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Wednesday, February 06, 2013

米軍海外展開の真のコスト:米国納税者は米軍の海外展開に年間1700億ドルも払っている (デイビッド・バイン「TomDispatch」記事 The True Costs of Empire 和訳)

アメリカ帝国主義への批判を精力的に続けているブログ「トム・ディスパッチ」(トム・エンゲルハート主宰)から、昨年12月11日に発表された、アメリカン大学准教授、デイビッド・バイン氏の論文の日本語訳を紹介する。彼は今、米国国外に1,000以上あるとされている在外米軍基地についての本をまとめている。当サイトでは過去にこの記事を紹介した。

米軍事基地帝国の今:水草のように歯止めなく世界中に増殖している小規模軍事基地「リリー・パッド」

今回の記事も、日本の米軍基地問題を世界規模の米軍展開という文脈の中でとらえるためにも重要な論文である。米国の2012年の国防予算が戦費(1,180億ドル)を含み6,620億ドルとされているので、バイン氏がこの記事で推計する海外展開のコスト1,700億ドルは全国防費の約4分の1を占めていることになる。そもそも米国の国防費は全世界のそれの約半分を占めるという巨額なものであり、この1,700億ドルという数字も中国全体の国防費よりも多く、日本の国防費の3倍以上である。翻訳者の酒井泰幸さんが、日本の読者にわかりやすいように金額はすべて日本円概算をつけ(記事が書かれた201212月頃の為替相場:80/ドルで計算)、この記事に出てくる地名をマークした地図、金額グラフまで作ってくれた。また、この論文を読んで、米軍基地受け入れ国の負担についてもより詳しい調査研究が必要であると思った。両側から見てこそ全貌が見えてくるだろう。以下当サイトの過去関連記事を参照。@PeacePhilosophy 

「思いやり予算」は在日米軍関連経費のたった28%である
「思いやり予算」と呼んでいた予算だけを指して「ホスト・ネーション・サポート」と呼ぶのは全くの間違いである
What the US-Japan Alliance, the "Cornerstone of Peace in Asia" Means


 Tomgram: David Vine, The True Costs of Empire
http://www.tomdispatch.com/blog/175627/
 
米軍海外展開の真のコスト:1700億ドル(136000億円)もの負担

世界を占領するために米国納税者はいかにペンタゴンに税金を払っているのか―


翻訳 酒井泰幸 翻訳協力 乗松聡子
この記事に出てくる地名をマークしたマップ


「建設工事を監視しているんですか?」と犬を連れて自転車に乗った中年の男がたずねた。

「ア、スィー」と、私は下手なイタリア語で答えた。

「ベネ」と彼は答えた。いいね、と言う意味だ。

私たちの前で、パワーショベルのエンジンが唸り声を上げ、空荷のダンプカーが泥道をガタゴト走っていた。注意を引く男たちの叫び声が、遠くで響くドリルやカッターの金属音と張り合っていた。イタリアの南アルプスの裾野を背景に、19基もの巨大なクレーンが風景の中に散らばっていた。100台以上の土木機械と、250人の作業者、足場の鉄骨が、間もなく34棟の新しいビル群となる場所を取り囲んでいた。

私たちは145エーカー(59ヘクタール)にも及ぶ巨大な「リトル・アメリカ」の建設現場の前に立っていた。ここヴィチェンツァは、ベニス近くにある建築で名高いイタリアの都市で、ユネスコ世界遺産がある。ここは、2013年にドイツから2,000人に及ぶ兵士を移転するために米国陸軍が準備してきた新しい軍事基地のダルモーリンだった。

1955年以来、ヴィチェンツァはもう一つの主要な米軍基地、キャンプ・エーダリも抱えてきた。これらは、米国が世界を包囲するために使う1,000以上の基地の一つである。(アメリカ50州とワシントンDCにはさらに約4,000ヶ所がある。)歴史上かつてないことだが、この軍事施設の集合体は、ほとんど注目されないにしても、第二次世界大戦以後の米国権力の重要な側面であり続けてきた。

冷戦の間に、このような基地は、ソビエト連邦を包囲するため、また米軍の権力を限界ぎりぎりまで押し進めるための「前進戦略」の基礎となった。今日ではライバル超大国がいなくなったにもかかわらず、ペンタゴンはダルモーリンのようないくつかの大きな基地の建設と維持を継続する一方で、何十ヶ所もの比較的小さな「リリーパッド(スイレンの葉)」基地を世界にばらまくことに熱を上げている。

