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Sunday, March 17, 2019

野平晋作「朝鮮半島の非核化と日本の責任」Nohira Shinsaku: Denuclearization of Korean Peninsula and Japanese Responsibility

ピースボート」共同代表の、野平晋作さんが『子どもと教科書 全国ネット21NEWS』124号(2019年2月15日発行)に寄稿した「リレートーク 朝鮮半島の非核化と日本の責任」を、許可を得て転載します。

報道では、朝鮮と米国は「“北朝鮮”の非核化」と「制裁解除」の駆け引きをしているかの如くの印象操作がありますが、実際はここで野平さんが述べるように非核化しなければいけないのは朝鮮半島全体です。また、朝鮮が必要としているのは、何よりも「安全の保障」です。在韓、在日米軍の存在や、軍事演習によって朝鮮に威嚇行為を続け、安全を脅かし、朝鮮戦争終結を阻んでいるのはまさしく米国であり、「安全の保障」を、圧倒的軍事力を持つ米国が提供しない限り(いつでもお前の国を破壊する準備があるという敵対姿勢を変えない限り)、朝鮮は自分たちだけが核兵器を手放すなどするはずはありません。朝鮮半島非核化に責任を負う一番の主体は、米国、そして、米国の同盟国となっている、日本、韓国です。

野平さんに、「決裂」と言われた直近の第二回米朝会談についての追加コメントを求めたら、

2月28日のハノイ会談以降、米朝交渉は進展をみせていません。しかし、これを単に論評したり、今後を予測するのではなく、朝鮮戦争の終結と朝鮮半島と日本の非核化のために自分が何をすべきかということを考えることが大切だと思っています。
という言葉をくれました。日本が朝鮮半島和平の道を邪魔しないこと、邪魔しないだけではなく、朝鮮敵視政策をやめ、核兵器禁止条約を批准し、「日本の非核化、非軍事化」こそが、朝鮮半島の非核化、ひいては東アジアのの安全と平和構築につながるという正当な主張であると思います。そのためには、「核の傘」と直結している日米安保を見直していくことは当然であり、辺野古の基地はむろん、南西諸島全体の要塞化を中止することが必須と思います。日本の人は、自分たちが朝鮮に対する核の脅威の一端を担っているということをまず明確に自覚するべきでしょう。(前文 乗松聡子)




朝鮮半島の非核化と日本の責任

野平晋作(ピースボート共同代表)
野平晋作さん

問われる日本の主体性
 「南北首脳会談と米朝首脳会談が行われたけど、どうなるのかな」「そもそも朝鮮民主主義人民共和国(以下、北朝鮮)って、信用できるのかな」。これが日本で最もよく聞かれる意見です。あまりに当事者性のない、他人事のような意見をよく耳にします。一方で、一連の外交交渉において日本はまったく「蚊帳の外」ではないかというメディアの批判に対して、安倍首相は、「米朝首脳会談で、トランプ大統領に拉致問題を話題に取り上げてもらった」ということを自慢げに語る始末です。今の安倍首相に「蚊帳の外」であることを批判することは、果たして良い効果をもたらすのか疑問に思うほどです。北朝鮮への制裁の継続を主張し、せっかくの融和ムードを壊さないでくれ、「蚊帳の外」にいて、せめて歴史的会談の邪魔だけはしないでくれと、むしろ私は思っていました。

   日本は植民地支配により朝鮮半島の南北分断のきっかけをつくりました。その後も米軍とともに朝鮮戦争を初めとして南北の分断、対立に加担し続けてきた国です。さらに広島、長崎への原爆投下を経験した戦争被爆国であり、核兵器の非人道性を世界に訴える責任のある国です。そのことを踏まえるなら、南北、米朝首脳会談の今後の見通しについて、日本の市民が他人事のような発言をすることは非常に恥ずかしいことだと私は思います。朝鮮半島の情勢は自分と関係のないところでつくられるのではなく、日本の動きと連動してつくられていくものだと考えるからです。

分かれる米朝首脳会談の評価
 米朝首脳会談の評価は、日本のみならず世界においても、その評価は大きく割れています。ひとつは、朝鮮半島の非核化に向けて何も具体的なことが決まらなかったという厳しい評価。もうひとつは朝鮮戦争の終結に向けた初めの一歩としての肯定的な評価です。米国の主流メディアの評価も「実りがない」「朝鮮に媚びへつらった」など厳しい批評が目立ちました。米朝首脳会談後、米国で行われたトランプ大統領の記者会見の模様が日本でも報道されました。北朝鮮の人権侵害状況を問いただし、北朝鮮の核廃棄をどう信じられるのかと執拗に問い続ける記者が多く見受けられました。北朝鮮国内の人権問題には関心はあっても、非人道的状況を再生し続ける朝鮮半島の分断と対立という暴力自体には、米国がこの暴力の当事者であるのも関わらず、多くの記者が関心を持っていないようでした。北朝鮮が約束を反故にした場合どのような軍事オプションがあるかと尋ねられたトランプ大統領は、「朝鮮半島で戦争をしたくない」と、ニューヨークの人口まで引き合いに出しながらとうとうと述べました。当然背景に、文在寅大統領からの教育効果があったと推測できます。トランプ大統領が具体的に戦争が起きた時にどれだけ朝鮮半島で人が死ぬかを語り、そんなことはしたくないと世界に向かって言語化したのは、韓国の人々にとってとてつもないインパクトがあったはずだと在日コリアンの友人が教えてくれました。軽々と「約束を破ったらどんな軍事的対価を?」と口にできる米国主流メディアの「人権感覚」こそ朝鮮半島の人間にとって脅威だと彼女は述べていました。 

