Thursday, May 15, 2025

長崎で、三菱関連企業による中国人強制連行死者を追悼する:「歴史の正義を求め、人間の尊厳を守るために、日本政府は誠実に謝罪しなければならない」 新海智広さんの報告 Remembering Chinese victims of forced labour in Nagasaki: Responsibility lies with Mitsubishi and Japanese Government

 長崎人権平和資料館の会報『西坂だより』2025年4月1日号(第114号)に掲載された、新海智広さんによる、「第2回・中国人強制連行犠牲者追悼集会」の報告を許可を得て転載します。長崎原爆の爆心地より北に100m、最長350mの地点にあった長崎浦上刑務支所では刑務所内にいた職員19名、官舎居住者35名、受刑者及び刑事被告人81名(そのうち中国人32名、朝鮮人13名)計135名全員が即死したといいます。現在の長崎平和公園にはその刑務所の遺構が残っています。8月9日の記念日あたりに行くと式典のセットアップや人混みでしっかり見学ができないので、できれば他の時期に行くほうがいいと思います。中国人原爆犠牲者追悼碑や長崎原爆朝鮮人犠牲者追悼碑と合わせ、長崎の平和公園・爆心地公園における必見の地であると思います。「80周年」にあたり、日本の植民地支配や戦争のために長崎に連行され、強制労働させられた挙げ句、被爆死させられ、生き残った者も原爆症と貧困と差別の中で生きた、この歴史を日本人は学び心に刻むべきだと思います。そして新海さんの文にもあるように「和解」の当事者である加害企業であるにもかかわらず追悼集会に来ず、メッセージも寄せず、企業名に触れるなという、三菱マテリアルの人道にもとる姿勢には心からの怒りを感じます。だから名前に触れるなという三菱マテリアルの名を敢えて大きく叫ぼうと思います。後から踏みにじるような「和解」では「和解」とは言えません。また、いまだに謝罪もしないどころか、強制連行の史実さえ否定している日本政府への責任追及が必要です。中国の遺族の方々のメッセージは写真にあるように「歴史の正義を求め、人間の尊厳を守るために、日本政府は誠実に謝罪しなければならない」です。長崎に行ったら「二十六聖人殉教地」のすぐちかくにある長崎人権平和資料館をぜひ訪ねてください。朝鮮人・中国人被爆と、強制連行についてより深く学ぶことができます。@PeacePhilosophy 

2025年4月5日、中国人強制連行犠牲者追悼集会より。長崎市蚊焼町の日中友好平和不戦の碑の前で。横断幕のメッセージは「歴史の正義を求め、人間の尊厳を守るために、日本政府は誠実に謝罪しなければならない」


第2回・中国人強制連行犠牲者追悼集会


新海智広

 2025年4月5日、中国人強制連行被害者追悼集会が、日中友好平和不戦の碑・維持管理委員会(以下、維持管理委員会)の主催により、中国から42名の遺家族を迎え、長崎市蚊焼町の日中友好平和不戦の碑の前で開催された。以下はその集会を含む当日の報告、和解事業の問題点に関する私見である。


中国人強制連行と三菱和解

 日本は不足する労働力を補うため、1943年から45年にかけ、国策として3万8935人の中国人を日本へ拉致し、強制労働に就かさせた。その約1割を占める3765人は三菱関連の事業場へ連行され、実に722人が死亡(死亡率19.2%)している。連行後1年ほどで日本は敗戦を迎え、実労働期間は1年数ヶ月であったことを思うと恐るべき死亡率の高さである。ちなみに強制連行された中国人全体での死亡者数は6830人(注1)、死亡率は17.5%であり、三菱関係の中国人労働者の死亡率はそれを上回っていることになる。

 2016年6月1日、三菱マテリアルと強制連行された中国人及びその遺族との和解(以下、三菱和解)が成立した。和解の文章の中で、三菱マテリアルがどのように述べているかは後述するが、中国人強制連行犠牲者への謝罪及び和解金の支払い条項と共に、追悼事業への協力が約されていることをここでは確認しておきたい。今回第2回目となる「中国人強制連行犠牲者追悼集会」も、この三菱和解・追悼事業の一環として執り行われたものである。


旧浦上刑務支所跡地にて

 当初、4月5日は午後15時15分からの追悼集会のみを予定していたが、中国側の希望により、午前中平和公園内の旧浦上刑務支所跡地および中国人原爆犠牲者追悼碑の見学が日程に組み込まれ、維持管理委員会のメンバーとして私はその説明にあたることになった。これは今回来崎された中国の方々の中に、崎戸炭鉱へ連行された後、浦上刑務支所へ移送され原爆死した韓文会さんのご遺族が含まれており、その強い希望によるものと推察できる(注2)。

 平和公園で待機していると、10時40分頃、中国の遺家族の方々がやって来られた。原爆死した韓文会さんの姪・甥にあたる繆力さん、呼中陶さんが、旧浦上刑務支所跡地に花束を捧げた後、かなり長い時間経ったままその場に佇んでいた。繆力さんは込み上げてくるものがあるのか、小刻みに身体を震わせ、涙ぐんでいた。2004年に初来日し、同じ場所で、原爆死した父・喬書春さんを思い号泣した喬愛民さんの姿を私は思わずにはいられなかった。


中国人原爆犠牲者追悼碑前で

 平和の泉の横にある浦上刑務支所・中国人原爆犠牲者追悼碑に移動すると、すぐに繆力さん・呼中陶さんのお二人は碑の裏側に回り、おじである韓文会さんの名を探した。涙を浮かべながら、親族の名を愛おしく切なく指で何度もなぞる姿は、刻まれた文字から亡き人の痕跡をたどっているようで、痛々しく、哀切としか言いようのない光景であった。

 今回の来崎に先だって、繆力さんからは原爆犠牲者遺家族としての挨拶文が送られてきていた。結局この挨拶文は集会において読み上げられることはなかったが、全文を紹介しておきたい。以下、中国語の翻訳は、昨年に続いて通訳をお願いした大瀧和代さんによる(中国総領事挨拶のみ周峰領事アタッシュによる訳)。

「尊敬する皆様こんにちは。

私は北京から参りました。私の母方の叔父韓文会は、強制労働者として日本の長崎県三菱鉱業所崎戸炭鉱に連行され、日も差さない坑道で石炭採掘の重労働をさせられました。企業側の搾取と食物の供給の少なさに耐えかね、多くの同僚が食料の要求をしましたが、企業側がこれを拒み、日本の警察は、治安維持法に違反するとして1944年12月同僚とともに逮捕されました。1945年3月31日、20人余りの同僚と一緒に長崎県浦上刑務支所に収監され、1945年8月9日原爆の犠牲となりました。異国で亡くなってから80年が過ぎ、遺骨は依然、天津の在日殉難烈士記念館に置かれたままで埋葬もできずにおります。日本侵略戦争で強制労働者として連行された人々は皆若く働き盛りで、家庭では年老いた両親と子供がおり、大黒柱を失った無数の家庭は、一家離散の憂き目に遭い言葉では言い表せない災難に見舞われました。80年の時が過ぎ、加害者企業はすでに謝罪をしました。しかし日本政府は国際的に中国人の強制労働の事実を認めてはいません。当時の中国人強制労働事業は日本政府と企業の共同の犯罪だと考えています。この度の訪日で私は多くの三菱被害者の家族から、日本政府が3766人の三菱被害者の家族に対して、また4万人の中国人強制労働者の家族に対して公の謝罪をするように、という強い要求を託されて参りました。ここに日本政府の謝罪を要求するものであります。

三菱原爆遺家族   繆力」


日中友好平和不戦の碑の前で

 昼食をはさみ、14時半前後から中国の遺家族の方々が追悼集会会場へやって来られた。集会開始前に、遺家族の方々は平和不戦の碑の横の刻銘碑(長崎へ強制連行された845人のうち氏名不明の2名を除く843人の名前が刻まれた石碑)へ赴き、強制連行犠牲者である自分の親族の名を確認していた。やはりここでも刻まれた名を撮影し、指でさすりながら涙ぐむ姿が見られた。

 15時15分から、維持管理委員会共同代表の崎山昇さんの司会により、「第2回・中国人強制連行犠牲者追悼集会」が開催された。はじめに同共同代表の平野伸人さんが「1992年に平和公園の被爆遺構が見つかり、原爆死した中国人の遺族探しが始まった。その後中国へ渡り生存者・遺族と交流し、さらに2003年以降は裁判闘争にも取り組んだ。粘り強く交渉を重ね2016年に三菱との和解が成立した。今日は戦争や原爆の歴史を、中国をはじめとするアジアの人々の視点から直視し、その被害に寄り添う1日にしたい」と主催者挨拶を述べた。

 続いて維持管理委員会共同代表の竹下芙美さんが平和不戦の碑に献花したあと、参加者全員で献花を行った。その後強制連行・強制労働の中国人犠牲者の苦難を偲びつつ、沈黙のうちに追悼の時を持った。

 次に陳泳中国駐長崎総領事が来賓挨拶を次のように述べた。

「本日、中国の清明節にあたり、我々は長崎の日中友好平和不戦の碑の前に集まり、共に、亡くなった中国人労働者を追悼し、中日の恒久平和を祈念します。日本軍国主義が引き起こした侵略戦争は、中国の人々に甚大な被害をもたらしました。亡くなった中国人労働者の悲惨な経験は、まさにその時代の縮図の一つでした。

『前事を忘れざるは後事の師なり』我々がこの集会に参加するのは、恨みを抱え続けるためではなく、歴史を直視し、教訓を学び、苦労して勝ち取った大切な平和を守るためです」

 

 続いて慰霊追悼委員会を代表し、孫靖弁護士が次のように挨拶を述べた。

「私は北京から来ました弁護士の孫靖と申します。今回の2度目の長崎訪問にあたり、長崎で亡くなった強制労働者の娘、張桂英さんを思い出しました。彼女の父親の名前は張培林と言い、抗日運動に参加したために日本軍に連れ去られました。その後、父親は行方がわからなくなりました。母は夫を、祖父母は一人息子を、一家は大黒柱を失いました。間もなく母親は倒れてしまい、祖父もまた倒れて一年余りで、母親と祖父は相次いで亡くなってしまいました。

 これは、日本の侵略戦争が多くの中国人にもたらした悲劇のほんの一つに過ぎません。

 私たちは互いに手を取り合って歴史を刻み、絶対に2度と悲劇を繰り返さないよう行動を以て、中日両国人民の友好を推し進めていこうではありませんか。」


 締め括りとして、遺族を代表し靳恩恵さん(代読:息子の靳常青さん)が挨拶を述べた。全文を紹介する。

「悲惨な運命と苦痛の回想

 私は靳恩恵と申します。中国河北省衡水市饒陽県西里満村に住んでいます。今年で84歳になりますが、不幸なことに80年間父親に会ったことがありません。今回の追悼会には高齢のため参加しませんが、私の気持ちを息子に託したいと思います。

 日本の侵略戦争期間中の1944年の夏に、私の父靳青岩は連れ去られ、ここから我が家の悲惨な生活が始まりました。当時ただでさえ食うや食わずの生活でしたが、更にひどい生活に追い込まれました。1945年日本投降後、父の労働仲間だった何琛さんと劉振国さんが父の遺骨を家まで届けてくれました。家中の悲しみは形容しがたいものでした。老いた父は息子を嘆く、妻は夫を嘆く、子供は父を嘆く。天に呼べども地に叫べどもその悲しみを受け入れてくれる所はありませんでした。2人の友人の話に依ると、父は日本の炭鉱で働かされ、そこで亡くなったということでした。

 50年も経ってから、日本の友人から調査票の手紙を受け取り、父の亡くなった経緯がやっと分かりました。長崎から来た日本の友人が、中国の被害者に対して長年奔走してくださり、遅まきながら80年後に加害企業の謝罪を得ることができた、この正義の行いに対して、私はとても感謝しております。日本政府と加害者企業は共同の犯罪者です。企業はすでに謝罪を表明しております。しかし主犯である日本政府はまだ歴史の責任を負っていません。日本政府に対しては、強く中国被害者に対する謝罪を要求するものであります。

