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Friday, June 10, 2011

「見えないものが人々を分断している」:伊藤夏子の福島報告 A Fukushima Report by Natsuko Ito

「子ども20ミリシーベルト」問題で、福島の保護者たちが文科省前で抗議した5月23日、院内集会における福島の人たちの訴えを詳細にレポートしてくれた伊藤夏子さんは、一週間後の5月31日、福島市におもむきました。保育所の計測、市民と自治体の交渉の様子を映像、写真とともに紹介します。6月9日、グリーンピースジャパンが、外国特派員協会で記者会見し、福島市内の公園、通学路、中学校、家庭菜園等で高い放射線量が計測されていることを指摘し、「妊婦や子どもたちを避難させる必要がある」と訴えました。ジャパン・タイムズAFPといった外国語メディアは報道していますが、日本語のメディアではまだ見かけません(6月12日追記。AFP記事の日本語版が出ました)。この調査結果は、伊藤さんが同行した保育所の計測を裏付けるものでもあり、また、日米の航空調査、フランスのIRSNの報告などからもわかるように、福島第一原発から飯館村等北西方向へ、そして、弧を描くように、高汚染地帯(セシウム30-60万Bq/m2、あるいはそれ以上)が伊達市、福島市、二本松市、郡山市等人口密集地帯に広がっている調査結果とも一致します。伊藤さんやグリーンピースが結論づけるように、これ以上子どもたちが被曝しないように、早急に避難、除染対策を講ずる必要があります。(転載等希望はこちらに連絡を info@peacephilosophy.com


福島市を訪ねて

伊藤夏子


目に見えない放射能を知る唯一の方法は測定である。

その測定も、何を信じればいいか分らない。自分で調べ判断するしかない。
が、相手は見えないのである。

見えないものに怯える人。見えないものは気にしない人。

見えないものを忘れようとする人。

見えないものを見ようとし、格闘する人。
外遊びを再開した福島市の幼稚園では、外に出ない子どもとその親が苦しんでいる。

見えないものが人々を分断している。


保育所の砂場は「放射性廃棄物」
5月31日、日帰りで福島市を訪ねた。23日に福島から上京し、文科省前に座り込んだ父母たちの訴えを聞き、現地の様子を自分の目で確認したいと思ったからである。31日は16時から、そのときの父母が県の対策責任者と会う予定であった。

福島市公表のデータによると5月下旬、市役所横高さ1mの空間線量が毎時1.5マイクロシーベルト(μSv)前後である。肌の露出を避け、0.1ミクロンの粒子を99%カットする使い捨てマスクを着用した。県と父母たちの面会に参加する他は市内を歩き、公園や八百屋、スーパーの食品売り場を見て回ろうと考えていた。ガイガーカウンターを持っていないため、目に見えない放射能を認知する術がないのが最大の問題であった。

Aloka サーベイメーターTGS-133
レンジは最大100k (10万) 単位はcpm
福島駅で新幹線を降り、ホームを見渡すとゴーグルにマスク姿で計測する作業員風の男性(Tさん)がいた。線量を教えてもらおうと話しかけたら、何やら立派な測定器をお持ちであった。機種はベータ線とガンマ線の両方を測定できる「Aloka サーベイメーターTGS-133」である。東京の室内のバックグラウンドは65cpmだったが、新幹線の車内は郡山付近から線量がぐっと上がったとのこと。福島駅ホームは大人の腰の高さで250cpm前後である。ようやくシーベルトに慣れてきた私はcpmと聞き、困惑した。cpmとはカウント・パー・ミニッツ、1分間に飛んでくる放射線の数だという。何を測定しているか尋ねると、ほぼセシウムからのガンマ線のはず、との答えであった。

 今回の東京電力福島第一原発の事故では、半減期30年の放射性セシウム137と、半減期約2年の放射性セシウム134がほぼ1対1の割合で検出されている。長きにわたり問題となるであろうセシウム137は最初、ガンマ線ではなくベータ線を放出する。今回初めて知ったのだが、文科省や県が発表している校庭などの空間線量はガンマ線しか計測していない。すでにセシウムの多くは地表に降りている。今の時点でセシウム137を正確に計測するには、ベータ線を検出できる測定器で地表近くを調べなければならないのだ。 
JR福島駅 女子高生もマスクを
つけていない。

