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Thursday, September 17, 2026

ギルバート・ドクトロウ博士:プーチン大統領はやっと本気で戦争を終わらせようとしている Dr. Gilbert Doctorow : Putin Taking the Gloves Off (to end the war once and for all)

9月16日のナポリターノ判事のYouTubeに登場したギルバート・ドクトロウ氏(ブリュッセルを拠点とする独立系の政治アナリスト。コロンビア大でロシア史博士号取得)の見解です。この人はどちら側にもつかずロシアや欧州現地での冷徹な観察にもとづく分析をする人で、ナポリターノのゲストの中では異色の存在といえると思います。

ドクトロウ氏の分析には日本を含む西側メディアでは見ることもない事実や洞察がいつも含まれております。先日ロシアがウクライナとポーランド国境を通る列車を襲撃したことの意味、いままで非常に抑制的であったロシアが、ウクライナが「パンドラの箱をあける」攻撃をしたことから「手袋をはずして」本気になっていること、ウクライナは海から、陸からの補給を絶たれ窮地に追い込まれており、冬を越せない可能性がある、そのせいで終戦が本当に近づいているのではないか、という見方です。だからゼレンスキー大統領も内心は必死で、「緊張緩和(デ・エスカレーション)」を強調しているのではないかと見ています。また、昨日アップしたラブロフインタビューにも出てきた、米国が裏切る結果となった「アラスカの合意」の内容についてもここでふたたび語られています。トランプ大統領がウクライナ戦争を終結させようという純粋な気持ちで二期目を迎えたことは本当であったろうが「ディープステート」CIAが妨害しているという見方をしています。ウクライナがロシア攻撃のために必要としていたインテリジェンス提供をトランプはほんの数日しか止められなかったことからも明らかであろうと。いつものようにAI訳に手を入れました。太字は乗松による強調です。@PeacePhilosophy

   

 

ギルバート・ドクトロウ:プーチン大統領が抑制を解く


ロシアの軍事戦略

アンドリュー・ナポリターノ判事: ギルバート・ドクトロウさん、ようこそ。親愛なる友人よ、ご存じのように、私は先日ロシアで10日間を過ごし、その間、何度もあなたのことを考えました。一緒に行けたらよかったのですが。さて、鉄道駅で起きた出来事について、少し時間をかけて分析したいと思います。正確には、ポーランドとウクライナの国境近くの駅をロシア軍が攻撃した、その前後に起きたことです。ボリス・ジョンソンがそこを通過した直後で、デービッド・ペトレイアス将軍が通過する予定だった直前でした。全体をどう見ていますか。これは明らかに意図的だったでしょう。明らかに何かを伝えるためだった。誰に、何を伝えようとしたのでしょうか。

ギルバート・ドクトロウ: ええ、まったくそのとおりです。これはメッセージ的行為でした。もしロシア側が、ここに来ていた国際法に最もはなはだしく違反した者たちや、ウクライナ人をこの戦争に駆り立て、声援を送ってきた者たちを殺害したければ、それはできたはずです。ペトレイアスを殺すことも、ジョンソンを殺すこともできた。しかし、そうしませんでした。ご存じのとおり、クレムリンの指導部は非常に慎重です。敵を暗殺することには関心がない。敵を打ち負かすことに関心があるのです。だから彼らを殺さなかった。殺そうと思えば殺せることを示し、そのメッセージは広く伝わりました。

昨日、ベルギーの主要なフランス語紙の一つ『ル・ソワール』を読んでいたのですが、この件を比較的大きく取り上げていて、二つの点を指摘していました。一つは、これはメッセージだったということ。もう一つは、ロシアが現在、国境をどのように封鎖しようとしているかを示したということです。この二つ目については、あの駅への攻撃をめぐる米国やその他の西側諸国での議論では、あまり取り上げられていません。私は1、2カ月前、ロシア側はドローンを使った消耗戦から、ウクライナへの西側の補給をすべて遮断する「締めつけ」の戦略に転じつつあるようだ、と指摘しました。ロシア軍人の生命に大きな犠牲をもたらす大規模な地上攻勢を行わず、ウクライナを降伏に追い込むという戦略です。

そのことに気づいたあと、気になったのは、この締めつけ策の半分しかすぐには実行されなかったことです。実行されたのは、爆撃やドローン攻撃、ウクライナの黒海沿岸の港湾施設、そしてドナウ川を挟んでルーマニアの対岸にある、ドナウ川経由の積み替え貨物を受け入れる港の破壊でした。ウクライナへの西側の補給について、海路と河川ルートが遮断され、黒海では船舶が攻撃されていました。ウクライナの港に近づく船も攻撃されました。こうして、ウクライナに西側の弾薬を運び込む最大の補給路は、事実上断たれたのです。

しかし、陸路については、数週間にわたって何の動きも見られませんでした。ポーランド南部からウクライナ西部のリヴィウ地方へと続く陸路は、西側からの弾薬輸送の主要ルートでした。ウクライナ軍が西側の補給に大きく依存していることも忘れてはなりません。完全に依存しているわけではありません。短距離ドローンは自国で何千機も生産しており、戦場で常時使われ、かなりの効果を上げています。ロシア軍が側面から戦車を大量投入するのを妨げているからです。ただし、ウクライナ側が使ってきた兵器のうち、とりわけ大きな損害を与え、ミサイルの代わりとして非常に有効なのは、長距離の精密攻撃ドローンです。これらは英国から、破壊される前のキエフ近郊にあった米国企業所有の工場から、そして西側のほかの供給元から得ていました。完成したドローンや組み立て用部品がウクライナに届かなくなれば、戦争を長く続けることはできません。「長く」とは、数週間からせいぜい数カ月以上、という意味です。

ロシア国内に大きな被害をもたらすだけの数のドローンがなければ、数でも補給でも勝るロシアの地上軍に対して、ウクライナ側は抵抗を維持できません。ですから、著名な人物たちの命が危険にさらされたために新聞で報じられた今回の攻撃が、ロシアには国境ぎりぎり、800メートルの地点まで攻撃できるという実演でもあったのは、非常に興味深いことです。私の見た米国の新聞には書かれていませんでしたが、昨日の『ル・ソワール』には、国境近くの駅周辺でドローン攻撃が2回あり、一つは国境から2キロ、もう一つはわずか800メートルの地点だったとありました。そこでポーランド側が「ロシアはEUとNATOのすぐ東側を攻撃している」と警鐘を鳴らしたのです。確かに近くまで来ましたが、きわめて制御された形でした。

ナポリターノ判事: これは、ロシアの情報収集能力が驚くほど広範囲に及んでいることの表れでもあると思います。誰がどの列車にいつ乗っているかを知っていたわけです。あなたには意外ではないかもしれませんが、私には目を見張ることでした。どうやって知ったかはともかく、知っていたことが重要です。元CIA長官で四つ星の将軍であるペトレイアスは、ロシア側が知っていると分かっているべきでした。ジョンソンが何を知っているのかは分かりません。道化のように見えますが、実は聡明な人物かもしれない。情報活動について理解している可能性もあります。ロシアの情報機関が、誰がいつどこにいるかを把握していたことは、あなたには驚きでしたか。

ドクトロウ: まったく驚きではありません。ウクライナの高官同士の話し合いに深く入り込む必要はなかったと思います。誰がいつごろウクライナへ行き、いつごろ出発するかは公開情報から分かるでしょうし、列車の外観も分かります。時刻表を追うこともできます。もっとも、そのうち何人かは通常のワルシャワ発着の時刻表にはない特別列車を利用していました。それでもロシア側は、列車がどこにいるか、かなり正確に見当をつけられたでしょう。列車がどの駅に、どれくらい停車するかも分かっています。ですから、ウクライナの最上層にまで浸透している必要はなかったと思います。ロシア側は自分たちの能力を示したかっただけです。

考えてみてください。キエフの軍事情報機関のトップの執務室がどの窓なのか、どうして正確に分かったのでしょう。その窓を狙ってドローンを撃ち込み、室内に入れたのです。もちろん、こういうことは調べれば分かります。だから私はとくに驚いていません。むしろ驚きであり、少なくともここ1、2年、非常に残念だったのは、ロシア側がこの能力を使わなかったことです。プーチン大統領が、ゼレンスキーによって「パンドラの箱」が開かれた(ウクライナがロシアの民間流通施設を攻撃したこと)、これからは相応の対応を取る、と宣言するまで使わなかった。その発言以前、ロシアは、ウクライナに大きな打撃を与え、西側の支援者や外交目的で訪れる人々すべてを危険にさらせるだけの能力がありながら、それを発揮していませんでした。

ナポリターノ判事: 昨日のゼレンスキー大統領の発言をご覧ください。緊張緩和について語った、なかなか興味深い、意外な発言です。

緊張緩和とインフラ

ウォロディミル・ゼレンスキー大統領〈映像〉: 現在、重要インフラに対する攻撃の相互停止について、米国から有力な提案が出ています。これが緊張緩和の最初の一歩、すなわちロシアによるわが国の重要インフラへの攻撃と、それに対するわが国の報復攻撃を止める一歩となるのであれば、ウクライナは緊張緩和を支持する用意があります。ロシアの戦時経済に対するわが国の的確な反撃によって、ロシア側が圧力を感じていることが分かります。これまでのところ、ロシアが戦争の終結を真に望んでいる様子は見られません。しかし、米国のパートナーが、ロシアにはこの殲滅戦争を終わらせる真の用意があり、それが誠実で長期的なものであると確認できれば、ウクライナも緊張緩和に向けた措置を取ります。平和が必要です。エネルギー、食料の供給路、重要インフラ。これらすべてを攻撃停止に関する議論に含めなければなりません。選挙のためだけではなく、将来にわたって通用する、強力で公正な解決策が必要です。パートナーからの具体的な提案を待っています。

ナポリターノ判事: エネルギー、食料の供給路、重要インフラ。この三つともウクライナには不足しています。そして冬が来ます。

ドクトロウ: これを少し解きほぐしたいと思います。彼の発言の背景にはいくつかの問題があります。一つは、この件で米国からどの程度の支持を得られるか。もう一つは、トランプ氏がゼレンスキーに対して、ロシアの製油所への攻撃をやめるよう求めていることです。世界的な軽油の供給に悪影響を及ぼし、それが米国での軽油価格の大幅な上昇につながっているからです。いまや1ガロン6ドルを超えています。もっとも、皆あまり口にしませんが、ここブリュッセルをはじめEU各地では1ガロン12ドルです。米国が風邪をひくと、欧州では肺炎になるわけです。

しかし、話を戻しましょう。トランプは「世界の軽油価格に影響するから、やめてくれ」と言ったのです。ゼレンスキーがそれを口にしなかったことに気づきましたか。彼は「重要インフラ」と言いました。まるで、あらゆる重要インフラへの攻撃を全般的に緩和することが議題に上っているかのようです。トランプが提案したのはそういうことではありませんし、プーチンが一応同意したのもそういうことではありません。

では、なぜゼレンスキー大統領は、重要インフラへの攻撃の停戦、あるいは停止が何を意味するのかについて、これほど曖昧で不透明な説明をするのでしょうか。最大の理由は、ウクライナがひどく苦しんでいることです。ゼレンスキーの背後で大きな影響力を持つブダノフ(ウクライナの軍人で、2020年から軍事情報機関のトップを務め、2026年1月にゼレンスキー大統領の大統領府長官に就任したキリロ・ブダノフ)自身によれば、ロシアはキエフの倉庫施設の90%を破壊しました。市内の至るところで食料が不足しているのはそのためです。ロシアはまた、キエフの集合住宅を暖め、家庭で使う温水を供給する水道・暖房設備の大部分を破壊しました。しかし、迫る冬に向けて主な問題となるのは暖房です。

私の見るところ、ロシアの戦略は現在、二つの面で非常によく機能しています。一つは先ほど話した「締めつけ」です。海路と陸路による西側からウクライナへの弾薬の補給を遮断すること。もう一つは、とくに冬のキエフを人が住めない場所にしてしまうことです。キエフは小さな地方都市ではありません。大都市であり、住宅のかなりの部分は高層建築です。20階に住んでいたら、水や薪を運び、暖を取るために住居内で禁じられた火を起こそうとしても、1日に何度も階段を上り下りすることはできません。単に大変なのではなく、不可能です。これは1944年のベルリンとは違います。あのころのベルリンには、人口の大きな部分を収容するこのような高層住宅はありませんでした。住めなくなるのです。ブダノフらは郊外へ避難するよう人々に勧めてさえいますが、それも非現実的です。誰もが田舎に家を持っているわけではなく、親類の家に受け入れてもらえるわけでもありません。そうなると実質的には国外へ出るしかなく、西欧に大きな混乱を生みます。これはベルリンの工場を爆撃するのとは違いますが、極めて効果的です。戦争は早期に終わると思います。

ナポリターノ判事: 映像を一つ流したいと思います。今週初め、ニューデリーで(BRICSサミットで)のプーチン大統領の発言を聞いたときも、あなたのことを思い浮かべました。かなり驚くべき発言があり、そこに込められたメッセージを読み解いていただきたいのです。

西側諸国についてのプーチン発言

ウラジーミル・プーチン大統領〈映像〉: 欧州全体で起きていることは、いわゆる西側による構造的な過ちの結果だと思います。NATOの東方拡大はわれわれには受け入れられないと、何度も言ってきました。しかし、ついにウクライナにまで到達した。これこそが、今日ウクライナで起きている悲劇の真の根本原因です。責任は西側のグローバリストのエリートたちにあります。いま彼らは、ウクライナ領内に軍隊をどう展開するか考えていると言っています。それはロシアとの戦争を意味します。私の理解では、欧州諸国の市民は何が起きているか分かっています。

ナポリターノ判事: 「ロシアとの戦争を意味する」。現在の、あるいは戦後のウクライナに、目的を問わず外国軍が駐留することを指しています。どう思われますか。

ドクトロウ: その発言には、私はそれほど興奮しませんでした。原則として、私が注意深く見ているのはロシアが何を「しているか」であって、何を「言っているか」ではありません。プーチン大統領を含め、ロシア側はこの3、4年間、いろいろなことを言ってきました。しかし、その(ロシアにとっての)「レッドライン」の数々は(西側によって)どんどん越えられてきてしまったのです。それによって、ロシアが抑止力を示す力は弱まりました。いまロシアはそれを逆転させつつあります。言葉はずっと厳しくなっており、あなたが示した例もまさにそれを表しています。言葉はさらに厳しくなりましたが、行動も強硬になりました。私が見ているのは、彼らの言葉だけではなく、現在の行動です。

彼が西欧について語ったことを細かく見てみましょう。もちろん、EU加盟27カ国の指導者たちの大多数は「愚か者を乗せた船」のようなものです。自らの破滅を招こうとしている。ロシアが本当に追い詰められたときの破壊力を、理解し始めてもいません。ただ、その中にも愚かではなく、しかも反対の意思を表明する勇気のある人が数人います。幸い、私の住む小さな国は、そうした一人であるデウェーフェル(ベルギー首相)が率いています。そういう意味では、欧州の全員が正気を失ったわけではありません。

プーチン大統領は(今回「西側」と言っているのは)間接的にエマニュエル・マクロンを指しているのだと思います。マクロンはこの「愚か者を乗せた船」の中でも最大の愚か者で、ウクライナへの軍隊派遣を公然と語っています。ただし、西側でウクライナを支持する人々はおおむね、戦闘が終わったあと、平和維持部隊として兵士を送ると言っています。当然、ロシア側はそれを一蹴しているので、実現するはずがありません。それが条件に入れば、和平条約も停戦も成立しないからです。

ナポリターノ判事: なるほど。ロシアで私が経験した興味深いことの一つに、ラブロフ外相との3時間にわたる夕食があります。食卓には私を含めて12人から15人ほどいました。

アンカレッジでの合意

ナポリターノ判事: そこで外相は、私がそれまで彼から聞いたことのないほど明確な言葉で、ロシア側の認識を語りました。プーチン大統領とトランプ大統領は、アンカレッジで米国側の提案に基づいて合意し、握手を交わした。ロシア側は米国が合意を守ると期待していたのに、米国側はその後、合意から離れてしまった、というのです。ラブロフ外相によれば、その提案は、ウクライナを恒久的に中立化し、ウクライナ全土でロシア語とロシア正教会を認め、ドンバスとクリミアを恒久的にロシアに帰属させるというものでした。もともとは米国側の提案で、プーチン大統領は非公式の場でいったん拒否したそうです。その後、ラブロフ外相を含む側近たちが受け入れるよう説得しました。

こうしてロシア側は受け入れる用意をしてアンカレッジに赴きました。そして実際に受け入れ、ラブロフ外相の目の前で握手を交わしたのです。プーチン大統領は通訳を介してトランプ大統領に「ゼレンスキーはどうするのか」と尋ねました。トランプ大統領は「ゼレンスキーのことは心配するな。私の言うとおりにする」と答えました。ところがアンカレッジを離れると、何も起きなかったのです。ここで、あの夕食の席で私たちに非公式に話したことを、ラブロフ外相が公の場でも裏づける発言をしています。

セルゲイ・ラブロフ外相〈映像〉: これは本気で言っているのですが、もし米国が、アンカレッジでの重要な合意から後退していなければ、そして欧州が米国をそうした重要な約束から引き離していなければ、私たちはもう丸1年、戦争の影のない平和の中で暮らしていたはずです。今日、私たちがこのような状況にあるのは悲劇です。それは明白な事実です。ここからどういう結論を引き出すかはあなたたちで判断してください。

ナポリターノ判事: あなたの考えは?

