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Friday, May 10, 2013

NYT記事:原発の汚染水こそ目下の危機 Flow of Tainted Water Is Latest Crisis at Japan Nuclear Plant


 福島第一原発での「地下貯水タンク」の放射能漏れが報道され、しだいにこれがタンクとは名ばかりのビニールプール、あるいは液体を溜めることさえできないゴミ処分場も同然のものだったことが明らかになった。日本の報道はここでストップしてしまったように見え、今はトーンダウンしている。しかし、そもそもなぜこのような状況になってしまったのか、汚染水の増加が止まらないのはなぜか、ビニールプールに放射能汚染水を入れるのは誰が決めたことだったのか?
 ここに紹介するニューヨーク・タイムズの記事には、密室で隠れて事を進める東電と政府の泥縄式のやり方が、次から次へと失敗を招いている、憂うべき現状が見えている。
(前文・翻訳:酒井泰幸)

原発の汚染水こそ目下の危機 Flow of Tainted Water Is Latest Crisis at Japan Nuclear Plant
 世界で2番目に深刻な核災害となった3連メルトダウンから2年後、福島第一原子力発電所は新しい危機に直面している。高い放射能をもった廃水があふれ出し、作業者たちはこれを収拾しようと格闘している。

 破壊された原発の原子炉建屋に、地下水が毎分 284リットル近くも流入している。重要な冷却システムが水没しないように、流入した地下水を汲み出しているが、それは高濃度に汚染されている。絶え間なく流れ続ける放射性廃水を封じ込めるために作業者の一団は苦闘しており、頼みの綱は17ヘクタールの駐車場や芝生に立ち並んだ、銀色や灰色の大きな貯蔵タンクである。ここにはオリンピック競泳プール112杯分に相当する汚染水が溜まっている。

 しかしこのタンクをもってしても、原発にあるストロンチウムを含んだ大量の汚染水を対策するには足りない。このことが、2011年の核災害の規模の大きさを象徴するとともに、批判者たちの目には、この原発を運営する企業と規制監督官庁の場当たり的な意志決定の象徴と映る。この問題の深刻さから、原発を運営する東京電力は敷地の南端にある小さな森林を伐採し、あと何百ものタンクを設置する場所を作ろうと計画している。あふれ出る汚染水に対処するために建設された地下貯水槽からの漏洩が、ここ数週間で明らかになったため、タンクの増設は急務となった。

「食べていようが眠っていようが仕事していようが、汚染水は分単位で増え続けている。常に追われているように感じるが、一歩先を行くように最善を尽くしている」と東電の広報担当オオノ・マサユキ部長は語った。

 東電がなんとか一歩先を行っている間にも、貯蔵場所が間もなく無くなるという脅威は長引き、それは東電自身も非常事態と呼ぶ状況へと発展し、溜まった大量の汚染水は、いまにも海岸の原発から太平洋に漏れ出る不安をかき立てる。

 この困難な状況と、別の補助冷却システムが止まった29時間の停電をはじめとする一連のお粗末な事故は、ある由々しき事実を際立たせた。メルトダウンから2年がたっても、惨事の火蓋を切ったのと同様の大きな地震と津波に対して、この現場は脆弱なままだということだ。

 事故直後の絶望的な数ヶ月に比べれば、溶融した炉心を安定的に冷却するため奮闘した作業者のおかげもあって、炉心の温度は下がり福島原発の危険は下がったことは言うまでもない。

 しかしこの原発の安全システムや対策工事は仮設のままであり、まだ事故の危険を抱えていると多くの専門家は警告する。

 壊れた炉心に注水する応急の循環冷却装置は、ポンプ、フィルター、それに4キロメートルにわたって原発敷地をはい回るパイプが、迷路のように繋がったものである。 また使用済み核燃料を保管するプールは壊れた原子炉建屋の5階に宙ぶらりんになったままで、東電は燃料棒を安全な場所に移そうと苦闘している。

 新たに組織された監視機関である原子力規制委員会の委員長で、長年にわたり原子力を推進してきた田中俊一氏が、貯水槽からの漏洩を公表した後で、「事故の再発を防げない恐れがある」と記者に語ったことを見ても、この状況は憂慮すべきものだと言える。

 メルトダウン前に発電所を操業していた会社に事故処理を任せることによって、日本の指導者は、関係者だけが支配する事故前の既成事実へと逆戻りする道を開いてしまったと、ますます多くの政府官僚や顧問が指摘するようになった。

 チェルノブイリ以後最悪の原子力災害の事故処理が、非常に複雑な作業であることを認める多くの科学者でさえ、この汚染水危機は、東電が一貫した方針もないまま次から次へと発生する問題に当てもなく対処していることが、またしても露呈しただけではないかと恐れている。

