の観点からも大きな問題点があり、断じて認めるわけにはいかないとの結論に至ったので、ここに抗議声明を発表するものである。

1100ミリシーベルト以下の被ばくでも健康被害の可能性を認めるのが、
現在の国際的動向である
今回の規制委員会の『考え方』の基本にある医学的認識は、低線量被ばくの評価に関する最近の国際的理解からは、明らかな誤謬を犯しており、医師・医学者としてとうてい容認できるものではない。100ミリシーベルト以下の被ばくでは「疫学的に健康リスクの増加を証明するのは困難とするのが国際的合意」と、事故以来繰り返されてきた見解は、最近発表された複数の大規模疫学調査により大きく修正を迫られている1),2)10万人以上を対象とした大規模な疫学調査では、100ミリシーベルト以下でも「明らかな線量依存性の健康リスクの増加」が認められ、過剰な放射線被ばくは「少なければ少ない程よい」という原則を再確認することとなった。
今年3月に福島事故と関連してWHOが発表した報告でも、「福島県外も含む広い範囲の住民で、生涯の発がんリスク増加の可能性を否定できない」とされたのは、低線量被ばくと健康リスクに関する国際的動向に配慮したものと思われる3)。しかし、今回、原子力規制委員会が出した「考え方」は、このような国際的動向に全く注意を払っておらず、繰り返し表明してきた「100ミリシーベルト以下は安全」とする恣意的な認識に拘泥し続けている。
我々は、『考え方』が基本にする“100ミリシーベルト以下安全”論に、強く抗議する。

2ICRPの勧告でも、積極的な住民参加による意思決定や健康管理の充実を強調している
今回の原発事故に伴う住民避難の基準は、ICRPによる2007年と2009年の一般勧告、及び2011年に福島事故後に出された文書によるところが大きい4)-6)。その中で事故収束後に汚染が残る地域での居住を選択した場合「1~20ミリシーベルトに抑えるべき」とされており、長期間にわたる可能性があるならば、「その幅の中でも可能な限り低い基準を設定し、線量低減のための最大限の努力の継続が前提」と明記されている。このように年間20ミリシーベルトは「緊急対応時の一時的指標」でしかなく、「帰還可能な汚染水準として示されてきたものではない」。
さらに、比較的線量が高い地域での居住では、「地域住民の健康管理体制の充実が不可欠」で、方針決定への住民参加とともに最終的には各個人の決断が重要であることも強調されている。福島事故後に政府や関係諸機関がとった実際の対応は、人権保護の観点からも厳しい国際的批判にさらされている。201210月に日本で行った調査にもとづく「国連人権理事会からの特別報告」(以下「グローバー報告」)は、原発に関する情報が国民に共有されない制度の不備と、事故後の政策決定への住民参加の不足について警鐘を鳴らし、社会的弱者も積極的に参加できるシステムの整備を求めている7)
今後、地域住民の間で低線量被ばくに関する情報を共有し、帰還の条件についても住民が議論に積極的に参加できる場が形成され、的確に政策決定に反映されるシステムが確保されねばならない。今回の『考え方』では、住民参加の保障が全く不十分である。
我々は、ICRP勧告よりも大きく後退した“年間20ミリシーベルト迄を帰還可能水準”と緩和する『考え方』に強く抗議する。

