Wednesday, April 01, 2026

『朝鮮新報』より転載:東京大空襲からイラン爆撃へ、戦争犯罪の連関/乗松聡子 From the Tokyo Firebombing to the Bombing of Iran: The Lineage of War Crimes

  『朝鮮新報』連載「私のノート 太平洋から東海へ」8回目(26年3月26日)の乗松聡子の記事を転載します。(ハイパーリンクは自分でつけたもので、朝鮮新報版にはありません。)

〈私のノート 太平洋から東海へ 8〉東京大空襲からイラン爆撃へ、戦争犯罪の連関/乗松聡子

2026年03月26日

228日、墨田区の横網町公園内の東京都慰霊堂で開催された、「東京大空襲81年第20回朝鮮人犠牲者追悼会」に出席しました。194539日の深夜から10日未明にかけて、300機にもおよぶ米軍のB29が苛烈な焼夷弾爆撃を行い、約10万人が殺され、そのうちおよそ1万人が朝鮮人であったといわれています。

「日帝の植民地統治のもと、見知らぬ遠い異国の地へ連れ去られ、人間としての基本的な尊厳と権利さえ奪われたまま、奴隷労働を強いられていた罪なき朝鮮の人々が、米軍の大空襲によって無念の死を遂げなければなりませんでした。」朝鮮大学校の学生が代読した「朝鮮人強制連行被害者・遺族協会」のメッセージにあった言葉です。日本人は、二重、三重の被害を受けた朝鮮人被害についてこそ学び記憶すべきと思いました。

会場の横には、判明している187人の被害者の名前が一人一人筆で書かれ、展示されていました。「判明」とは言っても、創氏改名後とうかがわれる名前が多くありました。年齢が書き添えられており、10代、20代が目立ちます。朝大の民族管弦学部の学生がタンソで「アリラン」を演奏しました。繊細な音色が底冷えのする会場に響きわたりました。名前も奪われたまま、この地で焼かれた人々の悔しさと悲しさが伝わってくるようでした。

朝大生による「アリラン」の演奏は、犠牲者の悲しみを奏でるようだった(2月28日)

東京大空襲をはじめとする日本の都市空襲を指揮したのは、カーティス・ルメイ将軍でした。ルメイは、朝鮮戦争で平壌など朝鮮の主要都市を焼きつくした空爆にも関与しました。戦後、「もし我々が戦争に負けていたら、戦争犯罪人として裁かれていたであろう」と言ったといいます。当時ルメイの部下であったロバート・マクナマラ元国防長官が証言していま。このマクナマラこそ、何百万のベトナム人、ラオス人、カンボジア人を殺したベトナム戦争を指揮した人間でした。

自らの手が大量のアジア人の血にまみれていたことを知っていた米帝は、反省するどころか、今、イスラエルとともにイスラム教徒を大量虐殺しています。東京大空襲朝鮮人犠牲者の追悼式のその日、対イラン攻撃を、それも人道にもとる戦争犯罪でもって開始しました。イラン南部の女子小学校にミサイルを二度撃ち込み175人もの、おもに7歳から12歳の女の子たちを惨殺しました。

31日、ネタニヤフ首相は声明で「40年やりたかったイラン殲滅がやっとできる」と、喜びを隠しもしませんでした。これは長期にわたる計画だったのです。むろんイスラエルは西アジアにおける米帝のプロキシー(代理人)です。米国の支持があるからやれるのです。2001年の「911事件」直後、ウェズリー・クラーク元米国陸軍大将はペンタゴンの将官から国防長官室の機密メモを見せられました。そこには、「むこう5年で7つの戦争を行う」とありました。イラク、シリア、レバノン、リビア、ソマリア、スーダン、イランの7か国です。

その後実際にこれらの国々では米欧による軍事介入、政権転覆、内戦関与が起こりました。最後に残されたのが大国イランだったのです。いま戦火の中、イラン現地から日々レポートしているテヘラン大学のサイード・モハンマド・マランディ教授は、イランが攻撃される大きな理由として「パレスチナに連帯しているから」と強調します。米イはパレスチナを支持する勢力を一掃したいのです。

イランは、米国政権が言うような「差し迫る脅威」ではありませんでした。イランがIAEAの査察を受け入れ、濃縮に制限を設けると合意した「イラン核合意(JCPOA)」を破棄したのは第一次トランプ政権です。昨年3月にはガバード情報長官が、米国の情報機関の結論として、「イランは核兵器を作ろうとしていない」と証言しましたが、トランプ大統領は一蹴しました。政権に入る前はあれだけ対イラン戦争に反対していたガバードは今、悪魔に魂を売ったかのように支持に回りました

昨年6月米イがイランを攻撃した「12日戦争」のときも、今回も、「交渉」が進行中の攻撃開始でした。そもそも何の悪いこともしていないイランがどうして「交渉」しなければ存在を許されないのでしょうか。米国の「交渉」とは「言うことを聞かなければ破壊するぞ」という脅迫に過ぎません。イランに核兵器を持つことを禁止したアヤトラ・アリ・ハメネイ師を開戦日に殺害したことからも、目的が政権転覆であることは明らかです。