Tさんは作業環境測定士である。以前、放射線管理区域である大学の研究室で放射性廃棄物の処理を行っていたという。福島市在住の母親(Oさん)の依頼で市内の認可外の保育所と個人宅を測定しに行くと聞き、急遽同行させてもらうことにした。

ロータリーに迎えに来てくれたOさんの車の中は子どもの玩具でいっぱいだ。Oさんは4歳の女の子と1歳の男の子の母親である。使い捨てマスクを着用している。市内でも特に線量が高い、山を背に広がる地区に向かった。 

「川があるから線量が高いのでしょうか?」Tさんに尋ねると「おそらく大量の放射性物質が山にぶつかって落ちたのでしょう」との答え。


保育所玄関先にて
到着したのは住宅地の中の小さな保育所である。早速、玄関の子どもの靴の裏を測定した。レンジを一番下の300に合わせると、針が降り切れた。裏がざらざらした靴が一番高く、700cpmであった。  小さな砂場は2000cpm。絶対に遊ばせないで下さいとTさんは言った。セシウム137換算で1000cpmは、放射線管理区域から持ち出し禁止レベルである。(注1)  2000cpmとは、1分間に2000個の放射線の粒が測定器の表面めがけて飛んできているということだ。

砂場のセシウムは雨で浸透してしまったようで、20センチ以上掘り、粘土層が出たところでも600cpmであった。



映像:砂場をスコップで掘り、計測



「ピ」という音は測定器がとらえた「放射線の粒」である
レベルが高いと音が連続し、ビービー鳴り響く

その後6月3日、保育所の園長先生から連絡があった。

「先ほど関西電力の人が来て砂場を測定して行きました。高さ50センチでした」

―関西電力、ですか?
「県から頼まれたそうです」

―ガンマ線ですか?どんな測定器でしたか?
「さあ・・・ 大きくてマイクのようなのが着いていました」

―数値は教えてもらえましたか?
「1.78と言われました。マイクロシーベルト、ですね。砂を5センチ取れば遊んでいいって・・・」

―5センチ取り除いた状態も測定したのですか?
「地上50センチだけです」

6月1日には保育所の責任者が集められ、積算量を調べるためにポケット線量計を常時携帯するよう指示が出ている。6月13日から8月ごろまで測定するという。その間も放射能に晒されるのである。

間もなく事故発生から3か月だ。外部放射線の実効線量が3か月につき1.3ミリシーベルトならば放射線管理区域のはずである。(注2)福島市の積算量はこれをはるかに超えている。なぜ空間線量を測定するだけの“モニタリング”を続けるのだろうか。

私は同行できなかったが、Oさん一家が住むマンションは、玄関入口前の苔が約10,000cpmを記録している。セシウム137換算で10,000cpmも「放射線管理区域」だ。(注3)


映像:Oさんマンション玄関前の苔

3階建て鉄筋コンクリートマンションの2階の室内は、線量が低かったとのこと。3月11日から数日間、洗濯物を外に干すためベランダに出入りしたが、その後、一切窓を開けなかったという。

後日、Oさんと電話で話した。窓からの放射性物質の侵入による大気の汚染はもう大丈夫だろうと告げられ、時々窓を開けるようになったという。しかし、玄関前の苔はどうにもできずにいるとの事であった。不動産屋に説明しなければならないが、「シーベルト」が定着したため、cpmだと通じない。(注4)

玄関を出入りするには苔の上を通らなければならない。見た目はただの苔である。強い放射線を放っていることをどうすれば理解してもらえるか分らないという。苔を除去してもどこに捨てるかが問題だ。保育所の砂場も放射性廃棄物である。そもそも、なぜ、放射性廃棄物の中に子どもたちが置かれているのか。

私はOさんに、子どもと避難してほしいと伝えた。しかし、彼女には仕事もある。生活も楽ではない。両親も兄弟も近くに住んでいる。Oさんは、子どものためには避難すべきだと分っているが、なぜ自分たちに非はないのに避難しなければならないのか、なぜこんな目に遭わないといけないのか、どうしても納得できないと言う。