ドクトロウ: これもロシア側の視点から見る必要があると思います。今回の選挙や、ドナルド・トランプが初めて当選した選挙よりもずっと前にさかのぼって、大統領をめぐる米国政治をロシア側が全般的にどう見ているか、ということです。彼らは「ディープステート」を注意深く観察しています。トランプの2期目が始まった当初から、彼らはトランプ本人の誠意を疑ってはいなかったと思います。私も、この件で仲介役を務めようとする彼の誠意は疑いません。実現すれば彼にとって手柄になるだけです。しかしロシア側は、彼にはやり遂げられない、ディープステートがそれを許さない、と強く確信していました。ディープステートとは誰か。もちろんCIAです。

ご存じのとおり、CIAはウクライナに大きな拠点を持っています。ウクライナがロシア国内に対してドローン攻撃を続けるうえで極めて重要な米国の情報提供を、トランプがスイッチ一つで止められるなどということは、CIAには受け入れられません。攻撃の対象はロシアの奥深くだけではありません。トランプがCIAを押し切れば、議会で途方もない騒ぎになるでしょう。彼がそんな騒動を起こして得することはありません。ですから、ロシア側から見れば、問題はトランプ一人だけではない。問題はディープステートです。トランプが約束を守れないというだけではありません。約束を守ることを許されていないのです。

ナポリターノ判事: では、米国政府を動かしているのは誰なのですか。ホワイトハウスにいる、あの単細胞の人ではないのですか。

ドクトロウ: とはいえ、ホワイトハウスのその単細胞には大きな発言力があります。最も破滅的な過ちのいくつか、つまりイラン戦争は、その単細胞(トランプ)が犯したという点では意見が一致するでしょう。ですから、害を及ぼせるところでは、彼の責任をきちんと認めましょう。しかし、彼には良い面もあります。私は、彼がこの戦争を終わらせ、何らかの合意に達したいと心から望んでいたと思います。それは本心だったと思います。ただ、CIAによって手を縛られているのです。就任して最初の数週間に、彼が(ウクライナに対する)インテリジェンス提供を停止できたのはどのくらいの期間でしたか。数日だけです。それで終わりでした。そのとき決定権を握っていたのが彼だとは思いません。

ナポリターノ判事:いやあ、ギルバート・ドクトロウさん、非常に興味深いお話でした。親愛なる友人よ、これからご旅行に出られるそうですね。道中どうぞお気をつけて。また来週お会いできるのを楽しみにしています。ありがとうございました。

ドクトロウ: ありがとうございました。

(翻訳以上)

Wednesday, September 16, 2026

9月8日、ナポリターノ判事はモスクワでセルゲイ・ラブロフ外相にインタビューした【日本語訳】 Judge Napolitano Interviews Minister of Foreign Affairs Sergey Lavrov

このサイトでもよく紹介しているアンドリュー・ナポリターノ判事のYouTubeチャンネルに、ロシアを訪問したばかりのナポリターノ判事がセルゲイ・ラブロフ外相にインタビューした動画が、2本に分けてアップされました。これは、ロシア生まれの米国人政治学者ドミートリ・サイムズ氏が司会・制作にかかわる、ロシア第一チャンネルの番組「ボリシャーヤ・イグラー」(英語名 The Great Game)によるラブロフ外相へのインタビューです。ナポリターノ判事はサイムズ氏とともに聞き手を務めています。インタビューは9月8日にモスクワで行われ、ナポリターノ判事のYouTubeチャンネルには9月13日にアップされました。AI訳に乗松聡子が手を入れました。太字は乗松による強調です。ところどころにカッコで訳注をつけてあります。訳中のハイパーリンクも乗松が参考のために付したものです。

西側メディアではほとんど伝えられないロシア側の見解やウクライナ戦争の現状認識、今後の展望が明確に語られています。随所に表れているのは、ロシアへの挑発を続け、和平を阻んでいる英国、フランス、ドイツなどの欧州諸国に対する深い失望です。なかでも、メルツ首相の下で再び軍事大国化しようとし、ナチズムを想起させる方向へ進むドイツに強い懸念を示しています。第二次世界大戦で2700万人もの犠牲を払い、ナチス・ドイツを打倒したロシアにとって、それは当然の懸念ともいえるでしょう。

その一方で、米国が戦争当事国であるという矛盾を抱えながらも、ロシアとの和平を目指すトランプ政権との交渉を、ロシア側がまだ諦めていない様子がうかがえる点も興味深いです。米国独立戦争の時代にまでさかのぼり、ロシアと米国が協力してきた歴史を語るくだりからは、2025年8月のアンカレッジ会談で、妥協してでも米国の提案に合意したロシア側がいかに大きな期待を寄せていたか、そして、その後その期待が裏切られたことへの失望がいかに深かったかも垣間見えます。

ロシアの特別軍事作戦が始まって以来、西側諸国とそのメディアは「ロシア側の言い分を一切聞かない」と決めこみ、西側の一般市民はロシアの情報にアクセスすることさえ非常に難しくなりました。そんな中ロシアは、米国のインフルエンサーや、米国の主要メディアから排除されたジャーナリストたちに対して発信し、少しでも西側にその立場や声が届くような努力もしています。このインタビューはそのような努力の一環と見ていいと思います。私にはとても勉強になる内容でした。

以下、動画二つを埋め込み、日本語訳をパート1,2通して紹介します。@PeacePhilosophy 


ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相へのインタビュー パート1

ドミートリ・サイムズ:

大臣、この度は「ザ・グレート・ゲーム」にご参加いただき、誠にありがとうございます。お時間を割いていただき、感謝申し上げます。ここで、私の同僚であるアンドリュー・ナポリターノ判事をご紹介いたします。彼は著名なアメリカのテレビ司会者であり、「ザ・グレート・ゲーム」にも定期的に出演されています。

セルゲイ・ラブロフ外相:

ご招待いただきありがとうございます。ナポリターノ判事、そして皆様とご一緒できて大変光栄です。ありがとうございました。

アンドリュー・ナポリターノ判事:

大臣、どうもありがとうございます。本日、このレセプション会場にお招きいただき、大変光栄に存じます。また、お話する機会をいただき、感謝申し上げます。先日、トランプ大統領の特使を務めるウィトコフ氏とクシュナー氏がモスクワを訪問し、ハイレベル協議を行いました。この重要な外交訪問において、両氏はロシア大統領と公式会談を行い、二国間の主要な問題について協議しました。この訪問の結果について、何かご意見はございますか?

セルゲイ・ラブロフ外相:

これらの交渉の始まりのかなり大きな部分がテレビで放送されました。大統領の言葉、ウィトコフ氏とクシュナー氏の返答。その後、この会話に参加した大統領補佐官のユーリー・ウシャコフ氏が詳細なコメントを提供しました。そして、我々の外交の伝統では、国民と共有することを決定した内容に限定しています。私は、彼らがモスクワに何を持ち込み、ウィトコフ氏とクシュナー氏がキエフに何を持ち帰ったのかについて、今まさに憶測を始めている人たちのようになりたくありません。ヴェルホヴナ・ラーダ(ウクライナ議会)のある女性議員は、彼らが持ち込んだものはウクライナがすでに拒否したものよりもはるかに悪いとすでに述べており、憶測が飛び交っています。

ですから、アメリカ側も今後の外交的措置については何も述べていません。しかし、フランス側はエリゼ宮殿(フランス政府)から、我々がそこにいたことをすでに表明しています。アメリカ側は、国家院(ロシアの下院)選挙後には、米国も参加する直接交渉が必ず再開されると述べています。私はこの件すべてをエリゼ宮殿の良心に委ねます。特に、エリゼ宮殿は電話やその他の会話の内容に関して、必ずしも倫理的とは言えない行動で何度も悪名高いからです。

しかし、議論された内容の本質は、そしてこれはトランプ大統領がホワイトハウスに戻ってすぐにウクライナ問題に関して示した立場にかかっていると断言できます。具体的には、まず第一に、ウクライナを北大西洋条約機構に引き込もうとすることなど忘れるべきだと述べました。プーチン大統領がこの問題はとっくに解決済みであり、かき立てる必要はないと明言しました。そして、米国の立場の第二の要素は、(ロシアが優勢である)戦場の現実を認識することです。さらに、これは領土の問題ではないことを強調しておきたいと思います。

ロシアはすでに領土を奪取しているから今の時点で停戦すべきと言う人がいますが、これは領土の問題ではないのです。現実について語る時、私たちは2014年2月のクーデター直後に「非人間」「怪物」「テロリスト」と呼ばれた人々(ドンバスのロシア系の人々のこと)について話しているのです。彼らは違法なクーデターの結果を拒否したため、国際人道法で断固として禁じられている軍隊、戦闘機、砲兵部隊使用の標的となり、人間として扱われませんでした。

そして、間もなく大統領に選出されたポロシェンコ氏は2014年に「我々の子供たち、真のウクライナ人の子供たちは清潔な学校や幼稚園に通うが、ドンバスに住む人々の子供たちは地下室で腐るだろう」と述べました。ヨーロッパ人は、領土をナチスに引き渡すためだけに1991年の国境を復活させようと呼びかけながら、どうやってこれらの(ドンバスのロシア系の)人々を政権の支配下に戻そうとしているのでしょうか?それとも、これらの人々が、自分たちの自由、文化、そしてロシア世界への帰属意識を守ろうとすることについて罰したいのでしょうか?

私はこの件について繰り返し述べてきましたが、トランプ大統領とそのチームが認識し、今後も認識し続けるであろう戦場の現実は、アラスカ(2025年8月15日アラスカ会談時)でも同様であったと申し上げたいと思います。これらの戦地の現実は、クリミア、ドネツク人民共和国、ルハンスク人民共和国、そしてもちろんザポリージャ州とヘルソン州で行われた住民投票で表明された人々の意見と結びついています。そして、アメリカ側が我々とのあらゆる接触、特にプーチン大統領との接触において、これらの現実を前提としているという事実は、当然ながら我々から肯定的な反応を引き出し、彼らとの対話を継続する意欲を生み出します。彼らはこれらの基本的な事柄を認識し、それらに関して協力しようとしており、私はこれが支持に値すると信じています。

アンドリュー・ナポリターノ判事:

あなたは今アラスカの会合について言及しました。多くの観察者は、ロシア当局者がアメリカと確固たる合意に達したと本気で考えていたと強く信じています。しかし、思いがけず、最終的には全くそうではなかったことが判明しました。そして、トランプ大統領が(イランとの)覚書に署名したにもかかわらず、わずか数時間後にそれを破ったことは周知の事実です。これは非常に重大な一連の出来事です。では、なぜロシアは米国を信頼しているのでしょうか?

セルゲイ・ラブロフ外相:

しかし、ここで明確にして誤解をなくしたいのです。私たちはこの状況について繰り返しコメントしてきました。アラスカについては私たちの提案ではありませんでした。これはウィトコフ氏がアンカレッジの数日前に持ち込んだ提案で、プーチン大統領はすでにこの状況についてコメントしています。要するに、彼の評価によれば、そこには複雑な側面があり、モスクワでこの提案が提示されたときには(プーチン大統領は)同意しなかったということです。しかし、アラスカに到着したとき、彼は「考えてみた。どんな合意にも何らかの妥協の要素が含まれていると私は信じている。私はこれを受け入れる責任を負い、私の国民は理解してくれるだろう」と言いました。

これは米国からの提案で、変更されていませんでした。もちろん、詳細はない提案でしたが、解決の原則はそこに示されていました。プーチン大統領はこれらの原則を一切変更せずに受け入れました。ですから、マルコ・ルビオ国務長官が6月のどこかで、「米国はウクライナを明確に支持しているため仲介者にはなれない」と言ったとき、私は少し驚きました。ところで、その後どうなったかというと、プーチン大統領とトランプ大統領がアンカレッジで行った記者会見について、記憶を呼び覚ますために詳しく読んでおくと、「素晴らしい成果」という言葉がそこで使われました。「理解」や「合意」といった言葉も使われました。トランプ大統領は、アンカレッジでの成果を「素晴らしい大きな前進」と表現しました。さらに、解決すべき問題はほぼ一つしか残っていないとも述べました。

つまり、我々は大きな突破口を開いたのです。これはほぼ原文通りです。今は全部は思い出せませんが。そしてもちろん、ヨーロッパの米国同盟国は恐怖に震えました。ご記憶の通り、彼らはワシントンに駆けつけ、アメリカ政権の指導部と交渉を始め、それから数ヶ月が経ちました。 6月にエヴィアンで開催されたG7サミットで、マクロン氏は誇らしげにこう述べた。「我々はアンカレッジを葬り去った。アメリカは今や我々と共にある。トランプも今や我々と共にある。我々は再び皆ロシアに反対している。」状況はこうだった。アンカレッジからエヴィアンでのG7サミット、そしてアンカラでのNATOサミットまでの間に何が起こったのか?我々は皆、報道機関が報じ、政治家が発表した出来事を追ってきた。しかし、ヨーロッパが、プーチン大統領に何の変更もなく受け入れられた提案を維持するのを阻止するという主要な任務を隠さなかったという事実は明らかだ。これはまさにヨーロッパが望んでいたことであることは明白だ。

ドミートリ・サイムズ:

このプロセスに関わっているアメリカの交渉担当者たちを詳しく見てみると、彼らはこの状況において真に効果的な和平仲介者であろうと真剣に願う、非常に真剣で献身的な人々の集まりであるように思えます。プーチン大統領自身もこのことについて語っています。私はジャレッド・クシュナー氏を少し知っています。彼とは非常に密接なかかわりをしたことがあります。特別検察官のミュラー氏は、かつてクシュナー氏と私それぞれに、私たちの関係や、ロシアの干渉が私たちを通じてどのように行われたとされるかについて尋問しました。私たちの証言は完全に一致しました。この経験から、クシュナー氏は道徳的に信頼できる人物だと確信していました。しかし、彼らをまともな人物だと考えているからこそ、彼らがアメリカ合衆国を代表していることを認識すべきだと私は思います。マルコ・ルビオ氏が述べたように、アメリカ合衆国はウクライナを支援しており、非常に積極的に支援しています。仲介者としてのアメリカ合衆国の役割と、ウクライナの支援者としてのアメリカ合衆国の役割は、どのように両立できるのでしょうか。

セルゲイ・ラブロフ外相:

まず、私はすでにトランプ政権に、西側諸国の中でも決定的な違いがあることを指摘しました。それは、現実を認識していること、そしてロシア連邦の正当な安全保障上の利益の観点から現実を認識していることです。彼らはウクライナのNATO加入など取引の一部とさえ考えていないことを念頭に置いています。また、何世紀にもわたってウクライナのこの地に住み、状況の力によってこの土地とともにウクライナ・ソビエト社会主義共和国の一部となった人々の望みの観点から現実を認識していることも認識しています。

そして、この認識は非常に価値があります。今話している人々が明白なことを受け入れているのであれば、明白なことを受け入れたくない他の西側諸国がどうなっているかは明らかです。私はドナルド・トランプ大統領の一期目のときにジャレッド・クシュナーと少し知り合いました。米国大統領がホワイトハウスで私を迎えてくれたとき、私たちは少し言葉を交わしました。彼はとても感じが良く、信頼できる人物という印象を受けました。私はトランプ大統領の2期目にスティーブ・ウィトコフ氏と話をしたことがあります。彼もまた、明らかに成果を上げたいと考えています。

同時に、イラン、パレスチナ、そして中東情勢全般において、それぞれ異なる分野で交渉にあたるウィトコフ氏とジャレッド・クシュナー氏が、ロシアとアメリカの関係全体を統括しているわけではないことは明らかです。そして、あなたが正しく指摘されたように、国務省は、大統領から受けた指示をロシア外務省が実行しているのと同様に、交渉プロセスからある程度距離を置いています。しかし、交渉に直接参加しているのは、我々の理解では、この2人の交渉担当者が政権内で占めている地位や立場を反映している人々です。

しかし、同時に、ロシアとアメリカの関係に関するあらゆる問題やその他の事柄を決定する人々は、交渉の成功に関心があるかどうかに関わらず、当然ながら自分たちの判断で行動します。しかし、例えば、議会と政権、アメリカ財務省、その他の関係機関は、バイデン氏、あるいはバイデン政権時代の議会が導入したすべての制裁を無条件で延長し続けています。トランプ大統領は、これはバイデン氏の戦争だ、私が大統領に選ばれていたらこんなことは起こらなかっただろう、と言います。しかし、ここで実際に何が起こっているのかを少し考慮する必要があります。

ジョー・バイデン氏によって、あるいはジョー・バイデン政権下で導入された制裁の延長に加えて、現政権はルクオイル(ロシアの民間石油会社)とロスネフチ(ロシアの国営石油会社)に対して新たな制裁をすでに課しています。そして、アメリカ財務長官のベッセント氏は、制裁強化の必要性についてかなり率直に語っています。一般的に、世界のエネルギー市場はアメリカの管理下に置かれる必要があると思っているようです。これらすべては、交渉中に伝えられている感情とはほとんど一致しません。しかし、それが現実なのでしょう。

そしていつものように、現実は一面的なものではありません。多面的なものです。 MAGA(Make America Great Again、アメリカを再び偉大に、アメリカ第一、アメリカの国益第一)というスローガンが今もなお存在し、ロシアとの関係にも表れているという事実。これは紛れもない事実です。アメリカ人は経済的利益を得ようとしています。確かに、経済的利益を得るためには、他の国々に対して行っているようなやり方でロシアを扱うことはできないと彼らは認識しています。そして、このことが最終的にどうなるかは、私にはまだ分かりません。

ドミートリ・サイムズ:

ヨーロッパ諸国について話すとき、モスクワでの交渉で得られた好調な勢いを彼らがどう活用するのかという疑問が生じます。ご存知のとおり、クシュナー氏とウィトコフ氏はキエフに到着するとすぐにゼレンスキー大統領と会談し、その後、イギリス、フランス、ドイツからのヨーロッパ代表が参加する会合が開かれました。

セルゲイ・ラブロフ外相:

私たちはそれを「茂みの中のピアノ」(偶然そこにあったように見せかけて、実はあらかじめ周到に準備されていたもの」という言い回し)と呼んでいます。

ドミートリ・サイムズ:

まさにその通りです。そして、彼らはきっとこのピアノを茂みから引きずり出して、ますます積極的かつ敵対的な役割を担わせようとしているのでしょう。ヨーロッパの立場をどう見ていますか?そして、アンカレッジの後と同じように、彼らが我々の努力をすべて台無しにしてしまうのではないかと恐れていませんか?