 人は世界の主人であり仁、善、礼、義の心は中国人も日本人も同じように持っています。今立場を入れ替えて考えたら、どのようにして被害者の家族に現実を受け止めてもらうことができるでしょうか?私の生きている間に日本政府の謝罪を見届け、このことを後の代まで、歴史の教訓として伝えていって欲しいと願います。


青春の碧血を日本に洒ぎ

赤誠丹心は冤魂と化す

厳詞義正の児孫在れば

公道の償還は乾坤を扭る


  在日殉難遺児 靳恩恵

   2025年4月5日」

 

 この後、維持管理委員会・事務局長として新海が経過報告を述べ、最後に維持管理委員会・共同代表の内田雅敏さんが閉会挨拶を述べて集会は終了した。


強制連行問題と日本政府の責任

 昨年の追悼集会でも感じたことであるが、日本の敗戦から80年になろうとする今日に至っても、中国人強制連行犠牲者及び遺家族の痛みと苦難は未だ癒されていない。特に正式な謝罪も賠償も一切行っていない日本政府に対する不満と憤りは強く、それは今回来崎した遺家族の方々が追悼集会の場で広げた横断幕の言葉「討還歴史公道、維護人類尊厳、日本政府必須給予遅到真誠的謝罪」(歴史の正義を求め、人間の尊厳を守るために、日本政府は誠実に謝罪しなければならない・冒頭の写真参照)によく示されていると思う。

 日本政府は、朝鮮人の場合とは異なり、中国人強制連行についてはその事実を認めている。政府や企業が作成した認めざるを得ない文書等が存在しているからでもあるが、例えば2001年11月7日の第153回国会・衆議院外務委員会において、田中真紀子外務大臣(当時)は「中国人の強制連行問題に関して、(中略)確かに、こういう歴史的な事実について私どもは直視をするということをきっちりしていかなければいけない。過去のことについてきちっと一つ一つ、嫌なことでも確認をしていくということをする義務があると思います。強制労働という形で来日して、厳しい労務につきまして、そして、その多くの方が苦難の中で一生を終えられたりした(中略)政府といたしましても、何とかできることについては、個々の状況も踏まえつつさせていただきたい。」と、述べているのである。外務大臣自らが「強制連行問題」「強制労働という形で来日」という言葉を用い、過去の嫌なことでも確認する義務がある、と言明しているのだが、結局その後この問題に関して日本政府は何一つ「義務」を果たしてはいない。


和解事業と三菱マテリアル

 こうした無責任な日本政府と対置する形で、中国人強制連行犠牲者遺家族からは、和解に応じた三菱マテリアルを評価する声が聞こえてくる。今回の遺族代表の挨拶の中でも「加害企業の謝罪を得ることができた、この正義の行いに対して、私はとても感謝しております」という一節がある。確かに今回の追悼集会も、三菱和解の追悼事業の一環として行われ、遺家族の方々の旅費等は三菱マテリアルから拠出されている。しかし、私はあえて言いたい。三菱マテリアルは、本当に過去に真摯に向き合っているのか。日本政府と共同で中国人を強制連行し、苛酷な労働を強い、多数の死傷者を出した過去を、本当に反省していると言えるのか。

 日中友好平和不戦の碑の前での集会は、これまで4回行われている。2021年11月14日の除幕式、2023年6月1日の中国から基金管理委員を招いての追悼集会、2024年7月7日の第1回中国人強制連行犠牲者追悼集会、そして今回である。この4回の集会への、三菱マテリアルの関わり方を見てみよう。2021年の除幕式の時は、九州支店長のS氏が出席し、挨拶を述べている。2023年の追悼集会の時も、三菱マテリアル社員のH氏が出席しやはり挨拶を述べている。ところが2023年の追悼集会の時は、同社よりの出席はあったが、こちらが要請した「挨拶」は断られ、さらに三菱マテリアルの社名を文書等に出さない、社員の会場での紹介もしないことを要求された。そして今回は「不参加」である。

 2016年6月1日に成立した三菱和解には、

「第二次世界大戦中、日本国政府の閣議決定「華人労務者内地移入に関する件」に基づき、約39,000人の中国人労働者が日本に強制連行された。弊社の前身である三菱鉱業株式会社及びその下請け会社(三菱鉱業株式会社子会社の下請け会社を含む)は、その一部である3,765名の中国人労働者をその事業所に受け入れ、劣悪な条件下で労働を強いた。」

との文言がある。更に三菱マテリアルは同じ和解文章の中で、「前事不忘、后事之師」(過去を忘れず、将来の戒めとする)という言葉を引用し、過去の歴史的事実・歴史的責任を認め、和解金の支払と共に追悼碑建立に協力し、この事実を次世代へ伝えていくことを約束している。

 そもそも今回の追悼事業は、三菱和解の一環として執り行われたものであり、中国人強制連行犠牲者およびその遺家族が一方の主役であるとすれば、三菱マテリアルはもう片方の主役なのである。その三菱マテリアルが、追悼事業に「不参加」とは、いったいどういうことか。

 「和解は和解の成立によって終わるのではない、その後の和解事業の遂行によって内容が深まる」とは内田雅敏弁護士の言葉である。真に意味のある和解とするためには和解事業を時間をかけて積み重ねる必要がある。2016年の三菱和解の成立の時点で、強制連行・強制労働の時点から70年以上が経過していた。この間に積もりに積もった企業(および日本政府)への怒りや憤り、不信を解くためには、和解事業を誠実に遂行することにより、企業側が過去を再認識し、二度と過ちを繰り返さないという姿勢を被害者側に示すことが何より重要だと思う。残念ながらこの間の三菱マテリアルの対応を見ていると、和解金や和解事業関連の費用を出したのだからもう自分たちには関係がない、とでも言うような冷淡さが感じられてならない。

 政府も、三菱という企業体も、それを構成するのは個人であり私たち市民である。過去の歴史と向き合い、過ちを率直にみとめ、真の友好親善を求める気運を市民社会の中で少しでも広げていくこと、どんなに迂遠にみえても、それが政府や企業を変える基盤となると信じたい。

(新海智広)

注1:この死亡者数は日本側から見たものであり、中国側からすればこれを上回る(連行者数も同じ)ことは以前述べた。詳しくは西坂だより112号の拙稿『中国人強制連行犠牲者遺族を迎えて』参照。

注2:三菱和解事業では強制連行犠牲者1名につき、その遺家族1名を追悼事業に招くことになっているが、この韓文会さんのご遺族は自費参加1名を加え、2名が来崎されている。この点からも思いの強さが伺える。

(転載以上)

当サイトの新海智広さん関連投稿:



Tuesday, May 13, 2025

シモーヌ・チュン氏が、尹錫悦の戒厳令を支持した米国の極右勢力を語る Simone Chun: A Pivotal Moment for U.S. Foreign Policy -- Why South Korea’s Democratic Uprising Demands a Rethink (Japanese Translation) 미국 외교정책의 중대한 기로: 왜 한국의 민주항쟁은 외교적 재고를 요구하는가(일본어 번역)

南北関係および米国の対朝鮮半島外交政策を専門とする研究者・活動家であるシモーン・チュン氏が、韓国の大統領選を控えて出している分析の中から、5月12日の投稿を許可を得て日本語訳しました。(翻訳は韓国語版からの日本語訳です)

A Pivotal Moment for U.S. Foreign Policy: Why South Korea’s Democratic Uprising Demands a Rethink

미국 외교정책의 중대한 기로: 왜 한국의 민주항쟁은 외교적 재고를 요구하는가

アメリカ外交政策の重大な岐路:なぜ韓国の民主抗争は外交的再考を求めるのか

歴史的にアメリカは、韓国において軍事クーデターで政権を握った政権を含む権威主義的な政権と同盟を結んできた。伝統的な観点からは、保守政権がアメリカの戦略的利益にかなうと見なされてきたが、尹錫悦(ユン・ソギョル)大統領の執政期はその逆を示した。彼の無謀な国政運営は、韓国の安定を損なうだけでなく、東北アジアの平和や韓国に駐留する2万8500人の米軍の安全までも脅かした。この危機の核心には、ワシントンの安保既得権層に過度に依存し、韓国民衆とは断絶しているアメリカ外交政策の根本的な欠陥がある。今、東アジアの政治地図を再編している極右勢力の台頭も、この文脈の中で理解されるべきである。


韓国の「光の革命」:民主主義の転換点

2024年12月3日から2025年4月4日まで、数百万の韓国市民が「光の革命」と呼ばれる歴史的な民主抗争に参加した。わずか124日間で、1000万人を超える市民が平和的に都市部を行進し、1000回以上の演説を行い、145kmを歩き、220回以上の公演を組織した。124日のうち67日間、市民は憎悪と排除に反対し、非暴力・平等・包摂を訴え続けた。彼らは権威主義的大統領制から民主主義を守るという明確な目標を掲げていた。

その努力は、4月4日に憲法裁判所が国会の尹錫悦大統領に対する弾劾訴追案を認めることで結実した。尹錫悦の罷免は、韓国民主主義の回復力を示すだけでなく、アメリカ外交政策にとっても重要な分岐点となった。


尹錫悦:バイデン政権が支持した独裁者

尹錫悦大統領は権威主義的傾向をあからさまに示していたにもかかわらず、バイデン政権は彼を東アジアの核心的同盟国として全面的に支持した。このような外交的後押しを受けて、尹錫悦は検察出身の側近たちで政権を固め、司法機関を動員して政治的反対者を弾圧した。彼の政権は、腐敗・司法スキャンダル・権力乱用にまみれていた。

外交政策においても、尹錫悦は不安定さをもたらした。12月3日に戒厳令を宣言しようとしたことは、韓国民主主義の歴史上前例のないことであり、北朝鮮を刺激するドローン偵察や実弾射撃訓練など、挑発的な軍事行動によって緊張を高めた。ワシントンがこの事実を認識していたかは明確でないが、その危険性は明白である。

元軍情報司令官ノ・サンウォンによる流出文書には、さらに衝撃的な内容が含まれていた。尹錫悦はDPRKの仕業に見せかけた自作自演で在韓米軍基地を攻撃し、野党指導者を拉致する計画まで立てていたことが明らかになった。これは、反民主的で不安定な同盟を無条件に支持した際に起こりうる危険を如実に示している。

尹大統領は日本の極右勢力とも密接な関係を築き、歴史的対立を悪化させる外交政策を推進した。彼の外交安保ラインは韓国の核武装の必要性を公然と主張し、これは非核化の原則に反するばかりか、東北アジアの軍拡競争を引き起こしかねない危険な発言であった。


超国家的極右勢力:韓国民主主義への脅威

尹錫悦政権の興亡は、韓国国内だけの問題にとどまらない。その背後には、アメリカ極右ネットワークの組織的支援があった。トランプ前政権の関係者を含むアメリカ極右の人物たちは、韓国の民主抗争を「反米陰謀」と歪曲し、アメリカの介入を要求した。

元米国務省の国際刑事司法担当大使モース・タン(Morse Tan)は、尹錫悦の弾劾を「左翼の陰謀」と決めつけ、アメリカの介入を求めた。彼は憲法的手続きに則った正当な弾劾を、民主主義への脅威として偽装する欺瞞的言説を広めた。

CPAC(保守政治活動協議会)理事でフォックスニュースのコメンテーターでもあるゴードン・チャン(Gordon Chang)は、野党の李在明(イ・ジェミョン)代表を「反米人物」と断じ、韓国が「敵対勢力」に乗っ取られる可能性があると主張した。極右運動の中心人物スティーブ・バノン(Steve Bannon)は、自身の番組「War Room」で尹錫悦弾劾反対デモを支援し、韓国の民主抗争を「中国が背後にいるクーデター」と断定した。

元空軍将校タラ・オー(Tara O)や韓国CPAC の創設者アニー・チャン(Annie Chan)もまた、尹錫悦政権を国際的に支持することに積極的だった。彼らはハドソン研究所など保守系シンクタンクの支援を受け、軍事主義的ナショナリズムを煽り、金建希(キム・ゴンヒ)大統領夫人を擁護し、「朝鮮半島平和法案」(H.R.1841)に反対する活動を展開した。

アメリカ下院インド・太平洋小委員会委員長のヨン・キム議員でさえ、こうした歪曲された極右の言説を繰り返した。彼は尹錫悦の弾劾を「金正恩の勝利であり、韓米同盟の敗北」と規定し、憲政秩序に従って進められた韓国の民主的手続きを不当なものとして歪めた。


アメリカ外交政策の転換点

アメリカは今、重大な選択の前に立っている。安全保障を名目に権威主義的同盟を引き続き支持するのか、それとも民主的価値と韓国民衆の意思に沿った外交政策へと転換するのか。

「光の革命」は、平和的な市民の抵抗の力を示す強力な事例であり、民主主義的な願いを無視した対外政策がいかにして逆風を受けるかを警告するメッセージである。

韓国の国民は、民主主義の真の守護者であることを証明した。彼らは主権と正義を守るために、永続的かつ平和的な市民組織を生み出した。6月3日に予定されている大統領選挙は、韓国が民主主義を完成させるための重要な機会となるだろう。現在、野党の李在明候補が世論調査でリードしている。

アメリカが韓国民衆とその民主的願望を支持すれば、外交上の過ちを正せるだけでなく、韓米の市民同盟も強化できる。韓国の主権と民主的自律性を尊重する原則に基づいた外交政策こそが、東北アジアの平和と安定の基盤となるだろう。

(翻訳以上)

The original text in English and Korean is here.

