2008年3月8日
バンクーバーのラウンドハウス・コミュニティセンターにて
(ピース・フィロソフィー・センター主催)
バンクーバーの早咲きの桜がちらほら見られ始めた週末のこの日、中学校の社会科教師として35年間、全身全霊で子供達と向き合ってきた岩下美佐子さんによる、平和教育の授業についての講演会が開かれた。
会場はもともと歴史や、平和活動に興味のあった人達だけでなく、岩下さんの人柄そのものに惹きつけられたESLの先生や若い生徒をはじめ、美佐子さんと会話を交わしたことが縁で訪れた人々でいっぱいになった。
彼女の話を聞いて多くの人が感じたのはおそらく、「(自分が中学生の時に)こんな先生に出会っていれば。。。」
彼女の情熱、何事にも逃げださずにまっすぐ向き合うその生き方、誰に対してもいつも公平で相手のありのままを「それでいいんだ」と受け止めてくれるその姿勢に、誰もが不思議と安心感を覚え、自分の垣根をおろし、本来、誰の中にもある心の奥底にある愛に気づかせてくれる。
彼女の生き方そのものが、いままで送りだしてきた生徒達にどれだけの希望と勇気を与えてきたかが予想できる。
この日の講演会は、そんな彼女の通っていたESLの学校で感じた日本人と諸外国の生徒との歴史観の認識のギャップの報告から始まり、今の日本が知らず知らずのうちに向かっている戦争への大きな流れをどうやって若者に気づかせ、彼らの命を守るかを訴えるものとなった。
講演の中では実際に中学3年生に行われていた3時間の「平和特別授業」の内容の一部が紹介された。
そのプロセスは
☆日中戦争の記録、元兵士の証言を収めたビデオ鑑賞
☆戦争の悲惨さ、残酷さ、加害の事実を知る ☆普通の人間の、人間性がどのように失わされていたかを考える
☆当時の軍国主義教育について学ぶ(生まれた時から天皇のために戦争に行くことが正しい生き方であると育てられたことを知る)
☆戦争に反対した人々のビデオ鑑賞
☆戦争前には、言論、行動など個人の自由を奪う法律ができ、戦争に反対できなくなることを知る
☆私達は戦争をしない社会を作ることが一番大事と気づく
そして、後半は参加者より質疑応答の時間が設けられた。 こちらも、はくねつした雰囲気の中、一人一人の体験談やコメントが数分では足りないほど、それぞれの想いに満ちたものであった。
彼女は言う、これまでの平和教育の陥りやすい問題点は、一方的な加害者であった事実、戦争の悲惨さだけが語られ、子供達が希望を持てない終わりかたをしていまうことにあると。
人間は希望を持てないと未来を想像できなくなる。
加害は事実である。実際の加害の事実は一般的に伝えられている以上のものである。目を背けずにその事実を知ることも必要である。しかし、この暗い侵略者としての加害の歴史を知ったうえで、一筋の希望が語れるとすればそれは何か。
それは日本人の中に自らの命をかけて戦争に反対した人々がいたということ。 人として、朝鮮や中国の人々へ想いを馳せ、共に手をつなごうとした人々がいたということ。 平和を求めて彼らがどのように自由を奪われ、どのように戦い、生きて、そして誰に殺されたかということ。
加害の歴史の中で、戦争に反対した人々の話をする時、生徒達の目は輝く。そして「一人では無理だけど、もし戦争になったら私も彼のように生きたい」と。そんな彼らを決して一人にはしない、彼らをとりまくたくさんの仲間を育てていくのが私達大人の役目だと。
戦争に反対した人々がいたことが子供達の希望となり、誇りとなる時、これに感動した子供達は自分達で考えだす。
自分はどうしたいのか、何をするべきなのか。
2時間に及ぶ講演会が終わった後も、会場をすぐあとにする人は少なく、美佐子さんに一言想いを伝えたいという人々が長い列を作り、会場の中にいつまでも感動の余韻が続いていた。
"人間の生き方への感動、希望を教えることの大切さが子供を育てる"
それは平和教育に限ってのことではなく、子供を育てている母として、また自分自身に対してももいつまでも忘れずにいたい言葉だと感じた。
彼女が行ってきた平和教育は、強さではなく愛とやさしさだった。
彼女が教える"真実を教えながら希望を与える「平和教育」"を通して、人の心を動かすものは何かを教えられた気がする。
これが本当の教育(教え育むこと)だと感動した。
今の日本に、数は少なくとも、こんな先生がいるなんて、まだまだ捨てたもんじゃないな・・・。こんな希望が持てた自分がちょぴりうれしかった。
山下 由利子
Peace Philosophy Centre, based in Vancouver, Canada (est. 2007), provides a space for dialogue and facilitates learning for creating a peaceful and sustainable world. ピース・フィロソフィー・センター(カナダ・バンクーバー 2007年設立)は平和で持続可能な世界を創るための対話と学びの場を提供します。피스필로소피센터(캐나다·밴쿠버 2007년 설립)는 평화롭고 지속 가능한 세계를 만들기 위한 대화와 배움의 장소를 제공합니다. 欢迎来到和平哲学中心!我们来自加拿大温哥华,我们致力于促进对话及建立可持续发展的和平世界。欢迎您留下宝贵的评论。Follow Twitter: @PeacePhilosophy / "Like" Facebook: Peace Philosophy Centre メールEmail: peacephilosophycentre@gmail.com