それなのに日本を含む西側メディアは、ハメネイ師殺害を喜ぶかのごとくの報道を展開しました。ハメネイ師はイランの政治的最高指導者であり、シーア派の宗教的指導者でした。元CIAの分析家ジョン・キリアク氏は、ハメネイ師を殺すことは「ローマ教皇を殺すことに匹敵する」と言っています。その通りかもしれませんが、そのような喩えを使わないと西側にはハメネイ師殺害の重大さがわからないのでしょうか。小学校爆撃も、「もし米国の学校がやられたら」と置き換えてみないとその犯罪の残忍さがわからないのでしょうか。

相手を劣等な民族や劣等な宗教と見なし、殺してもいいと言わんばかりの、帝国主義的レイシズムが根底にあると思います。だから爆撃で大量虐殺しても良心も痛まないのです。現在、米イは、ガザでやってきたのと同様に、イランで学校、病院といった民間施設を容赦なく破壊し民間人を殺しています。レバノンでもやっています。ラマダンの最後の金曜日に行われる、パレスチナに連帯する「クッズの日」デモに対しても攻撃し市民を殺しました。やられればやられるほどイラン民衆の結束は増し、米イ侵略に抵抗するために街頭を埋め尽くしています。

このような実態を日本を含む西側のメディアは報道せず、逆に、「イランが独裁国家で政権転覆に値する」という言説ばかり流してきました。これは、朝鮮、ロシア、中国など、米帝の言いなりにならず主権を守ろうとする国々に使う常套手段です。嘘を流して侵略戦争を正当化するのです。米国高官さえも認めています。318日に、ジョー・ケント国家テロ対策センター長はイラン戦争に抗議して辞任しました。辞任表明において「イスラエルの高官や米国の主要メディアが、イランとの戦争を促すために好戦的な感情を煽る誤情報キャンペーンを展開した」と告発しています。

かつて大日本帝国も、「大本営発表」で嘘をばらまきながら1945814日まで戦争を引き伸ばしました。81年前の出来事と、現在は確実に繋がっているのです。


プロフィール

ジャーナリスト。東京・武蔵野市出身。高2,高3をカナダ・ビクトリア市の国際学校で学び、日本の侵略戦争の歴史を初めて知る。97年カナダに移住、05年「バンクーバー9条の会」の創立に加わり、06年「ピース・フィロソフィー・センター(peacephilosophy.com)」設立。英語誌「アジア太平洋ジャーナル」エディター。2人の子と、3匹の猫の母。著書に『沖縄は孤立していない』(金曜日、18年)など。19年朝鮮民主主義人民共和国を初訪問。世界の脱植民地化の動きと共にありたいと思っている。

(本連載は、反帝国主義、脱植民地主義の視座から日本や朝鮮半島をめぐる諸問題や国際情勢に切り込むエッセーです)

★★★

ウェブ版では https://chosonsinbo.com/jp/2026/03/26sk-30/

米イスラエルによるイラン侵略戦争についいては補完的な内容を書いた、こちらの記事と併せてお読みください。

「月刊イオ」3月号から転載:吹き荒れる米国の横暴と、抗う多極化勢力 

「月刊イオ」3月号から転載:吹き荒れる米国の横暴と、抗う多極化勢力 From Monthly 이어: Escalating U.S. Aggression and the Rise of Multipolar Resistance

 「月刊イオ」3月号の、「いまを視る」という時事問題を扱うコーナーに記事を載せていただきました。許可を得てここに転載します。大変読み応えのある「月刊イオ」の購読はこちらまで!



吹き荒れる米国の横暴と、抗う多極化勢力

 乗松聡子

 2025年。自分は戦争をしない「平和の大統領だ」と言って二期目に就任したトランプ大統領は、この年だけで、イラン、イラク、ナイジェリア、ソマリア、シリア、イエメン、ベネズエラの7か国で600回以上も爆撃を行いました(「武力紛争位置・事象データによる)

そして2026年。ガザのジェノサイドが続いています。これも米国の支援がなければできない戦争です。ガザ政府メディア局によると、イスラエルは、昨年1010日の「停戦合意」以降今年の1月上旬までに1200近く停戦合意違反を行い、500人のパレスチナ人を殺しました。冬のガザで、21人の赤ちゃんが凍死しました。西側メディアはもう報道さえしません。

23107日のハマス蜂起の際にイスラエル人が約1200人殺され240人が捕虜となったことを理由に西側世界はジェノサイドを支持してきました。後に明らかになったのは、死者の相当数が、イスラエル軍によって殺されていたという衝撃の事実でした。イスラエルのメディア「ハーレツ」も報じています。当初西側メディアに氾濫した、ハマスが女性をレイプしたとか、赤ちゃんの首を切り落としたといった情報はすべてフェイクだったこともわかっています。

 

フェイクは政権転覆の手段

 西側の政府やメディアは、戦争や政権転覆を正当化するために平気で嘘をつきます。言うことを聞かない国の指導者を「独裁者」として宣伝し、排除を正当化します。年始に米国が拉致したベネズエラのマドゥロ大統領夫妻も、石油の国有化という資源主権を掲げたウゴ・チャベス前大統領の政策を引き継ぐが故に、敵視されてきました。

