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Thursday, September 17, 2026

ギルバート・ドクトロウ博士:プーチン大統領はやっと本気で戦争を終わらせようとしている Dr. Gilbert Doctorow : Putin Taking the Gloves Off (to end the war once and for all)

9月16日のナポリターノ判事のYouTubeに登場したギルバート・ドクトロウ氏(ブリュッセルを拠点とする独立系の政治アナリスト。コロンビア大でロシア史博士号取得)の見解です。この人はどちら側にもつかずロシアや欧州現地での冷徹な観察にもとづく分析をする人で、ナポリターノのゲストの中では異色の存在といえると思います。

ドクトロウ氏の分析には日本を含む西側メディアでは見ることもない事実や洞察がいつも含まれております。先日ロシアがウクライナとポーランド国境を通る列車を襲撃したことの意味、いままで非常に抑制的であったロシアが、ウクライナが「パンドラの箱をあける」攻撃をしたことから「手袋をはずして」本気になっていること、ウクライナは海から、陸からの補給を絶たれ窮地に追い込まれており、冬を越せない可能性がある、そのせいで終戦が本当に近づいているのではないか、という見方です。だからゼレンスキー大統領も内心は必死で、「緊張緩和(デ・エスカレーション)」を強調しているのではないかと見ています。また、昨日アップしたラブロフインタビューにも出てきた、米国が裏切る結果となった「アラスカの合意」の内容についてもここでふたたび語られています。トランプ大統領がウクライナ戦争を終結させようという純粋な気持ちで二期目を迎えたことは本当であったろうが「ディープステート」CIAが妨害しているという見方をしています。ウクライナがロシア攻撃のために必要としていたインテリジェンス提供をトランプはほんの数日しか止められなかったことからも明らかであろうと。いつものようにAI訳に手を入れました。太字は乗松による強調です。@PeacePhilosophy

   

 

ギルバート・ドクトロウ:プーチン大統領が抑制を解く


ロシアの軍事戦略

アンドリュー・ナポリターノ判事: ギルバート・ドクトロウさん、ようこそ。親愛なる友人よ、ご存じのように、私は先日ロシアで10日間を過ごし、その間、何度もあなたのことを考えました。一緒に行けたらよかったのですが。さて、鉄道駅で起きた出来事について、少し時間をかけて分析したいと思います。正確には、ポーランドとウクライナの国境近くの駅をロシア軍が攻撃した、その前後に起きたことです。ボリス・ジョンソンがそこを通過した直後で、デービッド・ペトレイアス将軍が通過する予定だった直前でした。全体をどう見ていますか。これは明らかに意図的だったでしょう。明らかに何かを伝えるためだった。誰に、何を伝えようとしたのでしょうか。

ギルバート・ドクトロウ: ええ、まったくそのとおりです。これはメッセージ的行為でした。もしロシア側が、ここに来ていた国際法に最もはなはだしく違反した者たちや、ウクライナ人をこの戦争に駆り立て、声援を送ってきた者たちを殺害したければ、それはできたはずです。ペトレイアスを殺すことも、ジョンソンを殺すこともできた。しかし、そうしませんでした。ご存じのとおり、クレムリンの指導部は非常に慎重です。敵を暗殺することには関心がない。敵を打ち負かすことに関心があるのです。だから彼らを殺さなかった。殺そうと思えば殺せることを示し、そのメッセージは広く伝わりました。

昨日、ベルギーの主要なフランス語紙の一つ『ル・ソワール』を読んでいたのですが、この件を比較的大きく取り上げていて、二つの点を指摘していました。一つは、これはメッセージだったということ。もう一つは、ロシアが現在、国境をどのように封鎖しようとしているかを示したということです。この二つ目については、あの駅への攻撃をめぐる米国やその他の西側諸国での議論では、あまり取り上げられていません。私は1、2カ月前、ロシア側はドローンを使った消耗戦から、ウクライナへの西側の補給をすべて遮断する「締めつけ」の戦略に転じつつあるようだ、と指摘しました。ロシア軍人の生命に大きな犠牲をもたらす大規模な地上攻勢を行わず、ウクライナを降伏に追い込むという戦略です。

そのことに気づいたあと、気になったのは、この締めつけ策の半分しかすぐには実行されなかったことです。実行されたのは、爆撃やドローン攻撃、ウクライナの黒海沿岸の港湾施設、そしてドナウ川を挟んでルーマニアの対岸にある、ドナウ川経由の積み替え貨物を受け入れる港の破壊でした。ウクライナへの西側の補給について、海路と河川ルートが遮断され、黒海では船舶が攻撃されていました。ウクライナの港に近づく船も攻撃されました。こうして、ウクライナに西側の弾薬を運び込む最大の補給路は、事実上断たれたのです。

しかし、陸路については、数週間にわたって何の動きも見られませんでした。ポーランド南部からウクライナ西部のリヴィウ地方へと続く陸路は、西側からの弾薬輸送の主要ルートでした。ウクライナ軍が西側の補給に大きく依存していることも忘れてはなりません。完全に依存しているわけではありません。短距離ドローンは自国で何千機も生産しており、戦場で常時使われ、かなりの効果を上げています。ロシア軍が側面から戦車を大量投入するのを妨げているからです。ただし、ウクライナ側が使ってきた兵器のうち、とりわけ大きな損害を与え、ミサイルの代わりとして非常に有効なのは、長距離の精密攻撃ドローンです。これらは英国から、破壊される前のキエフ近郊にあった米国企業所有の工場から、そして西側のほかの供給元から得ていました。完成したドローンや組み立て用部品がウクライナに届かなくなれば、戦争を長く続けることはできません。「長く」とは、数週間からせいぜい数カ月以上、という意味です。

ロシア国内に大きな被害をもたらすだけの数のドローンがなければ、数でも補給でも勝るロシアの地上軍に対して、ウクライナ側は抵抗を維持できません。ですから、著名な人物たちの命が危険にさらされたために新聞で報じられた今回の攻撃が、ロシアには国境ぎりぎり、800メートルの地点まで攻撃できるという実演でもあったのは、非常に興味深いことです。私の見た米国の新聞には書かれていませんでしたが、昨日の『ル・ソワール』には、国境近くの駅周辺でドローン攻撃が2回あり、一つは国境から2キロ、もう一つはわずか800メートルの地点だったとありました。そこでポーランド側が「ロシアはEUとNATOのすぐ東側を攻撃している」と警鐘を鳴らしたのです。確かに近くまで来ましたが、きわめて制御された形でした。

ナポリターノ判事: これは、ロシアの情報収集能力が驚くほど広範囲に及んでいることの表れでもあると思います。誰がどの列車にいつ乗っているかを知っていたわけです。あなたには意外ではないかもしれませんが、私には目を見張ることでした。どうやって知ったかはともかく、知っていたことが重要です。元CIA長官で四つ星の将軍であるペトレイアスは、ロシア側が知っていると分かっているべきでした。ジョンソンが何を知っているのかは分かりません。道化のように見えますが、実は聡明な人物かもしれない。情報活動について理解している可能性もあります。ロシアの情報機関が、誰がいつどこにいるかを把握していたことは、あなたには驚きでしたか。

ドクトロウ: まったく驚きではありません。ウクライナの高官同士の話し合いに深く入り込む必要はなかったと思います。誰がいつごろウクライナへ行き、いつごろ出発するかは公開情報から分かるでしょうし、列車の外観も分かります。時刻表を追うこともできます。もっとも、そのうち何人かは通常のワルシャワ発着の時刻表にはない特別列車を利用していました。それでもロシア側は、列車がどこにいるか、かなり正確に見当をつけられたでしょう。列車がどの駅に、どれくらい停車するかも分かっています。ですから、ウクライナの最上層にまで浸透している必要はなかったと思います。ロシア側は自分たちの能力を示したかっただけです。

考えてみてください。キエフの軍事情報機関のトップの執務室がどの窓なのか、どうして正確に分かったのでしょう。その窓を狙ってドローンを撃ち込み、室内に入れたのです。もちろん、こういうことは調べれば分かります。だから私はとくに驚いていません。むしろ驚きであり、少なくともここ1、2年、非常に残念だったのは、ロシア側がこの能力を使わなかったことです。プーチン大統領が、ゼレンスキーによって「パンドラの箱」が開かれた(ウクライナがロシアの民間流通施設を攻撃したこと)、これからは相応の対応を取る、と宣言するまで使わなかった。その発言以前、ロシアは、ウクライナに大きな打撃を与え、西側の支援者や外交目的で訪れる人々すべてを危険にさらせるだけの能力がありながら、それを発揮していませんでした。

ナポリターノ判事: 昨日のゼレンスキー大統領の発言をご覧ください。緊張緩和について語った、なかなか興味深い、意外な発言です。

緊張緩和とインフラ

ウォロディミル・ゼレンスキー大統領〈映像〉: 現在、重要インフラに対する攻撃の相互停止について、米国から有力な提案が出ています。これが緊張緩和の最初の一歩、すなわちロシアによるわが国の重要インフラへの攻撃と、それに対するわが国の報復攻撃を止める一歩となるのであれば、ウクライナは緊張緩和を支持する用意があります。ロシアの戦時経済に対するわが国の的確な反撃によって、ロシア側が圧力を感じていることが分かります。これまでのところ、ロシアが戦争の終結を真に望んでいる様子は見られません。しかし、米国のパートナーが、ロシアにはこの殲滅戦争を終わらせる真の用意があり、それが誠実で長期的なものであると確認できれば、ウクライナも緊張緩和に向けた措置を取ります。平和が必要です。エネルギー、食料の供給路、重要インフラ。これらすべてを攻撃停止に関する議論に含めなければなりません。選挙のためだけではなく、将来にわたって通用する、強力で公正な解決策が必要です。パートナーからの具体的な提案を待っています。

ナポリターノ判事: エネルギー、食料の供給路、重要インフラ。この三つともウクライナには不足しています。そして冬が来ます。

ドクトロウ: これを少し解きほぐしたいと思います。彼の発言の背景にはいくつかの問題があります。一つは、この件で米国からどの程度の支持を得られるか。もう一つは、トランプ氏がゼレンスキーに対して、ロシアの製油所への攻撃をやめるよう求めていることです。世界的な軽油の供給に悪影響を及ぼし、それが米国での軽油価格の大幅な上昇につながっているからです。いまや1ガロン6ドルを超えています。もっとも、皆あまり口にしませんが、ここブリュッセルをはじめEU各地では1ガロン12ドルです。米国が風邪をひくと、欧州では肺炎になるわけです。

しかし、話を戻しましょう。トランプは「世界の軽油価格に影響するから、やめてくれ」と言ったのです。ゼレンスキーがそれを口にしなかったことに気づきましたか。彼は「重要インフラ」と言いました。まるで、あらゆる重要インフラへの攻撃を全般的に緩和することが議題に上っているかのようです。トランプが提案したのはそういうことではありませんし、プーチンが一応同意したのもそういうことではありません。

では、なぜゼレンスキー大統領は、重要インフラへの攻撃の停戦、あるいは停止が何を意味するのかについて、これほど曖昧で不透明な説明をするのでしょうか。最大の理由は、ウクライナがひどく苦しんでいることです。ゼレンスキーの背後で大きな影響力を持つブダノフ(ウクライナの軍人で、2020年から軍事情報機関のトップを務め、2026年1月にゼレンスキー大統領の大統領府長官に就任したキリロ・ブダノフ)自身によれば、ロシアはキエフの倉庫施設の90%を破壊しました。市内の至るところで食料が不足しているのはそのためです。ロシアはまた、キエフの集合住宅を暖め、家庭で使う温水を供給する水道・暖房設備の大部分を破壊しました。しかし、迫る冬に向けて主な問題となるのは暖房です。

私の見るところ、ロシアの戦略は現在、二つの面で非常によく機能しています。一つは先ほど話した「締めつけ」です。海路と陸路による西側からウクライナへの弾薬の補給を遮断すること。もう一つは、とくに冬のキエフを人が住めない場所にしてしまうことです。キエフは小さな地方都市ではありません。大都市であり、住宅のかなりの部分は高層建築です。20階に住んでいたら、水や薪を運び、暖を取るために住居内で禁じられた火を起こそうとしても、1日に何度も階段を上り下りすることはできません。単に大変なのではなく、不可能です。これは1944年のベルリンとは違います。あのころのベルリンには、人口の大きな部分を収容するこのような高層住宅はありませんでした。住めなくなるのです。ブダノフらは郊外へ避難するよう人々に勧めてさえいますが、それも非現実的です。誰もが田舎に家を持っているわけではなく、親類の家に受け入れてもらえるわけでもありません。そうなると実質的には国外へ出るしかなく、西欧に大きな混乱を生みます。これはベルリンの工場を爆撃するのとは違いますが、極めて効果的です。戦争は早期に終わると思います。

ナポリターノ判事: 映像を一つ流したいと思います。今週初め、ニューデリーで(BRICSサミットで)のプーチン大統領の発言を聞いたときも、あなたのことを思い浮かべました。かなり驚くべき発言があり、そこに込められたメッセージを読み解いていただきたいのです。

西側諸国についてのプーチン発言

ウラジーミル・プーチン大統領〈映像〉: 欧州全体で起きていることは、いわゆる西側による構造的な過ちの結果だと思います。NATOの東方拡大はわれわれには受け入れられないと、何度も言ってきました。しかし、ついにウクライナにまで到達した。これこそが、今日ウクライナで起きている悲劇の真の根本原因です。責任は西側のグローバリストのエリートたちにあります。いま彼らは、ウクライナ領内に軍隊をどう展開するか考えていると言っています。それはロシアとの戦争を意味します。私の理解では、欧州諸国の市民は何が起きているか分かっています。

ナポリターノ判事: 「ロシアとの戦争を意味する」。現在の、あるいは戦後のウクライナに、目的を問わず外国軍が駐留することを指しています。どう思われますか。

ドクトロウ: その発言には、私はそれほど興奮しませんでした。原則として、私が注意深く見ているのはロシアが何を「しているか」であって、何を「言っているか」ではありません。プーチン大統領を含め、ロシア側はこの3、4年間、いろいろなことを言ってきました。しかし、その(ロシアにとっての)「レッドライン」の数々は(西側によって)どんどん越えられてきてしまったのです。それによって、ロシアが抑止力を示す力は弱まりました。いまロシアはそれを逆転させつつあります。言葉はずっと厳しくなっており、あなたが示した例もまさにそれを表しています。言葉はさらに厳しくなりましたが、行動も強硬になりました。私が見ているのは、彼らの言葉だけではなく、現在の行動です。

彼が西欧について語ったことを細かく見てみましょう。もちろん、EU加盟27カ国の指導者たちの大多数は「愚か者を乗せた船」のようなものです。自らの破滅を招こうとしている。ロシアが本当に追い詰められたときの破壊力を、理解し始めてもいません。ただ、その中にも愚かではなく、しかも反対の意思を表明する勇気のある人が数人います。幸い、私の住む小さな国は、そうした一人であるデウェーフェル(ベルギー首相)が率いています。そういう意味では、欧州の全員が正気を失ったわけではありません。

プーチン大統領は(今回「西側」と言っているのは)間接的にエマニュエル・マクロンを指しているのだと思います。マクロンはこの「愚か者を乗せた船」の中でも最大の愚か者で、ウクライナへの軍隊派遣を公然と語っています。ただし、西側でウクライナを支持する人々はおおむね、戦闘が終わったあと、平和維持部隊として兵士を送ると言っています。当然、ロシア側はそれを一蹴しているので、実現するはずがありません。それが条件に入れば、和平条約も停戦も成立しないからです。

ナポリターノ判事: なるほど。ロシアで私が経験した興味深いことの一つに、ラブロフ外相との3時間にわたる夕食があります。食卓には私を含めて12人から15人ほどいました。

アンカレッジでの合意

ナポリターノ判事: そこで外相は、私がそれまで彼から聞いたことのないほど明確な言葉で、ロシア側の認識を語りました。プーチン大統領とトランプ大統領は、アンカレッジで米国側の提案に基づいて合意し、握手を交わした。ロシア側は米国が合意を守ると期待していたのに、米国側はその後、合意から離れてしまった、というのです。ラブロフ外相によれば、その提案は、ウクライナを恒久的に中立化し、ウクライナ全土でロシア語とロシア正教会を認め、ドンバスとクリミアを恒久的にロシアに帰属させるというものでした。もともとは米国側の提案で、プーチン大統領は非公式の場でいったん拒否したそうです。その後、ラブロフ外相を含む側近たちが受け入れるよう説得しました。

こうしてロシア側は受け入れる用意をしてアンカレッジに赴きました。そして実際に受け入れ、ラブロフ外相の目の前で握手を交わしたのです。プーチン大統領は通訳を介してトランプ大統領に「ゼレンスキーはどうするのか」と尋ねました。トランプ大統領は「ゼレンスキーのことは心配するな。私の言うとおりにする」と答えました。ところがアンカレッジを離れると、何も起きなかったのです。ここで、あの夕食の席で私たちに非公式に話したことを、ラブロフ外相が公の場でも裏づける発言をしています。

セルゲイ・ラブロフ外相〈映像〉: これは本気で言っているのですが、もし米国が、アンカレッジでの重要な合意から後退していなければ、そして欧州が米国をそうした重要な約束から引き離していなければ、私たちはもう丸1年、戦争の影のない平和の中で暮らしていたはずです。今日、私たちがこのような状況にあるのは悲劇です。それは明白な事実です。ここからどういう結論を引き出すかはあなたたちで判断してください。

ナポリターノ判事: あなたの考えは?

