Tuesday, December 09, 2025

「村山談話の会」記者会見:高市首相は「台湾有事は存立危機事態」発言を撤回せよ Murayama Statement Group calls on Prime Minister Takaichi to Retract Her Claim that a “Taiwan Contingency” Constitutes an “Existential Threat” Justifying the Dispatch of Japanese Troops

さる12月8日(月)、参議院議員会館で、「村山談話を継承し発展させる会」(藤田高景会長)が、高市早苗首相に「台湾有事は存立危機事態」発言の撤回を要求する記者会見を開きました。日本、中国など各国メディアの他、関心のある人もたくさん来てくれて、80人の参加を得て活発な議論がかわされました。以下、報道リスト、「声明」本文、このブログ運営者の乗松聡子の冒頭発言のテクストを紹介します。

関連報道リスト(随時更新します)

産経新聞 村山談話の会、首相答弁は「軍国主義の復活」で撤回を 台湾有事は「CIAが騒いでいる」

東京新聞 高市首相の台湾有事発言は「宣戦布告」「対話成り立たない」 答弁の撤回を求める元外交官と学者の危機感

朝日新聞 自衛隊が懸念するサラミ「厚切り」戦術 中国のレーダー照射で負担増

共同通信(沖縄タイムス):元外交官ら首相答弁の撤回要求 「対話努力放棄はいけない」

朝鮮新報 高市発言の即時撤回、独立外交を/有識者らが緊急記者会見

新華社 日本の有識者、高市首相に台湾発言の撤回要求 CGTN日本語Xアカウント  フェニックスTV CCTV など中国メディア多数




声明

高市首相は「台湾有事は存立危機事態」発言を撤回せよ


1、 去る11月7日の衆議院予算委員会で、高市首相は、「台湾有事」が起こった場合、「戦艦を使って武力の行使も伴うものであれば、これはどう考えても存立危機事態になり得るケースだ」と述べました。そもそも「戦艦」という言葉は現在使いません。軍事のことも理解せず、日本政府がこの間、中国に対して約束したことさえフォローせず、戦争介入発言をした高市氏の発言は、すぐに撤回すべきです。

かつて「いわゆる一つの中国と台湾有事に関する質問主意書」に対する「答弁書」(2023.5.9、岸田文雄総理)で、日本政府は次のように述べています。「①台湾に関する我が国政府の立場は、昭和47年〔1972〕の日本国政府と中華人民共和国政府の共同声明第3項にあるとおり、『台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部である』との中華人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重するというものである」。「④お尋ねの『台湾有事』及び『日本有事』の意味するところが必ずしも明らかではないが、一般に、いかなる事態が武力攻撃事態、存立危機事態又は重要影響事態に該当するかについては、事態の個別具体的な状況に即して、政府がその持ち得るすべての情報を総合して客観的かつ合理的に判断することとなるため、お尋ねについて一概にお答えすることは困難である」。

今回の高市答弁が、従来の政府見解と異なることは明らかです。


2、1972年9月、田中角栄首相の訪中によって中国との国交正常化が実現します。歓迎宴における挨拶で、周恩来総理は、「1894年から半世紀にわたって、日本軍国主義者の中国侵略により、中国人民は極めてひどい災難をこうむり、日本人民も大きな損害を受けました…」と述べました。青春の一時期を日本で過ごした周総理の胸中は、いかばかりのものだったでしょうか。1894年は日清戦争の開始年であり、それが「台湾植民地化」に結びつくのです。「日中共同声明」前文には、「日本側は、過去において日本国が戦争を通じて中国国民に重大な損害を与えたことについての責任を痛感し、深く反省する」とあります。日本政府が、こうした「歴史認識」を披歴した初の国際文書となります。

このときの日中共同声明第3項には、「中華人民共和国政府は、台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であることを重ねて表明する。日本国政府は、この中華人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重し、ポツダム宣言第8項に基づく立場を堅持する」とあります。その第8項には「カイロ宣言の条項は履行せらるべく…」とあり、カイロ宣言には「(日本が盗取した)満州、台湾及び澎湖島…のような地域を中華民国に返還すること」とあります。


