★4月4日追記: この質問は3月31日に書いたものですが、報道されている通り、東電はタービン建屋に溜まる高汚染水を移動させる場所を移すために比較的汚染度の低いとはいっても法令基準の500倍にあたる放射能を含む水を、漁業関係者をはじめ世論の厳しい批判をあびながらも1万1500トンも海に流す手続きをしました。また、第一原発から30キロの福島県浪江町では3月23日から4月3日の累積放射線量が10.34ミリシーベルト、屋内退避の10ミリシーベルトを超えたとの報道がありました。茨城産のコウナゴから放射性ヨウ素(4080ベクレル/キログラム、政府は暫定基準値を持たず、野菜は2000)、放射性セシウムも、基準が500のところ447ベクレル/キログラム出たという。この質問を書いたときよりもさらに海、空気、土壌の放射線汚染がより心配になってきています。
沖縄の作家、浦島悦子さんにいただいたメールに、深く響く言葉があり、許可をいただいてここに引用します。
なんという世界を私たちは作ってしまったのか。水も空気も土壌もすべて汚染され、命を育むはずのものが命を脅かすものになってしまった・・・ 未来の子どもたちに私たちが犯してしまった罪を思うと身震いします。
★幸いに、専門性を持ち、幅広い見識を持つ3人の知人(岡田さん、三宅さん、落合さん)からコメントをいただきました。下方をご覧ください。
1) 大気中の放射線について
文科省の定める、一般人の年間被ばく限度量は、医療を除いて1000マイクロシーベルトです。随所で見かける日本政府の「日常生活と放射線」のチャートをご覧ください。(モニタリングチャートなどの最終頁に必ず出ています。たとえばこのリンクの最終頁をご覧ください。)画像をクリックすると拡大できます。
(ちなみに、このチャートを見て、カナダ人の友人は、「これらのイラストでは皆スマイルしており、放射線を受ける行為がとても楽しいことのように描かれていて異様だ。」と言っていました。その通りと思います。)
ここには明記してませんが、この1000マイクロシーベルトは、おそらく内部被ばくは考慮していません(体の外面から被ばくするのではなく、吸入、食物、等からの内面からの被ばく)。この被ばく量チャートに出ている例が全部、外部被ばくのものだからです。(例外として、「世界平均の1人あたりの自然放射線」2400マイクロシーベルトに、「空気中のラドンから」吸入しているイラストと、「食物から」という記載があるので、この国際平均は内部被ばくを想定しているように見えます。)
この政府の基準と、現在各地で計測されている放射線量を比べて議論しているのを全く聞いたことがありません。政府基準なのだから、政府はこれに準拠し説明するのが当然なのではないですか。年間1000マイクロシーベルトは、時間あたりに直したら(365X24で割ったら)0.114マイクロシーベルトです。ということは、毎時0.114マイクロシーベルトを超えたら、その状態で1年間そこに暮らしたら、政府の基準を超えるということです。そういう基準で見ると、東北、関東地方はこの基準を超えているところがたくさんあることがわかるでしょう。たとえば3月30日午後13時52分、福島第一原発北西40KMの地点では、毎時8.5マイクロシーベルト、茨城県東海村では、3月30日、毎時1マイクロシーベルトを超える数字が多数回出ています。東京でも、3月29から30日にかけて、時間にして0.2、0.3マイクロシーベルトといった値が出ています。
今のところ、どんな値が出ても政府は「ただちに健康に影響はない」と言い続けていますが、どの水準から「健康に影響がある」と考えているかの説明がありません。しかし影響のある水準が念頭にないと、「影響はない」とは言えないはずです。政府は、その基準を発表するべきと思います。文科省による「医療以外で年間1000マイクロシーベルト」を基準としているのだったら、毎時0.114以上の値が出ているときに「影響がない」と言った場合、それを一年分に換算した場合、矛盾するからです。「ただちには影響がない」が、「長期的に影響がある」と思うのなら、それはどれぐらいなのか。また、この基準が、大気中の放射線から受ける外部被ばく量だけではなく、吸入、水、牛乳をはじめとする食品から受ける内部被ばく量も考慮しているのか、を明らかにしてほしいです。
