To view articles in English only, click HERE. 日本語投稿のみを表示するにはここをクリック。点击此处观看中文稿件한국어 투고 Follow Twitter ツイッターは@PeacePhilosophy and Facebook ★投稿内に断り書きがない限り、当サイトの記事の転載は許可が必要です。このブログの右サイドバーにある Contact Us フォームで連絡ください。Re-posting from this blog requires permission unless otherwise specified. Please use the Contact Us form in the right side-bar to contact us.

Thursday, September 01, 2016

「日本会議」と戦後という時代(成澤宗男講演レジュメ) Muneo Narusawa: "Nippon Kaigi (Japan Conference)" and Post-War Japan (Lecture Notes)

『週刊金曜日』の大分読者会主催による成澤宗男氏の講演「安倍政権の右傾化の真実を解き明かす 日本会議と安倍政権」(8月27日 14時~ 於大分市コンパルホール視聴覚室)のレジュメが大変わかりやすく、掲載許可をもらいましたのでここに転載します。成澤氏は6月に出た週刊金曜日刊『日本会議と神社本庁』の編著者でもあります。

成澤宗男編著『日本会議と神社本庁』(金曜日)

「日本会議」と戦後という時代


                  週刊金曜日 成澤宗男

Ⅰ 戦前と戦後―その継承と断絶

●私たちは戦後を、「GHQの占領下で改革が実施され、戦前から解放された時代」と見なしている。だが、逆にこれによって「日本の伝統が破壊された」と見なす集団がいる。それが、戦前、天皇制軍国主義のイデオロギー装置(国家神道)だった神社本庁を中心とする右派勢力に他ならない。日本は戦後70年以上たっても思想的な内戦状態にあり、戦後についてのコンセンサスが存在しない。

●戦後、「護憲派」は改憲さえ実行されなければよしとする姿勢に終始した。どれだけドイツのような「過去の克服」に意識的であったか疑わしい。自ら戦前の歴史検証や戦争犯罪の追及、戦前を戦前たらしめながら戦後も生き延びたイデオロギー(天皇・靖国思想)の切開等について受け身に終わった。その原因として、「護憲派」の代表格だった日本社会党の結党時の指導者の大半が、天皇制に屈服した翼賛派であった点が大きい。

●こうした現状を探っていくと、日本の近代化まで辿り着く。近代化の端緒となり、江戸幕府の廃止が宣言されたのは、186813日の明治天皇の名による「王政復古の大号令」に他ならない。近代化が同時に「王政復古」となり、欧州諸国のように近代化で進行した政教分離が、逆に日本では近代化が同時に政教一致の神権国家として出発した。これが、1945815 日までの全歴史過程を基本的に規定した。

●日本型のファシズム(軍国主義)を特徴付ける①国家神道(教育勅語)による精神支配②他民族蔑視に基づく植民地支配③特高・憲兵による異常な暴力支配④絶え間ない侵略―といった特徴はすべて明治期に形成され、大日本帝国の統治は77年間に及んだ。ナチスドイツが、19333月の全権委任法成立から194558日のベルリン攻防戦で降伏するまで12年と2ヵ月しか延命しなかったのと比較を絶する。それだけ日本という国家は、圧倒的に未だ精算できないほどの長期間のファシズム(軍国主義)を経験したという過去を濃厚に引きずっており、その事実を軽んじてはならない。


Ⅱ 日本会議とは何か(マクロの視点)

●「日本会議」とは、敗戦直後から神社勢力が開始した「(占領政策からの)日本回復の運動」の延長上に生まれた団体と言える。神社本庁は、1966年に実現した「紀元節復活」(建国の日制定)から挫折した靖国神社国営化運動を経て、1979年の「一世一代の元号制度復元」(元号法制定)まで、一貫して右からの運動を担った。同時に、戦前は国家神道に包摂され、天皇制国家と侵略戦争を支えた右派宗教勢力も同盟して運動の一翼を形成した。

●特にそうした右派宗教勢力の中でも最も活動がエネルギッシュで、イデオロギー的に過激であったのが「生長の家」であった。さらに「生長の家」の学生信者でもさらに思想的に強固で、6869年の全国学園闘争で左翼と渡り合った経験を有する活動家を中心とする「日本青年協議会」(70年結成)が、元号法制化運動の過程で神社本庁の政治運動の事務局を占有する。以後、1981年に結成された「日本を守る国民会議」と、その発展組織である1997年結成の「日本会議」も、事務局の中心は「日本青年協議会」が担っている(「日本会議」と「日本青年協議会」は都内の同じマンションの同じフロアに本部を置く)。