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「一緒に福島の子どもたちを守って下さい」~親たち、県に訴える~
3月11日以前、福島に知り合いはなかった。私は、30キロ圏外でも線量が高い地域は、放射能の影響を受けやすい子どもや妊婦を優先して一刻も早く避難させるべきだと思っていた。やがて県内に知人がいる複数の友人から、地元住民の間では「避難」を口にすることさえ憚られる空気があることや、差別を恐れ県外に出られずにいる人たちがいると聞いた。しかし、福島県民が声を上げない限り事態は変わらないと思い、インターネットで情報収集を続けた。そして5月初旬、「子どもたちを放射能から守る福島ネットワーク」が立ち上がったことを知った。それ以来、自分が住む埼玉も放射能汚染地帯であるとの認識を持ちつつ、この会の活動に注目してきた。

5月11日、「子どもたちを放射能から守る福島ネットワーク」は福島県に対し、以下の要請を行った。
  1. あらゆる被ばく低減策を、県自らが主導し行ってください。
  2. そのために、授業停止やいわゆる学童疎開・避難が必要であれば、躊躇なく行ってください。また、自主的に避難や疎開を行う者への経済支援を行ってください。
  3. 校庭削土をはじめとする除染作業、高放射線区域の隔離等を急いで行ってください。(東京電力への放射能の引き取り要求も求めます)
  4. これらの対策にかかった費用は、福島県民を代表し、堂々と国・東京電力に要求してください。
  5. 知事が任命した現在の放射線健康リスク管理アドバイザーを即刻交代させ、内部被ばくも含めた防護策や継続的モニタリングの指導が出来る真のアドバイザーを招聘してください。
5月31日16時、県庁隣の自治会館にて県職員3名が父母たちに回答した。
以下は、その時のやり取りである。

右が「子どもたちを放射能から守る
福島ネットワーク」の父母たち
「県独自の低減策はないんですか」
―明日からモニタリングします。

「モニタリングは低減策じゃないですよね」「4月からモニタリングしているんですよ」
―モニタリングの結果を見て・・・

「いつまでモニタリングするんですか」「ずっと放射能を浴び続けているんですよ」
―・・・・・。

「福島市は物凄い積算量なんですよ」
「保護者たちは切羽詰ってますよ、追い詰められて。感じて下さい。目の前に小学校あるでしょう」
―・・・・・。

「国の原子力安全委員会は誰も年間20ミリシーベルトを容認していないんですよ」
「低ければ低いほどいいと言ってるから、文科省も1ミリシーベルトと言ったんですよ」
―県災害対策本部原子力班主管:安全委員会は20でいいと言ったんじゃないの?

「なぜ地表をモニタリングしないんですか」
「ホットスポットが沢山あるんですよ」「すごい値が出てるんですよ」
「ガンマ線しか測定してないんじゃないですか」
―原子力班主管:50センチでやりますので、それ以外の方法はやりません。

「うちの高校はグラウンドで1センチが4と5でした。それでも部活やってるんですよ。側溝が60出ました」
「50センチで測るモニタリングを私は信用しません。なぜ50センチなのか。小さい子が下で土いじったりする可能性の方が大きいじゃないですか」
―・・・・・。

「現在、何人県外に出てるんですか。県は把握してないんですか」
―8000人以上は・・・

「校庭での活動は親の承諾書を取っているんですよ」「幼稚園でも外遊びさせてるんですよ。数値が高いとお伝えしたら『承諾書もらっています』って」
―・・・・・。

「中学校で体育を休むと評定はできない、だから1ですと言われるんですよ。中学3年生にもなれば、これがどういう事かご存じですね」
―小中学校については市町村の判断です。

「4月13日、原子力安全委員の一人が記者会見で言ってますね。土埃に注意した方がいいって」
「もう一か月以上もそのままですよ。その間、ずっと吸い込み続けてるんですよ」
「これが本当の放射能リスクですよ」「それについて適切なアドバイスをしてくれないのであればきちんとしたアドバイザーを出して下さい」
―・・・・・。