セルゲイ・ラブロフ外相:

アンカレッジは最初の事例ではありませんでした。ウクライナ情勢におけるヨーロッパの役割は、別途研究する価値があります。実際、過去500年間の地球の発展におけるヨーロッパの役割も同様です。この500年もの間、ヨーロッパ人は他者を犠牲にして生きてきました。これには奴隷制、植民地主義、搾取などが含まれます。しかし、2つの世界大戦がヨーロッパで、そしてヨーロッパ諸国の政策に関連して始まったことを忘れてはなりません。ナポレオン戦争も思い出すことができます。好戦的な国家の指導者が、ヒトラーと同じように、ヨーロッパ全体を自らの旗の下に集めてロシアを攻撃しました。そのため、ヨーロッパは世界史において地獄の産物と見なされることが多いのです。

ところで、ヨーロッパからの入植者がアメリカ大陸に航海したとき、私たちはこのことを人々に思い出させることはめったにありませんが、忘れてはなりません。エカチェリーナ2世がイギリスの植民地支配者に対する北米の入植者の支援において決定的な役割を果たした(米国独立戦争において英国への協力を拒んだ)という事実、そして私たちの関係のこうしたルーツを見れば、それを忘れてはならないことがわかるでしょう。

もちろん、冷戦の時期もありました。これらの関係は、大祖国戦争、第二次世界大戦の時期を含め、さまざまな形で発展しました。同盟については、最近のスピーチで繰り返し話していますが、最終的には非常に大きな役割を果たしました。多くの研究者が、(米国などによる)レンドリース援助と北極海輸送船団が、ソ連が戦争の最初の1年間を耐え抜く能力に非常に大きな貢献をしたと指摘しています。その後、一時停止、待機期間がありました。現在、一部の歴史家は、この待機期間を、同盟国であるイギリスとアメリカが、どちらが有利になるか、どちらが傾くかを理解しようとした試みだと解釈しています。

しかし、それでも、第二戦線の開設は、おそらく決定的な役割を果たさなかったかもしれませんが、それは戦友の絆でした。エルベ川での会合(第二次世界大戦末期の1945年4月25日、ドイツ東部を進撃していたソ連軍と米軍がエルベ川沿岸で合流した)の様子を実際のニュース映像で見るだけで、武器を手にナチ​​ズムと戦った人々のレベルでは、それが非常に誠実なものであったことが理解できる。そして、この精神、いわばエルベの精神は、アンカレッジの精神を不朽のものとするつもりはないが、アンカレッジではそれは精神ではなく、理解であった。

しかし、ヨーロッパに戻ると、ヨーロッパ人は建設的な役割を果たす機会が非常に多かった。彼らは今、「我々抜きでは交渉はしない」「我々は交渉のテーブルに着かなければならない」などと言っている。彼らは2013年12月、マイダンが沸騰し始めたときから交渉のテーブルに着いていた。ちなみに、ワシントンにいる一部のヨーロッパ人も、ビクトリア・ヌーランドが自ら過激派の訓練を監督し、彼らにクッキーかパイを配っていた。どちらだったかさえ覚えていない。

そして、フランス、ドイツ、ポーランドに代表されるヨーロッパ諸国が、ヤヌコビッチ大統領と権力掌握に必死な野党との間で交渉を開始しました。ご存知の通り、2014年2月21日、ヤヌコビッチ大統領と野党の間で合意が締結されました。この合意は実質的に欧州連合によって保証されており、早期選挙の実施に関するものでした。これはヤヌコビッチ大統領の譲歩でした。早期選挙までの期間、彼は行政権限のほとんどを放棄し、国は国民統一政府、つまり暫定的な国民統一政府によって統治されることになっていました。

翌朝、クーデターが発生しました。過激派は、ドイツ、フランス、ポーランド、そしてその他出席していた国々の署名をすべて無視し、行政庁舎を占拠し、西側諸国はそれをすべて受け入れました。そしてプーチン大統領が最近このことをよく思い出し、合意が署名の準備が整った時、オバマ大統領が彼に電話をかけ、「ウラジーミル、彼らは合意に達した。君がそこにあるものすべてを気に入っているわけではないことは理解している。ヤヌコビッチに署名を思いとどまらせないでくれ」と言った。するとプーチンは、「彼は独立した、普遍的に認められた国家元首だ。彼がその立場で署名するなら、私がこの件で彼を妨げる権利などあるだろうか?」と答えた。

しかし、この署名は2014年2月21日に行われた。そして2月22日にはクーデターがあった。そしてフランス、ドイツ、イギリスの代表は、もちろん2月22日の午後に政治家の声明を読んだ。ヤヌコビッチは逃亡したが、ハリコフに行った。彼はキエフにはいない。彼はハリコフで自分の党の大会に出席していた。人々はついに正しい選択をした、とフランス、ドイツ、イギリスは述べた。欧州諸国が保証した文書のインクが乾く前に、彼らには確かに2度目のチャンスが訪れた。1年後の2015年2月、ミンスクでのマラソン交渉の後、対応する合意が調整されたのだ。当時、メルケルとオランドの署名も、プーチンとポロシェンコの署名とともにそこにあった。

しかし数年前、メルケルは引退後、同じく引退したオランドとポロシェンコの3人は、告白した、いや、告白したというより、誇らしげに宣言した。「我々は何も履行するつもりはなかった。ウクライナに武器を大量に送り込むために、必死に時間を稼ぐ必要があったのだ」。これは欧州諸国にとってまた別のチャンスだ。3度目のチャンス、他にもエピソードはあったが、これらが最も印象的だった。

3度目のヨーロッパのチャンスは2022年4月で、イスタンブールのロシア交渉団は、プーチン大統領がアンカレッジで昨年提案したのと同様に、ウクライナ側の提案を受け入れ、本格的な和平条約を締結する準備が整った原則を受け入れた。これらすべてに仮署名がなされた。大統領は、この話題について対話相手と話し合う際にカメラの前でさえ、これを何度も証明してきた。しかしボリス・ジョンソンは最近(この合意を妨害したことを否定し)、「私は誰にも何も禁じていない。ただ、戦いたいならもちろん我々は君たちと共にいると言っただけだ。」と言った。それは嘘だ。我々は彼が何を言ったか知っている。そして今もヴェルホヴナ・ラダ(ウクライナ議会)の人民奉仕派を率いるダヴィド・アラハミアは、そうではないと認めた。

ボリス・ジョンソンは彼らに「何も署名するな」と言った。まあ、ヨーロッパにはおそらくトランプ政権と同じように賢明で責任ある立場を取る機会がその後もあっただろう。彼らが言うところの、この土地に住む人々やその人々の意見を含めた、現場の現状の真実を見るべきだ。いや、彼らはロシアが戦略的敗北を喫しなければならないと宣言するたびに、降りるのが非常に困難なフェンスを登り続けている。つい先日、カヤ・カラスか、あるいは欧州連合の他のコメンテーターが、我々は再び続ける必要があると述べた。もう少し付け加える必要がある。ウクライナは今や全員を打ち負かし、我々はウクライナの領土保全を侵害するものを決して認めない。この人たちにとってはそうだ。

そして、なぜこんなことになるのか?彼らが主張するように、ウクライナは「ヨーロッパの価値観を守っている」からだ。しかし、これは告白であり、自己暴露だ。もしそうなら、そして彼らはこれを1年以上も言い続けているのだが、彼らにとっての「ヨーロッパの価値観」とは、真のナチズム、人種差別、国籍に基づく差別、宗教に基づく差別の露骨な表れを意味するのだ。

国連憲章は、性別、人種、言語、宗教に関係なく、すべての人が人権を尊重する義務があると定めているが、(ウクライナで)ロシア語が禁止されている。イスラエルではロシア語は禁止されていない。アラビア語もペルシア語も禁止されていない。イランではヘブライ語は禁止されていない。イランではシナゴーグは機能しており、ユダヤ人コミュニティも存在する。しかし、ウクライナは、ただの言語ではなく、国連の公用語のひとつ(ロシア語)を禁止している唯一の国である。

そのため、ウクライナの商店ではロシア語を話す客へのサービスを拒否している。学校では、こうした言語の使用をすべて禁止している。ロシア語の授業はすべて禁止され、ウクライナ人が所有するものも含め、ロシア語のメディアもすべて禁止された。そして、正統派ウクライナ正教会も法的に禁止された。そして、これらは「ヨーロッパの価値観」らしい。

また、どうやら「ヨーロッパの価値観」には、テレビやソーシャルメディアで毎日大量に目にする映像も含まれているようです。それは、地域徴兵センター(TCC)が市民を家畜のように路上で捕まえ、10人の屈強な男たちが若い男を掴んで押し込み、引きずり出して軍服を着せ、機関銃を与え、最前線に放り出す様子です。つまり、これが「ヨーロッパの価値観」なのです。

ですから、ヨーロッパが「われわれも交渉に加わらなければならない」と言っても、こちらとしては、「あなた方にはこれまで何度も建設的な役割を果たす機会があったのに、そのすべてを台無しにしてきた」と言わざるを得ません。今後、ヨーロッパが再び何らかの役割を任され、信頼を取り戻したいのであれば、今度は何をしようとしているのかを、まず十分に説明しなければなりません。しかし、それは容易ではないでしょう。

(つづく)

ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相インタビュー パート2

アンドリュー・ナポリターノ判事:

外相、今日の西側に住む非常に多くの人々にとってさえ、そして真に中立的な観察者にとってはなおさら、ロシアが特別軍事作戦の過程でこの紛争に軍事的に勝利することは、完全に、そしてまったく明白になっています。そして率直に言って、それはかなり早いうちに起こることが明らかです。この現実を踏まえて、お尋ねします。今後の実際の計画はどのようなものでしょうか。この問題に対処するため、実際にはどのような戦略が立てられているのでしょうか。ロシアが軍事的勝利を収めた後、ウクライナはどうなるのでしょうか。

セルゲイ・ラブロフ外相:

これは先ほどの質問に対する私の回答の続きです。何世紀にもわたってこれらの土地で暮らしてきたロシア文化圏の人々を再び文字どおりの強制収容所に引き渡すため、1991年の国境への復帰を要求している、理性を失っているとしか言いようのない人々がいます。そうした少数の人々とは別に、時折、現実主義の兆候が見られる別の集団もあります。現在では、フィンランド大統領やイタリア首相を含む一部の人々が、緊急に停戦する必要があると語り始めていますが、この背後にも時間を稼ぎたいという願望があります。誰もがそのことを完全に理解していますし、ゼレンスキーもそれを隠そうともせず、「パトリオット・システム用のミサイルと、さらに多くの防空装備が緊急に必要だ。われわれの国家を救わなければならない」などと言っています。

しかし、彼らは皆、停止を呼びかけているものの、大多数は「いったん止めよう。しかし、我々はロシアの現在の支配地域について何も承認しない」と言っています。また一部は、「状況を直ちに凍結し、ウクライナの残存部分にワシントン条約(NATO条約のこと)第5条に相当する保証を与え、キエフの支配下に残る領域に国際安定化部隊を配備する必要がある」と言っています。われわれはすでにこれに回答しています。軍服を着た者や軍事施設はすべて、われわれにとって正当な攻撃目標となること、また、法的には加盟させないまま、実質的にNATO加盟を再現するようないかなる選択肢もあり得ないことを述べました。

しかし、最も重要なことは、1991年の国境しか認めず、今すぐ敵対行為を終わらせることを主張する人々も、キエフ政権を使ってわれわれに対して仕掛けられた戦争への対応として、われわれが特別軍事作戦を開始した後、ウクライナ南東部で実際に起きたことを承認する含みを持たせながら敵対行為の終結を主張する人々も、双方とも、現在キエフを支配している政権を存続させることを論じている点です。それは、私がすでに挙げたこの政権特有の性格、すなわちナチズムの台頭、攻撃的なロシア嫌悪、基本的人権の組織的な侵害が継続することを意味します。

具体的には、自らの言語を使う権利と、宗教を自由に選択するという基本的権利の侵害について述べています。軍事段階が何らかの形で終結した後も、こうした「欧州の価値観」がすべて固定化されることになります。彼らは選挙について話していました。すでに選挙実施を示唆していましたが、今では誰もが「いや、それは行うべきではない」と言っています。ちなみに、米国人から選挙への反対意見を聞くとすれば、そもそも奇妙なことです。米国では必ず2年ごとに選挙を行います。米国人もここでは現実主義を示していますが、欧州は、自分たちから見ても公然とロシア嫌いで、攻撃的かつ率直に言ってネオナチ的な政権を維持する決意であるように見えます。それが欧州の計画です。ロシア国民がそのような結果を受け入れる方法を見いだせるとは、私には到底思えません。

アンドリュー・ナポリターノ判事:

では、25年後に同じようなことが再び起こらないと、ロシア人が確信できるようにするにはどうすればよいのでしょうか。西ウクライナの領域に住む人々がNATOを招き入れることなく、NATOを退けられるようにするには、どうすればよいのでしょう。

セルゲイ・ラブロフ外相:

ロシアには緩衝地帯が必要だということも、多くの人が論じています。我々はウクライナそのものが緩衝地帯なのだと言っているんです。現代のウクライナがどのように形成されたのかについては、大統領も私も繰り返し述べてきました。ソ連指導部の意思によって西部地域がソ連に編入されましたが、そこには何世紀にもわたり、非常に強い民族主義思想を持つさまざまな欧州の民族の人々も暮らしていました。そこで、その急進主義を何とか弱めるため、いわばその急進主義を薄めようとして、ロシアの土地、具体的にはロシア古来の領土を、これらの新しい西部の土地に付け加えることにしたのです。それは、これらの地域を統合することによって当時直面していた政治的緊張を効果的に中和できるのではないかと考え、均衡を変化させるために意図的かつ計算の上で行われた試みでした。そして、この全体がウクライナ・ソビエト社会主義共和国と呼ばれました。

確かに、このウクライナ・ソビエト社会主義共和国はもはや現代世界には存在しませんが、それが常にかなり人工的な構築物であり、主権国家として存在したのは、最終的に地図から消えるまでのわずか数十年間にすぎなかったことを忘れてはなりません。それは一つの国家の枠内に存在し、その国家は、ソ連に暮らすすべての民族の権利を保障し、もちろん自国の安全も保障していました。

ハリネズミと震える雌ジカを組み合わせたような、この奇妙で不自然な結合体が最終的に(ウクライナとして)独立すると、根深い根本的な矛盾、具体的には西側志向の住民とウクライナ南東部に暮らすロシア語話者共同体との間の顕著な文明的分断が、ソ連崩壊の直後から驚くべき速さで表面化し、噴き出し始めました。それは、ほとんど必然的に、関係するすべての人々にとって現実の、そして持続的な悩みの種となる不安定な状況でした。

そして、これらの矛盾は、当初から欧州によって大きく増幅されました。私は2004年のマイダン(オレンジ革命)をよく覚えています。それは試みではなく、実際に起きたことです。米国人と欧州人は大統領選挙の第2回投票の結果(ヴィクトル・ヤヌコビッチが勝利)を承認せず、ウクライナ憲法裁判所に、憲法に規定されていないにもかかわらず第3回投票を実施せよとの判断を出させました。彼らは第3回投票を実施し、自分たちが必要とする人物(ヴィクトル・ユシチェンコのこと)を当選させました。その当時、投票前から欧州連合より公然と、「ウクライナ人はロシアと西側のどちらにつくのか決断する義務がある」との要求が出始めていました。ロシアとの関係を完全に断ち切ろうとしないすべての人々を欧州の価値観と対立させる、この硬直した二者択一の考え方は、残念ながら、非常に長い間、彼らの政治言説に深く根を下ろしてきました。

われわれはすでに、ここで多くのことを論じました。しかし、われわれがかつて世界政治における正当な存在として承認したウクライナは、今日では、もはや同じ資格を備えた形では存在していないという否定できない事実が残ります。それはわれわれが直視しなければならない、厳然たる客観的事実です。状況の現実は完全に変わりました。

ウクライナ・ソビエト社会主義共和国は存在しません。われわれが現在のウクライナの独立を承認したのは、1990年に採択された独立宣言に基づいています。それはウクライナ議会であるヴェルホヴナ・ラーダによって正式に採択されました。その歴史的宣言では、ウクライナ国家が非核、中立、そして厳格な非同盟国家であり、将来にわたってそうあり続けることが厳粛に宣言されました。現在、この三つの重大な誓約は、関係当事者によってことごとく無視されています。

