きょうは4月15日のナポリターノ判事チャネルから、ダグラス・マクレガー氏の翻訳をお届けします(一部繰り返しなどは割愛しています)。元軍人の現実的なコメントは好戦的な政治家の危険性を浮き彫りにします。(青字 はナポリターノの質問です。)ここでマクレガーは22年4月、ロシアの特別軍事作戦が始まった直後にトランプから電話を受け取りウクライナ情勢について尋ねられたという会話の内容を披露していることに注目しています。ネタニヤフの言いなりになって対イランに「リビア方式」(政権転覆)の戦争をもたらすこと、英独仏ゼレンスキー連合がウクライナ和平を妨害することだけは防がねばなりません。米国に根強い、平和を脅かす「ボムズ・アウェイ・クラブ」という指摘も的確と思いました。いまトランプが置かれている立場を、第一次大戦のドイツ皇帝と重ねているところも興味深いです。ふたたび敢えて好戦的なネオコンを周囲で固め迷走するトランプ政権への懸念を語るマクレガー氏の、膨大な歴史と軍事の知識い基づいた理性の声です。@PeacePhilosophy
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ナポリターノ:アメリカは再びISISやアルカイダと手を組んでいるのでしょうか? そして、その連携にはフーシ派に対する空爆の実施も含まれているのでしょうか?
マクレガー:ご存じのとおり、アメリカは代理勢力を使うのを好む国です。自国の兵力ではなく、他人の地上部隊を使って敵と戦う方がはるかに都合がいいのです。ですので、今まさにご指摘の通り、サウジアラビア半島やアラビア半島の勢力を組織し、地上で戦わせながら、アメリカは空と海から支援・攻撃を行うという取り組みが進んでいることは確かだと思います。
明らかに、アメリカ海兵隊を使う意思はありません。本気なら海兵隊を上陸させていたはずです。 これはまさに、海兵隊がもともと想定されていた任務――敵拠点への急襲や、港湾などの戦略拠点の制圧といった行動――にぴったり合致する任務です。でもやる気はない。
もちろん、ISISとアルカイダは国務長官と財務長官によりテロ組織として指定されています。そして、それらの組織に対して物的支援を提供することは重罪とされています。しかし、どうやらそのルールは国防総省やCIAには適用されないようです。
実際、そういったことはマケイン上院議員にも当てはまりませんでした。彼は、シリアやイラク北部でそのような動きを支援し、当時アサド政権やその同盟勢力に対抗する、イスラム主義勢力に装備を与えるよう促すために自ら現地を訪れました。ですので、これは新しい話ではなく、法律をあからさまに無視する行為がまた一つ加わったというだけです。
アメリカがイエメンの人々を攻撃し、殺害することに、何か軍事的に正当化できる理由はあるのでしょうか? それとも、単にネタニヤフ首相の好戦性を満たすためなのでしょうか?
もちろんアメリカはスエズ運河や紅海を通る海上貿易の流れが途絶えることなく続いてほしいと考えています。それは恒久的な国益であり、それゆえに海軍がその航路を保護し、可能な限りその安定を図ることには道理があります。
しかし問題は、私たちが単なる同盟関係にあるのではなく、イスラエルが展開している攻勢的な軍事行動に完全に組み込まれているということです。 そのため、イスラエル、そして率直に言って我々アメリカの持つすべてのものが「敵の一部」として見なされる状況になっています。判事、我々は非常に厳しい立場に立たされています。事実上、イスラエルに反対するすべての勢力と戦争状態にあるのです。
先週、ネタニヤフ首相はトランプ大統領と2時間ほど面会し、その後、ホワイトハウスで共同記者会見を開きました。その場で、トランプ大統領は自身の特使スティーブ・ウィットコフ氏がイランとの直接交渉に臨むと発表しました。ネタニヤフ首相は、この発表に愕然とした様子でした。事前に知らされていたのか、それともトランプ大統領が彼を意図的に恥をかかせようとしたのかは分かりません。『エコノミスト』誌やBBCによると、ネタニヤフ首相は、トランプ大統領に対して、トルコのエルドアン大統領を公然と批判し、対イラン戦争におけるイスラエルへの支持を表明させたかったですが、そのどちらもトランプ大統領から引き出すことはできませんでした。あなたはこの見方を支持しますか?