拳を振り上げたままで対話はできない 
   反核・平和運動に関わる日本の市民の間においても、朝鮮戦争の終結と朝鮮半島の非核化という二点を目指すことは合意できても、どのような手順でそれを進めるのか、また、日本政府、日本の市民社会が主体的に何をすべきかということについては議論を深められていません。

 私は1998年、インド、パキスタンが核実験を行ったときのことを思い出します。ピースボートはこれまで世界各地で、広島、長崎の原爆投下に関する写真展を行ってきました。1998年には、パキスタンのラホールとインドのニューデリーで写真展を行いました。パキスタンでは、路上で一般の市民に囲まれ、なぜパキスタンでこんな写真展を行うのかと詰問されました。写真展をやるならインドでやれ。自分たちはインドの脅威に日々さらされている。インドが核兵器を持つ以上、自分たちも持たざるを得ないんだ。そのような主張でした。パキスタンに核実験をやめてもらうためには、どのようにしたらインド・パキスタンの関係がよくなるかを同時に考え、国際社会もそのために動かなくてはダメだと思いました。また、インドでは、国連安保理の常任理事国の5大国は核兵器の保有が認められているのに、なぜ大国で民主主義国家のインドが核を持つとダメなのか。日本は米国の核の傘に入っているにもかかわらず、君たちがインドに来て、核実験反対を訴えるのは欺瞞的だと言われました。日本が他国にとって、どのような存在として見えているかを自覚しなくては、核実験に反対することも説得力を持たないことを実感しました。

 朝鮮半島の非核化については、私は今一番優先すべきことは、北朝鮮にとって脅威とは何かということを考え、その脅威の除去を実現していくことだと思います。北朝鮮政府は米政府から体制保証の約束を取り付けたいと考えています。何とか米政府を交渉のテーブルにつけさせるため、核兵器を保有し、米国本土にまで届く弾道ミサイルの開発を進めました。したがって、米政府が体制保証をし、朝鮮戦争の終結宣言に合意し、米朝国交正常化を行えば、北朝鮮は核を保有する必要はなくなります。韓国もそれを望んでいると言えるでしょう。北朝鮮政府は常々、「段階的かつ同時行動の原則」を主張しています。米政府が北朝鮮政府に対して、「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化」(
CVID)を体制保証の前提条件にしたら、非核化の交渉は決裂するのではないでしょうか。

 もうひとつ重要なことがあります。非核化が求められているのは北朝鮮だけでなく、朝鮮半島全体であるということです。日本の市民はこのことをさらに主体的に受け止め、日本の非核化も求められていると考えるべきではないでしょうか。朝鮮半島が完全に非核化されても日本に核が持ち込まれたら、北朝鮮は安心できません。米軍基地の存在についても同じことが言えます。トランプ大統領は記者会見にて、在韓米軍の撤退にも言及しました。もし仮に、朝鮮戦争が終結し、休戦協定が平和協定に変換されたら、少なくとも朝鮮戦争を前提としていた国連軍は不要となります。国連軍の基地ということを名目にしていた7つの在日米軍基地の見直しを迫られるはずです。在韓米軍が縮小しても、在日米軍が強化されるようなことになったら、北朝鮮にとっての脅威は小さくなったことにはなりません。北朝鮮への脅威を減らすことで、朝鮮半島の非核化が促進される状況をつくるべきです。具体的には、日本も韓国も核兵器禁止条約に批准すること。そして、在韓、在日米軍の縮小をはかることが必要です。朝鮮半島情勢の変化は、日本にとって辺野古新基地建設の中止はもちろんのこと、在日米軍基地の見直しをはかるチャンスでもあります。逆に言えば、このチャンスを活かすことができなければ、在韓米軍基地の縮小にともない、代わりに在日米軍基地を増強せざるをえない状況になりかねません。この好機を活かし、日本の非核化、非軍事化を進めることこそが朝鮮半島の非核化を促す道だと私は考えています。

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野平さんのプロフィールはこちらをどうぞ

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『ふぇみん婦人民主新聞』より転載: 南北首脳会談 日本人はなぜ他人事?

『月刊イオ』寄稿 「”蚊帳の外”・日本はどうする」

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