3,個人線量計による計測結果を重視することで、被ばくに対する個人責任や新たな社会的問題を生み出す危険がある
今回の『考え方』では、空間線量から予測される被ばく線量ではなく、個人線量計を用いた各々の計測結果を、個人の生活設計や管理にも用いるという考え方が示された。線量計による被ばく管理は、仕事上やむをえない被ばくで利得を得る労働者や放射線取扱者にとっては、必須の要件である。しかしながら、個人線量計の測定が被ばくの実態を調査する一手段ではあっても、過剰な被ばくが利得どころかリスク増加にしかならない地域住民にとって、被ばくの多寡が個人責任に転嫁される恐れもある。
また、ガラスバッジ等の個人線量計による計測では、α線やβ線による内部被ばくは計測されず、γ線についても、計測は線量計の前方からの線量が中心で、その使われ方によっては被ばく量が過小評価されかねない結果に陥る恐れが多分にある。
さらに個人に被ばく管理を押し付ける線量計の利用は「被ばくした個人」を特定することにもなり、人権を守る上で新たな社会的影響をもたらしかねない。特に屋外活動による被ばくを避けたい小児や妊婦にとってその行動を必要以上に制約することにつながりかねず、新たな風評被害や社会的差別を防ぐ面からも、住民全体に適用するにはあまりにも問題点が多い方法と考える。個人線量計による計測結果は、その人個人のデーターであり、決して帰還基準などに使用すべきでない。住み続ける地域環境の規定である規準汚染度は、その地域の汚染度を客観的に表す「空間線量」(ICRP基準)や「土壌汚染」(ウクライナ基準)を使用した基準値でなければならない。
我々は、『考え方』の“個人線量計による計測結果を重視する”基準値設定に強く抗議する。

4,健康相談員による相談だけでは、住民に安全・安心の健康管理は不可能である
さらに、帰還の前提条件としては、住民の健康管理体制の整備が不可欠だが、今回の『考え方』では、健康相談員の活動と支援する拠点の整備があげられているだけで、公的な健診体制の整備や拡充、及び診療体制の充実についての具体的な記述が欠落している。前段3にあげた「グローバー報告」では、1ミリシーベルト以上の年間過剰被ばくが推定される地域全体で、「無料の健康診断や医療サービスの提供」が勧告されている7)にも拘わらず、それを全く無視したものとなっている。ちなみに、今年36日の原子力規制委員会からの提言では、1999年の茨城県那珂郡東海村のJCO臨界事故後に行われている健康管理(事故により1ミリシーベルト以上の過剰被ばくが疑われる住民に対する無料の健診)について記載されていたにもかかわらず、今回の『考え方』ではそれが削除されており、意図的な変更を疑わざるを得ない内容となっている8),9)
我々は、住民の健康管理を、JCO事故後の健康管理体制から大きく後退させ、“健康相談員による相談だけに限定”する『考え方』に、強く抗議する。

以上のように、今回の『考え方』は、低線量被ばくに関する最近の医学的知見や国際的動向を無視するばかりか、一部では、同委員会より36日に出された「東京電力福島第一原子力発電所の事故に関連する健康管理のあり方について(提言)」より後退した内容となっており、加害企業や公的機関の責任を曖昧にしたものになってしまっている。また、事故の規模の違いと、費用負担の増大を心配してJCO事故後の対応等の健康管理体制からの後退を、福島に押し付けようとしているとすれは、けっして許されるものではない。この意図的な二重基準を許してしまえば、JCO事故後の健康管理体制をも後退させる危険性をも指摘せざるを得ないだろう。
我々は、国民の健康管理に携わる医師・医学者の団体として、今回出された『考え方』の内容と方向性について強く抗議するものである。そして、医学的知見や国際的動向が、理解されやすく整理して呈示され、各家庭や個人が自律した意思決定を行えることは、住民主体に政策決定する民主主義の根幹であることを再度強調して、以下の項目を提案し、必ずや実行に移されるべきであると要求する。

1 “100ミリシーベルト以下安全”論を撤回し、低線量被ばくの健康影響についての最新の知見、国際的動向を重視し、その情報についても住民に隠さず伝えること。
2 “年間20ミリシーベルト迄を帰還可能水準”と許容する提示は撤回し、帰還できる条件について住民との間で十分な情報提供による協議の場を設け、政策決定に反映させること。
3 “個人線量計による計測結果を重視する”基準値設定と被ばく管理の住民押し付けをやめること。
4 1ミリシーベルト以上の過剰被ばくが疑われる地域の住民に、無料の健康診断サービスを、国と東電の責任で提供し、医療体制の充実を図ること。