2)海水の汚染について
福島第一原発の放水口等から非常に高い放射線が検出されています。29日には、濃度基準値の3355倍に当たる放射性ヨウ素131が検出されたと各地で報道されました。翌日の30日には、4385倍のヨウ素、水深83メートルでもヨウ素を検出、セシウム134は783倍、セシウム137は527倍と報告されました。土壌では、23日に原発から40キロ離れた飯館村の土壌から高濃度のセシウム137が検出されています。
報道によると、海では放射性物質は薄まるとか、底に沈むとか、影響がないとか言われていますが、原子力安全委員会は30日、「(魚介で食物連鎖による)生物濃縮の懸念がある」と述べています。ニューヨークタイムズ3月27日記事を見ると、キンバリー・カーフォット(ミシガン大学核工学、放射線科学教授)は、海産物のモニタリングの強化を訴えており、「放射線核種は自然環境に凝縮されます。」「例を挙げれば、ヨウ素は昆布とエビに凝縮します。」「ヨウ素、セシウム、ストロンチウムは他の海産物に凝縮されます。」と言っています。
福島県海域では魚を採っていないといいますが、野菜と違い、魚は一か所にいるわけではありません。海に県境があるわけでもないし、どこかで線を引いたからといって汚染された水がそこで止まったり魚がその先に行かないという保証はないのではないでしょうか。
今進んでいる海水汚染のせいで、海産物が本当に安全なのか、納得のいく説明がありません。「風評被害」を防ごうという話ばかりを聞きますが、消費者が納得できないことを問うことは、「風評」を拡げることとは違います。消費者はもちろん、生産者の不安には生活がかかっており、あいまいな説明はかえって不安を増します。わかっていることは伝え、わからないことは「わからない」と言って欲しいです。
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これらの質問にコメントをいただきました。太線は PeacePhilosopher がつけました。
★岡田さん(産業振興コンサルタント 東大 生命科学 PhD.)
この疑問2つは非常に的確にポイントを突いています。
1)大気中の放射線について。
内部被ばくと大気中の線量を比較するのはそもそも間違いで、それは分かっていてしている事に違いありません。(風評やパニックを防ぐためという名目で、本当は危機管理の失策を隠すため)自分はこのインチキを気にしながらずっと報道を見ていますが見ている範囲では、NHKがこの相違に留意して報道してます。年間の蓄積危険量と毎時の危険量は単純な掛け算とは成らぬ事は科学的な妥当性/合理性が有るので、直ぐに「毎時0.114以上の値は影響がある」とは言わないまでも、予防的な措置を取るために「影響があるかもしれない」と政治的判断では考えるべきと思います。予防措置を取る為には法的根拠などは必要ないから。
2)海水の汚染について。
今の汚染の数値で海産物が安全とは全く考えるべきではないと思います。「汚染物質の生物濃縮」は良く知られている事で、食物連鎖の上位に行くほど濃縮され、従って大型の魚の方がより危険に成ります(小型の魚は海草を食べ、大型の魚は小型の魚を食べる)。もちろん海水中で薄まりますが、例えば水俣病などの場合にも水銀は湾の中に蓄積していて外海にはあまり出ていなかった。
海流とはそんなものだと思います。黒潮や親潮に乗る前の沿岸で漂っている筈で、しかもほとんどの漁業や海産物、とりわけ養殖物は沿岸が問題です。
総論安全性を説明しないのは、到底安全とは言えないからです。自分はそう理解しています。
「ただちに健康に影響はない」としか言わないのは、国が保証という話になったら困るからに過ぎないでしょう。全くばかな話です。
日本は国が個人の被害を補償する事をほとんどしないで来ましたが(あらゆる分野で)、基準と対象を決める煩雑な作業を避けて来たからに過ぎません。やれば出来る事をしないのは怠慢。よその国のやり方が良いとばっかりは言わないですが、この点は日本の仕組みの無責任体制、責任の分掌の不在、決定能力の機能不全は目を覆う場から。
従って、自分は仕事上でも市民としても、「社会や組織のルールは時に無視するのが自分の様な人間の役割」、と考えていますひとまずここまで。
★ 広島被ばく者 三宅信雄さん