ゼレンスキーは2022年初頭の時点で、「振り返れば、核兵器をすべて放棄したことは、われわれにとって重大で高くつく過ちだった」と公言しました。多くの政治家が、「厳密に言えばソ連時代に発展した知識と技術の両方が利用できるのだから、それを使ってこの地位に戻ってはどうか」と本気でほのめかし始めました。NATOについては、もはや話す気にさえなりません。彼らは皆、NATOと欧州連合への加盟が自分たちの安全を保障すると宣言しています。欧州連合は今や、NATOとまったく同様の軍事ブロックです。ここでは、われわれがウクライナを国際関係の独立した主体として承認することを可能にした、ウクライナ国家の宣言された基盤を示すすべての特徴が失われています。

ドミートリ・サイムズ:

欧州の言動を見ると、奇妙な印象を受けます。一方では、ロシアはあえてエスカレートしない、核兵器を使用しない、自分たちの領域への報復攻撃を恐れるだろうと言っています。他方では、ロシアが攻撃するかもしれない、おそらく攻撃するだろうと彼らが言う2029年から2030年に向けて、準備しており、欧州では非常に急速な軍事化が進んでいます。

起きているのは、数十億、数兆ドル規模の軍備計画への資金投入だけではありません。彼らは、ウクライナでいかなる和平合意が成立しようとも、それとはまったく無関係にこの軍事化を続けるという印象を与えています。この状況を見て、あなたに質問があります。彼らは本当にそれほどわれわれを恐れているのでしょうか。それとも、ロシアの脅威を口実にして軍産複合体を強化し、ロシアに対する大規模攻撃を準備しているのでしょうか。

セルゲイ・ラブロフ外相:

私は率直に言って、これらの軍国主義勢力は単に自分たちの狭い利益のために動いているのだと思います。考えてみてください。問題が蓄積し、先鋭化し、深刻化しているにもかかわらず、軍事上の必要へ向けて大規模な資金の再配分が行われています。これには、NATO諸国全体でGDPの5%に到達するという確約や、ウクライナに直ちにさらに900億ドルを提供し、その翌年にもさらに900億ドルを拠出すると約束しなければならないと、さまざまな政党が議会に執拗に要求していることが含まれます。権力者たちが定めている長期的な優先順位について、まったく疑問を抱かずにはいられません。軍産複合体は大喜びです。莫大な利益を上げています。

さらに、メルツ自身が公にこう述べています。「そうだ、国民の状況が著しく悪化していることは理解している。しかし、ウクライナのため、この欧州の価値観のために、われわれはそうする義務がある」。そして、ザクセン・アンハルト州で「ドイツのための選択肢」が圧勝した選挙結果に彼らが現在どのように反応しているのか、また、この政党がナチズムを復活させていると、どのように非難しようとしているのかを見てください。この政党が民族主義的であることには、もちろん疑いはありません。しかし、この政党は単に、すべての国との正常な対話を支持しています。

もちろん懸念されるのは北極圏の軍事化に向かう路線です。最近、米国、ノルウェー、他の誰かさん(英国と思われる)が、ロシア連邦との戦争を公然と想定したシナリオで北極圏において演習を行いました。その背後には何があるのでしょうか。彼らがロシアを攻撃しようとしているとは思いません。また、われわれが欧州への侵略を準備しているという話は、まったく馬鹿げています。一方では「ロシアは負けている。だから、あらゆる方法でウクライナを支援しなければならない。支援を増やせばウクライナは勝つ」と言います。他方では、彼らの目には負けているはずのこのロシアが、欧州への攻撃を準備していると言うのです。政治家の観点から見ても、このような妄想的なことを口にするのは、まったく真面目な態度ではありません。

しかし大統領は何度も繰り返しました。われわれは誰を攻撃することも計画していません。それは愚かで、馬鹿げています。国家レベルの思考が完全に欠如しています。しかし、このような話が、あなた方が攻撃を準備していることを意味するのであれば、断言しますが、その戦争はまったく異なるものとなり、非常に短期間で終わるでしょう。

しかし、別の可能性もあります。第一次世界大戦の引き金となった出来事、すなわちサラエボでのフランツ・フェルディナント大公暗殺を繰り返すことです。理論的には、彼らは確かに同様のことを仕組むことができます。欧州人は複雑な陰謀と大胆な冒険を好み、また彼らには狡猾さが備わっていることを考えれば、その可能性を排除することはできません。あるいは、1933年のドイツの国会議事堂放火事件のようなことです。

彼らが今度はライプツィヒでのドローン事件(2026年8月、ドイツ東部のライプツィヒ/ハレ空港で、爆発物を搭載したドローンが発見された事件)を(ロシアのせいと)でっち上げ、何一つ証拠を示すことなく世界的なヒステリーを引き起こしたように、同様のことが起こる可能性を私は排除しません。同じように、2022年4月、ブチャで突然、どこからともなく現れたかのように、道路沿いに整然と並べられた数十体の遺体が示された状況について、われわれが繰り返し提起してきた非常に具体的な質問に対して、いまだに明確で満足できる回答は得られていません。その地で実際に何が起きたのか、多くの疑問が未解決のまま残されています。

今日に至るまで、国連事務総長からも、人権高等弁務官からも、ちなみに米国人を含む西側の対話相手からも、次の質問への回答を得られません。「皆さんの能力を使って、偶然にも非常に都合よくその場所に居合わせたBBCの撮影班が映した遺体が、誰のものだったのか、その人々の名簿を入手できないのですか」。誰もわれわれに何の回答も示しません。また、われわれが聞かされているところでは、親族もあまりそれを望んでおらず、親族については何も聞こえてきません。数十人が大量に殺害されたとすれば、それは戦争犯罪です。その場合、親族による何らかの団体が名乗り出ないということはあり得ません。しかし、ここでは、言われているように完全な沈黙があります。したがって、私は挑発行為が行われた可能性を排除しません。

ドミートリ・サイムズ:

欧州諸国の政府を見ると、世論調査の結果とは大きく異なっているという印象を受けます。欧州の世論は、欧州のエリート、グローバリストのエリートよりも、はるかに平和志向です。そこで私には、そもそもこのようなグローバリストのエリートと合意に達することが可能なのか、という疑問が生じます。

あなたは最近、この紛争では、少なくとも現段階では、決定的な役割を果たすのは外交ではなく、われわれによる武力の行使、やむを得ない武力の行使であると述べました。ウクライナ側が、西側から供与されたか、西側の支援によって製造され、西側によって誘導されるミサイルやドローンでわれわれの領域を攻撃している一方、われわれはウクライナ領内だけを攻撃しているという状況を、今後どのように続けられるとお考えですか。この状況はいつまで続けられるのでしょうか。欧州を攻撃せずに済ませることはできるのでしょうか。

セルゲイ・ラブロフ外相:

あなたの番組に出演する人々も、戦闘行動と外交というこの問題について論評しています。両者を並行して同時に進められない理由はないと思います。結局のところ、歴史上、そのような事例は存在しました。

われわれは2022年4月にウクライナ側の提案を受け入れる用意を整え、その文書にイニシャル署名し、本格的な条約の作成が始まるのを待っていました。その後、われわれは欺かれました。(プーチン)大統領は、それ以降についてこう述べました。「マクロンがウラジーミルに電話をかけ、調印に向けた雰囲気を改善する善意の意思表示を何らかの形で行うため、軍を撤退させ、一定の休止期間を設けるよう求めた。」そして、この欺瞞が現実になった後(欧州から合意を妨害された後)、プーチン大統領はこう述べました。「われわれは今後も常に交渉に開かれている。しかし交渉期間中も、軍事的手段による課題の解決を停止しない」。この方針は現在も維持されています。

われわれは復活祭と戦勝記念日に、2日間または3日間の停戦を提案しました。米国側の要請により、今回(ウィットコフとクシュナーがキエフを訪問したとき)は3日間の停戦が発表されました。米国の交渉担当者がキエフに移動できるよう、われわれは武力行使を控えました。

しかし、ロシア領内奥深くの平和的な民間施設に対するこれらのテロ行為へのわれわれの反撃も、すでにかなり長い間続いていることを強調しなければなりません。そして率直に言えば、ウクライナ側にとって、それに耐えることははるかに、あえて言えば著しく苦痛なものとなっています。われわれは、こうした行動を報復なしに終わらせないと決意しており、われわれの反撃がもたらす結果は、ウクライナ側にもますます明らかになっています。彼らもそのことを話しています。

ちなみに、このことは、西側がこの紛争のまさに現段階で停戦を呼びかけるようになった際の、突然で明白な切迫感も説明しています。しかし、交渉を提案する人々が、われわれに空疎な最後通牒を突きつけようとしているのではなく、実際に根本的な問題に取り組むという誠実な意図を持っていると十分に確信できるのであれば、われわれは有意義な交渉への参加を決して拒否しません。米国の交渉担当者であるウィトコフとクシュナーは、第一に不公平で、第二に実行不可能な要求を突きつけるのではなく、問題そのものに取り組んでいます。欧州が行っているのは、まさにその反対です。

アンドリュー・ナポリターノ判事:

あなたは最近、警告を発しました。ドイツ当局が最近、新たな戦争の可能性について語り始めたと述べました。これは非常に憂慮すべき動きです。なぜそのように述べたのですか。

セルゲイ・ラブロフ外相:

何よりもまず、ドイツのフリードリヒ・メルツ首相が、演説のたびに、「ロシアは欧州にとって最大の脅威であり、われわれはこの脅威との戦争に備えなければならない」という確信を持っており、その確信は日ごとに強まっていると言う機会を、決して逃さないからです。そして、これは私が何度引用しても飽きることがありませんが、彼の考えでは、「ドイツは、再び欧州大陸最大の軍事大国にならなければならない」と言っています。それは、われわれの地域の将来に不可欠なものとして慎重に検討しなければならない変化です。

それはまさに、第一次世界大戦前夜、そして第二次世界大戦前夜に、ドイツが自国を最大の軍事大国と考えていたのと同じです。これはフロイド的な失言ではありません。彼らは本当にそう信じているのです。彼らはナチズムに忠実に仕え、戦争犯罪に加わった自分たちの祖先を称賛しています。今も彼らを称賛し、彼らが正しいことをしていたと信じています。

彼らがゼレンスキーをあれほど支援しているのも、理由のないことではありません。ゼレンスキーは今、オーストリア、ルーマニア、その他の欧州の墓から、ニュルンベルク裁判によって永久に絶対的な違法行為と認定された行為を理由に有罪とされたウクライナ人のナチ犯罪者の遺骨を掘り出し、ウクライナに再埋葬しています。キエフで最も神聖な場所であるキエフ・ペチェールシク大修道院に、彼は「英雄の城塞」を創設すると宣言しました。

バンデラをはじめ、自らを永遠に汚し、ウクライナ国民の一員であること自体まで深く汚したさまざまな犯罪者が、今では英雄として称賛されています。暗い遺産を残したそのような人物が今日称賛されているのは、実に憂慮すべき現実です。ゼレンスキーは、欧州から運ばれてくる遺骨を納めた棺の前にひざまずいています。欧州は喜んでそのような霊廟づくりを支援しています。この人物が何を行っているのか、それが欧州の価値観とどのような関係にあるのかを、彼に説明しようとしないからです。

したがって、私はその可能性を排除しません。メルツのような人物が、実際に祖先の「偉業」をもう一度繰り返そうとする可能性を、私は決して排除しません。これは真剣に考える必要のあることです。

アンドリュー・ナポリターノ判事:

ノルウェーに拿捕されたロシア船についてお尋ねします。私の理解では、その船が何らかの非難されるべき活動に関与していたという申立ては一切なく、ノルウェーの裁判所が、特定の船舶に対してではなくロシア全体に対するウクライナ企業ナフトガスの請求を認めることにしたというだけであり、国際法の重大な違反でした。ロシア外務省のマリア・ザハロワ報道官は、これを海賊行為と呼びました。これはまったく正確な表現だと思います。

われわれはこれにどう対処するのでしょうか。外相、もちろん船のことは残念ですし、乗組員のことはさらに心配です。しかし、私が懸念しているのは、西側による侵略、欧州によるロシアへの侵略が、ますます拡大していることです。そして、われわれが厳しく対応しないたびに、彼らの処罰されないという感覚が強まります。大統領は、必要であれば、われわれには彼らを倒す用意があると言いました。その用意はありますか。あるとすれば、どのように対応するのでしょうか。

セルゲイ・ラブロフ外相:

大統領がそう述べたことは間違いありません。これは単なる比喩表現ではなく、明確な立場です。

問題の船舶は、1920年のスヴァールバル条約を完全に順守してスヴァールバルで行われていた科学活動と観光活動以外のいかなるものとも、まったく関係がありません。この一件は、もちろん、第一にノルウェーの法の女神テミス、すなわち司法にとっての恥であり、同時にノルウェー国家にとっての恥でもあります。

ナフトガスが、まずウクライナの司法機関で、そして確かその他の機関でも、クリミアの住民投票の結果を誰も承認すべきではない、クリミアはウクライナ領であり、したがってロシアが行ったことはすべて違法であると主張したからです。「われわれはこれこれの額の資産、設備、資金、投資を失った。したがって、尊敬する国際社会の皆さん、どこであれ、どのような方法であれ、そこにあるものを何でも略奪し、クーデターへの反応として、またクリミア住民をテロリストと決めつけて武装勢力が差し向けられたことへの反応として、クリミアの人々が意思を表明した結果起きたことへの補償として、われわれに引き渡してほしい」というわけです。

これはノルウェーにとっての恥です。私はすでにそう述べましたし、ここであまり具体的な詳細に立ち入ることは本当に望みません。しかし、ノルウェー当局者と現在のノルウェーの政治家は、この状況全体が完全な恥であることを十分に理解しています。彼らはわれわれと頻繁に連絡を取っていますが、率直に言って、自分たちがどうすればよいのか分かっていません。

しかし、いわゆる「影の船団」の船舶を拿捕しようとする攻撃的な試みに始まるこの傾向は、非常に危険なものになっています。これは関係するすべての人々にとって非常に憂慮すべき動きです。彼らはそこで、どのように行動するのでしょうか。例えば、あるアフリカの国の国旗を掲げ、ロシアの利益のために石油を輸送しているタンカーを拿捕します。特定の国を名指しするのはやめておきましょう。それから彼らは、「この国旗は偽物だ」と言います。

そして、そのタンカーを拿捕するとすぐに、タンカーが掲げている国旗の国に駐在する彼らの大使が、その国の外務省または大統領府に行って、こう言うのです。「いいですか、われわれはあなた方への援助計画を持っている。今日、今すぐにこの船への旗国承認を取り消し、その国旗は偽物だと言わなければ、援助を打ち切る」。これが、西側がここで用いている手法のすべてです。しかし、私は詳細に立ち入ることができませんし、そうする権利もありません。

しかし、大統領は「それまでだ」と述べました。英国の挑発行為についてはどうなのか、という質問に答えた際にも、大統領は「それは軍事機密だ」と答えました。

アンドリュー・ナポリターノ判事:

11月に中国で3人の大統領による会談が実現する現実的な可能性があるという、ワシントンでの発言についてお尋ねします。もちろん、ロシア大統領、米国大統領、そして習近平氏のことです。これは米国の願望なのでしょうか。それとも、それが実現する現実的な可能性があるのでしょうか。

セルゲイ・ラブロフ外相:

これは米国の願望でも、中国の願望でも、ロシアの願望でもありません。言ってみれば、単なる政治的経験則です。世界の三大国の指導者、すなわち中国について言えば何よりも経済大国、ロシアと米国について言えば軍事大国の指導者が、同じ時に同じ場所に集まるのです。「AとBを結びつけて考える」ことのできない政治分析者には、何の価値もないでしょう。私には、それだけのことだと思われます。

そして、そのような機会が提供された場合、プーチン大統領が断らないことに、私は何の疑いも持っていません。これは深圳で行われます。中国側の主催者が日程を編成します。日程が許し、そのような申し出がなされるなら、その可能性を私は排除しません。大統領がそのような機会を断らないことは、ほぼ確実だとさえ思っています。

アンドリュー・ナポリターノ判事:

特別軍事作戦は、あとどれくらい続くと思いますか。

セルゲイ・ラブロフ外相:

大統領はつい最近、この質問に答えました。戦争は予測を立てるのにあまり適した事柄ではない、と述べました。しかし、われわれが前進しており、日々進撃していることは事実です。そして、多くのことは、ウクライナ・レジームのマスターたちがどれほど理性的な助言をするかによります。

これまでのところ、理性的な助言はまったく聞こえてきません。聞こえてくるのは、民間人を路上で強制的に捕らえ、待機している車に押し込み、前線へ、死地へと直接送り、さらに多くのウクライナ人をこの燃え盛る炉に投げ込めという、容赦のない要求、絶え間ない呼びかけ、執拗な要求だけです。

そして、ウクライナはほかにも非常に多くの破壊的行為を強いられています。かつて国民経済と呼ばれていたものが今や悲惨な、まさに壊滅的な状態に陥り、日々積み重なる終わりのない、悲劇的で深刻な圧力の重みで崩壊しつつある状況に耐えることまで強いられています。

ドミートリ・サイムズ:

外相、この対談に応じていただき、どうもありがとうございました。私たちにとって、これはいつも非常に興味深く、有益です。そしてもちろん、あなたは現在、「統一ロシア」の政党名簿の筆頭に立っています。選挙での幸運をお祈りします。もちろん、選挙に参加するすべての政党には、それぞれの幸運を得る権利があります。しかし、「統一ロシア」にとって、この過程におけるあなたの役割は特に有益なものになると思います。ありがとうございました。