●よく組閣のたびに、「日本会議」の「国会議員懇談会」のメンバーが閣僚に何人いるなどと騒がれるが、「日本会議地方議員連盟」と同様、その大半は「お付き合い」で加わっており、極右分子はそれほど多くない。「日本会議」系の各級議員の多さは今日の社会の右傾化の結果であって、「日本会議」自体が右傾化を生んだのではないし、領導したのでもない。また、「安倍内閣を操る」だの「黒幕」といった指摘は過大評価だ。

●なぜこれほど「日本会議」が騒がれるかといえば、安倍個人との近似性から、そうした権力を握った極右と同様の集団であるため、存在が実態以上に大きく見えているだけだろう。ただ、現在の政権、及び国会内に安倍一派をはじめとする「日本会議」とパイプが太い議員(衛藤晟一、山谷えり子等)がいるため、ロビー活動は以前よりやりやすくなっていると思われる。「教育基本法改悪」の際の地方議会の「意見書」採択、及び同時進行した中央での集会開催、議員工作を見ると、その影響力は侮れないのも事実だ。

●「日本会議」は、「なぜ戦後70年経っても過去の克服を否定する勢力が強靱に社会に根を張っているか」という問題を提起し、「日本会議」だけがこうした問題のすべてを代表しているわけではない。もし安倍が退陣して極右色を薄めた政治家が首相になれば、その存在感は薄れていくだろう。問われているのは「日本会議」をも生んだ①憲法への敵視②歴史修正主義③隣国蔑視④「反日」という用語に象徴される偏狭なナショナリズム――等を特徴とする、戦後史総体における逆流集団の闘いのための分析である。


Ⅲ 日本会議の地域での活動(ミクロの視点)

●現在、地域で改憲の実働部隊となっているのは、「日本会議」以上にその同一組織である「美しい日本の憲法をつくる国民の会」(共同代表に櫻井よしこ、「日本会議」会長の田久保忠衛ら)に他ならない。この組織は神社本庁とその政治団体・神道政治連盟の肝いりで各地方組織が結成され、正月元旦には全国の主要神社が初詣客を目当てに、「美しい日本の憲法をつくる国民の会」の改憲署名コーナーを設置した。1000万筆を目標とする改憲署名は今年53日段階で7002501筆に達しているが、提出用ではなく、「改憲を実現するための情報提供や国民投票の際の呼びかけ」に活用するという。つまり、独自の名簿作りのための材料集めだ。

●こうした「草の根レベルの右派大衆運動」は、最近始まったのではない。全盛を極めたのが、80年代の半ばに全国的に広がった統一協会(現世界平和統一家庭連合)の政治組織・国際勝共連合主導による「スパイ防止法制定運動」だろう。おそらく、地域での動員数と集会の開催数、地域有力者層への浸透の度合いでは、現在の改憲運動は「スパイ防止法制定運動」に及ばないと思われる。また現在、地方議会の改憲決議・意見書採択は20144月段階で37の県議会、1548の市町村で実現しているが、「スパイ防止法制定」は1662だった(19866月)。

20131月段階で、日本会議の地方支部は210あるとされ、その後も増加傾向にあるが、休眠状態になっている支部もある。各地では、神社の地方組織の中に事務所を置いている例も多く、役員も神社関係者が必ず加わっている。「211」と「815」には、地方組織が神社の行事を共催しているケースが目立つ。神社本庁の力なしに、地方の「日本会議」や「美しい日本の憲法をつくる国民の会」の運動も成り立たないだろう。

●現在の「日本会議」と「美しい日本の憲法をつくる国民の会」の主要な活動は、街頭でのビラまき、集会開催、そして映画の上映会が主だ。無論、こうした活動については地域差があり、最も活発なのが大阪市と名古屋市だ(大分県は最低調県の一つ)。改憲が主要テーマの集会は、講師に櫻井や、生長の家元信者で「美しい日本の憲法をつくる国民の会」の幹事長・百地章日大教授、舞の海、ケント・ギルバード、『産経』関係者らが目立つ。また、かなりの勢いで上映会が広がっているのは、改憲ドキュメント映画『世界は変わった 日本の憲法は?』(総指揮:百田尚樹、監修:櫻井、百地 語り:津川雅彦)だ。