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Yesterday at the event, I was running around so I didn't have a chance
ReplyDeleteto talk to her, but certainly I'm deeply impressed by her talking. It gives
me hope and encourages me to contribute my works to the future peace between
China and Japan. It is important to know the history, to remember the
history. But to remember the history is not equal as to remember hatred.
Understanding history leads to forgiveness, friendship, and everlasting
peace. It will not leads to hatred. So I think Misako sensei is doing a
great job. 本当にありがとうございました!
素晴らしい会だったと思います。
ReplyDeleteあの悲惨な過去の事実を前にしても、希望のオーラが皆から溢れ出ているかのよ
うでした。
やはり、美佐子先生の人柄でしょうか。
民族や言葉の壁などないように見えました。
美佐子先生のお話は以前から自分が思っていたこととつながる部分がとても多かったので、興味深く聞かせていただきました。
ReplyDelete特に中学校での近現代史の授業は「キーワードに線を引いておわり」ということに対しては私も以前から不満に思っていました。歴史からはほんとにたくさんのことを学ぶことができるのに、単なる言葉の暗記、テストで高得点を取ればそれでよし、というような現在の日本の歴史教育は全く意味をなしていないと思います。
また、近現代史を学んでいなければ、日本のアジアとの関係だけでなく、現在活発になっているテロリズムや、パレスチナ、アフガニスタンでの紛争を理解することも不可能です。
私の場合はたまたま歴史、特に世界史を勉強するのが好きだったのですが、目的は恥ずかしながら試験で高得点を取ることでした。幸い大学で国際政治を専攻するようになってから、歴史を学ぶことの重要性に気づき、また、美佐子先生のお話から改めてその意義深さを実感しました。
美佐子先生のような歴史の先生が増えることを望むのと同時に、自分自身も歴史について語ることができる大人になりたいと思います。
乗松聡子さん 先日のイベントではお世話になりました。個人的な感想といたしましては、トピックに関してもともとわずかながら知識がありましたので、プレゼン内容よりも岩下美佐子さんその人に魅力を感じました。同じ時期に日本に帰られるので、一度お食事にいけたらと思います。 また僕は、今週末にはバンクーバーを出るのですが、日本とこれだけ離れたこの場所で聡子さんを初め、こういった活動をされている方が多くいることに心を打たれしました。日本に帰っても、自分なりに出来ることを考え,行動していきたいと思います。 ほんの一ヶ月しかここにいることができなかったのですが、九条の会や先日のイベントに参加することで、特別な出会いや体験をすることが出来て本当に”PRICELESS”な留学生活をおくることができました。また、留学の目的のひとつであった日本を客観的に見る視点を養うということも少し学べたと思います。本当に感謝しています。ありがとうございます。
ReplyDeleteI felt that it was an
ReplyDeleteexcellent presentation---perhaps a bit long for "Canadian attention span".
The response from the Chinese man where he phrased his question around the
comparison of the Japanese/US military relationship with that of the
German/US relationship brought about the type of dialogue that is so
desparately needed in the the world today. Misako's response came across
very clearly to me that solutions to problems that divide the peace movement
can be found when people or countries establish a mutual friendship and
genuine desire for peace.Thanks for inviting me.