「県のリスクアドバイザーはどういう基準で選んだのですか」
―広島、長崎、チェルノブイリの研究実績があるからです。

「どんな研究実績ですか」
―・・・・・。

「誰が選んだんですか」「国ですか」
―県です。

「県の誰ですか。知事ですか」
―県です。

「年間100ミリシーベルト以下の健康被害について専門家の見解が分かれているなら、
なぜ一番被曝しても問題ないという立場の3人を選んだのですか」
「分らないことについては安全側に立つのが大原則じゃないですか」
「何のためのアドバイザーですか」
―・・・・・。

「一番最近の講演会では職員が動員されたことも知ってるんだ。質問もさせなかったって話じゃないか」
「なぜ山下さん(注5) を守るのですか」「なぜ県民を守らないのですか」
―・・・・・。

「アドバイザーの交代について、知事に検討してもらったんですか?」
―・・・・・。

「知事に伝わっているんですか」「批判があることは山下さん本人に伝わっているんですか」
―・・・・・。

「知事に、アドバイザーのこれまでの発言と原子力安全委員会の発言を報告して下さい」
―・・・・・。

「福島県民は棄てられたんですよ」
「福島の子どもたちは棄てられたんですよ」
―・・・・・。

「県民同士がいがみ合う事はしたくないんだ」「放射能で仲違いしたくないんだ」
「一緒に福島の子どもたちを守って下さい」「守って下さい」
「一緒に守りましょうよ」「一緒にやりましょうよ」
―・・・・・。

県職員3人は、俯くだけであった。

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「土はどうするのですか」
5月31日19時 福島市飯坂町平野中学校体育館にて

夜、校庭の土の汚染除去について地区住民向け説明会が行われると聞き、町はずれの中学校に向かった。市中心部で拾ったタクシーの運転手は、実家がリンゴ農家だと話してくれた。果樹園は手入れをしないと荒れてしまうため、出荷できるか不安を抱えながらも栽培を続けているという。約20分走り到着した中学校は、水田の真ん中にあった。
平野中学校体育館

体育館では地区住民と教育委員会の質疑応答が始まっていた。

「高圧洗浄で汚水が流れてくるでしょう。下流に吸着剤は入れてもらえるんですか。
うちは下流なんで。側溝はすでに高いんで・・・」

「植栽についてお尋ねします。私は何十年も学校の緑化に取り組んできました。表土をとれば枯れると思うんです。誰が責任をとってくれるんですか」

「学校の周りで米作ってる者です。高圧洗浄の日は教えてもらえますか。田んぼに水を引かないようにするので」
―JAさんにお伝えすればいいですね? では、そうします。

「(土の下に敷く)遮水シートの耐用年数は何年ですか」
―年数は示されておりません。最終処分場でも使われているシートだということで国の指針に基づいて使用します。30年間、中に置くとは申し上げておりません。国の対応方針が示されれば、対応していく考えです。
地区住民への説明にあたる
福島市教育委員会関係者

「土はどうするんですか」
―東電に持っていってくれと要求しています。
―東電の敷地持っていくのも、双葉、大熊は一日も早く戻りたいから持っていけないことを理解して下さい。

近くに座っていた農家と思われる男性たちの私語。皆、60代、70代だろう。“東京湾さ持って行って埋め立てすればいい”“東電本社の敷地だな”“ロケットさ積んで火星さ持ってくべ”・・・

母親が必死に質問している。
「一度埋め立てたあと、方法が見つかったらちゃんと掘り出して管理してもらえるんでしょうか」
「通学路は調べてもらえないんでしょうか」

母親は引き下がらない。
「モニタリングは空間線量でなくて、側溝とか雨どいの下なども調べていただきたいの
ですが」
―計測方法は決められておりまして、中学校ですとその中の何点かの平均で(高さ)1
メートルです。

この時の男性たちの私語。
“今日は学校の話し合いじゃないって” “ああいうのカミさんに貰うと苦労するべ”

私の左隣の男性は、最後まで黙って聞いていた。
私が明らかによそ者と分るからだろう。集会が終わると話しかけてきた。
「本当に参ってますよ。息子の嫁が四国だから孫と避難させてますけど、向こうに転校させようかどうか・・・」