  以上、要求するものである。



参考  
1)      Radiation exposure from CT scans in childhood and subsequent risk of leukaemia and brain tumours: a retrospective cohort study.
Pearce MS et al, Lancet. 2012, 380(9840):499-505.
2)      Cancer risk in 680,000 people exposed to computed tomography scans in childhood or adolescence: data linkage study of 11 million Australians.  
Mathews JD et al, British Medical Journal. 2013, 346: f2360.
3)      Health risk assessment from the nuclear accident after the 2011 Great East Japan earthquake and tsunami, based on a preliminary dose estimation, WHO, 2013.
4)  Fukushima Nuclear Power Plant Accident, ICRPref:4847-5603-4313 ICRP, 2011. http://www.u-tokyo-rad.jp/data/fukueng.pdf
5) Application of the Commission's Recommendations for the Protection of People in Emergency Exposure Situations. ICRP Publication 109, Ann ICRP 39 (1). ICRP, 2009.
6)  Application of the Commission's Recommendations to the Protection of People Living in Long-term Contaminated Areas after a Nuclear Accident or a Radiation Emergency. ICRP  Publication 111, Ann ICRP 39 (3). ICRP, 2009.
7)  Report of the Special Rapporteur on the Right of Everyone to the Enjoyment of the Highest Attainable Standard of Physical and Mental Health, Mission to Japan ( 15-26 November 2012 ), Anand Grover  Human Rights Council,
    23rd session, 41/Add.3   United  Nations,  General Assembly.  2013.
  8) 東海村JCO ウラン加工工場臨界事故を振り返る-周辺住民の健康
管理の在り方を中心に- 文教科学委員会調査室 柳沼充彦
立法と調査(参議院調査室作成資料)338:131-144,  2013 
backnumber/2013pdf/20130308131.pdf
 9) 東京電力福島第1原子力発電所の事故に関連する健康管理のあり方
について(提言) 平成253月6日 原子力規制委員会



Sunday, March 02, 2014

【日本語字幕版】ドイツ放送局ZDFによるフクシマ3周年のドキュメンタリー番組はますます深刻化する原発事故の実態を浮き彫りにする Japanese subtitled version of ZDF documentary on Fukushima Nuclear Catastrophe

ドイツ在住ジャーナリスト、梶村太一郎さんのブログ「明日うらしま」より、許可を得て一部転載。
http://tkajimura.blogspot.ca/2014/02/zdf.html
 昨晩(2月26日)、ドイツ公共第2テレビ放送ZDFが、フクシマの現状を29分のドキュメントで伝えました。 現在の双葉町 現場で当事者たちとのインタヴューで、安倍首相の「フクシマはアンダーコントロール」であるというオリンピック招致の際の発言が、大嘘であることを実証した力作のレポートです。   

登場人物は、双葉町で墓参りをする井戸川元町長からはじまり、小出裕章京大助教授の「フクシマはこれまででもチェルノブイリ事故での同量の核物質が放出されており、現在も放出され続けており『out of control』である」との見解、また事故直後の地下水遮断計画が、どのように阻止されたかも菅直人元首相と馬淵氏の証言でレポート。さらに阿武隈川が流域の山系のセシウムなどを集めて、河口沖では、驚くべき海洋汚染が続いているが全く無視されていることを京都大学の研究者の現場でのモニタリングで伝えています。 阿武隈川河口沖で取材するヨハネス・ハーノ記者 また除染作業がホームレスの人たちを使うヤクザの食い物になっていることを、仙台の今井牧師と被害者の匿名証言で報道。 泉田裕彦新潟県知事の「今、新しい『原発安全神話』を作ろうとしている」との見方も伝えられています。

