「日本カトリック正義と平和協議会」ニュースレター「JP通信」、26年6月号に掲載された記事を、許可を得て転載します。
沖縄人を襲った日本人
4月11日と12日、沖縄の米軍嘉手納飛行場で「アメリカフェスト」が開催された。嘉手納基地が「友情と協力の精神のもと」に門戸を開放し、航空機や兵器を展示して地元の人たちと交流しようという恒例のオープンハウス行事である。県外からも参加者が来る。
軍事環境研究者の宮城秋乃さんはアメリカフェストの入口で、一人で抗議行動をしていた。「NO
WAR IRAN」「米国・米軍は戦争やめろ」と書いたプラカードを掲げ、スピーカーで「米国はイラン攻撃をやめろ」と訴えた。通りがかる日本人は宮城さんに罵声や冷笑を浴びせたが、中には好意的な反応もあった。
事件が起こったのは2日目の午後だった。電動車椅子に乗った男性が「わー!」と声を上げながら、背後から突っ込んできた。追突した衝撃で宮城さんは倒され、足と左手全体を負傷させられた。誰も声をかけてくれず、宮城さんは自分で110番通報した。現在、怪我の治療中である。
加害者は岐阜県の男性で、車椅子は那覇空港でレンタルしたそうだ。沖縄の作家の目取真俊氏はブログで書いた。「岐阜県から来た日本人(ヤマトゥンチュー)が、沖縄に米軍基地の負担を押しつけていることにやましさを感じることもなく、抗議している沖縄人(ウチナーンチュー)に暴力をふるう。これは単なる個人の問題ではない。」
そう、これは構造の問題だ。日本は、米国という戦争帝国に奴隷のように仕え、米軍基地の大半を沖縄に押し付けながら、対イラン戦争をはじめとする世界中の侵略戦争に加担している。この男がやったことは、そのような日本人が、あらがう沖縄人を暴力で黙らせようとする、政治的意図を持ったテロ行為である。
対イラン侵略戦争は、米国が、イラン南部の小学校にトマホークミサイルを撃ち込み、150人を超える子どもたちや教員を惨殺したことで始まった。宮城さんの行動は、侵略戦争をやるな、子どもを殺すなという、当たり前の抗議である。
それなのに、宮城さんの被害を報じた沖縄タイムスのXの投稿には、宮城さんが「前科者」で、「活動家」だから自業自得であるかのようなコメント、さらに、これに乗じて沖縄の平和運動を全否定するようなコメントが何百もついた。激しい被害者バッシングだ。
このような政治的意図を持つ暴力事件はここのところ連続している。3月19日、朝鮮総連に右翼団体の男が斧を投げ込んだ。3月24日、中国大使館に現役の自衛官が刃物をもって侵入した。どちらも一歩間違えば大惨事になっていた可能性のあるテロ事件だ。
宮城さんを襲った岐阜県の日本人は、電動車椅子という、本来は人を助けるべき器具を武器に転じさせた。これらはいずれも、米国に追随し、隣国を敵視し、琉球列島を要塞化し、戦争に突き進む高市政権を背景にした犯罪と見ることができる。
これらの事件について、日本メディアの報道は甚だ不十分であり、暴力に加担しているとしか思えない。朝鮮総連の斧事件はほとんど報道さえされなかった。中国大使館の事件は、中国がこれを利用して日本をさらに非難する材料にしているかの如く報じられた。岐阜の男が宮城さんを襲った事件は現時点(4月27日)では、沖縄タイムスが報じただけのようだ。
日本人がわざわざ沖縄にやってきて戦争に抗議する沖縄人に直接の危害を加えるという事件は前代未聞である。私を含め日本人はこれを自らの問題として向き合わなければいけない。いま、加害者の側に立つのか。被害者の側に立つのか。私たちは問われている。
(「JP通信」258号ー済州島ー2026年6月 11頁より 転載)
★JP通信にはいままで何度も私の記事を取り上げていただき、深く感謝しております。このブログに転載させていただいた記事のリンクをここに記しておきます。
「先住民族に対する『ジェノサイド』と教皇の『謝罪』」ー「日本カトリック正義と平和協議会」の『JP通信』10月号より
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