For English and Chinese speakers, please see a report by Arc Han here.
8月4日(土)、5日(日)にバンクーバー九条の会とピース・フィロソフィーセンターが主催で「原爆と人間展」を開催した。その週末は、バンクーバーで1977年から続いている日系人のお祭り「パウエル祭」がオッペンハイマー公園で開かれており、その公園から徒歩5分のバンクーバー日本語学校の教室を展示会場とした。まず、「パウエル祭」開会式において、バンクーバーのサム・サリバン市長が毎年8月6日を「Hiroshima・Day」とし、戦争被害者への慰霊と核兵器廃絶、そして平和を訴える宣言文を読み上げた。これは、カナダ人退役軍人で長年核兵器廃絶運動に尽力しているDavid Laskey氏が市長に交渉して実現した。サリバン市長はその後、「原爆と人間展」にも足を運んだ。
今年の展示会は、来場者が過去を学び、現状を知り、そして未来の平和につなげるために考え、行動を起こすきっかけになるような構成とした。
【過去を学ぶ】
*戦争による被害、原爆の恐ろしさと人々の苦悩を伝えるため、原爆と人間展40枚のパネルを展示
(2006年6月にバンクーバーで開かれたワールド・ピース・フォーラムでコープいしかわから寄贈されたパネルを被団協派遣団体からバンクーバー九条の会へと手渡された。)
*戦争による加害、旧日本軍が近隣諸国に与えた苦しみに焦点をあてるため、従軍慰安婦関連の資料を展示 (カナダBC州を拠点とし、人権運動などに活発に取り組んでいる団体BC ALPHAによる資料パネルの提供)
【現状を知る】
*このような過去の悲劇や過ちを繰り返さない願いと共に憲法九条があることを伝え、その全文を大きく展示。
*しかし、この九条が存続の危機にあり、過去の歴史隠蔽
【未来を考える】
*未来の平和構築の為に我々ができる事の一つとして憲法九条を守ることが重要だというメッセージを大きく展示。
この構成を市長に説明すると、「被害と加害の両方を同時に見つめることは勇気のいることだが大切なことだね。」と答えてくれた。
バンクーバー市長やカナダ下院議員のオリビア・チャウ氏の来場を追うメディアを含めて2日間の来場者は353名に達した。また、展示会中に千羽鶴達成に挑戦し、市長に同行したバンクーバー市議会議員スザンヌ・アントン氏を含めた多くの来場者やボランティア、さらに他のパウエル祭参加団体のブースでも協力いただき、1000羽に達成することができた。鶴の折り方を知らない来場者にはボランティアが丁寧に教え、多くの子供たちも参加し、いつも鶴を折っているテーブルからは、ほがらかな笑い声や、鶴を折り終えた満足そうな顔で一杯だった。
会場内を見渡すと、原爆のパネルの前で涙を拭うご婦人、座り込んでパネルに見入るご夫婦、パネルのほうに指を差しながら子供と話す家族の姿があった。そして、来場者に声をかけた。従軍慰安婦のパネルを熱心に見ていた日本人留学生は、「戦争の悲惨さは、原爆投下や空襲などで語られているけれども、従軍慰安婦の彼女たちもあの戦争の被害者なんだ。とてもショックです。」と話した。また、日本の現状を読んでいた日本人留学生は、「こんなことが日本で起こっているなんて全然しらなかった。若い私たちにだってこんなことが知らされれば、やばいと思いますよ。」と話し、彼女自身のブログでこの原爆展のことを書くと伝えてくれた。そして、平和へのメッセージを読むカナダ人の男性は、「この憲法九条はもう日本だけのものではないよ。アフガニスタンに兵士を派遣して、命を落としているこのカナダにもほしい憲法だ。」傍にいたご婦人が付け加える、「年配者から戦争体験や平和を語り告げられることも大事だが、若者の間でそれが行われることがさらに平和構築には不可欠だと思う。」彼らのように、入場者一人一人がそれぞれの思いを胸に会場を後にしたであろう。
この同じ時期に、カナダ全土18都市でも原爆記念行事が開催されていた。「その都市でも鶴が折られていただろうか?」たくさんの来場者の願いを乗せた1000羽の折鶴を眺めながらそんなことを考えた。夏の太陽の下、千羽鶴たちが空へ舞い上がり、平和のメッセンジャーになっている様子を思い浮かべながら今年のバンクーバーでの「原爆と人間展」を終えた。
ピースジャーナリスト 菊野由美子
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