井戸川元町長の「日本政府の非人間性への激しい怒り」を共有するジャーナリストチームの優れた仕事です。

これがZDF番組の日本語字幕版 YouTube です。見て拡散してください。


日本のTV局も311の3周年に向けこのような批判的番組を作っていることを期待します。@PeacePhilosophy 



Saturday, March 01, 2014

【全国メディアには無視されているよう】日本科学者会議の汚染水と除染についての深刻な緊急提言

日本科学者会議」が、汚染水問題と除染問題について大変重要な緊急提言を2月11日に発表し、2月27日に記者会見を開いた。

日本科学者会議記者会見(2月27日、福島県庁にて)


提言は日本科学者会議のウェブサイトに全文がアップされているのでぜひ見てほしい。

「原発汚染水問題」にかかわる緊急提言

「除染」にかかわる提言

河北新報《2月28日)は、「『汚染水の調査不十分』科学者会議緊急提言」という見出しで、日本科学者会議は、東電による地質や地盤、地下水の調査は「不十分」であり、「ボーリング調査の範囲を敷地内の空白域と敷地外に拡大するよう」求めていると報道した。汚染水問題プロジェクトチームの代表、柴崎直明福島大教授は「現状を放置すれば、今後も汚染水が海や敷地外に流出する危険がある」と警告し、「敷地外にも汚染地下水が流出している可能性がある」とのことである。大変深刻な内容だ。

提言はこのような結論で終わっている。
これまで東電は汚染水問題について,重大な問題が発覚してから応急的で不十分な対策しかとってこなかった。このままの状況では,今後も汚染水タンクからの漏洩や汚染された地下水が港湾外の海や敷地外の陸地に流出する危険があるので,国や東電はこの緊急提言で指摘した事項を最短の工程で実施することを強く求めるものである。
しかし全国メディアがどれほど報道したのか、ざっと検索した限りでは出てこない。隠蔽への圧力がかかっているのか。福島第一原発事故直後の2011年3月30日、日本の原発を推進した当事者の科学者たちが反省と危機感をこめて緊急提言を発表しているがほとんどのメディアは無視して、当ブログが転載したものが6万以上のアクセスを集めた。当時と同様のことが起っているのか。

除染問題についての提言も大変厳しい内容だ。一部を抜粋する。
福島県では2012年夏以降、各自治体で除染計画を策定し、大手ゼネコンに代表される主体が除染作業を進めている。しかしながら除染の実行力を担保する法令、ならびに実施体制が体系化されておらず、その結果様々な弊害が生じる。

第一は、何を持って除染とみなすのか(定義)、いかにして除染をするのか(方法)、除染の効果をどのように検証するのか(評価)、その統一的基準がない点である。それ故、不適切かつ不完全な除染が横行し、地域により除染効果に差が出ている。

第二は、除染計画を策定する際に不可欠な実態把握(放射能計測とマップ化)が不十分な点である。放射性物質の分布マップがあれば汚染や環境に即した然るべき除染方法が選択でき、除染を優先すべきエリアが検討できる。必要かつ十分な除染の見極めることで過剰な資本や労働力の低減、仮置き場や中間貯蔵施設の負荷低減を検討することも必要である。特に労働資本の投入は除染作業者の外部被曝の低減に直結する問題であり、除染作業者の人権問題として認識する必要がある。

第三は、除染の実施主体は各自治体であることから、市町村域を超えた合理的な計画策定や、専門的対応や判断が困難な事である。本来、除染は国の責任でやるべきものであり、人的資源も専門性も限られ、被災地対応に追われる地方自治体の事業範囲を超えている。それこそ復興庁などの国家レベルの機関が指導力を発揮しなければならない。