ドクトロウ: これもロシア側の視点から見る必要があると思います。今回の選挙や、ドナルド・トランプが初めて当選した選挙よりもずっと前にさかのぼって、大統領をめぐる米国政治をロシア側が全般的にどう見ているか、ということです。彼らは「ディープステート」を注意深く観察しています。トランプの2期目が始まった当初から、彼らはトランプ本人の誠意を疑ってはいなかったと思います。私も、この件で仲介役を務めようとする彼の誠意は疑いません。実現すれば彼にとって手柄になるだけです。しかしロシア側は、彼にはやり遂げられない、ディープステートがそれを許さない、と強く確信していました。ディープステートとは誰か。もちろんCIAです。

ご存じのとおり、CIAはウクライナに大きな拠点を持っています。ウクライナがロシア国内に対してドローン攻撃を続けるうえで極めて重要な米国の情報提供を、トランプがスイッチ一つで止められるなどということは、CIAには受け入れられません。攻撃の対象はロシアの奥深くだけではありません。トランプがCIAを押し切れば、議会で途方もない騒ぎになるでしょう。彼がそんな騒動を起こして得することはありません。ですから、ロシア側から見れば、問題はトランプ一人だけではない。問題はディープステートです。トランプが約束を守れないというだけではありません。約束を守ることを許されていないのです。

ナポリターノ判事: では、米国政府を動かしているのは誰なのですか。ホワイトハウスにいる、あの単細胞の人ではないのですか。

ドクトロウ: とはいえ、ホワイトハウスのその単細胞には大きな発言力があります。最も破滅的な過ちのいくつか、つまりイラン戦争は、その単細胞(トランプ)が犯したという点では意見が一致するでしょう。ですから、害を及ぼせるところでは、彼の責任をきちんと認めましょう。しかし、彼には良い面もあります。私は、彼がこの戦争を終わらせ、何らかの合意に達したいと心から望んでいたと思います。それは本心だったと思います。ただ、CIAによって手を縛られているのです。就任して最初の数週間に、彼が(ウクライナに対する)インテリジェンス提供を停止できたのはどのくらいの期間でしたか。数日だけです。それで終わりでした。そのとき決定権を握っていたのが彼だとは思いません。

ナポリターノ判事:いやあ、ギルバート・ドクトロウさん、非常に興味深いお話でした。親愛なる友人よ、これからご旅行に出られるそうですね。道中どうぞお気をつけて。また来週お会いできるのを楽しみにしています。ありがとうございました。

ドクトロウ: ありがとうございました。

(翻訳以上)

Friday, July 31, 2026

ウクライナ戦争も、イラン戦争も、「米国とシオニズム勢力による"ユーラシア枢軸"への戦争」、そして最終標的は中国:ペペ・エスコバル

イラン情勢が激しく動いています。残念ながらメインストリームメディアの報道を読んでいても本当に何が起こっているかはあまりわかりません。パキスタンやイランの当事者に直接のパイプを持っているジャーナリスト、ペペ・エスコバルと元CIAアナリストのラリー・ジョンソンの情報は非常に貴重です。7月29日の、ナポリターノ判事の番組でのペペの発言をAI訳しました。米国イスラエルが仕掛けたイラン戦争の手綱は完全にイランが握っており、トランプが、面子をつぶさずに収束できるかどうか、藁をもすがるように毎日、パキスタンのムニール元帥に電話しているということです。中間選挙が迫っているというだけではなく金融各社の分析によると戦略石油備蓄が8月中旬までしかもたない、これがトランプにとってのタイムリミットだという指摘もあります。いまやトランプは多極化勢力を「ユーラシア枢軸」という言葉を使って敵視しているという指摘も重要です。ロシア、中国、イランです。ウクライナ戦争とイラン戦争の関連を証明するかのごとくゼレンスキーはカスピ海でイラン船を攻撃しました。米国を筆頭とする西側連合の、多極化勢力に対する世界規模の戦争はすでに始まっているのです。このビッグピクチャーを把握するために、10年以上も、「机上アナリスト」とは違いユーラシア諸国に足を運んで取材してきたペペ・エスコバルの発信から目を離せません。

以下、AI翻訳に手を入れたものです。翻訳は一部冗長なところは省略しています。アップ後修正する可能性があります。@PeacePhilosophy 

    

ナポリターノ判事: トランプ大統領の威嚇や強硬な発言は、イラン指導部にどのような影響を与えているのでしょうか。

ペペ・エスコバル: ゼロどころかマイナスです。彼らはまったく意に介していません。しかし、外交のための小さな可能性でも残されている限り、その可能性を閉ざすことはしていません。そして、そのことが今週月曜日にラワルピンディで起きた出来事につながります。ラワルピンディはイスラマバードの姉妹都市で、パキスタン陸軍総司令部が置かれている場所です。さて、今週月曜日にラワルピンディを訪れたのは誰だったと思いますか。米国の代表団です。彼らは一つの提案を持ってきました。米国から直接持ち込まれた提案です。しかし、私たちの情報源であるパキスタン側の仲介者によれば、その提案はJ・D・ヴァンス副大統領のオフィスから出たものだということでした。

ナポリターノ判事: つまり、それはクシュナーやウィットコフではなかった。

ペペ・エスコバル: ええ、違います。違います。違います。代表団のメンバーが誰だったのかについては明らかにされませんでした。ラリーと私に対して「おそらくJ・D・ヴァンス副大統領のオフィスから出た提案だ」と確認してくれた情報源は一人だけです。しかし、彼らが持ってきた提案は非常に率直なものでした。「われわれはMOUに戻る用意があるかもしれない。ただし、米国側の条件でだ」というものです。パキスタン側は月曜日にその提案を聞き、直ちにイラン側へ伝えました。イラン側はそれを見て、「これは冗談なのか」と言いました。

なぜなら、それはイランが最初から言い続けてきたことと正反対だったからです。まず、すべての戦争を終わらせることについて協議する。次にホルムズ海峡について協議する。その後、凍結されたわれわれの資金を返還し始め、制裁を緩和する。そして最後に核問題について協議する。それがイランの立場です。ところが米国は、その順番を百八十度ひっくり返そうとしている。最初から核問題を議題にしようとしているのです。

ですからイラン側は当然、「今週はそれには応じない。われわれはいつでもMOUに戻る用意はある。なぜなら、MOUを離れたことは一度もないからだ。MOUを壊したのは米国だ。MOUを壊したのは米国大統領だ。われわれは戻る。しかし戻るのは、これまで協議してきた内容と、双方がMOUの14項目を履行するという約束に戻るということだ」と答えました。現在の状況はまさにそこです。私たちは再び膠着状態に陥っています。そしてもちろん、仲介役であるパキスタンは、いつものようにその板挟みになっています。

ナポリターノ判事: 私たち共通の友人であり同僚でもあるジョン・ミアシャイマー教授は、「イランは、凍結されている資産がすべて解除され、その資金がイランの銀行口座に戻るまでは、米国とは話し合うべきではない」と言っています。イランは、まず米国にそのような誠意ある行動を取らせ、それから初めて交渉に応じるべきだ、と。そうでなければ、トランプ大統領に約束を守らせることはできません。

ペペ・エスコバル: そのとおりです。まず第一に、ジョンは正しい。そしてイランもそのように考えています。しかし、それでもイランは、たとえばホルムズ海峡をめぐる技術的な問題について話し合いを始めることは検討しています。ちなみに現在、この問題は主としてオマーンが扱っています。イランとオマーンは、ホルムズ海峡について考えられるさまざまな仕組みをめぐり、技術的な協議を続けています。ですから、米国がその協議に加わる可能性もあります。しかし、そのためにはまず、米国が自らの約束に目を向け始めなければなりません。

そして、そのことはMOUの14項目にはっきり書かれています。まず制裁緩和を始めること。そして少なくとも、カタールの銀行にある60億ドルを返還し始めることです。カタール側は以前、その作業を進めていました。しかし結局、米国側は「いや、それはやめろ」と言ったのです。

ナポリターノ判事: トランプ大統領の威嚇や強硬な発言に対して、パキスタンはどのように受け止めているのでしょうか。

ペペ・エスコバル: 判事、これは実に興味深い話です。私たちが連絡を取り合っている情報源や仲介者は、ラリーにも私にもこう言いました。「トランプは何日もの間、毎日のようにムニールに電話をかけていたのです。」

ナポリターノ判事: ムニールとは誰ですか。首相ですか。

ペペ・エスコバル: アシム・ムニール元帥です。パキスタン陸軍トップです。

ナポリターノ判事: 陸軍トップですね。パキスタンでは、その地位は首相以上の権力を持っていると言われています。

ペペ・エスコバル: そのとおりです、判事。パキスタンで最も権力を持っている人物です。疑いようがありません。シャバース・シャリフ首相より、はるかに強い権限を持っています。

ナポリターノ判事: 陸軍トップに毎日電話をかけて、何と言っていたのですか。

ペペ・エスコバル: 要するに、こう言っていたのです。「イランとの交渉に私を戻してほしい。ただし、私が屈辱を受けるような形では困る。」これは私たちの情報源の一人が使った表現です。「私は屈辱を味わいたくない。」彼にとって「屈辱」とは、実際には外交を行うことなのです。

というのも、彼が署名したMOUは、トランプ大統領が署名した文書だからです。つまり、イランのペゼシュキアン大統領と米国大統領の双方が約束した文書なのです。ところが米国は、そのMOUに書かれた14項目の約束を一つとして履行しませんでした。そこに問題があります。そして今、彼は時間との勝負を強いられています。しかも、誰もが知っているように、その「時計」を握っているのはテヘランです。

MOUとは、ここ数週間、いや数か月にわたりイランが主張してきた内容に沿って手続きを定めた文書にすぎません。もちろん米国側はそれを読み、修正を加え、さらに修正を重ね、最終的には署名しました。つまり理論上は、その文書に同意したということです。しかし実際には、その内容を一つも履行しませんでした。

ですから、イランが言っていること、そして月曜日にパキスタン側へ伝えたことは非常に明快です。「米国の提案は見た。しかし、われわれの提案はその正反対だ。それでも、この扉は開けておく。」アラグチ外相は公の場に出るたび、いつも同じことを言っています。「われわれは外交に反対しているのではない。しかし、その前提には相互の尊重がなければならない。」そして、約束は双方のものです。双務的なものです。

一方だけが約束を破ることはできません。あなた方が約束を破るなら、われわれも約束を破ります。一方的なやり方の時代は終わったのです。しかし、米国はいまだにそれを理解していません。あるいは理解できないのです。これは私たちの友人アリステア・クルックが繰り返し言っていることでもあります。たとえトランプ自身が同意したとしても、実際には実行できない。あまりにも大きな圧力を受けているからです。そのとおりです。そして彼はMOUの内容さえ理解していません。14項目を本当に読んだことがあるのかどうかさえ、疑わしいくらいです。

ナポリターノ判事: 交渉の議題は、パキスタンが決めるのですか、それとも米国ですか、あるいはイランですか。

ペペ・エスコバル: いいえ。議題はMOUに書かれている内容によって決まります。そのMOUは当事者である両国が交渉し、もちろんパキスタン、オマーン、カタールが仲介役として意見を出してまとめ上げた文書です。しかし、その文書は今も存在しています。中国側もこの点を繰り返し強調しています。先週、キルギスで開かれたSCO首脳会議で、王毅外相は基本的にこう述べました。「交渉の場に戻り、MOUで約束したことを履行しなさい。再交渉はありません。」誰もが分かっていることです。再交渉するものなど何もありません。最初の交渉でさえ、まだ具体的な成果も実務的な成果も何一つ生み出していないのですから。

ナポリターノ判事: なるほど。しかし、なぜイランは、信用できない相手とそもそも交渉などするのでしょうか。

ペペ・エスコバル: そのとおりです。トランプのように信用できない相手と、なぜ交渉するのか――これが9,000万人のイラン国民が口にしていることです。殺害された最高指導者ハメネイ師の葬儀には4,000万人が街頭に出ました。その人々の間には、「米国と交渉しようとすること自体がばかげている」という国民的な共通認識があります。米国はまたしても、いかなる合意も守らなかった。だから交渉しても無意味であり、この戦争は戦場で勝ち取るしかない――これがイランの国民的コンセンサスです。

これは最高安全保障会議やマジュリス(国会)、IRGC(イスラム革命防衛隊)の将軍たちだけの考えではありません。シーラーズでも、マシュハドでも、ゴムでも、街の人々がそう言っているのです。

そして、イランのメディアもまさにそのことを伝えています。イランのメディアは非常に活発で創造的です。決して一枚岩ではありません。さまざまな意見があり、政治討論も非常に充実しています。テレビでも、ソーシャルメディアでも同じです。ですから、「交渉はまったく無意味だ」という国民的な一致がある一方で、それでも外交の扉だけは開いておくべきだという考えも共有されています。それがイラン外交の一部だからです。

アラブ世界、より広いイスラム共同体(ウンマ)、そしてグローバルサウス全体で、人々は「イランは決して外交を放棄しない」という姿勢を高く評価しています。イランはMOUも含め、考え得るあらゆる外交的解決策を試しました。しかし何一つ実を結ばなかった。それは、米国が約束を破り続けたからです。しかし、それでも終わりではありません。今週もそうですが、このわずかな外交の可能性が残っている限り、その扉は閉ざさないのです。