シモーヌ・チュン氏
シモーヌ・チュン(truthoutの紹介欄から翻訳)

南北関係および米国の対朝鮮半島外交政策に焦点を当てる研究者であり、活動家である。サフォーク大学で助教授を務めたほか、ノースイースタン大学の講師、ハーバード大学韓国研究所のリサーチ・アソシエイトを歴任した。現在はコリア・ポリシー・インスティチュート(韓国政策研究所)の理事を務めており、CODEPINKの諮問委員会のメンバーでもある。Xでは @simonechun というアカウントで発信している。

Friday, April 25, 2025

「日帝崩壊80年目にきざむ『戦勝国』の記憶」:『朝鮮新報』から転載 On the 80th Anniversary of the Collapse of the Japanese Empire: Korea Was a Victor Nation

『朝鮮新報』に連載しているコラム第2回、1月10日に掲載された記事を許可を得て転載します。この記事で触れた独立運動家の尹奉吉(ユン・ボンギル)の記憶をめぐって今、金沢で右翼が結集する事態になっています。この記事に書いた、野田山墓地の暗葬地跡、尹奉吉義士殉國記念碑について起きていた撤去(「尹奉吉碑墓地使用許可取り消し」)訴訟については3月25日の金沢地裁判決で「却下」となりひとまず安心でした。しかし1月末、韓国のKBS客員研究員が日韓交流の歴史を案内する「観光案内所」をつくり、そこで尹奉吉についての展示もするという計画を韓国メディアが「尹奉吉追悼館」ができると報じたことから、右翼が街宣行動を行うようになりました。3月2日には、不満を持つ右翼団体の男が民団の石川県地方本部に車で突っ込むというテロも起きました。(民団はこの施設建設には関与していませんし、4月24日に反対さえ表明しています。)3月30日、右翼は80台もの車両で金沢に「大結集」し、大変なヘイトスピーチを行いました。中にはナチスのハーケンクロイツのバッジをつけている少年もいたといいます。「尹奉吉はテロリストだ」と叫ぶ人たちが実際のテロ行為を行っています。この日、ヘイトに抗おうという市民たちも集まって抗議しました。この日の様子は、不二越強制連行・強制労働訴訟を支援する北陸連絡会事務局の中川美由紀さんが週刊金曜日の記事に書いています。

右翼街宣車80台が金沢結集で「尹奉吉墓碑撤去」叫ぶ 市民らは抗議https://www.kinyobi.co.jp/kinyobinews/2025/04/23/antena-1624/

不法な植民地支配と侵略戦争の下、朝鮮民族は3.1独立運動の弾圧や、関東大震災後虐殺などで大量殺戮をされ続けていました。侵略、占領され、平和的手段をすべて奪われた民族が自衛のために占領者に対し武力抵抗するのは正当な戦闘行為であり、「テロ」ではありません。イスラエルの長年の民族浄化、大量殺戮に対して立ち上がったハマスも同様です。伊藤博文を暗殺した安重根を描いた映画『ハルビン』もやっと7月に日本で公開が決まったようです。日本人にとって、虐げられた者たちの気持ちになって歴史を再考するいい機会だと思います。

4月29日、上記の「観光案内所」または「尹奉吉追悼館」ができるとされていた日に、金沢では右翼のヘイト街宣に抗議するスタンディングが行われます。以下案内です。行ける人は行ってください。

<4/29 右翼のヘイト街宣に抗議するスタンディング> 日時:4月29日(火)昼12時~ 場所:石川県金沢市 近江町市場前(武蔵バス停付近)詳細はブログを参照ください。https://fujisosho.exblog.jp/ 

4.29は1932年、尹奉吉が蜂起した「上海天長節事件」の93周年でもあります。この日には、抑圧された民族の立場にたって、尹奉吉の人生に思いを馳せたいと思います。ちなみに4.29は昭和天皇の誕生日でしたが、死んだ後も「みどりの日」という意味不明の祝日として残り、2007年からは「昭和の日」という祝日のままになっています。日本は、戦争を反省し戦争の歴史と決別しようとしているのなら、この祝日は残すべきではなかったのではないでしょうか。

(4月30日追記:上記金沢でのスタンディングの報告が「不二越強制連行・強制労働訴訟を支援する北陸連絡会」のブログにアップされていますのでご覧ください。

4.29 植民地主義、ヘイトと闘う全国の仲間が金沢に結集!尹奉吉義士の墓碑を守る・在日と共に、日韓民衆の連帯を https://fujisosho.exblog.jp/34537038/

「群馬の森のことがあり、どうしてもユン・ボンギル暗葬地は守りたい」ということで関東から駆けつけた人たちもいたようです。


朝鮮新報より:

〈私のノート 太平洋から東海へ 2〉

日帝崩壊80年目にきざむ「戦勝国」の記憶

乗松聡子

2025年01月10日 

2025年は、敗戦により大日本帝国が崩壊して80周年の節目になります。日本では「終戦80年」としてさまざまな行事が行われるようです。

私は1980年代、高校のときにカナダに留学し、2年間、5大陸70カ国から来ていた200人の学生と共に学びました。日本の侵略戦争について学校で教わることがなかった私は、留学するまでは、「広島・長崎の原爆被害を海外に伝えなければ」といった認識しかありませんでした。

しかし留学先で教えられたのは逆に自分のほうでした。のちに生涯の親友となったシンガポール人のアイルンからは、日本軍の占領中、日本兵が赤ん坊を銃剣で突き刺した話を聞きました。インドネシア人のレイラからは、強制労働を指す「ロームシャ」という言葉を聞いて驚きました。フィリピン人のイギーからは、友だちになってから「日本人にもいい人がいるんだ」と言われました。かれの父親は45年2月のマニラ市街戦時、日本兵の追っ手から命からがら生き延びたのです。

これらアジアの同胞たちから教えられた日本の戦争の実態は、当時17歳の私の歴史観を覆しました。

2019年8月、初めて朝鮮を訪問する機会を得ました。その旅での数え切れない学びや気づきの中でも、8月15日「祖国解放の日」に居合わせることができたのは貴重でした。平壌で移動中の車窓から、広場で着飾った女性たちが踊っているのが見えました。ガイドさんは、祖国解放の日を祝ってのことだと言いました。立ち寄ったスーパーでは、祝日セールをやっていました。日本によって植民地支配や占領された国々にとっては、天皇ヒロヒトが降伏をラジオで伝達した8月15日は、まさしく暗黒の時代からの解放を象徴する日です。

日本では8月15日を過ぎると戦争の歴史を忘れてしまう傾向にありますが、1945年9月2日の東京湾での戦艦ミズーリ号甲板における降伏文書調印式こそ重要です。ダグラス・マッカーサー連合軍最高司令官が見下ろす中、天皇と日本政府を代表し重光葵外務大臣が、大本営を代表し梅津美治郎参謀総長が降伏文書に署名しました。

なかでも重光葵が、杖をつきながらフラフラと甲板を歩く姿は、大日本帝国の無惨な最期を象徴しています。日本の満州侵攻(1931年9月)後に起きた、日本では「第一次上海事変」と呼ばれる32年1月28日以降の上海侵略戦争に「勝利」した祝いとして、天皇誕生日、いわゆる「天長節」を祝う祝賀会が上海の虹口公園で4月29日に開かれました。この催しで「君が代」を歌い始めたタイミングで、24歳の独立運動家尹奉吉が爆弾を投げ、日本の軍官民要人7人が死傷しました。その中にいた当時駐華公使の重光葵は、右足を失い、義足を使うようになりました。

この事件の13年後、日本降伏の場に、朝鮮代表は見える形ではいませんでした。しかし、天皇の代理として降伏文書に署名した重光の体には、尹奉吉の植民地支配に抗う闘いの痕跡が刻まれていました。これは、この場に朝鮮は戦勝国として確かに存在していたという証ではないかと思います。歴史は一巡したのです。

尹奉吉は捕えられ、軍法裁判で死刑宣告が下り、1932年12月19日に金沢の地で銃殺刑に処され、野田山墓地内に目印もなく埋められました。解放後、遺体は在日朝鮮人の努力で発掘され、本国に帰還し、国民葬が執り行われました。発掘された場所は今「尹奉吉義士暗葬地跡」として保存されています。私はその地を一昨年訪ね、説明版にあった「暗葬は植民地支配に起因した事件の証拠隠滅と歴史の抹殺」という言葉を胸に刻みました。現在この歴史が再び攻撃にさらされています。右派が、金沢市を相手どって撤去訴訟を起こしています。再びこの歴史が「暗葬」されないように守らなければいけません。

上海・魯迅公園内にある尹奉吉の記念館(24年3月乗松聡子撮影)

昨年3月、上海天長節爆弾事件の現場を訪ねました。虹口公園はいま「魯迅公園」となっており、その中に、尹奉吉の号であった「梅軒」の名を取った記念館があります。忠清南道礼山郡生まれの尹奉吉が3・1独立運動に触発され、学問を収めながら識字教育や農民啓蒙運動に従事した後、独立運動のため上海に渡り、大韓民国臨時政府の金九と出会い、決起に至るまでの道のりや、事件が世界中に報道されたことなどが中国語とハングルで展示されています。展示は「尹義士の死は、人類の良心と平和、正義の実現、祖国の独立を完成しようとする神聖な殉国だった」と結論しています。記念館の横に広がる梅園は、満開の時期だったこともあり、地元の人たちや観光客で賑わっていました。穏やかな陽光と梅の香りに包まれながら、91年前に思いを馳せました。

1945年の敗戦の光景から、2023年の上海の魯迅公園まで誘(いざな)いました。今年、「80周年」の戦争記憶は、やられた側からの視点を深める一年にしたいと思っています。


プロフィール

ジャーナリスト。東京・武蔵野市出身。高2,高3をカナダ・ビクトリア市の国際学校で学び、日本の侵略戦争の歴史を初めて知る。97年カナダに移住、05年「バンクーバー9条の会」の創立に加わり、06年「ピース・フィロソフィー・センター(peacephilosophy.com)」設立。英語誌「アジア太平洋ジャーナル」エディター。2人の子と、3匹の猫の母。著書に『沖縄は孤立していない』(金曜日、18年)など。19年朝鮮民主主義人民共和国を初訪問。世界の脱植民地化の動きと共にありたいと思っている。

(本連載は、反帝国主義、脱植民地主義の視座から日本や朝鮮半島をめぐる諸問題や国際情勢に切り込むエッセーです。金淑美記者が担当します)

(転載以上。「朝鮮新報」より

Monday, April 21, 2025

ジェフリー・サックス教授最新記事「アジアの米軍基地を閉鎖せよ」Jeffrey Sachs: Close the US Military Bases in Asia

このサイトでも何度も紹介している、コロンビア大学のジェフリー・サックス教授が「アジアにおける米軍基地を閉鎖せよ」という記事を、Other News というインターネットニュース媒体に発表しました。ここに翻訳を紹介します。(AI翻訳に手を入れたものです。翻訳はアップ後修正することがあります。引用等するときはこの翻訳に頼らず、原文を参照した上で引用してください)@PeacePhilosophy 

