Surrey に住む女性を中心に、平和・環境・教育について情報交換し学び合う会を2月10日に開きました。
今回は日本の現役の中学校の先生が参加し、体験を話してくれました。勤務先の学校の卒業式では、毎年卒業生が後輩と保護者に向ってお別れの言葉を伝えるという行事が行われていましたが、ある年のリハーサルに校長が来て、「日の丸に背を向けるとは何事か」と問題視しました。これは後輩と保護者の方を向いているというだけで日の丸に背を向けているという意味ではないのだと教師たちが何時間もかけて説得し、やっと行事を行うことができたというこ
今回自分が配布した資料に、コピソン珠子さん(元サイモンフレイザー大学日本プログラムディレクター)が昭和17年3月に東京女子高等師範学校(現お茶の水女子大学)付属幼稚園を卒園した際の卒園アルバムから、「日本の幼児教育の父」とも称された倉橋惣三園長からのメッセージをコピーしたものがあります。「大きくなってから思ひ出してもらうために」というこの文は、太平洋戦争開戦直後、昭和17年3月に卒園した珠子さんたちに向けて書かれたものです。開戦の昭和16年12月8日のことに触れ「先生方は、この日の意義を、あなた方にどうして正しく伝えようか苦心しました。」という表現があります。
珠子さんによると、平和主義だった倉橋氏の元には憲兵が毎週来て引き出しを調べていったとのことです。世の中が戦勝気分に浸っていた時期に、この戦争の意味をどう伝えようかと苦悩して、卒園する子たちの未来に託した一教育者の姿は、現代に生きる私たちが学べるものがあるのではないかと思いました。現在教育基本法が変えられ日の丸君が代崇拝に対する強制が一層強まっています。今などとは比べ物にならないほど軍国主義や思想統制が徹底していた時期にでさえ、このように教師と子供たちの直接のつながりを重視していた教育者がいたのです。
現場の先生たちの苦労は私たちには計り知れないものがあると思いますが、心から支援していきたいと思います。
この会でもう一つ配ったものが、戦後60周年を記念したNHKラジオ番組の加藤周一氏のインタビューを録音したテープ(鶴田文江さんが九条の会で配布してくれたもの)です。加藤氏はいろいろな本で、日本の軍国時代の過ちの背景には大勢順応主義があることを指摘し、「少数派になることを恐れてはいけない」と訴えています。このテープの中でも、私たちへのアドバイスとして、「旗行列に加わらないこと」「個人の精神の自由を保つこと」を述べています。「旗行列」というのは上記の倉橋氏の文章にもあります。シンガポールが陥落した2月15日、幼稚園の屋上では旗行列が賑やかに催されたとのことです。加藤先生の話の中の「旗行列」とは、世の中の主流のように見えるが実はおかしいこと、という意味だと思っています。皆が旗行列をしているからといって自分の頭で何も考えずに参加するのは楽かもしれないがそれがそのおかしいことの拡大につながるのです。
現代の「旗行列」とは何でしょうか。もちろんナショナリズムに傾こうとしている日本の体制側の傾向はそうですが、最近気づいたことがあります。ここで今回のイベントで観たアル・ゴアの映画「An Inconvenient Truth 不都合な真実」につながります。自分は「先進国」に生まれ育ち、浪費的なライフスタイルを当然と思い、物質的に豊かになることが「成功」であり、企業は拡大し、経済は成長し続けることがよいことだと最近まで信じて疑いませんでした。それが、地球環境や、他の人類や生物たちの生存を犠牲にしていることを本当は知りつつ目を向けようとしませんでした。そういった考え方に順じて従うことによって自分も「旗行列」に加わっていたのではないかと思ったのです。戦前が軍国主義なら、戦後は消費主義です(もちろんこの2つは補完的なものですが)。後者も前者と同じように、いやそれ以上に、行き着く先は地球の破滅です。消費主義を疑わなかった自分は、軍国主義時代に旗行列に参加していた人たちと同じでした。「旗行列」に加わっているとき、多くの場合そのこと自体に気づかないから恐ろしいのです。または本当は気づいていてもそれが「不都合」であるために気づかないふりをしているのです。
Surrey の会のイベントの報告のつもりが自分の独り言の連続になってしまいました。長くなってはいけないので、改めて次の投稿で皆さんの感想を紹介します。
この会を企画していただいたロバーツ世以子さん、山本真理子さん、原京子さん、会場を提供していただいた山本真理子さん、ありがとうございました。
乗松聡子
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