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Sunday, November 11, 2012

普天間飛行場野嵩ゲート前フェンスに、米国保安法にもとづく警告文が掲示された。US placed warning signs at Nodake Gate of MCAS Futenma, based on US law

昨年から今年にかけて、沖縄の八重山教科書問題についての重要な論文(リンクはこの投稿の末尾参照)を寄稿いただいた前田佐和子さんからの緊急投稿です。本投稿はリンク歓迎、拡散希望しますが、転載ご希望の場合は必ず事前に許可を取ってください。
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(11月14日追記。この投稿を受け、『沖縄タイムス』『琉球新報』がそれぞれ11月13日と14日、このように報道した。
米軍設置板、警告根拠に米国法明記
http://article.okinawatimes.co.jp/article/2012-11-13_41454
「米法」根拠に警告板 米軍、オスプレイ抗議対策
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-199190-storytopic-53.html
照屋寛徳議員がこの件で国会質問。
http://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php?ex=VL&deli_id=42290&media_type=wb
外務省が連絡し、米軍はこの警告板を撤去したようである。しかし、この問題をこのままにしてはいけない。)

 
アメリカが‘統治’する沖縄
 
普天間飛行場フェンスに現れた警告:
日本人がアメリカの治安法によって管理される!
 
前田佐和子


基地内へ立ち入る者は、アメリカ国内保安法に従え
 9月末、普天間飛行場ゲート前に座り込んだ人々を強制排除したあと、101日、オスプレイMV-22が沖縄に配備された。野嵩(のだけ)ゲート前フェンスにはコンクリートの隔壁が設置され、そこに3箇所、奇妙な警告文が掲示された。「制限区域につき関係者立入禁止」、「許可を得て立入る者は、身体、所持品検査に同意したものとする」と書かれていて、その根拠として「Internal Security Act of 1950, Section 21:50 U.S.C. 797 (1976)」が挙げられている。日本語では、1950年の国内保安法21条:USコード50797号と呼ぶものである。(写真1,2)
写真1 北上田毅氏撮影
 
写真2 北上田毅氏撮影
 
日米地位協定では、日本人には刑事特別法が適用されるはずである
日本国内の施設および区域をアメリカに提供することは、日米相互協力及び安全保障条約(通称は日米安全保障条約)第6条(1)に基づいて許可されており、日米地位協定(2)の規程に従って提供地(施設・地域)は運用されている。提供地に対しては米軍が排他的使用権を持っていて、「その設定、運営、警護及び管理に必要なすべての措置をとることができる」(地位協定第3条の1)。これがいわゆる米軍の管理権である。提供地にたいして米軍が持つ管理権についての政府の考え方は、琉球新報社が出版した「外務省機密文書『日米地位協定の考え方』増補版」(以下、「増補版」)で、つぎのように説明されている。施設・区域に対しては国内法令の適用が前提ではあるが、米軍に対しては、施設・区域の管理権を認め、法令の現実の執行は、米軍の管理権を侵害しないかたちで行うというものである。日本人に対しては日本の国内法が適用されることは前提になっていて、提供地内で日本人が罪を犯した場合には、日本の法令が適用され、日本により司法権が行使されることが、「増補版」で明記されている。

これまでは、日本の法律にもとづく立ち入り禁止の警告文が貼られてきた
写真3 辺野古浜 筆者撮影
それでは、これらの提供地への立ち入りは、どのように規制されているのだろうか?「増補版」によると、許可なく立ち入りが禁止されている提供地の境界は、日本語と英語でその旨記載された標識で明確にされるべきであるという日米合同委員会の合意が存在する。その合意に従って、米軍基地の外側の境界フェンスには、立ち入り禁止の警告文が貼られている。この警告文では「許可なく立ち入った者は日本国の法令によって処罰される」と書かれていて、この法令とは刑事特別法第2条(3)のことを指している。(写真3)刑事特別法とは、日米安全保障条約と日米地位協定を実施するに当たって、それに対応する国内法として、1952年に制定された法律であり、地位協定違反に問われる日本人にたいして適用されるものである。刑事特別法第2条(施設又は区域を侵す罪)では、許可なく立ち入りをする者に対して、1年以下の懲役又は2千円以下の罰金が科される。

