3月は全くブログ更新ができませんでした。いま、自分と家族の健康と安全を守る努力だけで一日があっという間に過ぎていきます。ここカナダ西端のブリティッシュ・コロンビア(BC)州でも新型コロナウィルス感染の拡大で、3月17日に州の衛生管理局長ボニー・ヘンリー氏が Public Health Emergency (公衆衛生緊急事態)宣言を出し、翌18日には州政府が「緊急事態宣言」を出しました。学校も高等教育機関も休校・オンライン化、市民生活や感染対策に不可欠な事業体以外は休業を強いられ、自治体により差はあるものの、市民は食料品や医薬品調達、最低限の運動など不可欠な用事以外は家にいることを命じられています。飲食店もテイクアウトかドライブスルーのみ。家族以外の人とは2メートル以上の距離を取ることを求められています。これらの宣言以来2週間経ちますが、感染者は増え続けており、とくに高齢者施設の感染が深刻な状況になっています(4月1日の時点で州内で21か所)。州は、感染拡大が北イタリアレベル、武漢レベル、韓国レベルという異なるシナリオを念頭に置いてシミュレーションを行い、医療体制を確保しようとしています。BC州は3月27日の時点では、「スペインやイタリアよりは韓国のカーブに近いようだ」という見解を出していますが、対策の効果がどれぐらいかはその後1-2週間経たないと見通しは立たないということでした。
前置きが長くなってしまいましたが、カナダ・米国・日本などにいる仲間たちとメーリングリストで情報交換をしている中で、カリフォルニア州のサンフランシスコ郊外、カリフォルニア大学バークリー校(UC Berkeley)で社会学の研究をしている大槻とも恵さんが、日本の人たちへということで昨日(3月31日)書いたメッセージが大変心に迫りくるものがあり、許可をもらってここに転載させてもらいました。(ブログ運営人 乗松聡子)
★★★
皆さま
コロナ(COVID-19) の死亡者数・感染者数の数や推移に関しては、 Financial
TimesとThe New York Timesのデータをお薦めします。
https://www.ft.com/coronavirus-latest (*こちらは、3月31日から内容が変わりました。なのでタイトルをしっかり読んでから数字を読むようにしてください。)
コロナの影響を多大に受けている主要国の患者数・死亡者数が、どのような勢いで増えていっているのかが分かります。
昨夜、とても親しい友人のパートナーがコロナ感染を確認されました。サンフランシスコ近郊です。
高齢では決してありませんが、心臓に大きな疾患がある方です。
私が驚いたのは、そんな疾患・持病を持っているにも関わらず、入院を拒否され自宅で隔離されていることです。
友人の主治医である医者が、アメリカで使用されているコロナ検査の正確性は80%でしかなく、ゆえに「陰性」であっても、症状が出ていた場合は隔離すべきと話していたそうです。
この報告を受ける数時間前に、やはり友人から電話があり、彼女がかつてお世話になったホストファミリーの70代の父親が、高熱が続き、激しい咳も出て、味覚が完全に失われたと訴えても、コロナのテストを拒否されたという話を聞いたばかりでした。この方も持病を持っています。これもサンフランシスコ近郊の話です。
あくまでもカリフォルニア州の話ですが、正式に発表されている感染者の数よりも、遥かに多い人たちが実際には感染されているのではと思います。
このメーリング・リストには、日本に住まれている方達も多くいらっしゃるかと思います。日本にいる皆さんに、3・11の過ちと悲劇を想起しながら現在の状況をご自分で考え、どのような行動が自分やご家族、周りの人たちを守れるのか考えて欲しいと思い、以下に続く文を書こうと思います。
私が住むカリフォルニア州は、3月16日に外出禁止令が出ました。そのため、子どもの学校も閉鎖し、自宅勤務を強いられ、最初はイライラしていました。でも今は、もっと早くに外出禁止令が出されていれば良かったと思っています。そう思わずにはいられない事が、セミ・ロックダウンから二週間経った今、周りで起き始めているからです。
私の職場もそうですが、二週間前までは、どこの職場も英語でYou are encouraged to
work from home (ブログ運営者注釈:「自宅勤務を勧めます」)というメッセージを受け取っていました。私は英語がネイティブではないため、このメッセージに多少混乱していました。なので自分なりに解釈して、一応気をつけながらも、バスで通勤していました。今考えると、日本語の「自粛」のようなものですね。
同じ頃、サンフランシスコに拠点を置くあるIT系の企業で、コロナ感染者と濃厚接触があった職員がいたことが判明しました。会社のトップはYou are encouraged to
work from homeというメッセージを最初は送ったのですが、中間管理職にいた人物が、そのような文言では職員を守れないと発言し、会社からの「命令」という形で自宅勤務をさせなくてはいけないと進言したそうです。この会社は、加州が外出禁止令を出す一週間早くに職員を自宅勤務に強制移行させました。