そうですね、現場にいなかった私としては断言できませんが、まず第一に、トランプ大統領はイスラエルとトルコの間の紛争に巻き込まれることを望んでいないと思います。それは、アメリカの外交・安全保障政策の観点から見れば、自滅的どころか、破滅的な選択になるからです。
一方で、トランプ大統領は、ネタニヤフ氏の対イラン戦争に関与せざるを得なくなる前に、何らかの合意を形成する「最後かつ最良の機会」と見ているのではないかと私は考えています。その戦争が今後現実化する可能性は残っていますし、大統領自身もその点を明確にしています。
とはいえ、大統領は非常に難しい立場にあります。身動きの取れる余地があまりないのです。というのも、彼は非公式ながら、イランに突きつけた極端な要求をすでに軟化させているからです。
このことは、ネタニヤフ氏にとって重大な懸念点であると思われます。というのも、もし米国がイランに対して「ウラン濃縮を60%にとどめること」だけを要求し、それ以外の要求をすべて棚上げするというのであれば、それはネタニヤフ氏の長期的な目的にかなうものではありません。
ネタニヤフ氏は「イランに対してリビア方式(※カダフィ政権崩壊のような政権転覆)を適用すべきだ」と明言してきました。そして私は、これはゼレンスキー氏がロシアに対して目指している構図と同じだと思います。
トランプ大統領は、いまや二つの強硬で従わないとされる「同盟国」と向き合わざるを得ない状況にあります。しかも、そのどちらとも正式な同盟条約は存在しません。それにもかかわらず、アメリカはゼレンスキー氏とネタニヤフ氏を「同盟国」と見なしているのです。
さてここで、あなたが以前、ダニエル・デイヴィス大佐がイランの軍事力について語ったときのコメントを紹介します。
デイビス:「世界中のどの国が、自国の大使館を他国で破壊され、自国の首都で就任式の日に暗殺事件が起きても(訳者注:イランのこと)、戦争を起こさないでいられるでしょうか? しかし、イランは実際にやりませんでした。──それをやる力がないからです。」
マクレガー:「ちょっと待ってください。それは間違っています。イランには戦争をする力がない? あなたはイランをちゃんと見たことがありませんね。イランのミサイルの兵器庫は膨大であり、イスラエルを一日で破壊することも可能です。 イランには戦争をする力があります。イランは繰り返し、意図的に戦争を避けてきたのです。 そして私はこれを千回は言っていますが、中東で戦争を望んでいるのは、イスラエルとアメリカだけです。」
トランプ政権下の外交政策チーム──バンス、ヘグセス、ルビオ、ゴルカ、ウォルツ──彼らはこの事実を理解しているのでしょうか?
アメリカの外交政策とは何でしょうか? 私が思うに、アメリカの外交政策は二重構造になっています。一方では、トランプ大統領がその日その日に言うきまぐれ。そしてもう一方では、彼の政権の一部をなしている恒常的なネオコン官僚機構です。
大統領は非常に衝動的です。私はいかなる戦略も、一貫したアプローチも見えてきません──それが不法移民の大量追放であろうと、国境の体系的な強化であろうと、ウクライナ戦争の早期終結であろうと、何であろうとです。どこに戦略があるのでしょう? どんなアプローチなのでしょう? どんな枠組みなのでしょう? 私には何も見えません。
だから、結局はこうなるのです──『今日か昨日、トランプ大統領が言ったことがすべて』。そして大統領本人はそれで十分満足しているはずです。そして、あなたが挙げた他の人々は……。最近ある人がこう言いました──『ピエロを雇えばサーカスになる』。まさにその通りで、あなたが名前を挙げた人々は、この広がるサーカスに参加しているのでしょう。
では、この“サーカスの団長”の一人、ヘグセス国防長官 を紹介しましょう。日曜の朝(フォックスニュース)の発言です。
ヘグセス長官:「大統領は『イランに核兵器を持たせてはならない』という主張を本気でしています。20年間ずっと言い続けており、一貫しています──それは明らかです。しかし同時に大統領は、『交渉の場で解決できなければ、他の手段もある』とも真剣に言っています。──イランに核兵器を持たせないようにするために。我々は、そこまではしたくないと本気で思っています。でも、我々がフーシ派に対してやっていることや、この地域での活動は、『遠くへ、深くへ、大規模に』行動する能力があることを示しています。繰り返しますが、我々はそれを望んでいるわけではありません。しかし、必要であれば、我々はそうする(武力行使する)でしょう。イランの手に核兵器が渡るのを防ぐために。」
アメリカは、『遠くへ、深くへ、大きく』行って、フーシ派の力を削ぐことに成功しているのでしょうか?
