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Friday, December 09, 2011

ニューヨークタイムズ記事、除染計画に疑問を呈す New York Times Article Poses Questions Over Japan's Decontamination Plans

12月7日のニューヨーク・タイムズ東京支局長のマーティン・フラッカー氏による記事「日本は大規模な除染計画への希望(見通し)について二分されている」は注目に値する。除染事業を、日本最大の「ホワイト・エレファント」公共事業になる可能性があると言っている。共同通信はこのように報道した。
2012年12月7日 共同通信

米紙、除染への悲観論紹介 「最大の浪費事業になるかも」
http://www.47news.jp/CN/201112/CN2011120701001683.html

 【ニューヨーク共同】米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)は6日、東京電力福島第1原発事故後取り組まれている除染とそれに対する日本での論議を紹介し、「日本再生を示す」との積極論の一方で「最大の浪費事業になるかもしれない」との悲観論もあることを指摘した。

 同紙は除染を「巨大な規模」とし、専門家は「数千の建物を洗浄し、コネティカット州並みの広さの地域で多くの表土を交換して初めて住民は戻れる」とみていると説明した。

 さらに児玉龍彦東大教授の見方を紹介。除染自体は支持するものの、避難している人は除染が生きているうちには終わらないということを受け入れなければならないとしている。
「ホワイト・エレファント」は文字通りだと「白い象」であるが、この記事では「浪費事業」と訳している。基地や原発を受け入れている自治体が交付金で作る、小さな町にはそぐわないような立派な施設の数々、いわゆる「ハコモノ」を指していうときも多い。「無用の長物」とも訳せる。しかし除染は「無用の長物」どころか、大量の放射性廃棄物という「有害の長物」を生む。除染自体に効果があればいいが、それが疑わしいというのがこの記事の論点である。

NYT記事は、双葉町のゴーストタウンぶりを記述した後、このように綴る。


双葉町から避難した人たちは、福島第一から半径12マイル(20キロ)ともう一つの北西部の地域(飯館村等計画的避難区域のこと)から避難した90,000人に含まれる。

現在日本は、この人たちが帰還できるように、前例のない除染計画を立てている最中である。

試験的な除染が成功した場合避難地域に人を戻すか否かは、未来の日本をどうするのか、というより大きな議論を象徴する論争となっている。除染を支持する人たちにとって、この地域は、日本の大いなる決意と卓越した技術力をショーケースするため―日本がまだ大国なのだということを証明するため―の機会なのだ。その人たちにとって除染は日本の復興のシンボルなのだ。

しかし除染に批判的な人たちは、これが日本の最大の「ホワイト・エレファント」(無用の長物)公共事業になり得ると反論する。日本が震災後、過去20年間経済成長を阻んだ浪費的な方法に舞い戻る例になると。

今のところ政府は原発事故発生以来のパターン通りに動いてる―危険を軽視し、事故の規模を過小化して見せるのに懸命になっている。すでに試験的な除染は立ち往生している。除染後の汚染土の引き受けを地元が渋ることを政府は予想できなかった。

近くの町で大規模な除染に関わった放射線の専門家は、除染後も、長期的に住むための国際基準以下に抑えることはできなかったと言う。

この人は除染・帰還を支持しているが、政府が事態の深刻さを国民に率直に伝えていないと指摘する。

その人とは東大アイソトープセンター所長の児玉龍彦であり、「福島を救うことは可能と信じているが、避難した人たちの多くは、自分たちの生きている間にはそれは起きない(帰れない)ということを受け入れなければいけません」と言っている。

何千、何万もの建造物に付着している放射性物質を除去して、コネチカット州に相当する土壌を入れ替えなければいけないと専門家が指摘していることから、日本がどれだけの規模の除染を行おうとしているかの想像がつくだろう。

森林の除染も必要となると、完全な伐採(クリアカッティング)、文字通り森林自体をぜんぶ削り取らなければいけなくなる。

福島第一の事故より大規模であった唯一の事故、チェルノブイリのときはそこまではやらなかった。30万人の住民を避難させ、広大な農地を放棄した。

日本の政府関係者の多くは、日本にはそのような余裕はないと信じている。避難地域は、人口の多い日本の面積の3%以上を占めている。

避難地域の一つ、大熊町の渡辺利綱町長は、「我々はチェルノブイリとは違う」と言う。「我々は戻ると決意している。日本にはそれができる意思と技術がある」と。

先祖代々19世代大熊町に住んできた渡辺氏の地元への愛着は、日本の地方の人々の思いを反映している。地元の人の故郷への戻りたいという思いは日本中に大きな同情を呼び、その願いに逆らうことを困難にしている。