アメリカ人は、どれほどの税金、そして借金が、基地の建設と維持に使われているかということはもちろん、これらの基地そのものについてもめったに考えることはない。建設中のダルモーリン基地と、近隣の関連施設(旅団本部と、2ヶ所にわたる兵舎群、天然ガス火力発電所、病院、2つの学校、フィットネスセンター、飲食施設、そして小規模ショッピング・モールなど)の建設のために、米国の納税者は少なくとも5億ドル(400億円)を支払うことになるだろう。(その間にも、地元住民の大部分は熱狂的に声を上げて新しい基地に反対している。)

基地と軍隊で世界を占領するために、米国は毎年どれほどの金額を費やしているのだろうか。米軍の世界的展開(グローバル・プレゼンス)のために、どれほどの金額を費やしているのだろうか。海外支出の会計を明らかにするよう議会から命令を受けて、ペンタゴンはその額を年221億ドル(17680億円)とした。しかし控えめな推定でさえ、全世界に軍隊を駐屯させる真のコストは、年間総額約1700億ドル(136000億円)に上ることがわかる。実際は、これより相当高いかもしれない。2001年に「グローバルな対テロ戦争」が始まって以来、米国の駐屯政策、つまり国外展開のコスト総額は、おそらく18000億ドル(144兆円)から21000億ドル(168兆円)に達している。

我々はいくら費やしているのか?

ペンタゴンは法律により、基地から大使館その他に及ぶ軍の国外の活動に値札を付ける年次「海外コスト要覧」を作成しなければならない。これは、軍事施設の建設、定期的な施設修繕と維持など、全てのコストを計算することを意味する。これにはさらに、在外の米軍・国防省職員百万人とその家族を養うコストが含まれ、給与、住宅、学校、自動車、機材、そして海外へ往復する人員と資材の輸送など、リストは延々と続く。

最新の海外コスト要覧は、9月30日に終わる2012会計年度のもので、221億ドル(17680億円)の支出を記載している。しかし、この年アフガニスタンや世界中のどこかで起きていた戦争に1180億ドル(94400億円)以上が費やされたが、議会の指示によりこれは全く含まれていない。

221億ドル(17680億円)は相当な額で、司法省と農務省の予算に匹敵し、国務省の2012年度予算のおよそ半分に当たるが、経済学者のアニタ・ダンクスが推定した2500億ドル(20兆円)とは際だった対照を見せる。彼女は戦費を総額に含めたが、それを除外しても、彼女の数字はおよそ1400億ドル(112000億円)になり、なおペンタゴンが示した額より1200億ドル(96000億円)も多い。

3年以上の間、国外基地の全世界的な調査の一環として、世界中に軍隊を駐屯させる真のコストを自分で計算したいと思っていたので、私は予算専門家や、現職あるいは引退したペンタゴン職員、基地予算担当職員に話を聞いてきた。しかし、関係する基地の数、国内支出から海外のものを区別することの複雑さ、ペンタゴン予算の秘密主義、ペンタゴンの数字が「しばしば架空である」という性格を考えれば、これは無駄骨ではないかと丁重にほのめかした人が多かった。(国防省はいまだに会計監査に合格できない唯一の連邦機関である。)

検索可能PDFファイルだけを頼りに、無駄骨覚悟の私はともかくペンタゴン会計の奇怪な世界に突入した。そこでは、台帳は今もしばしば手書きで、10億ドル(800億円)もが誤差の範囲として処理されることもある。私は、何千ページもの予算文書や、政府や独立機関の報告書、さらにショッピング・モール、軍事情報、郵便補助金など、ありとあらゆる何百もの項目に目を通した。

誤差は控えめな側に出るようにしたいと思い、私は議会が海外コスト要覧に義務づけた方法に従うことにしたが、一方でペンタゴンや議会が無視したかもしれない海外コストも探した。たとえば、国防省が海外基地での軍に支払う医療費や、コソボの兵員への支出、アフガニスタンに持っている550ヶ所の基地を維持するための出費を除外するのはおかしいとしか思えなかった。

