Hughes Cortazzi |
Does right-wing extremism threaten Japan’s democracy?
by Hugh Cortazzi
http://www.japantimes.co.jp/opinion/2014/10/31/commentary/japan-commentary/does-right-wing-extremism-threaten-japans-democracy/
極右思想は日本の民主主義への脅威か
ヒュー・コータッツィ
2014年10月31日
いかなる場所においても極端な国家主義は、民主的な制度と価値観に対する脅威である。日本で極右勢力の影響力が増していることに関する最近のイギリスにおける報道は、当地の親日家に深い憂慮をもたらした。
総務大臣の高市早苗がアドルフ・ヒトラーを讃えた本に熱烈な推薦文を寄せていたことが10月22日に報じられた。これについて発表された弁明と否認は矛盾し、説得力に欠けるものであった。
イギリスの閣僚がもしホロコーストを引き起こした犯罪者を支持すると取られかねないような発言をすれば、大衆から抗議が沸き起こって問題の閣僚は辞職させられることだろう。
安倍晋三首相が4月に送ったとされる、有罪判決を受けた戦犯たちが「殉難者」だったという書面は、ここイギリスでは受け入れがたいものと見なされた。私は安倍が本当にこのような書面を出したのかを尋ねる書簡をロンドンの日本大使館に送った。第二次大戦中に日本帝国の軍人の手により多大な苦しみを受けた人を親類に持つイギリス国民にとって、このような声明は極めて感情を害するものであると私は書いた。私の書簡に返事は来なかったので、安倍は確かにそのように言明したと思うほか無い。
10月18日には、NHKが英語放送の記者たちへの通達で、南京大虐殺と日本が使った「慰安婦」(性奴隷を表す婉曲表現)について、いかなる言及も禁止したと報じられた。[訳注:筆者が言及しているのは10月17日「タイムズ」紙の記事が取り上げているNHK内部文書だが、この文書は、南京大虐殺や慰安婦問題についての表現のし方を通達する中で一定の表現を禁止しているもので、そういった問題自体への言及を禁じてはいない。この『タイムズ』記事とNHK内部文書は後日当ブログで取り上げる。]
NHKはBBCに類似するものとされ、政治的に中立で客観的ということになっている。籾井勝人の指揮下において、NHKは日本政府の手先になってしまったように見える。中野晃一教授が「ますます中国中央電視台(中国国営放送)の鏡像のよう」と言ったようだが、その通りだと思う。
これまでのイギリスでの数々の報道を見ていると、安倍の右翼閣僚たちは、日本の戦時指導者たちを免罪する企てに学問的基盤を与えるために歴史を書き替えたがっているようだ。
西側諸国の歴史学者たちは、動かぬ証拠に基づき、日本の軍隊が南京のみならず中国の他の場所でも残虐行為を働いたことを確信している。中国の軍隊も、国民党と共産党の両方が、一般市民に対し犯罪行為を行ったこともまた事実だが、日本は侵略者だったのであり、中国側の行為は日本の最高司令部がとった意図的な圧政を正当化する言い訳にはならない。
日本の軍人たちは数多くの強姦を行っただけでなく、朝鮮人のみならず他の占領地の女性たちも強制的に性奴隷にしたことに、疑問の余地はない。
満州国で細菌戦を行った日本の731部隊の活動に関する事実はあまりに恐ろしいものなので、部隊の存在と人体実験の事実は隠蔽され、可能なら忘却される傾向にある。この「健忘症」は、少なくとも部分的にはアメリカの黙認によるものだった。アメリカの捜査官たちは日本の加害者を訴追しない引き替えに「実験」結果を受け取ったのだ。
シンガポールをはじめとする占領地における民間人の虐待(これでも控えめな言葉だが)は、故意に目をつぶる者を除いてはとても否定できるものではない。いくら歴史修正主義者でも連合国の捕虜がどれだけ虐待されたかまで正当化することはできない。
私は争いや反感をかき立てるためにこれらの事実を指摘するのではない。イギリスの親日家の多くと同じように、私は和解を強く信じ、日本とイギリス両国の個人や団体による相互理解のための努力と、戦争で行われた残虐行為が繰り返されることを確実に防ぐための努力を支持する。修正主義者たちはこれらの努力をいっそう困難にしてしまう。
日本の右翼国家主義者たちの目には、日本の軍事指導者たちが犯した唯一の罪は失敗したこと[訳註:戦争に負けたこと]なのだ。右翼たちは倫理原則を持たず民主的制度に反対している。
私は極右勢力が日本政府を乗っ取ることはできないと望み信じているが、国会の反対勢力は弱くかつ分裂している。
日本は一党政府に逆戻りしたように見える。これは独裁政治と人権侵害につながる恐れがある。
日本のメディアは日本の民主的制度を支える主要な柱の一つであるはずだが、過激論者からの圧力にさらされている。2013年12月に国会で強行採決された特定秘密保護法は報道の自由に対する潜在的脅威である。民間テレビ放送局は暴力団に応援を求めかねない右翼の正体をあばいて闘うことに、ほとんど利益を見出していない。
右翼に反対する主要紙の一つが「慰安婦」問題をめぐり虚偽の証拠に基づいていたとしてさらし者にされたことは不幸なことである。たとえ一片の証拠に欠陥があったとしても、日本陸軍が占領地で行った性的搾取については他に十二分の証拠がある。
日本のメディアは「記者クラブ」制度のせいで極めて日本の支配層寄りであると海外では悪名が高い。この体制から恩恵を受けている者たちはこれを否定するが、たとえ日本のメディアが「従順な子猫」でないとしても、ある戦前史の研究によると、日本で健全な民主主義を保つのに必要である自由で率直な批判が、過激論者の脅迫で不可能になり得るという。
日本政府内で過激論者の影響が明らかに高まった結果、海外における日本のイメージと威信は傷ついている。修正主義者たちによる虚偽の歴史の宣伝を食い止め、日本の民主的な手続きが反民主的過激論者の個人や団体によって脅かされないようにすることは、ひじょうに日本の国益にかなうものになる。
私がこの記事を書くことにより、日本の右翼国家主義者たちは私を反日的と見なすであろう。しかしそれは間違いだ。私は日本文化を崇敬し愛好しているし、多くの良き日本人を友人に持って幸せに思っている。「Great Civilization of the World世界の偉大な文明」というシリーズの中で、私が長年かけて取り組んだ一冊の本は、『The Japanese Achievement日本の偉業』と題されている。この本の中で私は日本の歴史と文化の概説を試みた。私は偽善的なゴマすりよりも、歯に衣着せぬ友人でいたい。
ヒュー・コータッツィは1980〜1984年に駐日イギリス大使を勤めた。
(翻訳:酒井泰幸 翻訳協力 乗松聡子 翻訳は投稿後微修正することがあります。)
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