米国が実際に言っているのは、『イランに核兵器を持たせてはならない』ではなく、『イスラエルが地域で核の独占状態を維持しなければならない』ということです。これが本当の狙いです。
フーシ派は依然として存在しています。彼らは爆撃による甚大な打撃に耐えてきました。それでも中東において米国が爆撃で成功を収めることはできません。昔、ある提督がこう言っていたと思います──『殺しまくっても成功はしない』と。まさにその通りで、我々は今まさに、『爆撃によって成功しよう』としている段階にあります。でも、それでは成功できません。
もしフォックスのアナウンサーがヘグセスに「なぜイスラエルは核兵器を持ってもいいのに、イランはだめなのですか?」と聞いたらヘグセスはなんと答えていたでしょうね。
おそらく、彼は言葉に詰まったでしょう。それは、彼がこれまでに対処したことのない問題だからです。それはアメリカの誰もが正面から向き合えない問いです。なぜなら、もしイスラエルが300発の核兵器を保有し、それを空から、陸から、あるいは海から即座に発射できる体制にあるとするなら、イラン、トルコ、サウジアラビア、エジプト、その他の地域諸国が核抑止力を持たずに生き延びることは不可能だからです。イスラエルが本気でそう望めば、他国を完全に消滅させることができてしまうのですから。
アメリカはその視点から物事を見ていません。アメリカの前提はこうです──「この地域で核能力を持つ権利があるのはイスラエルだけ」そしてそれは、「イスラエルだから」という理由で正当化されてしまっているのです。
さて、日曜の夜、フロリダの自宅から戻るエアフォースワン機内で、大統領は長時間にわたって発言しました。これから私が質問するのは次の点です──ウクライナ戦争は、いまやドナルド・トランプの戦争なのでしょうか?
記者:「ロシアによる、ウクライナでの『棕櫚の日曜日(Palm Sunday)』の攻撃について、何かご感想はありますか?」
トランプ:「ひどい出来事だったと思う。ロシアが間違いを犯した。この戦争そのものが恐ろしいものであり、そもそもこの戦争が始まったこと自体が権力の乱用だった。」
「これはバイデンの戦争だ。私の戦争ではない。私はまだ就任してから日が浅い。これはバイデン政権下で始まった戦争です。彼はウクライナに数百億ドルもの資金を提供した。あんなことは絶対に許すべきではなかった。」「私なら絶対に、あの戦争を起こさせなかった。私は今、それを止めようとしている。多くの命を救うために。ウクライナ人もロシア人も命を落としています。私が望んでいるのは、それを止めることだ。」
ところで、バイデン大統領がウクライナに対して約1650億〜1900億ドル(正確な数字は測定方法によって異なります)相当の軍事装備や現金を供与したのは、特定の法律に基づいています。そして、トランプ大統領のもとでも10億ドル相当の軍事装備がキエフに送られていますが、それも同じ法律に基づいており、その装備の送付は大統領の裁量に委ねられています。
質問:いまやウクライナ戦争はドナルド・トランプの戦争と言えるのでしょうか?
