沖縄・名護市の作家、浦島悦子さん作、同じく名護市の画家、なかちしずかさん絵による絵本『ジュゴンの帰る海 ヤンバルの海から命のメッセージ』(ハモニカブックス)を紹介したい。辺野古の海を壊し、地域を分断し、県民のマジョリティが反対している軍事基地建設を強行しているその現場には私も一年半以上行けていないし、コロナで人が減っていると思う。そんな中でこの本が出たことは大変重要だ。
主人公のマカトは、生まれてまもなく両親がパラオに出稼ぎに行き、祖父母に育てられていた。おじい、おばあに守られ、海にもぐり、ザン(ジュゴン)と触れ合い、父母を待ちながら暮らしていたが、沖縄は戦火に包まれ・・・「ザンはニライカナイの神さまのおつかい」。家族を失い、ときは経ち、マカトはあのザンと再会することになる。基地建設で餌場を奪われ、変わり果てた環境の中で。
「ザンの生きる海を埋め立ててはいけない!」
その声が日本じゅう、世界じゅうにひろがっていきます。
日本もアメリカもザンには勝てません。
(絵本より)
名護市東海岸に住むジュゴンは基地建設が進むにつれて姿を見せなくなってしまったという。浦島さんは「あとがき」で、「私たちが『野生の力』を信じ、やるべきこと、やってはいけないことを守っていけば、この地にジュゴンたちが戻ってくる日も遠くはないでしょう」と訴える。「やってはいけないこと」は基地を造ることであり、「やるべきこと」は基地を止めることと思う。選挙が近づいている。基地を止めることができる政権を選ばなければいけない。
『ジュゴンの帰る海』はここからいろいろな書店サイトで注文できるようだ。読者にとって、マカトと一緒に海に潜り、ザンの肌に触れることができるようなこの本を、一人でも多くの人に手にとって欲しい。
乗松聡子
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