最後は、「1945ひろしまタイムライン」についてひとまず年末のまとめをしたいと思います。
いままでの投稿をもう一度ここにまとめます。まだの方は読んでください。時間のない人は★がついている投稿だけでいいと思います。
8月23日
8月26日
8月30日
9月7日
9月24日
10月2日
10月4日に広島でシンポジウム「NHKひろしまタイムラインと広島の民族差別の現在」を行いました。共同通信、朝日新聞、中国新聞、東京新聞などに取り上げられました。
10月5日にNHK広島局に直接抗議と署名を手渡しました。
10月5日 NHK広島放送局前にて 仲間たちと
10月6日
その後、10月29日、長崎原爆の被爆者で、日本被団協役員の田中煕巳(たなか・てるみ)さんにも抗議文への連名をいただきました。連名・署名いただいた328名のみなさんに感謝します。
NHKは結局居直りの姿勢を正すことはありませんでした。
私は琉球新報に連載しているコラムにもこの件について書きました。
11月10日
(ウェブ上では全文を読めません。読みたい方は連絡ください)
そしてその差別ツイート内容に、広島の法務局がお墨付きを与える結果となります。
12月11日午後7時から、NHKは広島のローカル番組で、「1945ひろしまタイムラインー戦後編」を放送しました。私も録画していた友人の助けで観ることができました。一つ、少し意外だったのは、差別ツイートに殺到した批判について無視する選択肢もあったであろうに、「差別を助長しているのではないかとのご批判を多数いただきました」と認めたことです。釈明についてはHPで言っている内容と同じでしたが、HP上や、マスコミの取材に応じてではなく、NHKが自らの番組で、差別助長との批判を多く受けたことを認めたのは初めてであったと思います。
番組では一人の在日朝鮮人被爆者・李鐘根さんにスポットライトを当て、その人が受けた差別の証言などがありました。これは重要な部分であったとは思いますが、このツイートに抗議した在日朝鮮・韓国人の人たちや、民団・総連という当事者団体からの抗議については一切触れることはありませんでした。
また、この番組でNHKは重大な過誤を犯しました。一連の差別助長ツイートの内容は、モデルとなった新井俊一郎氏の当時の日記にはなかったことが判明しているのに、「日記をもとに」とナレーションし、また批判があったことを説明する中で、「戦争の時代に、当時の中学一年生が見聞きしたこと」と言い切っているのです。このツイートの内容については、この投稿を見てもらえればわかりますが、新井氏の当時の日記ではなく、21世紀になってから著した手記に突然出てくる内容です。これをNHKは、知っていながら、当時新井氏が書いた日記にあったかの如く番組の中で言ったのです。この問題について、ツイートや報道に対し、ネットではヘイト的なコメントが集中しましたが(たとえばこのヤフーニュースに掲載された共同通信の記事。これらの悪意に満ちたコメントの数々こそが、差別助長の証拠でした)、その中でも多かったのは「本当にあったことなんだから書いて何が悪い!」という開き直りでした。NHKは番組の中で、「日記にあった」という誤りを補強するような言い方で、そういった開き直りに自ら加担しているようにも見えました。
共同通信は12月22日、こう報じました。
民団などが起こした人権救済申し立てに対し、広島法務局は22日「侵犯の事実があったとまでは判断できない」と回答したといいます。
当事者が「差別だ」と言っているのに、「差別ではない」と言ってしまえる神経がわかりません。多分、差別を受けたこともない、差別を受ける側の気持ちをわかろうとしたことのない人たちが下した判断でしょう。これも「戦後」75年、「ヒロシマ」発の「もう一つの公的ヘイト」と言えると思います。
NHKは、当初の予定通り、年末を持ってこのプロジェクトを終了し、アカウントもHPも閉じる予定ということです(8月1-15日の分だけは21年3月末まで掲載すると)。
12月28日「シュン」ツイッターアカウントのスクリーンショット
「ひろしまタイムライン」のヘイトツイートも、抗議を受けて居直りHPに再掲載したNHKの姿勢も、この件に多くが関心を示さなかった日本の「平和」「反核」運動社会も、民団の訴えを却下した広島法務局も、戦争の終盤に受けた被害だけを伝え、植民地支配や侵略戦争への責任から目を背ける「国際平和都市」ヒロシマの欺瞞を象徴する現象だったと思います。
そんな中、関心を持ち、一緒に怒り、連名してれた人たち、声をあげた人たちの存在に希望を見出します。また、10月4日のシンポジウムに「タイムライン」関係者とおぼしき人が複数来ていたことからも、関係者の中にも、この件に心を痛め、ツイート内容を削除したいと思っていた人たちが少なくないのではないかと察せられます。また、この問題の報道に及び腰だったメディアにも、現場の記者はしっかり報道したいのに、重圧を受けていたのではないかと思われる気配もありました。
そのような、見え隠れする良心にも、新たな年への期待と希望を見出したいと思います。NHK広島局の責任者も、本当は間違ったことをしたとわかってはいながら、ただの面子や意地で居直っていたのかもしれません。内心はどうあれ、差別を放置したことは許せません。内情はわかりませんが、その人たちが、少しでも、自らを振り返る機会を持ち、日本に残存する植民地主義や差別をなくしていくよう今後は意識して努力することを願います。
NHKの差別ツイートの被害者・当事者である在日朝鮮人・韓国人の方々には、反対運動がこの問題を解決に導くことができなかったことを、お詫びしたいと思います。この問題に引き続き取り組みつつ、朝鮮学校差別、ヘイトスピーチ、日本軍「慰安婦」や強制動員などの歴史否定など、取り組まなければいけない差別、なくさなければいけない差別はたくさんあります。これからも頑張っていく、としか言えない自分が情けないですが、新年に向けて決意を新たにしたいと思います。
このたび、「在日差別をなくす会」という会を仲間と作りました。広島・福山市のクリニックで在日朝鮮人のYさんが受けた差別についても、医師は謝罪しながらも自分の行為が差別であったことに向き合っておらず、さらに福山市側にも被害者に重圧をかけるような行為がありました(経緯については7月29日、8月6日、8月25日、9月11日 の投稿を順番に呼んでください)。いまだ、被害者にとって解決した・再発防止策がなされたとの安心感を得ることからは程遠い状態です。この問題が長引いてしまったのは、頼るべきではなかった団体に支援を頼んでしまったこともありました。しかしすべては教訓です。この福山市の民族差別事件をはじめとし、在日の差別をなくしていくための会をあらためて作り、新年の取り組みに備えたいと思っています。
「在日差別をなくす会」に関心のある方は連絡ください。コロナで大変な日々ですが、どうかよい年末・年始をお迎えください。
@PeacePhilosophy 乗松聡子
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