はい。唯一、彼の戦争ではなかったと言える可能性があったとすれば、それは就任の翌日に立ち上がって、あるいは大統領令などを出して、ウクライナへのすべての軍事支援を停止すると明確に宣言していた場合だけです。これが第一の条件です。
そして第二に、制服組であれ文民であれ、情報機関職員であれ関係なく、すべてのアメリカ人職員が48時間以内にウクライナから撤退するという命令を出していたならば、そのときだけ、これは彼の戦争ではないと言えたでしょう。しかし、彼はその正反対のことを行いました。そして、実質的に彼がこれまでに行ってきたことは、バイデン政権の政策を拡張しただけなのです。したがって、今では彼自身の戦争となってしまいました。
彼にはそれを止める方法が分かっているのです。そして、それこそが私が先ほど述べたことなのです。しかし、彼にとって常に問題だったのは、彼の知恵や直感に反する行動を正当化するような進言をする人物たちを、自らの周囲に置いていることです。
お話ししましょう──2022年4月、私のもとにマーラ・ラゴから(トランプから)電話がかかってきました。電話の向こうの声はこう尋ねてきました。「ウクライナで起きていることについて、あなたはどう思いますか?」
それはおそらく、2022年4月の最初の週だったと思います。私は「これは大惨事だ。すぐに止めなければならない」と言いました。
するとその声は「なぜだ?」と返してきました。
私は「このままでは、ロシアがウクライナを打ち砕くことになる」と答えました。
するとその人物はこう言いました。「でもこちらでは皆、ウクライナが勝っていて、ロシアが負けていると言っている。」
私はこう返しました。「まず第一に、それは間違いです。事実ではありません。第二に、我々にはその地域で戦争を行う利害関係がありません。我々が関心を持つべきなのは“平和”と“安定”です。そして、その地域に平和と安定をもたらすためにできることがあるならば、それこそが最優先されるべきなのです。なぜなら、ウクライナ東部には、我々が利害関係を持つような事情は何も存在しないからです。」
こうして私は、ゴルカやウォルツのような人々が常に側近におり、彼らが大統領の周囲を固め、「アメリカが何らかの形で直接関与しなければ何も起こらない」と説得しようとしていると考えています。たとえその戦争が、アメリカにとって戦略的に何の価値もないものであったとしてもです。
さらに言えば、彼らは「アメリカが解決策を押しつけなければ、弱く見られる」とも主張するのです。つまり、話は結局「どうやって“ボス”に勝ちを届けるか」という話に戻ってくるのです。スポーツとは違い、ウクライナで数百万の人々が生死をかけていることなのに。
そして、もし我々が慎重でなければ、この戦争はさらに拡大する可能性があります。それはプーチン大統領の望みによってではなく、むしろパリ、ロンドン、ベルリンで愚かな政治判断をしている人々のせいで起こりうるのです。
もちろん、それはリトアニア、ラトビア、エストニアの愚かな人々にとっては“喜ばしいこと”になるかもしれません。これらの国々は24時間以内に壊滅させられる可能性があるからです。
こんなナンセンスは、もう終わらせなければなりません。
トランプはNATOのリーダーなのです。事実上、NATOを指揮しているのです。ですから、彼こそが「終わりだ。我々は降りる。この戦争を支援することはもうない」と言わなければならないのです。彼がそう言った瞬間に、すべてが変わります。ゼレンスキーは職を失います。ゼレンスキーには未来がありません。彼の腐敗した犯罪的な政権は──おそらく世界で最も腐敗した国だとすら言われるその国の政権は──崩壊するでしょう。
だからこそ、今やこの戦争は彼(トランプ)のものなのです。それは悲劇的なことですし、不要なことでもあります。なぜなら、彼自身もこの戦争を望んではいなかったのです。しかし、彼はそれを止めていないのです。
とはいえ、大佐、トランプ大統領のウクライナに対する公式特使であるケロッグ将軍は、ある「解決策」を提案しました。私からすれば、それは狂気の沙汰としか思えませんが、彼の提案とはこうです──「ウクライナを、1945年の戦後ベルリンのように分割する」というものです。彼はこの3年間、岩の下にでも住んでいたのでしょうか? そんな解決策が、ラブロフ外相やウィットコフのような交渉担当者たちによって一瞬でも検討されると本気で思っているのでしょうか?
