PopularResistance.orgに掲載されたカナダの作家・活動家のイブ・エングラー氏による記事を Rachel Clark 氏による翻訳で紹介します。RachelさんのFBよりエングラー氏の紹介を引用します。
Yves Engler |
イヴ・エングラーはモントリオールを拠点とする活動家で、最新作『Stand on Guard For Whom?』, A People's History of the Canadian Military(カナダ軍の民衆史)』など12冊の本を出版。イヴの両親はバンクーバーの労働組合活動家であり、国際連帯、フェミニスト、反人種差別、平和などの進歩的運動に参加する左翼的な環境だった。彼はデモ行進のほか、ホッケーの選手としても育った。B.C.ジュニアリーグでプレーする前は、モントリオールのヒューロン・ホケラガで元NHLのスター、マイク・リベイロと幼い頃からチームメイトだった。
NATO IS A PROBLEM, NOT THE SOLUTION
ロシアの犯罪的な侵略を許すわけではないが、NATOの東方拡大がその可能性を高めた。異なる状況下で戦争が起こらなかったかどうかは分からないが、ロシアによるウクライナへの暴力が1ヶ月続いた後、両国の交渉担当者は、平和協定の一環としてNATOへの加盟を拒否することで合意したと報じられている。
ロシアは長い間、NATOの東方拡大、特にウクライナの事実上の同盟への編入に反対してきた。特にウクライナの事実上の同盟加入には長い間異を唱えており、不法な侵略に至るまでの数ヶ月間、NATOが自国の領土を包囲することに繰り返し異を唱えていた。
先週、EUの外交政策の責任者であるジョセップ・ボレルは、NATOをウクライナに拡大しようとする動きが誤りであったことまで認めた。ボレルはフランスのテレビ局TF1に対し、「私たちは多くの間違いを犯し、ロシアが西側と和解する可能性を失ってしまったことを認める用意がある」と述べた。「例えば、ウクライナとグルジアをNATOの一員にするという約束などだ。南アフリカのシリル・ラマフォサ大統領、中国の習近平国家主席、ベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領は、いずれもNATOの好戦性を現在の戦争を引き起こした中心的な要因として挙げている。
カナダの議会やメディアは長年にわたり、ロシアがNATOの拡大に反対していることを指摘してきた。2004年のナショナル・ポスト紙は、北米が資金援助したウクライナのオレンジ革命について、モスクワが同盟への加盟に反対する理由を説明している。「ロシアにとって、ウクライナがNATOに加盟し、黒海の港や北部の空港を西側の軍艦や戦闘機の避難所にするならば、それは心臓に短剣を突き刺すようなものだ」と国際問題記者のマシュー・フィッシャーは書いている。
NATOへの加盟は、ウクライナの軍事政策、さらには外交政策を同盟に従属させることを意味する。他のほとんどのヨーロッパのNATO加盟国と同様に、ウクライナもまた、米国の攻撃的な兵器システムを受け入れる可能性が高い。
それにもかかわらず、カナダはNATOの拡大を強力に推進し、1999年に16カ国だった同盟を現在では30カ国まで拡大させている。ソ連がドイツの再統一を受け入れるなら、NATOは一歩も東へ拡大しないと約束したにもかかわらず、ジャン・クレティアン首相は1993年の就任と同時に新規加盟を推し進めた。1990年代初頭、ウクライナがNATOの「平和のためのパートナーシップ」と「北大西洋協力会議」に加盟すると、カナダは同国を「軍事訓練・協力プログラム(MTCP)」に追加した。「カナダのウクライナへの関与」のページによると、1993年以来、「ウクライナはMTCPの下で訓練と資金提供を受けた最大の国」である。
1996年までにクレティアン首相は、ウクライナのNATO加盟を公然と要求していた。しかし、ウクライナ人とその政治家たちは、この問題に対してやや両義的であった。2004年、カナダと米国は、NATOへの加盟を強く支持する人物を政権に就かせることに成功した。オレンジ革命で大統領になったヴィクトル・ユシチェンコは、その1カ月後、NATO首脳会議の傍らでジョージ・W・ブッシュ大統領に会った。2005年2月の会談で、ブッシュ大統領はウクライナのNATO加盟を支持することを宣言した。カナダのポール・マーティン首相もNATOとの関係深化を支持すると表明した。その後1年間、NATOはウクライナのNATO加盟に向けて歩み始め、ユシチェンコ大統領はNATOへの完全加盟を推し進めることになる。
しかし、ほどなくして、ウクライナの有権者がNATOの拡大主義者に打撃を与えた。2006年の議会選挙でヴィクトル・ヤヌコヴィッチ率いる地域政党が最多得票を獲得し、2008年初頭にはNATOをめぐる論争で議会が6週間にわたって事実上閉鎖された。この時点の世論調査では、ほとんどのウクライナ人がNATOへの加盟を拒否していた。2011年、米国国家安全保障会議の元ソ連専門家F・スティーブン・ララビーは、ウクライナ人の4分の1がかろうじて同盟への加盟を希望していると報告した。ウクライナ人は一般的に、NATOを保護というより脅威とみなしていた。