しかし、トランプは、数時間前にもまたイランを爆撃すると脅していましたよね。

ナポリターノ判事: イランは核兵器を持っているのでしょうか。

ペペ・エスコバル: (笑)それをどう答えればいいのでしょう。6000億ドル級の質問と言うべきでしょうか。おそらく誰にも分かりません。確かなことを知っている者はいないからです。もちろん、いくつかの仮説があります。「核兵器の完成まであと2、3週間だ」という説もあれば、「すでに保有している」という説もありますし、「第三国から入手した」という説もあります。あらゆる可能性があり得ます。というのも、この情報を確実に知っている人間は誰もいないからです。知っているとすれば、最高指導者モジタバ・ハメネイ師と、13人で構成される最高安全保障会議のごく限られたメンバーだけでしょう。しかも13人全員ではありません。

ナポリターノ判事: マクレガー大佐は、ロシアも中国も、イランが倒されることを決して許さないだろうと言っていました。そして、トランプもネタニヤフも、そのことを理解していないとも言っていました。

ペペ・エスコバル: そのとおりです。まったくそのとおりです、判事。実は、このことこそ、ここ10年ほど私が取り組んできた仕事の中心でした。ユーラシア統合、BRICS、SCO(上海協力機構)、そしてロシア、中国、イランの戦略的パートナーシップを研究してきました。この三か国こそ、私が10年以上にわたって、ほぼ毎日のように注目してきた国々です。実際に現地へ足を運び続けてきました。米国の机上の分析家たちは、そんなことは決してしません。ですから、ここが核心なのです。

ペペ・エスコバル: 多極化へと続く、この長く曲がりくねった道を築いている三つの文明国家――それがロシア、中国、そしてイランです。しかも、この三か国はいずれも長い歴史を持つ文明国家であり、豊かな外交経験と地政学的経験を積み重ねてきました。そして三か国の戦略的パートナーシップは、互いに密接に結び付いています。ここから、数日前に起きた非常に興味深い出来事につながります。

ペペ・エスコバル: ドナルド・トランプ大統領は、それまで「ユーラシア」という言葉を一度も口にしたことがありませんでした。ところが、数日前、初めて「われわれはユーラシア枢軸を警戒しなければならない」と発言したのです。彼は何を意味していたのでしょうか。要するに、誰かが彼の頭の中に、「新たな『悪の枢軸』が存在する」という考えを植え付けたのです。そして、その新たな「悪の枢軸」とは、米国の国家安全保障ドクトリンによれば、米国にとって戦略的かつ存立に関わる脅威とされる三か国、すなわちロシア、中国、イランのことです。

 しかし、判事がおっしゃったように、ワシントンの政策コミュニティ全体を見渡しても、その言葉が本当に意味するところを理解している人は、おそらく1%にも満たないでしょう。

ナポリターノ判事: なるほど。ところで、常軌を逸したゼレンスキーは、ウクライナでの戦争とイランとの戦争を、何か奇妙な形で一つに結び付けようとしているのでしょうか。そうなれば、米国は単なる資金提供国ではなく、交戦当事国になってしまいますが。

ペペ・エスコバル: 判事、それは奇妙な話ではありません。極めて計算された行動です。私たちは皆、この二つは別々の戦域、別々の戦場で行われているものの、本質的には同じ戦争であることを知っています。つまり、米国とシオニズム勢力によるユーラシア枢軸への戦争なのです。ロシアに対する戦争は現在も続いています。イランに対する戦争も現在進行中です。そして、その次に控えている最大の戦争が中国との戦争です。誰もがそのことを知っています。つまり、これらの戦争は最初から相互に結び付いていたのです。ですから、米国の評論家たちが「戦争同士がつながっている」と今さら発見したかのように語るたびに、私は苦笑してしまいます。違います。最初から同じ戦争なのです。そしてゼレンスキーが今回やったことは、もちろん命令に従ってですが、カスピ海でイランの船を攻撃することによって、その二つの戦争を実際に一つへ結び付けようとしたのです。

これは極めて危険です。狙いは、イランをウクライナとの戦争に引き込み、さらにウクライナを支援しているヨーロッパ諸国とも対立させることです。そうなれば、ヨーロッパを対イラン戦争へ引きずり込むことになります。つまり、ミリ単位で計算された作戦なのです。

しかし、イランはこの罠には乗りません。第一に、なぜイランがウクライナを攻撃しなければならないのでしょうか。ロシアはすでにウクライナに壊滅的な打撃を与え続けています。それとは別の問題です。

ただし、カスピ海こそがこの問題全体の鍵です。カスピ海は基本的に、ロシア、イラン、カザフスタンを中心とする内海です。もちろんアゼルバイジャンもありますが、ロシア、イラン、カザフスタンほど重要ではありません。

ロシアとイランの間でやり取りされる兵器や情報は、カスピ海を経由しています。ロシア側ではカスピ海北部の港アストラハンを出発し、カスピ海を通ってテヘランまで運ばれるのです。もちろん、ペンタゴンはそのことを知っています。だからこそ、何らかの形でカスピ海に干渉する必要があるのです。

さらに複雑なのは、地政学的な側面です。失礼、地政学的な側面ですが、ロシア・イラン・インド国際南北輸送回廊(INSTC)もカスピ海を通っています。ロシア側の重要港はアストラハンです。イラン側の重要港は、イランのカスピ海沿岸にあるバンダル・エ・アンザリーです。ちなみに、この港はすでに米国による爆撃を受けています。私は昨年、この輸送回廊についてのドキュメンタリーを撮影するため現地を訪れ、バンダル・エ・アンザリーまで行きました。そして、実際にカスピ海も航行しました。

 ですから、カスピ海はロシアとイランの双方にとって不可欠なのです。そこでウクライナは、「ここで少しかき回してやろう」と考えたのでしょう。しかし非常に興味深いことに、昨日から今日にかけて、ウクライナ側はイランに対し、事実上「これは間違いだった」と謝罪しました。なぜなら、自分たちの行動がもたらす結果を理解したからです。

イランには、その気になればウクライナに甚大な損害を与えるだけの能力があります。しかし、その必要はありません。ロシアがすでにそれをやっているからです。

ですから、判事、地政学的に見れば、このチェス盤は途方もなく複雑で、その複雑さは日ごとに増しています。

ナポリターノ判事: ヴァンス副大統領側の交渉担当者たちは、ホワイトハウス側の交渉担当者たちと対立しているのでしょうか。

ペペ・エスコバル: 私たちにも分かりません。パキスタン側も分かっていません。ただ、彼らが私たちに話したのは、「この提案は、おそらく90%、いや100%近い確率でJ.D.ヴァンス副大統領のオフィスから出てきたものだ」ということです。つまり、この提案は、理論上はホワイトハウスから直接出されたものではない、ということになります。

 そして、この仲介団は常に米国側と連絡を取り続けています。アシム・ムニール元帥とそのチームは、必要であればいつでもドナルド・トランプに直接連絡を取れる立場にあります。ですから、彼らの見方にも十分な根拠があるのです。

ここで改めて強調しておきたいのですが、ラリーと私は、いつも「これは一人の情報源から得た話です」と明言しています。しかし、その情報源は極めて重要な人物です。実際に交渉の席にいて、米国側からのメッセージを自分の目で読み、さらに米国側の担当者とも直接話をした人物だからです。

ナポリターノ判事: あなた方は、そのパキスタンの仲介者とどの程度近い関係にあるのですか。「一体これはどういう方向へ向かっているのか」と率直に尋ねられるほど近い関係なのでしょうか。

ペペ・エスコバル: はい、そのくらい近い関係です。ラリーと私は、週に3~4回は直接質問を送っています。しかも、同じことを何度も確認します。というのも、状況が非常に曖昧なことが多いからです。ラリーは情報分析の専門家ですし、私はパキスタンで長く仕事をしてきました。パキスタンという国は非常に複雑で、物事を読み解くのが容易ではありません。ですから、同じ質問を3回、4回と繰り返して確認する必要があるのです。

もちろん、パキスタン国内には、政府内部も含めてさまざまな利害や思惑がぶつかり合っています。ですから、私たちは確信が持てるまで慎重に確認します。仲介者やパキスタン情報機関から得た情報を公に語るときには、「これで間違いない」と100%確信できる状態でなければなりません。

また、可能であれば、私はテヘラン側から別の解釈も得ようと努めます。答えてくれることもありますし、「これは国家安全保障に関わるので話せない」と言われることもあります。しかし、その場合でも「それは間違っている」と否定されることはありません。

実際、この数日間の動きを見れば分かりますが、双方の代表団は絶えず行き来しています。パキスタンのハイレベル代表団がテヘランへ向かい、イラン側もパキスタンへ向かう。その往復が休みなく続いています。パキスタンは主要な仲介国ですから、そこには相当程度の信頼関係が存在しているのです。

例えば私たちは、「お前たちはパキスタン情報機関の手先だ」といった批判を、あちこちから受けます。しかし、そんなことはありません。私たちは情報を受け取り、その情報に筋が通っているかどうか、自分たちで分析しているだけです。

これまでのところ、受け取った情報の約90%は非常に正確でした。そして私たちは、常にイラン側の情報源にも照らし合わせて検証する機会を持っています。もちろん、戦時下では巨大な「戦争の霧」の中にあるわけですから、すべてが明瞭というわけではありません。

ナポリターノ判事: つまり、イランがホルムズ海峡を支配していること、原油価格が上昇していること、そして世界経済、とりわけ米国経済が景気後退に近づいていること、さらに中間選挙まで4か月を切っていることを考えると、ドナルド・トランプに残された時間は少なくなっているのでしょうか。

ペペ・エスコバル: そのとおりです。間違いありません。そして、本人もそれを分かっています。実際、彼に残された時間は8月中旬までです。現在出ている最も信頼できる分析報告書も、すべてその点を強調しています。

ナポリターノ判事: 8月中旬ですか。あと2週間半ほどですね。なぜそう言えるのですか。

ペペ・エスコバル: それが、米国の戦略石油備蓄(Strategic Petroleum Reserve)が限界に達するレッドラインだからです。8月中旬。それが決定的な節目です。ゴールドマン・サックスの報告書をはじめ、あらゆる主要レポートがそう分析しています。

私も、ワシントン政界に古くからいる情報源の一人からレポートを受け取りました。その人は、私の記事を読んで「一番重要な点を書き忘れている」と指摘してきたのです。そして、膨大な数字が並んだ報告書を送ってくれました。私はそれを見て、「なるほど、レッドラインは8月中旬なのだ。それ以降ではない」と理解しました。そして、トランプもその数字を見せられているので、それを知っています。

これが第一の理由です。第二は、ペルシャ湾岸一帯、GCC諸国、それにヨルダンを含めて配置されている約20か所の米軍基地の戦力が消耗していることです。ちなみに、ヨルダンにある基地の一つは、昨日もIRGC(イスラム革命防衛隊)の攻撃を受けました。イラクのアルビルも同様です。

 約20か所ある基地のうち、およそ80%が機能を失っています。現在でもある程度運用可能なのは、せいぜい4基地ほどです。残りは事実上、壊滅状態にあります。

ペペ・エスコバル: そして、判事、これは非常に重要な点ですが、私たちの知る限り、こうした状況は先週金曜日(7月24日)の会議で議論されました。その席では、J.D.ヴァンス副大統領とキーン将軍が、トランプに対して実際の状況を説明しようとしていたのです。

ちなみに、トランプが爆撃を停止したのは、その会議があったからです。

ナポリターノ判事: イランと核兵器の問題に戻りたいと思います。ラリー(ジョンソン)は、イランは自国の領土内で核爆発を行う可能性があるかもしれないと言っていました。何かを攻撃するためではなく、米国とイスラエルに対して「われわれには能力がある」というメッセージを送るためです。そのようなことは可能なのでしょうか。

ペペ・エスコバル: 実は、この情報はラリーと私が受け取ったものです。その根拠となったのは、イランのペゼシュキアン大統領とパキスタンのシャバーズ・シャリフ首相との間で交わされた、極めて重要な電話会談でした。ペゼシュキアン大統領はその電話で、こう述べたのです。「もし米国がわれわれの民間インフラを攻撃し続けるなら、われわれは自国の領土内で核装置を爆発させる可能性がある」と。

その趣旨は「抑止力として、自国の領土内で核装置を爆発させる」というものでした。攻撃のためではなく、イランには抑止能力があることを示すためです。そして、その内容をシャリフ首相は自らのチームに指示し、米国側へ伝えさせました。「電話ではこのような話があった」と。つまり、米国側もこの情報を受け取っているのです。

ナポリターノ判事: そのような行動がもたらす影響や、それに対して米国やイスラエルがどう反応するかを考えなければなりませんね。

ペペ・エスコバル: もちろんです。まさにそのとおりです。ですから、ペゼシュキアン大統領が、それほど機微に触れる内容をパキスタンのシャバーズ・シャリフ首相との電話で実際に伝えたのだとすれば……。 その件については、ちょっとした情報戦が展開されています。「あの電話はオープン回線だったのではないか」「つまり、誰かに聞かせることを前提に話していたのではないか」という見方です。

ナポリターノ判事: なるほど。では、なぜ今すぐ爆発させて戦争を終わらせないのでしょうか。彼らは何を待っているのですか。

ペペ・エスコバル: それはファトワー(宗教令)があるからです、判事。ハメネイ師によるファトワー、そして言うならば「ファトワー2.0」とでも呼ぶべきもの――それが現在も有効なのです。

まず第一に、イランの政治体制――宗教的民主制と呼んでもよいでしょうが、本質的にはそういう体制です――の立場からすると、最高指導者は父のファトワーを撤回し、「われわれは今、新しい時代に入る」と宣言しなければなりません。もちろん、その可能性自体は検討の対象にはなっています。私たちが知る限り、この問題についてモジタバ師が相談する相手は、せいぜい二、三人でしょう。それほど機密性の高い問題です。

さらに、シーア派イスラムの立場から見ても、これは極めて重大な決断になります。というのも、第一に、ファトワーを撤回する責任を負うことになるからです。第二に、そもそもそのファトワーは、シーア派イスラムの教義では、核兵器は無差別に民間人を殺傷するため許されない、という考え方に基づいているのです。

ナポリターノ判事: しかし、そのファトワーは、核兵器の使用だけでなく保有そのものも禁じているのですよね。

ペペ・エスコバル: はい、そのとおりです。極めて包括的なファトワーです。核兵器に関わるあらゆる枠組みそのものが禁じられています。ですから、それを覆すことは、途方もなく大きな決断になります。もちろん、その理由を地政学的な観点だけでなく、宗教的な観点、さらにシーア派神学の観点からも説明しなければなりません。そうなると、問題は非常に複雑になります。

(翻訳、以上)


Sunday, July 19, 2026

ペペ・エスコバール:事態はテヘランのペースで進んでいる Pepe Escobar: How Tehran is running the clock (Japanese Translation)

 ペペ・エスコバール氏の7月17日の記事を紹介します。翻訳はアップ後修正する可能性があります。

How Tehran is running the clock

https://telegra.ph/How-Tehran-is-running-the-clock-07-16 

事態はテヘランのペースで進んでいる

ペペ・エスコバール 2026年7月17日

まず、このますます危険さを増している岐路において作用している四つの重要な要素から始めよう。

Pepe Escobar

第一。 イラン議会(マジュリス)は火曜日の夜、前最高指導者アヤトラ・ハメネイ師がマシュハドで埋葬された先週金曜日に始まった「新たなモジタバ時代」の幕開けとともに開会した。290人の議員は全会一致で二つの決議を採択した。