もちろん、IT企業だからこそ出来たことです。しかし、医療崩壊が免れないアメリカの現状を考えると、重要な社会貢献になります。強いリーダー・シップと、リスク管理能力が高く勇気ある人材の存在が、いかに大切かということを再認識させられるエピソードです。
この話を聞いて、昨年の夏に訪れた宮城県石巻市大川小学校の津波の跡地の風景を思い出しました。
覚えていらっしゃる方も多いかと思いますが、石巻市大川小学校は、3・11の津波で児童と教職員84人が亡くなっています。津波警報がさんざん出ていたにも関わらず、40分以上も子ども達は校庭に留まることを強いられ、ようやく高台を目指して動き始めた3分後に津波に飲み込まれてしまいました。
第三者による検証委員会でも、その後行われた裁判でも、なぜ40分以上も子ども達が、あの校庭に留まることを強いられたのかという理由は、はっきりと解明されませんでした。
子ども達の中には、泣いたり、学校の裏山に走ろうとした子もいました。若い先生たちは、とにかく怯える子供を落ち着かせることに集中し、高台へ逃げた子供たちは列を乱したということで、男性教諭に大声で呼び戻され叱られています。
津波が今そこまで迫っており、津波警報が何度も発せられていた状態でも、落ち着きと秩序、そして同調が優先されました。
遺族の方のお話を聞いたり、裁判の記録や、第三者委員会による報告書、地道に取材を重ねてきたジャーナリスト達が書いた本を読んで決定的だと思うことがひとつあります。それはリーダーシップの欠如です。あの日、雪の降る寒い校庭で、目の前で恐怖と寒さに震えている幼い子どもたちの命を守るという、何よりも優先されなくてはいけない責任を、教員の誰もが放棄していたことです。
生存した子どもの一人が、亡くなってしまった若い女性教員に「先生、なんで裏山に逃げないの?」と訊いた時、その教員は途方に暮れた様子で、「なんでだろう・・・分からない。」と答えたそうです。
生存者の中には、上級生たちが男性教諭と激しく言い合いになっているのも目撃しています。子ども達が、教員たちに裏山へ逃げるよう訴えていたのです。このまま校庭に残っていては、みんな死んでしまうと訴えていたそうです。
今の日本を見ていると、みんなあの日の大川小学校の校庭に取り残されているように感じてしまいます。あの日、「裏山へ逃げろ!」という決断を下すリーダーが不在のまま、津波がそばまで迫っているにも関わらず、「まだ大丈夫。」「泣かずに落ち着こうね。」「もう少し様子を見ましょう。」「ここまで津波来ますかね?」と言い続けた無責任で気の弱い教員たちと、現在の政治のリーダー達が重なって仕方がないのです。
先日アメリカのメディアで、満員電車に乗って仕事に向かう日本の人々の様子が映し出されました。不安を抱えながらも、無言で満員電車に乗り込む人々の背景に、私は雪の降る「あの日」の大川小学校の校庭の情景が重なりました。
それは韓国のセウォル号の悲劇とも重なるかもしれません。
日本に住んでいなくとも、家族や大事な人が日本に居る方も沢山いるかと思います。なので、どうかご自分でこの危機を逃げ切ることを優先するよう伝えて下さい。
もしあなたが発言力のある立場にいるのであれば、曖昧な言葉ではなく、明確で、他の解釈の余地のない言葉で、部下が自分たちと家族を守れるような行動を促してあげてください。
持病がある方は、周りに神経質になる過ぎてると思われるほどに、お身体に気をつけて下さい。
長くなって申し訳ございません。
どうか皆さんお気をつけて。
とも恵
★★★
大槻とも恵さんと同感です。
参考資料として以下の英語資料のリンクを置いておきます(訳している時間がなくてすみません。)
カナダ公衆衛生当局 Public Healthy Agency of Canada
COVID-19に罹った人を自宅でどうケアするかのガイド
同じ内容のパンフレットの画像を下方に置いておきました。
ブリティッシュコロンビア州(人口約500万人、そのうち約半数はバンクーバーと近郊に集中)では4月1日現在、感染確認できたのは通算1066人(直近の1日で53人)。死者はこれまでに25人。総数のうち606人が回復。現在治療中は435人。そのうち142人が入院中(67人が集中治療室)。他の人たちは隔離しながら回復の途上。
このようにBC州の場合、今治療中のケースで入院しているのは約3人に1人です。日本の報道を見るかぎりでは、まだ、この病気に罹ったら即入院!といった感覚があるように見受けられますが、軽症の人まで全員入院させる余裕など多くの国や地域ではありませんし日本もそうでしょう。これからどんどん感染者は増えます。多くの人が軽症で終わるということからも、今後私たちが想定しなければいけないのは、自分や身の回りの人が罹った場合、入院という可能性よりも、罹った人を自宅で隔離しケアする(単身の場合は自分でケアする)という可能性のほうが高いということです。どうやって同居する家族に移らないよう予防しながら罹った人を看病していくか、備えが必要だと思います。逆に自宅に感染者がいるぐらいの気を付け方を日ごろからしておけば、より感染防止にもなるかと思います。(ブログ運営人 乗松聡子)
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