しかし、避難した人たちからも、また、巨額な費用のかかる除染事業が本当に人々を放射線から守るのかという保証もないのに行うのは犠牲が大きすぎるのではないかという人たちの中からも、反対の声が次第に出てきている。

地元自治体や、専門家たちが、事故を起こした原発付近にまた安全に住めるようになるなどと慰めの表明をしているが、それらは希望的観測以上のものではないように聞こえる。

低線量の被ばくの場合、どの程度の被ばくで、早死にしてしまう可能性が出てくるのかは誰もわかっていない。ということは、汚染地に住む日本人は将来的な調査の対象となっていく可能性が高い―広島と長崎の原爆以来、70年ぶりに日本人が再び放射線被ばくのテストケースとなってしまうのだ。

日本政府は、避難指定地域の除染にのみ責任を持つと言っている。それ以外の地域では、自治体が除染をすでに始めている。

20キロ圏内では環境省は2年以内に放射線のレベルを半分にまで下げると約束しているが、半減期の短い同位体があるのでそれは比較的容易な目標である。問題は、ICRPが指定する、年間の人工的放射線被ばく基準とされる1ミリシーベルトに下げるまでどれぐらいかかるかということである。放射線を何十年にも渡って発し続ける、セシウム137(半減期30年)の除去のことを考えるともっともっと困難な目標となる。

フットボール・ドーム33個分の汚染土を受け入れる場所がないため試験的な除染にも何か月もの遅れが生じている。

神戸大学の放射線専門家である山内知也は福島市での除染実験を行ったところ、丁寧な除染作業をした後も、家屋内の放射線量は25%しか減らないという結果だった。これは、、福島市内に、被曝許容量の4倍もの線量の地域がそのままになっているということを意味する。

「この試みは今のところ失敗だ、と結論づけるしかありません」と山内は言う。

除染の限界については、原発から15マイル(20キロほど)にある南相馬市の例を見るのがいいだろう。

南相馬市は7万人の人口のうち3万人が避難しており、その人たちを呼びもどすために学校、公園、スポーツ施設などの除染をしてきた。先日、ある高校のサッカー場、野球場にブルドーザーとダンプカーが入り、サッカー場の片隅の穴にはぎ取った表土が埋められた。現場を監督していたサクラ・マサヒロは、この作業で線量はかなり減ったが、市内の多くの場所はまだ、最低2年間は除染が行きとどかないであろうという見通しに不安を抱く。

彼が3人の娘を外出させるのは、学校に行くときと、表土を取り替えた公園で遊ばせるときのみである。「こんな生活は現実的であるのか」、と問う。

20キロ圏内では除染の困難は更に大きいものとなる。場所によっては、避難基準(年20ミリシーベルト)の25倍を」超える、510ミリシーベルトのところもある。

除染・帰還計画は避難した人たちの間に亀裂を生んでいる。大熊町から避難している1万1千5百人の人たちは、多くが60マイル(100キロ)ほど内陸に入った仮設住宅に暮らすが、この件について分断された状態だ。

渡辺町長は、大熊町西部の比較的汚染が少ない農地に新しい町を3年から5年以内に創ることによって町に帰還する計画を立てるよう指示している。

渡辺氏は最近の町長選で当選しているが、対立候補は、日本の別の土地に町を移動させるという計画で、小さい子を持つ住民たちからかなりの支持を集めた。支持者の一人、イケダ・ミツエは、8歳の息子がセシウム内部被曝していることを知り、町には戻らないと言う。

「危険すぎる。どうやって常にマスクをしながら生きろというのか」とイケダは言う。

他の多くの避難者のように、イケダも、政府は補償を払うのを避けるために除染にこだわっているのだと政府を非難している。

逆に、より高齢の住民たちは、家に戻してほしいと言う。

福島第一原発に修理工として40年間働いたツカモト・エイイチは、「放射線より喫煙の方がずっと危険だ」と言う。「大熊町は、原発事故後の復興の世界のモデルになれる。」

しかし政府の除染事業を支持する児玉龍彦でさえ、若い人たちが戻らなければ、そのような勝利は浅薄で一時的なものとしか言えないと言う。政府がまず、何か月もの責任回避により失った信頼を取り戻すことによってコミュニティの再建を始めなければいけないと言う。