Other News のサイトより

Close the US Military Bases in Asia

https://www.other-news.info/close-the-us-military-bases-in-asia/

アジアにおける米軍基地を閉鎖せよ

ジェフリー・D・サックス

超大国にとって最善の戦略は、お互いの領域に踏み込まないことです。

ドナルド・トランプ大統領は再び、アジアにある米軍基地がアメリカにとってあまりにも高コストだと大声で不満を述べています。日韓との新たな関税交渉の一環として、トランプ氏は米軍駐留費の負担を日本と韓国に求めています。ですが、はるかに良い提案があります。基地を閉鎖し、米兵をアメリカ本国へ戻すことです。

トランプ氏は、アメリカが日本に5万人、韓国に3万人近くの兵士を駐留させていることが、両国に対する大きな奉仕であると示唆しています。しかし、これらの国々は、自国の防衛にアメリカを必要としていません。両国とも裕福な国であり、確実に自らを守る力を持っています。さらに重要なことは、東北アジアの平和は、米軍の駐留よりも、外交によって、はるかに効果的かつ低コストで実現できるという点です。

アメリカは、中国から日本を守らなければならないかのように振る舞っています。本当にそうでしょうか。過去1000年の間、そのうち約150年を除いて中国は地域の覇権国でしたが、中国が日本を侵略しようとした回数は何回でしょうか? 答えは「ゼロ」です。中国が日本を侵略しようとしたことは一度もありません。

異論があるかもしれません。1274年と1281年の二度の試み(訳者注:「元寇」のこと)はどうかと。しかし、これは事実として、モンゴルが1271年から1368年まで中国を支配していた時期に、遠征艦隊を日本に派遣したものです。両度とも、台風(日本では「神風」として知られる)と日本の沿岸防衛によって撃退されました。

一方で、日本は中国を攻撃または征服しようとした試みを何度も行っています。1592年、日本の傲慢で気まぐれな軍事指導者・豊臣秀吉は明朝中国を征服する目的で朝鮮に侵攻しましたが、1598年に彼自身が亡くなり、朝鮮すら完全に征服することはできませんでした。1894年から95年にかけては日清戦争で日本が勝利し、台湾を植民地としました。1931年には日本が中国東北部(満州)に侵攻し、満州国を建国しました。そして1937年には中国に再侵攻し、アジア太平洋地域における第二次世界大戦の発端となりました。

今日、日本が中国を侵略するなどとは誰も考えていませんし、同様に、中国が日本を侵略するという合理的な理由も、歴史的な前例もまったく存在しません。日本は中国から守ってもらうために米軍基地を必要としてはいないのです。

同じことは、中国と大韓民国(韓国)の関係にも当てはまります。過去1000年の間に、中国が朝鮮半島に侵略したこともありません。一度の例外を除いては。それは1950年末、アメリカが中国を脅かしたときのことです。中国は、朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)を支援するために朝鮮戦争に参戦しました。当時、マッカーサー将軍は無謀にも中国への原爆攻撃を提案していました。さらに、台湾に拠点を置く中国国民党の軍に中国本土への侵攻を支援する提案も行いました。幸いなことに、トルーマン大統領はこの提案を拒否しました。

確かに、韓国は朝鮮に対する抑止力を必要としています。しかし、それはアメリカの軍隊ではなく、中国、日本、ロシア、朝鮮、韓国を含む地域安全保障体制によって、はるかに効果的かつ説得力を持って実現できるはずです。実際には、米軍の存在が北朝鮮の核兵器開発や軍拡をあおってきたのであり、それを減らすことには寄与していません。

実のところ、東アジアにおける米軍基地は、日本や韓国を守るためではなく、アメリカの軍事力を投射するための拠点なのです。だからこそ、なおさら撤去すべきなのです。アメリカはこれらの基地が防衛目的であると主張していますが、中国や朝鮮から見れば、それは理解可能な脅威と映ります。たとえば、アメリカによる「斬首攻撃」の可能性を示唆したり、誤解や挑発が発生した場合の中国や朝鮮の反応時間を極端に短縮したりするのです。ロシアがウクライナでのNATOの存在を激しく非難したのも、まさに同じ理由によるものでした。NATOはアメリカが支援する政権転覆の作戦にしばしば介入し、ロシアの近くにミサイルシステムを配備してきました。実際、ロシアの懸念通り、NATOはウクライナ戦争に深く関与し、兵器、戦略、情報、さらにはロシア深部へのミサイル攻撃のプログラミングや追跡にまで関与しています。

ところで、トランプ氏は現在、パナマの小さな港湾施設2か所が香港企業の所有であることに執着し、「中国がアメリカの安全を脅かしている」(!)と主張して、それらの施設をアメリカ企業に売却させようとしています。一方で、アメリカは中国の国際海上輸送路の周辺に、日本、韓国、グアム、フィリピン、インド洋に至るまで巨大な米軍基地を展開しています。

超大国にとって最善の戦略は、お互いの勢力圏に干渉しないことです。控え目に言っても、中国やロシアが西半球に軍事基地を設けるべきではありません。1962年にソ連がキューバに核兵器を配備しようとしたとき、世界は核による壊滅の瀬戸際まで行きました(その詳細については、マーティン・シャーウィンの名著『ギャンブリング・ウィズ・アルマゲドン』をご参照ください)。現在のところ、中国もロシアも、自国の近隣に米軍基地があるという挑発に直面しながらも、西半球に軍事拠点を設けようとはしていません。

トランプ氏は財政の節約を模索しています。それは良いことです。なにしろ、米連邦政府は年間2兆ドル(GDPの6%以上)もの財政赤字を抱えているのですから。海外の米軍基地を閉鎖することは、その第一歩として非常に有効です。

トランプ氏は二期目の冒頭で、その方向性を示唆していましたが、共和党の議会議員たちは軍事費の削減ではなく、増額を主張しています。アメリカは約80か国に750か所の海外基地を有しており、これらを今すぐにでも閉鎖し、財政を節約し、外交に立ち返る時がとうに来ているのです。駐留国に、自国やアメリカにとって有益でもないものの費用を負担させることは、時間、外交資源、予算の大きな浪費となります。

アメリカは中国、ロシア、その他の大国に対して、こうした基本的な合意を提案すべきです。「あなた方が我々の近隣に軍事基地を置かないなら、我々もあなた方の近隣に基地を置かない」と。主要国間におけるこのような基本的な相互主義は、今後10年で数兆ドル規模の軍事費削減を実現し、さらには「終末時計」を核戦争によるアルマゲドンまで89秒という現状から大きく後退させることができるでしょう。


※この記事は筆者本人によって「Other News」に寄稿されたものです。

※ジェフリー・D・サックス教授は、コロンビア大学教授兼持続可能な開発センター所長であり、2002年から2016年までは同大学のアース・インスティテュートの所長を務めました。また、国連の「持続可能な開発ソリューション・ネットワーク(SDSN)」の会長であり、「国連ブロードバンド委員会」の委員でもあります。これまでに3名の国連事務総長の顧問を務め、現在はアントニオ・グテーレス事務総長の下でSDG(持続可能な開発目標)の推進者として活動しています。主な著書に『A New Foreign Policy: Beyond American Exceptionalism』(2020)、『Building the New American Economy』(2017)、『The Age of Sustainable Development』(2015、潘基文と共著)などがあります。 

(翻訳以上)

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Friday, April 18, 2025

グレン・ディーセン:ウクライナ戦争は「エスカレーションを常態化させてしまった」Glenn Diesen on the War in Ukraine: Escalation Got Normalized

米国イスラエルと西欧、日本など西側諸国には奇妙なルールがあるようだ。自分たちは敵とみなした相手をいくらでも威嚇したり、戦争や政権転覆をしかけたりする権利があると思っており、相手側が我慢に我慢の末に少しでも言い返したり、報復したりしようとすると「挑発だ!!!」「テロだ!」「国際社会の責任ある一員として行動せよ!」と大騒ぎして100倍返しの行動に出る。この、「反論、反撃の権利ゼロ」を相手に押し付ける姿勢こそコロニアリズムである。大日本帝国が朝鮮、琉球/沖縄、中国などに行ってきたことだ。米国イスラエルがパレスチナに対してやってきていることだ。NATOがウクライナを使ってロシアに対してやってきていることだ。ニューヨークタイムズは3月29日、「ウクライナ戦争の隠された歴史」というタイトルの、調査報道家アダム・エントゥス氏による長編記事を発表した。それは22年以降、米軍とウクライナはドイツのヴィースバーデンに秘密司令部を設置し、NATO諸国も関与して、共同で作戦を立案・指揮していたという内容であった。米国は兵器供与に加え、インテリジェンスを提供し、次々と「レッドライン」を超え、ロシア領内での殺害作戦にも関与したという内容であった。きょう紹介するのはナポリターノ判事のチャネルから、ノルウェーの 南東大学(USN)教授、ロシア外交政策の専門家グレン・ディーセン教授の4月16日の話である。ウクライナ戦争和平をめぐる欧州の強硬化の過程や背景がよくわかる内容であると思う。ここでディーセン氏が言っている「戦争がいつ始まったか区切ることでナラティブを支配できる」「戦争が始まった日付を決めてしまえばそれ以前のすべての責任を帳消しにできる」という指摘は重要だ。22年2月のロシア侵攻以来、"unprovoked" それまで何の挑発もなしにロシアが突然侵略したといったナラティブが西側を席捲し、それまで続いていた戦争を語ることも、NATOの東方進出を語ることも、米国の介入の歴史を語ることもすべて「ロシアのプロパガンダ」としてフェイクのように扱われるようになってしまった。「代理戦争」という本当のことを言っただけでいきりたつ「ウクライナ連帯」派の人たちは、この戦争の代理戦争ぶりをあますところなく記述した今回のニューヨークタイムズの記事をどう読むのであろうか。一方的な西側のナラティブを垂れ流し続けた新聞がいきなり本当のことを語りだす背景には、政権交代、和平交渉の進行という変化があったのかもしれない。@PeacePhilosophy (青字はナポリターノ判事の質問。強調はこのサイト運営者による)

 

 ナポリターノ:ドナルド・トランプの外交政策チームの中に分裂があるという認識はありますか? 一方にはネオコン、たとえばルビオ長官、ヘグセス長官、ケロッグ将軍などが代表とされ、他方にはロシアとの関係をリセットしようとする「アメリカ・ファースト派」、おそらくウィトコフ氏、ヴァンス副大統領、ガバード情報局長が代表とされる人々がいます。

ディーセン:いいえ、非常にはっきりとした分裂があると思います。イエメンへの攻撃においてもそうでしたし、ロシアへのアプローチにおいても同様でした。ここ数週間にわたって行われた交渉を見れば、それは明確だったと思います。なぜなら、ウクライナ戦争を終結させるための二つの提案が提示されていたからです。

ウィトコフによる提案は、いかなる和平合意も、戦争に勝利しているロシアの核心的な要求を満たす必要があると認識しているものです。その要求とは、ウクライナの中立性の回復、および領土の変化の承認、またはウクライナ側が何らかの譲歩を行うことです。

ケロッグの提案は、おおよそ、ウクライナを一時的に分割すべきだと主張しました。これは、第二次世界大戦後のドイツで行われたことと似ています。これはつまり、NATO諸国から遠く離れたヨーロッパ諸国の部隊がウクライナに駐留することを意味します。そうなれば、ウクライナは中立国ではなくなります。また、いかなる領土の喪失も認めないということになるため、ロシアの主要な要求は一つも満たされません。

つまり、完全に相反する二つの見解が存在しているのです。

なぜ、このようなことになっているのか?私の中の楽観主義者としては、トランプというこのシステムの中に何らかの秩序があるのではないかと考えたいのです。全体を譲り渡したいとは思っていないかもしれませんが、ロシアと交渉をせざるを得ません。ですから、彼はウィトコフによる提案を提示して、「これが我々の譲歩の限界であり、君たちも歩み寄る必要がある。さもなくば、ケロッグによる提案を受け入れることになる」と言っているのかもしれません。

これは一つの説明にはなるでしょう。

あるいは、これは単にトランプ政権内の非常に深刻な分裂であり、政権が二つの異なる方向に引っ張られている状態なのかもしれません。

私は前者であると信じたいですが、後者であると疑っています。

ケロッグの提案は、この番組を含め、アメリカ国内では多くの嘲笑を受けています。ヨーロッパの人々はこの提案をどのように受け止めているのでしょうか? 本当に、彼らはベルリンで行われたように、あるいは1945年から1989年までドイツ全土で実施されていたように、ウクライナの一部を軍事的・政治的に監視し、統治し、確保することに参加したいと考えているのでしょうか?

