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Thursday, June 26, 2014

「核なき世界」に逆行するオバマ米国と、「個別・集団的自衛権」のもとに核使用を容認した岸田外相―『広島ジャーナリスト』より

『広島ジャーナリスト』の2014年6月25日号に掲載された広島市立大平和研究所教授・田中利幸氏の記事を許可を得て転載する。

「核なき世界」を訴えただけでノーベル平和賞を受賞したオバマ大統領は現在「大量の核兵器を抱え込み、それらを少しでも長く維持するだけではなく、より強力な小型核兵器の開発にやっきになって」いる。岸田外相は今年初め「『核兵器の使用を個別的・集団的自衛権に基づく極限の状況に限定する』ことを核保有国が宣言すべきだ」と言った。現在有権者の過半数の反対にもかかわらず、憲法違反である「集団的自衛権行使容認」を閣議決定だけでゴリ押ししようとしているが、その政権の外相の発言は、「日本政府が初めて『核兵器の使用』を公然と容認するものであった」と田中氏は指摘する。深刻な重いが残る論文であるが、広島・長崎原爆69周年を迎えるにあたりしっかり読んでおきたい一文である。@PeacePhilosophy



2013年8月5日、オリバー・ストーンとピーター・カズニックを広島の平和公園に案内する田中利幸。
原爆ドーム前。

世界になお核1万発

 ー‘14核兵器世界情勢-

 「非合法化」こそ有効な手段

 田中利幸

 
 2009年4月5日、就任したばかりのオバマ米大統領がプラハで「核兵器のない世界構築に向けて具体的な歩みを始める」と宣言する演説を行い、世界中の人々に「核のない世界」実現に向けて希望を与えたことは、今だに我々の記憶に鮮明に残っている。周知のように、この演説の素晴らしさが讃えられ、その年末にはオバマ大統領にノーベル平和賞が贈られたことも、まだ記憶に残っている。しかし、この核廃絶への「具体的な歩み」がいかに大きな嘘であったのかがこの5年間で明白となったことは、あらためて述べるまでもないであろう(日本人唯一のノーベル平和賞受賞者である故佐藤栄作元首相も、「非核三原則」という大嘘を国民について受賞した)。そういえば、このオバマ演説にいたく感銘して「オバマジョリティ」などというオバマ支援運動をわれわれ市民の税金まで違法に投入してはしゃぎまくった市長がいた記憶は、腹立たしくていつまでも薄れそうもない。