体育館に残った住民数名が心配を口にしている。
一人がポケットから線量計を取り出すと、皆、次々と取り出した。
「これ買ったんですけど、きちんと測れるでしょうか」
「孫が心配で、秋葉原まで買いに行きましたよ」

福島では放射能を測定できるものは滅多に店頭に並ばないという。
現地では様々な噂を耳にした。国が買い上げたと言う人もいれば、輸入品が船ごと行方不明になったらしいと話す人もいた。

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付記 
6月6日、福島県災害対策本部にようやく電話が繋がった。関西電力の測定員が訪れたという保育所の一件を伝えた。15分後、折り返し返答があった。

6月1日に開始したモニタリングは1μSvを超えた学校等について国の財政的支援により表土除去または天地返しによる線量低減を図るためのものであり、測定者がコメントや指導をしないよう委託業者の一つである電気事業連合会(電事連)に申し入れたとのことであった。測定器が足りないため電事連の協力も得ているのだという。

今回のモニタリングは国の原子力災害現地対策本部に県災害対策本部が協力する形で実施しているとのことである。なお、文科省に対しては学校や幼稚園だけでなく、認可外の保育所を含め子どもを預かる施設への財政的支援を要請しているとのことであった。

モニタリング方法については、高さ50cmでのガンマ線の測定は子どもへの外部被曝の影響を調べるためであり、ホットスポットの存在は認識しているが、学校生活において屋外で子どもが多くの時間を過ごす校庭を最優先にしているとのことである。校庭、園庭の目途がついたら地域の草むら、側溝といったホットスポットの除染に市町村と取り組む予定で、除染についての知見は国に協力を求めているとのことであった。

内部被ばくについてはホールボディーカウンターが県立医大に一台しかないため確保に動いており、県としては県民の健康を維持するため県民の要望を聞きながら柔軟に対応したいと考えているとのこと。全県民の健康管理調査検討委員会座長が山下俊一氏であることについては、氏に対する様々な意見は把握しているが、実際の調査にあたるのは山下氏ではなく研究機関であるとの返答であった。避難については、子どもも含め年間20ミリシーベルトを基準とした国に決める権限があるとのことであった。

応対した県災害対策本部職員の口ぶりから誠実さは伝わってきた。しかし、私は、職員たちにはもっと勉強してもらい、国の指針や専門家の見解に対抗できるだけの見識を持ち合わせてほしいと思った。放射能の影響をめぐる専門家の見解は割れている。土壌汚染や飲食物の汚染、除染、大量の放射性廃棄物の処理といった難題に対する解答を持ち合わせている「専門家」などいないはずだ。

また、県知事と市町村長は、何があっても住民を守るという姿勢を示すべきであろう。ホットスポットだらけの町に子どもたちを放置しておいていいはずがない。モニタリングを続けるとは、その間、さらに被曝させることに他ならない。

なお、連絡をくれた保育所では砂場をビニールシートで被い、外遊びを控えている。「子どもたちを放射能から守る福島ネットワーク」にも測定に来てもらい、保育士たちの勉強会を持ったとのことである。避難も考え始めているが、少しでも放射能を減らすため同ネットワークの助言をもらいながら自分たちで除染するとのことである。

この保育所は4月上旬、県の調査で毎時2.5μSv (地上1m) が計測されていた。測定結果は後日ホームページで発表すると告げられただけで、その後、何の報告も指導もなく、ホームページを調べても見つけることができなかったという。

福島の親たちは放射性物質が大量に降り注いだ3月11日からの約1週間、我が子がどれだけ被曝したか心配している。断水の中、水、食料、ガソリンを求め、人々は屋外で長蛇の列をなしていたという。Oさんも二人の子どもの手を引き、並んでいた。彼女は、子どもをこれ以上被曝させないため、せめて食べ物だけは放射能のないものを与えたいと言う。