 「東電には明らかに毎日が綱渡りで 、明日のことを考える時間はなく、まして来年のことなど言わずもがなだ」と、原発事故処理のロードマップを策定した委員の一人である原子力専門家のイノウエ・タダシ氏は語った。

 しかし不安材料は東電だけにとどまらない。事故前のどの監督官庁よりも厳しく日本の原子力産業を監視している原子力規制委員会は今、たった9人の監査官で3千人以上もいる福島の作業者を監督している。

 また政府が事故処理を監督するために作った独立の委員会は、原子力の推進を担当している経産省や、東芝や日立のような原子炉メーカーをはじめとする産業関係者でいっぱいである。福島原発がどうして汚染水で溢れかえることになったのかという話は、原子力安全にかかわる意志決定を産業関係者任せにする危険が今も続いていることへの警鐘だと、批判者たちは語っている。

 東電と政府が2011年末に福島原発の廃炉について現在の計画を立てたとき、すでに地下水の問題は指摘されていた。福島原発は近くの山脈から海へと流れる地下水の通り道に位置しているのだ。しかし批判者たちによれば、意志決定者たちは汚染水を浄化して処分するまでのあいだ貯蔵しておくことができると決め付け、この問題にあまりにも低い優先順位しか与えなかった。

 政府の事故処理計画立案に関わった人々によると、外部の専門家なら汚染水の問題を予測したかもしれないが、事故処理の専門知識が豊富な専門家や企業を招き入れる要請を東電と政府は門前払いし、馴れ合いの原子力産業だけで原発を支配する方を取った。

 廃炉計画の策定に関わった原子力規制専門家によれば、水が原子炉やタービン建屋に侵入するのを防ぐため地下20メートルに達するコンクリートの遮水壁を建設する提案も東電は拒否し、経産省はこの問題で圧力をかけることはなかった。

 そのかわり東電は、プラスチックシートと粘土で防水した地下貯水槽を大急ぎで建設するなど、その場しのぎの計画修正を行い、結局は水漏れを起こしてしまった。

 この監督官庁が政府の事故処理監視委員会の一員に加えられたのは、漏洩が見つかった後のことだった。

 しかし最大の問題は、ストロンチウムを始めとする62種類の放射性微粒子を除去できる強力な新しい濾過システムが設置されれば、いずれ汚染水を海に廃棄することができると、東電など監視委員会の委員たちは最初からずっと信じているように見えるということだったと、批判者たちは語る。

 この廃棄計画が頓挫したのは、専門家なら予測できた問題だった。トリチウムに対する大衆の抗議である。トリチウムは比較的弱い放射性同位体で、これを水から除去することはできない。

 トリチウムは人体に取り込むと有害で、通常運転中の原発から定常的に環境へ放出されているが、福島の汚染水には健全な原発が平均的に放出する量の約100倍のトリチウムが含まれていることを、東電さえも認めている。

 「我々は燃料棒と溶融した炉心のことに気を取られ、汚染水の問題を軽視していた」と、東電の当初の事故処理計画の策定に関与した政府機関である、日本原子力委員会の委員長代理、鈴木達治郎は語った。「原子力産業の外部の人間なら汚染水問題を予見できたかもしれない。」

 東電は、増加する地下水の問題への対処を誤ったという批判に耳を貸さず、安全に流入を食い止める唯一の方法は、損傷した原子炉建屋の亀裂を塞ぐことだと主張している。このためには、強い放射能に汚染された建屋に立ち入り、深さ1メートル以上の猛毒の水に浸かって作業する必要があるので、亀裂を塞ぐことができる会社は世界中どこにも無いと、東電は主張する。

 「この原発を運転しているのは我が社であり、他の誰よりも良く知っている」と東電広報担当のオオノ氏は語った。そして彼は涙を見せ「我が社が起こしたこの惨状を修復することだけが、社会での信用を回復する唯一の方法だ」と付け加えた。

 今のところ、ゴールは遙か彼方にあるように見える。2011年に東電が放射能汚染水を太平洋に投棄したとき、東電がこれを公表しなかったことも影を落としているが、トリチウム汚染水を海に廃棄する計画に対する大衆の抗議の激しさに、安倍晋三首相は先月、「安全ではない放出はしない」と語って、この問題に自ら介入せざるを得なかった。

 そうしている間にも、原発敷地内に溜まっている汚染水の量は増え続けていく。

 「これを海に捨てる前に国民の承認が必要だということに、なぜ東電は気付かないのだろうか」と、東京大学の政策専門家である諸葛宗男は語った。彼は事故処理を行う専門の会社を設立することを呼びかけた。「この全てが、東電が陥っている問題の深さを、まさに証明している。」


(東京からの報告をイノウエ・マキコが、ワシントンからの報告をマシュー・L・ウォルドが執筆した。)

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