最後に「除染」は、それ自体が「目的」ではなく、あくまで生活再建に向けた「手段」である点、ならびに「除染」は放射性物質という物理的実体に即して科学的見地からの対応が求められる一方、極めて社会的・政治的な問題であることを強調しておきたい。たとえばガラスバッジによる個人被曝の積算線量は、空間線量から見積もられた値に比べて、平均値で3割ほどの外部被曝に止まることが明らかにされている。こうした科学的知見は、除染の優先度や対象エリアを検討するデータとされ除染エリアや避難エリアの縮小を支持するデータとなる可能性もある。だが依然として高い外部被曝が強いられる地域や個人も少なくなく、合理的な除染策の検討というものが、被災者の福祉や健康、ならびに基本的人権を侵すものであってはならない。除染の是非は科学的合理性のみならず、社会的道義性の観点からも十分に議論される必要があり、二つの観点からの議論の先にしか被災者の健康と生活の安寧は得られない。そして除染の計画や実施をもって、個人が故郷から避難する権利を奪ってはならないこと、また移住や避難をした人々にとっても、放射能汚染からの故郷の再生は悲願であることから、「除染」と「移住」は二者択一の選択とはならない。真に目指すべきは被災者の生活再建であり、除染はあくまで手段であって、除染の実施が被災者救済の最終目標ではないことも強調しておきたい。
(抜粋以上)

NHKの福島局による放送はすでにリンク切れしているが、ここにアップされている。ほとんどの時間は除染問題、それも「汚染状況を把握し効果的な除染を」という語調、汚染水問題については最後に触れる程度で、「ボーリング調査の徹底などを求める」と、これらの提言が提起する問題の深刻度や国や東電への痛烈な批判が全然伝わらない報道になっている。昨年の9月からプロジェクトチームを組み日本中の科学者の英知を結集して作った提言のようだが、このような報道、そして何よりもこの提言を無視する報道機関は、被災者の立場から原発事故に真剣に取り組む科学者たちの努力を踏みにじったと言えないか。これはやはり「汚染水は完全にコントロール」と世界に大嘘をついた安倍政権への遠慮なのだろうか。

もう一度、今回の提言のリンクを記しておく。

「原発汚染水問題」にかかわる緊急提言

「除染」にかかわる提言

@PeacePhilosophy

Thursday, November 21, 2013

一般焼却施設排ガスの放射性セシウムは、国が定めた方法では検出できない-東京都は技術者の実験提案を断った。

元電機メーカーの技術者、樗木博一(ちしゃき・ひろかず)さんからの投稿を掲載します。

日本では放射性セシウムに汚染された廃棄物を一般の焼却施設(放射性セシウムを閉じ込める仕組みを持たない焼却施設)で焼却していますが、日本国の環境省は、焼却施設の煙突から大気中に排出されるガス中に放射性セシウムが含まれていても検出しない方法でガス測定を実施することを法律で定めています。私は、この問題を解決するためガス中の放射性セシウムを検出できる装置を製作し、東京都に実験を提案しましたが、認められませんでした。この状況を知っていただきたく、お知らせするものです。
 
放射性セシウムが焼却施設から大気中に放出されている可能性等について

- 技術者からの問題提起 -

 

平成25年11月19日

樗木博一

 
1.放射性セシウムが焼却施設から大気中に放出されている可能性

日本では放射性セシウムに汚染された廃棄物が焼却施設で焼却されていますが、焼却炉で800℃を超える温度で加熱された放射性セシウムの一部は、排ガス中に空気のような気体やミストといったナノメーターレベルのサイズの微粒子形態で存在することが考えられます。しかしながら、焼却施設にはバグフィルターやHEPAフィルターといった、サイズの比較的大きいダストを捕捉するためのフィルター設備(空気を通す)しかありません。このことから、焼却施設の煙突から放射性セシウムが大気中に放出されている可能性が極めて高いと考えます。

2.排ガス中の放射性セシウムの測定法における問題点

排ガス中の放射性セシウムの測定は、環境省告示第百十一号に基づいた測定法(具体的な実施方法は放射能濃度等測定方法ガイドラインに示されています)で行われています。この測定法では、ダストに付着した放射性セシウムは捕捉し、検出できますが、気体やミストといったナノメーターレベルのサイズの微粒子形態で存在する放射性セシウムは捕捉されず、検出できません(実験で確認済み)。