かつて米軍が国内保安法を持ち出したとき、日本政府は誤りと認めた
1983年、今回の問題に類似する事態が生じたとき、国は米軍に注意し、ただちに撤去させたことがある。埼玉県(一部は東京都にまたがる)にある119万平米の米空軍大和田通信所は、B52戦略爆撃機へ核攻撃の発進指令を出す電波の送受信所である。この広大な提供地では、中心部の77千平米のみが立ち入り禁止となっており、フェンスで囲われている。広大な周辺部には日本人の一般市民だけが生活している。日本人のみが生活しているこのエリアのバス停や子供たちの遊んでいる場所に、突如、何箇所にも、警告文が貼り出された。この問題を衆議院の予算委員会と外務委員会で取り上げた中路雅弘議員(当時)の質問によると、警告文は、「当施設司令官の許可なくこの区域に立入ることは違法である。」、「何人も当施設に居る間は身体及び所持品の捜索を受ける場合もある」と書かれていて、その根拠となる法律は、合衆国法(U.S.C.797号が挙げられていた。(4)野嵩ゲート前のフェンスに出された警告文とほとんど同じ内容で、かつ、同じ根拠法である。 

米軍は謝罪し、ただちに警告文を撤去した
 198338日の衆議院予算委員会の質疑で、防衛施設長は警告板の「設置にあたって私どもの方に協議がございません」、「この797号は、これに違反した日本人を罰するというようなものではない」と答弁している。北米局長も、「日本人に対しては刑事特別法が適用される」と回答した。出席した安倍晋太郎外務大臣(当時)は、「私も初めて聞いたのですが、警告が出ておっても、日本人がその警告によるところのアメリカの法律によって罰せられることはあり得ない」と答弁、中曽根康弘総理大臣(当時)も外務大臣の答弁を追認した。325日に開かれた衆議院外務委員会で、ふたたびこの問題を取り上げた中路議員によると、予算委員会での質問中に、「防衛施設庁が国会から現地に電話を入れて、夜までに米軍と一緒になって全部外した」とのことである。合衆国の国内法を持ち出した警告文が違法であるということを、政府は「誤り」であったとして認めたのである。これに対して、米空軍が「心から遺憾とする」という趣旨のものが、口頭ではあるが、プレスリリースで公表されたとの答弁が北米局長からなされた。日本人に対して米国の法律で警告することの違法性は、確認されたのである。 

問題の本質は隠されたままである
 この国会質疑において、なぜ、このような違法な警告が出されたか、施設庁と米軍の事前の協議があったのではないかという中路議員の追及に対して、外務大臣は、調査して善処するということで、回答を避けた。また、米軍の謝罪を、住民たち、日本国民に直接、明らかにすることを求めたが、これも拒否されている。結局、問題の本質が隠されたままとなった。

マッカーシー旋風の根拠となった国内保安法
これらの違法な警告文に出てくるInternal Security Act of 195050 U.S.C. 797とは、どのような法律なのか? Internal Security Act of 1950はアメリカの国内保安法と呼ばれるもので1950年に制定された。(5)提案者の名前をとって、マッカラン法とも呼ばれている。この法律は、当時の共産主義者やファシストの活動を禁止することを目的とし、Mundt-Ferguson共産主義者登録法案(議会は通過せず)から重要な法案を採ったと言われている。この法案の提案に対し、当時のトルーマン大統領がこれに反対した。その理由は、言論・報道・集会の自由という、アメリカのもっとも重要な伝統を破るものだとして、制定に反対したのである。しかし、朝鮮戦争勃発という情勢を受けて、上下両院とも、共和党・民主党議員の圧倒的多数で可決された。いわゆるマッカーシー旋風の根拠法となったものである。日本でもこの法律制定の流れを受けて、1952年に破壊活動防止法が制定されたといわれ、赤狩りの嵐が吹き荒れた。 

国内保安法に対する違憲判決
 1993年、国内保安法195050 U.S.C. 798は、連邦最高裁判所で信教、言論、出版、集会など、権利章典(6)修正1条に違反するとして、憲法違反の判決が下されたため、削除された。U.S.C.797は、人民の武装権にかかわる権利章典修正第2条に抵触するが、国防長官または国防長官の指定する軍司令官などは、この章典を停止できる権限を持ち、現在も米軍内部では用いられている。これらの事実から、50 U.S.C.797は、基本的人権に抵触する治安法の性格を持っていることが分かる。
 
米軍基地はアメリカの租借地か
 101日から普天間野嵩ゲートに貼られた警告文は、アメリカの国内法で、基本的人権を侵している可能性のある治安法を根拠にして出されたのである。アメリカの一般社会には適用されず、米軍内部に対してのみ生き残っている法律(7)を根拠に、すでに29年前に大和田通信所の事例に対して、国会で違反と断定され、米軍は謝罪をしたにも拘わらず、再び使ったのである。増補版」で、米側への提供地は、「租借地とは異なる」、「租借地は、租借国(アメリカ)の領土と実質的に同じ法的性格を持ち、租貸国(日本)の施政は全面的に排除される」と説明されている。しかし、今回の警告文は、日本の法令が適用されるべきものについて、アメリカの治安法が取って代わるということであり、いわゆる租借地の扱いではないか。 

