Wednesday, August 05, 2026

玉城愛:運動と性暴力の問題 「wamだより」vol.63 から転載 TAMAKi Ai: Sexual Violence and Social Movements - Reposted from WAM Newsletter, Vol. 63

「wamだより」の表紙の一部

戦時性暴力、とりわけ日本軍性奴隷に焦点をあてた記憶と活動の拠点として2005年6月に東京・新宿区にオープンした、アクティブ・ミュージアム「女たちと戦争の平和資料館」(wam)の会報「wamだより」vol.63 (2026年7月)より許可を得て転載します。(写真は転載していません。)

このサイトでは、社会運動の中の性暴力を多く取り上げてきました。「平和」「人権」の名の下に行われる活動の中で性暴力、セクシュアルハラスメント、性差別がいまだに横行しています。声を上げようとすると、運動のために我慢しろとか、右派を利するだけだとか、黙らせ圧力が強まります。残念なことにそのような黙らせ圧力の中には差別を内面化した女性によるものも少なくありません。そういった中、声を上げ続けてきた女性たちの一人、玉城愛さんによる本質に迫る文を、ここに転載したいと思います。

「辺野古沖転覆事故」で亡くなった金井創氏も、生前性暴力を行っていたとの被害者による告発が、琉球新報で取り上げられました。私はこの件について、被害者から直接話を聞いた友人から数年前に話を聞いていました。何かしたほうがいいのではないかと思いながらも、自分は行動しませんでした。そのことによって自分も「黙らせ圧力」に加担していました。自分が今できることといえば、この件について運動側からも出ている二次加害的な発言に対して批判し、抗議し、被害者の立場に立った発信をしていくことではないかと思っています。

本文より抜粋します。


家父長的な社会 において、性暴力は相手を支配するための手段であり武器 として使われてきた。その暴力性は、「非暴力」や「反戦」の 思想からどれだけかけ離れたものでしょうか。

 

玉城さんは、40年前以上も前に沖縄の女性たちが運動内の性差別に声を上げてきたことに触れながら、「記録」に希望を見出しています。

文末に、いままでこのサイトで扱った関連記事のリストを載せています。私も、「記録」の試みの一端を担うことができればと思っています。


運動と性暴力の問題


玉城愛(沖縄女性社会運動史研究)


「運動」が見えなくしているもの 

 先月 6 月 17 日付の『琉球新報』で、金井創氏(故人)が過 去に性暴力の問題を起こしていたことが報道されました。 社会運動の中にいる男性たちの性差別問題や性暴力の問題 をよく見聞きしていたので、「またか」と思いました。

 「正義」の名の下に振り上げられる拳は国家権力に向け られるものであると同時に、家庭や運動内部で、時には地域で女性に振りかざされることもありました。まるで「日 米安全保障に反対することは男性のロマンであり、必ずしも女性の人権に結びつくものではない」と言われているような気持ちです。その状態は、米軍専用施設や新基地建設 に反対する運動が一部の男性の「生きがい」と化し、自分の名声をあげるための活動にすぎないということです。 

 軍事主義や家父長制は歴史や文化、芸術の破壊、女性や こどもの人権を奪ってしまう。軍事を用いた「安全保障」が 人間の生命や耕してきた土地を破壊する。家父長的な社会 において、性暴力は相手を支配するための手段であり武器 として使われてきた。その暴力性は、「非暴力」や「反戦」の 思想からどれだけかけ離れたものでしょうか。仮に「人権は 大事」だと加害を加えた側が思っていたにせよ、性暴力の 加害を与えた後も堂々と運動の場に居座る男性自身の人権 感覚と、それを許容してしまう「運動」そのものが孕んでい る問題を問い直し、公の問題にしていかなければなりせん。 

 軍事化された米兵の身体と、家父長制のなかで男性性を内面化してきた日本人男性及び沖縄男性の身体。自らの特 権意識と男性性をそぎ落とさなければ根本的な差別の問題 は変えられません。なぜなら無意識のうちにも、誰かを圧 倒させてしまう暴力へと深く結びついているからです。 

声を上げ続けてきた沖縄女性たち 

 運動の内部に潜む差別や暴力の問題は、最近から始まっ たものではありません。1980 年に沖縄で結成された「80 年 沖縄女の会」は、家庭や学校、職場、地域、組合運動など、あらゆる場所に性 差別が存在していると指摘したグルー プです。特に、労働組合の青年部にいる男性たちへの批判は今日の問題に繋がっ ています。反米軍基地を掲げて、売買春の問題がなくならないのは米軍基地があ るからだと叫び訴えた組合青年部の男性らが、デモが終わった後その足で風俗街へ向かう実態を明らかにしま した。

 また、高里鈴代さんがある 集会で男性に言われた「基地 問題を女性問題に矮小化するな」といった発言もそうです。 沖縄で暮らす女性たちにとっ て軍事主義を纏った安全保障の問題は女性やこどもの人権問題そのものです。 

 筆者自身も、運動の中でハラスメントを受けたことがあ ります。当時市議をしていた 30 代男性に「AV 女優に似ている」と言われ、「カンパするから僕と連絡をとりあってほ しい」という東京在住 50 代半ばの男性も出現しました。「妻 と激しいセックスをした」話をしてきた大阪在住の 70 代男 性もいました。運動の場にはクソ野郎ばかりしかいないの だろうかと頭を抱えそうになります。 

記録がもたらす希望 

 運動が目的以外のところでつまずいてしまう時、わたし は「80 年沖縄女の会」の活動に支えられました。40 年以上 も前に、運動の内部における性差別の問題に声をあげてい た女性たちが存在していて、しかもその女性たちの史資料 が残されていることに希望を感じました。

  わたしは沖縄の政治史において住民たちによる運動が重 要な役割を果たしてきたと認識しています。運動によって 人々は暮らしと土地を守り、自由を主張することはわたし たちの権利です。戦後の貧しい生活を生き延び、1975 年 の国際女性年やそのあとに続く国連女性の十年をきっかけ に、性別役割分業や性差別に反対してきた女性たちが積み 上げてきた結果です。記録されたあしあと、まだ記録され ていない女性たちの歴史には、十分な価値があります。 

 最近、沖縄で生まれ育ったこどもたちにどんな風景や思想を残したいか考えるようになりました。温かいご飯を食 べて、安心して眠る場所があること。信 頼できる大人や友人にであうこと。小さな希望を積み重ねて、ゆっくり大人にな っていくこと。耕した豊かな土地が侵略 されて破壊されてしまうような世界では なく、新緑が芽吹いて花が咲き、実がな るような優しい場所を、自分の身の回り から築いていきたいと思います。

(転載以上)

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