 新年から注目されているイランも同様です。1953年、モサデグ首相が「石油はイラン人のために使う」と外国資本に利益を独占されていた石油産業を国有化しようとしたところ、CIAが主導したクーデターで政権転覆され、パフラヴィ―2世による専制政治下、親米化が進みました。今回米欧やそのメディアはこの歴史を語らず、1979年のイランイスラム革命による政権を否定し、再び政権転覆を画策しているのです。

 イランでは、通貨の暴落がきっかけで、最初は商店主などが中心の平和的なデモだったのが、数日後にはイスラエルの諜報機関モサドが、武装した暴徒を大量に注入しました。かれらは、モスクに火を放ち、警察官を生きたまま焼き殺しました。病院にも放火し看護師が死にました。テヘランだけでも治安部隊を100人以上、残忍な方法で殺しました3才の女の子を含む一般市民も殺しました。

西側メディアでは、イラン当局が何千、何万の市民を殺したと連日報じましたが、米国や欧州にある「人権団体」と称する反イラン団体が恣意的に出す数字を横流ししているだけです。これらの団体には、米国の政権転覆機関NEDが出資しています。モサドの関与はSNSでモサド自身が公表していますし、元CIA長官も言っています。

これはバイデン政権時代から周到に計画されました。イーロン・マスク氏の衛星インターネットサービス「スターリンク」をイラン張り巡らし、暴動の指示に使ったのです。結局イラン当局が「スターリンク」による接続を妨害したことで、暴動が収まったのです。当局がインターネットを切断したのも外部勢力からイランを守るためでした。テヘラン大学のセイエド・モハマッド・マランディ教授が現地から証言しています。イラン人はこのような外国勢力の介入に怒り、全国で政府を支持する大規模デモが起こっていると。ベネズエラでも大統領夫妻奪還を訴える大規模デモが連日起こりましたが、西側メディアは無視し、政権転覆に都合のいい「反対派」の主張ばかり報道しました。

 

戦争と同じだけ殺す 西側の制裁

政権転覆に至るまで、その国を弱体化させるために行うのが制裁です。米国および西側諸国は、一方的な経済制裁を、約40か国、地球上の人口の3分の1をしめる地域に対して行っています。イランとベネズエラも、過酷な制裁を受けてきました。制裁の対象は主に、欧米に搾取されてきたアフリカ、中南米、ユーラシアなどのグローバルサウス諸国です。支配を許さず自己決定権を行使する国に、懲罰として制裁するのです。日本も米国に同調して制裁を行う側にいます。

制裁は、輸出入の制限や金融取引の遮断を通じて通貨の下落やインフレを招き、その結果、食料や医療機器、医薬品やエネルギー、水の不足という深刻な人道危機を招きます。昨年出た、医学誌「ランセット」の報告では、1971年から2021年の50年間の間、米国やEU諸国による制裁で、年間約56万4千人が制裁のために命を落としており、それは戦争による死者数と同等に価すると結論しています。それも、死者の半数5歳以下の子どもです。

 

多極化の中、米国追従を保つ日本

世界ではいま、中国、ロシア、インドなどの新興勢力がBRICS経済圏を構築し、米国が支配するドル経済から脱却しようとしています。西側帝国主義の戦争や制裁から自国を守り、お互い助け合い繁栄していくという、世界的な脱植民地の動きでもあります。朝鮮戦争以来、最も長期間にわたって、米国と西側による敵視と制裁措置に耐えてきた朝鮮民主主義人民共和国も、今やロシアや中国との協力関係を築き、多極化勢力の一端を担っています。

残念ながら、日本は米国追随を重視するあまり、この流れから取り残されています。同じ西側の国である韓国やカナダの首脳も、今年になって中国を訪問し、協力関係を築いています。それに比べ日本の高市首相はどうでしょう。昨年11月7日の国会答弁で、「台湾有事」の際、自衛隊を派遣する可能性を語り、中国から激しい反発を受け、国内でも批判が上がったのに開き直って撤回もしていません。

朝鮮に対しても日本は敵視政策を続けています。2002年の「平壌宣言」に謳われた、植民地支配の歴史清算に着手もしていません。朝鮮学校に対し、教育無償化や支援金の対象から除外するという、独自制裁ともいえる人権侵害を行っています。朝鮮といえば「拉致問題」ばかりを言い、2国間に横たわるさまざまな課題への取り組みをブロックしています。「非核化」についても日本は朝鮮の非核化だけを語り、韓国や日本における米国の核の脅威を取り除くという、双方向の非核化について語ろうとしません。

2026年、平和のためには、情報操作に惑わされず、戦争・制裁・政権転覆で覇権を維持しようとする西側帝国の本質を見極めることが大事です。そして日本は、この帝国の従順な一部のままでいいのか、という根本の問いをそろそろ真剣に問い始めるときではないでしょうか。

 

(ジャーナリスト、カナダ在住)




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