資料編

日本会議の「全国各地の国民運動と行事案内」(2016年)
【静岡】9月24日(土) 日本会議静岡富士支部設立総会(講師 桂福若氏)
【愛知】9月16日(金) 愛知県 憲法改正推進者の集い(会員限定)
【兵庫】9月4日(日) 憲法改正の発議を求める兵庫県民集会
【広島】9月17日(土) 広島 教育講演会(講師 野々村直通氏)
【広島】9月11日(日)憲法を改正しよう!講演会
【大阪】9月17日(土) 日本会議大阪 大阪市支部第6回セミナー
【宮崎】10月2日(日)憲法講演会(講師ケント・ギルバード氏)
【宮崎】8月15日(月)戦没者を追悼し平和を祈念する宮崎県民の集い
【広島】8月15日(月) 戦歿者追悼平和祈念の集い
【長野】9月8日(木)日本会議長野北信支部講演会
【東京】8月1日(月) 日本会議東京都本部板橋支部講演会
【兵庫】8月27日(土)教育講演会(講師 渡部 毅氏)
【埼玉】9月10日(土) 憲法講演会「目覚めよ日本、憲法改正の必要性」
【愛知】8月4日(木) 日本会議・春日井支部講演会
【東京】7月18日(月・休) 世田谷・目黒支部講演会
【福岡】 8月7日(日) 英霊顕彰・県民の集い
【福岡】7月21日(木)緊急時局講演会
【福岡】7月19日(火)日本会議福岡 筑豊支部研修会
【広島】8月6日(土)広島平和ミーティング(講師 櫻井よしこ氏)
【広島】7月31日(日)日本会議廿日市支部 時局講演会
【大阪】8月15日(月) 戦没者追悼祈念講演会
【愛知】平成28年8月5日~7日 もうひとつの戦争展
【長野】 7月16日(土) 日本会議長野中信支部記念講演会
【神奈川県】 7月23日(土)日本会議神奈川湘南東支部 講演会
【東京】日本会議東京都本部 目黒・世田谷支部「憲法講演会」
【三重】6月26日(日)日本会議三重四日市支部講演会(講師 ケント・ギルバード氏)
【愛媛】 6月9日(木) 日本会議愛媛県本部 憲法講演会
【広島】 6月12日(日) 日本会議広島三原支部 記念講演会
【広島】 6月5日(日) 日本会議広島福山支部 記念講演会
【広島】 6月19日(日) 日本会議広島中央支部 講演会
【兵庫】7月18日(祝・月) 美しい日本の憲法をつくる兵庫県民の会総会
【神奈川】6月26日(日)  日本会議神奈川定期総会・記念講演会
【東京】憲法講演会(基調講演 山谷えり子氏)
【沖縄】5月15日 沖縄県祖国復帰44周年記念大会
【東京】6月5日(日)日本会議東京都本部 調布支部総会記念講演会


1 comment:

  1. 小林はるよ1:16 pm

    私は、日本の場合、世界的にもそうですが、右傾化や国粋主義の高揚は、軍産マスコミが一体のアメリカの好戦派の容認又は扇動を背景にしていると思うのですが。つまりアメリカのお許しを得て活気づいているのです。そして、それを背景に、資金的にも潤沢になっていると思われます。たとえば従軍慰安婦問題についても、以前はヒラリークリントンも「性奴隷」だとして強い拒否と嫌悪を示していたと思います。今はアメリカは日本の右傾化、国粋主義の蔓延を利用しようという方向だと思います。日本の右翼は国粋主義ではあるけれど、民族主義的では全然ない。

     日本の伝統、伝統と言うけれど、大学の授業を英語でやるという政策には全然反発しない。そのうち、黒い街宣車も英語で叫ぶようになるのかもしれない。

     成澤さんの論考では、ドイツの戦争責任の取り方が理想化されていると思います。この点、前回の池田さんの論考とは違っています。ドイツは日本よりはまし、とは言えるでしょうが、現在のドイツが中東問題で被抑圧者側に立っているとはとうてい言えないことを考えると、そんなに理想化できるものでしょうかと思います。

    ReplyDelete