私はそうは思いません。ヨーロッパにそれを実行する能力も資金もないと思います。これは現在の問題の一部でもあります。ヨーロッパ諸国は、経済が少なくとも減速している中で、深刻な借金に陥っています。本来、ヨーロッパがすべきことはまったく逆のことです。新たなパートナーを模索し、産業化に取り組むべきです。しかし今彼らは、「軍事ケインズ主義」のような方向に進んでおり、ただ新たに大量の資金を刷って軍事に投入すれば、それによって産業化が促進され、経済が再び繁栄すると仮定しています。そうはなりません。私はこの考え方は完全に間違っていると思います。

しかし、これは新しいヨーロッパを構築するための一つの方法とも言えるかもしれません。皮肉なことに、欧州連合の理想とは、本来は二度と第二次世界大戦を起こさないためのものでした。つまり、ドイツとフランスが戦後に再び手を取り合い、貿易を通じて軍事的な衝突を避けるというものでした。だからこそ、多くの人々が冷戦後にロシアを同様に扱うべきだと主張しました。つまり、ロシアをヨーロッパの安全保障の枠組みに組み込むべきだったのです。しかし、もちろんそれは実行されませんでした。

そして再び皮肉なのは、いまヨーロッパが新たな目的を模索していることです。いわゆる「地政学的なヨーロッパ」という概念です。強力なロシアという「悪者(ブーギーマン)」を作り出せば、それが結束の材料になると考えているようです。なぜなら、ヨーロッパ大陸はこれから大きな変化を迎えるからです。アメリカ合衆国は、優先すべきことが変わり、今後はより小さな役割を担うようになるでしょう。そしてヨーロッパの指導者たちはすでにそのことを認識し始めています。

アメリカという「鎮静剤」——つまり、我々が互いの対立する利害を直視することを抑えてきた存在——が後退しつつあるのです。だから彼らは、ヨーロッパを再び一つにするための新たな何かを探しています。そして戦争——「せっかくの危機を無駄にするな」という発想です。

政府関係者の中で、マクロン大統領やスターマー首相、フォン・デア・ライエン委員長など、誰か一人でもケロッグ将軍の提案に賛同、あるいは少しでも関心を示した人はいますか?

いいえ。彼らにとってケロッグは、極端すぎる存在です。あの人たちが望んでいるのは、ロシアが完全に後退し、この戦争ののちにロシアの降伏のような和平合意が結ばれることです。

現在ヨーロッパの首都では、「ウクライナの1991年の国境を回復すべきだ」と語られています。ロシアは賠償金を支払うべきだ、と。カヤ・カラス氏——EUの外交政策責任者——は、ロシアの政治指導部を裁くための特別法廷を設置すべきだと発言しています。

つまり、ヨーロッパ人たちは「共通の価値観」のもとに団結しています。それはある種の「道徳的な罠」です。ある立場を「善」と定義し、それ以外の選択肢はすべて「悪」と見なすのです。

したがって、戦争は「一方的な侵略だった unprovoked」と言えば、ロシアは「悪」で我々は「善」ということになります。すると、和平交渉が「宥和政策」と見なされる以上、唯一の選択肢はロシアの完全敗北ということになるのです。これに異を唱える者は、プーチンを利する者とされてしまいます。あの人たちは、プーチンを新たなヒトラーと見なしており、次はパリに侵攻してくると信じているのです。

この欧州の指導者たちは一体何を恐れているのですか? 夜眠るときに、プーチンがパリやベルリンに文字通り侵攻してくると、本気で恐れているのですか?

そうでないことを心から願います。ただし、過激な考えは存在していると思います。とはいえ、ここで重要なのは、いま何が起きているのか、そしてウクライナ戦争が何を意味しているのかを文脈の中でとらえることです。

私の見解では、この戦争は世界秩序の転換を意味しています。冷戦後、アメリカとEUのペアが「新たな政治的西側世界」を形成するというのが主要な目標となりました——まあ、新しいというより再構築ですが——そしてそれが、世界覇権の基盤となるはずだったのです。

しかし、それは「穏やかな覇権」となるはずでした。なぜなら、アメリカとEU——我々は善の力ということになっていました。自由民主主義の未来は、我々の永続的な覇権にかかっているということになります。したがって、それはある意味で、新たな「文明化の使命」となったのです。これが「穏やかな覇権」です。

過去30年間にわたって、ヨーロッパのすべての政治指導者たちはこの信念、この確信の中で育ってきました。これが政策になったのです。そしてNATOの拡大主義においても、ロシアとの対立を生むことになると欧州指導者たち自身が認識していましたし、多くの警告も発せられていました。しかし、それは彼らがフランシス・フクヤマの「歴史の終わり」論に賭けるうえで、支払うに値すると考えた代償だったのです。

もしロシアが敗北すれば、1990年代に戻ることができる。だからこそ、多くの人々がこの問題を「世界秩序」の観点で語るのです。しかし、実際には今、ロシアが勝利しつつある状況であり、それは「多極化」を意味します。

ヨーロッパにおいて何の発言権も持たないはずだったロシアが、突然、巨大な勢力となっている。そしてもちろん、アメリカも多極的な世界においては、西半球やアジアに焦点を移すことになります。ヨーロッパの未来は、もはやそれほど明るいものではなくなりました。

ヨーロッパのエリートたちは、戦争が終わらないことを望んでいるのですか?

戦争の終結を望んでいるのですが、それはヨーロッパの条件——つまりロシアの降伏——で終わることを望んでいるのです。

しかし、それは現実的ではありません。

これこそが問題です。欧州指導者たちは現実から乖離しており、「善意」が行動を道徳的にすると信じ込んでいる。しかし、もし自分たちが推進している政策が破滅をもたらすのであれば、それは道徳的とは言えません。

たとえば、ロシアの侵攻以前の数年間、彼らは繰り返しこう言い続けていました。「ウクライナはNATOの一員になるだろう。NATOは拡大する。ロシアには発言権がない。拒否権もない」。それは非常に道徳的に正しいことのように聞こえます。なぜなら、「もしNATOを拡大しなければ、それはロシアがウクライナの外交政策に口を出すことを認めることになる」という前提があるからです。それは非常に不道徳なことのように聞こえます。

しかし現実には、それは戦争を事実上不可避にしていたのです。たとえるなら、それはロシアの軍事基地をメキシコに置くようなものでした。我々はどんな道徳的論拠も掲げることができますが、もしその実際の結果が国家の破壊であるならば、それはもはや道徳的とは言えません。

とはいえ、ヨーロッパ人たちは、現実がどうであるかではなく、「世界はこうあるべきだ」という考えに固執する傾向があります。そして往々にして、現実を認めること自体が「不道徳」であると信じ込んでしまうのです。

そして、今まさにそれが起きています。私は、彼らが和平合意を支援すると言いながら、それを破壊しているのだと思います。なぜなら、ヨーロッパ諸国が「和平を保証するためにウクライナに軍を派遣する」と言っているとき、それが意味しているのは、戦闘が止まった瞬間にヨーロッパの軍隊が入ってくるということです。ロシアがそのような停戦を受け入れることは不可能です。

これは、ジェームズ・ベーカー国務長官とミハイル・ゴルバチョフとの有名な会話の記録の一部です。

ベーカー「最後の点ですが、NATOはアメリカのヨーロッパにおける存在を確保するための仕組みです。もしNATOが解体されれば、ヨーロッパにはそのような仕組みは存在しなくなります。我々は理解しています。それはソ連だけでなく、他のヨーロッパ諸国にとっても重要なことなのです。もしアメリカがNATOの枠組みの中でドイツに駐留し続けるのであれば、NATOの現在の軍事的管轄は一インチたりとも東方に拡大しないという保証が必要です。」(安全保障アーカイブから)

これこそが、ラブロフ外相とプーチン大統領が繰り返し主張している発言であり、西側諸国があたかもそれが一度も語られなかったかのように無視しようとしている内容です。

そうです。改めて申し上げますが、アーカイブは公開されています。そしてこれは繰り返し確認されてきたことです。文書をすべて読めば、ベーカーによる一度きりの発言ではないことがわかります。これは何度も繰り返されてきました。

そして今日では、「NATOの拡大がこの事態を招いた」と示唆すること自体が、なぜか物議を醸すようなことになってしまっています。しかし、1990年代を振り返れば、多くのアメリカの指導者たちがこの点を認識していたのです。ウィリアム・ペリー、ジョージ・ケナン、ジャック・マトロックなど、名前を挙げればきりがありません。最初は30人のアメリカ政治指導者による抗議書簡が出され、その後は50人へと拡大しました。彼らはこれが何をもたらすかを理解していたのです。

ゴルバチョフに与えられたこの約束だけではありません。1990年には「新しいヨーロッパがどうあるべきか」という合意にも署名しています。これはヘルシンキ合意に基づくもので、「新ヨーロッパ憲章(Charter of Paris for a New Europe)」と呼ばれています。そこでは「分断線のないヨーロッパ」について言及され、安全保障は「不可分」であるべきだとし、一方の安全保障が他方を犠牲にしてはならないという内容が盛り込まれています。そして1994年にも同様の合意がなされました。

しかしその後、NATOが拡大したことは、事実上、「もはや不可分の安全保障など必要ない。ロシアのことなど考慮する必要はない」という欧州の認識を意味していました。なぜならロシアは弱体化していたからです。これこそが、ウィリアム・ペリー国防長官がクリントン政権の職を辞することを真剣に考えた理由です。ペリーはこれが誤りであると知っていました。しかしロシアが弱いことを理由に、クリントンや欧州はその誤りを受け入れたのです。

これからトランプ大統領の映像を流します。そのあとでお聞きする質問を今のうちにお伝えしておきます。これはトランプ氏によるウクライナ戦争に関する最後の公式発言で、今から3日前、日曜日の「棕櫚の日(パームサンデー)」の夜、彼がフロリダの自宅からワシントンD.C.に向かう途中に発言されたものです。「ウクライナ戦争は今やトランプの戦争なのか?」

記者:「ロシアによる、ウクライナでの『棕櫚の日曜日(Palm Sunday)』の攻撃について、何かご感想はありますか?」

トランプ:「ひどい出来事だったと思う。ロシアが間違いを犯した。この戦争そのものが恐ろしいものであり、そもそもこの戦争が始まったこと自体が権力の乱用だった。」

「これはバイデンの戦争だ。私の戦争ではない。私はまだ就任してから日が浅い。これはバイデン政権下で始まった戦争です。彼はウクライナに数百億ドルもの資金を提供した。あんなことは絶対に許すべきではなかった。」「私なら絶対に、あの戦争を起こさせなかった。私は今、それを止めようとしている。多くの命を救うために。ウクライナ人もロシア人も命を落としています。私が望んでいるのは、それを止めることだ。」

トランプもまた、1月20日就任以降、数十億ドル相当の軍事装備を提供してきました。この支援のためのアメリカの法律では、現金も軍事装備もすべて大統領の裁量に委ねられるとされています。

それではディーセン教授、今やこの戦争はドナルド・トランプの戦争と言えるのでしょうか?