以下、「基地建設を監視する」精神のもと、この地球という惑星を占領するための真のコストを解明するための私の旅路に案内する。

消えたコスト

初めて目にすると、海外コスト要覧は非常に包括的で漏れがないように見えるかもしれないが、米軍基地を受け入れていると知られている国が行方不明になっていることにすぐ気が付く。実際、少なくとも18の国と外国領がペンタゴン自身の海外基地リストから抜け落ちている。

特に驚かされるのは、コソボとボスニアが欠落していることである。米軍は大規模な基地と何百もの軍隊を10年以上にわたってここに置いており、別のペンタゴン報告書では2012年のコストを31380万ドル(251400万円)としている。その報告書によれば、海外コスト要覧はホンジュラスとグアンタナモ湾の基地のコストも約3分の1、つまり8500万ドル(68億円)ほど少なく示されている。

そして他にも妙な点が現れてくる。オーストラリアやカタールのような場所で、兵士に給与を払う資金は持っているが、照明をつけたり、食事を出したり、定期的な修繕をしたりといった「業務と維持」のための金は無いとペンタゴンは言う。これらのコストを修正すれば、推定3600万ドル(288000万円)の追加となる。 手始めはこれである。

記載から漏れた国でのコスト、43600万ドル(3488000万円)。

220億ドル(17600億円)に比べれば大したものではなく、ペンタゴン予算全体という文脈から見れば小銭のようなものであるが、これは入り口に過ぎない。

議会の指示により、プエルトリコ、グアム、米領サモア、北マリアナ諸島、米領バージン諸島という、忘れがちな米国領土にある基地のコストも、ペンタゴンは無視している。ペンタゴンはそれらの地域を「海外」と見なしているので、これはおかしな事である。さらに重要なのは、経済学者ダンクスが語るように、 「主として軍の目的のため、軍事力を及ぼすために…米国は領土を保持する」。さらに、これらは文字通り、そう、海の向こうにあるのだ。

控えめに見て、これは海外コスト要覧の軍事支出総額に30億ドル(2400億円)を加算する。

それだけではなくさらに、米国との「自由連合盟約」を結ぶ太平洋諸島という全く忘れられた疑似米国領がある。マーシャル諸島と、ミクロネシア連邦、パラオである。第二次世界大戦後に「戦略上重要な信託統治領」として米国がこれらの島々を支配して以来、米国はここに軍事施設を設置する権利を享受してきた。ビキニ環礁の核実験場やマーシャル諸島の別の場所にあるロナルド・レーガン弾道ミサイル防衛試験場などである。

これと引き替えに、内務省諸島関連部から毎年の援助金が支払われ、さらに57100万ドル(4568000万円)が加算され、コストの総額はこうなる。

米国領と太平洋諸島に36億ドル(2880億円)。

海洋については、議会の指示によりペンタゴンは海外の海軍艦艇の維持費を除外している。しかし海軍と海兵隊の艦艇は実質的に海に浮かぶ(あるいは潜る)基地であり、それらは海上(と海中)に強力な軍事力展開を保つために用いられる。これらのコストを非常に控えめに推定すれば、さらに38億ドル(3040億円)が加算される。

さらに、海軍が事前配置して世界中に錨を下ろしている船舶のコストがある。それらは、兵器類や、軍事資材、その他の補給物資を貯蔵した海上の倉庫/基地と考えることができる。そして陸軍が事前配置した物資も忘れてはならない。 これらを合わせて、年間6400万ドル(4832000万円)と推定される。これに加えて、ペンタゴンは海外への「海上輸送」や「空輸」、「その他の動員」費用の約86100万ドル(6888000万円)を省略しているようだ。全て合わせると、請求書にはこれだけ加算される。

海軍艦艇と兵員、海上・航空資産に53億ドル(4240億円) 。

また奇妙にもコスト要覧から抜け落ちているのは、医療費という些細な事項である。国防医療プログラムなどの国外人員への給付という海外コストは、年間117億ドル(9360億円)を加算すると推定される。そして軍人と家族の住居建設費の53800万ドル(4304000万円)は、ペンタゴンがまたもや勘定から見逃しているようだ。

そしてまた、基地でのショッピングも忘れるわけにはいかない。世界中の基地にある、ウォルマートのようなPX(ポスト・エクスチェンジ[米軍基地内の売店)の象徴的なショッピング・モールに、われわれ納税者は補助金を出しているのだから。PX制度は基地内のレクリエーション行事に資金の一部を出しているから独立採算であると、軍はいつも言っているが、PXの土地建物は無料、光熱費は無料、商品を海外へ輸送するのも無料であることを、ペンタゴン指導者たちは言い忘れている。またPXは免税で営業している。