地位協定は改訂されなければならない
 度重なる米兵の県民に対する犯罪で、地位協定の運用改善ではなく、改訂を求める声は、日増しに高まっている。米軍関係者のさまざまな活動が、住民の生活にかかわる部分にまで及んでいることに、大きな問題がある。これまで、地位協定に阻まれて、日本の司法が米兵の犯罪を裁くことができない問題が、繰り返し起こっている。これに対し、直接の被害者の怒りや無念は当然のこと、日本の主権が侵されていることへの異議申し立ては、いまや沖縄の総意となり、地位協定の改訂を求める声は大きくなるばかりである。

この国の民主主義を問う
 本間浩は、地位協定について以下のように述べている(1996年)。「安保条約・地位協定に直接かつ実際に、重大な影響を受け、重い負担を負わされる住民の立場は、埋没したままである」、「原理的には確立されているといわれていた民主主義も、外交、軍事の問題に関しては実質上十分には及んでいなかったのではないか」と問題提起した。今回の警告文は、この地位協定ですら禁止している、自国文民に適用していない治安法を、他国の市民に対して強要するという、まさに、沖縄を日米の「軍事植民地」とみなしていることを露呈したものと言わざるを得ない。 

 

(1)日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第6条

 日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、アメリカ合衆国は、その陸軍、空軍及び海軍が日本国において施設及び区域を使用することを許される。

 前記の施設及び区域の使用並びに日本国における合衆国軍隊の地位は、1952228日に東京で署名された日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第3条に基づく行政協定(改正を含む。)に代わる別個の協定及び合意される他の取極により規律される。 

(2)日米地位協定

日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第6条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定 

(3)刑事特別法第2条 正当な理由がないのに、合衆国軍隊が使用する施設又は区域(協定第2条第1項の施設又は区域をいう。)であつて入ることを禁じた場所に入り、又は要求を受けてその場所から退去しない者は、1年以下の懲役又は2千円以下の罰金若しくは科料に処する。
 

(4)国会議事録 第98回国会 衆議院予算委員会(昭和58308日)、衆議院外務委員会(昭和58325日)における中路雅弘議員(共産)の質問とそれに対する内閣総理大臣、外務大臣、北米局長、防衛施設庁の答弁

なお、渡辺貢議員(共産)提出の、米軍横田、所沢、大和田基地に関する質問主意書(昭和58117日)、ならびに内閣総理大臣 中曽根康弘の答弁書(昭和58125日)にも、大和田通信所の件についての記載がある。 

(5)1950年国内保安法21条:50 U.S.C. 797

1950年国内保安法21は、国防長官、国防長官の指定する軍司令官、航空諮問委員会委員長などの定める規則や命令で、軍用機、空港、国防省など指定の機関やその職員等の管轄ないし管理下にある港湾、空港、演習施設、駅、車両、基地、爆薬等の財産または場所の保護、保全を目的とするものに故意に違反した者は、5千ドル以下の罰金または1年以下の懲役ないしその双方に処するということを定めたもの. 50 U.S.C. のタイトルは、「War and National Defense」、その797号タイトルは、「Penalty for violation of security regulations and orders」。 


(6)権利章典

 アメリカ合衆国憲法における人権保障規定のことをいう。アメリカ合衆国憲法では、最初の修正条項である修正第1条(Amendment I)から修正第10条(Amendment Xがこれにあたる。名前は1689年に制定された英国の「権利章典(Bill of Rights)」に由来する。

憲法制定直後の1789年第1回合衆国議会で提案され、179112月に実施されたものである。第1条は信教、言論、出版、集会の自由と請願権、第2条は人民の武装権に関わるもの。
 
(7)Gate Inspections -Defense Civilian Personnel Management Service

 軍事施設のゲート検査における法令や規定による権限、司法の見解などをまとめたもの。この冒頭に、50 U.S.C. 797が、ゲート検査を行うに当たっての、規定であることが明記されている。

 
引用文献 

日米地位協定の考え方・増補版 琉球新報社編 高文研 2004年

在日米軍地位協定 本間浩著 日本評論社 1996年


前田佐和子
宇宙科学研究者、元京都女子大学教授。

著作 
Transformation of Japanese Space Policy: From the “Peaceful Use of Space” to “the Basic Law on Space,” Asia-Pacific Journal: Japan Focus http://www.japanfocus.org/-Maeda-Sawako/3243

「揺れる八重山の教科書選び」Peace Philosophy Centre, 2011年9月16日。 

「八重山教科書問題の深層」Peace Philosophy Centre, 2012年5月23日。

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