私の見立てでは、ケロッグ将軍の想定している対象モスクワではありません。彼は、西ヨーロッパ──先ほど述べた3つの首都(英国、フランス、ドイツ)──そしてここワシントンD.C.向けにこういうことを言っているのです。
彼のような人々は、「この戦争を続けることでアメリカも世界もヨーロッパも利益を得られる」と本気で信じているのです。しかし、そのような証拠はどこにも存在しません。この戦争は破壊的であり、すべての人に損害を与えています。我々アメリカにも、経済的にも戦略的にも大きな損害をもたらしているのです。
ここで、私たちがこの数年間で学んだ、非常に重要な教訓を二つ、立ち止まって考えてみていただきたいと思います。
第一に、我々の装備、組織、戦術は、今日存在する戦場では通用しないということです。私たちは、まったく異なる世界に生きているのです。現在の戦場──あるいは「バトルスペース(戦闘空間)」と呼ばれるもの──は劇的に変化しています。ロシアはそれに適応しました。ですが、我々アメリカはそうしていません。
そして、現在アメリカ軍の高位を占めている「天才的な軍事指導者たち」が、どのように作戦を遂行するかについて大きな決定を下してきました。その結果として、ウクライナ兵の死者はおよそ120万から150万人に達し、この戦争はウクライナにとって敗北に終わったのです。
そして今、ロシアはさらに西へと進軍し、自らの支配を強化する準備を整え、最終的にこの戦争を終わらせようとしています。
これが「第一の破局」です。
しかし、我々はその現実を受け入れようとしていません。もし私たちが、この戦場を客観的に見つめ、軍事的に何が起きたのかを正しく理解することができれば、我々がロシアとの実戦において、まともにやり合える立場にはまったくないということを、すぐに理解できるはずなのです。
二つ目のポイントとして、関税をご覧ください。関税は、我々の経済的な弱さを明らかにしました。
私たちはこの関税戦争に、ナヴァロ氏やおそらくルトニック氏のような人物が提唱した前提──すなわち、外国資本がアメリカ市場に流れ込むだろうという前提──に基づいて突入しました。しかし、実際には資本は流入していません。債券市場は壊滅的です。このままでは金利が5%に達するかもしれません。もしそうなれば、私たちはすべてを失うことになります。なぜなら、日本も中国も、他国の投資家も、アメリカ国債を売却しているからです。
こうした状況の中で、トランプ大統領は今なお「私は平和を望んでいる」と言いつつも、「他のこともやっているふりをする」、あるいは「強く見せるために別の行動を取る」といった間を行き来し続けています。
これは完全な、正常を逸した行為です。
中国は、アメリカで販売されているすべての抗生物質の成分のほぼ50%を製造しています。F-35──これは本日の『フィナンシャル・タイムズ』の記事から読んでいますが──F-35はアメリカ空軍の主力戦闘機であり、その製造には中国産のレアアース(希少金属)が不可欠です。そして中国は、アメリカ国債を約1兆ドル保有しています。まったく、誰も彼にこのような事実を伝えなかったのでしょうか? 中国からのすべての輸入品に対して145%の関税を課す前に?
さて、多くの人がマスク氏(イーロン・マスク)を好ましく思っていないのは承知していますが、彼はナヴァロ氏に対してかなり手厳しいコメントをしています。そしてまた、誰かの言葉を思い出します──誰の言葉だったかは忘れましたが──「ピエロを雇えばサーカスになる」という言葉です。
つまり、誰も事前に下調べをしていないように見えるのです。すべてが衝動的に進められており、皆が成り行き任せに行動しているのです──何よりも大統領自身がそうです。
そして、大統領はもっと有能で慎重に物事を調べる人物たちを、自分の周囲に置くべきです。歴史からの教訓はこうです──何か行動を起こす前には、得られるものと失うかもしれないものを常に比較して検討すべきなのです。特に戦争においては、それが何より重要です。
そしてたいていの場合、軍事的手段に訴えるのは賢明ではありません。なぜなら、一度それを始めてしまえば、すべてが制御不能になるからです。収拾がつかなくなるのです。 次に何が起きるのかは誰にも分かりません。
それなのに、右派にも左派にも、爆撃を望んでいる愚かな人々がいます。私たちはこれまで何度、「なぜロシアがイランを支援する戦略的理由を持っているのか」について話してきたでしょうか? 人々はそれを理解していません。
もしあなたがロシア人であれば、南を見ればイランがあります。さらにその先にはカフカス地方があります。ロシアにとって、あの地域には友好的な国々があってほしいのです。あそこには平和と安定が必要です。なぜなら、あの地域はロシアにとって「柔らかい下腹部」──つまり防御の弱点だからです。それは、アメリカにとってのメキシコと同じくらい重要なのです。そうでしょう?