納税者が提供している土地建物の価値や光熱費がいくらなのか推定は全くないが、取引記録には2011年の様々な補助金に26700万ドル(2136000万円)と報告されている。(失われた連邦税はさらに3000万ドル(24億円)以上が上乗せされるかもしれない。)少なくとも7100万ドル(568000万円)の郵便補助金も加えると、この額になる。

医療費、軍人と家族の住居、ショッピング、郵便補助金に126億ドル(180億円)。

ペンタゴンがもう一つ除外しているのは、駐屯する土地のため他国に支払われた賃借料である。日本、クウェート、韓国のようないくつかの国々は、じつは米国の駐屯のため、2012年に大枚11億ドル(880億円)もの補助金を支払っているのだが、基地専門家のケント・コールダーによれば、「基地を受け入れてもらうために米国が当事国に金を払う場合」のほうが、はるかに一般的である。

基地協定の秘密主義的な性格と、基地交渉に伴う経済と政治の複雑なトレードオフを考えると、正確な数字を明らかにすることは不可能である。しかしながら、ペンタゴンの資金で行われた研究によると、海外軍事経済援助総額の18%が基地利用権を買うために費やされている。これで我々の請求書はおよそ63億ドル(5040億円)ほど膨らむ。「基地と軍事施設の取得と建設」や、その他の目的のため、北大西洋条約機構(NATO)に支払われた17億ドル(1360億円)を加えると、この額になる。

「賃借料」純支払いと北大西洋条約機構(NATO)関係の拠出に69億ドル(5520億円)。

海外コスト要覧は全ての国外軍事活動のコストを報告しなければならないが、麻薬撲滅作戦の55000万ドル(440億円)と、人道および公共援助の1800万ドル(864000万円)を、ペンタゴンは無視している。このどちらも、人道支援について説明した予算文書に書かれているように、「強靱な軍事力の海外展開を維持し」、軍が「米国の権益にとって重要な地域の使用権を得る」ことを助けてきた。またペンタゴンは、基地内の汚染を監視・低減し、危険物その他の廃棄物を処分するための国外の環境保護プロジェクトや、「国際的な基地立地と軍事活動を支持する…戦略構想」のため、2400万ドル(192000万円)を費やした。 したがって、さらにこれだけ請求書に加算される。

麻薬撲滅、人道支援、環境保護プログラムに68200万ドル(5456000万円)。

世界を占領するコストに関するペンタゴンの勘定書は、海外の秘密基地と機密作戦のコストも無視している。総額510億ドル(4800億円)に上る2012年のペンタゴン機密予算のうち、私は控えめに維持管理費の海外部分の推定額だけを使い、これは24億ドル(1920億円)の加算となる。さらに、157億ドル(12560億円)の軍事諜報作戦がある。米国の法律が一般的に軍の国内スパイ活動を禁止していることを考えると、この支出の半額である79億ドル(6320億円)が海外で行われたと私は推定する。

次に、ソマリアリビアや、中東のその他の地域のような場所での秘密基地や、対テロ戦争が始まってから急激に増加した無人標的機による暗殺計画を含む、様々な活動に資金を拠出するCIA準軍事的予算を、我々は加算しなければならない。(何百人もの民間人を含む)何千人もの死者を出しておきながら、どうしてこれらの軍事コストを考慮しないでおけるだろうか。あるEメールで、グローバルセキュリティ・ドット・オーグ(GlobalSecurity.org)の代表であるジョン・パイクは、CIAの予算、推定100億ドル(8000億円)の「おそらく3分の1」は準軍事的コストに費やされていると私に書いた。よってこの額になる。

機密作戦、軍事諜報、CIA準軍事活動に136億ドル(1880億円)。

最後に真の大物が控えている。米国がアフガニスタンに建設した550ヶ所の基地コストと、米国がイラクから撤退する直前には505ヶ所を数えた米軍基地の、最後の3ヶ月(つまり、2012会計年度の最初の3ヶ月)にかかったコストである。ペンタゴンと議会はこれらのコストを除外するが、それはニューヨーク・ヤンキースの毎年の給与支払い簿を、フリーエージェント契約の巨額の給与を抜きにして計算するようなものだ。