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国会は菅退陣で騒いでいる。

これ以上、福島の子どもたち、そして日本に暮らす子どもたちが被曝しないよう、避難、疎開、内部被曝への対策を含むあらゆる手立てを尽くすこと。

今後大量に発生する放射性廃棄物の処分場を早期に確保すること。今こそ、政治決断が求められているはずだ。


伊藤夏子(いとう・なつこ) 1972年生、埼玉県在住。アルバイトや派遣社員として職を転々とした後、フリーランスのテレビドキュメンタリー番組リサーチャー。

作業環境測定士(Tさん)のブログhttp://madamada-korekarasa.cocolog-nifty.com/

この記事のPDF版はこちらをクリックしてください。

注1:放射線を放出する同位元素の数量等を定める件(平成十二年科技庁告示第五号)第四条、別表第4他http://www.mext.go.jp/component/a_menu/science/anzenkakuho/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2009/04/22/h121023_05.pdf 
およびhttp://www.aist.go.jp/aist_j/rad-accur/pdf/case_study_1.pdf
注2:同 平成十二年科技庁告示第五号 第四条
注3:前掲iに同じ
注4:cpmをシーベルトに換算するには複数の条件を考慮しなければならない。なお、シーベルトとcpm、両方の測定値が示されるガイガーカウンターも販売されている。「子どもたちを放射能から守る福島ネットワーク」は、α、β、γすべての線量を計測し、両方の単位で表示できる測定器も使用している。
注5:福島県放射線健康リスクアドバイザーの長崎大学山下俊一氏 氏の3月21日の講演は

4 comments:

  1. Anonymous8:46 pm

    すでにご存知の方も多いと思いますが、、、

    http://minnade-ganbaro.jp/tenkou

    支援を約束できるものではないと明記されてはいますが、ご要望だけでも伝えてみてはいかがでしょうか。

    ReplyDelete
  2. PPCです。いつものようにメール配信で、ツイッターからのまとめを送っているものをここに置いておきます。6月6-10日のものです。


    【ドイツ脱原発】
    NYT: Merkel Asks Lawmakers to Back Shift From Nuclear
    http://fb.me/wUqNYt2F

    メルケル首相:「ドイツは工業国で初の脱原発国になれます」「フクシマは私の
    核エネルギーへの態度を変えました。放射能の蒸気は大気に放出され続け、この
    恐怖に終わりは見えません。この状況から的確な教訓を引き出さなくてはいけま
    せん。」 http://t.co/YXOgeRy 

    【メルトスルー?】
    Report of Japanese Government to the IAEA Ministerial Conference on
    Nuclear Safety - The Accident at TEPCO's... http://fb.me/11qjDNYhk

    原子力安全に関するIAEA閣僚会議に対する日本国政府の報告書-東京電力福
    島原子力発電所の事故について- http://fb.me/12BWyPESo

    多くの報道に「メルトスルー」(溶融貫通)という言葉が頻出し、日本政府が初
    めて認めたとかいって、用語説明などもついているが、実際の報告書には日本語
    版にも英語版にもそういう言葉は使われていないし報道でも、よく読めば実際に
    書いてあるとは言っていない。なぜこのように報道するのだろう。

    中日新聞 保安院の独立、政府が報告書に明記 福島1~3号機「溶融貫通」
    http://p.tl/pPIw 読売 核燃料、圧力容器貫通の可能性…政府が報告へ 
    http://p.tl/T3MT 

    日本では流行用語のようにさえなった「メルトダウン」meltdown という言葉さ
    え両国語版で使われていない。日本語版では主に「炉心溶融」、英語版では
    core melt(炉心溶融), core damage(炉心損傷) と表記されている。

    ブルームバーグ http://p.tl/UENZ  「破損した1-3号機の原子炉では燃料
    棒被覆管が損傷し、放射性物質が圧力容器を貫通し格納容器に落下し堆積した可
    能性があるとの見方を示した。政府が公式に格納容器に放射性物質が落下し堆積
    している可能性を認めたのは初めて。」

    前掲米国メディアの日本語版は、「メルト」とか「スル―」とか、曖昧なカタカ
    ナ語で煙に巻かず率直に報道している。ザッと見たところ、報告書原文では「冷
    却が十分にできず炉心溶融し、溶融した燃料等がRPV下部に移行していったもの
    と推定される。」と表現されている。RPVは圧力容器のこと。