第一の決議は、ペゼシュキアン大統領率いる政府に対し、「核能力の加速」を求めるものである。これはウラン濃縮の加速とも解釈できるし、さらに画期的な何かを意味する可能性もある。

第二の決議は、これまで合意されていた条件に基づく米国とのいかなる(強調は原文)妥協も拒否するものである。つまり、たとえ新たな了解覚書(MoU)が再び締結されるとしても、アンカラでのNATO首脳会議の直後に米国大統領によって事実上破棄された前回とは異なり、その条件は米国にとってはるかに厳しいものとなるだろう。

第二。 イラン・パキスタン・カタールのルートである。

今週初め、パキスタンとカタールは集中的な協議を再開した。いや、「必死」と表現してもよいほどであり、今度の日曜日にもテヘランとの直接対話を再開しようとしている。

しかし、それはいくら頑張っても無駄になる仕事である。なぜなら、それは米国によるイラン標的への大規模爆撃――民間インフラを含む――と、先週イラン各地で数百万人が叫んだ「復讐」というスローガンと真っ向から対立する形で行われなければならないからだ。

それでも外交努力は現実に存在する。ただし、その目的は仲介者たちによって「和解への道」から「大惨事の防止」へと格下げされてしまった。

第三。 トランプ=ムニール秘密ルート。

交渉の場の哀れな残骸に関わる仲介者たちは、トランプが今なおパキスタンのアシム・ムニール元帥に直接電話をかけ、自らが面目を失わずに済む「出口」を見つけるよう迫っていることを確認している。

これは、ニュースを支配する大統領(POTUS)特有の大げさな発言――「イランは取引を懇願している」――を完全に無効にする。現実はまったく逆だ。ちなみに、トランプにとってムニールは、この危機から抜け出すための最後の望みである。

第四。 米国の爆撃に対するイラン軍の対応である。

その中でも特に重要なのは、精密クラスター弾によってクウェート、バーレーン、ヨルダンにある米軍基地が壊滅的打撃を受けたことである。

実際の被害の圧倒的大部分は公表されていない。カタールのアル・ウデイド空軍基地からヨルダンの指揮統制センター、クウェートで破壊されたパトリオット・ミサイル・システム、UAEのアル・ダフラ空軍基地に至るまで。MQ-9無人機の格納庫、HIMARS発射機、弾薬庫、さらにはオマーン・ドゥクム港の給油施設まで破壊された。

とりわけ注目すべきはドゥクム港である。ここはアラビア海沿岸、ホルムズ海峡の外側に位置する。米艦船はペルシャ湾に入ることなくここに寄港し、給油や修理、補給を受ける。北インド洋に展開する米艦隊の後方支援拠点として極めて重要な場所である。

モジタバ・ハメネイの立場は

繰り返すが、たとえ「MoU2.0」への道が開かれたとしても、最初の会談でテヘランは極めて明確にこう伝えるだろう。ワシントンはMoU第1条(すべての戦争の終結)を履行しなければならない。それがなければ交渉はない。

その間、トランプによる「封鎖2.0」があろうとなかろうと、テヘランはホルムズ海峡を引き続き厳しく制限する。通航はララク島沖の革命防衛隊(IRGC)海軍の航路を通る場合に限られる。

さて、モジタバは何を考えているのか。

西アジアの安全保障構造は単に変化しただけではない。それは崩壊し、新たに再構築された。そして、その再構築の条件を決めているのはテヘランであり、しかもペルシャ湾全域においてエスカレーションの主導権を握っている。

14項目から成るMoUは、イランが条件を決めることを明記しており、仲介者も交渉担当者もそれを理解している。彼らは、どれほど脆弱であっても間接対話のルートを維持しようと必死になっている。

新指導者モジタバ・ハメネイは圧倒的な国民的支持を得ている。先週金曜日以来、新時代の指導者として、彼は事実上、文書による指示で統治している。

マジュリスの有力議員マフムード・ナバヴィアンは、すでにモジタバの内部文書の一部を国営テレビで読み上げている。その中で彼は、核問題でいかなる譲歩にも反対し、米国に賠償を求め、ホルムズ海峡をイランだけが管理することを主張している。

仲介者や外部の評論家がどのような議論を持ち出そうとも、イランが交渉の場へ無理やり引き戻されることはない。

テヘランからコム、マシュハドに至るまで、6日間昼夜を問わず続いた弔問者たちの大合唱は「復讐」を求めていた。そしてモジタバも書面声明でその点を改めて強調した。

イラン・イスラム共和国の新時代を形づくる宗教的・戦略的な物語は、ハメネイ師の死をシーア派政治的アイデンティティの根本的物語の中に深く組み込み、外国勢力による暗殺を神聖な犠牲へと昇華させている。

そして、ここでの「復讐」は超越的な意味を帯びる。モジタバは「復讐」を政治的選択や国家政策として描いてはいない。それを国民の意思であり、何より時を超えた神聖な使命と定義している。

したがって、「復讐」がいつ成就したと見なされるかは歴史が決める。モジタバは、それは自分個人や国家機関によるものではなく、「世界中の自由な人々」がそれぞれこの神聖な使命の一部を担うことによって実現すると位置づけている。

ポストモダン時代における政治神学の声明として見れば、これは他に類を見ないものである。

自らの宣伝に溺れるナルキッソス

一方で、ガリバフ議長とアラグチ外相による交渉路線と、ヴァヒディ率いる革命防衛隊の軍事指揮統制路線は、ペゼシュキアン大統領の政府内で今後も並存する。

実際には、この二つは同じ過程の二つのベクトルである。イラン内部に「亀裂」があるというあらゆる宣伝は、言うまでもなく、米国側の宣伝にすぎない。

さて、その宣伝工作について話そう。

シオニスト勢力から成るワシントン・ニューヨーク・テルアビブ軸が、米国を「総力戦(Totaler Krieg)」体制に縛り付け続けようと全力を尽くしていることは公然の事実である。

だからこそ、テヘランのあらゆる行動――常に防御的なものであるにもかかわらず――は開戦理由(casus belli)として描かれる。そしてMoUのような出口は「宥和」として貶められる。

この総力戦の思考は、終わりなきエスカレーションを保証する。そしてそれは、ホルムズ海峡封鎖であれ、NPT脱退の可能性であれ、イランのいかなる対応にも正当性を与える。

さらに、それはシオニスト強硬派に「さらなる戦争」を要求する口実を与える。

この地獄の機械、この自己拘束的な循環は、最終的にはイランに利益をもたらす。なぜならイランに必要なのは、この循環が続くことだけだからである。

その一つ一つの展開が、米国の帝国的破壊手法を、イラン国内だけでなくグローバルサウスの大部分におけるイランの正統性の拡大へと変えていく。

トランプはいま、自らの虚像に溺れるナルキッソスの状態にある。ホルムズ海峡の封鎖、戦略石油備蓄(SPR)が危険水域に達する中で避けられない原油価格の急騰、そしてイランのNPT脱退の可能性という、耐え難い現実に直面している。

忘れてはならないのは、60日間のMoU期限は8月中旬に切れるということだ。つまりあと1か月しかない。それまでに最終合意が成立しなければ、この枠組み全体が失効する。

改めて記録のために言えば、テヘランにとって元の14項目MoUだけが唯一の枠組みである。再交渉はない(強調は原文)。あるのは、その履行手順を実施することだけだ。

テヘランはこの点を常に明確にしておかなければならない。なぜなら米国はいまだに理解していないからである。

テヘランはすでに、この戦争の中心的な問題――ホルムズ海峡――において勝利している。それは決して核問題だけの話ではなかった。ワシントンはいずれこの現実を認めざるを得なくなる。

しかし、それはほとんど不可能だろう。

今後のシナリオは暗い。

「管理された緊張緩和」は、いまや砂漠の蜃気楼のように見える。

交渉は続くが合意はなく、タンカー事件が散発し、海運量は戦前の3分の1から5分の1にとどまるという「凍結された膠着状態」も同様である。

現時点では、あらゆるベクトルはむしろ垂直的エスカレーションを指している。すなわち、ホルムズ海峡の全面封鎖、米国による大規模攻撃、そしてそれに対するイランのNPT脱退である。

実質的に言えば、トランプはイランと交渉しているのではない。巨大な戦略的敗北を必死に覆そうとしているのである。

「停戦」は最初から、失われた交渉力を回復するための時間稼ぎにすぎなかった。

トランプが望んでいたのは降伏であり、完全屈服であり、体制転換であり、イランを新植民地化することであった。

彼が手にしたのは、自ら署名したにもかかわらず理解していないMoUである。ベルサイユで盛大な演出のもと署名したにもかかわらず、おそらく読んですらいない。

彼は、自分が署名した文書がホルムズ海峡の意思決定権をイランとオマーンで分けているのではなく、イランだけに与えていることすら理解していない。

だからこそ彼は、自分が署名した内容を認めることなく書き換えようとしている。エスカレーションを利用し、外交を装った強硬な威圧を行い、テヘランから交渉上の優位性を奪おうとし、さらには来週にはイラン国内の発電所、橋梁、エネルギー施設すべてを攻撃すると脅迫している。

技術的には、イランは署名したMoUの義務をすべて履行してきた。

一方、米国は、ほんの数例を挙げるだけでも、イランの凍結資産の解除を拒否し、第9条に直接違反する新たな制裁を課し、第10条に直接違反して石油制裁免除を撤廃し、第1条に直接違反して戦争を再開した。

歴史は最終的に、この事例を「いかに戦争の時間を操るか」のケーススタディとして扱うことになるだろう。

テヘランは意図的にワシントンへの対応を抑制している。なぜなら時間も石油市場もイランの味方だからである。

戦略石油備蓄は1か月足らずで枯渇し、ホルムズ海峡におけるイランの影響力は絶対的である。

あらゆる歴史的変数と向き合ってきた文明国家だけが、粗暴な帝国機構よりもはるかに長い時間軸で勝負し、本質的な戦力を温存しながら、帝国に残された戦略的余力を徐々に消耗させていくことができるのである。

(以上)

参考までに、14項からなる「覚書」の日本語訳をここに置いておく(BBCのサイトにあったものを訳)

第1項 アメリカ合衆国およびイラン・イスラム共和国、ならびに現在の戦争におけるそれぞれの同盟国は、本覚書(MOU)への署名により、レバノンを含むすべての戦線における軍事作戦を即時かつ恒久的に終了することを宣言する。また、今後は互いにいかなる戦争または軍事作戦も開始せず、相互に武力による威嚇または武力の行使を控え、レバノンの領土保全および主権を確保することを約束する。最終合意では、レバノンを含むすべての戦線における戦争の恒久的終結と、本項のその他の規定を確認する。

第2項 アメリカ合衆国およびイラン・イスラム共和国は、互いの主権および領土保全を尊重し、互いの内政に干渉しないことを約束する。

第3項 アメリカ合衆国およびイラン・イスラム共和国は、最終合意に向けた交渉を開始し、最大60日以内に合意に到達することを約束する。この期間は双方の合意により延長することができる。

第4項 本覚書への署名と同時に、アメリカ合衆国はイラン・イスラム共和国に対する海上封鎖およびその他すべての妨害・障害の撤廃を開始し、30日以内に海上封鎖を全面的に終了する。この期間中、船舶の往来は、イラン・イスラム共和国による戦前の航行量の回復に応じた規模で再開されるものとする。さらにアメリカ合衆国は、最終合意成立後30日以内に、自国軍をイラン・イスラム共和国近傍から撤収させることを約束する。

第5項 本覚書への署名後、イラン・イスラム共和国は、ペルシャ湾とオマーン海との間を往来する商船の安全な航行を、60日間無償で確保するため最大限の努力を払う。商船の航行は直ちに再開されるものとし、イラン・イスラム共和国は、戦術上・軍事上の障害物の除去および機雷除去の必要性を踏まえ、30日以内に航行体制を整える。またイラン・イスラム共和国は、ホルムズ海峡の将来の管理および海上サービスについて、オマーン国および他のペルシャ湾沿岸諸国と、適用される国際法およびホルムズ海峡沿岸国の主権的権利に従って協議を行う。

第6項 アメリカ合衆国は、地域のパートナー諸国とともに、イラン・イスラム共和国の復興および経済発展のため、少なくとも3,000億ドル(2,250億ポンド)規模の、双方が合意する包括的な計画を策定することを約束する。この計画の実施メカニズムは、60日以内に締結される最終合意の一部として確定される。関連する金融取引に必要なすべての許可、免除および承認は、アメリカ合衆国が付与する。

第7項 アメリカ合衆国は、イラン・イスラム共和国に対するあらゆる種類の制裁を終了することを約束する。これには、国連安全保障理事会決議、国際原子力機関(IAEA)理事会決議、およびアメリカによる一次・二次を含むすべての一方的制裁が含まれる。その実施は双方が合意する日程に従う。最終合意の一環として、アメリカ合衆国およびイラン・イスラム共和国は、制裁解除が極めて重要な課題であることを確認し、この問題について直ちに交渉を開始し、相互に受け入れ可能な合意を目指す意思を表明する。

第8項 イラン・イスラム共和国は、核兵器を取得または開発しないことを改めて確認する。アメリカ合衆国とイラン・イスラム共和国は、第7項に定める日程に従い、双方が合意する仕組みに基づいて、備蓄された高濃縮物質の処分方法を決定することに合意する。最低限の方法として、IAEAの監督下で現地において希釈(ブレンディング)を行うものとする。両国はまた、イラン・イスラム共和国の核エネルギー需要に関連する濃縮活動およびその他双方が合意する事項についても、最終合意で合意される枠組みに基づき協議することで一致した。最終合意では本項の内容を確認する。アメリカ合衆国およびイラン・イスラム共和国は、これら核問題の重要性を認識し、相互に受け入れ可能な合意に達するため、直ちに交渉を開始する意思を表明する。

第9項 最終合意が成立するまでの間、アメリカ合衆国およびイラン・イスラム共和国は現状を維持することに合意する。イラン・イスラム共和国は現在の核計画の現状を維持し、アメリカ合衆国は新たな制裁を課さず、地域への追加兵力も展開しない。

第10項 アメリカ合衆国は、本覚書への署名直後から制裁解除が完了するまでの間、米財務省を通じて、イラン産原油、石油製品およびその派生製品の輸出、ならびに銀行業務、決済、保険、輸送など関連するすべてのサービスについて、必要な制裁免除を発給することを約束する。

第11項 アメリカ合衆国は、本覚書の実施に伴い、凍結または利用制限されているイラン・イスラム共和国の資金および資産を全面的に利用可能にすることを約束する。アメリカ合衆国およびイラン・イスラム共和国は、交渉期間中にこれら資金の解除手続について相互に合意する。当該資金は、元の口座に留め置かれる場合であれ、他の口座へ移転される場合であれ、イラン中央銀行が指定する最終受益者への支払いに全面的に使用できるものとする。アメリカ合衆国は、そのために必要なすべての許可および認可を発給することを約束する。

第12項 アメリカ合衆国およびイラン・イスラム共和国は、本覚書の履行状況および将来の最終合意の遵守を監視するため、実施監視メカニズムを設置することに合意する。

第13項 本覚書への署名後、第1項、第4項、第5項、第10項および第11項の履行が開始され、かつそれらの措置が継続的に実施されることを条件として、アメリカ合衆国およびイラン・イスラム共和国は、最終合意に向けた交渉を排他的に開始する。