ええ、そうだと思います。今や彼の戦争になりつつあります。もちろん、ロシアがバイデン政権下で侵攻したことを考えれば、責任をバイデンに負わせるのもある程度は妥当です。しかし、あなたも言ったように、トランプは武器を送り続けており、後方支援も行い、インテリジェンスも提供しています。

つまり、アメリカは今でもロシアとの戦争に深く関与しています。そして最近の『ニューヨーク・タイムズ』の記事で明らかになったように、もはやこれは単なる代理戦争ではありません。2022年以降に何が起きたのかを見れば、この戦争はドイツを拠点としてアメリカが非常に直接的に指揮してきたのです。

そのニューヨーク・タイムズの記事を否定している人はいません。アメリカは共同交戦国であり、実際には主導的交戦国なのです。人命の損失という意味ではなく、戦争の遂行、インテリジェンス、戦略という面においてです。

まさにそうです。だからこそ重要なのです。アメリカはNATOのパートナー諸国とともに、今や何万人ものロシア人を殺害する側に回っているのです。問題は、我々はそれを見て見ぬふりをすることもできますが、そうすれば自分自身をごまかすだけです。ロシア人は今、何が起きているのかを理解しています。そして彼らは、いつかバランスを取るために報復する手段を再び探すでしょう。

セルゲイ・ラブロフ外相の発言を見れば、最近スーミへの攻撃についてコメントしています。彼は、「我々はウクライナの軍司令部だけでなく、そこにいると分かっていたNATOの訓練要員も攻撃した」と述べました。NATO部隊がそこに実際にいたのかどうか、私には分かりません。しかし今、彼らが「そこにNATO兵がいたから攻撃した」と公に言っているという事実は非常に重要です。彼らが今やNATOを標的にする方向に動いていることを示唆しているからです。

これをヨーロッパの文脈で見れば、当然のことながら関連性があります。

あなたの同僚であるジェフリー・サックス教授は、これは「アメリカの戦争」と呼ばれるべきだと言っています。なぜなら、トランプはバイデンが始めたことを中断も制限もなく継続しているからです。

すべての責任をバイデンに負わせるのは必ずしも公平ではありません。もちろん、バイデンは2014年以来この件に深く関与しています。しかし、そもそもウクライナ政府が転覆されたのは2004年のオレンジ革命でした。そして2008年、ブッシュ政権下でNATOがウクライナに将来的な加盟を提示したことは非常に重要でした。これがウクライナを戦争への道に乗せたのです。

オバマ政権下では、西側諸国が支援したクーデターによって2014年に政権が転覆されました。

そしてトランプ自身も、最初の政権時に、オバマが「エスカレーションになる」として拒否していたジャベリンミサイルや武器をウクライナに提供しました。オバマはそれが戦争の道を進めてしまうと認識していたのです。

(米国側は)時間を区切って紛争の開始時点を特定してしまいがちです。なぜなら、それによって全体の物語を作ることができるからです。イスラエルの件でも、ウクライナの件でも、いつもそうしてきました。紛争が始まった日付を定めれば、それ以前のすべての責任を帳消しにできてしまうのです。

最後に。マクロン大統領はパレスチナ国家の承認に向けて動いているのでしょうか?

その可能性はあります。ですが、今の時代では、指導者たちの考えを読み取るのは非常に難しいと思います。過去のすべてのルールが投げ捨てられてしまっているので、私にはその質問に答えることはできません。とはいえ、少なくともヨーロッパでは、各国がヨーロッパを一つに保つための新たな役割と新たな構造を必死に模索しているということは言えるでしょう。マクロンは常に、単に紛争を解決するために正しいと思うことをしているだけでなく、EU内部におけるフランスの指導的立場を築こうとしてきました。彼は、誰も従いたがらない「ナポレオン」のような存在であり続けています。

しかし、もし軍事的な対立があるとすれば、経済的に強力なヨーロッパのもとでは、かつてはドイツに指導権がありました。ところが今やドイツは弱体化し、より軍事化されたEUとなったため、自然とフランスに指導権が移ってきています。

ただし、当然ながらイギリスも譲ろうとはしません。だからこそ、イギリスの言葉遣いも非常に強硬なのです。ですので、これは断定するのが難しい。彼らが紛争解決をどう見ているか、そして自国のEU内での役割をどう強化できるか、また国家間の新たな連帯の基盤をどう築くかなど、多くの要素に左右されます。

ここに紹介するのは、ロシア対外情報庁長官であるセルゲイ・ナルイシキンの発言です。彼はアメリカCIA長官に相当する人物であり、NATOの国境での動き、とりわけフランスに関してコメントしています。

「ベラルーシ共和国国家保安委員会およびロシア対外情報庁の前において、我々の国の安全保障を確保するという困難かつ具体的な任務が課されています。それは、敵対的な国々の攻撃的な野心と、我々の国家への脅威に対抗することです。

この方向において、すでにかなりのことがなされています。しかし同時に、我々の国境においてNATO諸国による軍事活動が活発化しているのを目にし、感じています。特にフランス、イギリス、ドイツなどのヨーロッパ諸国が、ウクライナ紛争をめぐるエスカレーションのレベルを引き上げています。したがって、我々は予防的に行動しなければならないのです。」

私はマクロン大統領がパレスチナ国家を承認することを望んでいますが、彼はこのように「熊をつつく」行為(ロシアを威嚇する行為)が何を意味するか分かっているのでしょうか? ナルイシキン氏が言っていることは、プーチン大統領が考えていることそのものです。

私もそう思います。そして、それこそが問題なのです。特に今のヨーロッパでは、政治指導層が自分たちが信じている物語に自らを閉じ込めてしまっているのです。

そして、たとえばドイツの次期首相となるメルツは、ロシアを攻撃するために「タウルス・ミサイルを使用する」とまで語っています。ドイツは再びそのような道を歩もうとしているのです。

しかし彼らにとっては、それは単に「ウクライナを支援する」ことに過ぎず、完全に正当だと考えており、なぜそれが物議を醸すべきことなのか理解していません。つまり、あらゆる反対意見は「プーチンの味方をしている」として切り捨てられてしまいます。

思い出してほしいのは、ロシアの侵攻が始まった当初、F-16戦闘機を送ることは「第三次世界大戦を意味する」とバイデンらが言っていたことです。彼らは大砲を送ることすら非常に慎重でした。しかし今では、この考え方に慣れてしまっています。

ここまで来ると、(ウクライナ・米国側は)エスカレーションを常態化させてしまったのです。そして今では、「ロシアにも報復する権利がある」という当然の事実すら理解されていません。

たとえば、先のニューヨーク・タイムズの記事に戻って想像してみてください。もし、ロシアが我々の都市を攻撃し、軍事作戦の計画を立て、標的を定め、武器を供給し、後方支援まで行い、そしてその武器を実際に操作して、例えばアメリカ兵を何千人も殺しているという記事が出たとしたら、アメリカはどう反応するでしょうか? アメリカは、自国に報復の権利があると考えるのではないでしょうか?

今、ウクライナが崩壊しつつある状況の中で、ヨーロッパが動きを加速させているのをロシアが目にしたなら、彼らは報復に出るでしょう。私は、もはやロシアがこれを黙って受け入れるとは思えません。

これは明らかであるべきことです。しかし、誰もそれを見ようとしていません。

我々は非常に奇妙で非合理的な道を進んでおり、それは非常に危険です。

(翻訳以上)

Thursday, April 17, 2025

ダグラス・マクレガー:トランプは戦争を止められる Douglas Macgregor: Trump just has to say NO.

きょうは4月15日のナポリターノ判事チャネルから、ダグラス・マクレガー氏の翻訳をお届けします(一部繰り返しなどは割愛しています)。元軍人の現実的なコメントは好戦的な政治家の危険性を浮き彫りにします。(青字はナポリターノの質問です。)ここでマクレガーは22年4月、ロシアの特別軍事作戦が始まった直後にトランプから電話を受け取りウクライナ情勢について尋ねられたという会話の内容を披露していることに注目しています。ネタニヤフの言いなりになって対イランに「リビア方式」(政権転覆)の戦争をもたらすこと、英独仏ゼレンスキー連合がウクライナ和平を妨害することだけは防がねばなりません。米国に根強い、平和を脅かす「ボムズ・アウェイ・クラブ」という指摘も的確と思いました。いまトランプが置かれている立場を、第一次大戦のドイツ皇帝と重ねているところも興味深いです。ふたたび敢えて好戦的なネオコンを周囲で固め迷走するトランプ政権への懸念を語るマクレガー氏の、膨大な歴史と軍事の知識い基づいた理性の声です。@PeacePhilosophy   

 

ナポリターノ:アメリカは再びISISやアルカイダと手を組んでいるのでしょうか? そして、その連携にはフーシ派に対する空爆の実施も含まれているのでしょうか?

マクレガー:ご存じのとおり、アメリカは代理勢力を使うのを好む国です。自国の兵力ではなく、他人の地上部隊を使って敵と戦う方がはるかに都合がいいのです。ですので、今まさにご指摘の通り、サウジアラビア半島やアラビア半島の勢力を組織し、地上で戦わせながら、アメリカは空と海から支援・攻撃を行うという取り組みが進んでいることは確かだと思います。

明らかに、アメリカ海兵隊を使う意思はありません。本気なら海兵隊を上陸させていたはずです。これはまさに、海兵隊がもともと想定されていた任務――敵拠点への急襲や、港湾などの戦略拠点の制圧といった行動――にぴったり合致する任務です。でもやる気はない。

もちろん、ISISとアルカイダは国務長官と財務長官によりテロ組織として指定されています。そして、それらの組織に対して物的支援を提供することは重罪とされています。しかし、どうやらそのルールは国防総省やCIAには適用されないようです。

実際、そういったことはマケイン上院議員にも当てはまりませんでした。彼は、シリアやイラク北部でそのような動きを支援し、当時アサド政権やその同盟勢力に対抗する、イスラム主義勢力に装備を与えるよう促すために自ら現地を訪れました。ですので、これは新しい話ではなく、法律をあからさまに無視する行為がまた一つ加わったというだけです。

アメリカがイエメンの人々を攻撃し、殺害することに、何か軍事的に正当化できる理由はあるのでしょうか? それとも、単にネタニヤフ首相の好戦性を満たすためなのでしょうか?

もちろんアメリカはスエズ運河や紅海を通る海上貿易の流れが途絶えることなく続いてほしいと考えています。それは恒久的な国益であり、それゆえに海軍がその航路を保護し、可能な限りその安定を図ることには道理があります。

しかし問題は、私たちが単なる同盟関係にあるのではなく、イスラエルが展開している攻勢的な軍事行動に完全に組み込まれているということです。そのため、イスラエル、そして率直に言って我々アメリカの持つすべてのものが「敵の一部」として見なされる状況になっています。判事、我々は非常に厳しい立場に立たされています。事実上、イスラエルに反対するすべての勢力と戦争状態にあるのです。

先週、ネタニヤフ首相はトランプ大統領と2時間ほど面会し、その後、ホワイトハウスで共同記者会見を開きました。その場で、トランプ大統領は自身の特使スティーブ・ウィットコフ氏がイランとの直接交渉に臨むと発表しました。ネタニヤフ首相は、この発表に愕然とした様子でした。事前に知らされていたのか、それともトランプ大統領が彼を意図的に恥をかかせようとしたのかは分かりません。『エコノミスト』誌やBBCによると、ネタニヤフ首相は、トランプ大統領に対して、トルコのエルドアン大統領を公然と批判し、対イラン戦争におけるイスラエルへの支持を表明させたかったですが、そのどちらもトランプ大統領から引き出すことはできませんでした。あなたはこの見方を支持しますか?