    以前、素人にはわからない原子炉の話ばかりするのは肝心の放射線の放出や被曝
    の問題を避けるためではないかと書いたことがあるが、この対IAEA報告書報
    道にもそのような傾向が見られる。やはりいつも報道だけではなく原文に迫るの
    が大事と思う。 http://p.tl/FClR

    【福島市汚染】
    プレスリリース:2011/6/9 日本政府に、子どもや妊婦の早急な避難を訴え ――
    グリーンピース・インターナショナル事務局長らが福島市を訪問 | 国際環境保
    護NGOグリーンピース http://t.co/uzE13Q3

    GP:福島市「子どもたちの遊ぶ公園など公共の場所などで、1時間当たり9マイ
    クロシーベルトを上回る数値を計測しました。」「また、1時間当たり最大45マ
    イクロシーベルトと放射線量が高い「ホットスポット」が、子供たちの通学路・
    通園路や中学校でも測定されました。」

    Greenpeace 福島市調査、必見プレゼン。 http://t.co/PAZuwY1 自家菜園、公
    園、中学校、通学路での高い数値。

    報道は Greenpeace urges Japan to evacuate town's children http://fb.me/WFfH7MAI

    【福島全体】
    伊達市8千人の子どもに線量計配布 http://t.co/af2GlJZ 「保護者から「子
    どもの被曝(ひばく)線量が分かるようにしてほしい」との要望が相次いでいた」
    本当に?自分の子の被曝線量どころか被曝そのものが許せないのでは。測ってど
    うするのか。

    NHKで母親が「安心はできないけれど少し安心できる」というような不自然な
    コメントをしてた。子供同士で線量計見せ合って「○○ちゃんの方が高いね」と
    か言いあうのか。想像するだけでとても耐えがたい風景だ。安全な被曝量などな
    いのに。報告させて研究材料にするのか。

    県内全域土壌調査始まる http://t.co/EN1i6q2 不可解だ。地表蓄積度も測る日
    米航空機モニタリング80キロ圏はもう測定済みで、80-100キロ圏の第二
    次調査も終わっているというのに後者の発表もせずに8月発表予定であらためて
    土壌採取を始めた。時間稼ぎとしか思えない。

    (続く)

    ReplyDelete
  3. 【東京汚染】

    東京新聞:都の汚泥処理施設 付近の土から放射性物質:東京(TOKYO Web) http://fb.me/12Oog1t28

    小出さんの「たね捲きジャーナル」を日課にしている人も多いと思う。普段はも
    ちろん小出さんの専門である原子炉の話が多いが、6・8のは関東の人に特に重
    要。東京の汚染をまだそれほどでもないと思う人の目を覚ますと思う。私にはそ
    ういうインパクトがあった http://t.co/0IaO5i8

    We should be much aware of contamination in Tokyo and the whole Kanto
    area. http://fb.me/Jvs0Yrcf

    【食品汚染】

    出荷制限の野菜を販売 福島のJAがスーパーに納品 http://t.co/OUS1NJH 
    「 同県本宮市産のカリフラワー18個を誤って郡山市のスーパー「イオン郡山
    フェスタ店」に出荷し、すべて消費者に販売された」個人の農家の認識違いで簡
    単に市場に出てしまうものなのか。

    放射性物質検出、静岡県が公表を制止 食品通販業者に
    http://t.asahi.com/2syx 県を弾劾するとともにこれをしっかり告発した「らでぃっ
    しゅぼーや」を評価しよう。これこそ本当の「応援」!