 米露戦略核は減少したが…
 確かに11年2月に米露間で発効した新START(第4次戦略核兵器削減条約)によって、米露両国の戦略核弾頭配備数だけは大幅に減少した。13年末の段階で、大陸間弾道ミサイルICBM、潜水艦発射弾道ミサイルSLBM、爆撃機などの航空機搭載核弾頭の合計でみると米国は2150発、ロシアが1808発を保有している。そのうち新START対象弾道弾数は、13年9月1日現在で米国の保有数が1688発、ロシアの保有数が1400発となっており、18年までに両国とも1550発以下にまで削減しなければならない。しかし、ミサイルから取り外された核弾頭が即時に廃棄処分されるわけではない。米国の場合、半年以内に再配備可能な核弾頭の所有数が2500発ほどあるため使用可能な核弾頭数は合計4650発、ロシアの場合は合計4500発の核弾頭を今も保有している。完全に廃棄される予定となっている核弾頭は米国は3千発、ロシアは4千発ほどである。これとは別に、米国はこれら4600発以上の核弾頭をできるだけ長期にわたって維持するため「寿命延長計画」に多額の予算をこれまでに注ぎ込んできたし、今後も投入する計画である。米露以外の核保有国の使用可能な核弾頭保有数を含めると、世界にある核弾頭数の合計は推計で1万発をはるかに超える。「核の狂気」から世界が完全に解き放されるのは、まだまだ夢のような話であることを私たちは深く認識しておく必要がある。
 14年4月29日、米国代表のローズ・ガテマラー国務次官が、NPT再検討会議の第3回準備委員会の「一般討論」で演説し「米国は、核兵器使用による破滅的な健康影響を含む非人道的な影響を深く理解しており、その理解こそが最も危険な核兵器を減らし、廃絶に向かう努力へと米国を駆り立ててきた」と述べた。オバマ大統領にせよガテマラー国務次官にせよ、核軍縮に向けての演説の修辞的技巧にはあきれかえるとしか言いようがない。彼らの公的発言がいかに嘘で飾られたものであるかを、以下、簡単に説明してみよう。
 今年3月4日、オバマ大統領は2015会計年度(14年10月~15年9月)の予算教書を議会に提出した。その予算計画によると、米国内の「核兵器の安全性・信頼性・機能性を計画・製造・テストし、維持・発展させる」ことを任務とするエネルギー省・国家核安全保障局(National Nuclear Security Administration=NNSA)の核弾頭関連予算には、今年度の77億㌦から7%増の83億㌦(約8300億円)が来年度には配分される。この予算額は史上最高で、1985年冷戦期のレーガン政権時代を大きく上回る。しかも2019年までに当該予算を、なんと今年度の24%増の97億㌦(ほぼ1兆円近く)にまで増やすというのだから、あきれてものが言えない。
 この予算から、多額が核弾頭ならびに運搬システムの「現代化計画」に充てられる。その中で最も優先順位が高いのが、核弾頭B61の寿命を現在より20~30年延長させる計画のための予算である。核弾頭B61は現在、ベルギー、オランダ、ドイツ、イタリア、トルコに200個配備されている重力加速度爆弾と呼ばれる核爆弾で、これを「改良」して新型戦闘機F35に搭載しようというのである。オバマ政権はこの計画に来年度は今年度予算の20%増の6・34億㌦(約634億円)を充てるが、40億㌦であった当初の推定経費が、いまや100億㌦にまで膨れ上がってしまっている。核弾頭運搬システムであるオハイオ級原子力潜水艦やステルス戦略爆撃機の改造にも、これまで以上に多額の予算が注ぎ込まれる。
 このように核兵器と核兵器運搬システムの「現代化」に未曾有の予算を注ぎ込む一方で、これまで毎年減額続きで今年度は5400万㌦にまで減ってしまった核弾頭廃棄用予算を、オバマ大統領は、来年度はさらに45%も減額して3千万㌦にするという。核廃棄物処理用予算はそのまま据え置きにしておき、NNSAの核拡散防止対策用予算は、これまた昨年度からの大幅減額に続き、来年度も21%減額の1.52億㌦となる。この核拡散防止対策の中の最も重要なプログラムは「世界脅威削減主導」(Global Threat Reduction Initiative)と呼ばれるもで、世界各地に散在する高度濃縮ウランを米露両国に輸送し、それを非核兵器用レベルの核物質に変換して、テロリストの手に渡らないようにするためのものである。