そして今、ロシアは、我々がネタニヤフ氏のためにイラン政権を破壊しようとしているのではないかと警戒しているのです。それでも足りないのでしょうか? 思い出してください、ネタニヤフ氏は「リビア方式」をイランに適用したいと考えています──つまり、イラン政府を転覆させたいのです。
そして、その後に何を据えるのでしょうか? おそらくロシアに敵対するような何かでしょう。それこそがロシアが最も嫌うことなのです。彼らは南部国境を守りたいのです。あの地域に平和と安定を望んでいるのです。
これは、本当に何度も繰り返すにはバカバカしすぎる話です。しかし、ワシントンには戦略的思考というものがまったく存在しません。すべてが傲慢と無知の暴走です。
数分前にマケイン上院議員の名前が出ましたね。私の友人で、あなたの熱心なファンでもあるトム・ウッズ は、かつてこう言いました──「誰に投票しても、結局はジョン・マケインになる」と。
おそらくこれは、多くのアメリカ人が、大声で威圧的な態度を取る人物に簡単に感心してしまうからだと思います。他に説明のしようがありません。
アメリカには昔から「ボムズ・アウェイ・クラブ(爆撃至上主義クラブ)」 のような人々が一定数存在してきたと私は思っています。彼らは「どこかで爆弾を落としている限り、アメリカは偉大な国である」と思い込んでいるのです。
しかし、実際にはそんなことはないということを、あなたも私も知っています。
私たちが本当に望むべきなのは、第二次世界大戦以前に持っていたような、「公平さと品位において世界に認められる名声」なのです。
第一次世界大戦が終わり、ヴェルサイユ条約の調印が進んでいたころ──これは信じがたい話かもしれませんが──シリアから来たアラブ代表団は、アメリカに「自分たちの国を統治してほしい」と願い出たのです。彼らはイギリスにもフランスにも望んでいませんでした。
その理由は極めて明快でした。我々アメリカは植民地主義国家ではなく、帝国主義者でもありませんでした。そして彼らは、アメリカを公平で正義ある国民だと見なしていたのです。
ですが、過去30年間にわたって我々が行ってきたことを見る限り、いまやシリアをはじめとするイスラム世界のどの国の人々も、アメリカ人が自分たちの土地に来ることを望んでいないでしょう。そう思いませんか?
最後にもう一つだけ言わせてください。
1914年に戦争が勃発したとき、イギリスとフランスの大使たちはすぐに会談し、お互いにこう言いました。「この戦争を誰よりも嫌がっているのは、ベルリンにいるカイザー(皇帝、当時ヴィルヘルム2世)だ。彼は戦争を決して望んでいなかった。」
実際、その通りでした。
そして、物語の残りは非常に単純です。彼には、その戦争を──迅速に、決定的に──始まる前に止める力が常にあったのです。にもかかわらず、それを実行しませんでした。
ドイツ軍がベルギーへ侵攻する直前、皇帝は参謀長にこう尋ねました。「将軍よ、これは止められるのか?」
その答えは、本来であれば「イエス」でした。なぜなら、皇帝こそが軍最高指揮官だったからです。しかし、将軍はこう答えました──「陛下、それは難しいかと思います。」
馬鹿げた話です。そして、今まさにトランプ大統領が考えるべきは、まさにこのことなのです。
なぜなら、現在の彼の立場は、単なる“普通の大統領”以上のものだからです。彼はいま、破滅の瀬戸際に立っています。そして彼にはそれを止める力があるのです。
必要なのはただ一言──「ノーだ。終わりにする。やめよう。」そう言えば済むことなのです。
(以上)