セルゲイ・ラブロフ外相:

温かいお言葉をありがとうございます。

(翻訳以上)


Friday, July 31, 2026

ウクライナ戦争も、イラン戦争も、「米国とシオニズム勢力による"ユーラシア枢軸"への戦争」、そして最終標的は中国:ペペ・エスコバル

イラン情勢が激しく動いています。残念ながらメインストリームメディアの報道を読んでいても本当に何が起こっているかはあまりわかりません。パキスタンやイランの当事者に直接のパイプを持っているジャーナリスト、ペペ・エスコバルと元CIAアナリストのラリー・ジョンソンの情報は非常に貴重です。7月29日の、ナポリターノ判事の番組でのペペの発言をAI訳しました。米国イスラエルが仕掛けたイラン戦争の手綱は完全にイランが握っており、トランプが、面子をつぶさずに収束できるかどうか、藁をもすがるように毎日、パキスタンのムニール元帥に電話しているということです。中間選挙が迫っているというだけではなく金融各社の分析によると戦略石油備蓄が8月中旬までしかもたない、これがトランプにとってのタイムリミットだという指摘もあります。いまやトランプは多極化勢力を「ユーラシア枢軸」という言葉を使って敵視しているという指摘も重要です。ロシア、中国、イランです。ウクライナ戦争とイラン戦争の関連を証明するかのごとくゼレンスキーはカスピ海でイラン船を攻撃しました。米国を筆頭とする西側連合の、多極化勢力に対する世界規模の戦争はすでに始まっているのです。このビッグピクチャーを把握するために、10年以上も、「机上アナリスト」とは違いユーラシア諸国に足を運んで取材してきたペペ・エスコバルの発信から目を離せません。

以下、AI翻訳に手を入れたものです。翻訳は一部冗長なところは省略しています。アップ後修正する可能性があります。@PeacePhilosophy 

    

ナポリターノ判事: トランプ大統領の威嚇や強硬な発言は、イラン指導部にどのような影響を与えているのでしょうか。

ペペ・エスコバル: ゼロどころかマイナスです。彼らはまったく意に介していません。しかし、外交のための小さな可能性でも残されている限り、その可能性を閉ざすことはしていません。そして、そのことが今週月曜日にラワルピンディで起きた出来事につながります。ラワルピンディはイスラマバードの姉妹都市で、パキスタン陸軍総司令部が置かれている場所です。さて、今週月曜日にラワルピンディを訪れたのは誰だったと思いますか。米国の代表団です。彼らは一つの提案を持ってきました。米国から直接持ち込まれた提案です。しかし、私たちの情報源であるパキスタン側の仲介者によれば、その提案はJ・D・ヴァンス副大統領のオフィスから出たものだということでした。

ナポリターノ判事: つまり、それはクシュナーやウィットコフではなかった。

ペペ・エスコバル: ええ、違います。違います。違います。代表団のメンバーが誰だったのかについては明らかにされませんでした。ラリーと私に対して「おそらくJ・D・ヴァンス副大統領のオフィスから出た提案だ」と確認してくれた情報源は一人だけです。しかし、彼らが持ってきた提案は非常に率直なものでした。「われわれはMOUに戻る用意があるかもしれない。ただし、米国側の条件でだ」というものです。パキスタン側は月曜日にその提案を聞き、直ちにイラン側へ伝えました。イラン側はそれを見て、「これは冗談なのか」と言いました。

なぜなら、それはイランが最初から言い続けてきたことと正反対だったからです。まず、すべての戦争を終わらせることについて協議する。次にホルムズ海峡について協議する。その後、凍結されたわれわれの資金を返還し始め、制裁を緩和する。そして最後に核問題について協議する。それがイランの立場です。ところが米国は、その順番を百八十度ひっくり返そうとしている。最初から核問題を議題にしようとしているのです。

ですからイラン側は当然、「今週はそれには応じない。われわれはいつでもMOUに戻る用意はある。なぜなら、MOUを離れたことは一度もないからだ。MOUを壊したのは米国だ。MOUを壊したのは米国大統領だ。われわれは戻る。しかし戻るのは、これまで協議してきた内容と、双方がMOUの14項目を履行するという約束に戻るということだ」と答えました。現在の状況はまさにそこです。私たちは再び膠着状態に陥っています。そしてもちろん、仲介役であるパキスタンは、いつものようにその板挟みになっています。

ナポリターノ判事: 私たち共通の友人であり同僚でもあるジョン・ミアシャイマー教授は、「イランは、凍結されている資産がすべて解除され、その資金がイランの銀行口座に戻るまでは、米国とは話し合うべきではない」と言っています。イランは、まず米国にそのような誠意ある行動を取らせ、それから初めて交渉に応じるべきだ、と。そうでなければ、トランプ大統領に約束を守らせることはできません。

ペペ・エスコバル: そのとおりです。まず第一に、ジョンは正しい。そしてイランもそのように考えています。しかし、それでもイランは、たとえばホルムズ海峡をめぐる技術的な問題について話し合いを始めることは検討しています。ちなみに現在、この問題は主としてオマーンが扱っています。イランとオマーンは、ホルムズ海峡について考えられるさまざまな仕組みをめぐり、技術的な協議を続けています。ですから、米国がその協議に加わる可能性もあります。しかし、そのためにはまず、米国が自らの約束に目を向け始めなければなりません。

そして、そのことはMOUの14項目にはっきり書かれています。まず制裁緩和を始めること。そして少なくとも、カタールの銀行にある60億ドルを返還し始めることです。カタール側は以前、その作業を進めていました。しかし結局、米国側は「いや、それはやめろ」と言ったのです。

ナポリターノ判事: トランプ大統領の威嚇や強硬な発言に対して、パキスタンはどのように受け止めているのでしょうか。

ペペ・エスコバル: 判事、これは実に興味深い話です。私たちが連絡を取り合っている情報源や仲介者は、ラリーにも私にもこう言いました。「トランプは何日もの間、毎日のようにムニールに電話をかけていたのです。」

ナポリターノ判事: ムニールとは誰ですか。首相ですか。

ペペ・エスコバル: アシム・ムニール元帥です。パキスタン陸軍トップです。

ナポリターノ判事: 陸軍トップですね。パキスタンでは、その地位は首相以上の権力を持っていると言われています。

ペペ・エスコバル: そのとおりです、判事。パキスタンで最も権力を持っている人物です。疑いようがありません。シャバース・シャリフ首相より、はるかに強い権限を持っています。

ナポリターノ判事: 陸軍トップに毎日電話をかけて、何と言っていたのですか。

ペペ・エスコバル: 要するに、こう言っていたのです。「イランとの交渉に私を戻してほしい。ただし、私が屈辱を受けるような形では困る。」これは私たちの情報源の一人が使った表現です。「私は屈辱を味わいたくない。」彼にとって「屈辱」とは、実際には外交を行うことなのです。

というのも、彼が署名したMOUは、トランプ大統領が署名した文書だからです。つまり、イランのペゼシュキアン大統領と米国大統領の双方が約束した文書なのです。ところが米国は、そのMOUに書かれた14項目の約束を一つとして履行しませんでした。そこに問題があります。そして今、彼は時間との勝負を強いられています。しかも、誰もが知っているように、その「時計」を握っているのはテヘランです。

MOUとは、ここ数週間、いや数か月にわたりイランが主張してきた内容に沿って手続きを定めた文書にすぎません。もちろん米国側はそれを読み、修正を加え、さらに修正を重ね、最終的には署名しました。つまり理論上は、その文書に同意したということです。しかし実際には、その内容を一つも履行しませんでした。

ですから、イランが言っていること、そして月曜日にパキスタン側へ伝えたことは非常に明快です。「米国の提案は見た。しかし、われわれの提案はその正反対だ。それでも、この扉は開けておく。」アラグチ外相は公の場に出るたび、いつも同じことを言っています。「われわれは外交に反対しているのではない。しかし、その前提には相互の尊重がなければならない。」そして、約束は双方のものです。双務的なものです。

一方だけが約束を破ることはできません。あなた方が約束を破るなら、われわれも約束を破ります。一方的なやり方の時代は終わったのです。しかし、米国はいまだにそれを理解していません。あるいは理解できないのです。これは私たちの友人アリステア・クルックが繰り返し言っていることでもあります。たとえトランプ自身が同意したとしても、実際には実行できない。あまりにも大きな圧力を受けているからです。そのとおりです。そして彼はMOUの内容さえ理解していません。14項目を本当に読んだことがあるのかどうかさえ、疑わしいくらいです。

ナポリターノ判事: 交渉の議題は、パキスタンが決めるのですか、それとも米国ですか、あるいはイランですか。

ペペ・エスコバル: いいえ。議題はMOUに書かれている内容によって決まります。そのMOUは当事者である両国が交渉し、もちろんパキスタン、オマーン、カタールが仲介役として意見を出してまとめ上げた文書です。しかし、その文書は今も存在しています。中国側もこの点を繰り返し強調しています。先週、キルギスで開かれたSCO首脳会議で、王毅外相は基本的にこう述べました。「交渉の場に戻り、MOUで約束したことを履行しなさい。再交渉はありません。」誰もが分かっていることです。再交渉するものなど何もありません。最初の交渉でさえ、まだ具体的な成果も実務的な成果も何一つ生み出していないのですから。

ナポリターノ判事: なるほど。しかし、なぜイランは、信用できない相手とそもそも交渉などするのでしょうか。

ペペ・エスコバル: そのとおりです。トランプのように信用できない相手と、なぜ交渉するのか――これが9,000万人のイラン国民が口にしていることです。殺害された最高指導者ハメネイ師の葬儀には4,000万人が街頭に出ました。その人々の間には、「米国と交渉しようとすること自体がばかげている」という国民的な共通認識があります。米国はまたしても、いかなる合意も守らなかった。だから交渉しても無意味であり、この戦争は戦場で勝ち取るしかない――これがイランの国民的コンセンサスです。

これは最高安全保障会議やマジュリス(国会)、IRGC(イスラム革命防衛隊)の将軍たちだけの考えではありません。シーラーズでも、マシュハドでも、ゴムでも、街の人々がそう言っているのです。

そして、イランのメディアもまさにそのことを伝えています。イランのメディアは非常に活発で創造的です。決して一枚岩ではありません。さまざまな意見があり、政治討論も非常に充実しています。テレビでも、ソーシャルメディアでも同じです。ですから、「交渉はまったく無意味だ」という国民的な一致がある一方で、それでも外交の扉だけは開いておくべきだという考えも共有されています。それがイラン外交の一部だからです。

アラブ世界、より広いイスラム共同体(ウンマ)、そしてグローバルサウス全体で、人々は「イランは決して外交を放棄しない」という姿勢を高く評価しています。イランはMOUも含め、考え得るあらゆる外交的解決策を試しました。しかし何一つ実を結ばなかった。それは、米国が約束を破り続けたからです。しかし、それでも終わりではありません。今週もそうですが、このわずかな外交の可能性が残っている限り、その扉は閉ざさないのです。

しかし、トランプは、数時間前にもまたイランを爆撃すると脅していましたよね。

ナポリターノ判事: イランは核兵器を持っているのでしょうか。

ペペ・エスコバル: (笑)それをどう答えればいいのでしょう。6000億ドル級の質問と言うべきでしょうか。おそらく誰にも分かりません。確かなことを知っている者はいないからです。もちろん、いくつかの仮説があります。「核兵器の完成まであと2、3週間だ」という説もあれば、「すでに保有している」という説もありますし、「第三国から入手した」という説もあります。あらゆる可能性があり得ます。というのも、この情報を確実に知っている人間は誰もいないからです。知っているとすれば、最高指導者モジタバ・ハメネイ師と、13人で構成される最高安全保障会議のごく限られたメンバーだけでしょう。しかも13人全員ではありません。

ナポリターノ判事: マクレガー大佐は、ロシアも中国も、イランが倒されることを決して許さないだろうと言っていました。そして、トランプもネタニヤフも、そのことを理解していないとも言っていました。

ペペ・エスコバル: そのとおりです。まったくそのとおりです、判事。実は、このことこそ、ここ10年ほど私が取り組んできた仕事の中心でした。ユーラシア統合、BRICS、SCO(上海協力機構)、そしてロシア、中国、イランの戦略的パートナーシップを研究してきました。この三か国こそ、私が10年以上にわたって、ほぼ毎日のように注目してきた国々です。実際に現地へ足を運び続けてきました。米国の机上の分析家たちは、そんなことは決してしません。ですから、ここが核心なのです。

ペペ・エスコバル: 多極化へと続く、この長く曲がりくねった道を築いている三つの文明国家――それがロシア、中国、そしてイランです。しかも、この三か国はいずれも長い歴史を持つ文明国家であり、豊かな外交経験と地政学的経験を積み重ねてきました。そして三か国の戦略的パートナーシップは、互いに密接に結び付いています。ここから、数日前に起きた非常に興味深い出来事につながります。

ペペ・エスコバル: ドナルド・トランプ大統領は、それまで「ユーラシア」という言葉を一度も口にしたことがありませんでした。ところが、数日前、初めて「われわれはユーラシア枢軸を警戒しなければならない」と発言したのです。彼は何を意味していたのでしょうか。要するに、誰かが彼の頭の中に、「新たな『悪の枢軸』が存在する」という考えを植え付けたのです。そして、その新たな「悪の枢軸」とは、米国の国家安全保障ドクトリンによれば、米国にとって戦略的かつ存立に関わる脅威とされる三か国、すなわちロシア、中国、イランのことです。

 しかし、判事がおっしゃったように、ワシントンの政策コミュニティ全体を見渡しても、その言葉が本当に意味するところを理解している人は、おそらく1%にも満たないでしょう。

ナポリターノ判事: なるほど。ところで、常軌を逸したゼレンスキーは、ウクライナでの戦争とイランとの戦争を、何か奇妙な形で一つに結び付けようとしているのでしょうか。そうなれば、米国は単なる資金提供国ではなく、交戦当事国になってしまいますが。

ペペ・エスコバル: 判事、それは奇妙な話ではありません。極めて計算された行動です。私たちは皆、この二つは別々の戦域、別々の戦場で行われているものの、本質的には同じ戦争であることを知っています。つまり、米国とシオニズム勢力によるユーラシア枢軸への戦争なのです。ロシアに対する戦争は現在も続いています。イランに対する戦争も現在進行中です。そして、その次に控えている最大の戦争が中国との戦争です。誰もがそのことを知っています。つまり、これらの戦争は最初から相互に結び付いていたのです。ですから、米国の評論家たちが「戦争同士がつながっている」と今さら発見したかのように語るたびに、私は苦笑してしまいます。違います。最初から同じ戦争なのです。そしてゼレンスキーが今回やったことは、もちろん命令に従ってですが、カスピ海でイランの船を攻撃することによって、その二つの戦争を実際に一つへ結び付けようとしたのです。

これは極めて危険です。狙いは、イランをウクライナとの戦争に引き込み、さらにウクライナを支援しているヨーロッパ諸国とも対立させることです。そうなれば、ヨーロッパを対イラン戦争へ引きずり込むことになります。つまり、ミリ単位で計算された作戦なのです。

しかし、イランはこの罠には乗りません。第一に、なぜイランがウクライナを攻撃しなければならないのでしょうか。ロシアはすでにウクライナに壊滅的な打撃を与え続けています。それとは別の問題です。

ただし、カスピ海こそがこの問題全体の鍵です。カスピ海は基本的に、ロシア、イラン、カザフスタンを中心とする内海です。もちろんアゼルバイジャンもありますが、ロシア、イラン、カザフスタンほど重要ではありません。

ロシアとイランの間でやり取りされる兵器や情報は、カスピ海を経由しています。ロシア側ではカスピ海北部の港アストラハンを出発し、カスピ海を通ってテヘランまで運ばれるのです。もちろん、ペンタゴンはそのことを知っています。だからこそ、何らかの形でカスピ海に干渉する必要があるのです。

さらに複雑なのは、地政学的な側面です。失礼、地政学的な側面ですが、ロシア・イラン・インド国際南北輸送回廊(INSTC)もカスピ海を通っています。ロシア側の重要港はアストラハンです。イラン側の重要港は、イランのカスピ海沿岸にあるバンダル・エ・アンザリーです。ちなみに、この港はすでに米国による爆撃を受けています。私は昨年、この輸送回廊についてのドキュメンタリーを撮影するため現地を訪れ、バンダル・エ・アンザリーまで行きました。そして、実際にカスピ海も航行しました。

 ですから、カスピ海はロシアとイランの双方にとって不可欠なのです。そこでウクライナは、「ここで少しかき回してやろう」と考えたのでしょう。しかし非常に興味深いことに、昨日から今日にかけて、ウクライナ側はイランに対し、事実上「これは間違いだった」と謝罪しました。なぜなら、自分たちの行動がもたらす結果を理解したからです。

イランには、その気になればウクライナに甚大な損害を与えるだけの能力があります。しかし、その必要はありません。ロシアがすでにそれをやっているからです。

ですから、判事、地政学的に見れば、このチェス盤は途方もなく複雑で、その複雑さは日ごとに増しています。

ナポリターノ判事: ヴァンス副大統領側の交渉担当者たちは、ホワイトハウス側の交渉担当者たちと対立しているのでしょうか。

ペペ・エスコバル: 私たちにも分かりません。パキスタン側も分かっていません。ただ、彼らが私たちに話したのは、「この提案は、おそらく90%、いや100%近い確率でJ.D.ヴァンス副大統領のオフィスから出てきたものだ」ということです。つまり、この提案は、理論上はホワイトハウスから直接出されたものではない、ということになります。