 核兵器に今後30年で100兆円
 昨年12月、米連邦予算事務所が発行した『2014―2023年度核軍事力推定予算』なる研究報告書によると、米国の核兵器ならびに核弾頭運搬システムの「現代化」のための現在予定されている研究と実施には、これからの10年間でなんと3550億㌦(約35兆円)が必要となるとのこと。この推定額は、担当政府高官が推定している必要予算額の7割増の額である。また、14年1月に、民間団体であるジェームズ・マーティン核不拡散研究センターが出版した『1兆㌦戦略核戦力:今後30年にわたるアメリカ戦略現代化』によると、米国政府は、現存する核兵器製造工場の維持・改修と核兵器・核爆弾の改良に今後30年で1兆㌦(約100兆円)を使う予定であるという。これはもう正気の沙汰ではない。1964年公開のスタンリー・キューブリック監督の映画『博士の異常な愛情』でまざまざと映し出された核兵器をめぐる「狂気」が決してフィクションなどではないことが、大量破壊兵器に使われるこの100兆円という数字に現実のものとして表れている。
 かくして、北朝鮮やイランに核兵器開発・保有をやめるよう軍事力で圧力をかけている米国が、ノーベル平和賞を受賞した大統領の下で、大量の核兵器を抱え込み、それらを少しでも長く維持するだけではなく、より強力な小型核兵器の開発にやっきになっているという皮肉な状況が現状なのである。「核兵器のない世界構築に向けて具体的な歩みを始める」という2009年のオバマ大統領のプラハ演説が実行されていることを裏づけるような事実は残念ながら全く存在しない。それどころか、現実の状況はそれに逆行して、人類自滅行為への危険性をますます大きなものにしているのである。
 このような状況であるから、他の核保有国も核兵器廃絶をしようなどという気はさらさらないどころか、ますます核戦略を強化する傾向にある。中国は、すでに12年版国防白書で「核先制不使用」方針を落とし、それまでとってきた「自衛のための核兵器使用」という政策を変更して、「核先制攻撃」もありうることを明らかにした。中国は核戦略の変更のみならず、ICBMを含む長距離ミサイル、新型原子力潜水艦(現在保有数8隻)、宇宙戦争、エレクトロニクス・サイバー攻撃などの開発に多額の予算を注ぎこんで、軍事力の急激な拡大強化に努めている。その中国に近年、ロシアも軍事協力面で急速に接近しているだけでなく、核弾頭巡航ミサイル搭載の爆撃機をグアム近辺にまで飛ばす訓練を行ったり、明らかにアラスカの米軍基地を仮想攻撃目標とした戦略爆撃機と戦闘機による訓練、巡航ミサイル搭載の原潜をメキシコ湾に展開させるなど、米国を仮想敵国とした軍事戦略を今も維持している。
 さらに、最近のウクライナ紛争で米露関係が急激に悪化し、新STARTで同意された戦略核弾頭配備数削減が、当初の目的通りに達成されるかどうかも懸念されるようになってきた。実はウクライナには、旧ソ連時代には1千発にのぼる大量の核弾頭が配備されていたが、1991年に独立して94年にNPTに加盟した。その結果、96年までにすべての核弾頭が廃棄されるかロシアに移管され、ICBMのサイロも地下構造にコンクリートを流し込むなどして使用不可能な状態にされた。その後も保有していた核弾頭用の高濃縮ウランすべてを12年3月までにロシアに譲渡し、引き換えに原発燃料用の低濃縮ウランを受け取った。確かに核弾頭はもはやウクライナ国内には存在しないが、しかし、ウクライナはウラン産出量では世界トップ10の中に入り、15の原子力発電所を持っている。旧ソ連時代に核開発の重要な拠点の一つであったキエフ原子力研究所は今も存続しており、核兵器製造で豊富な知識をもつ研究者がいる。真偽のほどは確かではないが、この人材を米露が奪いあっているという噂もある。
 イギリスやフランスもまた米国にならって、軍事予算の削減にもかかわらず、核兵器予算を減額することはなく、自国保有の核兵器の「現代化」のために多額の予算を配付している。とりわけフランスは核弾頭ミサイル搭載原潜の新型への入れ替え、新型核弾頭ならびに新型ミサイルの開発に力を注いでおり、大統領が代わっても、核戦略には全く変更がない。
 したがって、新STARTが当初の条約内容通りに実行されたとしても、中国やフランス、さらには中東で相変わらずパレスチナやシリアに空爆を続け、イランに対して核攻撃も辞さないと脅威を見せつけているイスラエル、相変わらず緊張関係にあるインド・パキスタンとインド・中国など、米露以外の核保有国が加わらない核兵器削減条約では、世界に1万発以上あると推定される核兵器を廃絶することはとうてい不可能である。

 「核非合法化」確固たる流れ
 こうした核兵器の世界情勢を転換させ、核廃絶への道を一気に推し進める方法は「核兵器の非合法化」の国際法を設けることである。幸いにしてこの数年、世界のさまざまな反核平和団体やNPOが「核兵器禁止条約」を求める運動を展開してきた結果、今やこの要求は世界のさまざまな諸国を動かしつつある。12年10月には、ニューヨークで開催された国連総会第1委員会(軍縮)を舞台に、スイスやノルウェーなど核兵器の非人道性を訴える16カ国が「核兵器を非合法化する努力の強化」を促した声明案を作成。日本政府もこれに署名するよう打診されたが、これを拒否。また13年3月には、ノルウェー政府主催の「核兵器の人道的影響に関する国際会議」が首都オスロで開かれ、120を超える国家政府や市民団体が参加して核兵器の非人道性と核兵器の非合法化について議論が行われた。その結果「いかなる国家も国際機関も、核兵器の爆発がもたらす人道上の非常事態に十分対処できる見込みはない」という議長総括が発表されたが、ここでも日本政府は極めて非協力的な態度を終始とり続けた。
 14年2月、メキシコのナジャリットで146カ国が参加して第2回核兵器の人道的影響に関する国際会議が開かれ、核兵器の非人道性が再確認された。それのみならず、核兵器が使われれば、環境破壊はもちろん、経済、貿易、通信、医療施設、学校などのあらゆる社会体制が壊滅的な影響を受け、その結果無数の市民が打撃を受けることは間違いないが、とりわけ「貧しく、弱い立場にいる人々が最も深刻な被害を受ける」ことも確認された。かくして、核兵器使用が及ぼす深刻な人的、社会的、環境的損害が由々しい「犯罪行為」であるという認識が世界共通のものになりつつあることは、もはや否定しがたい。一刻も早く「核兵器禁止条約」が設置されることが望まれるが、14年12月にオーストリア・ウィーンで開かれる予定の第3回会議で、これに向けてさらなる発展がみられることが期待される(「核兵器使用の非合法化」に関しては10年のNPT再検討会議に合わせて、筆者自身も「核兵器廃絶をめざすヒロシマの会」(HANWA)の提案として意見を発表した。この提案は今も有意義であると自負しているので、ぜひ参照していただきたい。http://www.e-hanwa.org/announce/2010/81