第14項 最終合意は、法的拘束力を有する国連安全保障理事会決議によって承認されるものとする。

Wednesday, April 01, 2026

『朝鮮新報』より転載:東京大空襲からイラン爆撃へ、戦争犯罪の連関/乗松聡子 From the Tokyo Firebombing to the Bombing of Iran: The Lineage of War Crimes

  『朝鮮新報』連載「私のノート 太平洋から東海へ」8回目(26年3月26日)の乗松聡子の記事を転載します。(ハイパーリンクは自分でつけたもので、朝鮮新報版にはありません。)

〈私のノート 太平洋から東海へ 8〉東京大空襲からイラン爆撃へ、戦争犯罪の連関/乗松聡子

2026年03月26日

2月28日、墨田区の横網町公園内の東京都慰霊堂で開催された、「東京大空襲81年第20回朝鮮人犠牲者追悼会」に出席しました。1945年3月9日の深夜から10日未明にかけて、300機にもおよぶ米軍のB29が苛烈な焼夷弾爆撃を行い、約10万人が殺され、そのうちおよそ1万人が朝鮮人であったといわれています。

「日帝の植民地統治のもと、見知らぬ遠い異国の地へ連れ去られ、人間としての基本的な尊厳と権利さえ奪われたまま、奴隷労働を強いられていた罪なき朝鮮の人々が、米軍の大空襲によって無念の死を遂げなければなりませんでした。」朝鮮大学校の学生が代読した「朝鮮人強制連行被害者・遺族協会」のメッセージにあった言葉です。日本人は、二重、三重の被害を受けた朝鮮人被害についてこそ学び記憶すべきと思いました。

会場の横には、判明している187人の被害者の名前が一人一人筆で書かれ、展示されていました。「判明」とは言っても、創氏改名後とうかがわれる名前が多くありました。年齢が書き添えられており、10代、20代が目立ちます。朝大の民族管弦学部の学生がタンソで「アリラン」を演奏しました。繊細な音色が底冷えのする会場に響きわたりました。名前も奪われたまま、この地で焼かれた人々の悔しさと悲しさが伝わってくるようでした。

朝大生による「アリラン」の演奏は、犠牲者の悲しみを奏でるようだった(2月28日)

東京大空襲をはじめとする日本の都市空襲を指揮したのは、カーティス・ルメイ将軍でした。ルメイは、朝鮮戦争で平壌など朝鮮の主要都市を焼きつくした空爆にも関与しました。戦後、「もし我々が戦争に負けていたら、戦争犯罪人として裁かれていたであろう」と言ったといいます。当時ルメイの部下であったロバート・マクナマラ元国防長官が証言しています。このマクナマラこそ、何百万のベトナム人、ラオス人、カンボジア人を殺したベトナム戦争を指揮した人間でした。

自らの手が大量のアジア人の血にまみれていたことを知っていた米帝は、反省するどころか、今、イスラエルとともにイスラム教徒を大量虐殺しています。東京大空襲朝鮮人犠牲者の追悼式のその日、対イラン攻撃を、それも人道にもとる戦争犯罪でもって開始しました。イラン南部の女子小学校にミサイルを二度撃ち込み、175人もの、おもに7歳から12歳の女の子たちを惨殺しました。

3月1日、ネタニヤフ首相は声明で「40年やりたかったイラン殲滅がやっとできる」と、喜びを隠しもしませんでした。これは長期にわたる計画だったのです。むろんイスラエルは西アジアにおける米帝のプロキシー(代理人)です。米国の支持があるからやれるのです。2001年の「911事件」直後、ウェズリー・クラーク元米国陸軍大将はペンタゴンの将官から国防長官室の機密メモを見せられました。そこには、「むこう5年で7つの戦争を行う」とありました。イラク、シリア、レバノン、リビア、ソマリア、スーダン、イランの7か国です。

その後実際にこれらの国々では米欧による軍事介入、政権転覆、内戦関与が起こりました。最後に残されたのが大国イランだったのです。いま戦火の中、イラン現地から日々レポートしているテヘラン大学のサイード・モハンマド・マランディ教授は、イランが攻撃される大きな理由として「パレスチナに連帯しているから」と強調します。米イはパレスチナを支持する勢力を一掃したいのです。

イランは、米国政権が言うような「差し迫る脅威」ではありませんでした。イランがIAEAの査察を受け入れ、濃縮に制限を設けると合意した「イラン核合意(JCPOA)」を破棄したのは第一次トランプ政権です。昨年3月にはガバード情報長官が、米国の情報機関の結論として、「イランは核兵器を作ろうとしていない」と証言しましたが、トランプ大統領は一蹴しました。政権に入る前はあれだけ対イラン戦争に反対していたガバードは今、悪魔に魂を売ったかのように支持に回りました。

昨年6月米イがイランを攻撃した「12日戦争」のときも、今回も、「交渉」が進行中の攻撃開始でした。そもそも何の悪いこともしていないイランがどうして「交渉」しなければ存在を許されないのでしょうか。米国の「交渉」とは「言うことを聞かなければ破壊するぞ」という脅迫に過ぎません。イランに核兵器を持つことを禁止したアヤトラ・アリ・ハメネイ師を開戦日に殺害したことからも、目的が政権転覆であることは明らかです。

それなのに日本を含む西側メディアは、ハメネイ師殺害を喜ぶかのごとくの報道を展開しました。ハメネイ師はイランの政治的最高指導者であり、シーア派の宗教的指導者でした。元CIAの分析家ジョン・キリアク氏は、ハメネイ師を殺すことは「ローマ教皇を殺すことに匹敵する」と言っています。その通りかもしれませんが、そのような喩えを使わないと西側にはハメネイ師殺害の重大さがわからないのでしょうか。小学校爆撃も、「もし米国の学校がやられたら」と置き換えてみないとその犯罪の残忍さがわからないのでしょうか。

相手を劣等な民族や劣等な宗教と見なし、殺してもいいと言わんばかりの、帝国主義的レイシズムが根底にあると思います。だから爆撃で大量虐殺しても良心も痛まないのです。現在、米イは、ガザでやってきたのと同様に、イランで学校、病院といった民間施設を容赦なく破壊し民間人を殺しています。レバノンでもやっています。ラマダンの最後の金曜日に行われる、パレスチナに連帯する「クッズの日」デモに対しても攻撃し市民を殺しました。やられればやられるほどイラン民衆の結束は増し、米イ侵略に抵抗するために街頭を埋め尽くしています。

このような実態を日本を含む西側のメディアは報道せず、逆に、「イランが独裁国家で政権転覆に値する」という言説ばかり流してきました。これは、朝鮮、ロシア、中国など、米帝の言いなりにならず主権を守ろうとする国々に使う常套手段です。嘘を流して侵略戦争を正当化するのです。米国高官さえも認めています。3月18日に、ジョー・ケント国家テロ対策センター長はイラン戦争に抗議して辞任しました。辞任表明において「イスラエルの高官や米国の主要メディアが、イランとの戦争を促すために好戦的な感情を煽る誤情報キャンペーンを展開した」と告発しています。

かつて大日本帝国も、「大本営発表」で嘘をばらまきながら1945年8月14日まで戦争を引き伸ばしました。81年前の出来事と、現在は確実に繋がっているのです。


プロフィール

ジャーナリスト。東京・武蔵野市出身。高2,高3をカナダ・ビクトリア市の国際学校で学び、日本の侵略戦争の歴史を初めて知る。97年カナダに移住、05年「バンクーバー9条の会」の創立に加わり、06年「ピース・フィロソフィー・センター(peacephilosophy.com)」設立。英語誌「アジア太平洋ジャーナル」エディター。2人の子と、3匹の猫の母。著書に『沖縄は孤立していない』(金曜日、18年)など。19年朝鮮民主主義人民共和国を初訪問。世界の脱植民地化の動きと共にありたいと思っている。

(本連載は、反帝国主義、脱植民地主義の視座から日本や朝鮮半島をめぐる諸問題や国際情勢に切り込むエッセーです)

★★★

ウェブ版では https://chosonsinbo.com/jp/2026/03/26sk-30/

米イスラエルによるイラン侵略戦争についいては補完的な内容を書いた、こちらの記事と併せてお読みください。

「月刊イオ」3月号から転載:吹き荒れる米国の横暴と、抗う多極化勢力 

Wednesday, December 03, 2025

ブライアン・バーレティック:日本は東アジア版「ウクライナ」となるのか? Brian Berletic: Will Japan be East Asia's version of Ukraine? (Japanese Translation)

Brian Berletic 
Beijing Review に出たブライアン・バーレティック氏の論評の翻訳を紹介する。AI翻訳に少し手をいれたものである。日本にも米国にも、トランプ大統領が中国との紛争を望んでいないので高市首相の台湾発言を支持せず、高市首相は「ハシゴを外された」といった説が存在するが、私は賛同できない。トランプ大統領は「平和」を口だけで語りながら、「就任後24時間で終結できる」といったウクライナ戦争を就任後1年近く経っても終結しておらず、ガザの民族浄化と破壊を劇化させ、いまベネズエラに戦争をしかけ政権転覆させようとしている。米国の政策は、指導者が何を言ったか言わないかではなく、システムとして実際に何をしているのかで判断しなければだめである。米国が中国へのエスカレーションを後退させたか?軍事演習をスケールダウンさせたのか?台湾への武器供与をやめたのか?アジアの属国に軍事費増強を迫るのをやめたのか?アジアの駐留兵や基地の削減や撤退を始めたのか?どの側面を取っても事態はエスカレーションの方向性で、デ・エスカレーションの方向性は見えない。これらを明確に論じているのがこのサイトでも何度も紹介しているブライアン・バーレティック氏である。

https://www.bjreview.com/Opinion/Voice/202511/t20251124_800423627.html

日本は東アジア版「ウクライナ」となるのか?

Will Japan be East Asia's version of Ukraine?

米国主導の対中封じ込め戦略に日本が加わる


ブライアン・バーレティック

2025年11月24日

日本の高市早苗首相の台湾に関する発言を契機として生じた最近の外交危機は、孤立した偶発的な出来事ではない。それは、米国およびその従属国家が中国との対決に向けて進めている、より広範で継続的な戦略の中に位置づけられる計算された一歩であり、米国がウクライナを通じてロシアと、さらには欧州全体と対峙するために構築してきた戦略と軌を一にしている。

高市は11月初め、日本の国会で、CNNが報じたところによれば、中国本土から台湾への攻撃の可能性――台湾は日本領土からわずか100キロの距離にある――は「存立危機事態」に当たり、東京による軍事的対応を誘発し得ると述べた。

高市の発言は、日本が軍事費の増加に着手し、米国との軍事協力を拡大し、さらには自国領域内への核兵器の持ち込み禁止の見直しさえ検討している時期に出されたものである。

米国の熱心な代理勢力として振る舞う日本

高市発言の真の重要性は、それが日本の防衛・安全保障政策における急進的かつ急速な転換と歩調を揃えている点にある。この政策は、米国がウクライナおよび欧州全体にロシアに対する政策を押しつけてきたのと同様のやり方で、日本にも押しつけられてきたものであり、2025年2月にブリュッセルで欧州に向けて発出された米国「戦争長官」ピート・ヘグセスの指令に明確に示されている。

とりわけ日本にとって、これは第二次世界大戦後の平和主義から脱し、米国の対中封じ込め構造の一部を構成する、攻勢能力を備えた強力な地域軍事大国へと移行することを意味する。それは、かつて中立を標榜していたウクライナがすでに経験し、自国および欧州全体に破滅的な結果をもたらした転換であり、日本に対しても同様の結果を予兆するものである。

2025年10月、ロイターは、日本の新首相が「積極的」な財政政策のもと「早期の防衛費増額」を約束したと報じた。同じ月、DW(戦争省)は、高市が2026年3月までにGDP比2%の軍事費を目標としており、NATOの基準的支出要件と歩調を合わせることで、日本が米国主導の世界的軍事ブロックへのさらなる統合を示していると伝えた。

このGDP比2%への引き上げは、近い将来のより大幅な軍事費増額に向けた漸進的な一歩にすぎない可能性が高い。これは、ヘグセスが2025年2月に欧州に対して要求した防衛費GDP比5%という新たな基準に、いずれ日本も追随する可能性を示唆している。

日本は核兵器に関する姿勢も転換しつつある。ロイターは、日本の首相が「自国領域へのその種の兵器の持ち込み禁止の見直しを求める可能性がある」と指摘した。これは、ウクライナのゼレンスキー大統領が2022年のミュンヘン安全保障会議で、核兵器取得を禁じるブダペスト覚書の無効化を示唆したことと類似している。

当時ウクライナがロシアに対して国家の存立に関わる脅威を突きつけたのと同様、日本が1931年から45年にかけて14年にわたる対中侵略の後に課された制約を外し、ますます攻撃的になることは、今日の中国にとって国家安全保障に関わる重大かつ存立的脅威となる。

米国がフィリピン、大韓民国、さらには中国の台湾省に対して同様の政策を押しつけていることと併せ、中国に対する統一戦線が形成されつつある。それは、米国がNATOをどのように形作り、現在ロシアに対してどのように用いているかを想起させる。

ロシアを疲弊させ、中国を疲弊させる…

日本の攻撃的姿勢の高まりは、地域におけるより広範な米国戦略の一環であり、ちょうどウクライナが中立を放棄したことが欧州におけるより広範な米国戦略の一環となったのと同様である。

2019年のランド研究所の論文「Extending Russia」は、ソ連崩壊型の衰退を引き起こす目的で、ロシア周辺の複数地点で代理勢力を利用して紛争を引き起こし、ロシアに経済的・政治的圧力を加えることを提唱した。

同様に、米国はアジア太平洋で代理勢力による地域的前線を準備し、中国と対峙・封じ込めるために複数の地点で多様な役割を果たさせ、自軍の地域的プレゼンスを増強し、潜在的な紛争時に米国が安全に後方から支援・展開できる前線を構築しようとしている。

2018年の米海軍大学校論文「A Maritime Oil Blockade Against China」では、中国の軍事力の手が届かない要衝で中国のエネルギー輸入を遮断する計画が提示されている。

この計画は、論文が「遠隔封鎖」と呼ぶ措置を米軍が実施するだけではなく、複数の国の協力を必要とし、中国が封鎖を打破しようとする意図を抑止する枠組みを形成することを求めている。論文に添付された地図は、日本(そしてフィリピン、そして中国の台湾省)がこの広範な地域戦略で果たす重要な役割を明確に示している。

現在進行中の米軍の軍備増強――すなわち、2018年論文で指摘された要衝に沿って展開する純粋な対艦任務部隊への海兵隊の再編、そして日本のような代理勢力や、台湾およびフィリピンのような地域の分離派当局の軍事化――これら一連の動きは、2018年論文が単なる提案にとどまらないことを示している。2019年のランド研究所論文と同様、米国がその後実行に移した枠組みであることを示している。ここで再軍備化された攻撃的な日本は、その主要構成要素の一つである。

日本の台湾への焦点:偶然ではない

日本の台湾に関する攻撃的姿勢の高まりは、米国が自国の長年の「一つの中国」政策をますます公然と無視する姿勢と並行して起きている。

米国国務省歴史局は、この政策を記述した1972年の中米共同コミュニケの原文を公開している。コミュニケによれば、「米国は、台湾海峡の両岸のすべての中国人が一つの中国が存在し、台湾は中国の一部であると主張していることを承認する。米国政府はその立場に異議を唱えない」。