 そして、この仲介団は常に米国側と連絡を取り続けています。アシム・ムニール元帥とそのチームは、必要であればいつでもドナルド・トランプに直接連絡を取れる立場にあります。ですから、彼らの見方にも十分な根拠があるのです。

ここで改めて強調しておきたいのですが、ラリーと私は、いつも「これは一人の情報源から得た話です」と明言しています。しかし、その情報源は極めて重要な人物です。実際に交渉の席にいて、米国側からのメッセージを自分の目で読み、さらに米国側の担当者とも直接話をした人物だからです。

ナポリターノ判事: あなた方は、そのパキスタンの仲介者とどの程度近い関係にあるのですか。「一体これはどういう方向へ向かっているのか」と率直に尋ねられるほど近い関係なのでしょうか。

ペペ・エスコバル: はい、そのくらい近い関係です。ラリーと私は、週に3~4回は直接質問を送っています。しかも、同じことを何度も確認します。というのも、状況が非常に曖昧なことが多いからです。ラリーは情報分析の専門家ですし、私はパキスタンで長く仕事をしてきました。パキスタンという国は非常に複雑で、物事を読み解くのが容易ではありません。ですから、同じ質問を3回、4回と繰り返して確認する必要があるのです。

もちろん、パキスタン国内には、政府内部も含めてさまざまな利害や思惑がぶつかり合っています。ですから、私たちは確信が持てるまで慎重に確認します。仲介者やパキスタン情報機関から得た情報を公に語るときには、「これで間違いない」と100%確信できる状態でなければなりません。

また、可能であれば、私はテヘラン側から別の解釈も得ようと努めます。答えてくれることもありますし、「これは国家安全保障に関わるので話せない」と言われることもあります。しかし、その場合でも「それは間違っている」と否定されることはありません。

実際、この数日間の動きを見れば分かりますが、双方の代表団は絶えず行き来しています。パキスタンのハイレベル代表団がテヘランへ向かい、イラン側もパキスタンへ向かう。その往復が休みなく続いています。パキスタンは主要な仲介国ですから、そこには相当程度の信頼関係が存在しているのです。

例えば私たちは、「お前たちはパキスタン情報機関の手先だ」といった批判を、あちこちから受けます。しかし、そんなことはありません。私たちは情報を受け取り、その情報に筋が通っているかどうか、自分たちで分析しているだけです。

これまでのところ、受け取った情報の約90%は非常に正確でした。そして私たちは、常にイラン側の情報源にも照らし合わせて検証する機会を持っています。もちろん、戦時下では巨大な「戦争の霧」の中にあるわけですから、すべてが明瞭というわけではありません。

ナポリターノ判事: つまり、イランがホルムズ海峡を支配していること、原油価格が上昇していること、そして世界経済、とりわけ米国経済が景気後退に近づいていること、さらに中間選挙まで4か月を切っていることを考えると、ドナルド・トランプに残された時間は少なくなっているのでしょうか。

ペペ・エスコバル: そのとおりです。間違いありません。そして、本人もそれを分かっています。実際、彼に残された時間は8月中旬までです。現在出ている最も信頼できる分析報告書も、すべてその点を強調しています。

ナポリターノ判事: 8月中旬ですか。あと2週間半ほどですね。なぜそう言えるのですか。

ペペ・エスコバル: それが、米国の戦略石油備蓄(Strategic Petroleum Reserve)が限界に達するレッドラインだからです。8月中旬。それが決定的な節目です。ゴールドマン・サックスの報告書をはじめ、あらゆる主要レポートがそう分析しています。

私も、ワシントン政界に古くからいる情報源の一人からレポートを受け取りました。その人は、私の記事を読んで「一番重要な点を書き忘れている」と指摘してきたのです。そして、膨大な数字が並んだ報告書を送ってくれました。私はそれを見て、「なるほど、レッドラインは8月中旬なのだ。それ以降ではない」と理解しました。そして、トランプもその数字を見せられているので、それを知っています。

これが第一の理由です。第二は、ペルシャ湾岸一帯、GCC諸国、それにヨルダンを含めて配置されている約20か所の米軍基地の戦力が消耗していることです。ちなみに、ヨルダンにある基地の一つは、昨日もIRGC(イスラム革命防衛隊)の攻撃を受けました。イラクのアルビルも同様です。

 約20か所ある基地のうち、およそ80%が機能を失っています。現在でもある程度運用可能なのは、せいぜい4基地ほどです。残りは事実上、壊滅状態にあります。

ペペ・エスコバル: そして、判事、これは非常に重要な点ですが、私たちの知る限り、こうした状況は先週金曜日(7月24日)の会議で議論されました。その席では、J.D.ヴァンス副大統領とキーン将軍が、トランプに対して実際の状況を説明しようとしていたのです。

ちなみに、トランプが爆撃を停止したのは、その会議があったからです。

ナポリターノ判事: イランと核兵器の問題に戻りたいと思います。ラリー(ジョンソン)は、イランは自国の領土内で核爆発を行う可能性があるかもしれないと言っていました。何かを攻撃するためではなく、米国とイスラエルに対して「われわれには能力がある」というメッセージを送るためです。そのようなことは可能なのでしょうか。

ペペ・エスコバル: 実は、この情報はラリーと私が受け取ったものです。その根拠となったのは、イランのペゼシュキアン大統領とパキスタンのシャバーズ・シャリフ首相との間で交わされた、極めて重要な電話会談でした。ペゼシュキアン大統領はその電話で、こう述べたのです。「もし米国がわれわれの民間インフラを攻撃し続けるなら、われわれは自国の領土内で核装置を爆発させる可能性がある」と。

その趣旨は「抑止力として、自国の領土内で核装置を爆発させる」というものでした。攻撃のためではなく、イランには抑止能力があることを示すためです。そして、その内容をシャリフ首相は自らのチームに指示し、米国側へ伝えさせました。「電話ではこのような話があった」と。つまり、米国側もこの情報を受け取っているのです。

ナポリターノ判事: そのような行動がもたらす影響や、それに対して米国やイスラエルがどう反応するかを考えなければなりませんね。

ペペ・エスコバル: もちろんです。まさにそのとおりです。ですから、ペゼシュキアン大統領が、それほど機微に触れる内容をパキスタンのシャバーズ・シャリフ首相との電話で実際に伝えたのだとすれば……。 その件については、ちょっとした情報戦が展開されています。「あの電話はオープン回線だったのではないか」「つまり、誰かに聞かせることを前提に話していたのではないか」という見方です。

ナポリターノ判事: なるほど。では、なぜ今すぐ爆発させて戦争を終わらせないのでしょうか。彼らは何を待っているのですか。

ペペ・エスコバル: それはファトワー(宗教令)があるからです、判事。ハメネイ師によるファトワー、そして言うならば「ファトワー2.0」とでも呼ぶべきもの――それが現在も有効なのです。

まず第一に、イランの政治体制――宗教的民主制と呼んでもよいでしょうが、本質的にはそういう体制です――の立場からすると、最高指導者は父のファトワーを撤回し、「われわれは今、新しい時代に入る」と宣言しなければなりません。もちろん、その可能性自体は検討の対象にはなっています。私たちが知る限り、この問題についてモジタバ師が相談する相手は、せいぜい二、三人でしょう。それほど機密性の高い問題です。

さらに、シーア派イスラムの立場から見ても、これは極めて重大な決断になります。というのも、第一に、ファトワーを撤回する責任を負うことになるからです。第二に、そもそもそのファトワーは、シーア派イスラムの教義では、核兵器は無差別に民間人を殺傷するため許されない、という考え方に基づいているのです。

ナポリターノ判事: しかし、そのファトワーは、核兵器の使用だけでなく保有そのものも禁じているのですよね。

ペペ・エスコバル: はい、そのとおりです。極めて包括的なファトワーです。核兵器に関わるあらゆる枠組みそのものが禁じられています。ですから、それを覆すことは、途方もなく大きな決断になります。もちろん、その理由を地政学的な観点だけでなく、宗教的な観点、さらにシーア派神学の観点からも説明しなければなりません。そうなると、問題は非常に複雑になります。

(翻訳、以上)


Thursday, July 09, 2026

覇権にしがみつく米国、日本の責任 朝鮮戦争停戦73周年によせて The U.S. Obsession with Hegemony and Japan's Role: On the 73rd Anniversary of the Korean War Armistice

2026年7月7日 日本と朝鮮を結ぶ全国ネットワーク・東アジア市民連帯共催「朝鮮戦争73年 戦争終結を求める集会-アメリカの横暴を許すなー」(於連合会館)での講演の記録です。時間制限のため削った箇所もここでは戻してあります。当日使ったパワーポイントから写真や画像を挿入しています。

朝鮮新報の報道:米国の横暴を許すな/東京で朝鮮戦争終結を求める集会

★この投稿を転載・使用したい場合はかならず乗松聡子の許可を取ってください。peacephilosophycentre@gmail.com にメールください。この投稿のURL拡散は歓迎です。 https://peacephilosophy.blogspot.com/2026/07/us-obsession-with-hegemony-and-japans.html


覇権にしがみつく米国、日本の責任


朝鮮戦争停戦73周年によせて


乗松聡子

盧溝橋より

 きょうは7月7日です。日本では「盧溝橋事件」の日として記憶される、日本の中国に対する侵略戦争が本格化した日です。中国では、1931年の満州侵略「9.18事変」と、南京大虐殺を記憶する12月13日、抗日戦争勝利と世界ファシズム勝利を記念する9月3日と並ぶ、抗日戦争を記憶する日です。朝鮮と中国が、日本と米国の帝国主義に対して共に戦ってきた歴史を振り返るという意味で、7月7日に、朝鮮戦争休戦協定の73周年の集会を行うことは意義のあることと思います。

盧溝橋事件 北京 ファシズムの東方主戦場

 私は6月1日から6日、北京、瀋陽、ハルビンに行きました。ハルビンは初めてでした。高校2年のとき、森村誠一の「悪魔の飽食」で731部隊について知ったときの衝撃はいまでも鮮明に覚えています。でもやはり現地に行けばこそわかることがあります。それは現地で使う言葉、現地の目線です。盧溝橋の近くにある中国人民抗日戦争紀念館に行きました。

中国人民抗日戦争紀念館

 現地では、「1937年、日本軍国主義は七七事変を意図的に引き起こし、中国に対する全面戦争を開始した。中国軍民は日本侵略者に対して頑強に抵抗した。中国は全民族的抗戦の段階に入り、同時に世界反ファシズム戦争の東方主戦場を切り開いた。中国共産党は国共合作を基礎とする抗日民族統一戦線の正式な形成を推進した。敵後戦場、つまり共産党系の部隊が占領地域後方で展開した遊撃戦・ゲリラ戦の戦場と、正面戦場、つまり国民党軍が日本軍と正面から戦った戦場、は、協力し合って戦った」という趣旨の記述がありました。 

 この記述ひとつからも学ぶことは多いです。世界反ファシズム戦争の西はナチス、東は大日本帝国の主戦場であったというとらえ方は、戦争というと被害者史観になってしまう日本人が知っておくべき構図と思います。

瀋陽 918記念館 でっちあげた偽満州国 

9.18歴史博物館
瀋陽では、「9.18歴史博物館」に行きました。中国では「9・18事変」、日本では「満州事変」とか「柳条湖事件」とかいわれる、関東軍が行った南満州鉄道の爆破を中国軍のせいであると偽り、東北軍駐屯地の北大営への進攻を開始した、日本の満州本格的侵略、翌年には偽満州国という傀儡国家建設につながった出来事でした。この博物館は「9.18を中華民族の屈辱の日として決して忘れない」という信念で建てられています。 

 こういう記述がありました。「日本が中国東北を占領した後、傀儡政権である偽満州国を樹立するとともに、政治・軍事・経済・文化などにわたる巨大な植民地統治機構を築き上げ、東北人民に対して14年にわたる植民地支配を行った。植民地統治の期間中、日本の侵略者は東北人民を恣意的に虐待・虐殺・奴隷化し、東北の抗日勢力を苛烈に弾圧した。」

拷問器具
 「偽満州国をでっちあげる」と言い切っています。拷問器具も展示されていました。ありとあらゆる方法で抵抗を弾圧したと。ソウルの、西大門刑務所歴史館や、伊藤博文をハルビンで暗殺した安重根が収監されていた旅順日露監獄旧跡博物館を思い出しました。1905年から植民地支配していた朝鮮に加え、日本は現在の日本の3倍以上の面積がある東北地方を植民地支配し、抗う者を監禁、拷問、虐殺していたのです。 

 アヘン栽培、アヘン販売で住民に「毒害」を与えたとありました。日本では「強制同化」とか「同化教育」という言葉が使われますが、中国では「奴隷化教育」と言い切っています。「満蒙開拓」などではなく「移民侵略」「武装移民」と言い切っています。これを見るとまさしく日本は、パレスチナに「侵略移民」していたイスラエルと同じなのだということがわかります。やられた側からの言葉は大事なのです。

ともに日帝と闘った中国人と朝鮮人

 日本の侵略と植民地支配に対し、東北の人々は武装抵抗を行いました。東北各地で結成された抗日遊撃隊は、その後、東北人民革命軍、さらに東北抗日聯軍へと発展していきました。この展示からも、それらの部隊の多くは朝鮮人だったことがわかります。展示には、後に朝鮮民主主義人民共和国の指導者となった金日成、崔庸健、崔賢、金策らの名前も見ることができました。

 このようなジオラマがありました。説明にはこうありました。「『討伐隊』への待ち伏せ攻撃:1933年3月、梁成龍、金日成の指揮のもと、汪清遊撃隊は小汪清へ進攻してきた『討伐隊』300余名を待ち伏せ攻撃した。二日間にわたる激戦の末、敵20余名を殺傷し、日本軍と偽満州国軍の進攻を撃退した。」 

 露営の様子の等身大のジオラマがありました。東北抗日聯軍がマイナス30-40度にもなる極寒の森林で長期間ゲリラ戦を続けたことを表しています。このような過酷な状況の下、中国人と朝鮮人は共に日帝に抵抗し続けました。現在の朝鮮民主主義人民共和国、中華人民共和国はともに日帝に打ち勝った抵抗者たちが作った国です。朝鮮人や中国人が日本に向きあうとき、かたときもこの植民地支配の屈辱と、勝利・独立までの苦難を忘れることはないでしょう。問題は日本人の大半がこれを全くといっていいほどわかっていないことです。特に一番わかっているべき政治家がわかっていない。

東北抗日聯軍の露営のジオラマ

ハルビン 「731部隊」と「安重根」はつながっている

ハルビン駅にある安重根義士記念館
 ハルビンで見学した、「侵華日軍第731部隊罪証陳列館」と「安重根義士記念館」もその抵抗の歴史と直結しています。安重根は、1909年ハルビン駅で伊藤博文を暗殺しましたがまさしくその暗殺の現場、駅舎の中に記念館が組み込まれており、伊藤が立っていた場所と安重根が立っていたスポットに立つこともできます。窓の外にはすぐ電車の行きかう線路が見えます。私と友人はそこで、ちょうど見学しに来ていたハルビン地元の男性と会い、彼は伊藤スポットに立って銃撃を受けている写真を撮ってほしいと、ユーモラスなポーズをしました。

被害者を記憶する
 731部隊陳列館の展示です。いわゆる「マルタ」という実験台にされた中国人、朝鮮人、ロシア人には、抗日闘争に関わっていたことで関東憲兵隊、警察署、保安局、特務機関などに逮捕され、731部隊に送りこまれた人たちがいました。「特移扱(特別移送扱い)」と言われました。その人たちは「逮捕、尋問、拷問、移送、収監、実験、解剖、死体焼却」というあらゆる残虐行為を受けました。多くは「生物実験室、病理解剖室、野外実験場で亡くなり、一部は731部隊の撤退直前に集団虐殺」されたといいます。 

 「マルタ」にされた被害者は3千人かそれ以上といわれています。被害者の名前が刻まれた壁があり、そこに花をそえました。名前のない空のスレートも多数ありました。名前がわかっていない人々の存在を思い起こさせるためでしょう。

 安重根は歴史に名を残した独立運動家で専用の記念館が建っていますが、この、731部隊で「マルタ」とされた人たちも安重根と同様に日本の植民地支配に抗い、自由と独立のために戦っていたのです。この人たちの存在こそ記憶しなければいけません。「特別移送」展示コーナーは、このように電光掲示板で、1から3000の数字を繰り返し掲示していました。 

朝鮮戦争 日帝がまいた種

 日帝による朝鮮植民地支配と、中国東北の植民地支配は直結した歴史でした。それは朝鮮戦争につながります。ブルース・カミングス教授は、『朝鮮戦争論』で、「朝鮮戦争のはじまりは、日本軍が中国の東北部を侵略し、満州国という傀儡国家を作り上げた1931-32年であった」と言っています(62頁)。朝鮮人や中国人のゲリラを追跡し、殺害していた朝鮮人協力者の中には、陸軍士官学校出の金錫源など、のちに朝鮮戦争で韓国軍を指揮した人物がいました。

 韓国軍の上層部は多くが日本人のもとで軍務に服した経験がある者たちでした。朝鮮戦争は、日本に抗った者たちと日本に協力した者たちの闘いという側面もあったのです。もちろん、朝鮮戦争の起源については、解放後分断された1945年だった、南北に政府ができた1948年だった、と見方は様々ありますが、私は日本人の責任を問う立場として、日本による朝鮮、そして満州の植民地支配をその歴史的起点としてとらえる視点を重視しています。