控えめに計算するため、他国について使われる海外コスト要覧の計算方法に従いつつ、医療費と、基地予算の兵士給与分、賃借料、「その他の計画」のコストを含めると、この額が加算されると推定される。

アフガニスタンその他の交戦地帯での基地と軍事展開に1049億ドル(83920億円)。

海外コスト要覧の221億ドル(17680億円)という数字から出発し、今や総合計はこの額まで膨れあがった。

1680億ドル(134400億円)(正確には、169,963,153,283ドル(13597052262640円))。

その差は実に1500億ドル(12兆円)に近い。戦費を除くとしても(ヤンキースの喩えを考えればこれが良くない考えだと分かると思うが)、総額は651億ドル(52080億円)にのぼり、ペンタゴン自身の計算の3倍近くになる。

しかし、これで米国の駐屯コストは終わりだと思ったら大間違いである。予算のあちこちの隅に隠されている費用に加え、ペンタゴンの会計には他にも不正行為がある。米軍基地を擁しているのに海外コスト要覧から全く抜け落ちているコロンビアエルサルバドルノルウェーなど16ヶ国のコストを合計すると、35000万ドル(280億円)以上になるかもしれない。コロンビアでの軍事展開のコストだけを取ってみても、2000年以来85億ドル(6800億円)以上に上るコロンビア計画の資金の中で、何千万ドル(何十億円)に達するかもしれない。ペンタゴンはイエメンイスラエルウガンダセイシェル諸島のコストも各々500万ドル(4億円)未満と報告しているが、これはおそらく誤りで本当は何百万ドル(何億円)も多いだろう。

国外で展開する米軍全般のこととなると、他のコストの信頼できる推定は困難を極める。ここには、米国内のペンタゴン庁舎、大使館、基地と海外の軍隊を下支えするその他の政府機関などのコストが含まれる。また、米国訓練施設、補給倉庫、病院、共同墓地までもが、海外基地が機能するのを助けている。その他の支出に含まれるのは、外国為替のコスト、国外の兵員を相手取った訴訟での弁護士費用と損害賠償、短期の「臨時職務委託」、海外演習に参加する米国内の軍隊、そしておそらくNASAの軍事機能の一部、宇宙兵器、国外基地の職員を雇用する求人コストの幾分か、海外基地の過去のコストに起因する借金に支払われる利子、復員軍人省のコストや国外で服務した退役軍人へのその他の支出などである。

私の控えめな推定を遙かに超えて、世界中に駐屯させる真の費用は年間2000億ドル(16兆円)に近いかもしれない。

「スピルオーバー(漏出)コスト」

ところで、ここまで見てきたのは米国政府の予算に含まれるコストだけである。米国経済での経済負担の総額はもっと多い。これらの基地にいる兵員の給与はもともと納税者の支払ったものだが、兵員が地元のレストランやバーで飲食したり、衣服のショッピングをしたり、その地で家を借りたり、ドイツやイタリア日本で売上税を払ったりするとき、その金がどこへ行くかを考えてみよう。これらは経済学者が「スピルオーバー(漏出)」とか「相乗効果」と呼ぶものである。たとえば、私が2010年に沖縄を訪れたとき、海兵隊の代表者は、彼らの存在が基地契約、雇用、地域での購入、その他の支出を通じて地域経済に年間19億ドル(1520億円)の貢献をしていることを誇らしげに語った(訳者注:2009年の沖縄における軍関係収入は県の資料によると2,058億円とされている。この記事では、同じ基地が米国にあった場合を考えると米国にとっての損失であるように捉えられているが、実際は基地従業員の給料、軍用地料などは相当の部分を日本政府が在日米軍関係経費の一環として負担しているので、全額ではないにせよ相当分が日本の納税者の負担として考慮すべきである)。この数字は誇張されているかもしれないが、ケイ・ベイリー・ハチソン上院議員のような国会議員が、「米国の財政健全性」を守るため、新しい「アメリカ国内での基地建設」政策を呼びかけたことも不思議ではない。