3.新しい測定法の提案

従来より原子力発電所の焼却施設では、環境省告示第百十一号に基づいた測定法とは全く異なる方式、即ち、シンチレーション方式の検出器を用いた排ガス中の放射性物質の監視が行われてきました。 また、今年度(平成25年度)に福島第一原子力発電所に建設される予定の焼却施設(雑固体廃棄物焼却設備)でもシンチレーション方式の検出器が採用される計画になっています。

シンチレーションとは放射性物質が発するガンマ線がNaI、CsIなどの結晶に照射されると、これらの結晶が発光(フォトンを放出)する現象で、シンチレーション方式の検出器は、この現象を利用して排ガス中の放射性物質を検出します。シンチレーション方式の検出器であれば、排ガス中の放射性セシウムが気体やミストといった微粒子形態であっても検出することが可能です。

しかしながら、原子力発電所の焼却施設に設置されているシンチレーション方式の検出器は据付タイプであり、自治体が管理、運営する焼却施設まで持っていくことができません。そこで、市販のシンチレーション方式の空間線量計を用いて、持ち運び可能な排ガス検査用放射性物質検出装置を製作しました。この装置を使って排ガス中の放射性セシウムの有無を調べる実験を行うことを提案します。

[注記]

(1) 上記の内容をより詳しく説明したビデオをユーチューブにアップロードしました。

表題「一般焼却施設における排ガス中の放射性物質測定方法の問題点および新しい測定法の提案」「排ガス中の放射性セシウムの測定法」で検索すれば出てきます。
http://www.youtube.com/watch?v=up-tKf9MlPw&feature=youtu.be




(2) 下記は、私が製作した排ガス検査用放射性物質検出装置を使った実験を東京都に提案したときの東京都の回答です。東京都でも環境省告示第百十一号に基づいた測定法で排ガス中の放射性セシウムを測定していることがわかります。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

樗木 博一様

                                  平成251017

                                 東京都下水道局総務部

                                広報サービス課長

 

 

                  お問い合わせに対するご回答について

 

 

 日頃より下水道事業にご理解、ご協力いただきまして、誠にありがとうございます。

 

平成25年10月15日にいただきましたお問い合わせについて、下記のとおりお答えします。

 

                             

 

 

排ガス中の放射性物質の測定は、環境省告示(H23年第百十一号)に基づき実施すること

 

が定められています。このため、東京都下水道局は、今後とも、これに基づき測定を行っていきます。

                       

今後とも、下水道事業にご理解とご協力のほど、よろしくお願い致します。

 

 

〒163-8001  東京都新宿区西新宿2-8-1

            東京都下水道局総務部広報サービス課お客さまの声係


                           電話03-5320-6511

 

以上
 
(以上の都からの回答は以下の樗木氏からの「焼却施設から放射性セシウムが放出される事象に係る実験提案」(10月15日にメールで都に問い合わせ)に対してものでした。) 

東京都知事 猪瀬 直樹 様

 はじめまして、樗木博一と申します。
 焼却施設から放射性セシウムが放出される事象に係る、実際の焼却施設での実験を下記の通り提案します。
ご検討の上、実験の可否を回答いただければ幸いです。

 なお、本実験については自費で行いますので、東京都で予算を取っていただく必要はありません。

1.焼却施設から放射性セシウムが放出される事象について
 放射性セシウムを含む廃棄物を焼却している施設において排ガス中に気体やミストといった微粒子形態で放射性セシウムが存在し、煙突から大気中に放出されている可能性があります。 しかしながら、特措法に基づいて環境省が定めた測定法(環境省告示第百十一号、放射能濃度等測定方法ガイドライン)では気体やミストといった微粒子形態の放射性セシウムを捕捉できないため、放射性セシウムが排ガス中に含まれていても不検出となってしまいます(実験で確認済み)。