しかし米国はその後、この政策を意図的かつ継続的に違反し、中央政府の承認なしに台湾の分離派と政治接触を行い、日本を含む同盟国に台湾の地位についてより挑発的な立場を取るよう促し、ワシントン自身の対中対決の負担を「分担」させ、さらには台湾当局への武器売却を継続してきた。

ドナルド・トランプ政権は最近、3億3千万ドル規模の武器パッケージを承認した。ロイターによれば、これは台湾ですでに運用されている米国製航空機(F16およびC130)の部品を含むという。この武器売却は現トランプ政権下で初めてだが、バイデン政権下およびトランプの最初の任期中にも同様の売却が続き、その期間、台湾省には数十億ドル規模の武器が売却された。

米国が主要な東アジアの駒を使って台湾をめぐる緊張を高めさせ、防衛費の拡大と核兵器政策の転換を示唆する発言を伴わせていることは、米国がこの地政学的焦点を意図的に対立へ押しやっていることを示す。米国の政策は、中国を追い詰め、そのいかなる反応も攻撃的に見えるように仕向け、米国主導の代理戦争的軍拡と潜在的な衝突を正当化するために設計されている。

これらすべては、中国がその中心の柱である多極化世界を抑え込み、封じ込めるという、一貫して根を張った、世界規模の米国主導戦略の諸兆候である。日本は、アジア太平洋における複数の「ウクライナ」のうちの少なくとも一つとなる位置に置かれている。

北京、モスクワ、そして多極的世界を求める国家群は、米国の言葉ではなく行動こそが、米国がいかなる代償を払っても覇権を維持しようとする強制・対決・封じ込め戦略への断固とした姿勢を示す確かな指標であることを認識しなければならない。多極的世界を志向する側もまた、この米国戦略に抗し、最終的にそれを克服するための同等の決意を持たなければならない。

筆者はバンコク在住の独立系地政学アナリストであり、元米海兵隊員である。

(翻訳以上)

Monday, November 03, 2025

石油産油国であり多極化勢力の一端であるシリア、ナイジェリア、ベネズエラを攻撃する米国:ブライアン・バーレティックの分析 Brian Berletic: Fake Handshakes vs Continuity of Agenda: Trump Repeats 1st Term Bait & Switch on China Relations (Japanese Translation)

気鋭の国際情勢アナリスト、ブライアン・バーレティック氏の最新の動画の翻訳です。彼は、米国と西側の覇権に対する執念は変わらない、多極化を認め国際協調路線に切り替えることはあり得ないと言っています。悲観的ではありますが、彼は、政治家が言うことではなく実際に起こることと、金の動きを見よと言っています。バーレティック氏は、企業メディアはもちろん、オルタナティブメディアにさえ懐疑の眼を向けます。トランプ大統領がディープステートを倒すとか、戦争をやめるとか、期待がありましたがすべて現実は別のものになっています。民主党であれ、共和党であれ、米国の政策的連続性は変わりません。これこそが今世界の平和に対する最も大きな脅威であるということをバーレティック氏は主張しています。

小見出し、強調の太字、リンクは訳者がつけたものです。AI訳に手を入れ、繰り返しなどはまとめたところもあります。翻訳はアップ後修正するときがあります。

元の動画はここです。動画は下に埋め込みました。 https://www.youtube.com/watch?v=5t27R1u2X_8&t=2085s

Fake Handshakes vs Continuity of Agenda: Trump Repeats 1st Term Bait & Switch on China Relations


ブライアン・バーレティックの国際情勢分析(2025年11月2日):「偽りの握手」と「政策の継続」――トランプは第1期と同じ“見せかけと裏切り”を米中関係で繰り返す


米国外交の本質:戦争を終わらせる気などない

最初に取り上げたいのは、米国のドナルド・トランプ大統領と中国の習近平国家主席の会談です。
この会談は多くの分析を呼び、いわゆる「専門家」と称する人たちが、一言一句、あらゆる仕草まで細かく読み解こうとしています。

しかし、皆さんに思い出していただきたいのは、トランプ大統領が第1期のときにもまったく同じことをしていたということです。彼はプーチン大統領とも習近平主席とも会い、いずれについても「将来は明るい」「両国関係は素晴らしい」と言っていました。

ところが、彼の任期の残りの期間、トランプ大統領はオバマ大統領の政策を引き継ぎ、中国とロシアの両国を包囲・封じ込める路線を続けました。これは、第二次世界大戦終結後から冷戦期を通じ、現在に至るまで米国が追求してきた政策であり、今も続いています。

つまり、私たちが見ているのはトランプ政権第1期の再現なのです。彼はプーチン大統領と会った後、ウクライナ戦争を激化させました。ウクライナを通じて米国がロシアと戦っているこの戦争で、トランプ大統領は「戦争を終わらせたい」と装いながら、実際には激化させています。彼はバイデン政権がこの戦争を始めたと非難し、彼の国務長官マルコ・ルビオは「これは米国がウクライナを通じてロシアと戦っている代理戦争だ」と述べました。しかし実際には、彼らは戦争を続けるだけでなく、さらに拡大させているのです。

口では「終わらせたい」と言いながら、行動ではエスカレートさせている。まさに典型的です。これが彼が第1期を通じて行ったことであり、第2期でもまったく同じことをしています。米中関係についても同様です。

多くの人々は、トランプ大統領が米国と中国を「G2」と呼んだことに希望を抱き、「米国主導の一極体制が終わるのではないか」と考えました。
しかし、そうではありません。米国の大統領は誰であっても、選挙で選ばれていない特定の企業・金融権益層のために働いています。トランプ政権も例外ではありません。「G2」という一言、文字と数字の組み合わせを言っただけで、何十年にもわたるこの既得権益層の目的が終わるわけがないのです。

「交渉相手にならない国家」米国

私はXに「短い記憶――交渉相手にならない米国 Short Memories Regarding Agreement-Incapable America」という投稿をしました。

【訳者注:agreement-incapable というのはこの場合、交渉相手にならない、約束を守らない、信頼できない相手、という意味です。】

この「交渉相手にならない」という表現を最初に使ったのはロシアだったと思います。

それは、ドナルド・トランプ大統領やジョー・バイデン大統領個人が「交渉相手にならない」だという意味ではありません。米国の外交政策を動かしている、選挙で選ばれていない特別利益集団――つまり、支配的な経済・金融勢力――こそが「交渉相手にならない」なのです。

彼らは世界全体における米国の覇権を維持することを目的としています。競争相手や同盟国であっても、対等な存在として認めることを拒みます。彼らは単極的な世界秩序を望み、自分たちを他のすべての国の上に置こうとします。

他者との協調という概念そのものを否定している人々と、真の合意を結ぶことは不可能です。

最近の米中会談――関税、輸出制限、制裁、その他の経済・外交措置など――は、ほとんど意味がありません。なぜなら、米国は自らの提案や合意を維持する能力がなく、特に弱い立場で結んだ合意を守ることは決してないからです。

米国は衰退する帝国であり、多くの点で「弱い立場」から動いています。
彼らがロシアや中国と合意するのは、理性や多極的世界秩序を受け入れたからではなく、単なる実利主義によるものです。つまり、体制を立て直すための時間と余地を稼いでいるだけなのです。

これまでもそうしてきましたし、今もまったく同じです。
会談から生じる「進展」は、一時的な休止や再編成に過ぎず、再び包囲と封じ込めの政策を強化するための準備期間になります。

この封じ込めは、関税や制裁などの経済的手段だけでなく、軍事・非軍事の圧力、政治的工作、そして中国と友好的な政府(たとえばベネズエラなど)の転覆を通じて行われています。

衰退する帝国は、ロシア・中国・イランの同盟国を攻撃するーベネズエラ、ネパール

それにもかかわらず、「米国と中国は共に新しい未来を築いている」と語る分析者がいます。
しかし、現実には米国は中国の国境に接する国々の政府を転覆させています。ネパール政府を倒したばかりです。さらにベネズエラの政府を侵攻・転覆しようと公言しています。

その理由は単純で、ベネズエラがロシア・中国・イランの同盟国だからです。
米国はこれらの国々から直接的に欲しいものを得られないため、周辺国や同盟国を標的にしているのです。

このため、ベネズエラは深刻な破壊と死、そして政府崩壊の危機に直面する可能性があります。なぜなら、米国の本質は何も変わっていないからです。

米国はいまも「世界的覇権」という強迫観念に取りつかれています。しかし、もはや直接的な支配を維持できないため、間接的な方法――他国の同盟関係を切り崩し、多極世界を孤立させる――で再び優位を取り戻そうとしているのです。

多極化の流れが米国主導の覇権を完全に凌駕してしまう前に、それを抑え込もうとしているのです。

米国は中国包囲政策を再調整すれば、結んだあらゆる合意を無視し、中国の台頭を妨げるために再びあらゆる手段を使うでしょう。

私たちは何度も、米国がロシア・中国・イランと合意を結んでは破ってきたのを見ています。
たとえば、イランとの合意交渉の最中にイスラエルを通じてイランを攻撃し、軍事・科学・政治指導層を標的とした**斬首作戦(decapitation campaign)**を試みました。さらに米国自身がイランに対して公然と侵略を行いました。

中国に対しても同じことをするでしょう。すでに始まっています。中国はそれを理解しています。問題は、西側の「専門家」やオルタナティブ・メディアがそれを理解しているのか、それとも意図的に無視しているのかということです。

米国は外交を行いません。火を見るよりも明らかです。
米国には外交の概念そのものが存在しません。

米国が行っているのは、単に時間と空間を稼ぎ、状況を有利に整えるための操作です。目的は一貫しており、今も変わりません。世界覇権の維持と、敵味方を問わずすべての競争相手の排除です。

この根本的な目的と、それを支える利害構造が変わらない限り、米国の政策で変化するのは「手段」だけであり、本質は変わりません。

マレーシアのアンワル・イブラヒム首相は米国NEDの手先

私は米国によるベネズエラへの戦争準備を追跡しています。
人々の中には、「トランプ大統領は状況を変え、米国の覇権追求の路線から抜け出そうとしている」と考えている人もいます。
しかし実際には、彼はベネズエラ政府を攻撃し、転覆させる準備を進めています。

米国の外交政策の目的は何も変わっていません。変わっているのは、その達成方法だけです。

そのころ、マレーシアのある人からメールをもらいました。アンワル・イブラヒムについて調べてほしいというものでした。
私はイブラヒムについて、何年も前から警告してきました。

この写真を見ればわかるように、イブラヒムは長年にわたって米国の「民主主義基金(National Endowment for Democracy/NED)」の協力者です。

ワシントンD.C.で、NEDの元代表カール・ガーシュマンと一緒に写っている彼の写真があります。

アンワル・イブラヒムはNEDのイベントの常連パネリストであり、頻繁に参加しています。

彼の政治運動全体は、NED、ジョージ・ソロスの「オープン・ソサエティ財団」、そしてNEDの下部組織である「国際共和研究所」(IRI)「全米民主主義研究所」(NDI)などによって作り上げられたものです。彼らが文字通り、彼の政治基盤を築き、権力の座につかせたのです。

ある時期、マレーシア国内の一部勢力が、彼を取り込もうとしました。おそらく彼を懐柔し、米国への忠誠を弱めさせようとしたのでしょう。
しかし私はこう言われました――「ブライアン、アンワル・イブラヒムは中国と会っている。あなたは間違っている」と。
ですが、私は間違っていません。彼は今も、そしてこれまでもNEDと協力しています。これは疑いようのない事実です。

「中国と会う」=「中国の味方」とは限らない

こうした人々が中国と会っているのを見たとき、理解しておくべきことがあります。
米国には、中国のようにインフラ整備・生産・経済発展などの現実的な機会を他国に提供する能力がありません。
中国には多くの提供できるものがありますが、米国にはそれがありません。

したがって、どんなに親米的な国であっても、中国との関係を完全に断つのは自殺行為です。
実際、米国自身でさえ、中国との関係を完全に切ることは非常に困難だと認めています。

フィリピン、日本、韓国のような国々を見てください。政治的には米国の影響下にありますが、中国は依然としてこれらの国々の最大、または主要な貿易相手国です。

ですから、アンワル・イブラヒムが中国と接触しているという事実は、彼が「中国側についた」ことを意味しません。
彼は長年NEDの協力者として活動してきました。彼の政治的基盤は米国によって築かれ、忠誠も米国にあります。
このようにして米国の影響下で権力を得た人々は、決して信頼できません。

米国との自由貿易協定は「主権の譲渡」

アンワル・イブラヒムは最近、米国と自由貿易協定を結びました。
これに対し、かつての政治的ライバルであり、のちに協調を試みた人々――たとえばマハティール・モハマド元首相――が批判を強めています。

マハティール氏は、長年マレーシア独立のために闘ってきた政治家です。
マレーシアがかつて英国の植民地であったことを思い出すべきです。米国はその後、長い年月をかけて西洋による支配を再び確立しようとしてきました。

アンワル氏は、米国との自由貿易協定を擁護し、マハティール氏を含む前首相たちの批判を「政治的動機によるものだ」として退けました。
しかし、これらの批判には正当な理由があります。

アンワル氏はかつて米国の利益のために動いており、今もそうしています。
彼はマレーシアの国益ではなく、米国の利益のために行動しています。
これが「米国による政治的支配」の典型です。

最近、ある人たちは私にこう言いました。
「アンワル・イブラヒムが中国と取引しているのだから、あなたの警告はもう古い」と。

私はその誤りを説明しました。どの国であれ、中国とは関係を持たざるを得ません。

たとえば、アウンサン・スー・チーを見てください。
彼女は長年にわたり、米国政府が「民主化の象徴」として育て上げた人物でした。

彼女の野党は長い間、ワシントンD.C.に本部を置いて活動しており、その後ミャンマーに移され、政権の座につきました。


やがて軍によるクーデターで彼女は排除されましたが、そのとき人々はこう言いました。
「スー・チーが習近平主席と会ったから、米国が怒って軍を動かしたのだ」と。

しかし、それはまったくの誤解です。

誰もが習近平主席と会います。
中国は今や、経済・科学・技術の面で最も強力な国の一つです。
したがって、各国の指導者が中国と会い、協議するのは当然のことです。

スー・チーが習主席と会ったからといって、中国と同盟を結んだわけではありません。

同様に、アンワル・イブラヒムが中国と交渉しているからといって、彼が「中国側」に転じたと考えるのは誤りです。
それは単なる現実主義、つまり地理的・経済的な必然性に基づく行動です。

マレーシア経済は中国と深く結びついており、その関係を断てば国全体が崩壊します。
もし崩壊すれば、米国にとっても「使い勝手の良い代理国」ではなくなります。

したがって、握手や写真を見て「味方だ」「同盟だ」と判断するのはあまりにも単純です。
外交の握手など、ほとんど意味を持ちません。

「主権の譲渡」とNEDの構造

アンワル・イブラヒムが米国と結んだこの自由貿易協定は、彼の元同盟者たち――かつて彼を取り込もうとした人々――からも強く非難されています。
マハティール・モハマド氏はこの協定を「マレーシアの主権の譲渡」と呼びました。
これは非常に強い言葉であり、軽々しく言えることではありません。

NEDと関わる人物は決して信用できません。彼らは常に自国にとっての負担となります。アンワル・イブラヒムも例外ではありません。

このような人物を権力の座につけることは、極めて危険です。
もし彼のような人物が「人気があるから仕方ない」と言われるなら、それはその国の安全保障機構がいかに脆弱であるかを示しています。

米国はNEDやその資金提供先を通じて、各国の情報空間を支配し、21世紀型の植民地支配を維持しています。
これを排除できなければ、その国は再び「現代版植民地」と化します。

マレーシアではいま、米国に取り込まれた指導者が権力を握り、国家主権を売り渡しているのです。

「戦争省」への改称とナイジェリア・シリア問題

その後、私はピート・ヘグセスの発言を見ました。
彼はこう言いました。
「ナイジェリアやその他の場所で罪のないキリスト教徒を殺害する行為は、直ちに終わらせなければならない。」

ただしシリアを除くと付け加えないといけないですね。【訳者注:米国は、シリアの暫定政権によるキリスト教徒やアラウィ派の人々の惨殺を放置しました】

そして彼は、「戦争省(Department of War)」と呼びました。

人々はまだ「トランプ大統領がすべてを変えている」と信じていますが、彼は国防総省の名前を「戦争省」に変えました。
明らかに、彼らはロシア、中国、そしてその間にある国々すべてとの戦争を準備しています。
それでも、人々は「トランプは変化をもたらしている」と信じています。

「戦争省」は戦争のための準備をしています。
戦争省が準備する「行動」とは何でしょうか?
それは戦争そのものです。だからこそ「戦争省」と呼ばれているのです。

ヘグセスはこう言いました。
「ナイジェリア政府がキリスト教徒を守らないなら、私たちはテロリストを殺す。」
しかし、ここで言う「イスラム過激派」とは誰のことでしょうか?