そうですね、現場にいなかった私としては断言できませんが、まず第一に、トランプ大統領はイスラエルとトルコの間の紛争に巻き込まれることを望んでいないと思います。それは、アメリカの外交・安全保障政策の観点から見れば、自滅的どころか、破滅的な選択になるからです。

一方で、トランプ大統領は、ネタニヤフ氏の対イラン戦争に関与せざるを得なくなる前に、何らかの合意を形成する「最後かつ最良の機会」と見ているのではないかと私は考えています。その戦争が今後現実化する可能性は残っていますし、大統領自身もその点を明確にしています。

とはいえ、大統領は非常に難しい立場にあります。身動きの取れる余地があまりないのです。というのも、彼は非公式ながら、イランに突きつけた極端な要求をすでに軟化させているからです。

このことは、ネタニヤフ氏にとって重大な懸念点であると思われます。というのも、もし米国がイランに対して「ウラン濃縮を60%にとどめること」だけを要求し、それ以外の要求をすべて棚上げするというのであれば、それはネタニヤフ氏の長期的な目的にかなうものではありません。

ネタニヤフ氏は「イランに対してリビア方式(※カダフィ政権崩壊のような政権転覆)を適用すべきだ」と明言してきました。そして私は、これはゼレンスキー氏がロシアに対して目指している構図と同じだと思います。

トランプ大統領は、いまや二つの強硬で従わないとされる「同盟国」と向き合わざるを得ない状況にあります。しかも、そのどちらとも正式な同盟条約は存在しません。それにもかかわらず、アメリカはゼレンスキー氏とネタニヤフ氏を「同盟国」と見なしているのです。

さてここで、あなたが以前、ダニエル・デイヴィス大佐がイランの軍事力について語ったときのコメントを紹介します。

デイビス:「世界中のどの国が、自国の大使館を他国で破壊され、自国の首都で就任式の日に暗殺事件が起きても(訳者注:イランのこと)、戦争を起こさないでいられるでしょうか? しかし、イランは実際にやりませんでした。──それをやる力がないからです。」

マクレガー:「ちょっと待ってください。それは間違っています。イランには戦争をする力がない? あなたはイランをちゃんと見たことがありませんね。イランのミサイルの兵器庫は膨大であり、イスラエルを一日で破壊することも可能です。イランには戦争をする力があります。イランは繰り返し、意図的に戦争を避けてきたのです。そして私はこれを千回は言っていますが、中東で戦争を望んでいるのは、イスラエルとアメリカだけです。」

トランプ政権下の外交政策チーム──バンス、ヘグセス、ルビオ、ゴルカ、ウォルツ──彼らはこの事実を理解しているのでしょうか?

アメリカの外交政策とは何でしょうか? 私が思うに、アメリカの外交政策は二重構造になっています。一方では、トランプ大統領がその日その日に言うきまぐれ。そしてもう一方では、彼の政権の一部をなしている恒常的なネオコン官僚機構です。

大統領は非常に衝動的です。私はいかなる戦略も、一貫したアプローチも見えてきません──それが不法移民の大量追放であろうと、国境の体系的な強化であろうと、ウクライナ戦争の早期終結であろうと、何であろうとです。どこに戦略があるのでしょう? どんなアプローチなのでしょう? どんな枠組みなのでしょう? 私には何も見えません。

だから、結局はこうなるのです──『今日か昨日、トランプ大統領が言ったことがすべて』。そして大統領本人はそれで十分満足しているはずです。そして、あなたが挙げた他の人々は……。最近ある人がこう言いました──『ピエロを雇えばサーカスになる』。まさにその通りで、あなたが名前を挙げた人々は、この広がるサーカスに参加しているのでしょう。

では、この“サーカスの団長”の一人、ヘグセス国防長官を紹介しましょう。日曜の朝(フォックスニュース)の発言です。

ヘグセス長官:「大統領は『イランに核兵器を持たせてはならない』という主張を本気でしています。20年間ずっと言い続けており、一貫しています──それは明らかです。しかし同時に大統領は、『交渉の場で解決できなければ、他の手段もある』とも真剣に言っています。──イランに核兵器を持たせないようにするために。我々は、そこまではしたくないと本気で思っています。でも、我々がフーシ派に対してやっていることや、この地域での活動は、『遠くへ、深くへ、大規模に』行動する能力があることを示しています。繰り返しますが、我々はそれを望んでいるわけではありません。しかし、必要であれば、我々はそうする(武力行使する)でしょう。イランの手に核兵器が渡るのを防ぐために。」

アメリカは、『遠くへ、深くへ、大きく』行って、フーシ派の力を削ぐことに成功しているのでしょうか?

米国が実際に言っているのは、『イランに核兵器を持たせてはならない』ではなく、『イスラエルが地域で核の独占状態を維持しなければならない』ということです。これが本当の狙いです。

フーシ派は依然として存在しています。彼らは爆撃による甚大な打撃に耐えてきました。それでも中東において米国が爆撃で成功を収めることはできません。昔、ある提督がこう言っていたと思います──『殺しまくっても成功はしない』と。まさにその通りで、我々は今まさに、『爆撃によって成功しよう』としている段階にあります。でも、それでは成功できません。

もしフォックスのアナウンサーがヘグセスに「なぜイスラエルは核兵器を持ってもいいのに、イランはだめなのですか?」と聞いたらヘグセスはなんと答えていたでしょうね。

おそらく、彼は言葉に詰まったでしょう。それは、彼がこれまでに対処したことのない問題だからです。それはアメリカの誰もが正面から向き合えない問いです。なぜなら、もしイスラエルが300発の核兵器を保有し、それを空から、陸から、あるいは海から即座に発射できる体制にあるとするなら、イラン、トルコ、サウジアラビア、エジプト、その他の地域諸国が核抑止力を持たずに生き延びることは不可能だからです。イスラエルが本気でそう望めば、他国を完全に消滅させることができてしまうのですから。

アメリカはその視点から物事を見ていません。アメリカの前提はこうです──「この地域で核能力を持つ権利があるのはイスラエルだけ」そしてそれは、「イスラエルだから」という理由で正当化されてしまっているのです。

さて、日曜の夜、フロリダの自宅から戻るエアフォースワン機内で、大統領は長時間にわたって発言しました。これから私が質問するのは次の点です──ウクライナ戦争は、いまやドナルド・トランプの戦争なのでしょうか?

記者:「ロシアによる、ウクライナでの『棕櫚の日曜日(Palm Sunday)』の攻撃について、何かご感想はありますか?」

トランプ:「ひどい出来事だったと思う。ロシアが間違いを犯した。この戦争そのものが恐ろしいものであり、そもそもこの戦争が始まったこと自体が権力の乱用だった。」

「これはバイデンの戦争だ。私の戦争ではない。私はまだ就任してから日が浅い。これはバイデン政権下で始まった戦争です。彼はウクライナに数百億ドルもの資金を提供した。あんなことは絶対に許すべきではなかった。」「私なら絶対に、あの戦争を起こさせなかった。私は今、それを止めようとしている。多くの命を救うために。ウクライナ人もロシア人も命を落としています。私が望んでいるのは、それを止めることだ。」

ところで、バイデン大統領がウクライナに対して約1650億〜1900億ドル(正確な数字は測定方法によって異なります)相当の軍事装備や現金を供与したのは、特定の法律に基づいています。そして、トランプ大統領のもとでも10億ドル相当の軍事装備がキエフに送られていますが、それも同じ法律に基づいており、その装備の送付は大統領の裁量に委ねられています。

質問:いまやウクライナ戦争はドナルド・トランプの戦争と言えるのでしょうか?

はい。唯一、彼の戦争ではなかったと言える可能性があったとすれば、それは就任の翌日に立ち上がって、あるいは大統領令などを出して、ウクライナへのすべての軍事支援を停止すると明確に宣言していた場合だけです。これが第一の条件です。

そして第二に、制服組であれ文民であれ、情報機関職員であれ関係なく、すべてのアメリカ人職員が48時間以内にウクライナから撤退するという命令を出していたならば、そのときだけ、これは彼の戦争ではないと言えたでしょう。しかし、彼はその正反対のことを行いました。そして、実質的に彼がこれまでに行ってきたことは、バイデン政権の政策を拡張しただけなのです。したがって、今では彼自身の戦争となってしまいました。

彼にはそれを止める方法が分かっているのです。そして、それこそが私が先ほど述べたことなのです。しかし、彼にとって常に問題だったのは、彼の知恵や直感に反する行動を正当化するような進言をする人物たちを、自らの周囲に置いていることです。

お話ししましょう──2022年4月、私のもとにマーラ・ラゴから(トランプから)電話がかかってきました。電話の向こうの声はこう尋ねてきました。「ウクライナで起きていることについて、あなたはどう思いますか?」

それはおそらく、2022年4月の最初の週だったと思います。私は「これは大惨事だ。すぐに止めなければならない」と言いました。

するとその声は「なぜだ?」と返してきました。

私は「このままでは、ロシアがウクライナを打ち砕くことになる」と答えました。

するとその人物はこう言いました。「でもこちらでは皆、ウクライナが勝っていて、ロシアが負けていると言っている。」

私はこう返しました。「まず第一に、それは間違いです。事実ではありません。第二に、我々にはその地域で戦争を行う利害関係がありません。我々が関心を持つべきなのは“平和”と“安定”です。そして、その地域に平和と安定をもたらすためにできることがあるならば、それこそが最優先されるべきなのです。なぜなら、ウクライナ東部には、我々が利害関係を持つような事情は何も存在しないからです。」

こうして私は、ゴルカやウォルツのような人々が常に側近におり、彼らが大統領の周囲を固め、「アメリカが何らかの形で直接関与しなければ何も起こらない」と説得しようとしていると考えています。たとえその戦争が、アメリカにとって戦略的に何の価値もないものであったとしてもです。

さらに言えば、彼らは「アメリカが解決策を押しつけなければ、弱く見られる」とも主張するのです。つまり、話は結局「どうやって“ボス”に勝ちを届けるか」という話に戻ってくるのです。スポーツとは違い、ウクライナで数百万の人々が生死をかけていることなのに。

そして、もし我々が慎重でなければ、この戦争はさらに拡大する可能性があります。それはプーチン大統領の望みによってではなく、むしろパリ、ロンドン、ベルリンで愚かな政治判断をしている人々のせいで起こりうるのです。

もちろん、それはリトアニア、ラトビア、エストニアの愚かな人々にとっては“喜ばしいこと”になるかもしれません。これらの国々は24時間以内に壊滅させられる可能性があるからです。

こんなナンセンスは、もう終わらせなければなりません。

トランプはNATOのリーダーなのです。事実上、NATOを指揮しているのです。ですから、彼こそが「終わりだ。我々は降りる。この戦争を支援することはもうない」と言わなければならないのです。彼がそう言った瞬間に、すべてが変わります。ゼレンスキーは職を失います。ゼレンスキーには未来がありません。彼の腐敗した犯罪的な政権は──おそらく世界で最も腐敗した国だとすら言われるその国の政権は──崩壊するでしょう。

だからこそ、今やこの戦争は彼(トランプ)のものなのです。それは悲劇的なことですし、不要なことでもあります。なぜなら、彼自身もこの戦争を望んではいなかったのです。しかし、彼はそれを止めていないのです。

とはいえ、大佐、トランプ大統領のウクライナに対する公式特使であるケロッグ将軍は、ある「解決策」を提案しました。私からすれば、それは狂気の沙汰としか思えませんが、彼の提案とはこうです──「ウクライナを、1945年の戦後ベルリンのように分割する」というものです。彼はこの3年間、岩の下にでも住んでいたのでしょうか? そんな解決策が、ラブロフ外相やウィットコフのような交渉担当者たちによって一瞬でも検討されると本気で思っているのでしょうか?

私の見立てでは、ケロッグ将軍の想定している対象モスクワではありません。彼は、西ヨーロッパ──先ほど述べた3つの首都(英国、フランス、ドイツ)──そしてここワシントンD.C.向けにこういうことを言っているのです。

彼のような人々は、「この戦争を続けることでアメリカも世界もヨーロッパも利益を得られる」と本気で信じているのです。しかし、そのような証拠はどこにも存在しません。この戦争は破壊的であり、すべての人に損害を与えています。我々アメリカにも、経済的にも戦略的にも大きな損害をもたらしているのです。

ここで、私たちがこの数年間で学んだ、非常に重要な教訓を二つ、立ち止まって考えてみていただきたいと思います。

第一に、我々の装備、組織、戦術は、今日存在する戦場では通用しないということです。私たちは、まったく異なる世界に生きているのです。現在の戦場──あるいは「バトルスペース(戦闘空間)」と呼ばれるもの──は劇的に変化しています。ロシアはそれに適応しました。ですが、我々アメリカはそうしていません。

そして、現在アメリカ軍の高位を占めている「天才的な軍事指導者たち」が、どのように作戦を遂行するかについて大きな決定を下してきました。その結果として、ウクライナ兵の死者はおよそ120万から150万人に達し、この戦争はウクライナにとって敗北に終わったのです。

そして今、ロシアはさらに西へと進軍し、自らの支配を強化する準備を整え、最終的にこの戦争を終わらせようとしています。

これが「第一の破局」です。

しかし、我々はその現実を受け入れようとしていません。もし私たちが、この戦場を客観的に見つめ、軍事的に何が起きたのかを正しく理解することができれば、我々がロシアとの実戦において、まともにやり合える立場にはまったくないということを、すぐに理解できるはずなのです。

二つ目のポイントとして、関税をご覧ください。関税は、我々の経済的な弱さを明らかにしました。

私たちはこの関税戦争に、ナヴァロ氏やおそらくルトニック氏のような人物が提唱した前提──すなわち、外国資本がアメリカ市場に流れ込むだろうという前提──に基づいて突入しました。しかし、実際には資本は流入していません。債券市場は壊滅的です。このままでは金利が5%に達するかもしれません。もしそうなれば、私たちはすべてを失うことになります。なぜなら、日本も中国も、他国の投資家も、アメリカ国債を売却しているからです。

こうした状況の中で、トランプ大統領は今なお「私は平和を望んでいる」と言いつつも、「他のこともやっているふりをする」、あるいは「強く見せるために別の行動を取る」といった間を行き来し続けています。

これは完全な、正常を逸した行為です。

中国は、アメリカで販売されているすべての抗生物質の成分のほぼ50%を製造しています。F-35──これは本日の『フィナンシャル・タイムズ』の記事から読んでいますが──F-35はアメリカ空軍の主力戦闘機であり、その製造には中国産のレアアース(希少金属)が不可欠です。そして中国は、アメリカ国債を約1兆ドル保有しています。まったく、誰も彼にこのような事実を伝えなかったのでしょうか? 中国からのすべての輸入品に対して145%の関税を課す前に?