平壌にある祖国解放戦争勝利記念館
 2019年、朝鮮民主主義人民共和国を訪ねました。やはり「現地での名前」には学ぶものがありました。朝鮮戦争のことは「祖国解放戦争」といいます。ちなみに韓国では「韓国戦争」といいます。平壌の「祖国解放戦争勝利記念館」に、在日朝鮮人の友人二人と、いまは沖縄県議になっている沖縄の友人と一緒に行きました。このスローガンは「米帝侵略者達を消滅させよ」とあります。

 朝鮮大学校の李柄輝教授は、「歴史の文脈で見れば、朝鮮戦争は米帝国主義時代の終焉の起点であった」と言っています。「冷戦」後、米国は、一強支配を維持しその覇権にしがみつくためにロシア、イラン、中国、朝鮮といった多極化世界に侵略戦争や経済制裁、内政干渉を仕掛けてきました。イランが米帝国の侵略戦争に負けずに主権を保った2026年はこの歴史文脈の中での画期的な出来事です。

朝鮮戦争と細菌戦

 祖国解放戦争勝利記念館に戻ります。館内の展示は撮影できませんでしたが、朝鮮戦争で米国が細菌戦を行ったという展示がありました。敗戦後、石井四郎ら731部隊の研究データが米国側に渡され、その見返りとして731部隊関係者の多くが東京裁判で訴追されなかったことは、現在では広く知られています。その研究成果が朝鮮戦争で生かされ、米国が細菌戦を行ったといわれています。

 朝鮮戦争中に撃墜され捕虜となった米軍爆撃機の搭乗員らは、詳細な証言を残しています。森村誠一『悪魔の飽食 第三部』では、「容器や弾体、信管などは米国で製造して朝鮮に持ち込まれたが、細菌そのものは東京のある工場で製造され、釜山と大邱の細菌兵器庫に運ばれた」といった証言も紹介されています。国際科学委員会による現地調査で細菌戦があったという結論が出ており、物証も提示されていますが、米国政府は一貫して否定しており、学界でも議論の対象になっています。

 当時、米国は日本人や朝鮮人を同等の人間とは思っていませんでした。広島と長崎に米国が落とした原爆の下には、日本人と朝鮮人がいました。植民地支配の故に原爆被害をうけ、その後の治療や救済においても差別された朝鮮人にとっては三重の被害でした。原爆投下も人体実験だったといわれており、それを証拠に、米国は原爆傷害調査委員会(ABCC)、今の放射線影響研究所というのを作り、被爆者やその二世のデータを集めるだけで治療さえしませんでした。

命のダブルスタンダード

「学び舎」の「ともに学ぶ人間の歴史」(2020)より

 朝鮮戦争で米軍は日本に落とした4倍もの爆弾を朝鮮に落とし、もう標的がないと言われるほど朝鮮のあらゆる都市を焼き尽くしました。民族同士が殺し合ったこの戦争で、朝鮮、韓国、合わせて約400万人もが命を奪われたと言われます。米軍を中心とするいわゆる「国連軍」も5万以上、中国人民志願軍も20万かそれ以上戦死したと言われます。朝鮮の分断はそのまま、離散した家族は会えないままです。こんな悲劇があるでしょうか。「忘れられたジェノサイド」と言われます。 

 日本人も米国人も、ここまで残酷な戦争をどうして語らないのでしょうか。広島・長崎の原爆、空襲、シベリア抑留など日本人の苦労、日本人の失われた命はいまだに語り継がれているのに。終わっていないからですか?日本に責任があるからですか?日本の教科書にはいまだに「朝鮮特需」で戦後復興が加速したと書いてあります。植民地支配した上、朝鮮人6人に1人もが亡くなった戦争の上に大儲けした、ここまで恥ずかしいことはないのではないでしょうか。もう「特需」なんて言葉を使うべきではないです。

 この命のダブルスタンダードはいまも同じと思います。今年2月28日、米国とイスラエルがイランに侵略戦争をしかけ、トマホークミサイルを撃ち込まれた学校では160人以上の子どもたちが惨殺されました。そのイランが連帯しているパレスチナ・ガザでは4年にわたり、そして今は南レバノンでも、ジェノサイドがインターネットで白昼堂々中継されています。

 それなのに日本のTVをつけると「我々の石油はどうなるか」しか関心がないのです。朝鮮戦争のときと同じなのです。米国はベトナムでは枯葉剤を使い、大量のベトナム人を殺し、多世代にわたる被害をもたらしました。ベトナム戦争からも日本は金儲けしました。 

 米国は731部隊の系譜をひきついで、国際法に反する非人道的兵器を使い続けています。イラン・イラク戦争では米国はイラクを支援し、イラクは西ドイツなどの技術や設備に支えられ化学兵器をイランで使い、100万に及ぶといわれる人々が影響を受け、いまも何万も後遺症に苦しむ人たちがいます。

米国は非人道兵器を現在に引き継ぐ

 ウクライナ戦争においても、米国はウクライナ中に40か所ものバイオラブ、生物兵器研究施設を張り巡らせ危険な細菌の研究をしていました。生物研究所の存在は、22年2月のロシアの特別軍事作戦開始直後、同年3月8日の米国の上院公聴会で、ビクトリア・ヌーランド国務省政治担当国務次官もしぶしぶと認めていました。3月12日には、ロシアの国連大使が国連安全保障理事会で詳細な報告をしました。

 西側諸国からことごとく偽情報だと言われました。日本ではよく知られる国連事務次長・軍縮担当上級代表の中満泉氏も「国連は把握していない」と言いました。このように国連が西側の味方につくことはよくあることです。西側メディアもフェイクだ、ロシアの誤情報だと一蹴し、ご丁寧に「ファクトチェック」と称する記事まで出していました。 

 6月12日、月末に辞任を控えていたトゥルシ・ギャバード国家情報長官は、米国は30か国120か所の生物研究所に資金を出していると発表しました。長官は「
ギャバード長官の6月12日投稿
これらの米国政府の資金提供を受けた生物研究所の多くでは、現在または過去に、危険で感染力の極めて強い病原体を用いた研究が行われており、その中には危険な機能獲得研究(
Gain-of-Function Research)が含まれる場合もあった。しかし、それらの研究の実態はほとんど明らかにされず、十分な監視や検証も行われていなかった。」と言いました。 

 公開された文書によると、ウクライナには40以上の研究所があり、以下の細菌の研究をしていたところがあったようです。 

炭疽菌(Anthrax) 野兎病(Tularemia) 結核(Tuberculosis) 豚熱(Swine Fever) ニューカッスル病(Newcastle Disease) 中東呼吸器症候群(MERS) 重症急性呼吸器症候群(SARS) マールブルグ病(Marburg) エボラ出血熱(Ebola) ラッサ熱(Lassa) ペスト(The Plague) リケッチア症(Rickettsia) など(etc.)                      

 ロシア側は入念に調べて告発しているのに、西側が嘘だ嘘だと叫んでいる構図が朝鮮戦争における細菌戦と同じです。 

 RTは2023年にBiological Warfare Department「生物兵器部門」 というドキュメンタリーを出しました。内容は深刻です。ロシアの特別軍事作戦開始後、ウクライナが撤退した後の生物研究所を調べたところ、ウクライナ人を実験台にしてウィルスの実験をしていたことを示唆する書類が出てきました。米国人ジャーナリストのジェフリー・シルバーマンが、人々がどんどん謎の死をとげていたジョージア国内の米国の生物研究所について告発したら大変な中傷キャンペーンにさらされ暴力も受け、社会から抹殺されたといいます。2010年代、ウクライナ各地でアフリカ豚熱、コレラ、ボツリヌス症、新型肺炎などの不自然な発生や流行が報告されました。

 ウクライナの生物研究所はペンタゴンの管理下にありました。ギリアド・サイエンシズなど、米国の大きなバイオ医薬品会社やメリーランド州にあるフォート・デトリックという米国陸軍医学研究所も関与しています。このフォート・デトリックこそ、731部隊の石井四郎ら幹部を戦犯訴追しないという引き換えに731の研究データを統合・活用した場所です。ナチスドイツで人体実験にかかわった研究者もここで再活用されています。

 731部隊のマルタとされた人の中にはロシア人がいました。歴史が一周して、いままた、スラブ人が実験台にされているのです。

ウクライナ戦争 ロシアの弱体化のため

 ウクライナ戦争は、22年2月のロシア特別軍事作戦開始から数えたら4年半続いています。2014年のマイダン・クーデターでは市民のデモに米国がネオナチを投入して暴徒化させ、政権転覆させ、以来米国が事実上ウクライナを傀儡国化しました。そこから数えたら12年半です。

 ウクライナの傀儡政府は西側の支援を受け、東部ドンバスのロシア系住民、ロシア語話者、ロシア正教会を弾圧しました。14年と15年の「ミンスク合意」も、ドイツのメルケル元首相やフランスのオランド元大統領など西側の当事者たちが証言したように、これはウクライナが再武装するための時間稼ぎだった、最初から守る気などなかったことがわかっています。

 ソ連崩壊後米国と西側諸国は一貫してロシアを協力相手ではなく、弱体化して解体する対象とみなしてきました。冷戦終結時の約束に反してNATOはロシアの目と鼻の先まで拡大しました。2019年、RAND研究所が発表した「Extending Russia」という報告書にあるように、ロシアに経済的、政治的、軍事的に負担を負わせ、疲弊させるように仕向けているのです。

 現在、ウクライナによるロシア本土への長距離ドローン攻撃が激化しています。石油精製所、石油備蓄基地、ガス、発電施設などの大規模攻撃に加え、ロシアの民間人に対するテロ攻撃が頻発しています。西側メディアにはほとんど報道されません。毎日のようにウクライナからドローン攻撃があり、6か月の赤ちゃんが殺されたり、ベラルーシから観光で来たスポーツチームのバスに攻撃があり保護者の一人が殺されたりしています。2024年の8月から25年の5月まで行われたクルスクの闘いでは、現地の子どもたちやお年寄りが残虐な方法で殺されたり女性がレイプされたりした戦争犯罪が報告されています。 

 これらも西側のメディアはフェイクと片付けます。米国および西側はウクライナを支配してロシア攻撃のプロキシー(代理人)として使うために、過激なナチス思想を持つ指導者や部隊を支援してきました。このような人間たちがロシア系の民間人に対し拉致、拘束、拷問、虐殺、性暴力をやってきていることは記録されています。 

ウクライナ ナチスの歴史を洗浄

 つい先日、5月25日、ウクライナのゼレンスキー体制は、ルクセンブルクに埋葬されていたアンドリー・メルニクをキエフの国立軍人墓地に「再埋葬」する国家式典を行いました。メルニクは、第二次世界大戦中、ナチス・ドイツと協力関係にありホロコーストに加担したウクライナ民族主義者組織(OUN)のメルニク派(OUN-M)の指導者でした。 

 翌26日、ゼレンスキー氏は、ウクライナ特殊作戦部隊のひとつに、「UPAの英雄たち」という名誉称号を授与しました。UPAはウクライナ民族主義者組織のステパン・バンデラ派(OUN-B)の武装組織、「ウクライナ蜂起軍」で、1943-45年の「ヴォルィーニと東ガリシア大虐殺」で6万から10万に及ぶポーランド人を虐殺したと言われています。一連の出来事はゼレンスキー体制がナチスを肯定する歴史の書き換えを着々と進めている動きです。

 これは別に新しい動きでもありません。私の住むカナダでも23年9月、ゼレンスキー大統領がカナダ下院に招待されたとき、来賓として来ていた、98歳の退役軍人、ヤロスラフ・フンカ氏に下院議員が総立ちでスタンディングオベーションをしました。フンカ氏は、ナチスドイツの武装親衛隊(Waffen SS)第14ガリツィア師団の一員だったのです。これは世界中のメディアに流れカナダは大恥をかきました。しかしこれは私から見たら、ロシアの特別軍事作戦開始後、欧米における、ロシアを敵視するあまりナチスを肯定するような歴史修正の動きが加速している現象の一つに過ぎなかったと思います。 

目を背ける西側 参戦した日本


 ウクライナのロシア民間人の攻撃に、西側は目をつぶっています。5月22日、ルガンスクのスタロビリスクの教員養成学校の学生寮がドローン攻撃を受け、21人が死亡、40人以上が負傷しました。まだ20歳にもならないようなあどけない学生たちです。
この事件はロシア全土に強い怒りを噴出させました。 

 ロシア当局は、外国報道機関の記者による現地報道を可能にするため安全を確保して大型バスを手配しました。BBCとCNNは取材拒否しました。5月27日、ロシアのザハロア外務省報道官は、「日本の記者は全員行かなかった」と強い批判をしました。これが東京からのお達しなのか、忖度なのか知りませんが、全員拒否というのは、組織的としか思えません。日本記者たちはロシア外務省の定例記者会見にさえ来ないようです。報道ビザを出してもらっておいて毎日何をやっているのでしょうか? 

NSATU副司令官のウルフ・ホイスラー少将が、日本人幕僚に対して訓示を行う
 この二日後の29日、小泉防衛大臣は、「NATO対ウクライナ安全保障支援・訓練組織(NSATU)」本部への4名の自衛官派遣を公表しました。小泉氏は「ウクライナの「最新の戦い方」などを学び、日本の新しい守り方を構築する上で、4名の自衛官が担う役割は非常に重要です。よろしくお願いします!」と言っています。NSATUは、ドイツにあります。ウクライナへの軍事装備品の提供や修理、同国軍兵士の訓練を調整するために設立された北大西洋条約機構(NATO)の主要な司令部組織です。 

 自衛官派遣は、25日に出国報告があり、29日に発表しています。22日にスタロビリスクの若者21人が惨殺されたことと、現地取材が抑圧されたことはこの、日本のウクライナ戦争への正式の参加ともとれる出来事と無関係ではないと思います。 

 日本のメディアも、このような虐殺事件を受けても、ウクライナのドローン技術が向上しているとか、喜んでいるような報道をしています。人間じゃないと、思います。考えてもみてください。ウクライナはルガンスクのロシア編入を認めていません。ウクライナにとっては、自国の市民を殺したのです。このことを西側メディアは一切言いません。 

 もちろんこれも、2014年からやっていることで何も新しいことではありません。ルガンスクの市民がロシア編入を選ぶのも理解できると思いませんか。7月3日にもザポリージャの市場で買い物をしていた市民に対しての攻撃があり、5人が死亡、18人が負傷しました。4-6月の3か月で422人の市民が、ウクライナのテロ攻撃により死んでいるといいいます。ここも住民投票でロシアが編入した地域ですが、ウクライナにとっては国内です。もちろんウクライナのバックには米英仏独、バルト三国ら西側諸国がいます。これはNATOによるロシア系市民へのテロ攻撃です。 

朝鮮は歴史の正しい側にいる

 ウクライナ戦争は必要もない戦争でした。挑発に挑発を重ねてこの戦争を招いたのは米国であり、英国はじめ欧州諸国はこの戦争を絶対終わらせまいとしています。歴史、言語、文化、宗教的にも近い、兄弟姉妹のような民族で、共存してきたロシアとウクライナが殺し合う結果を招いたのです。朝鮮戦争を思い出します。 

 クルスクの防衛戦に朝鮮は、ロシアとの「包括的戦略パートナーシップ条約」の下で派兵し、何百という戦死者が出たと言われています。この兵士たちの親御さんたちにとってみれば、祖国から6千キロ以上も離れた地で自分の息子は何のために死んだのかという問いの答えを今でも探しているかもしれません。

 しかし少なくとも一つ言えることは、朝鮮兵はこの戦争の正義の側で戦ったということです。進んでNATO側に協力する、恥ずかしい日本とは正反対です。そのような意味で私は朝鮮を誇りに思います。 

ロシア・デイのノズドリェフ大使挨拶
ロシア・デイの大使の言葉

 6月12日は「ロシア・デイ」でした。ソ連の崩壊直前である1990年6月12日に、ロシア最高会議が国家主権宣言を採択したことに由来します。前日の11日にロシア大使館で開催された祝賀行事に招待され参加しました。ここでの、ニコライ・スタニスラヴォヴィチ・ノズドリェフ大使の挨拶は現在の世界の状況を的確にまとめていました(太字は筆者)。

「今日、世界はこの数十年間で最大の構造的変革に直面しています。少数の特定の国家のために機能していた垂直的階層モデルから、より複雑で分散的かつ公平な多極的構造へ移行するプロセスが進行しているのです。こうした変化は、根本的かつ不可逆的なものです。」 

「ロシアは、グローバル・サウスやグローバル・イースト、私たちがグローバル・マジョリティと呼ぶ国々と共に、このプロセスの最前線に立っています。」 

「私たちは共に、新植民地主義や外圧、ダブルスタンダードに反対を唱え、平等、相互尊重、内政不干渉、国際法規範の遵守に基づく新たな国際関係のモデルを推進しています。」 

大使はこう踏み込みました。 

「他の国々を支配することに慣れた『黄金の十億人』は、もはや取り戻すことのできない、失われつつある覇権を、あらゆる手段を尽くして維持しようとしています。」 

「彼らは『ルールに基づく世界秩序』や『自由で開かれた世界秩序』といった建前の下に、自らの世界観を他の国々にも押し付けようとしています。」 

「西側のエリートたちはこうした政策への反発に直面すると、紛争を挑発して、ヨーロッパ、中東、アジア太平洋地域の国々をこうした紛争に次々と新たに引きずり込もうとするのです。」 