それでもスティーブン・ハーパー首相は、ジョージ・W・ブッシュと一緒になってこの問題を押し進めることを止めはしなかった。2008年4月のNATO首脳会議に向けて、ハーパー首相はウクライナのNATO加盟に「強い支持」を表明した。「私はNATOのパートナーに、ウクライナを同盟への完全加盟に向けて前進させ続けることに同意するよう呼びかける」とハーパーは宣言した。しかし、ドイツとフランスはウクライナの加盟に強く反対した。彼らはロシアの反応を懸念し、北米が支配する同盟が欧州中心の安全保障構想をさらに弱体化させることを懸念していた。
2010年の大統領選挙でヤヌコビッチ氏が勝利すると、NATOへの加盟は一時停止された。2010年6月、ウクライナ議会はNATO加盟を断念することを決議した。しかし、アメリカとカナダは2014年2月にヤヌコビッチ追放を支援した。ヴィクトリア・ヌーランド米国務次官補とジェフリー・パイアット駐ウクライナ米大使が違憲のクーデター後の政府を率いるために選んだ人物、アルセニー・ヤツェニウクは、ウクライナをNATO加盟への道に導くよう議会に求めると発表した。2014年12月、議会はウクライナの非同盟の地位を放棄し、NATOへの加盟を求めた。
それ以来カナダは、ヤヌコビッチ退陣の余波で大きく崩壊したウクライナ軍をNATOに加盟させるために、多大な資源を投入してきた。元国防相のハルジット・サジャンは、「ウクライナ軍がNATOに加盟できるよう、7年間にわたり200人のカナダ人指導官が”ユニファイアー作戦”を通じて『ウクライナ軍を近代化』することに取り組んできた」と指摘している。2017年の国防常任委員会の報告書「危機と武力紛争におけるカナダのウクライナ支援」は、「ウクライナは...NATO加盟国と完全な軍事相互運用性を達成するつもりだ」とし、カナダが「積極的に支援に従事している」と指摘した。1月30日付のラ・プレス紙は、「カナダの訓練により、ウクライナ軍はNATOとの共同演習を行うことができる 」と報じた。この記事は、リュック・フレデリック・ジルベール中佐の発言を次のように引用した。「我々は、彼らがNATO軍と相互運用できるような状況に持っていくために働いている。ソ連型に基づいた軍隊をNATO型に変えていく、それが我々の目指すところだ。」
ウクライナの同盟加盟の可能性を支援するため、カナダは国防改革に関するNATO・ウクライナ合同作業部会を支援し、カナダは2019年からキエフのNATOコンタクト・ポイント(連絡窓口)大使館の役割を分担している。
2020年6月、NATOはウクライナに「Enhanced Opportunity Partner (機会拡張パートナー)ステータス」を提示した。英国政府の報告書「ウクライナへの軍事支援2014-2021」によると、「このステータスは、相互運用性を高めるために、NATOの演習、訓練、情報および状況認識の交換への優先的なアクセスをウクライナに提供するものである。2020年9月、ウクライナは英国、米国、カナダ軍による”ジョイント・エンデバー”演習を主催し」、それは、「ウクライナの新しい強化された地位の下で行われた最初の演習であった。」とある。
その後も大規模な演習がいくつも組まれ、2022年には数万人規模の部隊が参加する演習も計画されていた。
ウクライナのNATO化の進展に呼応して、モスクワはより好戦的になった。2021年4月には5万人のロシア軍を国境沿いに集結させてウクライナを脅かし、11月末にはロシアは再び数万人の軍隊を隣国近くに駐留させた。モスクワはウクライナをNATOに編入させないという保証を要求したが、これは正式に拒否された。
ウクライナ人をロシアを弱体化させるための大砲の餌と見なし、カナダの外務大臣はそれを強気に出た。1月中旬、メラニー・ジョリー外相は「カナダの立場に変わりはない...我々はウクライナがNATOに加盟できると信じている」と繰り返した。
ロシアの侵攻は国際法違反だが、カナダはウクライナにNATO加盟を求めるべきではなかった。今、オタワは、カナダはウクライナの同盟への加盟に反対し、(オーストリアやフィンランドと同様に)中立を保つことを支持すると明確に表明すべきだ。
平和を願うカナダ人は、カナダをNATOから脱退させるための努力を倍加させるべきだ。たとえ同盟の東方拡大がロシアの犯罪的侵略を促進する上で小さな役割しか果たしていなかったたとしても、過去20年間にリビア、アフガニスタン、ユーゴスラビアを攻撃した同盟に反対するもう一つの理由として追加できるのである。
先週、ボリビアのエボ・モラレス前大統領はこう述べた。「NATOは世界平和と安全保障にとって危険だ。だから我々は、ラテンアメリカだけでなく、すべての大陸の社会運動と合意を結び、NATOを廃絶させなければならない。NATOに対して何もしなければ、人類にとって永遠の脅威となるだろう。」
(以上)
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