それは実際には、CIAが武装させ、訓練し、資金と物資を供給し、指導している勢力なのです。
この暴力にはイスラム教そのものとは何の関係もありません。

むしろ、米国が創り出し、武装し、支援し、指導してきたこの過激主義の最大の犠牲者は、イスラム教徒自身です。

中東から北アフリカ、そしてナイジェリアに至る広範な地域で、イスラム教徒が主な犠牲者となっています。

また他の少数民族や宗教的少数派――キリスト教徒を含む――も被害を受けています。

ナイジェリアで標的にされているのはキリスト教徒だけではありません。
この米国の代理勢力による攻撃は、全地域で繰り返されているのです。

トランプ大統領と、テロリスト・アル=ジョラーニの握手

ここで一つ見てほしいものがあります。
トランプ大統領が、アル=ヌスラ戦線(アルカイダのシリア支部)の指導者アル=ジョラーニと握手している写真です。

米国はこの組織を創設し、武装させ、指導し、シリア政府を転覆させるために利用しました。

それはトランプ大統領の第1期の任期中のことです。

彼は、シリアのキリスト教徒を大量に殺害した組織の指導者と握手していたのです。

そして今、アル=ジョラーニはホワイトハウスに招かれることもあるのです。

ですから、ヘグセスが「ナイジェリアでキリスト教徒を守る」と息巻いているとき、思い出してください。

米国政府は、キリスト教徒を殺害してきた人物と握手し、彼らを支援し、彼らにシリアを明け渡したのです。

トルシー・ギャバードは「羊の仮面をかぶったネオコン」

それなのに、いまだに「米国は多極世界の建設的な一員へと変わりつつある」と主張する「分析者」がいます。

実際には、ピート・ヘグセスの横にはトルシー・ギャバード国家情報長官がいます。

ギャバードは「ネオコン(新保守主義者)」が羊の皮をかぶった存在にすぎません。

ギャバードは「米国を変える」と装いながら、議会に入るとすぐに笑顔でイエメン爆撃を正当化し、イランの核兵器計画(存在の証拠さえない)についても立場を翻しました。

そして今、ギャバードはヘグセスと並んで、ナイジェリアでの米国軍事介入への世論形成を手助けしています。

ナイジェリアは豊富な石油資源を持つ国です。

偶然でしょうか?

シリア、ナイジェリア、ベネズエラ――いずれも石油に恵まれ、地政学的に極めて重要な国々です。

そしてこれらはすべて、台頭する多極世界の一部であり、米国がその成長を阻止しようとしている国々です。

「政権転覆はやめた」と言いながら続ける米国

トルシー・ギャバードは最近、「トランプ大統領は政権転覆政策を終わらせた」と述べました。

しかし、現実には米国はいまもイラン政府の転覆を試み、ベネズエラ政府を転覆させると公言しています。ネパールではすでに政府を倒し、インドネシアでも転覆を試みました。

つまり、トルシー・ギャバードは片方の口では「政権転覆を終わらせた」と言いながら、もう片方の口では、さらに多くの政権転覆を行い、世界中のより多くの地域に干渉するための世論形成を進めているのです。

これはまさに「計画の継続」です。

問題は、トランプ支持者であれ、バイデン支持者であれ、オバマ支持者であれ、人々が自分の好むプロパガンダに閉じこもっていることです。

保守派はブライトバート、ニュースマックス、FOXニュースを見ます。
リベラル派はMSNBCやレイチェル・マドーを見ます。
しかし、これらはすべて同じ「深層国家」プロパガンダを別の包装で流しているにすぎません。

巨大企業が、異なるブランド名で同じ毒を売っているようなものです。
消費者は違っても、中身は同じです。

こうして人々は、自分のメディアが報じないことは「起きていない」と思い込みます。

たとえばFOXニュースが「ナイジェリアでキリスト教徒が殺されている」と言っても、
トランプ大統領がアル=ジョラーニと握手していた事実を一切伝えなければ、
視聴者の頭の中ではその事実は「存在しない」ことになります。

この仕組みがある限り、事態は永遠に繰り返されます。
人々は情報の泡の中に閉じ込められ、真実を知らされません。

たとえ人々が企業メディアを離れても、代替メディアに行けば別の嘘に出会います。
「新しい大統領の下で米国は変わった」と主張する者たちは、証拠もなく希望的観測を語るか、あるいは意図的に嘘をついているのです。

その結果、たとえ現実を見ようとする人であっても、結局は虚偽の分析にたどり着いてしまいます。だから、同じ政策が永遠に続くのです。

中国包囲とアジア版NATO構想

さて、中国包囲の話に戻りましょう。
トランプ大統領は「米国と中国はG2だ」と言っています。
これは彼が第1期のときにやっていたことと同じです。

彼は指導者と握手し、「友人だ」「協力しよう」と言います。
それは仮面にすぎません。

その裏で実際に行われているのは、政策の継続です。
つまり、ロシアと中国の包囲・封じ込めです。

米国はその周辺諸国を政治的に支配し、軍事化し、両国に対する「攻撃用の駒」として利用しています。
経済的・金融的な面でも、両国を切り離し、窒息させようとしています。

トランプ大統領は第1期の初めに習近平主席と会い、「建設的な新しい関係を築く」と約束しました。

しかし任期の終わりには、中国企業の経営者を逮捕し、中国企業の西側市場での取引を禁止させ、同盟国にも同じ措置を取るよう圧力をかけました。

さらに、ブッシュ政権やトランプ政権が一方的に破棄した軍備管理条約を利用し、ロシアと中国に向けて新たな兵器システムを配備しました。

ピート・ヘグセスは言いました。
「私は今年2回目となる会談で、オーストラリア、日本、フィリピンの担当者と会い、南シナ海における抑止力と即応体制の強化について協議した。我々は地域の平和と安定を維持するために力を合わせている。」

しかし米国は平和状態にありません。常に戦争状態にあります。

「力による平和(peace through strength)」という言葉は、矛盾そのものです。すでに戦争をしている国が「平和を維持する」と言えるでしょうか?それは「永続的戦争による平和」と言っているのと同じです。

実際に行われているのは、アジア版NATOの形成です。

フィリピン、日本、オーストラリアと会って何をしようとしているのか、それは米国が欧州でやってきたことと同じです。

米国はこれらの国々をまとめ上げ、ひとつの軍事・政治ブロックとして縫い合わせています。
これらの国々は、米国による制度的・政治的支配、すなわちNED(全米民主主義基金)を通じた政治的支配によって、事実上、米国の影響下に置かれています。

日本と韓国の場合は、さらに深い支配構造があります。なぜなら、米国は第二次世界大戦(日本)と朝鮮戦争(韓国)という二つの壊滅的な戦争のあと、これらの国々を軍事的に占領し続けてきたからです。

米軍は何十年にもわたり駐留し、その間にこれらの政府を政治的に掌握しました。
その結果、日本と韓国の政府はほとんど主権を持っていません。

オーストラリアは言うまでもなく、常に英米帝国の一部として行動してきました。

これらの国々を束ねて、米国は「アジア太平洋版NATO」を作り上げています。

正式な同盟条約がなくても、実質的には同じ仕組みが完成しています。

南シナ海の「保護」という名の中国封鎖

トランプ大統領は習近平主席と握手し、「米中はG2だ」と言います。
しかし実際には、中国を包囲・封じ込め続けています。

米国は「南シナ海の平和を守る」と主張しますが、
その海を通過する貿易のほとんどは、中国に出入りするものです。

米国のシンクタンクCSISのデータによれば、南シナ海を通る貿易の大部分が中国との取引です。

つまり、「南シナ海を中国から守る」とは、「中国経済の動脈を締め上げる」という意味なのです。

米国は、中国を経済的に窒息させ、崩壊に追い込み、従属させようとしています。

そのために、周辺国を取り込み、軍事化し、攻撃の足場にしています。
これはまさにウクライナを使ってロシアを攻撃している構図と同じです。

結論 ― 継続する政策

結局のところ、オバマ政権の8年間、トランプ政権の4年間、バイデン政権の4年間、
そして再び始まったトランプ政権の今も、米国の政策は一貫しています。

カメラの前で彼らが何を言おうと、行動は変わっていません。

政治的なレトリックに惑わされてはいけません。
見るべきは「金の流れ」と「現実に何が起きているか」です。

私たちは賢くならなければなりません。
現実を直視し、「そんなに悪くない」と自分に言い聞かせるのをやめるべきです。

「トランプが救ってくれる」と信じるのは幻想です。
現実――すなわち政策の継続――を直視しなければなりません。

そして、情報の泡に閉じ込められている人々に真実を伝える方法を見つけなければなりません。また、「代替メディア」を装って偽りを広める人々にも警戒が必要です。

企業メディアが嘘をつくのは当然です。ワシントンの政治家たちも同じです。しかし、表向きは独立しているように見える者たちも、しばしば同じ嘘を別の形で拡散しています。

常に自分の頭で考えてください。金の流れ、組織のつながり、現実の結果を追ってください。

レトリックやプロパガンダに惑わされてはいけません。真の分析とは、「何が起きてほしいか」ではなく、「実際に何が起きているか」を見ることです。

(以上)


Saturday, September 27, 2025

日朝国交正常化のためには、日本人が変わらなければいけない (9月27日シンポジウム「日朝ピョンヤン宣言から23年 国交正常化を求めて」乗松聡子発言) Normalization of Japan–DPRK Relations Requires Change in Japan

 9月27日、日本教育会館にて日朝全国ネット主催シンポジウム「日朝ピョンヤン宣言から23年 国交正常化を求めて」が開催されました。会場は立ち見が出るほどの盛況でした。和田春樹さん、李柄輝さんとともに登壇させていただいたのは大変光栄でした。お呼びいただいた藤本さんはじめ日朝全国ネットのみなさまに感謝します。そこでの乗松聡子の発言内容をここに紹介します。朝鮮がロシアに連帯したウクライナ戦争についてちゃんと理解することは大事だったので踏み込んで語りました。会場から反発は出ず、逆に、賛同の声、「自分の言いたいことを全部言ってくれた」との声、出版社の人からも、「ロシアを悪者扱いするような本は出さないようにしている」といった声が聞かれ希望を感じました。質疑応答で話題になった、ジェフリー・サックスやジョン・ミアシャイマーの言論も日本にある程度浸透しているとも感じました。時代は動き、メディアリテラシーのある人にはもう、西側のプロパガンダは通用しなくなってきていると感じます。朝鮮が「グローバル・マジョリティ」の一員であるという認識をみなさんと共有しました。


関連報道:
朝・日国交正常化の進展を/日朝全国ネット、東京で総会とシンポ

国交正常化の課題を問う/シンポジウム「日朝ピョンヤン宣言から23年」

高校、幼保無償化適用を要請/日朝全国ネット、国会議員が文科省へ


日朝国交正常化のためには、日本人が変わらなければいけない

 

2025年9月27日 乗松聡子

 

こんにちは、乗松聡子です。カナダに通算30年住んでいる日本人です。一昨日到着しました。きょうは、お招きをありがとうございました。

まず結論を最初に言います。

いま、米国が率いる西側帝国主義が破壊的戦争を続けています。ガザのジェノサイドはその典型です。

日本は、西側帝国に組み込まれたままの「名誉白人」国家です。G7に非白人国家として一国だけ参加しているのが象徴的です。

いま、グローバルサウスによる、脱植民地の動きが高まっています。西側帝国に搾取されてきた国々が、もうやられっぱなしにならないと、手を結んでいます。BRICSや上海協力機構の発展が目覚ましいです。

対ロシア制裁やトランプ関税も、非西側の結束を高める結果となっています。世界の貿易の脱ドル化が進んでいます。

そのグローバルサウスはいまやグローバル・マジョリティとも呼ばれます。朝鮮はグローバル・マジョリティの一員です。逆に取り残されているのは米国の属国である日本です。 

日本には、米国の呪縛を解き、アジアに戻ってもらいたいと思っています。

東アジアの平和を阻む要素ではなく、平和をつくる一員となってほしいです。そのためには朝鮮、中国、ロシアを理解、尊重することは不可欠です。

日朝国交正常化のためには、変わらなければいけないのは日本です。以下の項目について順にコメントします。

n  呼称問題

まずは、「北朝鮮」という呼称についてです。国の名前でさえないこの呼称がいまだに蔓延しています。

これは朝鮮を国として認めていなかった植民地支配時代の名残だという批判があります。私もそう思います。

韓国のことは国名で呼ぶのに朝鮮についてはそれを拒否する。これは差別としかいえません。

わたしは2019年訪朝したときに、まず国名を説明されました。朝鮮民主主義人民共和国、略すときは「朝鮮」であると。「鮮やかな朝の国」と説明されました。

その旅の中で、早朝にテドンガンのほとりを歩いたとき、朝日が射した川面の鮮やかさに目を奪われ、その意味がわかりました。これが当事者の望む呼び方です。 

日本の戦争時代、北米にいた日系人は敵性外国人とされ強制収容所に送られ、JAPと呼ばれました。今もカナダに暮らしていて、日系人コミュニティの中にこの傷が深く残っていることを実感します。JAPと呼ばれてもいいと思っている日本人や日系人はいないでしょう。それと同じです。 

日本メディアは、2002年日朝会談まではおおむね「朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)」と、併記する方法を取ってきました。これも問題だったのですが、会談で金正日国防委員長が「拉致」を認め、日本国内で憎悪感情が沸き起こりました。その年の年末、朝日新聞が、もう併用はせずに「北朝鮮」を使うと宣言し、NHKも2003年から変わりました。

朝鮮は、「北朝鮮と呼ぶな」という要求を繰り返し日本に対して行っています。2003年1月29日づけの「労働新聞」で、朝日新聞による「北朝鮮」呼称決定を批判しています。2005年にも、「北朝鮮」と呼ぶことは「わが国の存在と権威を無視する行為だ」と言っています。