 「核使用容認」の岸田発言
 一方、日本政府は、相変わらず、「世界唯一の原爆被害国として核兵器の究極的廃棄」を望むといった内容の公式宣言を繰り返し発表はするが、その目標に向けての具体的な動きになると、逆にそれを阻止するような言動をとり続けていることは周知のところである。13年4月のNPT再検討会議第2回準備委員会で80カ国が連盟で発表した「いかなる場合にも核兵器を使わない」という表現を含む共同声明に日本政府は加わらず、内外から強い批判を浴びた。そのためであろう、同年12月の国連総会第1委員会では、核兵器不使用を訴える125カ国の共同声明にようやく賛同した。
 14年4月、日本政府がホスト国となって軍縮・不拡散イニシアチブ(NPDI)の第8回外相会合を広島で開いた。その結果として発表された「広島宣言」では、上記のような世界情勢を考慮してであろうが「核兵器の非人道性」という点が強調された内容となっている。しかし、「約69年に及ぶ核兵器不使用の記録が永久に続けられるのはすべての国々にとって利益である」という表現を含ませることで、「有効に働いている核抑止力を維持すべきである」という日本政府の方針を暗示する形となっている。しかも「核兵器の非合法化」については全く言及しないままであった。その理由は、日本は米国の核戦力を含む「抑止力」に国防を依存する政策をとっているため、核の非合法化を目指す声明案に賛同すれば、論理上、政策的に整合性が取れなくなるというものである。
 しかし、「核抑止力」に関する日本政府の見解は、最近の安倍晋三政権の「集団的自衛権」行使容認への強い動きにあわせて、さらに悪化していることに我々は深く注意する必要がある。14年1月20日、衆院広島1区選出の岸田文雄外相は4月の広島でのNPDIに向けて、長崎で「核軍縮・不拡散政策スピーチ」と題して講演、その中で政府の新たな核兵器政策に関して言及し「核兵器の使用を個別的・集団的自衛権に基づく極限の状況に限定する」ことを核保有国が宣言すべきだと述べた。要するに「日米が集団的自衛権を行使するような戦闘で『極限の状況』と判断するような事態であれば、核兵器の使用が許される」という主張である。しかも「極限の状況」とはいったいどのような事態なのかについてはなんらの定義も説明もない。既に説明したように長年、日本政府は米国の「核の傘=核抑止力」に依存するという方針を内外に向けて明らかにしてきた。しかし「核兵器の使用」については具体的にどのような状況で使用を認めるかについては、これまで全く言及したことはなかった。岸田発言は、日本政府が初めて「核兵器の使用」を公然と容認するものであった点で、極めて深刻である。
 「集団的自衛権」行使のもとでの「核兵器使用」は、単に米国の核兵器使用容認にとどまるものではなく結局は、日本の核武装そのものの容認にまでつながっていく危険性をはらんでいる。なぜなら「集団的自衛権」を行使して米軍と協同で戦争を行うなら、米軍と同じ戦力を備える必要があり、そのためには核兵器保有も必要であるという論理を許してしまうことになるからである。被爆国日本の、しかも広島市出身の外相が核兵器使用を容認するという発言自体が「異常」であるが、これを批判する声が、広島の政治家の間からのみならず、反核運動に携わっている人たちからもほとんど聞こえてこないのは、なんとも情けない。ピースボート代表の川崎哲氏にいたっては、この岸田発言を一歩前進とまで評価しているありさまである。