「福島を救うにはお金と努力だけでなく、信じること(faith)が必要だ。年のいった人たちだけが戻るのでは意味がない」と児玉は言った。

Faith という言葉は、宗教的な「信仰」という意味や、誰かを信じるという意味で使われる言葉である。同じ「信じる」でも、trust や believe よりも、観念的な意味合いが強い。児玉氏がNYT紙のインタビューに英語で答えたのか日本語で答えたのか知らないが、科学者が faith という言葉を使ったのだとしたら、 それは彼自身が除染計画の効果に確信を持てていないということであり、「福島の除染の計画は、信じてやっていくしかないのだ」と言ったという様なニュアンスに聞こえる。

放射線被曝による健康被害のリスクと、巨額の費用が概ね無駄になるリスクをおかしてまで、「信じて」やっていくしかないような除染計画を行う意味があるのか。除染作業自体も、高汚染地域の除染に動員される自衛隊員、民間除染作業員、市民ボランティアの除染などで女性や若い人たちが無用の被ばくをすることになるのが心配である。除染で被ばくし、除染後も被ばくし、大量の除染土が盛られ、汚染が減っていない場所にたくさんの人が返され被ばくをさせられ、帰りたくない人は補償を切られ、見捨てられていくのは到底許せることではない。

ここまでの除染の費用と意思があったら、避難指定を受けていない、比較的汚染の高い福島市、郡山市などの子ども抱える人たちや若い人たちに避難の権利を与えてほしい。また、現在人のいない地域より人の住んでいる地域を優先してほしい。

米国きっての大手メディアがここまで日本の除染への疑問について踏み込んだ記事を書いている 。日本のメディアも、政府の除染計画や帰還計画を発表するだけでなく、もっと議論してほしい。

@PeacePhilosophy

元の記事は下記を参照。
Japan Split on Hope for Vast Radiation Cleanup
http://www.nytimes.com/2011/12/07/world/asia/japans-huge-nuclear-cleanup-makes-returning-home-a-goal.html?pagewanted=all
By MARTIN FACKLER
FUTABA, Japan — Futaba is a modern-day ghost town — not a boomtown gone bust, not even entirely a victim of the devastating earthquake and tsunami that leveled other parts of Japan’s northeast coast.

Its traditional wooden homes have begun to sag and collapse since they were abandoned in March by residents fleeing the nuclear plant on the edge of town that began spiraling toward disaster. Roofs possibly damaged by the earth’s shaking have let rain seep in, starting the rot that is eating at the houses from the inside.

The roadway arch at the entrance to the empty town almost seems a taunt. It reads:

“Nuclear energy: a correct understanding brings a prosperous lifestyle.”

Those who fled Futaba are among the nearly 90,000 people evacuated from a 12-mile zone around the Fukushima Daiichi plant and another area to the northwest contaminated when a plume from the plant scattered radioactive cesium and iodine.

Now, Japan is drawing up plans for a cleanup that is both monumental and unprecedented, in the hopes that those displaced can go home.

The debate over whether to repopulate the area, if trial cleanups prove effective, has become a proxy for a larger battle over the future of Japan. Supporters see rehabilitating the area as a chance to showcase the country’s formidable determination and superior technical skills — proof that Japan is still a great power.

For them, the cleanup is a perfect metaphor for Japan’s rebirth.

Critics counter that the effort to clean Fukushima Prefecture could end up as perhaps the biggest of Japan’s white-elephant public works projects — and yet another example of post-disaster Japan reverting to the wasteful ways that have crippled economic growth for two decades.

So far, the government is following a pattern set since the nuclear accident, dismissing dangers, often prematurely, and laboring to minimize the scope of the catastrophe. Already, the trial cleanups have stalled: the government failed to anticipate communities’ reluctance to store tons of soil to be scraped from contaminated yards and fields.

And a radiation specialist who tested the results of an extensive local cleanup in a nearby city found that exposure levels remained above international safety standards for long-term habitation.

Even a vocal supporter of repatriation suggests that the government has not yet leveled with its people about the seriousness of their predicament.

“I believe it is possible to save Fukushima,” said the supporter, Tatsuhiko Kodama, director of the Radioisotope Center at the University of Tokyo. “But many evacuated residents must accept that it won’t happen in their lifetimes.”

To judge the huge scale of what Japan is contemplating, consider that experts say residents can return home safely only after thousands of buildings are scrubbed of radioactive particles and much of the topsoil from an area the size of Connecticut is replaced.

Even forested mountains will probably need to be decontaminated, which might necessitate clear-cutting and literally scraping them clean.

The Soviet Union did not attempt such a cleanup after the Chernobyl accident of 1986, the only nuclear disaster larger than that at Fukushima Daiichi. The government instead relocated about 300,000 people, abandoning vast tracts of farmland.