私もご質問にかかわることについては素人ですから、推測の域をでませんが、私見ではつぎのとおりです。
○人体への許容限度の1,000μシーベルトは、外部被爆のみで、内部被曝は考慮していないと思います。
○内部被曝による障害は、ただちに発症するのではなく、長年の被爆によって、しかも他の原因と複合して発症するようです。
○レントゲン検査とは、放射線の種類が違うので、政府発表にそれを考慮している説明しているのか、分かりません。
○海洋汚染について、魚等の食物連鎖による放射性物質の濃縮は十分考えられます。しかし、ただちに起こることでなく、長期的スパンの問題ですから、現時点での実証はなかなか難しいです。
―原爆症認定において、内部被爆が健康に与える影響は僅少で、考慮していない、と裁判では言っています。
★落合栄一郎さん(化学者、バンクーバー九条の会会長)
質問1)
先ず、これらの基準値には内部被曝については考慮されていないでしょう。ただ、水や食物内の放射能は、内部被曝になるわけで、これは別。しかし、これ以外の環境でも、チリ、ほこりなどに付着した放射線物質が体内に入る可能性はあるので、それも本当は考慮しなければならないが、そんなことを計測できるわけがない。いずれにしても、暫定値は一応の目安という程度の意義しかない。その上、他の様々な要素も特定されなければ、放射線の人体への影響は予測できない。まず、測定値だが、それがどの地点のどの時間のものであり、それが時々刻々変化していると思われるから、その時間を追ったデータを見なければ何とも言えない。今のこの瞬間に10000ミクロあったとしても、1時間後、1日後にはかなり変化しているでしょう。また外部被曝に関しては、核種(ヨードかセシウームかその他か)はあまり問題がないが、内部被曝にかんしては、核種を特定することは重要です。私は、日刊ベリタへの投稿にも書いたが、十分に意味のある放射能データは、かなり組織的に測定し(場所;例えば2kmおきとか、時間2時間おきとか;放射線量と放射線を出している核種)、それを総合的に集積して、分析、それから分布図とその時間変化から、ある程度の予測できる程でなければ、十分なことは言えないと思っています。しかし、現実にはそんなことはできないでしょうから、どうするか。私はあまりこれ以上のことは言えない。おそらく、経験者で本当のことを言る人の判断に任せるしかないでしょう。
今政府が言っている、ある特定の時点での数値で、それが低く健康に影響はないだろうというのは、まずその測定値が今後もそのまま継続することを想定していないのでしょう。あなたが言うよう
に、今の測定値が低くても、それに24時間、365日晒されていれば大きな数値になることは明らかですが、今の事態では、誰も、今後放射線量がどのように変化するのかわからないはず(放送では、放射能測定値が徐々に減少傾向にあることを強調している) なので、これからの1年間、半年間で、どの人がどの程度の被曝をするかなどはとても予測しえない。だから、現在は、このあたりは、かなり放射線量が大きいから、退避すべき、屋内になるべきいるべきとかのことしか言えないのだと思います。こちらはいいとしても、逆にこの線量だから、健康に影響はないとはいえない。ただし,そう強調すると、だれも安心して生きていられない。おそらく注意深く、放射線量の発表に注意して、なるべく、放射線にさらされないような生活をする(どのようにか?)しかないのではないかと思う。こんな不安の生き方を人々に強いるのは、原発があり、それが故障しかねないからなのです。だから、安心して生活が出来るようにするには、原発はまず廃止しなければならない。
質問2)
私は、海での放射性物質の問題は、あまり重要視していない。という意味は現実問題としてであり,放射性物質を海に垂れ流すことは容認されるという意味ではない。放射性物質は海に入ったからといってなくなるわけではないし、半減期にしたがって、ずっと滞留しているはずです。放射性物質を海に流しつづけれは、どんどん溜っていく(特に半減期の長いものは)、海中濃度が上がる。
さて、海は流動している、潮の満ち干だけでもかなり動いている。一度放出された放射性物質は、それによりかなり速やかに、広範囲に拡散していくでしょう。もちろん、これも一概にはいえな
い。湾などで、外海との水の流通があまりないところでは、拡散しないで滞留するでしょう.