 「核保有自体が違法」と提訴
 ここでもう一度「核兵器の使用」と「核抑止力」の犯罪性について確認しておこう。
原爆被害国として核兵器の残虐性と長年にわたる被爆者の苦痛を目にしてきた日本人、とりわけ広島市民の中に、意識的にせよ無意識的にせよ、「核兵器の使用」が犯罪行為であるという認識は広く共有されている。無数の市民を無差別に殺戮し、放射能による激しい苦痛をもたらす核兵器の使用が、国際刑事裁判所ローマ規程・第7条「人道に対する罪」(とくに(a)殺人、(b)殲滅、(c)住民の強制移送、(k)意図的に著しい苦痛を与え、身体もしくは心身の健康に重大な害をもたらす同様の性質をもつその他の非人間的な行為)、ならびに第8条「戦争犯罪」(とくに文民ならびに民用物、財産への攻撃)であるという認識は、国際的にも共有されている。同時に、核兵器の使用はジェノサイド条約(1948年国連採択の「集団抹殺犯罪の防止及び処罰に関する条約」)に違反する行為であるという判断も、専門家の間では強く支持されている。
 ところが「核抑止力」の保持は、実際に核兵器を使う行為ではないことから、犯罪行為ではなく、政策ないしは軍事戦略の一つであるという誤った判断が一般的になっていると言ってよい。実際には「核抑止力」は、明らかにニュルンベルグ憲章第6条「戦争犯罪」(a)「平和に対する罪」に当たる重大な犯罪行為である。「平和に対する罪」とは「侵略戦争あるいは国際条約、協定、誓約に違反する戦争の計画、準備、開始、あるいは遂行、またこれらの各行為のいずれかの達成を目的とする共通の計画あるいは共同謀議への関与」(強調:田中)と定義されている。「核抑止力」とは、核兵器を準備、保有することで、状況しだいによってはその核兵器を使ってある特定の国家ないし集団を攻撃し、多数の人間を無差別に殺傷することで、「戦争犯罪」や「人道に対する罪」を犯すという犯罪行為の計画と準備を行っているということ。さらに、そうした計画や準備を行っているという事実を、常時、明示して威嚇行為を行っていることである。核兵器の研究、実験、設計、生産、製造、輸送、配備、導入、保存、備蓄、販売、購入なども、明らかに「国際条約、協定、誓約に違反する戦争の計画と準備」である。したがって、「核抑止力」保持は「平和に対する罪」であると同時に、「核抑止力」による威嚇は、国連憲章第2条第4項「武力による威嚇」の禁止にも明らかに違反している。96年の国際司法裁判所(ICJ)の『核兵器の威嚇・使用の合法性に関する勧告的意見』も、その第47項で「想定される武力の使用それ自体が違法ならば、明示されたそれを使用する用意は、国連憲章第2条第4項で禁じられた威嚇である」と明記している。
 核兵器保有国が共通して重要戦略とみなし、かつその正当性を常に主張してやまない「核抑止力」、この「核抑止」思想そのものが「犯罪行為」として徹底的に否定されない限り、核廃絶は不可能である。「核抑止」思想を否定する思想を世界の多数派にするためには、それが重大な「犯罪行為」であるという認識を普遍化する必要がある。このことを、我々は市民運動の中で繰り返し言い続け、ことあるごとに強調し、一般市民の考え方を変革していかなくてはならない。
 その観点からすれば、2014年4月24日に、マーシャル諸島共和国が、9カ国の核兵器保有国それぞれを、68年成立のNPT核不拡散条約ならびに国際慣習法でも決められている「核軍縮の義務」という国際法をはなはだしく犯しているという理由でハーグの国際司法裁判所に提訴し、同時に米政府を相手取り、同じ内容で、サンフランシスコの米連邦地裁にも提訴したことの意義は非常に重要である。なぜなら、この提訴は核保有国が核兵器を保有し続けている事態そのものを違法であると訴えた、史上初めての裁判であり「核保有そのものの犯罪性」が法廷での争点になる可能性が非常に大きいと筆者は考えるからである。従って我々は、マーシャル諸島共和国の人々のこの国際裁判闘争を全面的に支援していく必要がある。

(たなか・としゆき 広島市立大広島平和研究所教授)

★このブログの田中利幸氏の過去の投稿はこちらをクリックしてください。

★6月28日追記:
本文に、ピースボート共同代表の川崎哲氏の意見に関する記述がありますが、この問題に関する同氏の見解は、以下のリンク(同氏ブログより)にあります。

日本はどのような状況で核兵器を使用する(してもらう)つもりなのか
2014年1月22日 川崎哲
http://kawasakiakira.at.webry.info/201401/article_10.html
(川崎哲のブログより)

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