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Wednesday, June 04, 2008

Film Yasukuni 靖国神社と映画「靖国」

Yumiko Kikuno's report on her visit to Yasukuni Shrine and Documentary Film "Yasukuni "

Peace Journalist 菊野由美子


ドキュメンタリー映画上映会や講演会に参加するとき、私はノートにメモするべく必死にペンを走らせている。しかし、映画「靖国」の上映中はほとんどペンが動かなかった。「この人が言っていることはもっともだ。」「あれ、反対意見にも一理ある。」「このパフォーマンスは何のため?」と次から次へと靖国神社を取り巻く「なぜ?」に揺さぶられていたからだ。映画パンフレットに記載されている李纓監督の言葉、「その問いかけにはそれぞれの観客の心の中の<靖国>を通じて考えてもらいたい。」の思惑に簡単に乗せられてしまっていた。


   映画「靖国」を観る前に、私は初めて靖国神社を訪ねた。神社の入り口で最初に感じたことは、「木々たちがきれい!」という印象だった。約800本の桜の木々が、花の時期を終えて見事な葉桜で参拝者を迎えていた。参道は穏やかだった。しかし拝殿のほうへ進むにつれて、私の地元の神社では見たことがない光景を目にし始めた。まず、右翼の街宣車とパトカーが停まっていた。そして黒のスーツに身を固めた人達の参拝者を多く見かけ、鳥居をくぐるときに必ず礼をしていたなどである。そして歩き進めると、平日にもかかわらず、拝殿横の参集殿という建物の入り口では団体の参拝者でごったがえしていた。


その建物を過ぎると「遊就館」が見えてきた。ここは戦死者の遺書や遺品、使われていた武器や軍服などが展示されており、靖国神社は過去の戦争をどう捉えているかを知ることができる資料館になっている。そこでまず、「私たちは忘れない。」という50分のドキュメンタリー映画を観た。日清日露戦争から第2次世界大戦までの経緯を綴っている。バックミュージックにXジャパンの曲を流すなど、若者に日本の過去の戦争史は誇りと栄光であることを伝えたいように感じた。その後、2時間45分の長編映画「南京の真実」第一部「7人の死刑囚」を観た。南京大虐殺に対する異論を唱える作品なのだが、2時間45分のうち南京に関するデータや証言が所々に出てくるが、合わせても15分から20分ほどだった。ストーリーの核は、7人のA級戦犯が処刑されるまでの24時間が刻々と再現されていた。「南京の真実」と「A級戦犯の最後の24時間」との関係が分からなかったのだが、「この誇り高い将校たちが虐殺などを命じるなどありえない。」と訴えたかったのだろう。この遊就館に団体客が入って来た。あまりにも多いので訪ねてみると、愛知県豊田市の遺族の会の方々だった。バス8台で来たという。遺族の会の結束は強い。「ここは不思議なところだ。」と思いながら元来た並木道の木々を仰ぎながら神社を後にした。

そして、5月10日渋谷シネ・アミューズで映画「靖国」を観た。この映画館の前にも警官が配置されていた。映画「靖国」は、中国人監督 李纓氏が10年の歳月をかけて靖国神社とそこに関わる人々を追ったドキュメンタリーである。靖国神社のご神体として、昭和8年から終戦までの12年間、靖国刀が作られており、昭和29年に製造が復活され、今も現役最後の刀匠・刈谷直治さんによって作り続けられている。彼の存在はこの映画に欠かせない。刈谷さんは、ただ職人としてはずかしくない刀を黙々と作り続けているのだ。監督の質問にも長い沈黙の後、ボソッと答える。この“沈黙”にこそメッセージがあるようだ。

そして毎年8月15日の靖国神社の様子が映し出される。旧日本軍の軍服を着た人々の行進と掛け声に参拝者は道を譲る。その軍服姿の一人が言う。「日本のために戦った人を侵略者呼ばわりするのはこの日本だけだ!」そして兄弟3人が兵隊として戦死したという女性は、小泉首相の靖国参拝を「行ったっていいと思う。」と言う。また、「小泉首相を支持する。」と星条旗を掲げたアメリカ人もいて、結局参拝者に「この場所で星条旗など掲げるな!」と怒鳴られ騒ぎになる一幕もある。

一方、追悼集会で「侵略戦争反対!」などと叫ぶ日本人の若者がつまみ出され、もみ合いになり顔が血だらけである。また、靖国神社への合祀取り下げを求める遺族は理路整然と訴える。
台湾国会議員の女性は、「私たちは日本人ではない。あなたが私の立場なら、同じ様に自分の家族の魂を自分の祖国につれて帰りたいと思うはず。なぜそれを聞き入れてもらえないのか?」と宮司に詰め寄る。さらに印象に残ったのは、僧侶だった父親を太平洋戦争で亡くした遺族の言葉だ。「大切な家族を戦争に駆り出され、遺族は怒りを政府に向けたいが、その政府は戦死者に勲章を与え英雄と称える。遺族は心の行き場を無くしてしまう。」

   ナレーションが一切入らない作品と聞いていたが、それが、観るものに考えさせる空間を提供することにこんなにも効果的であるとは思わなかった。また、このドキュメンタリーは反日という目的では作れない作品だと感じた。それは私も日本人である。どんなに正論をかざされても、その中に反日を感じたら嫌悪感を感じるが、映画「靖国」には感じなかった。そして映画を観終わった後、憤りや怒りというよりも切ない気持ちになった。李監督が靖国神社をめぐる様々な背景を<戦争後遺症>と表現している。うまく言い当てていると思った。靖国神社を軍服を着て行進し「天皇陛下万歳!」と叫ぶ人や遺族だけでなく、戦争を突き進む決断をした政府もこの<戦争後遺症>に苦しんでいるのかもしれない。そのすべての後遺症を癒すためにはどうしたらいいのだろう?そんな課題のボールを李監督から投げられた気がする。もう一度この映画を観て、もう一度靖国神社を訪ねたい。そうして靖国の歴史をじっと見守ってきたあの神社の木々たちに耳を傾けたい。

映画「靖国」は5月から各地で上映中。
上映場所とスケジュールは公式ホームページの劇場情報で知ることができます。http://www.yasukuni-movie.com/contents/theater.html

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