もう何も付け加えることはありません。私は大使のようにお上品ではないのですが、ノズドリェフ大使の言葉を一言でまとめると、こういうことです。「いま米国をはじめとする西側帝国は、失いつつある世界覇権にしがみつき、多極化を阻止し、覇権を維持するために世界中で逆ギレ戦争を仕掛けている」。

 今年だけでも対ベネズエラ、キューバ、イランに対する政権転覆の試みや経済封鎖、侵略戦争、そして継続しているガザと南レバノンのジェノサイドは全部、米国の覇権維持のための逆ギレ戦争の流れです。 

情報のダブルスタンダード

ロシアが「何のいわれもなく」(Unprovoked)帝国的野望でウクライナを侵略したという西側の語りに4年間浸されてきた人たちは、ロシア大使の言葉など信じられるかと思う人がいるかもしれません。「プーチンのプロパガンダだ」とか、すぐ言う人たちがいます。私は2022年のロシアの特別軍事作戦開始直後に、「ロシア悪魔視に疑問」という記事を琉球新報に書いて大炎上しました。しかし私の記事を批判した人たちは記事の内容を批判しませんでした。批判は私が「スプートニク」というロシアの媒体を引用したことに集中していました。 

NHKの23年2月20日報道より
 これには理由があるでしょう。私の記事の内容は正しかったからです。内容を批判できないから私のソースを中傷するのです。私が「スプートニク」を引用した部分は、ウクライナからロシアに避難を希望している人が260万人以上いるという情報でした。私は、西側プロパガンダにいつも晒され、西側の言うことは信じるが非西側の言うことは嘘と決めつけるようなマインドセットを「西側脳」と呼んでいます。きっと私の記事を読んだ「西側脳」の人たちは、加害国だと思っているロシアに避難したいというウクライナ人などいるわけはないと思ったのでしょう。 

 しかし23年2月中旬に国連高等難民弁務官がウクライナから近隣諸国への避難民の数のデータを発表し、807万人の避難民のうち一番多いのはロシアに避難した285万人であると報告しました。3人に一人の行先はロシアということになります。それをNHKが特に疑問を持つ風でもなく報道していました。

西側脳には迎合しない

 西側脳の人たちを説得するために西側のソースを主に使って説明するというのは、多くのアナリストたちがやっていることで、私も、ウクライナ戦争について書いた記事では極力、西側の情報を使うことを試みました。しかし私は、今はそれも「迎合」だと思っています。どうして、西側の情報しか信じないと決め込んでいる人たちに妥協する必要があるのでしょうか。

 西側の人たちは、非西側の人たちを説得するために非西側のソースを使って文章を書いたりする必要などないのです。どうして片方だけが迎合を強いられるのでしょうか。この情報のダブルスタンダードに抗う必要があります。もう西側の下駄を無理してはいて歩く必要はないのです。

 中東という言葉がありました。いま、西アジアと呼ぶ人が増えています。中東は、欧州から見た、近東、中東、極東という、帝国主義的な呼び方です。私たち東アジア人はここにいるのに、西側から見て自分たちを極東と言う必要もないのです。自分たちは自分たちの立ち位置で自分たちの声を自分たちの媒体で発するのです。これこそ脱植民地化であり、自己決定権の発動です。

 どうしてグローバルサウス側の声は信じてもらえないのか。真面目に受け止めてもらえないのか。嘘だとか、独裁者のプロパガンダだと決めつけられるのか。でもそれはグローバルサウス側の問題ではなく、西側の問題です。

覚悟と自信

 少なくともロシア・デイの祝賀パーティにいた人たちは違いました。長年日露友好に務めてきた日本人も多く、私が確認できただけでも、中国大使館、朝鮮総連、イラン大使館、ベラルーシ大使館、モンゴル大使館、バングラデッシュ大使館の人たちがいました。逆に、米国、英国、フランス、ドイツ、カナダなどの西側諸国は私が見たかぎりでは不在でした。 

 見回して、ここはロシア大使が言ったように、グローバルサウス、グローバルイースト、言い換えればグローバルマジョリティの祭典なのだということがわかりました。西側諸国の一員である、それも米国の従属国である日本の一角で、グローバルサウスが結集してロシア大使の反帝国主義のメッセージに一同うなずいている。このようなシーンに感動しました。 

ペイマン・セアダット駐日イラン大使と
 なかでも現地でイラン大使に会えて会話ができたのは感動でした。私は伝えました。イランはいま、西側帝国の侵略を受けても国を守り、主権を守っている。それをとても誇りに思うと。私はカナダに拠点のある日本人だが、朝鮮や沖縄、日本の媒体に記事を書いているというと、大使はいつでも取材に来てくださいと言ってくれました。しかし「カナダはダメですよ」と言われました。イランはイスラエルを支持する西側諸国には心底失望しているのでしょう。

 ロシア大使やイラン大使の顔にみなぎっていたのは、覚悟と自信でした。会場には連帯感がただよっていました。それは、そこで会ってお話した朝鮮総連の徐忠彦副議長の高揚したお顔からも感じ取れました。副議長は、6月8-9日の、中朝会談では「朝鮮半島、という言葉さえ出てこなかった」と評価していました。私は一瞬その意味がわからなかったのですが、「朝鮮半島」問題というときだいたい核問題を意味するので、それが出てこなかったということは、朝鮮は核兵器を保有する主権国家であるという大前提に基づいて話が進んだという意味だと理解しました。

「非核」の武器化

 しかし中朝会談について日本を含む西側のメディアの関心は「核問題」に集中しました。習近平主席が「非核化」を語らなかったということで日本メディアは非難の合唱でした。日本の主要な新聞の中朝会談についての社説を一通り見ました。 

朝日新聞「中国が当面の米国への対抗や北朝鮮への影響力の確保といった短期的な利害のため、北朝鮮の核開発に目をつぶることは許されない。」

東京新聞「核の保有を黙認するな」「中国にも地域の安全保障のために大国の責任を果たすよう求め続ける必要がある。」

産経新聞「非核化置き去り許されぬ」(中国が「覇権主義や軍国主義の復活を企てる策動に反対」と表明した件について)「鏡を見てから物を言ったらどうか。」

毎日新聞「脅威を高める中国の黙認」「日本は米韓両国と連携し、大国として責任ある行動を取るよう中国に求めていくべきだ。」

読売新聞「北の核開発を不問に付すのか」「米朝の仲介を担う準備があると見せつける狙いもあったようだ。」

日経新聞「中国は北朝鮮に非核化を求め続けよ」「北朝鮮の核保有を放置するかのような姿勢は断じて受け入れられない。」

中国新聞「長く北朝鮮の後ろ盾だった中国も核は持たせない基本姿勢だった。それを後退させ、容認もしくは黙認に転換するなど決して許されまい。」

 日本のメディアは、日本に原爆を落とした、世界一の核の脅威である米国に一度でもこんな言葉遣いをしたことがあるでしょうか。朝鮮の主権を認めず、「中国の後ろ盾」がなければ存立できないかのような存在と見なし、その中国に、朝鮮の核兵器をなんとかしろと迫る。ここには、日本人が、大日本帝国の時から持っており変わらない、二国への植民地主義がまざまざと現れています。 

 朝鮮や中国のこととなると日本や米国のメディアは右から左まで全部同じです。自分たちの戦争責任や、戦争と同様残酷な制裁の責任、自分たちの核の威嚇を棚に上げて「非核」を迫るのです。本来は平和を目指す概念である「核兵器反対」「唯一の被爆国」といった概念まで武器化し、中国、朝鮮、ロシアに対して振りかざすのです。核のダブルスタンダードです。

 中朝会談についての「アル・ジャジーラ」の6月9日の分析番組では、地政学アナリストのアイナー・タンゲン氏が司会者から「中国は(朝鮮の核を)なんとかできないのか。朝鮮の貿易は8割、9割が中国相手だ。圧力をかけられるのでは」と聞かれたときこう答えました。「あなたの考え方自体が西側の植民地主義的だ。朝鮮は独立した主権国家だ。どうして中国が何とかしなければいけないのか。思いだしてもみなさい。トランプ大統領は金正恩総書記と何度もやり取りして結局失敗した。どうして米国の失敗のしり拭いを中国がしなければいけないのか。」 

 その通りと思いました。中朝はたしかに経済規模に差がありますが、二つの主権国家がリスペクトを持って相互協力関係を進展させたのです。どうして西側諸国はその当たり前の外交が理解できないのでしょう。ロシアと朝鮮のパートナーシップについてもそうです。西側諸国はNATOだのQUADだのAUKUSだの、好戦的な軍事同盟を組んで朝鮮、ロシアや中国を脅しています。どうして自己の生存のために、非西側諸国が同盟を組んではいけないのでしょうか。

帝国のツール:ダブルスタンダード、制裁

 これまで西側での命のダブルスタンダード、情報のダブルスタンダード、核のダブルスタンダードについて述べてきました。ダブルスタンダードとは何でしょうか。帝国主義のツールです。フェアじゃない、平等じゃない、西側諸国と同じことを非西側諸国がやってはいけないのです。

医学誌 Lancet 25年8月
 平和的な発展もしてはいけない。経済大国になってはいけない。独自の通貨を使ってはいけない。どんなに威嚇されても、強い軍隊を持ってはいけない。自国を破壊されないための核も持ってはいけない。同盟国を持ってはいけない。抵抗してもいけない。自国の資源を自分で管理してはいけない。いけない、いけないづくしです。西側帝国の言うことを聞き、自国の主権と資源を差し出す、「奴隷化」を求められるのです。

 中国、ロシア、イランは奴隷化を拒否しました。朝鮮も奴隷化を拒否しています。拒否すると激しい制裁を加えられます。制裁は戦争と同じくらい人を殺すとの調査結果が昨年英国の医学誌から出ました。制裁で毎年50万人以上が死んでいます。人の命の糧を奪うからです。災害にあうとライフラインといいますね。水、食料、電気、ガス、医療。これらを災害でもないのに奪うのが制裁です。当然弱い者、つまり子ども、老人、女性、病人、障がい者から殺されていきます。 

 6月24日、ベネズエラで壊滅的な地震がありました。天災ですが人災でもあります。ベネズエラ系ジャーナリスト、アニャ・パランピル氏が言っていました。人を救うための重機が制裁のせいで、圧倒的に足りないのです。そのためにどれぐらいの救えた命が奪われていったか。米国とその同盟国は40か国、地球の人口の3分の1に違法な一方的な制裁を加えてきました。日本も加担しています。制裁がどんなに非人道的か、西側諸国の人たちは知らんぷりです。死ぬのはグローバルサウスの人々で自分たちではないからいいのでしょうか?

sanctionskill のサイトより。黄色で塗ってある国々が、米国と追随する西側諸国から違法な制裁を課されている国々。

国内制裁?

 沖縄は日本国の中で制裁されてきました。19世紀末、琉球王国が武力で強制併合され、皇民化教育、つまり奴隷化教育が徹底され、アジア太平洋戦争においては皇国を守るために「捨て石」の戦場にされ、12万以上といわれる沖縄人が殺されました。

 その後27年間米軍の軍政下におかれ、日本に戻された後も米軍基地とそれにともなう事件、事故、環境汚染を押し付け、いままた中国と朝鮮の「脅威」の名のもとに島々を自衛隊、つまり日本の軍隊と米国軍の基地および訓練場にしています。これが植民地主義です。

 国内制裁といえば、朝鮮学校の高校無償化、自治体補助金、幼保無償化排除もそうです。どれも、本来は、保護者の経済社会ステータスに依らずに子どもたち教育の機会を平等に提供するための政策であったにもかかわらず、結果として在日朝鮮人が民族教育の機会を制限されています。

7月4日に朝鮮大学校で開催された「朝鮮学校の法的地位をあらためて考える」というシンポジウムで朝鮮大学校の金陽順助教は、「ある集団を、その文化的属性を廃絶することによって破壊することを狙った行為」である「文化的ジェノサイド」であると言っています。実際にジェノサイドが多く起こった植民地支配の時代から、解放後も続いている植民地主義の流れの中で見ると、「ジェノサイド」と言い切っていいと私は思います。

最終目的は中国

 「台湾有事」など嘘です。米国は2021年以来、中国の中央政府が台湾に武力行使をするのではないかという噂を流し続け、「中国脅威論」を修復不可能なまでに定着させました。今年3月になって、「年次脅威評価書」という文書で「中国指導部が現時点で2027年に台湾侵攻を実行する計画を立てているわけではなく、また統一達成のための固定されたタイムラインも持っていない」と評価しました。5年間、自分たちが流した流言飛語のせいでどれだけの軍拡が進んだと思っているのでしょうか。

 私の見方では、これは米国の戦略に沿っています。昨年11月の国家安全保障戦略では、南北アメリカは米国の影響圏として重視する一方、東アジアや欧州では「負担共有(burden sharing)」や「負担移転(burden shifting)」の考え方を打ち出し、同盟国により大きな軍事的役割を担わせようとしています。これはプロキシー(代理勢力)を活用する戦略と映ります。すなわち、対ロシアでは欧州諸国が中心的な役割を担い、西アジアではイランへの対応をイスラエルが担い、対中国では日本、韓国、フィリピン、オーストラリアなどのプロキシー国を前面に立たせるという構図です。高市首相は昨年11月、中国のレッドラインである台湾に自衛隊を派兵する可能性を匂わせ、中国の激しい批判にもかかわらず強硬姿勢を変えていません。これも米国のプロキシーとしての役割を忠実に担っているのです。

ブライアン・バーレティック氏の投稿より

 国際政治軍事アナリストのブライアン・バーレティック氏は、一連の米国の戦争は多極化そのものへの戦争であり、最終目的は中国であると言っています。ジャーナリストのペペ・エスコバール氏は、米国は、BRICSや上海協力機構による「ユーラシア経済統合」を阻もうとしていると、表現しています。イラン戦争はたんなる地域戦争ではなく、これは中国のエネルギー輸入経路を絶つという目的があるとの分析です。

 米国のベネズエラ攻撃ですでにベネズエラから中国への石油の輸出は昨年までに比べ4分の1になっています。OPECによると、イラン戦争で、イランから、またペルシャ湾岸諸国からのエネルギー生産20%ほどダウンしています。これは回復に1年ほどかかると言われています。原油輸入の半分を西アジアに頼っている中国には多大な影響があります。

 もちろん日本もです。日本は原油の輸入先の90-95%を西アジアに頼っていましたが、イラン戦争開始後、戦争で減った分を備蓄と、米国からの輸入を増やすことで補いました。米国から原油を持ってくるのは非常にコストがかかります。これを見て思い出したのが、22年9月にノルドストリームパイプラインが爆破され、ロシアからの安価なガスに頼っていた欧州経済は米国から高いLNGを買わざるを得なくなり経済全体が打撃を受けたことです。

 バーレティック氏は、いま同じことを米国はアジアに対してやろうとしていると言っています。ホルムズ海峡の次は、東アジアにとっての物流・エネルギー供給のチョークポイントであるマラッカ海峡だと。今年2月、米国はインドネシアに包括的な上空通過許可を求めました。

インドネシアは、南シナ海をめぐる紛争にインドネシアが巻き込まれる恐れがあることと、中立外交に影響することから慎重な姿勢を見せています。

 外国がその国の領空を無制限に利用させろなどと、米国はここでも主権侵害的な圧力をかけています。インドネシアは25年初頭にBRICSの正式メンバーとなりました。人口が3億に達そうとしている世界最大のイスラム教国がBRICSに入ったことは西側にとっては衝撃だったでしょう。米国がマラッカ海峡への食指を伸ばすためにインドネシアに圧力をかけている可能性はあるのではないかと思います。

日本は、覇権にしがみつく米国にしがみつくのをやめよ

 中国はこのような米国のエネルギー封鎖のリスクを想定し、長年にわたって備えを進めてきました。その代表例が、再生可能エネルギーへの巨額の投資であり、海上輸送への依存を減らすことも意識した一帯一路構想です。習近平主席は、訪中したトランプ大統領に、「トゥキディデスの罠」に陥ってはならないと語りました。しかしきょうここまで述べてきたように、既存の覇権国である米国および西側諸国による新興国・多極化勢力への世界規模の戦争はすでに進行中ではないかと思っています。これが世界の破滅をもたらさないようにしなければいけないのです。帝国をストップしなければいけない。日本は、覇権にしがみつく米国にしがみついたままでいいのでしょうか。脱亜入欧をやめて、名誉白人国家という不名誉な立場を捨てて、アジアに戻りませんか。

 そのためには、きょうこの話の出発点に戻りますが、日本は帝国時代の戦争責任、植民地責任、朝鮮戦争に対する責任、沖縄に対する責任に向き合わないといけません。日米安保条約、地位協定を見直して日米平和条約に書き換えることは可能なのです。朝鮮とはまだ植民地支配の清算さえできていません。ロシアともまだ第二次大戦の平和条約締結さえできていません。これらはすべて米国による支配と分断が背景にある「未解決の問題」です。米国との距離を取り、自主的に隣国と向き合うことによっておのずと解決への道が開けていきます。朝鮮戦争の終結を阻止するのではなく促進する力になれます。そのためには西側脳の脱洗脳が必要です。きょうのような催しや、私の話がその一端を担うことを願っています。(終)


★講演はこの集会の一環でした。沖縄国際大学の前泊博盛さんと一緒でした。

 


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