関係するトレードオフ、つまり機会費用を考慮すると、このコストはさらに拡大する。同じ百万ドル(8000万円)を教育、医療、エネルギー効率向上のために投資した場合に比べ、軍事支出が百万ドルあたり創り出す雇用は少ない。学校に投資した場合のわずか半分にしかならない。さらに悪いことに、軍事支出は明らかに軍産複合体のロッキード・マーティン社KBRに直接の利益をもたらすが、経済学者のジェームズ・ハインツが語るように、これらの投資はインフラ投資のように「民間セクターの残りの部分の長期的な生産性」を引き上げるということはない。

ドワイト・アイゼンハワー大統領の有名な一節を当てはめるなら、建設された全ての基地は最終的には窃盗を意味する。まったく、ダルモーリンのインフラに費やされた5億ドル(400億円)を民間用途に振り向けたなら何が可能だったか考えさせられる。再びアイゼンハワー大統領の言葉を借りると、近代的な基地1つのコストは、26万人の低所得層の子供たちに1年間の医療を受けさせるか、 65千人を1年間ヘッドスタート制度[低所得層の環境不遇児を対象とした教育制度]に通わせるか、65千人の退役軍人が復員軍人省の年金を1年間受給するのに等しい。

異なる種類の「スピルオーバー(漏出)」

基地は、基地受け入れ国が負担する、財務コストと非財務コストの形で、別の「スピルオーバー(漏出)」も作り出す。たとえば、2004年には「分担金」の直接支払いに加え、基地受け入れ国は米軍基地を支援するために43億ドル(3440億円)分を物納で寄付した。何千人もの米海兵隊員とその家族を沖縄からグアムへ移転するための何十億ドル(何千億円)もの支出合意したことに加え、日本政府は沖縄の米空軍基地近くの民間住宅の防音工事に10億ドル(800億円)近くを支払い、騒音公害訴訟の損害賠償に何百万ドル(何億円)も支払った(訳者注:日本の場合、防衛省の資料によると2012年予算の在日米軍関係経費の総計は6,439億円であり、米ドルにしたら1ドル80円換算で約80億ドルに上り、この記事で言及されている規模よりはるかに大きい)。同様に、基地専門家のマーク・ギレムが報告しているように、1992年から2003年までの間に、韓国に駐留する米軍による犯罪のため、米韓両政府は損害賠償に2730万ドル(218400万円)を支払った。ある3年間だけで、米兵は「軽罪から重罪まで1,246件の犯罪行為を行った」。

これらの犯罪が示すように、地域社会への負担は経済的コストをはるかに超えて拡がっている。沖縄県民は最近、これまで連綿と続いてきた米兵による一連のレイプが、またもや発生した事件に憤慨した。これは、日本からイタリアまで、基地を巡って「増大する敵意のコスト」とアニタ・ダンクスが呼ぶものの一例に過ぎない。環境破壊が財務・非財務の代価をさらに押し上げる。インド洋のディエゴガルシア島に基地を建設したことにより、チャゴス諸島の全住民は流浪の身となった。

また米兵とその家族は、国外の単身勤務のあいだ頻繁な移動と離別のため、その非財務コストのある部分を負担している。これに伴う離婚家庭内暴力薬物乱用性的暴力自殺の率はいずれも高い。

「こんなもの、誰もこんなものは好きじゃない。」その建設現場を立ち去ろうとしていた私に、ひげ面の老人が語りかけた。アメリカ人が1955年にやってきて、今ではダルモーリン基地の見える場所に住んでいることを、彼は思い出していた。「それが人のためになるのならオーケーだが、人のためにはならぬのだ。」

「誰が払うのだ?誰が金を払うのだ?」彼は問うた。「ノイ」と彼は言った。私たちが払うのだ。

まったく、大は1700億ドル(136000億円)から小は数値化できない諸々のコストまで、我々全員が払わされるのだ。
この記事に出てきた金額を比較するグラフ
 

David Vine
デイビッド・バインはTom Dispatchの常連執筆者で、ワシントンDCのアメリカン大学で人類学の准教授をしている。彼は恥の島:ディエゴガルシア島の米軍基地の秘密史2009年、プリンストン大学出版局)の著者である。彼はニューヨーク・タイムズ、ワシントン・ポスト、ガーディアンマザー・ジョーンズなどに執筆している。彼は現在、米国外にある1,000以上の米軍基地についての本を仕上げている。この記事に記載された計算の詳細と、米軍の国外展開コストの図表は、www.davidvine.netを参照。

Copyright 2012 デイビッド・バイン

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