2.実際の焼却施設での実験の提案
 焼却施設が東京都・葛西水再生センター(江戸川区臨海町)において、排ガス検査用放射性物質検出装置(下記)を用いて排ガス中の放射性物質の有無を調べる実験を行うことを提案します。*排ガス検査用放射性物質検出装置
 従来より原子力発電所の焼却施設では、特措法に基づいて環境省が定めた測定法とは全く異なる方式、即ち、シンチレーション方式の検出器を用いて排ガス中の放射性物質の監視が行われてきました。
 また、今年度(平成25年度)に福島第一原子力発電所に建設される予定の焼却施設でもシンチレーション方式の検出器が採用される計画になっています。(シンチレーションとは放射性物質が発するガンマ線がNaI、CsIなどの結晶に照射されると、これらの結晶が発光する現象で、シンチレーション方式の検出器は、この現象を利用して排ガス中の放射性物質を検出する装置です。)
 シンチレーション方式の検出器であれば、排ガス中の放射性セシウムが気体やミストといった微粒子形態であっても検出することが可能です。しかしながら、原子力発電所の焼却施設に設置されているシンチレーション方式の検出器は据付タイプであり、自治体が管理、運営する焼却施設まで持っていくことができません。そこで、市販のシンチレーション方式の空間線量計を用いて、持ち運び可能な排ガス検査用放射性物質検出装置を製作しました。

*特措法に基づいて環境省が定めた測定法では気体やミストといった微粒子形態の放射性セシウムを捕捉できないことを確認した実験および排ガス検査用放射性物質検出装置の基本構成、外観をビデオにしてユーチューブに投稿したので、「排ガス中の放射性セシウムの測定法」で検索すれば見ることができます。

*平成25年10月4日付けで東京都・下水道局から発表された各水再生センター、スラッジプラントにおける汚泥焼却灰の放射能濃度データおよび平成25年10月7日付けで東京二十三区清掃一部事務組合から発表された各清掃センターにおける飛灰の放射能濃度データにおいて、葛西水再生センター(江戸川区臨海町)の汚泥焼却灰の放射能濃度が最も高く、高い放射能濃度の排ガスが大気中に放出されていることが考えられることから、葛西水再生センターを実験を行う焼却施設として選定しました。

(参考)
葛西水再生センター(江戸川区臨海町)汚泥焼却灰放射能濃度
放射性セシウム134: 1,100Bq/kg
放射性セシウム137:2,600Bq/kg

3.提案する実験を実施した結果、放射性物質が検出された場合、仮に2020年の東京オリンピックまでに解決することを目指すならば7年間の対策を検討し、実施する時間があります。排ガス中に放射性物質が検出されなかった場合は、放射能に対する安心材料のひとつになります。

4.私について
 私は電機メーカに勤めていた技術者です。
 J-GLOBAL科学技術総合リンクセンターのサイトで「樗木博一」で検索すれば、在職中に電気学会に投稿した論文や特許などがわかります。
 平成10年に日本電機工業会より発達賞をいただきました。


以上
 

参考資料:「放射能濃度等測定方法ガイドライン」はここです。
http://www.env.go.jp/jishin/rmp/attach/haikibutsu-gl05_ver2.pdf#search='haikibutsugl05_ver2.pdf'

 これは「環境省告示第百十一号」に基づいて具体的な測定方法を環境省が示したものです。(P.5-29、P.5-30参照)。

[投稿者経歴]
九州大学工学部電気工学科卒業(1977年3月)
九州大学大学院エネルギー変換工学専攻修士課程修了(1979年3月)、工学修士
三菱電機株式会社入社(1979-04)三菱電機株式会社退職(2009年5月)
平成10年財団法人日本電機工業会功績者表彰において「500kV高電圧大容量サイリスタバルブの開発」にて発達賞を受賞