さて、多くの人がマスク氏(イーロン・マスク)を好ましく思っていないのは承知していますが、彼はナヴァロ氏に対してかなり手厳しいコメントをしています。そしてまた、誰かの言葉を思い出します──誰の言葉だったかは忘れましたが──「ピエロを雇えばサーカスになる」という言葉です。

つまり、誰も事前に下調べをしていないように見えるのです。すべてが衝動的に進められており、皆が成り行き任せに行動しているのです──何よりも大統領自身がそうです。

そして、大統領はもっと有能で慎重に物事を調べる人物たちを、自分の周囲に置くべきです。歴史からの教訓はこうです──何か行動を起こす前には、得られるものと失うかもしれないものを常に比較して検討すべきなのです。特に戦争においては、それが何より重要です。

そしてたいていの場合、軍事的手段に訴えるのは賢明ではありません。なぜなら、一度それを始めてしまえば、すべてが制御不能になるからです。収拾がつかなくなるのです。次に何が起きるのかは誰にも分かりません。

それなのに、右派にも左派にも、爆撃を望んでいる愚かな人々がいます。私たちはこれまで何度、「なぜロシアがイランを支援する戦略的理由を持っているのか」について話してきたでしょうか? 人々はそれを理解していません。

もしあなたがロシア人であれば、南を見ればイランがあります。さらにその先にはカフカス地方があります。ロシアにとって、あの地域には友好的な国々があってほしいのです。あそこには平和と安定が必要です。なぜなら、あの地域はロシアにとって「柔らかい下腹部」──つまり防御の弱点だからです。それは、アメリカにとってのメキシコと同じくらい重要なのです。そうでしょう?

そして今、ロシアは、我々がネタニヤフ氏のためにイラン政権を破壊しようとしているのではないかと警戒しているのです。それでも足りないのでしょうか? 思い出してください、ネタニヤフ氏は「リビア方式」をイランに適用したいと考えています──つまり、イラン政府を転覆させたいのです。

そして、その後に何を据えるのでしょうか? おそらくロシアに敵対するような何かでしょう。それこそがロシアが最も嫌うことなのです。彼らは南部国境を守りたいのです。あの地域に平和と安定を望んでいるのです。

これは、本当に何度も繰り返すにはバカバカしすぎる話です。しかし、ワシントンには戦略的思考というものがまったく存在しません。すべてが傲慢と無知の暴走です。

数分前にマケイン上院議員の名前が出ましたね。私の友人で、あなたの熱心なファンでもあるトム・ウッズは、かつてこう言いました──「誰に投票しても、結局はジョン・マケインになる」と。

おそらくこれは、多くのアメリカ人が、大声で威圧的な態度を取る人物に簡単に感心してしまうからだと思います。他に説明のしようがありません。

アメリカには昔から「ボムズ・アウェイ・クラブ(爆撃至上主義クラブ)」のような人々が一定数存在してきたと私は思っています。彼らは「どこかで爆弾を落としている限り、アメリカは偉大な国である」と思い込んでいるのです。

しかし、実際にはそんなことはないということを、あなたも私も知っています。

私たちが本当に望むべきなのは、第二次世界大戦以前に持っていたような、「公平さと品位において世界に認められる名声」なのです。

第一次世界大戦が終わり、ヴェルサイユ条約の調印が進んでいたころ──これは信じがたい話かもしれませんが──シリアから来たアラブ代表団は、アメリカに「自分たちの国を統治してほしい」と願い出たのです。彼らはイギリスにもフランスにも望んでいませんでした。

その理由は極めて明快でした。我々アメリカは植民地主義国家ではなく、帝国主義者でもありませんでした。そして彼らは、アメリカを公平で正義ある国民だと見なしていたのです。

ですが、過去30年間にわたって我々が行ってきたことを見る限り、いまやシリアをはじめとするイスラム世界のどの国の人々も、アメリカ人が自分たちの土地に来ることを望んでいないでしょう。そう思いませんか?

最後にもう一つだけ言わせてください。

1914年に戦争が勃発したとき、イギリスとフランスの大使たちはすぐに会談し、お互いにこう言いました。「この戦争を誰よりも嫌がっているのは、ベルリンにいるカイザー(皇帝、当時ヴィルヘルム2世)だ。彼は戦争を決して望んでいなかった。」

実際、その通りでした。

そして、物語の残りは非常に単純です。彼には、その戦争を──迅速に、決定的に──始まる前に止める力が常にあったのです。にもかかわらず、それを実行しませんでした。

ドイツ軍がベルギーへ侵攻する直前、皇帝は参謀長にこう尋ねました。「将軍よ、これは止められるのか?」

その答えは、本来であれば「イエス」でした。なぜなら、皇帝こそが軍最高指揮官だったからです。しかし、将軍はこう答えました──「陛下、それは難しいかと思います。」

馬鹿げた話です。そして、今まさにトランプ大統領が考えるべきは、まさにこのことなのです。

なぜなら、現在の彼の立場は、単なる“普通の大統領”以上のものだからです。彼はいま、破滅の瀬戸際に立っています。そして彼にはそれを止める力があるのです。

必要なのはただ一言──「ノーだ。終わりにする。やめよう。」そう言えば済むことなのです。

(以上)


ケイトリン・ジョンストン:「イスラエルには自衛の権利がある」というスローガンは、ジェノサイドを正当化する言葉である Caitlin Johnstone: "Israel Has A Right To Defend Itself" Is A Genocidal Slogan

オーストラリアのジャーナリスト、ケイトリン・ジョンストン氏の揺るぎないヒューマニティをいつも尊敬しています。Xでは40万人を超えるフォロアーに向け彼女は毎日、帝国主義を否定する確かな声を届けています。きょうの投稿の訳をAIの力を借りてこに紹介します。米国のリベラルな政治家の代表格でさえジェノサイドを「ジェノサイド」と呼ぶことさえできず、声を上げる者に背を向け、「イスラエルの自衛権」を繰り返す。お前に人間の良心はあるのか。心が痛むことはないのか、と問いたいです。民主党も共和党も一緒、米国は超党派ジェノサイド帝国です。どこに希望を見出したらいいかわかりませんが、自分も声をあげる一人で居続けます。 @PeacePhilosophy
アレクサンドリア・オカシオ=コルテスと、バーニー・サンダース

「イスラエルには自衛の権利がある」というスローガンは、ジェノサイドを正当化する言葉である

バーニー・サンダースは、アレクサンドリア・オカシオ=コルテスと共に行っている「寡頭制(オリガーキー)との闘い」ツアーにおいて、「イスラエルには自衛の権利がある」というフレーズを繰り返し口にしている。これは2025年現在、あからさまなジェノサイド擁護としてしか解釈できない。

イスラエルには、巨大な強制収容所と化した占領下の民衆に対して「自衛する権利」など存在しない。国際法の下でイスラエルに認められているのは、占領を終わらせる権利のみである。「イスラエルには自衛の権利がある」という言葉は、進行中のジェノサイドに兵器を供給し続けることを正当化したい者たちが使うスローガンに過ぎない。

ツアー中のある場面では、サンダースの演説中に「パレスチナに自由を」という旗が米国旗に重ねて掲げられた。すると警察がその参加者たちを強制的に排除し、旗を没収した。観客がブーイングを上げ、「フリーパレスチナ」と唱和し始める中、サンダースはそれを傍観しながらぎこちなく演説を続けた。

@zei_squirrel(2025年4月12日)

「今日ロサンゼルスの集会で、バーニー・サンダースはまたもや例のジェノサイド的シオニスト・プロパガンダ、「イスラエルには自衛の権利がある」という決まり文句を繰り返した。彼は、18か月も続くジェノサイドを認めようとせず、それを支え続けている。彼はもはや回復不能な倫理的怪物であり、まったき道徳的破綻者である。」

サンダースは、イスラエル支持をガザでのイスラエル政府の行動に対する時おりの批判と組み合わせながら語っているが、常に批判の矛先は現在のイスラエル指導部の「振る舞い」に向けられており、システムとしての人種隔離国家イスラエルそのものには決して触れない。

彼がこのように振る舞う理由は二つある。第一に、彼はトランプに対抗するための包括的な「ビッグ・テント」民主党連合を築こうとしており、その中には「ジェノサイドに反対する人々」と「ジェノサイドを容認する人々」の両方を取り込もうとしている。彼はジェノサイドを支持するリベラル層を怒らせたくないのである。

第二に、サンダース自身がシオニストだからである。他のリベラル・シオニストと同様、彼は現実には存在したことのないイスラエル像──ユダヤ人が支配する民族国家でありながら、優しく公正に振る舞い、パレスチナ人を殺したり虐げたりしないイスラエル──を信奉している。

しかし、そのようなイスラエルは幻想である。ナーニアのような空想の国に過ぎない。現実のイスラエルはそのような状態が生まれる可能性をあらゆる面で否定しており、建国以来一貫してパレスチナ国家の樹立を妨げるためにあらゆる手段を講じてきた。シオニズム国家と「平和と正義」の共存が可能であるかのように装うことで、リベラル・シオニストたちはジェノサイド的アパルトヘイト国家イスラエルへの武器供与を正当化する世論の形成に加担しているのである。

@zei_squirrel(2025年4月14日)

「ほんの数分前、バーニー・サンダースの集会で、反ジェノサイドの人々が「パレスチナに自由を」と書かれた旗を掲げたところ、警官たちが彼らを逮捕した。サンダースはそれを見ながら一言も発することなく黙認した。ちょうどその1分前、彼は「イスラエルには自衛の権利がある」と語っていた。 」

リベラル・シオニストがイスラエルの行動を擁護したいときは、イスラエルを「国家」として語る──たとえば「イスラエルには自衛の権利がある」という具合に。しかし、イスラエルを批判したいときは、すべてをネタニヤフ個人の問題にすり替える──たとえば「ネタニヤフの戦争マシン」という具合に。

つまり、イスラエルに同情を集めたいときは「国家全体」として語り、イスラエルの行為を非難せざるを得ないときは、責任を「一人の悪者」に押しつけるという構図である。こうすることで、イスラエル全体は「美徳ある支援すべき存在」であり続け、リベラル・シオニストは「ネタニヤフを批判した進歩的な人間」という衣を身にまといながら、イスラエルへの兵器供与を継続させることができる。

だが、これは完全なる虚偽である。ネタニヤフがイスラエルのジェノサイド傾向を作り出したのではない。イスラエルのジェノサイド的傾向こそがネタニヤフを生んだのである。ネタニヤフの政治的キャリアは、イスラエルに根深く存在する人種差別と精神的病理によって支えられてきた。

これは、オバマ時代によく見られた戦術の焼き直しにすぎない──すなわち、「進歩的」な言葉を巧みに使って、アメリカ帝国のもっとも破壊的な議題を推し進めるというやり口である。

言い換えれば、それは民主党らしさそのものである。

(翻訳以上)

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