    静岡の「製茶」は基準値以下 放射性物質検査で http://t.co/mpKsbLq 金谷茶、
    キロあたり385ベクレル。事故前の基準なら海外から輸入していなかった水準
    (370)以上である。輸出ならいいのか。通りさえすればいいのか。静岡茶の
    誇りに傷はつかないのか。

    県内一番茶、規制値以下 8産地の放射性物質検査 http://t.co/6PRstnN 「金
    谷の385ベクレル、最も低かったのは掛川の146ベクレル。そのほか藤枝3
    05ベクレル、島田311ベクレル、川根350ベクレル、牧之原272ベクレ
    ル、菊川184ベクレル、磐田194ベクレル」

    NHK:静岡茶はじめて基準超え。藁科地区のお茶679Bq/Kg 出荷自粛を要請。
    基準500。「健康に影響ない」!どこまで高い数値が出れば「健康に影響ある」
    と言いだすのだろうか。一度も聞いたことがない。超えても「影響なく」、出荷
    は「自粛」にしかならない「基準」って何なのだろう。

    静岡市の製茶1工場で規制値超すセシウム http://t.co/IxZ7ugX 藁科地区の基準
    超えは販売業者が独自に行った検査で出た。県の19産地での検査からは出ず。
    県の調査だけだったらわからなかったということになる。

    茶の放射性物質検査、出荷制限想定せず 「(安全委)委員は暫定規制値につい
    て、荒茶や製茶の出荷制限のための基準ではないことを明言している。」この記
    事読んでますます混乱した。 http://p.tl/WZXP

    荒茶検査に当初県は反対。農水省反対。厚労省は賛成。安全委に判断を仰いで検
    査することに。県はしぶしぶ実行、19産地で基準超え出ず。販売業者の調査で
    は基準超え出た。そうしたら安全委は「出荷制限のための基準じゃない」と!!
    この一連の流れ、理解できますか?私はできない。

    狭山茶農家に波紋 県、荒茶の放射線検査へ http://fb.me/P1lSUSSt

    生茶葉と荒茶で別の基準を要請 神奈川県の産地自治体 - 47NEWS(よんななニュー
    ス)神奈川県は荒茶検査拒否を続けている。 http://fb.me/Lz6KmEFL

    何度も言っているが何より心配なのは朝から晩までお茶を飲み続ける人が多いお
    茶産地の住民である。子どもも沢山飲む。私の家族もそう。これで「応援」気分
    が高まり、もっと飲むようなことだけは避けてほしい。最終的に大事なのは基準
    じゃない。総摂取量なのだ。

    (続く)

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  4. 【海洋汚染】
    汚染水海洋放出に水産庁反対 放射性物質含む水3千トン  - 47NEWS(よんな
    なニュース) http://t.co/z6NNQBP

    【中国】
    中国、食品の輸入基準開示せず 原発事故の日本産規制 http://t.co/E1isuir
    ASEMをはじめ日本は世界で「科学的根拠」に基づいた輸入規制を訴えているが、
    そもそも日本政府の暫定基準の「科学的根拠」が疑わしいのに他国に科学的根拠
    を求める資格はない。

    【世界】
    ASEM、風評被害防止呼び掛け 議長声明で http://t.co/y7AxAr5 また「風
    評被害防止」報道だ。世界で日本の原発事故の汚染は加害なのに、「風評」の被
    害にあう日本を世界が応援しているイメージ宣伝。だから日本の人たちも食べな
    きゃ!という含みがあるのではないか。

    【メディア】
    NHK持論公論:事故調査委員会について、水野解説委員。ベントの遅れ、独立し
    ていない安全機関、津波対策の甘さなど、国と東電の対応の失敗を指摘するが、
    情報隠蔽・被曝リスク過小化に加担するどころか促進したNHK自身、大メディ
    ア全体の責任を問わずしてどうやって市民の信頼を取り戻すのか。

    【検証委】
    東京新聞 http://p.tl/YFZr も、首相が任命する「調査・検証委」の中立性に
    疑問を持っている。かたや保安院を経産省から離せといいながら、事故の検証委
    を内閣の傘下に置く。「責任追及はせず、背景を把握する」と。天災扱いか。責
    任の所在を明らかにせず何のための検証委か。

    【総括】
    前も書いたが、政府や東電が敢えて何か悪い情報を発表するときは何かもっと悪
    いことが同時に起こっているときである。最近検証委とか、IAEAとか、メル
    トダウンとかスル―とか騒いでなるべく隠したいものは、水蒸気爆発リスク、今
    にも漏れだす大量の高汚染水、広がる人間の被曝と環境、食品汚染。
    (おわり)

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