3、 日中共同声明に示された「歴史認識」はその後も維持されており、1982年7月の「教科書問題」は宮沢喜一官房長官談話での事態収拾を余儀なくされ、1985年8月の「中曽根康弘首相の靖国神社公式参拝」は、後藤田正晴官房長官談話での事態収集を余儀なくされました。そして、戦後50年にあたる1995年8月15日、閣議決定を経て発表された「村山談話」には、次のようにあります。「わが国は、遠くない過去の一時期、国策を誤り、戦争への道を歩んで国民を存亡の危機に陥れ、植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して、多大の損害と苦痛を与えました。私は未来に過ち無からしめんとするが故に、疑うべくもないこの歴史の事実を謙虚に受け止め、ここに改めて痛切な反省の意を表し、心からのお詫びの気持ちを表明します」。


4、高市答弁は、台湾有事が起こった際には日本は戦争体制に入れるということを国会で明言した初めての、日本軍国主義の復活に等しい行為です。何よりいったん戦争になれば再び戦場にされうる沖縄の玉城デニー知事は、「戦争は絶対に起こしてはならないし、引き起こすようなきっかけを与えてもいけない」と警告しています。中国側からは強い非難と撤回要求が繰り返し表明されています。撤回を行わない日本に対し、中国は自国民の日本渡航自粛を求め、日本留学について「慎重な検討」を勧告し、日本産海産物の輸入停止、日本コンテンツの公開中止などの措置を執っています。そもそも日本側が原因を作った問題について、自分たちが被害者のように振舞うことで事態が打開されるはずはありません。

  中国外務省の毛寧報道局長は、17日に「1995年の『村山談話』を想起すべき時期に来ています」と述べています。中国は、日本に良心と反省が存在していたこともあったことをリマインドしているのです。


5、日本は、いまこそ、その後の政権も踏襲を表明してきた「村山談話」を想起すべきではないでしょうか。あの戦争は侵略ではないと主張し、「村山首相談話」を無効にすると宣言していた高市早苗氏が、いまは首相となり、いわゆる台湾有事への自衛隊参戦をほのめかしたのです。この問題について、日本人は、現在の問題が持つ歴史性をはっきり理解することが不可欠です。中国から見たら、台湾に介入しようとする日本の姿は、まさしくかつての日本の軍国主義の再来に他ならないでしょう。日本国憲法9条への違憲行為であり、国際法に照らしても違反です。

  台湾への再びの介入、つまり「一つの中国」の不尊重は、ふたたび日本が中国に食指を伸ばす兆候ではないかと見られるのです。日本は、ここ数年、与那国、石垣、宮古、奄美、沖縄、馬毛島、西日本に至るまで、ミサイル部隊、レーダー基地、辺野古などの新設基地、弾薬庫、共同訓練施設、民間施設の軍用化などにより、日米が一体化して利用できる軍事地帯に塗り替えてきました。これらは、地元の強い反対や、戦争が島に及んだ場合の住民保護への強い懸念があるにもかかわらず、強行されています。


6、高市首相の「存立危機事態」発言は、極めて危険な、台湾統一をめぐる中国に対する戦争介入宣言です。

トランプ大統領は、米中経済関係を重視することにより、高市氏の戦争挑発にくぎを刺すような発言もしたと報じられていますが、高市氏の発言の後に、第二次トランプ政権としては初の、台湾への約510億円相当の武器売却を承認しています。トランプ政権はオバマ政権「アジア回帰」以来の中国封じ込め強化政策を具体的に後退させる兆候はありません。日本政府は、日本の安全保障のためにも、いまこそ米国から独立した平和のための外交政策を選択することが求められています。

台湾問題を中国の内政問題と認め、高市首相は即時に、今回の「存立危機事態」発言を撤回すべきです。


2025年12月8日

                    村山首相談話を継承し発展させる会 

                                          



★パネルは長く、藤田会長の左側にも5人のパネリストがいらっしゃいました
こちらの東京新聞の報道写真を参照

25年12月8日 「村山談話の会」 記者会見 

 

乗松聡子コメント 

 今日は何の日でしょうか。12月8日。いわゆる1941年「真珠湾攻撃の日」ですが、この日、日本が攻撃したのは真珠湾だけではありませんでした。マレーシア、フィリピン、香港、シンガポール、グアムなど、東南アジアや太平洋の英米の植民地を次々と攻撃しました。なぜですか。対中国侵略戦争を続行するために東南アジアの豊富な資源が必要だったからです。連合国や海外華僑が支援物資を送っていた援蒋ルートを遮断するためです。すべては中国侵略戦争から始まっていたのです。