Many Japanese officials believe that they do not have that luxury; the evacuation zone covers more than 3 percent of the landmass of this densely populated nation.

“We are different from Chernobyl,” said Toshitsuna Watanabe, 64, the mayor of Okuma, one of the towns that was evacuated. “We are determined to go back. Japan has the will and the technology to do this.”

Such resolve reflects, in part, a deep attachment to home for rural Japanese like Mr. Watanabe, whose family has lived in Okuma for 19 generations. Their heartfelt appeals to go back have won wide sympathy across Japan, making it hard for people to oppose their wishes.

But quiet resistance has begun to grow, both among those who were displaced and those who fear the country will need to sacrifice too much without guarantees that a multibillion-dollar cleanup will provide enough protection.

Soothing pronouncements by local governments and academics about the eventual ability to live safely near the ruined plant can seem to be based on little more than hope.

No one knows how much exposure to low doses of radiation causes a significant risk of premature death. That means Japanese living in contaminated areas are likely to become the subjects of future studies — the second time in seven decades that Japanese have become a test case for the effects of radiation exposure, after the bombings of Hiroshima and Nagasaki.

The national government has declared itself responsible for cleaning up only the towns in the evacuation zone; local governments have already begun cleaning cities and towns outside that area.

Inside the 12-mile ring, which includes Futaba, the Environmental Ministry has pledged to reduce radiation levels by half within two years — a relatively easy goal because short-lived isotopes will deteriorate. The bigger question is how long it will take to reach the ultimate goal of bringing levels down to about 1 millisievert per year, the annual limit for the general public from artificial sources of radiation that is recommended by the International Commission on Radiological Protection. That is a much more daunting task given that it will require removing cesium 137, an isotope that will remain radioactive for decades.

Trial cleanups have been delayed for months by the search for a storage site for enough contaminated dirt to fill 33 domed football stadiums. Even evacuated communities have refused to accept it.

And Tomoya Yamauchi, the radiation expert from Kobe University who performed tests in Fukushima City after extensive remediation efforts, found that radiation levels inside homes had dropped by only about 25 percent. That left parts of the city with levels of radiation four times higher than the recommended maximum exposure.

“We can only conclude that these efforts have so far been a failure,” he said.

Minamisoma, a small city whose center sits about 15 miles from the nuclear plant, is a good place to get a sense of the likely limitations of decontamination efforts.

The city has cleaned dozens of schools, parks and sports facilities in hopes of enticing back the 30,000 of its 70,000 residents who have yet to return since the accident. On a recent morning, a small army of bulldozers and dump trucks were resurfacing a high school soccer field and baseball diamond with a layer of reddish brown dirt. Workers buried the old topsoil in a deep hole in a corner of the soccer field. The crew’s overseer, Masahiro Sakura, said readings at the field had dropped substantially, but he remains anxious because many parts of the city were not expected to be decontaminated for at least two years.

These days, he lets his three young daughters outdoors only to go to school and play in a resurfaced park. “Is it realistic to live like this?” he asked.

The challenges are sure to be more intense inside the 12-mile zone, where radiation levels in some places have reached nearly 510 millisieverts a year, 25 times above the cutoff for evacuation.

Already, the proposed repatriation has opened rifts among those who have been displaced. The 11,500 displaced residents of Okuma — many of whom now live in rows of prefabricated homes 60 miles inland — are enduring just such a divide.

The mayor, Mr. Watanabe, has directed the town to draw up its own plan to return to its original location within three to five years by building a new town on farmland in Okuma’s less contaminated western edge.

Although Mr. Watanabe won a recent election, his challenger found significant support among residents with small children for his plan to relocate to a different part of Japan. Mitsue Ikeda, one supporter, said she would never go home, especially after a medical exam showed that her 8-year-old son, Yuma, had ingested cesium.

“It’s too dangerous,” Ms. Ikeda, 47, said. “How are we supposed to live, by wearing face masks all the time?”

She, like many other evacuees, berated the government, saying it was fixated on cleaning up to avoid paying compensation.

Many older residents, by contrast, said they should be allowed to return.

“Smoking cigarettes is more dangerous than radiation,” said Eiichi Tsukamoto, 70, who worked at the Daiichi plant for 40 years as a repairman. “We can make Okuma a model to the world of how to restore a community after a nuclear accident.”

But even Mr. Kodama, the radiation expert who supports a government cleanup, said such a victory would be hollow, and short-lived if young people did not return. He suggested that the government start rebuilding communities by rebuilding trust eroded over months of official evasion.

“Saving Fukushima requires not just money and effort, but also faith,” he said. “There is no point if only older people go back.”

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