日本は国交を正常化するためにも、相手国をその国の名前で呼ぶという最低限のリスペクトを示してこそ、スタート地点に立てるのではないでしょうか。

n  拉致問題

拉致問題は重大な人権侵害でした。ただ、私がいまだに理解できないのは、ふつう事実認定と謝罪をすればそれが和解への第一歩になると思うのですが、この場合、それがきっかけで逆に朝鮮に対するヘイトが増したことです。 

広島と長崎の原爆投下や都市空襲においては民間人が何十万人も殺されていますが、米国は謝罪もしていません。それなのに日本人の大半はアメリカが大好きです。この違いは何なのでしょう。 

訪朝したとき、通訳ガイドをしてくれた金さんが言っていました。あの頃は日本との国交正常化の期待から、日本語熱が高まったが、いまや日本語への需要も減ってしまったと。あの日朝会談はやらなかったほうが良かったかもしれないと。それを聞いてとても悲しく思いました。 

この問題は、被害者中心主義で取り組まれたとは言い難く、日本の保守政治家や右翼運動家が、政治利用のために解決を先延ばしにしてきました。 

しかし、拉致問題を利用して朝鮮を敵視する政策が、なぜ政治的プラスになってしまうのでしょうか。日本の一般市民はそんなに朝鮮をヘイトしたいのでしょうか。ここに根本的な問題があると思います。 

何より、日朝平壌宣言では、植民地支配で「朝鮮の人々に多大な損害と苦痛を与えた」歴史への「痛切な反省と心からのお詫びの気持ち」にもとづいた、植民地支配の清算と同時に取り組む問題だったはずです。 

植民地支配時約2500万人いた朝鮮人のうち3分の1,約800万人が強制動員や日本軍性奴隷として動員され、多くの人が命を奪われました。

これについて朝鮮側には償いや清算が全く行われていないどころか、在日朝鮮人の人権侵害、朝鮮学校差別、ヘイトスピーチの蔓延という形で、解放後80年の現在も植民地主義が続いています。 

気の遠くなるような規模の植民地被害を全く語らずに、拉致、拉致とだけ叫ぶ日本メディアと日本人は、ダブルスタンダードを露呈しているとしか言い様がありません。 

日本に帰るたびに思いますが、日本の人たちは拉致被害者や家族の名前をよく知っており、自分の家族か親戚かのように語ります。メディアの影響でしょうが、これが正直不気味で怖いです。この人たちは、日本の植民地支配による被害者の名前を一人でも言えるでしょうか。 

拉致問題は、日朝平壌宣言がいうように、日朝の間に横たわる多くの人権問題の一つであるという認識に立ち返る必要があると思います。そのためには被害者意識に偏った日本人の歴史認識を問い直さなければいけません。 

n  朝鮮学校、幼稚園無償化排除問題

2019年9月、金丸信吾さんの訪朝団が宋日昊(ソン・イルホ)日朝国交正常化交渉担当大使と会ったとき、朝鮮学校無償化除外の撤回がないかぎり「日朝関係は 1 ミリたりとも動かない」と言っています。朝鮮学校差別は国交正常化への大きな障害となっています。 

カナダでは日系人強制収容という歴史がありましたが、1988年にリドレスと呼ばれる、政府による謝罪と補償がありました。それは個々の被害者に補償しただけではなく、民族としての存在の権利を保障されたのです。そのおかげもあって、私はカナダで子どもを日本語学校に行かせ、日本文化に触れさせながら育てましたし、それで差別されたことはありません。 

私たちは好きでカナダに移住しましたが、朝鮮学校は、植民地支配があったゆえに奪われた文化や言語を取り戻すために作られたのです。本来は、償いの意味も含め、他の民族にもまして手厚くするのが当たり前です。 

しかし日本は正反対で、朝鮮学校を標的にして無償化から排除し、補助金を切り、存続の危機に追いやっています。これは民族抹殺、エスニッククレンジングの行為であると思います。

この問題は他の問題に比べ、日本政府の決断だけですぐ変えられる、比較的容易な問題です。明日にでも差別をやめるべきです。それで日朝国交正常化に一歩近づけます。

n  朝鮮半島の非核化

 「朝鮮半島の非核化」と、「朝鮮民主主義人民共和国の非核化」は全く違う概念であるのに、日本政府やメディアはこの違いをはっきりさせず、「北朝鮮の非核化」という概念を平気で語り続けています。

朝鮮にだけ非核化を求めるということは、すでに圧倒的に非対称な米国の核の脅威をまったく問題視せず、朝鮮にだけ身ぐるみはげということです。

相手の身になって考えてみればわかります。イラクやリビアのように敵視され指導者が残酷な方法で殺され、国を壊されたケースをみれば、朝鮮が核兵器をもって米国から身を守ろうとするのは当然のことです。

だから、非核化を語るのなら朝鮮半島における米国の核の脅威をなくすことが必要なのです。

先日、李柄輝先生の講座にオンラインで出たとき、「“朝鮮半島の非核化”とは朝鮮にとっては具体的にどういう意味なのか」ということを聞きました。

答えは、「米国は、弾道ミサイルから爆撃機・空母まで、多様な手段を通じて、迅速に朝鮮に核攻撃を加える態勢を維持している。そのような核攻撃能力を排除することが朝鮮半島の非核化である」とのことでした。

韓国と日本の米軍の存在自体が朝鮮にとっての核の脅威なのです。 

西側の言い分は、核のダブルスタンダードとしか言えません。西側の核はいいが、西側の敵の核は悪い。だから、ロシア、中国、朝鮮、イランの核は「悪い核」で、米国や同盟国の核は「良い核」だということです。イスラエルも核兵器を持っているのに査察も制裁もありません。

米国だけは何をやっても許される、という例外主義を日本も内在化しています。歴代の広島と長崎の式典での市長による平和宣言ではどこの国が原爆を落としたかを一度も言ったことがありません。日本被団協のノーベル平和賞の受賞スピーチでもそうでした。逆にロシアの核を名指しで批判していました。

敵視というのは戦争の前段階です。平和運動でさえ、政府と一緒になって特定の国を敵視するのです。戦争につながる敵対構造をあえて強化しながら核兵器廃絶などできないと思います。

n  グローバル・マジョリティの時代

9月3日に北京で開催された、「中国人民抗日戦争・世界反ファシズム戦争勝利80年記念大会」(この後は9.3と呼びます)では、習近平主席が、朝鮮の金正恩委員長とロシアのウラジミール・プーチン大統領とともにこの重要な節目を祝いました。画期的なことでした。 

しかし日本のメディア報道は、「良好な関係を誇示する」とか、「世界に結束を見せつける」という語調ばかりで、そこには加害国としての反省も、敗戦国としての謙虚さも見えません。

この催しは第一義的に、80年前の、大日本帝国を倒した記念日のお祝いです。日本人は米国と戦い、米国に負けたとしか思っていない人が多いので、この式典の意味がわからないのかもしれません。

米国の原爆投下が日本の降伏を決定的にしたかのように言われることが多いですが、実際はソ連の満州侵攻が大きな役割を果たしました。2月の日朝全国ネット創立パーティーにも来た、ピーター・カズニック教授など先進的な歴史家は、ソビエト侵攻のほうが大きな役割だったと言っています。

朝鮮は、40年の植民地支配の中で独立のために闘いました。1945年9月2日、戦艦ミズーリにおける降伏調印式で日本を代表した重光葵外相が足をひきずる姿に、私は「朝鮮は戦勝国である」という証を見ました。 

1932年、大韓民国臨時政府の命を受けた独立運動家ユンボンギルが義挙した「上海天長節爆弾事件」で片足を失っていました。 

今回、西側諸国がほとんど参加しなかった中、韓国からウ・ウォンシク国会議長が参加したのも、抗日戦争の勝者の一員であるということを印象付けました。 

来賓の26か国のうち、アジア太平洋戦争で日本の被害を受けた国々は他にも、インドネシア、マレーシア、べトナム、ミャンマー、カンボジア、ラオスなどが参加していました。

これらの国々は日本帝国主義を倒した日を共に祝う資格があります。米国、英国など他の連合国も参加すればよかったのです。

BRICSプラスパートナー諸国の20か国は、いまや購買力平価(PPP)ベースで世界のGDPのおよそ半分を占めており、人口では世界全体の過半数を超える規模となっています。

文字通り「グローバル・マジョリティ」になってきているのです。

習近平主席が9.3の演説で触れましたが、BRICS側はウィンウィンの関係を求めているのに米国はゼロサムの関係、つまり自らの覇権を維持することにしか関心がありません。

だから米国は対決姿勢を強め、制裁、関税などで他国を疎外しています。それが結果的にグローバル・マジョリティの国々の結束を強めています。

さきほど敵視政策の話をしましたが、米国は敵視どころではありません。この8〜9月だけでも、ウルチ・フリーダム・シールド(米韓)、フリーダム・エッジ(日米韓)、レゾリュート・ドラゴン(日米)という、大規模演習を行いました。

米軍基地で中国や朝鮮を取り囲み、中国が言い出したわけでもない「台湾有事」という概念を作りだし、戦争を煽っています。

米国が、中国や朝鮮の目と鼻の先でやっていることを、中国や朝鮮が米国沿岸でやったらどうなのでしょう?許されるはずがありません。

それなのに西側メディアは、9.3の式典における閲兵式を、「米国主導の国際秩序に対する強硬姿勢」と言って批判しました。

これだけ威嚇しておいて、中国は、国内で閲兵式をやることさえ許されないのでしょうか。

逆に、日本や欧米が「国際社会」と呼んでいる西側諸国は、世界の人口の15%にも満たないマイノリティなのです。グローバル・マジョリティが力をつけ、西側諸国にもう搾取はさせないという非西側国の、脱植民地主義の動きが加速しています。 

朝鮮はその流れの中にいます。9.3の式典に金正恩委員長が行ったことは、その世界の流れに朝鮮も確実に加わったという宣言にも見えました。 

n  米国が仕掛けた戦争

ロシアの特別軍事作戦について西側では、Unprovoked という枕詞とともに、ロシアが突然ウクライナを侵略した戦争だというナラティブが席捲しました。実際は違います。端的に言うと、この戦争は30年以上前にさかのぼります。ロシアが始めた戦争ではありません。米国が始めた戦争です。

米国のジャーナリスト、スコット・ホートン氏が昨年「Provoked」という分厚い本を出しました。7000のソースを使った、700ページの本で、どれだけ米国がロシアを威嚇してきたかーパパブッシュからバイデンにいたるまで、徹底的に記述しています。

冷戦が終結し、存在意義がなくなったはずのNATOは約束に反して東方拡大を続けました。2014年、米国は、ウクライナのナチス勢力を利用して、ウクライナ政権を転覆させます。民主的デモを装って、その国を自分の思い通りになる政権に取り換える米国の常套手段です。

それ以来、ウクライナの傀儡政権は東部ドンバス地方のロシア系住民を徹底的に迫害しました。グラートというロケット弾で市民に対し無差別攻撃を行いました。ドンバスの内戦では、国連によると1万4千人が命を落としました。

和平のためのミンスク合意も、西側が踏みにじりました。21年12月ロシアから米国への安全保障のための条約案もすべて米国が拒絶しました。22年2月、ウクライナによるドンバス攻撃が激化する中、とうとうロシアはドネツクとルガンスクの独立を承認し、特別軍事作戦に踏み切ったのです。 

目的はウクライナ征服でも欧州侵略でもありません。自国と、ロシア系住民を守るためのウクライナ中立化、非ナチ化です。やりたくてやっているのではありません。

ウクライナ戦争の根本の原因を理解することは、朝鮮のロシア派兵を理解するためにも不可欠と思います。

米国およびNATOが束になってロシアを攻撃している中、ロシアも同盟国を持つことが許されていいはずです。

ロシアと朝鮮は24年、包括的戦略パートナーシップ条約を結び、その同盟関係のもとで朝鮮は派兵しました。派兵先は、ウクライナに攻撃されたロシア国内のクルスクの防衛に限定していました。

朝鮮兵は100人以上が戦死したと聞いています。ご遺族のお気持ちを思うと、計り知れない悲しみであったと想像します。

ただ、朝鮮がロシアと連帯したことについては、正しかったと思います。

ロシアの特別軍事作戦は、世界で内政介入と戦争を繰り返す西側帝国に対する、脱植民地主義の闘いの一つです。それに朝鮮が連帯したということは、朝鮮がthe right side of history、歴史の正しい側についたということです。

n  平和主義と脱植民地主義 

このような話をすると、絶対的平和主義の立場から、戦争はいけない、非暴力でやらないといけない、核兵器はいけない、といったことを言う人たちが必ず出てきます。

わたしはこのような見方を、平和主義をかざしながら、脱植民地の闘いを抑えつける、一種の帝国主義であると思います。

それは平和主義でさえありません。誰かを踏みつけた上での「平和」など、平和とは言えないからです。(クォン・ヒョクテ『平和なき「平和主義」』)。

米軍基地を押し付けられている沖縄の人が、「日本が受け入れると決めた米軍基地は、沖縄ではなく日本本土に置け」という当然の要求を、「基地はどこにも要らない」と言って抑えつけるのもこのパターンです。 

植民地支配しておいて、ユンボンギル義士のような蜂起行動を「テロリスト」と呼ぶのもそのパターンです。80年近くにおよぶイスラエルによるパレスチナ民族浄化という背景で起こった23年10月7日のハマスの蜂起についても、テロリスト扱いがいまだに西側に蔓延しています。 

圧倒的非対称の構造で長年抑圧しておいて、被抑圧のほうが少しでも抵抗すると、暴力的だ!テロだ!といって100倍返しをするのです。 

非難すべきはどちらでしょうか。

あらゆる平和的、外交的、政治的手段を奪われた民族が武装蜂起することを、奪っている側が責めることはできません。法政大学のシン・チャンウ教授の著書『植民地戦争』にあるように、「抵抗する側の視点」からの正当性を持つ戦争です。 

日本の人たちは、「9条」や「平和」や「核廃絶」という、聞こえのよい言葉に乗せた「帝国主義的平和主義」を振り返る必要があります。 

沖縄や韓国の軍事化を前提にしながら語る「9条の平和」。米国の核の傘を前提に語る「核兵器廃絶」。日本を被害者として宣伝する「唯一の被爆国」という概念で、その暴力性は増幅します。 

いまこそ、日本人はやられた側に立っての捉えなおし、語り直しが必要と思います。植民地支配されたことのない民族だからこそ、想像力をはたらかせる必要があります。 

n  日朝全国ネットの役割

 世界で、グローバル・マジョリティによる、大きな脱植民地の流れ、多極化とも言われる流れに朝鮮が参加しています。米国および西側諸国はこのままゼロサムの闘いを続け滅亡の道を歩むのか、それともウィンウィンの新しい世界秩序に参加するのかの岐路に立っています。

日本はアジアに位置しながら、なお「脱亜入欧」の道を歩み続けています。果たして、このまま米国に従属し、戦争と破壊の道をともにするのでしょうか。それとも、再びアジアの一員となり、地域の平和と自己決定権に貢献するのでしょうか。

朝鮮との国交正常化は、日本が「グローバル・マジョリティ」に受け入れられる可能性があるかどうかを示す、試金石になるのではないかと考えます。

それを可能にするため、日朝全国ネットは、朝鮮への理解と友好を推進する活動をどんどん行っていけばいいと思います。自分たちがマジョリティであると、自信を持っていいと思います。 

(おわり)