 

 そういう意味できょうこの日、高市首相の「“台湾有事”は“存立危機事態”」発言の撤回を求めることは歴史的意義があります。近代日本の最初の海外派兵がまさしく、1874年の台湾出兵でした。これは、明治政府が琉球王国を清国との繋がりを断たせ、強制併合していく過程で起きたことでした。その後日清戦争で勝った日本は清国から台湾を割譲させ、植民地支配しました。中国から見たら、台湾に介入しようとする日本の姿は、まさしくこの時期の日本の軍国主義の再来に他ならないのです。

 

 その後の日本の中国侵略戦争と、「偽満洲国」の植民地支配においては、何千万の中国の人々に対し、大虐殺、捕虜処刑、強制動員、性暴力、性奴隷制、生体実験、細菌戦といった人道にもとる残虐行為を行いました。もうすぐ1213日、南京大虐殺を記憶する日です。88年前の1213日の「南京陥落」を日本中で祝い、提灯行列や旗行列をしました。現在、高市首相の挑発行為を戒めることもなく、支持率がアップしているといわれる日本はまさしく戦時中の旗行列、提灯行列と重なります。行きつく先は破滅です。

 

 破滅を防ぐにはまずは高市首相は、台湾発言の撤回をしなければいけません。高市首相は、1972年の日中共同声明の「台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部である」という中国の立場を理解し尊重するという約束と、その後、1978年の日中友好平和条約、1998年の日中共同宣言、2008年の日中共同声明という日中関係4文書で繰り返し約束した「一つの中国」の尊重を、中国に再確認するべきです。


 思い起こしてください。2012年の野田政権による「尖閣諸島国有化」、2013年の安倍晋三首相による靖国神社参拝などで冷え切っていた日中関係を改善するために2014年11月、安倍首相が習近平主席と会談するにあたって、「双方は,日中間の四つの基本文書の諸原則と精神を遵守し,日中の戦略的互恵関係を引き続き発展させていくことを確認した」と合意しました。安倍首相を信奉し、後継者を自認する高市首相は、これを踏襲することができるのではないでしょうか?

 

 日本敗戦50周年に際し、村山富市首相は日本の首相としては初めて、「植民地支配」と「侵略」に「痛切な反省の意」と「心からのお詫び」を表明しました。今年、80周年という節目の年、例年にも増して、日本は、厳粛に、謙虚に、大日本帝国の70年以上におよぶ加害の歴史を振り返り、日本国憲法にあるように「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにする」誓いを新たにする年ではなかったでしょうか。残念ながら年末にむけ、日本はますます真逆の方向に進んでいます。

 

 対中国だけではありません。昨今、電車やバスにのると、「1210日から16日まで」を、朝鮮民主主義人民共和国についての「“人権侵害問題啓発週間”」と称し、朝鮮による「人権侵害」問題が、「我が国の主権や国民の生命と安全に関わる重大な問題」として意識喚起しています。これには驚愕しました。いま、中国に対する挑発発言で「わが国の安全」を脅かしているのは高市首相と日本政府ではありませんか。

 

 朝鮮と日本との間によこたわる人権問題は拉致問題だけでなく、2002年「日朝平壌宣言」にもうたわれた、植民地支配の清算さえ始まってもいません。強制動員、日本軍性奴隷、朝鮮人被爆問題など膨大な未解決の問題が残されています。それを日本政府はただ「敵視」で対応し、逆に朝鮮学校無償化除外という、それこそ人権侵害を行っています。

 

 これらの敵視政策の背後には、米国への従属問題があります。米国が敵視する国をそのまま敵視し、メディアもそれに追随し、世論に大きな影響を与えてしまうという根本の問題です。日本が過去を乗り越え再び東アジアの一員となるには、まず、敵視キャンペーンを展開している対象国―中国、朝鮮民主主義人民共和国、ロシアといった隣国に対する、独立した視点と外交を築くことが重要です。

 

 これこそが、これら敵視政策を口実にし、米国に言われるがままにエスカレートさせている、軍事予算増加、琉球弧や西日本の要塞化、軍事演習、つまり戦争準備の方向性を転換させる道です。日本が再び東アジアを戦場にしないため、また、自立した平和的外交を築くための道です。その第一歩として、高市首相は台湾についての「存立危機事態」発言を明確に撤回すべきと思います。


(以上) 



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