駅前広場・未来風景
中村 稔
ケヤキ、ナラ、コナラなどの雑木林の木陰に
昨日も今日も人間のかたちをしたものが佇んでいる。
風が吹きつけるとゆらゆらと体を揺らし
目に見えぬものを飛散しながら身じろがない。
じっと身じろぎもしないものに、君は誰だと訊ねたら
放射能のゴミだという、行き場のないゴミだという。
ふと気付くと、あの木陰にもそこの木陰にも
同じように人間のかたちをしたものたちが佇んでいる。
目ざわりだからどこかへ行ってくれと頼んだら
それらは雑木林を出て、駅へ向かって歩き出した。
町の隅々から現れてはしだいに数が増え、
駅前まで来て、これ以上行き場がないという。
行き場のない人間のかたちをした放射能のゴミが
駅前広場を埋めつくし、うなだれて佇んでいる。
身じろぎもせず、群れている。声もなく群れている。
駅前広場には人間はもう一人もいない。
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