通常、すなわち海流の激しい場所では、放射性物質の海中濃度は、すぐに非常に小さくなるでしょう。これが一つと、別の問題は、それでも、海に住む生物には、低濃度であれ、吸収されること
は事実です。問題は、その体内の濃度がどう変化するかですね。吸収速度と排泄速度のかねあいです。それは核種とその化学的状態(化合物形態)にもよるし、生物の種類にもよるでしょう。モノによっては(すなわち排泄しにくいもの)食物連鎖を上がるに従って、濃縮されることは事実ですが、どの化合物が、そうなのかは簡単には言えない。これからは、私の推測ですが、おそらく、セシウームは、化合物形態として食塩などと同じでしょうから、比較的早く出ていくでしょう。また、ヨードは、水中では、やはりヨードイオンの形で、体内に長く留まることはないと思う。ということは、これらは食物連鎖で濃縮される(としても)率は低いと思われる.ストロンチウームは、骨にカルシウームと同様にとりこまれるので,非常に出にくい。したがって濃縮される。
いずれにしても放射能物質の拡散は,海に限らず空中を通して他国にまで影響を及ぼすわけで、国際信義上も、なるべく出さないようにするべきである。
余談だが,地上で、ヨード-131とセシウーム-137が特に問題なのは,前者は、ヨードが,甲状腺ホルモン(チロキシン)の一部で、体は、放射性であるかないかは区別せず(できない)にヨードを取り込む(だから放射性ヨードも)、それが甲状腺組織を破壊する。セシウームの場合は、土壌などに取り込まれ、そこに留まり、それが農作物に吸収されて、人間の体内に入る。入ったセシウームは、かなり速やか(60日ぐらいと言われている)に出て行くにしても、その期間にダメージを与えるし、後から後から食物を通して入って来るのだから、排泄が速くとも、どんどん溜っていくでしょう。その体内被曝が恐ろしい結果をまねく。
4月1日の仲間へのアップデートをここに置いておきます。
ReplyDelete3週間。本当は被災地のための寄付金集めなどに尽力したいが、原発問題で一日
が過ぎていきます。これが自分の役割かと思い諦めています。3週間前、「格納
容器」と「圧力容器」の違いなんて見当もつかなかったでしょう。みんながにわ
か原子力学者です。
痛々しい原子炉の状況の写真。
http://photos.oregonlive.com/photo-essay/2011/03/fukushima_dai-ichi_aerials.html
このエアフォトサービスのラジコンみたいなかわいい飛行機ははじめて見ました。
この任務終えたらもう廃棄されるのかな・・・しかしUSのグローバルホークま
で駆り出して政府は写真も断固として公開しないのに、このラジコンちゃんの写
真は簡単に公開する。一体どうなってるんだろう。グローバルホークの写真には
一体どんな恐ろしい事実が移っているんだろう。
「東アジアの核の脅威」って言ったらどこの国を思い浮かべます?311を境に
完全に変わりましたね。いや、気づいただけなんですが。
話題になっているNHK30日の「持論公論」。原発対応について東電も政府も
批判しない、政府や東電に都合の悪いことは言わない、「放射線影響ない」
キャンペーンの先陣を切っていたNHKの解説委員が画期的発言。http://www.youtube.com/watch?v=tOKVhUNOvgI
こんなのもありました。
東電のカネに汚染した東大に騙されるな
http://www.insightnow.jp/article/6430
しかし、学者さんたちも危機感を募らせています。立命館の安斎さんからい
ただき、このようなものを掲載しました。原発を推進してきたお偉い先生たちも
ここまで危機感を募らせているという意味で載せました。
福島原発事故への緊急提言
http://peacephilosophy.blogspot.com/p/blog-page_31.html
安斎育郎「赤字部分は、私にも不気味です。原発を推進してきた名だたる人々も
先の見定めがつかない事故の現状は、とても危うい。事態の悪化を招かないため
に、日本政府に声を集中して下さい。「専門家」任せは危ないです。「専門家」
に任せた結果が現状です。「隠すな、ウソつくな、意図的に過小評価するな」、
「最悪に備えて、最善を尽くせ」。